説明

発光装置および電子機器

【課題】駆動回路毎の発光素子の光量の誤差を低減する。
【解決手段】発光装置100は、複数の単位回路Uと、複数の単位回路Uを区分した回路群G[1]〜G[K]に対応する複数の駆動回路22[1]〜22[K]とを具備する。各単位回路Uは、駆動電流IDRの供給で発光する発光素子Eと、階調信号SA[n]に応じた電流値の駆動電流IDRを生成する駆動トランジスタTDRと、発光制御信号SB[k]が指定する時間長の発光期間にて駆動電流IDRを発光素子Eに供給する発光制御スイッチSW1とを含む。駆動回路22[k]は、回路群G[k]の各単位回路Uに対して、当該単位回路Uの階調データD1[n]と当該単位回路Uの補正値A[n]とに応じた階調信号SA[n]を出力する第1処理回路41と、当該回路群G[k]の補正値B[k]に応じた時間長を指定する発光制御信号SB[k]を出力する第2処理回路42とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence)素子などの発光素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の発光素子を配列した発光装置においては、発光素子の光量(階調)の誤差が問題となる。特許文献1や特許文献2には、発光素子に供給される駆動電流の電流値を各発光素子の実際の特性に応じて補正する技術が開示されている。また、特許文献1や特許文献3には、発光素子に駆動電流を供給する時間長を各発光素子の実際の特性に応じて補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−103914号公報
【特許文献2】特開2005− 81696号公報
【特許文献3】特開2005−103816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の駆動回路(例えばICチップ)を各発光素子の駆動に利用する場合がある。例えば、感光体ドラムなどの像担持体の露光のために電子写真方式の画像形成装置に利用される発光装置(光ヘッド)においては、直線状に配列された多数の発光素子を駆動する複数の駆動回路が各発光素子の配列に沿って配置される。
【0005】
しかし、以上のように複数の駆動回路を利用した構成では、駆動回路の特性や駆動回路に接続される配線の特性が駆動回路毎に相違する。したがって、各発光素子の光量が合致するように駆動電流を各発光素子の特性に応じて補正しても、実際の発光素子の光量が駆動回路毎に相違する可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、駆動回路毎の発光素子の光量の誤差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の発光装置は、複数の単位回路と、複数の単位回路を区分した各回路群に対応する複数の駆動回路と、単位回路毎に第1補正値を記憶する第1記憶手段と、回路群毎に第2補正値を記憶する第2記憶手段とを具備し、複数の単位回路の各々は、駆動電流の供給で発光する発光素子と、階調信号に応じた電流値の駆動電流を生成する駆動トランジスタと、発光制御信号が指定する時間長の発光期間にて発光素子に対する駆動電流の供給を制御する発光制御スイッチとを含み、複数の駆動回路の各々は、当該駆動回路に対応する回路群の各単位回路に対して、当該単位回路に指定された階調と当該単位回路の第1補正値とに応じた階調信号を出力する第1信号生成回路と、当該駆動回路に対応する回路群の各単位回路に対して、当該回路群の第2補正値に応じた時間長を指定する発光制御信号を出力する第2信号生成回路とを含む。
【0007】
以上の構成においては、単位回路毎の第1補正値に応じた駆動電流の電流値の補正に加えて、回路群毎(駆動回路毎)の第2補正値に応じた発光期間の時間長の補正が実行される。したがって、回路群内の各発光素子間の光量の誤差に加えて、各回路群間の発光素子の光量の誤差(すなわち、駆動回路毎の発光素子の光量の誤差)も低減することが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様において、複数の回路群のうちの一の回路群の単位回路と他の回路群の単位回路とに同じ階調が指定された場合に、発光素子の光量が一の回路群と他の回路群とで一致するように、一の回路群の第2補正値と他の回路群の第2補正値とは個別に設定される。以上の態様においては、各発光素子の光量を一の回路群と他の回路群とで充分に近似させる(理想的には合致させる)ことが可能である。なお、各発光素子の光量が「一致する」とは、各発光素子の光量が完全に一致する場合のほか、各発光素子の光量が実質的に一致する場合も含む。各発光素子の光量が完全には一致しない場合でも、発光装置が生成する画像の利用者に各発光素子の光量の相違が利用者に認識されない程度であれば、各発光素子の光量は実質的に一致すると言える。
【0009】
本発明の好適な態様において、第2記憶手段は、回路群毎に複数の第2補正値を記憶し、複数の第2補正値の何れかを回路群毎に選択する選択手段を具備し、複数の駆動回路の各々における第2信号生成回路は、当該駆動回路に対応する回路群について選択手段が選択した第2補正値に応じた時間長を指定する発光制御信号を出力する。以上の態様においては、発光制御信号の生成に適用される第2補正値が複数の候補から選択されるから、各発光素子の光量の大小を容易に制御できるという利点がある。
【0010】
本発明の好適な態様において、複数の駆動回路の各々は別個の集積回路で構成され、第1信号生成回路は、発光素子の点灯または消灯を指示する1ビットの第1階調データを、第1補正値を適用した補正で複数のビットの第2階調データに変換する補正回路と、補正回路による処理後の第2階調データから階調信号を生成するD/A変換器とを含む。以上の態様においては、駆動回路を構成する集積回路内で1ビットの第1階調データが複数のビットの第2階調データに変換されるから、外部で第2階調データを生成してから各駆動回路に供給する構成と比較して、駆動回路に対するデータの転送量を削減することが可能である。
【0011】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。本発明に係る電子機器の典型例は、以上の各態様に係る発光装置を感光体ドラムなどの像担持体の露光に利用した電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置は、露光で潜像が形成される像担持体と、像担持体を露光する本発明の発光装置と、像担持体の潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付加によって顕像を形成する現像器とを含む。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、発光素子を行列状に配列した発光装置は、パーソナルコンピュータや携帯電話機など各種の電子機器の表示装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置のブロック図である。
【図2】回路群および駆動回路のブロック図である。
【図3】第1処理回路による各発光素子の光量の補正について説明するための概念図である。
【図4】第1処理回路のブロック図である。
【図5】第2処理回路による各発光素子の光量の補正について説明するための概念図である。
【図6】第2処理回路のブロック図である。
【図7】第2実施形態における第2処理回路のブロック図である。
【図8】第2実施形態における発光素子の光量について説明するための概念図である。
【図9】第3実施形態に係る発光装置のブロック図である。
【図10】変形例に係る回路群および駆動回路のブロック図である。
【図11】電子機器(画像形成装置)の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置100のブロック図である。発光装置100は、像担持体を露光する露光装置(光ヘッド)として電子写真方式の画像形成装置に利用される。図1に示すように、発光装置100は、基板10の面上に形成されてX方向に配列する複数(K・N個)の単位回路Uと、各単位回路Uを駆動する駆動回路部20と、駆動回路部20を制御する制御回路30とを具備する(KおよびNは自然数)。
【0014】
複数の単位回路Uは、相隣接するN個を単位としてK個の回路群G[1]〜G[K]に区分される。駆動回路部20は、相異なる回路群G[k](k=1〜K)に対応するK個の駆動回路22[1]〜22[K]を含んで構成される。第k番目の駆動回路22[k]は、当該駆動回路22[k]に対応する回路群G[k]のN個の単位回路Uを駆動する。駆動回路22[1]〜22[K]は、集積回路(ICチップ)の形態で基板10の面上に実装される。ただし、基板10の面上に各単位回路Uとともに形成された能動素子(例えば薄膜トランジスタ)でK個の駆動回路22[1]〜22[K]を構成した態様も採用される。
【0015】
図2は、回路群G[1]〜G[K]および駆動回路22[1]〜22[K]のブロック図である。図2では第k番目の回路群G[k]および駆動回路22[k]が代表的に図示されている。図2に示すように、回路群G[k]の各単位回路Uは、発光素子Eと駆動トランジスタTDRと発光制御スイッチSW1と選択スイッチSW2とを含んで構成される。駆動トランジスタTDRと発光制御スイッチSW1と選択スイッチSW2とは、例えば基板10の面上に形成された任意の導電型の薄膜トランジスタで構成される。
【0016】
発光素子Eは、駆動電流IDRの供給で発光する。陽極と陰極との間に有機EL材料の発光層を介在させた有機EL素子が発光素子Eとして好適に採用される。駆動トランジスタTDRは、駆動電流IDRの電流値を自身のゲートの電位に応じて制御する。
【0017】
発光制御スイッチSW1は、駆動電流IDRの経路上(図2では駆動トランジスタTDRと発光素子Eとの間)に配置され、発光素子Eに対する駆動電流IDRの供給の可否を制御する。回路群G[k]内のN個の単位回路Uの各々における発光制御スイッチSW1のゲートは共通の制御線14[k]に接続される。選択スイッチSW2は、駆動トランジスタTDRのゲートと信号線12[k]との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。信号線12[k]および制御線14[k]は回路群G[k]毎(駆動回路22[k])毎)に形成される。
【0018】
図2に示すように、駆動回路22[1]〜22[K]の各々は、第1処理回路41と第2処理回路42と選択回路44とを含んで構成される。駆動回路22[k]の第1処理回路41は、回路群G[k]のN個の単位回路Uの各々の階調を指定する階調信号SA[1]〜SA[N]を信号線12[k]に時分割で出力する。
【0019】
選択回路44は、回路群G[k]のN個の単位回路Uの各々における選択スイッチSW2のゲートに選択信号SEL[1]〜SEL[N]を供給する。選択信号SEL[1]〜SEL[N]は所定の順番で択一的にアクティブレベルに設定される。具体的には、回路群G[k]のうち第n番目の単位回路Uに供給される選択信号SEL[n]は、信号線12[k]に階調信号SA[n]が供給される期間にてアクティブレベル(選択スイッチSW2を導通させるレベル)に設定される。したがって、回路群G[k]の第n番目の単位回路Uにおける駆動トランジスタTDRのゲートには、信号線12[k]と当該単位回路Uの選択スイッチSW2とを介して階調信号SA[n]が供給される。すなわち、第n番目の単位回路Uの発光素子Eは、階調信号SA[n]に応じた輝度で発光する。
【0020】
図3の部分(A)における特性FA1は、階調信号SA[1]〜SA[N]を共通の電位に設定した場合に駆動トランジスタTDRが生成する駆動電流IDRを所定の時間長にわたって供給した場合の各発光素子Eの光量(すなわち、輝度の時間積分値に相当する発光パワー)を意味する。各発光素子Eの電気的または光学的な特性には誤差が存在するから、階調信号SA[1]〜SA[N]を共通の電位に設定した場合でも、特性FA1に示すように各発光素子Eの光量は完全には合致しない。そこで、図2の第1処理回路41は、以下に詳述するように、共通の階調が指定された場合の各発光素子Eの光量が回路群G[k]内のN個の単位回路Uで近似する(理想的には合致する)ように階調信号SA[1]〜SA[N]を生成する。
【0021】
図4は、駆動回路22[1]〜22[K]の各々における第1処理回路41のブロック図である。図4においては第k番目の駆動回路22[k]の第1処理回路41が代表的に図示されている。図1および図4に示すように、駆動回路22[k]の第1処理回路41には、回路群G[k]のN個の単位回路Uの階調を指定する階調データD1[1]〜D1[N]が制御回路30から順次に供給される。1個の単位回路Uの階調データD1[n]は、当該単位回路U内の発光素子Eの点灯または消灯を指示する1ビットのデータである。
【0022】
図4に示すように、駆動回路22[1]〜22[K]の各々の第1処理回路41は、記憶回路52と信号生成回路54とを含んで構成される。駆動回路22[k]における第1処理回路41の記憶回路52は、回路群G[k]のN個の単位回路Uに対応するN個の補正値A[1]〜A[N]の集合(ルックアップテーブル)を記憶する。補正値A[1]〜A[N]を書換え可能に記憶する記録媒体(例えばEEPROM)が記憶回路52として好適であるが、書換え不能な記録媒体も記憶回路52として採用され得る。
【0023】
図4の信号生成回路54は、階調データD1[n]と補正値A[n]とに応じて階調信号SA[n]を生成する。図4に示すように、信号生成回路54は、補正回路542とD/A変換器544とを含んで構成される。補正回路542は、補正値A[n]を利用した階調データD1[n]の補正で階調データD2[n]を生成する。階調データD2[n]は、駆動電流IDRの電流値(階調信号SA[n]の電位)を複数のビット(例えば10ビット)で指定するデータである。具体的には、補正回路542は、階調データD1[n]が発光素子Eの点灯を指示する場合には補正値A[n]を階調データD2[n]として出力し、階調データD1[n]が発光素子Eの消灯を指示する場合には最低の階調値を指定する階調データD2[n](例えば、駆動電流IDRの電流値をゼロに設定する数値)を出力する。D/A変換器544は、階調データD2[1]〜D2[N]を順次にD/A変換することで階調信号SA[1]〜SA[N]を生成して信号線12[k]に出力する。
【0024】
図3の部分(B)における特性FA2は、補正値A[1]〜A[N]を利用した補正後の階調信号SA[1]〜SA[N]を各単位回路Uに供給したときの各発光素子Eの光量を意味する。図3の部分(B)には部分(A)の特性FA1が破線で併記されている。特性FA2に示すように、補正値A[1]〜A[N]の各々は、同じ階調(点灯)を指定する階調データD1[1]〜D1[N]の補正後の階調データD2[1]〜D2[N](階調信号SA[1]〜SA[N])に応じた駆動電流IDRを相等しい時間長にわたって回路群G[k]のN個の発光素子Eに供給した場合に、N個の発光素子Eの光量が目標値LAに近似する(理想的には合致する)ように、各発光素子Eの電流と光量との関係に応じて実験的または統計的に選定される。例えば、所定の電流値の駆動電流IDRを供給したときの光量が小さい発光素子Eの補正値A[n]ほど大きい数値(すなわち、駆動電流IDRの電流値を増加させる数値)に設定される。補正値A[k]〜A[N]は、回路群G[1]〜G[K]の各々について個別に設定されたうえで駆動回路22[1]〜22[K]の各々の記憶回路52に格納される。
【0025】
以上のように補正値A[1]〜A[N]を適用した駆動電流IDRの電流値の補正で、回路群G[k]内のN個の単位回路Uの発光素子Eについては光量の差異(バラツキ)を充分に抑制することが可能である。しかし、駆動回路22[1]〜22[N]の各々における回路や配線の電気的な特性には誤差が存在する。例えば、D/A変換器544が階調信号SA[1]〜SA[N]の生成に使用する基準電位は各駆動回路22[k]の位置(基準電位が供給される経路長)に応じて駆動回路22[1]〜22[N]の各々で相違し得る。したがって、回路群G[k]内のN個の発光素子Eの光量が第1処理回路41による補正で充分に均一化されたとしても、図5の部分(A)における特性FB1に示すように、発光素子Eの光量は回路群G[1]〜G[K]の各々で相違する可能性がある。そこで、本実施形態においては、発光素子Eに駆動電流IDRを供給する期間(以下「発光期間」という)の時間長を回路群G[k]毎に個別に調整することで、回路群G[1]〜G[K]の各々における発光素子Eの光量の誤差を低減する。図2の駆動回路22[k]における第2処理回路42は、以下に詳述するように、自身に対応する回路群G[k]の発光期間の時間長を他の回路群G[k]から独立して調整する。
【0026】
図2に示すように、駆動回路22[k]の第2処理回路42は、発光制御信号SB[k]を制御線14[k]に供給する。したがって、回路群G[k]のN個の単位回路Uの各々における発光制御スイッチSW1のゲートには信号線12[k]から共通の発光制御信号SB[k]が供給される。発光制御信号SB[k]がアクティブレベルに設定されることで発光制御スイッチSW1がオン状態に遷移すると、回路群G[k]のN個の発光素子Eに駆動電流IDRが供給される。他方、発光制御信号SB[k]が非アクティブレベルに設定されることで発光制御スイッチSW1がオフ状態に遷移すると、回路群G[k]のN個の発光素子Eに対する駆動電流IDRの供給が停止する。
【0027】
以上のように、回路群G[k]のN個の発光素子Eの各々には、発光制御信号SB[k]のパルス幅(デューティ比)に応じた時間長の発光期間にて駆動電流IDRが供給される。つまり、発光制御信号SB[k]は、回路群G[k]の各発光素子Eの発光期間の時間長を指定する信号として機能する。発光期間は、選択回路44によるN個の単位回路Uの選択から次回の選択の開始までの期間内に設定される。
【0028】
図6は、駆動回路22[1]〜22[K]の各々における第2処理回路42のブロック図である。図6においては第k番目の駆動回路22[k]の第2処理回路42が代表的に図示されている。図1および図6に示すように、制御回路30は、相異なる回路群G[k]に対応するK個の補正値B[1]〜B[K]を順次に駆動回路22[1]〜22[K]の各々に供給する。制御回路30による補正値B[1]〜B[K]の供給は、例えば発光装置100の電源が投入された直後に実行される。
【0029】
図6に示すように、駆動回路22[1]〜22[K]の各々の第2処理回路42は、記憶回路62と信号生成回路64とを含んで構成される。駆動回路22[k]の第2処理回路42の記憶回路62は、制御回路30から供給される補正値B[k]を記憶する。書換え可能な記録媒体が記憶回路62として好適であるが、補正値B[k]を書換え不能に記憶する記録媒体を記憶回路62として採用することも可能である。
【0030】
信号生成回路64は、補正値B[k]に応じたパルス幅(デューティ比)の発光制御信号SB[k]を生成する。したがって、回路群G[k]内のN個の発光素子Eの各々には、補正値B[k]に応じた時間長の発光期間にわたって駆動電流IDRが供給される。発光素子Eの光量は駆動電流IDRの電流値(発光素子Eの輝度)と発光期間の時間長とで決定されるから、各発光素子Eの光量は、補正値B[1]〜B[K]に応じて回路群G[k]毎に個別に調整される。
【0031】
図5の部分(B)における特性FB2は、補正値A[1]〜A[N]に応じた駆動電流IDRの電流値の補正に加えて、補正値B[1]〜B[K]に応じた発光期間の時間長の補正を実行したときの各発光素子Eの光量を意味する。図5の部分(B)には、部分(A)の特性FB1(補正値A[1]〜A[N]に応じた駆動電流IDRの電流値の補正のみを実行した場合)が破線で併記されている。特性FB2に示すように、補正値B[1]〜B[K]の各々は、回路群G[k]の各単位回路Uに同じ階調(点灯)が指定されたときの各発光素子Eの光量がK個の回路群G[1]〜G[K]で目標値LBに近似する(理想的には合致する)ように、例えば駆動回路22[1]〜22[K]の各々に関する電気的な特性に応じて実験的または統計的に選定される。所定の電位の階調信号SA[n]を供給したときの各発光素子Eの光量が小さい回路群G[k]の補正値B[k]ほど大きい数値(すなわち、発光期間の時間長を増加させる数値)に設定される。
【0032】
以上の形態においては、単位回路U毎の補正値A[k](A[1]〜A[N])に応じた駆動電流IDRの電流値の補正に加えて、回路群G[k]毎の補正値B[k](B[1]〜B[K])に応じた発光期間の時間長の補正が実行される。したがって、回路群G[K]内の各発光素子E間の光量の誤差だけではなく、各回路群G[k]間の発光素子Eの光量の誤差(すなわち、駆動回路22[k]毎の発光素子Eの光量の誤差)も低減することが可能である。
【0033】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0034】
図7は、駆動回路22[k]における第2処理回路42のブロック図である。図7に示すように、記憶回路62は、回路群G[k]について複数の補正値B[k](B1[k],B2[k],……)を記憶する。すなわち、駆動回路部20の全体では回路群G[1]〜G[K]の各々について複数の第2補正値B[k]が保持される。選択回路66は、記憶回路62に格納された複数の補正値B[k](B1[k],B2[k],……)の何れかを制御回路30からの指示に応じて選択する。信号生成回路64は、選択回路66が選択した補正値B[k]に応じたパルス幅(デューティ比)の発光制御信号SB[k]を生成して制御線14[k]に出力する。
【0035】
制御回路30は、例えば、画像形成装置による画像の形成に影響する各種の要因に応じて選択回路66に補正値B[k]を指示する。画像の形成に影響する要因としては、例えば、画像形成装置による画像形成の速度(印刷品質),画像形成に使用される用紙の種類,画像の濃度,または画像形成装置が動作する環境の温度などがある。例えば、制御回路30は、以上の条件を指定する利用者からの操作に応じて回路群G[1]〜G[K]の各々について補正値B[k]を指示する。
【0036】
以上のように、選択回路66が選択した補正値B[k]に応じて発光制御信号SB[1]〜SB[K]の各々のパルス幅(素子群G[1]〜G[K]の各々の発光期間)が設定されるから、各発光素子Eに同じ階調(点灯)が指示された場合の各発光素子Eの光量は可変に制御される。例えば、図8に示すように、用紙Aの使用時には各回路群G[k]の発光素子Eの光量が目標値L1に設定され、用紙Aとは性質が異なる用紙Bの使用時には各回路群G[k]の発光素子Eの光量が目標値L2に設定されるという具合である。
【0037】
以上の形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。更に、各回路群G[k]の発光期間の時間長の選定に複数の補正値B[k]が選択的に適用されるから、実際の使用の条件に適した画像形成が可能となる。なお、画像形成の条件に応じて各発光素子Eの光量を可変に制御するという作用は、例えば第1処理回路41の記憶回路52に格納された補正値A[1]〜A[N]を可変に制御するという構成(以下「対比例」という)でも実現される。しかし、対比例においては、単位回路U毎のN個の補正値A[1]〜A[N]の集合を画像形成の複数の条件の各々について記憶回路52に保持する必要があるから、記憶回路52に必要な容量が増大するという問題がある。第2実施形態においては、発光期間の時間長(発光制御信号SB[k]のパルス幅)を指定する複数の補正値B[k]が回路群G[k]毎に記憶回路62に保持されるから、対比例と比較して駆動回路部20に必要な記憶容量を削減できる(更には駆動回路部20の規模が縮小される)という利点がある。
【0038】
<C:第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る発光装置100のブロック図である。制御回路30は、記憶回路32と補正回路34とを含んで構成される。記憶回路32は、K個の回路群G[1]〜G[K]の各々についてN個の補正値A[1]〜A[N]を記憶する。つまり、記憶回路32は、第1実施形態におけるK個の駆動回路22[1]〜22[K]の記憶回路52を併合した要素に相当する。
【0039】
補正回路34は、K個の回路群G[1]〜G[K]の各々について、階調データD1[1]〜D1[N]と記憶回路32内の当該回路群G[k]の補正値A[1]〜A[N]とから階調データD2[1]〜D2[N]を生成する。階調データD1[k]と補正値A[k]とから階調データD2[k]を生成する方法は第1実施形態の補正回路542と同様である。回路群G[k]に対応する補正後の階調データD2[1]〜D2[N]は駆動回路22[k]の第1処理回路41に供給される。駆動回路22[k]の第1処理回路41は、階調データD2[n]のD/A変換で階調信号SA[n]を生成する。第2処理回路42の構成や動作は第1実施形態と同様である。
【0040】
以上の構成においては、駆動回路22[1]〜22[K]の各々における第1処理回路41に図4の記憶回路52や補正回路542が不要となるから、駆動回路部20の規模の縮小や構成の簡素化が実現されるという利点がある。なお、第3実施形態においては複数のビットの階調データD2[n]を制御回路30から各駆動回路22[k]に転送する必要があるのに対し、第1実施形態において制御回路30から各駆動回路22[k]に転送されるのは1ビット(点灯/消灯)の階調データD1[n]である。したがって、制御回路30から各駆動回路22[k]へのデータの転送量を削減する(更には確実な転送を可能にする)という観点からすると、第3実施形態よりも第1実施形態が好適である。また、以上においては第1実施形態を基礎として第3実施形態を説明したが、複数の補正値B[k]を選択的に適用する第2実施形態の構成は第3実施形態にも同様に適用される。
【0041】
<D:変形例>
以上の各形態には様々な変形が加えられる。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は併合され得る。
【0042】
(1)変形例1
第1実施形態および第2実施形態においては、駆動回路22[1]〜22[K]の各々に独立して記憶回路52を配置したが、複数(K・N個)の単位回路Uの各々の補正値A[n]を単一の記憶回路に格納した構成も採用される。駆動回路22[1]〜22[K]の各々における第1処理回路41の補正回路542は、当該記憶回路内の補正値A[n]を利用して階調信号SA[n]を生成する。同様に、回路群G[1]〜G[K]の補正値B[1]〜B[K]を単一の記憶回路に格納した構成も採用される。各駆動回路22[k]における第2処理回路42の信号生成回路64は、当該記憶回路に格納された補正値B[k]に応じた発光制御信号SB[k]を生成する。以上の例示から理解されるように、記憶回路52や記憶回路62が回路群G[k]毎(駆動回路22[k]毎)に独立に配置された構成は本発明において必須ではない。
【0043】
(2)変形例2
以上の各形態においては回路群G[k]のN個の単位回路Uに対して階調信号SA[1]〜SA[N]を時分割で供給したが、図10に示すように、駆動回路22[k]の第1処理回路41が回路群G[k]のN個の単位回路Uに対して並列に階調信号SA[1]〜SA[N]を出力する構成も採用される。図10の構成においては、図2の選択スイッチSW2が単位回路Uから省略される。
【0044】
(3)変形例3
以上の各形態においては、画像形成装置の露光装置として好適な発光装置100を例示したが、複数の単位回路U(発光素子E)を行列状に配列した発光装置を表示装置として利用することも可能である。駆動回路22[k]の第2処理回路42は、行単位で発光制御信号SB[k]を生成して各行の単位回路Uの発光制御スイッチSW1に出力する。
【0045】
(4)変形例4
補正値A[1]〜A[N]を適用した補正の方法は以上の例示に限定されない。例えば、階調データD1[n]と補正値A[n]とを適用した所定の演算(例えば、階調データD1[n]と補正値A[n]との加減算や乗除算)で補正後の階調データD2[n]を生成する構成が採用される。したがって、階調データD1[n]は、点灯および消灯の何れかを指定する1ビットである必要はなく、複数の階調の何れかを指定する複数のビットでも構成され得る。
【0046】
(5)変形例5
第2実施形態においてはK個の駆動回路22[1]〜22[K]の各々に選択回路66を設置したが、選択回路66の処理を制御回路30が担当する構成も好適である。すなわち、制御回路30は、K個の回路群G[1]〜G[K]の各々について複数の補正値B[k](B1[k],B2[k],……)を記憶し、複数の補正値B[k](B1[k],B2[k],……)の何れかを回路群G[k]毎に駆動回路22[k]の第2処理回路42に指示する。第2処理回路42の信号生成回路64は、第1実施形態と同様に、制御回路30から指示された補正値B[k]に応じた発光制御信号SB[k]を生成する。以上の例示から理解されるように、本発明における「選択手段」は、第2実施形態にて駆動回路22[k]毎に設置されたK個の選択回路66の集合と、変形例5における制御回路30のうち回路群G[k]毎に補正値B[k]を選択する要素との双方を含む概念である。
【0047】
(6)変形例6
有機EL素子は発光素子Eの例示に過ぎない。例えば、無機EL素子やLED(Light Emitting Diode)素子などの発光素子を利用した発光装置にも以上の各形態と同様に本発明が適用される。すなわち、本発明における発光素子は、電気エネルギの供給で発光する被駆動素子(典型的には電流駆動型の自発光素子)として包括される。
【0048】
<E:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図11は、以上の各形態の発光装置100を露光装置として利用した電子機器(画像形成装置)の模式図である。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の各形態に係る4個の発光装置100(100K,100C,100M,100Y)と、各発光装置100に対応する4個の感光体ドラム70(70K,70C,70M,70Y)とを具備する。各発光装置100は、当該発光装置100に対応した感光体ドラム70の被露光面70A(外周面)と対向するように配置される。なお、各符号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0049】
図11に示すように、駆動ローラ711と従動ローラ712とには無端の中間転写ベルト72が巻回される。4個の感光体ドラム70は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベルト72の周囲に配置される。各感光体ドラム70は、中間転写ベルト72の駆動に同期して回転する。
【0050】
各感光体ドラム70の周囲には、発光装置100のほかにコロナ帯電器731(731K,731C,731M,731Y)と現像器732(732K,732C,732M,732Y)とが配置される。コロナ帯電器731は、これに対応する感光体ドラム70の被露光面70Aを一様に帯電させる。この帯電した被露光面70Aを各発光装置100が露光することで静電潜像が形成される。各現像器732は、静電潜像に現像材(トナー)を付着させることで感光体ドラム70に顕像(可視像)を形成する。
【0051】
以上のように感光体ドラム70に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)の顕像が中間転写ベルト72の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの顕像が形成される。中間転写ベルト72の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)74(74K,74C,74M,74Y)が配置される。各一次転写コロトロン74は、これに対応する感光体ドラム70から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム70と一次転写コロトロン74との間隙を通過する中間転写ベルト72に顕像を転写する。
【0052】
用紙(記録材)75は、ピックアップローラ761によって給紙カセット762から1枚ずつ給送され、中間転写ベルト72と二次転写ローラ77との間のニップに搬送される。中間転写ベルト72の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ77によって用紙75の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対78を通過することで用紙75に定着される。排紙ローラ対79は、以上の工程を経て顕像が定着された用紙75を排出する。
【0053】
以上に例示した画像形成装置は有機EL素子を光源として利用しているので、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した以外の構成の画像形成装置にも発光装置100を適用することができる。例えば、ロータリ現像式の画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラム70から用紙に対して直接的に顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装置にも発光装置100を利用することが可能である。
【0054】
なお、発光素子Eを行列状に配列した発光装置は、各種の電子機器の表示装置としても利用される。本発明が適用される電子機器としては、例えば、可搬型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器などがある。
【符号の説明】
【0055】
100……発光装置、10……基板、12[k]……信号線、14[k]……制御線、20……駆動回路部、22[1]〜22[K]……駆動回路、30……制御回路、G[1]〜G[K]……回路群、U……単位回路、E……発光素子、TDR……駆動トランジスタ、SW1……発光制御スイッチ、SW2……選択スイッチ、41……第1処理回路、42……第2処理回路、44……選択回路、32,52,62……記憶回路、54……信号生成回路、542,34……補正回路、544……D/A変換器、64……信号生成回路、66……選択回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位回路と、
前記複数の単位回路を区分した各回路群に対応する複数の駆動回路と、
前記単位回路毎に第1補正値を記憶する第1記憶手段と、
前記回路群毎に第2補正値を記憶する第2記憶手段とを具備し、
前記複数の単位回路の各々は、
駆動電流の供給で発光する発光素子と、
階調信号に応じた電流値の前記駆動電流を生成する駆動トランジスタと、
発光制御信号が指定する時間長の発光期間にて前記発光素子に対する前記駆動電流の供給を制御する発光制御スイッチとを含み、
前記複数の駆動回路の各々は、
当該駆動回路に対応する前記回路群の前記各単位回路に対して、当該単位回路に指定された階調と当該単位回路の前記第1補正値とに応じた階調信号を出力する第1信号生成回路と、
当該駆動回路に対応する前記回路群の前記各単位回路に対して、当該回路群の前記第2補正値に応じた時間長を指定する前記発光制御信号を出力する第2信号生成回路とを含む
発光装置。
【請求項2】
前記複数の回路群のうちの一の回路群の単位回路と他の回路群の単位回路とに同じ階調が指定された場合に、前記発光素子の光量が前記一の回路群と前記他の回路群とで一致するように、前記一の回路群の第2補正値と前記他の回路群の第2補正値とは個別に設定される
請求項1の発光装置。
【請求項3】
前記第2記憶手段は、前記回路群毎に複数の第2補正値を記憶し、
前記複数の第2補正値の何れかを回路群毎に選択する選択手段を具備し、
前記複数の駆動回路の各々における前記第2信号生成回路は、当該駆動回路に対応する回路群について前記選択手段が選択した第2補正値に応じた時間長を指定する前記発光制御信号を出力する
請求項1または請求項2の発光装置。
【請求項4】
前記複数の駆動回路の各々は別個の集積回路で構成され、
前記第1信号生成回路は、
前記発光素子の点灯または消灯を指示する1ビットの第1階調データを、前記第1補正値を適用した補正で複数のビットの第2階調データに変換する補正回路と、
前記補正回路による処理後の第2階調データから前記階調信号を生成するD/A変換器とを含む
請求項1から請求項3の何れかの発光装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかの発光装置を具備する電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−258065(P2010−258065A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103710(P2009−103710)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】