説明

発光装置および電子機器

【課題】絶縁層のコンタクトホールに起因した光量のムラを抑制する。
【解決手段】駆動トランジスタTdrを覆う第2絶縁層42の表面には第1電極61が形成される。第1電極61は、第2絶縁層42のコンタクトホールCHを介して駆動トランジスタTdrのドレイン電極34に接触する。第1電極61とこれに対向する第2電極62との間には発光層66が形成される。発光層66からの放射光の出射側には補助配線70が形成される。補助配線70は、第2電極62よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて第2電極62に電気的に接続される配線であり、第2絶縁層42のコンタクトホールCHと重なり合う部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescent)材料など各種の発光材料によって形成された発光層を有する発光装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発光層による発光を制御するためにスイッチング素子(典型的にはトランジスタ)を利用したアクティブマトリクス方式の発光装置が従来から提案されている。この種の発光装置は、基板の面上に形成されたスイッチング素子と、このスイッチング素子を覆う絶縁層と、絶縁層の面上に形成された第1電極および第2電極と、両電極の間に介挿された発光層とを含む。第1電極は、絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して、スイッチング素子の電極(ドレイン電極またはソース電極)に電気的に接続される(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この構成においては、太陽光や照明光などの外光が絶縁層のコンタクトホールを通過してスイッチング素子の電極に到達し、その表面における反射光(以下「不要反射光」という)が観察側に出射する場合がある。この不要反射光は、発光層からの出射光とは特性(例えば光量や分光特性)が相違するから、発光装置の面内における光量(輝度)のバラツキの原因となる。
【0005】
また、例えば、絶縁層の表面上だけでなくコンタクトホールの内側にも入り込むように発光層が形成された構成においては、発光層のうちコンタクトホールの内周面に沿った部分からも光(以下「不要放射光」という)が出射する。しかしながら、発光層のうち絶縁層の表面上に位置する部分とコンタクトホールの内側に入り込んだ部分とでは膜厚が相違するから、前者の部分からの出射光と後者の部分から出射する不要放射光とは光量や分光特性が相違する。したがって、この構成における不要放射光も発光装置の面内における光量のバラツキ(ムラ)の原因となり得る。
【0006】
以上に説明したように、スイッチング素子と第1電極とが絶縁層のコンタクトホールを介して導通する構成においては、コンタクトホールの底面に位置する電極での不要反射光やコンタクトホールの内側に入り込んだ発光層からの不要放射光に起因して光量にムラが発生する(発光の均一性が損なわれる)という問題があった。このような事情を背景として、本発明は、絶縁層のコンタクトホールに起因した光量のムラを抑制するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明に係る発光装置は、基板の面上に形成されたスイッチング素子(例えば図2の駆動トランジスタTdr)と、スイッチング素子を覆う絶縁層(例えば図3の第2絶縁層42)と、絶縁層の面上に形成され、当該絶縁層のコンタクトホール(例えば図2や図3のコンタクトホールCH)を介してスイッチング素子に電気的に接続される第1電極と、第1電極を挟んで基板とは反対側に形成された第2電極と、第1電極と第2電極との間に介在する発光層と、絶縁層に対して発光層による放射光の出射側に配置され、基板に垂直な方向からみてコンタクトホールと重なり合う部分を含む遮光体(例えば各実施形態における補助配線70や遮光層81)とを具備する。
【0008】
この構成によれば、コンタクトホールと重なり合う遮光体が絶縁層の観察側(発光層による放射光の出射側)に配置される。したがって、太陽光や照明光などの外光は遮光体によって遮断されるからコンタクトホールやスイッチング素子(特にその電極)には到達しない。また、仮に外光がコンタクトホールを通過してスイッチング素子に到達した場合であっても、その表面における不要反射光は遮光体によって遮断される。さらに、発光層がコンタクトホールの内側に入り込んだ構成(例えば図9から図13の構成)において、発光層のうちコンタクトホールの内周面に沿った部分からの不要放射光は遮光体によって遮断される。以上のように本発明によれば不要反射光や不要放射光が遮光体によって遮断されるから、コンタクトホールに起因した光量のムラを抑制することができる。
【0009】
なお、本発明における「絶縁層に対して発光層による放射光の出射側」とは、発光層からの放射光の出射が本来的に予定された側という意味である。例えば、第1電極が光透過性を有するボトムエミッション型の発光装置においては、絶縁層からみて基板側が「発光層による放射光の出射側」に相当する。また、第2電極が光透過性を有するトップエミッション型の発光装置においては、絶縁層からみて基板とは反対側が「発光層による放射光の出射側」に相当する。また、例えば発光装置の用途に着目すると、例えば発光装置が表示装置として利用される場合には、絶縁層に対して観察側(すなわち発光装置による表示画像を視認する観察者が位置する側)が「発光層による放射光の出射側」に相当し、感光体ドラムなどの感光体を露光する露光装置(露光ヘッド)として発光装置が利用される場合には、絶縁層に対して感光体側が「発光層による放射光の出射側」に相当する。
【0010】
ところで、遮光体の光反射率がスイッチング素子の電極よりも高い場合、コンタクトホールに起因した発光の不均一性は確かに解消されるものの、今度は遮光体における外光の反射光が発光の均一性に影響を与える可能性もある。そこで、本発明の好適な態様において、スイッチング素子は、コンタクトホールを介して絶縁層から露出した部分が第1電極に接触する電極(例えば図2や図3のドレイン電極34)を含み、遮光体は、スイッチング素子の電極よりも光反射率が低い材料によって形成される。この構成によれば、スイッチング素子の電極よりも光反射率が低い材料によって遮光体が形成されるから、コンタクトホールにおける反射光の影響と遮光体における反射光の影響とを双方とも解消して発光の均一性を増進することができる。
【0011】
第2電極の抵抗値が高い場合には第2電極における電圧降下に起因して発光層における発光の均一性が損なわれる可能性がある。第2電極がITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)など高抵抗の材料によって形成された構成(トップエミッション型)や、第2電極が広範囲にわたって連続に分布する構成においては、第2電極における電圧降下が特に顕著となるから、発光の不均一性はいっそう深刻である。そこで、本発明の好適な態様において、第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて当該第2電極に電気的に接続される補助配線が遮光体として利用される。この構成によれば、第2電極に導通する補助配線によって電圧降下が抑制されるから、この電圧降下に起因した発光の不均一性は抑制される。なお、この態様の具体例は第1実施形態(図2・図3)、第2実施形態(図5・図6)、第4実施形態(図9)、第5実施形態(図10)、第8実施形態(図14・図15)として後述される。
【0012】
なお、以上においては補助配線が遮光体として兼用される構成を例示したが、本発明においては、遮光体とは別個に補助配線が形成された構成も採用される。この後者の構成において、良好な光透過性を有する材料によって補助配線が形成されるならば特段の問題は発生しない。しかしながら、第2電極よりも抵抗率が低いという条件を満たすためには、補助配線の材料として遮光性の導電材料を採択せざるを得ない場合が多い。そして、遮光体とは別個に遮光性の補助配線が形成された構成においては、補助配線が形成されない構成と比較すると、補助配線のぶんだけ開口率(画素が分布する領域のうち実際に光が出射する領域の占める割合)が低下するという問題がある。これに対し、以上に例示したように補助配線が遮光体として兼用される態様によれば、補助配線が遮光体から独立して形成された構成と比較して開口率が向上するという利点がある。また、開口率が増加するということは、所期の光量を発光装置から出射するために発光層に供給されるべき電気エネルギが低減されることを意味する。発光層(特に有機EL材料)は高い電気エネルギが供給されるほど特性の劣化が進行するから、発光層に供給される電気エネルギを低減できる本態様によれば、補助配線によって開口率が制約される構成と比較して、発光層の寿命(発光量や発光効率などの特性値が所定値に低下するまでの時間長)を長期化することができるという利点がある。
【0013】
補助配線が遮光体として利用される態様において、より望ましくは、この補助配線が、基板に垂直な方向からみて、コンタクトホールの内周縁に包囲された領域(開口領域)の全域と重なり合う。この態様によれば、コンタクトホールに起因した不要反射光や不要放射光のうち遮光体によって遮断される割合を増大させることができる。この態様の具体例は第1実施形態(図2・図3)および第4実施形態(図9)として後述される。なお、マスクを利用した蒸着などの成膜技術によって遮光体(補助配線)が形成される場合には、たとえコンタクトホールの開口領域の全域と重なり合うように遮光体を形成しようとしても、製造上のバラツキ(マスクのズレ)に起因して遮光体の位置に誤差が生じる場合がある。このように誤差を原因として開口領域の一部が遮光体と重なり合わない構成であっても、設計上において遮光体が開口領域の全域と重なり合う以上は、本態様の「コンタクトホールの内周縁に包囲された領域の全域と重なり合う」という要件を充足すると言える。
もっとも、補助配線が、基板に垂直な方向からみて、コンタクトホールの内周縁に包囲された領域の一部(例えば図6や図10における領域A1)のみと重なり合う構成としてもよい。この構成において、より望ましくは、コンタクトホールの内周縁に包囲された領域のうち補助配線と重なり合わない領域(例えば図6や図10における領域A2)に重なり合う部分を含む遮光層がさらに配置される。この構成によれば、補助配線によって遮断されない不要反射光や不要放射光が遮光層によって遮断される。したがって、コンタクトホールの全域と重なるように補助配線が形成された態様と同様に、コンタクトホールに起因した不要反射光や不要放射光のうち遮光体によって遮断される割合を増大させることができる。なお、この態様の具体例は、例えば第2実施形態(図5・図6)および第5実施形態(図10)として後述される。
【0014】
以上においては補助配線が遮光体として兼用される構成を例示したが、遮光体とは別個に補助配線が配置された構成も採用される。この態様のもとで補助配線が光反射性を有するならば、補助配線の表面における反射光(外光)によって発光の均一性が損なわれる可能性がある。そこで、より好適な態様において、遮光体は、基板に垂直な方向からみて補助配線と重なり合う。この態様によれば、コンタクトホールにおける不要反射光や不要放射光はもちろん補助配線の表面における反射光も遮光体によって遮断されるから、発光の均一性を維持することが可能である。換言すると、補助配線の材料として光反射性の導電材料を採択した場合であっても発光の不均一性が阻害されないのであるから、補助配線の材料の選択の余地を拡大することができるという利点がある。なお、この態様の具体例は、例えば第3実施形態(図7・図8)、第6実施形態(図11)および第7実施形態(図12・図13)として後述される。
【0015】
なお、以上の各態様における補助配線の具体的な形態は任意である。第1電極と第2電極と発光層とを各々が含む複数の発光素子を第1方向(例えば図16のX方向)に配列した複数の素子群(例えば各行に属する複数の発光素子の集合)が第1方向と交差する第2方向に並列された態様において、補助配線は、例えば、複数の素子群のうち相互に隣接する第1の素子群(例えば図16の第i行)と第2の素子群(例えば図16の第(i+1)行)との間隙(例えば図16の間隙S1)にて第1方向に延在する形状に形成され、第2の素子群に対して第1の素子群とは反対側に隣接する第3の素子群(例えば図16の第(i+2)行)と第2の素子群との間隙(例えば図16の間隙S2)には形成されない。この態様においては、第2の素子群と第3の素子群との間隙に補助配線が形成されないから、総ての素子群の間隙に補助配線が形成された構成と比較して、補助配線が形成される領域や補助配線と発光素子との間隙に確保される領域(マージン領域)の面積を削減することが可能である。したがって、開口率の向上と補助配線の低抵抗化との両立が容易となる。例えば、補助配線の線幅を削減することなく開口率を向上させ、あるいは開口率(発光素子の面積)を低下させることなく補助配線の線幅を拡大(低抵抗化)することができる。
【0016】
以上のように2以上の素子群を単位として1本の補助配線が配置される構成において、補助配線の形成にはマスクを利用した蒸着が好適に採用される。すなわち、発光装置を製造する方法のうち補助配線を形成する工程は、所定の形状のマスクを用意する過程と、第2電極よりも抵抗率が低い材料をマスクを介して蒸着することで補助配線を形成する過程とを含む。前者の過程にて用意されるマスクは、複数の素子群のうち相互に隣接する第1の素子群と第2の素子群との間隙に対向する領域(例えば図18の領域RA)が開口し、第2の素子群に対して第1の素子群とは反対側に隣接する第3の素子群と第2の素子群との間隙に対向する領域(例えば領域RB2)を遮蔽する。以上の方法に使用されるマスクは、第2の素子群と第3の素子群との間隙に対向する領域が遮蔽されているから、総ての素子群の間隙に対向する領域が開口するマスクと比較して機械的な強度が高い。したがって、マスクの変形に起因した補助配線の誤差やマスクの破損が抑制される。
【0017】
本発明の好適な態様において、絶縁材料によって形成されてコンタクトホールの内側の空間に入り込む絶縁部が設けられ、発光層は、コンタクトホールの内側の空間には入り込まない。この構成によれば、コンタクトホールの内側に発光層が存在しないから、この部分から出射する不要放射光に起因して発光の均一性が損なわれることはない。なお、この態様の具体例は、例えば、第1実施形態(図2・図3)、第2実施形態(図5・図6)および第3実施形態(図7・図8)として後述される。なお、発光層は、絶縁部を挟んで分断されるように分布してもよいし、絶縁部を覆うように連続に分布してもよい(例えば図20参照)。
【0018】
本発明の他の態様において、遮光体は所定の方向に延在し、コンタクトホールは、基板に垂直な方向からみて所定の方向を長手とする形状に形成される。この態様によれば、コンタクトホールの面積が充分に確保されるから、第1電極とスイッチング素子との接触部分での抵抗を低減し、あるいは両者の導通の確実性を増進することができる。
【0019】
本発明の発光装置は、トップエミッション型およびボトムエミッション型の何れにも適用される。トップエミッション型の発光装置においては、第2電極が発光層からの出射光を透過させる。ボトムエミッション型の発光装置においては、第1電極が発光層からの出射光を透過させる。ボトムエミッション型の発光装置の好適な態様において、スイッチング素子は、コンタクトホールを介して絶縁層から露出した部分が第1電極に接触する電極を含み、遮光体は、スイッチング素子の電極よりも光反射率が低い材料によってスイッチング素子の電極と基板との間に形成されて当該電極に対向する。この態様によっても、スイッチング素子の電極における反射光が遮光体によって遮断されるから、発光の均一性を維持することができる。なお、ボトムエミッション型の発光装置の具体例は第8実施形態(図14・図15)として後述される。
【0020】
なお、以上に例示したボトムエミッション型の発光装置において、補助配線が遮光体として兼用される構成も採用される。この構成において、補助配線は、絶縁層のコンタクトホール(例えば図14のコンタクトホールCH5)を介して第2電極に電気的に接続される。また、遮光体は、スイッチング素子を構成する要素(例えば図14のゲート電極242)と同一の材料によって形成されることが望ましい。この態様によれば、単一の導電膜のパターニングによってスイッチング素子の電極と遮光体とをひとつの工程で一括的に形成することができるから、遮光体がスイッチング素子とは別個の工程で形成される場合と比較して、製造工程の簡素化や製造コストの低減が図られる。
【0021】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の発光装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の電気的な構成を示す回路図である。
【図2】ひとつの画素の構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線からみた断面図である。
【図4】補助配線の形態を例示する平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線からみた断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線からみた断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態における画素の構成を示す断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態における画素の構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態における画素の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線からみた断面図である。
【図14】本発明の第8実施形態における画素の構成を示す平面図である。
【図15】図14におけるXV−XV線からみた断面図である。
【図16】本発明の第9実施形態における画素の配列を示す平面図である。
【図17】図16におけるXVII−XVII線からみた断面図である。
【図18】補助配線を形成する工程について説明するための断面図である。
【図19】第9実施形態の別の態様に係る画素の配列を示す平面図である。
【図20】各実施形態の変形例に係る画素の構成を示す断面図である。
【図21】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図22】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図23】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の電気的な構成を示すブロック図である。この発光装置Dは、各種の電子機器に搭載されて画像を表示する表示装置であり、図1に示すように、X方向に延在する複数の選択線11と、X方向と直交するY方向に延在する複数の信号線13とを有する。選択線11と信号線13との各交差には画素Pが配置される。したがって、これらの画素Pは所定の領域(以下「発光領域」という)内にてX方向およびY方向にわたってマトリクス状に配列する。
【0024】
ひとつの画素Pは、電流の供給によって発光する発光素子Eと、この発光素子Eに供給される電流を制御するための駆動トランジスタTdrおよび選択トランジスタTslとを含む。発光素子Eは、有機EL材料からなる発光層66を第1電極61と第2電極62との間に介在させた素子である。発光層66は、第1電極61から第2電極62に流れる電流に応じた輝度(光量)で発光する。
【0025】
駆動トランジスタTdrは、発光素子Eに供給される電流量を制御するためのスイッチング素子であり、ソース電極が電源線15に接続される。電源線15には高位側の電源電位Vddが供給される。駆動トランジスタTdrのゲート電極とソース電極との間には、駆動トランジスタTdrのゲート電極の電位を保持するための容量素子Cが介挿される。また、駆動トランジスタTdrのドレイン電極は発光素子Eの第1電極61に接続される。発光素子Eの第2電極62には補助配線70を介して低位側の電源電位Gndが供給される。なお、補助配線70の作用やその具体的な形態については後述する。
【0026】
一方、選択トランジスタTslは、駆動トランジスタTdrのゲート電極と信号線13との間に介在して両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。この選択トランジスタTslのゲート電極は選択線11に接続される。なお、本実施形態においては駆動トランジスタTdrがpチャネル型で選択トランジスタTslがnチャネル型である構成を例示するが、各々の導電型は任意に変更され得る。
【0027】
選択線11に供給される選択信号がアクティブレベルに遷移して選択トランジスタTslがオン状態に変化すると、画素Pに指定された階調に応じたデータ電位Vdataが信号線13から選択トランジスタTslを経由して駆動トランジスタTdrのゲート電極に供給される。このときに容量素子Cにはデータ電位Vdataに応じた電荷が蓄積されるから、選択線11が非アクティブレベルに遷移して選択トランジスタTslがオフ状態に変化しても、駆動トランジスタTdrのゲート電極はデータ電位Vdataに維持される。発光素子Eには、駆動トランジスタTdrのゲート電極の電位に応じた電流(すなわちデータ電位Vdataに応じた電流)が供給される。この電流の供給によって発光素子Eはデータ電位Vdataに応じた輝度(光量)で発光する。
【0028】
次に、図2は、ひとつの画素Pの具体的な構成を示す平面図であり、図3は、図2におけるIII−III線からみた断面図である。なお、図2は平面図であるが、各要素の把握を容易化するために、図3と共通する各要素については図3と同じ態様のハッチングが施されている。以下の各実施形態に係る平面図(図5、図7、図12、図14)においても同様である。また、図2においては、図1の発光層66や第2電極62の図示が便宜的に省略されている。
【0029】
図3に示すように、駆動トランジスタTdrや発光素子Eといった図1の各要素は基板10の表面上に形成される。基板10は、ガラスやプラスチックなど各種の絶縁性材料を略長方形状に成形した板状の部材である。なお、基板10を被覆する絶縁性の膜体(例えば酸化珪素や窒化珪素などの膜体)を下地として各画素Pの要素を形成してもよい。以下では、基板10からみて駆動トランジスタTdrや発光素子Eが形成された側(すなわち図3における上方)を「観察側」と表記する。すなわち、「観察側」とは、発光装置Dによって表示された画像を視認する観察者の側である。
【0030】
図2および図3に示すように、駆動トランジスタTdrは、基板10の面上に形成された半導体層31と、基板10の全面に形成されて半導体層31を覆うゲート絶縁層40と、ゲート絶縁層40を挟んで半導体層31に対向するゲート電極242と、ソース電極33およびドレイン電極34とを含む。半導体層31は、シリコンなどの半導体材料によって略矩形に形成された膜体である。
【0031】
図2に示すように、ゲート絶縁層40の面上には中間導電体24が形成される。この中間導電体24のうちX方向に延在して半導体層31に重なり合う部分がゲート電極242である。図3に示すように、半導体層31は、ゲート絶縁層40を挟んでゲート電極242に対向するチャネル領域31cと、このチャネル領域31cを挟むソース領域31sおよびドレイン領域31dとを含む。
【0032】
図3に示すように、半導体層31やゲート電極242(中間導電体24)が形成された基板10の表面はその全域にわたって第1絶縁層41に覆われる。ソース電極33やドレイン電極34は第1絶縁層41の面上に形成される。ソース電極33は、図2に示すように、X方向に延在する電源線15の部分であり、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを貫通するコンタクトホールCH1aを介して半導体層31のソース領域31sに導通する。
【0033】
ドレイン電極34は、第1部分341と第2部分342とが連続する形状に成形される。第1部分341は、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを貫通するコンタクトホールCH1bを介して半導体層31のドレイン領域31dに導通する。第2部分342は、図2に示すようにX方向に延在する部分である。
【0034】
図2に示すように、中間導電体24は、電源線15に重なり合う電極部244とゲート電極242からY方向に延在して電源線15と交差する配線部246とを含む。電極部244と電源線15とが第1絶縁層41を挟んで対向することによって図1の容量素子Cが構成される。
【0035】
一方、選択トランジスタTslは、図2に示すように、基板10の面上に形成された半導体層51と、ゲート絶縁層40を挟んで半導体層51のチャネル領域に対向するゲート電極112と、ゲート電極112を覆う第1絶縁層41の面上に形成されたドレイン電極53およびソース電極54とを含む。ゲート電極112は、X方向に延在する選択線11からY方向に分岐して半導体層51に重なる部分である。選択線11と中間導電体24とは共通の導電膜のパターニングによって同一の工程で一括的に形成される。同様に、ドレイン電極53およびソース電極54と、駆動トランジスタTdrのソース電極33(電源線15)およびドレイン電極34とは、単一の導電膜のパターニングによって同じ工程で形成される。
【0036】
ドレイン電極53は、第1絶縁層41とゲート絶縁層40とを貫通するコンタクトホールCH2bを介して半導体層51のドレイン領域に導通する。同様に、ソース電極54は、コンタクトホールCH2aを介して半導体層51のソース領域に導通する。また、ソース電極54は、第1絶縁層41を貫通するコンタクトホールCH3を介して中間導電体24の配線部246に導通する。これによって選択トランジスタTslのソース電極54と駆動トランジスタTdrのゲート電極242とが電気的に接続される。
【0037】
図2に示すように、図1の信号線13は、電源線15の下層にてY方向に延在して電源線15と交差する交差部131と、各電源線15の間隙にてY方向に延在する配線部132とを含む。交差部131は、選択線11や中間導電体24と共通の導電膜から形成される。配線部132は、トランジスタTdrのソース電極33やドレイン電極34と共通の導電膜から形成される。配線部132の端部13aは第1絶縁層41のコンタクトホールCH4aを介して交差部131に導通する。同様に、配線部132の端部13bは第1絶縁層41のコンタクトホールCH4bを介して交差部131に導通する。以上のように各交差部131と各配線部132との電気的な接続によって信号線13が構成される。選択トランジスタTslのドレイン電極53は、配線部132のうち半導体層51と重なり合う部分である。
【0038】
図3に示すように、電源線15やドレイン電極34が形成された第1絶縁層41の表面はその全域にわたって第2絶縁層42に覆われる。第1絶縁層41や第2絶縁層42は、例えば酸化珪素や窒化珪素といった絶縁材料によって形成される。図2および図3に示すように、第2絶縁層42のうち基板10に垂直な方向からみてドレイン電極34の第2部分342と重なり合う部分には、第2絶縁層42を厚さ方向に貫通するコンタクトホールCHが形成される。したがって、第2部分342はコンタクトホールCHを介して第2絶縁層42から露出する。図2のように基板10に垂直な方向からみると、コンタクトホールCHは、X方向を長手とする略長方形である。
【0039】
第2絶縁層42の面上(コンタクトホールCH以外の表面)には略長方形の反射層44が画素Pごとに相互に離間して形成される。反射層44は、アルミニウムや銀などの合金またはこれらを主成分とする合金など光反射性を有する材料によって形成された膜体であり、発光層66から基板10側への出射光を観察側(図3の上方)に反射する。さらに、第2絶縁層42の表面上には、発光素子Eの陽極として機能する第1電極61(図1参照)が画素Pごとに相互に離間して形成される。第1電極61は、反射層44を被覆する略長方形の電極であり、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)など光透過性の導電材料によって形成される。図2および図3に示すように、第1電極61は、第2絶縁層42のコンタクトホールCHに入り込んで駆動トランジスタTdrのドレイン電極34(第2部分342)に接触する。この接触によって第1電極61と駆動トランジスタTdrとが電気的に接続される。
【0040】
第1電極61は、スパッタリングや真空蒸着といった各種の成膜技術によって、コンタクトホールCHの外形の寸法に対して充分に薄い膜厚に形成される。したがって、図3に示すように、第1電極61には、第2絶縁層42の膜厚とコンタクトホールCHの外形とを反映した凹部(窪み)611が形成される。すなわち、第1電極61のうちドレイン電極34に接触する部分が凹部611の底面部に相当し、第1電極61のうちコンタクトホールCHの内周面を被覆する部分が凹部611の側面部に相当する。
【0041】
図3に示すように、凹部611の内側(すなわちコンタクトホールCHの内側の空間)には絶縁部64が形成される。この絶縁部64は、絶縁材料(例えばポリイミドなどの樹脂材料)によって形成される。図3に示すように、絶縁部64は、凹部611を埋めるようにコンタクトホールCHの内側に入り込んで凹部611の底面および内周面に接触するとともに、その上面は第1電極61の表面から突出する。なお、絶縁部64には、凹部611の段差を平坦化するという作用もある。この作用を有効に発揮するという観点からすると、絶縁部64の材料には樹脂材料が特に好適である。樹脂材料を採用した場合には、第1に、液状の樹脂材料の塗布という低廉な方法によって絶縁部64の表面を容易に平坦化することができ、第2に、凹部611の平坦化に充分な膜厚の絶縁部64をクラックの発生なしに形成することができ、第3に、樹脂材料の硬化させるときの熱処理で樹脂材料が溶融することによっても絶縁部64の表面を平坦化できるからである。
【0042】
図1の発光層66は、第1電極61の表面を被覆するように画素Pごとに形成される。図3に示すように、発光層66は、絶縁部64が形成された領域には分布しない(つまり発光層66は絶縁部64によって仕切られる)。したがって、発光層66はコンタクトホールCHの内側の空間(凹部611)には入り込まない。なお、発光層66は高分子材料および低分子材料の何れによって形成されてもよい。また、発光層66による発光を促進ないし効率化するための各種の機能層(正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層)が発光層66に積層された構成も採用される。
【0043】
図3に示すように、図1の第2電極62は、絶縁部64と発光層66とを覆う電極であり、基板10の全域を被覆するように形成されて複数の画素Pにわたって連続に分布する。本実施形態の第2電極62は、ITOやIZOなど光透過性の導電材料によって形成される。したがって、発光層66から基板10とは反対側に出射した光と、発光層66から基板10側に出射して反射層44の表面で反射した光とは、第2電極62を透過して観察側に出射する。すなわち、本実施形態の発光装置Dは、発光素子Eによる放射光が基板10とは反対側に出射するトップエミッション型である。なお、絶縁部64が形成された領域(コンタクトホールCH)には発光層66が形成されないから(さらには第1電極61と第2電極62とが絶縁部64によって絶縁されるから)、この部分は発光に寄与しない領域(いわゆるデッドスペース)となる。
【0044】
光透過性を有する導電材料の多くは抵抗率が高いから、この種の材料によって形成された第2電極62は高抵抗となってその面内における電圧降下が顕著となる。したがって、各発光素子Eに供給される電位が第2電極62の面内における位置に応じて相違し、この結果として発光領域における光量のムラ(輝度や階調のムラ)が発生する場合がある。
【0045】
この光量のバラツキを解消するために、本実施形態においては、第2電極62の導電性を補助するための補助配線70が形成される。補助配線70は、第2電極62よりも抵抗率が低い導電材料によって形成される。本実施形態の補助配線70は、第2電極62の表面に接触するように形成されて第2電極62と電気的に導通する。この構成によれば、電流の大部分は低抵抗の補助配線70を流れるから、第2電極62における電圧降下は抑制される。したがって、各発光素子Eに供給される電位が均一化され、この結果として電圧降下に起因した光量のムラを有効に抑制することができる。本実施形態の補助配線70は遮光性の導電材料によって形成される。より好適には、ドレイン電極34よりも光反射率が低い材料によって補助配線70が形成される。
【0046】
図4は、本実施形態における補助配線70の具体的な形態を例示する平面図である。同図においては各第1電極61の外形が破線で併記されている。図4に示すように、補助配線70は、画素Pの各行に対応してX方向に延在する複数の第1部分71と、画素Pの各列に対応してY方向に延在する複数の第2部分72とが交差した格子状に成形される。もっとも、補助配線70の形状は図4の例示に限定されない。例えば、X方向に延在する複数の第1部分71のみを含む形状としてもよい。
【0047】
補助配線70の第1部分71は、図2に示すように基板10に垂直な方向からみると、第2絶縁層42のコンタクトホールCHと重なり合う。さらに詳述すると、本実施形態の第1部分71は、X方向に延在するコンタクトホールCHの幅(Y方向の寸法)と略同一の幅またはこれよりも幅広に形成される。したがって、図2および図3に示すように、第1部分71は、基板10に垂直な方向からみてコンタクトホールCHの内周縁が包囲する領域(以下「開口領域」という)の全域と重なり合う。
【0048】
ところで、駆動トランジスタTdrのドレイン電極34の材料として採択され得る導電材料の多くは光反射性を有する。したがって、補助配線70が形成されない従来の構成においては、太陽光や照明光などの外光が観察側からドレイン電極34の表面に到達し、その表面における反射光(不要反射光)が観察側に出射する場合がある。そして、この不要反射光の特性と発光層66からの出射光の特性との相違に起因して、発光領域の面内における光量の均一性が損なわれるという問題がある。これに対し、本実施形態においては、遮光性の補助配線70がコンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように形成される。したがって、観察側からドレイン電極34に向かう外光は補助配線70の観察側の表面にて遮断される。また、仮に外光がドレイン電極34に到達したとしても、その表面における不要反射光は補助配線70の基板10側の表面にて遮断される。以上のように、本実施形態によれば不要反射光の観察側への出射が防止されるから、発光領域の面内における光量(輝度または階調)を均一化することができる。
【0049】
なお、本実施形態においては補助配線70がコンタクトホールCHと重なり合う構成を例示したが、以上の効果を実現するための構成としては、例えば、補助配線70とは別個の遮光性の物体(以下「遮光体」という)がコンタクトホールCHと重なり合うように形成された構成も考えられる。この構成において、補助配線70はコンタクトホールCHと重なり合わないように形成される(例えば図8や図11を参照)。しかしながら、この構成においては、コンタクトホールCHおよび補助配線70の双方の領域が発光に寄与しない領域(いわゆるデッドスペース)となるから、発光装置Dの開口率(画素Pが分布する発光領域のうち実際に光が出射する領域の占める比率)が制約されるという問題がある。これに対し、本実施形態においては、補助配線70がコンタクトホールCHの遮光体として兼用されるから、以上の構成と比較して開口率を増加させることができる。なお、本実施形態において開口率を増加させ得るということは、所期の光量を発光装置Dから放射するために発光層66に供給されるべき電気エネルギが低減されることを意味する。発光層66は高い電気エネルギが供給されるほど特性の劣化が促進されるから、本実施形態によれば、開口率の増加によって発光層66の寿命が長期化されると言うこともできる。
【0050】
また、駆動トランジスタTdrと第1電極61とを確実に導通させるためには、コンタクトホールCHの面積(すなわち第1電極61とドレイン電極34とが接触する面積)が充分に確保されることが望ましい。しかしながら、補助配線70とコンタクトホールCHとが重なり合わない構成のもとでコンタクトホールCHの面積を拡大すると、その拡大分だけ開口率が低下するという問題がある。これに対し、本実施形態においては、コンタクトホールCHと重なり合うように補助配線70が形成されるから、補助配線70によって被覆される領域の範囲内であればコンタクトホールCHの面積を拡大しても開口率は低下しない。したがって、本実施形態によれば、図2に示すようにX方向に長尺の形状とすることでコンタクトホールCHの面積を充分に確保することができ、この結果として駆動トランジスタTdrと第1電極61との接触部分での抵抗を低減することができる。
【0051】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に示す各形態の発光装置Dのうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその詳細な説明を適宜に省略する。
【0052】
図5は、本実施形態における画素Pの構成を示す平面図であり、図6は、図5におけるVI−VI線からみた断面図である。第1実施形態においては、コンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように補助配線70が形成された構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、図5および図6に示すように、コンタクトホールCHの開口領域のうち領域A1のみと重なり合うように補助配線70(第1部分71)が形成される。図6の領域A2は、開口領域のうち補助配線70と重なり合わない領域である。
【0053】
図6に示すように、本実施形態における発光装置Dは基板80を具備する。この基板80は、発光素子Eに対する外気や水分の付着を防止するための光透過性の板材であり、基板10のうち発光素子Eが配置された表面と対向するように配置される。基板80における基板10との対向面には遮光層81が形成される。この遮光層81は、黒色に着色された樹脂やクロムなどの金属といった遮光性の材料によって形成された膜体である。図5および図6に示すように、遮光層81は、基板10と垂直な方向からみて開口領域のうち領域A2と重なり合う部分を含む。本実施形態の遮光層81は、図4に例示した補助配線70と同様に各画素Pに対応した格子状に形成され、コンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように寸法および形状が選定されている。したがって、遮光層81は補助配線70の全域と重なり合う。さらに、本実施形態の遮光層81は、ドレイン電極34や補助配線70よりも光反射率が低い材料によって形成される。
【0054】
この構成によれば、ドレイン電極34の表面で反射して領域A2内を進行する不要反射光が遮光層81によって遮断される。したがって、補助配線70が領域A1のみを被覆するとは言っても、第1実施形態と同様の作用および効果は確かに奏される。
【0055】
さらに、本実施形態においては、補助配線70よりも光反射率が低い材料によって形成された遮光層81が補助配線70と重なり合う。この構成においては、観察側から補助配線70に向かう外光は遮光層81によって遮断される。また、外光が補助配線70に到達したとしても、その表面における反射光は遮光層81によって遮断される。したがって、光反射率が高い材料によって補助配線70が形成された場合であっても、この補助配線70の反射光に起因した発光領域内の光量のムラは抑制される。つまり、本実施形態によれば、ドレイン電極34および補助配線70の双方からの反射光(不要反射光)が観察側に出射するのを防止できる。
【0056】
<C:第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態における画素Pの構成を示す平面図であり、図8は、図7におけるVIII−VIII線からみた断面図である。第1実施形態および第2実施形態においては、基板10に垂直な方向からみて補助配線70がコンタクトホールCHと重なり合う構成を例示した。これに対し、図7および図8に示すように、本実施形態の補助配線70は開口領域とは重なり合わない。
【0057】
図8に示すように、本実施形態の絶縁部64は、コンタクトホールCHに入り込む部分からY方向の負側に連続して分布し、その画素Pに対してY方向の負側に隣接する他の画素Pの第1電極61の周縁と重なり合う。絶縁部64のうちコンタクトホールCHに重なり合わない部分641(コンタクトホールCHからみてY方向の負側の部分)は、第2絶縁層42の表面に分布するから、絶縁部64のうちコンタクトホールCHに重なり合う部分と比較して平坦である。図7および図8に示すように、補助配線70は、この部分641の表面(平坦面)上に形成される。また、第2電極62は補助配線70を被覆するように形成される。
【0058】
本実施形態においては、第2実施形態と同様に、基板80の表面に遮光層81が形成される。この遮光層81は、ドレイン電極34や補助配線70よりも光反射率が低い遮光性の材料によって形成される。図7および図8に示すように、基板10に垂直な方向からみると、遮光層81は、コンタクトホールCHおよび補助配線70の双方に重なり合う。したがって、本実施形態においても第1実施形態や第2実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0059】
ところで、コンタクトホールCHと重なり合うように形成された各要素(絶縁部64や第2電極62)の表面には、このコンタクトホールCHの形状(凹部)を反映した段差が現れる場合がある。したがって、これらの要素の面上に補助配線70が形成された構成においては、その表面の段差によって補助配線70が断線または剥離する可能性がある。これに対し、本実施形態においては、絶縁部64のうちコンタクトホールCHから外れた平坦な部分641の面上に補助配線70が形成される。したがって、補助配線70の断線や剥離を有効に防止することができる。
【0060】
<D:第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態における画素Pの構成を示す断面図である。本実施形態に係る画素Pの平面的な構造は図2と同様である。すなわち、図9は、図2におけるIII−III線からみた断面図に相当する。
【0061】
図9に示すように、本実施形態の発光装置Dにおいては、コンタクトホールCHを埋める絶縁部64が形成されない。そして、発光層66は、複数の画素Pにわたって連続に分布するように基板10の全域に形成される。なお、第1電極61は画素Pごとに相互に離間して形成される。したがって、発光層66が複数の画素Pにわたって連続するとは言っても、発光層66の光量は以上の各実施形態と同様に画素Pごとに個別に制御される。
【0062】
なお、第1実施形態から第3実施形態のように画素Pごとに発光層66が区分された構成においては、各発光層66の材料を適宜に選定することによって各画素Pによる発光色を相違させることが可能である。しかしながら、本実施形態のように発光層66が複数の画素Pにわたって連続する構成においては、発光層66の本来的な発光色を画素Pごとに相違させることができない。したがって、本実施形態の構成のもとで複数色からなる画像の表示を実現するためには、例えば各画素Pに対応するカラーフィルタを基板80(図9においては図示略)の表面に形成することが望ましい。
【0063】
図9に示すように、発光層66のうちコンタクトホールCHと重なり合う部分は、第1電極61の凹部611の内側(コンタクトホールCHの内側の空間)に入り込み、この凹部611の内周面と底面とに接触する。発光層66はコンタクトホールCHの外形の寸法と比較して充分に薄い膜厚に形成されるから、発光層66の表面には第1電極61の凹部611の段差を反映した凹部(窪み)が現れる。
【0064】
第2電極62の表面には、第1実施形態と同様に、基板10と垂直な方向からみてコンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように補助配線70(より詳細には第1部分71)が形成される。したがって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用および効果が奏される。さらに、本実施形態においては、各画素Pの発光層66をひとつの工程で一括的に形成することができ、しかも第1実施形態から第3実施形態のような絶縁部64を形成する必要もないから、以上の各形態と比較して製造工程の簡素化や製造コストの低減が実現される。
【0065】
ところで、図9に示すように、発光層66のうち第1電極61の凹部611の内周面を被覆する部分661は、それ以外の部分と同様に第1電極61と第2電極62との間に介在する。したがって、各発光素子Eの駆動に際しては部分661からも光(不要放射光)が出射する。しかしながら、この不要放射光の特性(光量や分光特性)はそれ以外の部分からの出射光の特性とは相違するから、不要放射光を観察側に出射させた場合には発光装置Dの発光の均一性が損なわれる。また、発光層66のうち部分661以外の部分からの出射光と部分661からの不要放射光とが相互に干渉し合い、この結果として観察側への出射光が特定の色味を呈する可能性もある。本実施形態においては、コンタクトホールCHと重なり合うように補助配線70が形成されるから、凹部611から観察側に向かう不要放射光が補助配線70によって遮断される。以上のように、本実施形態によれば、不要放射光および不要反射光の双方を遮断して発光領域における光量を均一化することができる。
【0066】
<E:第5実施形態>
図10は、本発明の第5実施形態における画素Pの構成を示す断面図である。本実施形態に係る画素Pの平面的な構造は図5と同様である。第4実施形態(図9)と同様に、本実施形態における発光層66は、複数の画素Pにわたって連続に分布するとともにコンタクトホールCHの内側の空間に入り込む。また、第2実施形態(図5・図6)と同様に、補助配線70は開口領域の領域A1のみと重なり合うように形成され、基板80の表面には開口領域の全域(領域A1および領域A2)と重なり合う遮光層81が形成される。したがって、本実施形態によれば、第2実施形態および第4実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0067】
なお、以上に説明したように、補助配線70からみて観察側に遮光層81が形成された構成によれば、補助配線70の表面で反射する外光の影響を低減することができる。もっとも、第4実施形態や第5実施形態のように発光層66がコンタクトホールCHに入り込む構成においては、例えば部分661からの不要放射光が、補助配線70の裏面(基板10側の表面)とドレイン電極342や反射層44との間で反射を繰返したうえで最終的には観察側に出射する可能性がある。この不要放射光の出射を防止するという観点からすると、補助配線70と発光層66との間(例えば図9や図10の補助配線70と第2電極62との間)に、補助配線70よりも光反射率の低い遮光体(換言すると補助配線70よりも光吸収率が高い遮光体)を配置した構成が好適に採用される。この構成によれば、発光層66の部分661から出射した不要放射光は補助配線70の裏面に到達しないから、補助配線70における不要放射光の反射に起因した発光のムラを確実に防止することができる。
【0068】
<F:第6実施形態>
図11は、本発明の第6実施形態における画素Pの構成を示す断面図である。本実施形態に係る画素Pの平面的な構造は図7と同様である。第4実施形態(図9)と同様に、本実施形態における発光層66は、複数の画素Pにわたって連続に分布するとともにコンタクトホールCHの内側の空間に入り込む。また、第3実施形態(図7・図8)と同様に、補助配線70は、発光層66のうちコンタクトホールCHとは重なり合わない部分の表面(平坦面)に形成され、基板80の表面にはコンタクトホールCHおよび補助配線70の双方と重なり合うように遮光層81が形成される。したがって、本実施形態によれば、第3実施形態および第4実施形態と同様の作用および効果が奏される。
【0069】
<G:第7実施形態>
図12は、本発明の第7実施形態に係る画素Pの構成を示す平面図であり、図13は、図12におけるXIII−XIII線からみた断面図である。図12および図13に示すように、基板10上の要素の構成は第6実施形態(図11)と同様である。一方、本実施形態の遮光層81は、開口領域の一部である領域A3と補助配線70とを被覆するように形成され、開口領域のうち領域A3以外の領域A4は被覆しない。
【0070】
図13に示すように、発光層66のうちコンタクトホールCHに重なり合う部分(特に凹部611の底面を被覆する部分)からの放射光の一部は、図13に矢印Lで示されるように領域A4を通過して観察側に出射する。したがって、本実施形態によれば、第6実施形態の構成と比較して、領域A4の分だけ開口率を増加させることができる。
【0071】
<H:第8実施形態>
図14は、本発明の第8実施形態に係る画素Pの構成を示す平面図であり、図15は、図14におけるXV−XV線からみた断面図である。以上の各形態においてはトップエミッション型の発光装置Dを例示した。これに対し、本実施形態の発光装置Dはボトムエミッション型である。すなわち、図15に示すように、以上の各形態にて説明した反射層44は形成されず、その代わりに第2電極62が光反射性の導電材料によって形成される。したがって、発光層66から基板10側に出射した光と発光層66から基板10とは反対側に出射して第2電極62の表面で反射した光とは、第1電極61や基板10を透過して図15の下方に出射する。
【0072】
本実施形態においても、第1実施形態や第2実施形態と同様に、ドレイン電極34よる反射光の出射を防止する遮光体として補助配線70が利用される。ただし、本実施形態においては発光層66からみて基板10側(図15の下方)が観察側となるから、図15に示すように、補助配線70はドレイン電極34と基板10との間に形成される。本実施形態の補助配線70は、基板10の全域にわたって形成された単一の導電膜のパターニングによって、ゲート電極242(さらには選択線11や交差部131)と同一の工程にて形成される。したがって、補助配線70はゲート電極242と同一の材料によって形成される。
【0073】
図14のように基板10に垂直な方向からみると、補助配線70はドレイン電極34(より詳細にはコンタクトホールCHの開口領域)と重なり合う。第2電極62は、図14に示すように、第1絶縁層41と第2絶縁層42とを貫通するコンタクトホールCH5を介して補助配線70に電気的に接続される。この構成によっても第1実施形態や第2実施形態と同様の作用および効果が奏される。例えば、本実施形態においては、観察側(図15の下方)からドレイン電極34に向かう外光やドレイン電極34の表面で反射して観察側に向かう不要反射光が補助配線70によって遮断されるから、発光領域の面内における光量を均一化することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の補助配線70はゲート電極242(さらには選択線11や交差部131)と同一の工程にて形成される。この構成によれば、補助配線70の形成のみに利用される導電膜の形成やそのパターニングが不要となるから、以上の各形態のように補助配線70が他の要素とは別個の工程にて形成される場合と比較して、製造工程の簡素化や製造コストの低減が実現される。また、本実施形態においては、発光層66や絶縁部64といった有機材料の面上に補助配線70を形成する必要がなく、さらにはゲート電極242と共通の低抵抗な導電性材料によって補助配線70が形成される。したがって、発光層66や絶縁部64の面上に補助配線70が形成された構成と比較して補助配線70の低抵抗化が容易であるという利点もある。
【0075】
なお、以上においてはボトムエミッション型の発光装置Dを例示したが、本実施形態はトップエミッション型にも適用される。このトップエミッション型の発光装置Dにおいては、第1電極61と基板10との間に反射層44が介挿され、第2電極62は光透過性の材料から形成される。この構成のもとでは、第1実施形態と同様に、補助配線70と重なり合う領域の範囲内であればコンタクトホールCHの面積を拡大しても開口率は低下しないから、コンタクトホールCHの面積を充分に確保して駆動トランジスタTdrと第1電極61との接触部分での抵抗を低減することができる。さらに、補助配線70が図14や図15のように第1電極61の下層に形成されたトップエミッション型の発光装置Dにおいては、例えば補助配線70が遮光性の材料によって形成された場合であっても、発光層66からの放射光が補助配線70によって遮断されることはない。したがって、開口率を向上することができるという利点がある。
【0076】
<I:第9実施形態>
以上の各形態においては、画素Pの各行および各列に対応した格子状の補助配線70(図4)を例示したが、補助配線70の具体的な形態は適宜に変更される。本実施形態においては、複数行や複数列に1本の割合で補助配線70が形成される。
【0077】
図16は、発光領域内に多数の発光素子Eが配列する様子を示す平面図であり、図17は、図16におけるXVII−XVII線からみた断面図である。なお、図16や図17においては、選択トランジスタTslや容量素子Cといった各要素の図示が適宜に省略されている。
【0078】
以上の各形態と同様に、第2絶縁層42の面上には、Y方向を長辺とする略長方形状の第1電極61がX方向およびY方向にわたってマトリクス状に形成される。第1電極61は、第2電極62よりも仕事関数が高い光反射性の導電材料によって形成される。この構成においては以上の各形態に係る反射層44が省略される。
【0079】
第1電極61が形成された第2絶縁層42の表面には絶縁部64が形成される。図16および図17に示すように、絶縁部64のうち第1電極61と重なり合う各領域には開口部641(絶縁部64を厚さ方向に貫通する孔)が形成される。図16に示すように、基板10に垂直な方向からみると開口部641の内周縁はその全周にわたって第1電極61の周縁(輪郭線)よりも内側に位置する。なお、以上のように第1電極61の周縁は実際には絶縁部64に覆われるが、図16においては第1電極61の外形が便宜的に実線で図示されている。
【0080】
図17に示すように、発光層66は、絶縁部64が形成された第2絶縁層42の全面を被覆するように複数の発光素子Eにわたって連続に形成される。すなわち、発光層66は、開口部641の内側に入り込んで第1電極61に対向する部分(すなわち実際に発光する部分)と絶縁部64の面上に位置する部分とを含む。
【0081】
図17に示すように、第2電極62は、複数の発光素子Eにわたって連続に形成されて発光層66と絶縁部64とを覆う導電膜である。すなわち、第2電極62は、開口部641の内側にて発光層66を挟んで第1電極61に対向する部分と絶縁部64の面上に位置する部分とを含む。図16および図17に示すように、第1電極61と第2電極62と発光層66との積層のうち基板10に垂直な方向からみて開口部641の内周縁の内側に位置する部分(すなわち第1電極61から第2電極62に電流が流れる領域)が発光素子Eである。発光層66のうち絶縁部64と重なり合う領域は、第1電極61と第2電極62との間に介在する絶縁部64によって電流が遮断されるから発光しない。すなわち、絶縁部64は、各発光素子Eの輪郭を画定する手段として機能する。
【0082】
図16および図17に示すように、絶縁部64(発光層66)と第2電極62との間にはX方向に延在する複数の補助配線70が形成される。本実施形態における補助配線70の具体的な態様は以下の通りである。なお、図16には、第i行から第(i+3)行までの各行に属する3列分の発光素子Eが図示されている。第i行および第(i+2)行は偶数行であり、第(i+1)行および第(i+3)行は奇数行である。
【0083】
図16に示すように、補助配線70は、偶数行の各発光素子EとそのY方向の正側に隣接する奇数行の各発光素子Eとの間隙S1(例えば第i行と第(i+1)行との間隙S1や第(i+2)行と第(i+3)行との間隙S1)に形成される。一方、奇数行の各発光素子EとそのY方向の正側に隣接する偶数行の各発光素子Eとの間隙S2に補助配線70は形成されない。すなわち、奇数行とそのY方向の正側に隣接する偶数行の2行を単位として発光領域を区分すると、Y方向に隣接する各単位の間隙S1には補助配線70が形成され、ひとつの単位に属する各行の間隙S2には補助配線70が存在しない。以上のように本実施形態においては、複数行(2行)ごとに1本の割合で補助配線70が形成される。
【0084】
各発光素子Eの第1電極61と駆動トランジスタTdrとを導通させるコンタクトホールCHは、当該発光素子Eからみて補助配線70側に形成される。したがって、発光素子Eとこれに対応したコンタクトホールCHとのY方向の配置は奇数行と偶数行とで反対となる。すなわち、偶数行においては発光素子EからみてY方向の正側にコンタクトホールCHが位置するのに対し、奇数行においては発光素子EからみてY方向の負側にコンタクトホールCHが位置する。
【0085】
補助配線70は、図16や図17に示すように絶縁部64の略全幅にわたって形成されて各発光素子Eの間隙S1を被覆し、第1実施形態や第2実施形態と同様にコンタクトホールCHと重なり合う。すなわち、補助配線70は、偶数行の各発光素子EのコンタクトホールCHとそのY方向の正側に隣接する奇数行の各発光素子EのコンタクトホールCHとに重なり合う。換言すると、補助配線70のうち幅方向におけるひとつの周縁(図16の上方の縁辺)は偶数行の各発光素子Eと各々に対応したコンタクトホールCHとの間隙に位置し、他方の周縁は奇数行の各発光素子Eと各々に対応したコンタクトホールCHとの間隙に位置する。
【0086】
補助配線70が形成される位置には製造技術上の理由から誤差が発生する場合がある。例えば、マスクを介した蒸着(詳細は後述する)によって補助配線70を形成する場合には、マスクの寸法の誤差や基板10とマスクとの位置合わせの誤差に起因して補助配線70が所期の位置(設計上の位置)とは相違する位置に形成される場合がある。補助配線70の位置に誤差がある場合でも補助配線70と発光素子Eとが基板10に垂直な方向からみて重複しない(すなわち開口率が低下しない)ように、補助配線70の設計上の位置とその幅方向の両側に隣接する発光素子Eとの各間隙にはスペース(以下「マージン領域」という)が確保される。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態においては2行ごとに1本の補助配線70が形成されるから、第1実施形態のように全行および全列の間隙に補助配線70が形成された構成(例えば図4の構成である。以下「対比構成」という)と比較して、発光領域のうち補助配線70が形成される領域やマージン領域の総面積が削減される。したがって、本実施形態によれば、開口率の維持と補助配線70の低抵抗化との両立が容易化されるという利点がある。すなわち、例えば開口率を対比構成と同等に維持するとすれば、補助配線70の本数や各々に対応するマージン領域の面積が削減された分だけ各補助配線70の線幅が対比構成よりも広く確保されるから、各補助配線70の抵抗を低減することが可能となる。さらに、本実施形態においては偶数行の各発光素子Eの配列とそのY方向の正側に隣接する奇数行の各発光素子Eの配列との間隙に両行に対応した多数のコンタクトホールCHが集中的に配列するから、補助配線70の線幅を増大させることによって補助配線70と各コンタクトホールCHとを容易に重ね合わせることができる。一方、各補助配線70の線幅を対比構成と同等に維持するとすれば、発光領域の全体に占める補助配線70やマージン領域の面積が削減される分だけ、各発光素子Eの面積を広く確保して対比構成よりも開口率を増加させることができる。さらに、発光領域から所期の光量を出射させるために各発光素子Eに供給すべき電気エネルギ(電流)は開口率の増加によって低減されるから、電気エネルギの供給に起因した劣化を抑制して発光素子Eが長寿命化されるという利点もある。
【0088】
次に、本実施形態に係る発光装置Dを製造する方法のうち補助配線70を形成する工程について説明する。本実施形態の補助配線70はマスクを利用した蒸着(真空蒸着)によって形成される。なお、補助配線70以外の要素の形成には公知である各種の技術が採用される。
【0089】
図18は、補助配線70を形成する工程を説明するための断面図(図17に対応する断面図)である。図18に示すように、補助配線70の形成に先立って蒸着用のマスク75が用意される。マスク75は、領域RAが開口するとともにそれ以外の領域RBを遮蔽する形状に形成される。領域RAは、補助配線70が形成される領域と対向するようにX方向に沿って延在するスリット状の領域である。すなわち、領域RAは、偶数行(第i行や第(i+2)行)とそのY方向の正側に隣接する奇数行(第(i+1)行や第(i+3)行)との間隙S1に対向する領域(より厳密には間隙S1からマージン領域を除外した領域)である。一方、領域RBは領域RB1と領域RB2とを含む。領域RB1は各発光素子Eに対向する領域である。領域RB2は、奇数行(第(i+1)行)とそのY方向の正側の偶数行(第(i+2)行)との間隙S2に対向する領域である。
【0090】
以上のマスク75を利用した蒸着によって補助配線70が形成される。すなわち、図18に示すように、発光層66が形成された段階(第2電極62の形成前)の発光装置Dが真空中に配置され、発光層66と対向するようにマスク75が配置される。そして、第2電極62よりも抵抗率が低い材料の蒸気Vを選択的に発光層66の表面に付着・堆積させることで補助配線70が図16の形状に形成される。
【0091】
本実施形態の発光装置Dにおいては発光素子Eの2行ごとに1本の補助配線70が形成されるから、図18に示すように、マスク75の領域RB2は開口させる必要がない。すなわち、対比構成のように全行の間隙に補助配線70を形成する場合(マスク75の領域RB2も領域RAと同等の幅寸法にわたって開口する場合)と比較して、マスク75の機械的な強度を維持することができる。したがって、マスク75の変形(例えば自重による撓み)に起因した補助配線70の誤差やマスク75の破損を有効に防止することができる。また、補助配線70の誤差が低減されるから、補助配線70をコンタクトホールCHに高精度かつ容易に重ね合わせることが可能となる。
【0092】
なお、図16においては補助配線70が発光素子Eの短辺(X方向)に沿って延在する構成を例示したが、図19に示すように、補助配線70が発光素子Eの長辺(Y方向)に沿って延在する構成も採用される。なお、図19においては、第j列から第(j+3)列までの各列に属する3行分の発光素子Eが図示されている。第j列および第(j+2)列は偶数列であり、第(j+1)列および第(j+3)列は奇数列である。
【0093】
図19に示すように、本実施形態においては複数列(2列)ごとに1本の補助配線70が形成される。すなわち、第j列と第(j+1)列との間隙S1および第(j+2)列と第(j+3)列との間隙S1にはY方向に延在する補助配線70が形成される一方、第(j+1)列と第(j+2)列との間隙S2に補助配線70は形成されない。また、各補助配線70はその幅方向の両側に位置する発光素子EのコンタクトホールCHと重なり合う。図19の構成によっても図16の構成と同様の作用および効果が奏される。
【0094】
各発光素子Eを経由した電流が補助配線70に流れ込むまでの区間の抵抗値(以下「陰極側抵抗」という)は、補助配線70が延在する方向に沿った発光素子Eの寸法W(図16および図19参照)に反比例する。図19の構成においては発光素子Eの長辺に沿って補助配線70が延在するから、発光素子Eの短辺に沿って補助配線70が延在する図16の構成と比較して寸法Wを拡大することができる。したがって、図19の構成によれば図16の構成と比較して陰極側抵抗が低減される。これによって第2電極62における電圧降下が抑制されるから、陰極側抵抗が高い場合と比較して、発光素子Eの駆動に必要な電源電位Vddを低下させることが可能となる。
【0095】
<J:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0096】
(1)以上の各形態においては基板80に遮光層81が形成された構成を例示したが、この遮光層81が形成される位置は適宜に変更される。例えば、第2電極62の表面上に遮光層81が形成された構成も採用される。また、第2電極62の表面に補助配線70が形成された構成(例えば第1、第2、第4、第5実施形態)においては補助配線70の表面上に遮光層81が形成されてもよい。
【0097】
(2)第2実施形態(図5・図6)や第5実施形態(図10)においては、コンタクトホールCHの開口領域のうち補助配線70によって被覆されない領域A2に遮光層81が重なり合う構成を例示したが、この構成における遮光層81は適宜に省略され得る。遮光層81が形成されない構成においては領域A2から不要反射光(第5実施形態においてはさらに不要放射光)が観察側に出射するが、領域A1における不要反射光や不要放射光は補助配線70によって遮光されるから、如何なる遮光体もコンタクトホールCHと重なり合わない従来の構成と比較すれば、発光領域における光量のムラが抑制されるという所期の効果は確かに奏される。
【0098】
また、第1実施形態(図2・図3)や第4実施形態(図9)のようにコンタクトホールCHの開口領域の全域と重なり合うように補助配線70が形成された構成であっても、不要反射光や不要放射光をさらに確実に防止するために、コンタクトホールCHと重なり合う部分を含む遮光層81が配置されてもよい。さらに、コンタクトホールCHの少なくとも一部と重なり合うように遮光層81が形成された構成(例えば第2、第3、第5、第6、第7実施形態)において、第2電極62における電圧降下が問題とならないのであれば、補助配線70は適宜に省略される。
【0099】
以上のように、本発明においては、基板10に垂直な方向からみてコンタクトホールCHと重なり合うように遮光性の物体(遮光体)が配置された構成であれば足り、この遮光体の具体的な形態(補助配線70であるか遮光層81であるか)や材料(例えば導電性であるか絶縁性であるか)の如何は不問である。もっとも、コンタクトホールCHに起因した光量のムラを確実に防止するという観点からすると、コンタクトホールCHよりも広い範囲にわたって遮光体を配置した構成が好適である。
【0100】
(3)第1実施形態から第3実施形態においては、絶縁部64と発光層66とが重なり合わない構成を例示したが、図20に示すように、発光層66が絶縁部64を覆う構成も採用される。この構成によれば、絶縁部64によってコンタクトホールCHが埋められた平坦面の面上に発光層66や第2電極62が形成されるから、コンタクトホールCHの段差に起因した発光層66や第2電極62の欠損や断線を防止することができる。また、第1実施形態から第3実施形態と同様に発光層66は凹部611の内側に入り込まないから、発光層66のうちコンタクトホールCHと重なり合う部分は絶縁部64を挟んで第1電極61から離間する(すなわち電流が流れない)。したがって、図20の構成によれば、図9から図13の構成のもとで問題となる不要放射光の発生を回避することができる。
【0101】
(4)第8実施形態においてはドレイン電極34による不要反射光の遮断のために補助配線70が利用される構成を例示したが、補助配線70以外の要素によって不要反射光を遮断してもよい。例えば、ドレイン電極34と基板10との間に補助配線70とは別個の遮光性の膜体が形成された構成としてもよい。この構成における補助配線70は、例えば第1実施形態と同様に第2電極62の面上に形成され得る。
【0102】
(5)以上の各形態の構成は適宜に組み合わされる。例えば、第3実施形態(図7・図8)において、第7実施形態(図12・図13)と同様に、コンタクトホールCHの開口領域のうち領域A4と重なり合わないように遮光層81を形成した構成としてもよい。
【0103】
(6)以上の各形態においては発光層66が有機EL材料によって形成される場合を例示したが、発光層66の材料は適宜に変更される。例えば無機EL材料によって発光層を形成することもできる。本発明における発光層は、電気エネルギの付与によって発光する発光材料によって形成されていれば足りる。
【0104】
<K:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図21は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子Eに有機EL材料を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0105】
図22に、何れかの形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0106】
図23に、何れかの形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに表示される。
【0107】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図21から図23に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【符号の説明】
【0108】
D……発光装置、P……画素、E……発光素子、10……基板、11……選択線、13……信号線、15……電源線、70……補助配線、40……ゲート絶縁層、41……第1絶縁層、42……第2絶縁層、44……反射層、61……第1電極、62……第2電極、66……発光層、64……絶縁部、641……開口部、80……基板、81……遮光層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面上に形成されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の面上に形成され、当該絶縁層のコンタクトホールを介して前記スイッチング素子に電気的に接続される第1電極と、
前記第1電極を挟んで前記基板とは反対側に形成された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に介在する発光層と、
前記絶縁層に対して前記発光層による放射光の出射側に配置され、前記基板に垂直な方向からみて前記コンタクトホールと重なり合う部分を含む遮光体と
を具備する発光装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、前記コンタクトホールを介して前記絶縁層から露出した部分が前記第1電極に接触する電極を含み、
前記遮光体は、前記スイッチング素子の前記電極よりも光反射率が低い材料によって形成される
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記遮光体は、前記第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて当該第2電極に電気的に接続される補助配線である
請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記補助配線は、前記基板に垂直な方向からみて、前記コンタクトホールの内周縁に包囲された領域の全域と重なり合う
請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記補助配線は、前記基板に垂直な方向からみて、前記コンタクトホールの内周縁に包囲された領域の一部と重なり合い、
前記コンタクトホールの内周縁に包囲された領域のうち前記補助配線と重なり合わない領域に重なり合う部分を含む遮光層をさらに具備する
請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されて当該第2電極に電気的に接続される補助配線を具備し、
前記遮光体は、前記基板に垂直な方向からみて前記補助配線と重なり合う
請求項1または請求項2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極と前記発光層とを各々が含む複数の発光素子を第1方向に配列した複数の素子群が前記第1方向と交差する第2方向に並列され、
前記補助配線は、前記複数の素子群のうち相互に隣接する第1の素子群と第2の素子群との間隙にて前記第1方向に延在し、前記第2の素子群に対して前記第1の素子群とは反対側に隣接する第3の素子群と前記第2の素子群との間隙には形成されない
請求項3から請求項6の何れかに記載の発光装置。
【請求項8】
絶縁材料によって形成されて前記コンタクトホールの内側の空間に入り込む絶縁部を具備し、
前記発光層は、前記コンタクトホールの内側の空間には入り込まない
請求項1から請求項7の何れかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記遮光体は所定の方向に延在し、
前記コンタクトホールは、前記基板に垂直な方向からみて前記所定の方向を長手とする形状に形成される
請求項1から請求項8の何れかに記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1電極は、前記発光層からの出射光を透過し、
前記スイッチング素子は、前記コンタクトホールを介して前記絶縁層から露出した部分が前記第1電極に接触する電極を含み、
前記遮光体は、前記スイッチング素子の前記電極よりも光反射率が低い材料によって前記スイッチング素子の前記電極と前記基板との間に形成されて当該電極に対向する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記遮光体は、前記第2電極よりも抵抗率が低い導電材料によって形成されるとともに前記絶縁層のコンタクトホールを介して前記第2電極に電気的に接続される補助配線である
請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記スイッチング素子は複数の電極を含み、
前記遮光体は、前記複数の電極の何れかと同一の材料によって形成される
請求項10または請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−164983(P2010−164983A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38480(P2010−38480)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【分割の表示】特願2006−88287(P2006−88287)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】