発光装置及び電子機器
【課題】視野角の違いによって発生する色ずれを抑制することができる発光装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】発光層40から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置1において、複数の発光素子21には、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子21が含まれ、複数の発光素子21から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子21の基板20Aの法線方向から見て発光層40と重なる領域に着色層37Bが設けられ、着色層37Bは、発光層40と重なる領域の中央部に設けられた第1着色層37Baと、発光層40と重なる領域の周辺部に設けられた第2着色層37Bbと、を有し、第2着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されている。
【解決手段】発光層40から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置1において、複数の発光素子21には、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子21が含まれ、複数の発光素子21から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子21の基板20Aの法線方向から見て発光層40と重なる領域に着色層37Bが設けられ、着色層37Bは、発光層40と重なる領域の中央部に設けられた第1着色層37Baと、発光層40と重なる領域の周辺部に設けられた第2着色層37Bbと、を有し、第2着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された発光装置のニーズが高まっている。この様な発光装置の一つとして、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、「有機EL装置」という)が知られている。このような有機EL装置は、陽極(第1電極)と陰極(第2電極)との間に発光層を有する発光素子を備えたものが一般的である。さらに、正孔注入性や電子注入性を向上させるために、陽極と発光層との間に正孔注入・輸送層を配置した構成や、発光層と陰極との間に電子注入層やホールブロック層を配置した構成が提案されている。
【0003】
ところで、上述した有機EL装置は、発光層から取り出される光のスペクトルのピーク幅が広く、発光輝度も小さいため、表示装置に適用した場合に、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、基板と陽極との間に形成された光反射層と、発光層の射出側に形成された半透過反射性を有する陰極と、を備え、光反射層と陰極との間で、発光層から射出された光を共振させる光共振構造を設ける構造が提案されている。
この構成によれば、発光層から射出された光は、光反射層と陰極との間で往復し、その光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。このため、輝度特性が高く、スペクトル幅が狭いシャープな光を取り出すことができるとされている。
【0004】
しかしながら、上述した光共振器構造を採用した有機EL装置では、スペクトル幅が狭くなると、表示面を斜めから見た場合、つまり視野角が大きくなるにつれ光の波長が短波長側にシフトしたり、発光輝度が低下したりする等、発光特性の視野角依存性が高いという問題がある。
そこで、例えば特許文献1に示すように、発光層から射出された光の光学的距離を最適化することで、ある程度のスペクトル幅を有するように共振させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/039554号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、有機EL装置の高品質化に伴い、視野角特性の更なる向上が要求されている。
図10は、従来における発光輝度の視野角特性を示すグラフである。なお、図10において、上半部における縦軸の0°が観察者の視覚方向の正面(表示面の法線方向)、つまり視野角0°を示している。また、発光輝度は視野角0°の位置での発光輝度を100%とした場合における割合で示しており、中心Oを0%、最外周を100%として同心円上に示している。
図10に示すように、上記従来技術では、赤色光、緑色光、青色光の各色ともに視野角0°の位置で発光輝度が最大となるように光学的距離が最適化されており、視野角0°において、最適な白色光Wが射出されるようになっている。そして、視野角が大きくなるにつれ、各色R,G,Bともに発光輝度が減衰している。つまり、視野角が大きくなるにつれ、光学的距離が最適条件からずれて長くなり、取り出したい光が最適な共振波長の条件で射出されなくなる。これにより、取り出される光のスペクトルのピーク波長が短波長側にシフトする。
【0007】
図11は、従来における色度の視野角特性を示す色度図であり、図中実線は、視野角が0°〜80°まで変化した場合におけるスペクトルのピーク波長の変化を示している。
図11に示すように、上記従来技術では、赤色光、緑色光、青色光の各色ともに視野角0°の位置(図11中符号R1’,G1’,B1’)において、最適な色度で射出されるように設定され、白色光(図11中符号W1’)が表示されるようになっている。
しかしながら、上述したように視野角が大きくなるにつれ、各色のピーク波長が最適条件からずれて短波長側にシフトすると(図11中符号R2’,G2’,B2’)、全体的な色ずれが生じるという問題がある。つまり、視野角0°の位置では白色光が表示されるのに対して、視野角が大きくなるにつれて青色側(短波長側)にシフトし、表示が青く見えてしまう(図11中符号W2’)。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、視野角の違いによって発生する色ずれを抑制することができる発光装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の発光装置は、基板上に光透過性を有する第1電極と半透過反射性を有する第2電極との間に挟持された発光層と、前記第1電極を挟んで前記発光層の反対側に配置された光反射層と、を有する複数の発光素子を備え、前記光反射層と前記第2電極との間で、前記発光層から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置において、前記複数の発光素子には、前記光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれ、前記複数の発光素子から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に着色層が設けられ、前記着色層は、前記発光層と重なる領域の中央部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光を透過する第1着色層と、前記発光層と重なる領域の周辺部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光を透過する第2着色層と、を有し、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されていることを特徴とする。
この構成によれば、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれているため、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する共振波長を有する発光素子を形成することで、フルカラー表示が可能な発光装置を提供することができる。
そして、青色光を発光する発光素子の基板の法線方向から見て、発光層と重なる領域の中央部に第1着色層が設けられ、発光層と重なる領域の周辺部に第2着色層が設けられている。すると、発光層からほぼ鉛直方向に射出された光が第1着色層を透過し、発光層から斜め方向に射出された光が第2着色層を透過するようになる。ところで、発光層から斜め方向に射出された光は、発光層からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトする。つまり、視野角が大きくなるにつれ光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光が、第2着色層を透過することになる。そこで、本発明の発光装置では、第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長よりも長波長側にシフトするように調整されている。このため、第2着色層においては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルと、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルと、が掛け合わされることになる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。すなわち、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0010】
本発明においては、緑色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に前記着色層が設けられていてもよい。
この構成によれば、緑色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、青色光を透過する着色層に加えて緑色光を透過する着色層を最適な透過率に調整することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0011】
本発明においては、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量が波長5〜100nmの範囲内に設定されていることが望ましい。
本願発明者は、第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量を波長5〜100nmの範囲内に設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされると、第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出した。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0012】
本発明においては、前記着色層を透過する光のスペクトルにおいて、最大の透過率を示す光の波長をピーク波長、前記ピーク波長における光の透過率を最大透過率とし、さらに、前記最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長を第1波長、最大の波長を第2波長としたときに、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける光のピーク波長よりも小さくてもよい。
この構成によれば、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルのピーク波長が確実に長波長側にシフトする。つまり、青色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0013】
本発明においては、前記所定割合は、前記着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されていることが望ましい。
本願発明者は、前記所定割合を、着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%とし、かつ、第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされると、第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられることを見出した。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0014】
本発明においては、前記第1着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、前記第2着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’としたときに、Δu’v’<0.02を満たすことが望ましい。
この構成によれば、観察者から色ずれが分からない程度に色度シフトの量が調整される。このため、着色層の透過前に、発光層から斜め方向に射出された光が発光層からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトしていても、着色層の透過後には、発光層から斜め方向に射出された光と発光層からほぼ鉛直方向に射出された光との色度がほぼ同じになる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0015】
本発明においては、前記第2着色層が、前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、前記発光層から前記基板の法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換する色変換層となっていてもよい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側に変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられ、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。また、発光層から射出される光の発光色は所定の色に限定されないため、輝度の高い発光素子を光源に用いることができる。したがって、輝度特性の高い光を取り出すことができる。
【0016】
本発明においては、前記色変換層が、青色光を緑色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された青色光が長波長の緑色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0017】
本発明においては、前記色変換層が、青色光を赤色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された青色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0018】
本発明においては、前記色変換層が、緑色光を赤色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された緑色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、青色光に加えて緑色光を波長変換することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0019】
本発明の電子機器は、前述した本発明の発光装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、上述した発光装置を備えているため、視野角の違いによって発生する色ずれを抑制した高性能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成平面図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】視野角による光の射出方向の違いを示す図である。
【図5】光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとの関係を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る色度の視野角特性を示す色度図である。
【図7】第2実施形態に係る有機EL装置の概略構成断面図である。
【図8】図7のA’部拡大図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【図10】従来における発光輝度の視野角特性を示すグラフである。
【図11】従来における色度の視野角特性を示す色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明の発光装置の一例として挙げる有機EL装置の概略を示す模式図である。図1は本実施形態に係る有機EL装置1の断面図である。図2は本実施形態に係る有機EL装置1の平面図である。本実施形態における有機EL装置1は、トップエミッション構造の有機EL装置である。この有機EL装置1は、素子基板20A上の陽極(第1電極)10と陰極(第2電極)11の間に挟持された有機機能層12と金属反射板(光反射層)15とを有する複数の発光素子21を備えている。
【0023】
また、有機EL装置1は、発光素子21を画素領域XR,XG,XB毎に区切る画素隔壁13と、素子基板20Aに対向配置された封止基板31と、を備えている。また、有機EL装置1は、複数の発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て、画素隔壁13が形成されていない領域の有機機能層12と重なる領域に、着色層37R,37G,37Bを有している。この有機EL装置1は、素子基板20Aの対向側である封止基板31側から発光光を取り出す構成であるため、素子基板20Aの材料としては、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。
【0024】
素子基板20A上には、窒化珪素等からなる無機絶縁層14が形成されている。無機絶縁層14上にはアルミ合金等からなる金属反射板15が内装された平坦化層16が形成されている。この平坦化層16は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、薄膜トランジスタ(TFT)123や配線等による表面の凹凸をなくすために形成されている。
【0025】
平坦化層16上には、陽極10が形成されている。この陽極10は、酸化物系透明導電材料によって形成され、具体的にはITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)が好適に用いられている。陽極10は、各発光素子21に対応して形成されており、その一端側が無機絶縁層14に形成されたコンタクトホール17を介してTFT123に接続されている。
【0026】
陽極10上には、画素隔壁13が形成されている。この画素隔壁13は、陽極10上に開口部を有し、複数の発光素子21を独立させて区分するものである。つまり、画素隔壁13に囲まれた領域が発光素子21の画素領域Xとなっており、これらは赤色光、青色光、緑色光のそれぞれの光が封止基板31側から取り出される画素領域XR,XG,XBとして割り当てられている。なお、画素隔壁13の形成材料としては、例えばポリイミド、アクリル等の絶縁性を有する有機物を用いることができる。なお、画素隔壁13の形成材料としては、無機物と有機物とを組み合わせたものであってもよい。
【0027】
有機機能層12は、正孔注入・輸送層30と発光層40とを備えている。正孔注入・輸送層30は、陽極10の正孔を発光層40に注入・輸送するためのものである。正孔注入・輸送層30は、素子基板20A上の陽極10上に各画素隔壁13を跨いで形成されている。正孔注入・輸送層30の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の水分散液が好適に用いられる。なお、正孔注入・輸送層30の形成材料としては、上述のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0028】
発光層40は、陰極11から注入される電子と正孔注入・輸送層30から注入される正孔とが結合して所定の波長の光が射出される部分である。発光層40は、正孔注入・輸送層30上の全域に亘って形成されている。発光層40は、赤色、緑色、青色を発光する発光材料が積層されて白色に発光する白色発光層を採用している。このような発光層40の構成材料として、例えばポリフルオレン誘導体(PF)やポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などの高分子有機材料を用いることができる。また、上記高分子有機材料に、例えばペリレン系色素や、クマリン系色素、ローダミン系色素、ルブレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、キナクリドンなどの低分子有機材料をドープしたものを用いてもよい。なお、発光層40の上層に、電子輸送層やホールブロック層を形成することが好ましい。
【0029】
陰極11は、発光層40から発光した光の一部を透過し、残りの光の一部又は全部を金属反射板15側に反射する半透過反射性を有している(図3中矢印参照)。陰極11は、素子基板20A上の画素隔壁13及び発光層40を覆うように形成されている。一般に、上述したITO等の透光性導電膜は、大気層との界面で10%程度の反射率を有しており、特段の工夫を施さなければ、このような透光性導電膜を用いた陰極11は、上記のような半透過反射性を有するものとなっている。
【0030】
陰極11上には、有機緩衝層18が形成されている。有機緩衝層18は、画素隔壁13の形状の影響により、凹凸状に形成された陰極11の凹凸部分を埋めるように形成されている。そして、有機緩衝層18の上面は略平坦になるように形成されている。有機緩衝層18は、素子基板20Aの反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、不安定な形状の画素隔壁13からの陰極11の剥離を防止する機能を有する。
【0031】
有機緩衝層18上には、有機緩衝層18を覆うようにガスバリア層19が形成されている。ガスバリア層19は、酸素や水分が内部に浸入するのを防止するためのもので、これにより酸素や水分による発光素子21の劣化等を抑えることができる。ガスバリア層19の材質は、透明性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。また、上述した有機緩衝層18の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層18上に形成される硬い被膜からなるガスバリア層19も平坦化される。したがって、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリア層19でのクラックの発生を防止することができる。
【0032】
ガスバリア層19上には、ガスバリア層19を覆うようにシール層22が形成されている。シール層22は、ガスバリア層19上に封止基板31を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有し、発光層40やガスバリア層19の保護をするものである。シール層22は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、封止基板31より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されている。
【0033】
封止基板31は、上述した素子基板20Aに対向配置されている。封止基板31は、その上面が発光光を取り出す表示面として機能するため、ガラスまたは透明プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネ―ト、ポリオレフィン等)などの光透過性を有する材料で構成されている。
【0034】
封止基板31の下面には、平面視矩形状の赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bがマトリクス状に配列形成されたカラーフィルター37が構成されている。各着色層37R,37G,37Bは、透明バインダー層に顔料または染料が混合して構成された層で、顔料を選択することにより目的とする赤(R)、緑(G)あるいは青(B)に調整されている。なお、着色層37R,37G,37Bは、各色のカラーレジストをパターニングして形成してもよい。また、着色層37R,37G,37Bの色は目的に応じてライトブルーやライトシアン、白などを加えてもよい。
【0035】
着色層37R,37G,37Bの各々は、発光素子21の陽極10に対向して配置されている。これにより、発光層40から射出された光のうち、各色の波長に対応した光(例えば、赤色光は波長610nm、緑色光は波長530nm、青色光は波長470nm)のみが着色層37の各々を透過し、各色光として観察者側に射出されるようになっている。
【0036】
着色層37R,37G,37Bの領域の間には、ブラックマトリクス層32が形成されている。このブラックマトリクス層32は、着色層37を区分して非発光部分として構成しており、隣接する画素領域XR,XG,XB間の光漏れを防止するものである。ブラックマトリクス層32の構成材料としては、カーボンブラック等の顔料が混入された樹脂からなる遮光層である。なお、このブラックマトリクス層32には、フッ素樹脂等の撥液性を有する樹脂を混合させてもよい。
【0037】
図3は、図1のA部拡大図である。なお、図3においては、説明を分かり易くするため陰極11より上層を省略する。図1,3に示すように、上述した発光層40は、上述した半透過反射機能を有する陰極11と金属反射板15との間に挟持されており、これら陰極11と金属反射板15との間で、発光層40から射出された光を共振させる光共振構造が形成されている。この構成によれば、発光層40から射出された光は、金属反射板15と陰極11との間で往復し、その光学的距離Lに対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される(図3中矢印参照)。このため、発光輝度が高く、スペクトルもシャープな光を取り出すことができる。
【0038】
各発光素子21の共振波長は、金属反射板15と陰極11との間の光学的距離L、つまり金属反射板15と陰極11との間に形成された各層(例えば、有機機能層12、陽極10)の膜厚と屈折率とのそれぞれの積の総和によって求められる。本実施形態では、各画素領域XR,XG,XBの金属反射板15と陰極11との間の光共振器構造における光学的距離Lを調整することで、各画素領域XR,XG,XBの共振波長を異ならせている。つまり、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子21が含まれているため、白色光を発光する発光層40からそれぞれ異なった色(赤色光、緑色光、青色光)が取り出されるようになっている。そして、赤色光、緑色光、青色光が、それぞれ赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bを透過するため、より色再現性の高い光を取り出すことができる。
【0039】
ここで、青色着色層37Bは、発光素子21の陽極10に対向する位置の発光層40と重なる領域の中央部(例えば、金属反射板15に重なる領域)に設けられた第1青色着色層37Baと、発光層40と重なる領域の周辺部(例えば、金属反射板15に重なる領域外)に設けられた第2青色着色層37Bbと、を備えている。また、緑色着色層37Gは、発光素子21の陽極10に対向する位置の発光層40と重なる領域の中央部(例えば、金属反射板15に重なる領域)に設けられた第1緑色着色層37Gaと、発光層40と重なる領域の周辺部(例えば、金属反射板15に重なる領域外)に設けられた第2緑色着色層37Gbと、を備えている。
【0040】
図4は、視野角による光の射出方向の違いを示す図である。図4においては、説明を分かり易くするために、発光層40、青色着色層37B、ブラックマトリクス層32を除いた構成を省略している。図4に示すように、青色着色層37Bの中央部の第1青色着色層37Baは、発光層40の中央部に重なる位置に設けられている。また、青色着色層37Bの周辺部の第2青色着色層37Bbは、発光層40の周辺部に重なる位置に設けられている。
【0041】
このような構造により、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光、言い換えると観察者の視覚方向の正面(視野角0°)の光は、ほとんど第1青色着色層37Baを透過することがわかる。一方、発光層40から斜め方向に射出された光、例えば視野角θ1(30°)、視野角θ2(60°)の光は、ほとんど第1青色着色層37Baを透過せずに、第2青色着色層37Bbを透過することがわかる。
【0042】
なお、本図では青色着色層37Bを透過する光を例に挙げて視野角による光の射出方向の違いを説明しているが、緑色着色層37Gを透過する光についても青色着色層37Bを透過する光と同様になっている。つまり、第1着色層37Ba,37Gaの各々は、発光層40から射出された光のうち、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光を透過するようになっている。また、第2着色層37Bb,37Gbの各々は、発光層40から射出された光のうち、発光層40から斜め方向に射出された光を透過するようになっている。
【0043】
ところで、発光層40から斜め方向に射出された光は、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光に対して、光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトする(図5参照)。つまり、視野角が大きくなるにつれ光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光が、第2着色層37Bb,37Gbの各々を透過することになる。そこで、本実施形態の着色層37B,37Gは、第2着色層37Bb,37Gbの各々で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層37Ba,37Gaの各々で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されている。
【0044】
本願発明者は、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量を所定の波長の範囲に設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされることにより、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出した。以下、本願発明者が行ったシミュレーションの結果を説明する。
【0045】
図5は、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとの関係を示す図である。本図は、視野角による光の波長と強度との関係(光の強度のスペクトル)と、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係(光の透過率のスペクトル)と、を示している。なお、本図では、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされる様子がよくわかるように、視野角による光の波長と強度との関係と、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係と、の2つの関係を同図に示している。
【0046】
先ず、視野角による光の波長と強度との関係について説明する。視野角による光の波長と強度との関係において、横軸は波長、縦軸は強度(図示略)を示している。符号S1は視野角0°における光の強度のスペクトル、符号S2は視野角θ1(30°)における光の強度のスペクトル、符号S3は視野角θ2(60°)における光の強度のスペクトル、を示している。
【0047】
視野角0°における光の強度のスペクトルS1にあっては、ピーク波長が480nm程度となっている。また、視野角30°における光の強度のスペクトルS2にあっては、ピーク波長が470nm程度となっている。また、視野角60°における光の強度のスペクトルS3にあっては、ピーク波長が460nm程度となっている。このように、視野角が大きくなるにつれて光の強度のスペクトルのピーク波長が短波長側にシフトしていくことがわかる。また、視野角が大きくなるにつれて光の強度のスペクトルのピーク強度についても低い値にシフトしていくことがわかる。
【0048】
次に、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係について説明する。青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係において、横軸は波長、縦軸は透過率を示している。符号C1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトル、符号C2は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトル、を示している。
【0049】
また、符号P1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長(第1波長)、符号P2は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最大の波長(第2波長)、符号P1’は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長(第1波長)、符号P2’は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最大の波長(第2波長)、を示している。
【0050】
また、符号F1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長との間のシフト量を示している。また、符号F2は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長P1と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長P1’との間のシフト量を示している。
【0051】
第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1にあっては、光の強度のスペクトルS1と同様にピーク波長が480nm程度となっている。一方、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2にあっては、ピーク波長が510nm程度となっている。このように、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1におけるピーク波長が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2におけるピーク波長よりも小さくなっている。
【0052】
本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1を波長30nm程度に設定している。
【0053】
これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C1と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出したことによる。
【0054】
具体的には、第2青色着色層37Bbにおいては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3と、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルC2と、が掛け合わされる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。
【0055】
なお、本図では青色着色層37Bで透過される光を例に挙げてシミュレーション結果を説明しているが、緑色着色層37Gで透過される光についても青色着色層37Bで透過される光と同様のシミュレーション結果となると、本願発明者は推測している。
【0056】
また、本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1における第1波長P1が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2における第1波長P1’よりも小さくなっている。また、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1における第2波長P2が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2における第2波長P2’よりも小さくなっている。
【0057】
図6は、本実施形態における色度の視野角特性を示す色度図(xy色度図)である。図6中の実線は、視野角が0°から所定の角度まで変化した場合におけるスペクトルのピーク波長の変化を示している。
【0058】
図6に示すように、視野角0°における各色の色度は赤色光がR1、緑色光がG1、青色光がB1となっており、視野角が大きくなるにつれ赤色光がR2、緑色光がG2、青色光がB2に向かって短波長側へシフトしている。そして、これら各色の色度の合成となる白色光の色度は、視野角0°においてW1となっており、視野角が大きくなるにつれW2に向かって短波長側へシフトしている。
【0059】
本実施形態では、xy色度図をu’v’色度図(図示略)に変換したときに、第1青色着色層37Baを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、第2青色着色層37Bbを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’とすると、Δu’v’の値が0.02より小さくなるように設定されている(Δu’v’<0.02)。これにより、観察者から色ずれが分からない程度に色度シフトの量が調整されることになる。
【0060】
本実施形態の有機EL装置1によれば、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長が、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長よりも長波長側にシフトするように調整されている。このため、第2青色着色層37Bbにおいては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3と、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルC2と、が掛け合わされることになる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される青色着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。すなわち、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0061】
また、この構成によれば、緑色光を発光する発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て発光層40と重なる領域に、第1緑色着色層37Gaと第2緑色着色層37Gbとを有する緑色着色層37Bが設けられている。このため、緑色光が取り出される緑色着色層37Gを構成する第1緑色着色層37Gaで透過される光と第2緑色着色層37Gbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、青色光を透過する青色着色層37Bに加えて緑色光を透過する緑色着色層37Gを最適な透過率に調整することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0062】
また、この構成によれば、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1が波長5〜100nmの範囲内に設定されているので、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトし色ずれが生じてしまうことがない。これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C2と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0063】
また、この構成によれば、第1波長P1が第1波長P1’よりも小さく、第2波長P2が第2波長P2’よりも小さく、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1におけるピーク波長が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2におけるピーク波長よりも小さくなっているので、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が確実に長波長側にシフトする。つまり、青色光が取り出される青色着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0064】
また、この構成によれば、色度の視野角特性を示す色度図において、第1青色着色層37Baを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、第2青色着色層37Bbを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離Δu’v’が、0.02より小さくなるように設定されている。このため、着色層37R,37G,37Bの透過前に、発光層40から斜め方向に射出された光が発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトしていても、着色層37R,37G,37Bの透過後には、発光層40から斜め方向に射出された光と発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光との色度がほぼ同じになる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0065】
なお、所定割合は、着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、第1波長P1と第1波長P1’と、の間のシフト量F2が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されているのがよい。
【0066】
この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトし色ずれが生じてしまうことがない。これは、本願発明者が、所定割合を光の透過率のスペクトルの最大透過率の50%とし、かつ、前記シフト量F2を波長5〜40nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と光の透過率のスペクトルC1,C2とが掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが、より最小限に抑えられることを見出したことによる。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1を波長30nm程度に設定しているが、これに限らず、波長5〜100nmの範囲内に設定することができる。これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C2と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出したことによる。
【0068】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとが、それぞれ光の透過率のスペクトルが異なる第1着色層と第2着色層との2つの着色層を有しているがこれに限らない。例えば、青色着色層37Bのみが、光の透過率のスペクトルが異なる第1着色層と第2着色層との2つの着色層を有していてもよい。
【0069】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bが平面視矩形状であるが、これに限らない。例えば、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bが平面視円形状であってもよいし、平面視楕円形状であってもよい。
【0070】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が金属反射板15に重なる領域に、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第2着色層が金属反射板15に重なる領域外に設けられている例を示したが、これに限らない。例えば、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が、金属反射板15に重なる領域よりも内側に、あるいは金属反射板15に重なる領域よりも外側に設けられていてもよい。すなわち、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が、少なくとも金属反射板15に重なる領域に設けられ、その周辺部に青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第2着色層が設けられていればよい。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置2の構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、図1に対応した、第2実施形態における有機EL装置2の概略構成を示した断面図である。図8は、図3に対応した、図7のA’部拡大図である。図7及び図8に示すように、本実施形態の有機EL装置2は、各画素隔壁13間(画素領域XR,XG,XB)に有機機能層12R,12G,12Bがそれぞれ形成されている点、複数の発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て、有機機能層12R,12G,12Bと重なる領域に、着色層37R,37G’,37B’を有している点、着色層37B’,37G’が、それぞれ第1実施形態の第2着色層37Bb,37Gbに代えて色変換層37Bc,37Gcを有している点、で上述の第1実施形態で説明した有機EL装置1と異なっている。その他の点は第1実施形態と同様であるので、図1及び図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
有機機能層12R,12G,12Bは、それぞれ正孔注入・輸送層30Rと赤色発光層40R、正孔注入・輸送層30Gと緑色発光層40G、正孔注入・輸送層30Bと青色発光層40B、を備えている。カラーフィルター37’は、赤色着色層37Rと、緑色着色層37G’と、青色着色層37B’と、を有して構成されている。
【0073】
青色着色層37B’は、青色発光層40Bと重なる領域の中央部に設けられた第1青色着色層37Baと、青色発光層40Bと重なる領域の周辺部に設けられた色変換層37Bcと、を備えている。また、緑色着色層37G’は、緑色発光層40Gと重なる領域の中央部に設けられた第1緑色着色層37Gaと、緑色発光層40Gと重なる領域の周辺部に設けられた色変換層37Gcと、を備えている。色変換層37Bc,37Gcの各々は、発光層40B,40Gから射出された光のうち、発光層40B,40Gから斜め方向に射出された光を透過するようになっている。
【0074】
色変換層37Bc,37Gcは有機蛍光色素をマトリックス樹脂に含有させて形成された層である。色変換層37Bc,37Gcは、それぞれ発光層40B,40Gから射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、発光層40B,40Gから素子基板20Aの法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換するものである。マトリックス樹脂は、有機蛍光色素を分散させる母材の樹脂(バインダー)である。
【0075】
色変換層37Bcは、発光素子21Bから発せられる青色光を緑色光に波長変換する有機蛍光色素を有している。発光素子21Bから発せられる青色光を緑色光に波長変換する有機蛍光色素としては、例えばクマリン系色素、クマリン色素系染料、ナフタルイミド系色素がある。また、色変換層37Gcは、発光素子21Gから発せられる緑色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素を有している。
【0076】
本実施形態の有機EL装置2によれば、発光層40B,40Gから斜め方向に射出された光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側に変換される。このため、第1着色層37Ba,37Gaで透過される光と色変換層37Bc,37Gcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられ、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。また、発光層40B,40Gから射出される光の発光色は所定の色に限定されないため、輝度の高い発光素子を光源に用いることができる。したがって、輝度特性の高い光を取り出すことができる。
【0077】
また、この構成によれば、色変換層37Bcが、青色光を緑色光に波長変換するため、青色発光層40Bから斜め方向に射出された青色光が長波長の緑色光に波長変換される。このため、第1着色層37Baで透過される光と色変換層37Bcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0078】
また、この構成によれば、色変換層37Gcが、緑色光を赤色光に波長変換するため、緑色発光層40Gから斜め方向に射出された緑色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層37Gaで透過される光と色変換層37Gcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、青色光に加えて緑色光を波長変換することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0079】
なお、本実施形態に係る色変換層37Bcは、発光素子21Bから発せられる青色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素を有していてもよい。発光素子21Bから発せられる青色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素としては、例えばローダミン系色素、シアニン系色素、ピリジン系色素、オキサジン系色素がある。
【0080】
なお、本実施形態の有機EL装置2は、青色着色層37B’と緑色着色層37G’とが、それぞれ第1着色層と色変換層との2つの着色層を有しているがこれに限らない。例えば、青色着色層37B’のみが、第1着色層と色変換層との2つの着色層を有していてもよい。
【0081】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器について説明する。
電子機器は、上述した有機EL装置1を表示部として有したものであり、具体的には図9に示すものが挙げられる。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話1000は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1001を備える。
図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、時計(電子機器)1100は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1101を備える。
図9(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述した有機EL装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
図9(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図9(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上述した有機EL装置1を用いた表示部1306を備える。
【0082】
図9(a)〜(d)に示すそれぞれの電子機器は、上述した有機EL装置1を有した表示部1001,1101,1206,1306を備えているので、表示部における視野角の違いによって発生する色ずれを抑制することが図られたものとなる。
【0083】
また、有機EL装置1を表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、有機EL装置1を露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,2…有機EL装置(発光装置)、10…陽極(第1電極)、11…陰極(第2電極)、15…金属反射板(光反射層)、20A…素子基板(基板)、21…発光素子、37R…赤色着色層(着色層)、37Ra…第1赤色着色層(第1着色層)、37Rb…第2赤色着色層(第2着色層)、37G,37G’…緑色着色層(着色層)、37Ga…第1緑色着色層(第1着色層)、37Gb…第2緑色着色層(第2着色層)、37Gc,37Bc…色変換層、37B,37B’…青色着色層(着色層)、37Ba…第1青色着色層(第1着色層)、37Bb…第2青色着色層(第2着色層)、40,40R,40G,40B…発光層、1000…携帯電話(電子機器)、1100…時計(電子機器)、1200…情報処理装置(電子機器)、1300…薄型大型テレビ(電子機器)、1001,1101,1206,1306…表示部(発光装置)、F1,F2…シフト量、P1,P1’…第1波長、P2,P2’…第2波長
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された発光装置のニーズが高まっている。この様な発光装置の一つとして、有機エレクトロルミネッセンス装置(以下、「有機EL装置」という)が知られている。このような有機EL装置は、陽極(第1電極)と陰極(第2電極)との間に発光層を有する発光素子を備えたものが一般的である。さらに、正孔注入性や電子注入性を向上させるために、陽極と発光層との間に正孔注入・輸送層を配置した構成や、発光層と陰極との間に電子注入層やホールブロック層を配置した構成が提案されている。
【0003】
ところで、上述した有機EL装置は、発光層から取り出される光のスペクトルのピーク幅が広く、発光輝度も小さいため、表示装置に適用した場合に、十分な色再現性が得られないという問題があった。そこで、基板と陽極との間に形成された光反射層と、発光層の射出側に形成された半透過反射性を有する陰極と、を備え、光反射層と陰極との間で、発光層から射出された光を共振させる光共振構造を設ける構造が提案されている。
この構成によれば、発光層から射出された光は、光反射層と陰極との間で往復し、その光学的距離に対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される。このため、輝度特性が高く、スペクトル幅が狭いシャープな光を取り出すことができるとされている。
【0004】
しかしながら、上述した光共振器構造を採用した有機EL装置では、スペクトル幅が狭くなると、表示面を斜めから見た場合、つまり視野角が大きくなるにつれ光の波長が短波長側にシフトしたり、発光輝度が低下したりする等、発光特性の視野角依存性が高いという問題がある。
そこで、例えば特許文献1に示すように、発光層から射出された光の光学的距離を最適化することで、ある程度のスペクトル幅を有するように共振させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/039554号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、有機EL装置の高品質化に伴い、視野角特性の更なる向上が要求されている。
図10は、従来における発光輝度の視野角特性を示すグラフである。なお、図10において、上半部における縦軸の0°が観察者の視覚方向の正面(表示面の法線方向)、つまり視野角0°を示している。また、発光輝度は視野角0°の位置での発光輝度を100%とした場合における割合で示しており、中心Oを0%、最外周を100%として同心円上に示している。
図10に示すように、上記従来技術では、赤色光、緑色光、青色光の各色ともに視野角0°の位置で発光輝度が最大となるように光学的距離が最適化されており、視野角0°において、最適な白色光Wが射出されるようになっている。そして、視野角が大きくなるにつれ、各色R,G,Bともに発光輝度が減衰している。つまり、視野角が大きくなるにつれ、光学的距離が最適条件からずれて長くなり、取り出したい光が最適な共振波長の条件で射出されなくなる。これにより、取り出される光のスペクトルのピーク波長が短波長側にシフトする。
【0007】
図11は、従来における色度の視野角特性を示す色度図であり、図中実線は、視野角が0°〜80°まで変化した場合におけるスペクトルのピーク波長の変化を示している。
図11に示すように、上記従来技術では、赤色光、緑色光、青色光の各色ともに視野角0°の位置(図11中符号R1’,G1’,B1’)において、最適な色度で射出されるように設定され、白色光(図11中符号W1’)が表示されるようになっている。
しかしながら、上述したように視野角が大きくなるにつれ、各色のピーク波長が最適条件からずれて短波長側にシフトすると(図11中符号R2’,G2’,B2’)、全体的な色ずれが生じるという問題がある。つまり、視野角0°の位置では白色光が表示されるのに対して、視野角が大きくなるにつれて青色側(短波長側)にシフトし、表示が青く見えてしまう(図11中符号W2’)。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、視野角の違いによって発生する色ずれを抑制することができる発光装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の発光装置は、基板上に光透過性を有する第1電極と半透過反射性を有する第2電極との間に挟持された発光層と、前記第1電極を挟んで前記発光層の反対側に配置された光反射層と、を有する複数の発光素子を備え、前記光反射層と前記第2電極との間で、前記発光層から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置において、前記複数の発光素子には、前記光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれ、前記複数の発光素子から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に着色層が設けられ、前記着色層は、前記発光層と重なる領域の中央部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光を透過する第1着色層と、前記発光層と重なる領域の周辺部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光を透過する第2着色層と、を有し、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されていることを特徴とする。
この構成によれば、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれているため、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応する共振波長を有する発光素子を形成することで、フルカラー表示が可能な発光装置を提供することができる。
そして、青色光を発光する発光素子の基板の法線方向から見て、発光層と重なる領域の中央部に第1着色層が設けられ、発光層と重なる領域の周辺部に第2着色層が設けられている。すると、発光層からほぼ鉛直方向に射出された光が第1着色層を透過し、発光層から斜め方向に射出された光が第2着色層を透過するようになる。ところで、発光層から斜め方向に射出された光は、発光層からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトする。つまり、視野角が大きくなるにつれ光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光が、第2着色層を透過することになる。そこで、本発明の発光装置では、第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長よりも長波長側にシフトするように調整されている。このため、第2着色層においては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルと、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルと、が掛け合わされることになる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。すなわち、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0010】
本発明においては、緑色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に前記着色層が設けられていてもよい。
この構成によれば、緑色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、青色光を透過する着色層に加えて緑色光を透過する着色層を最適な透過率に調整することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0011】
本発明においては、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量が波長5〜100nmの範囲内に設定されていることが望ましい。
本願発明者は、第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量を波長5〜100nmの範囲内に設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされると、第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出した。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0012】
本発明においては、前記着色層を透過する光のスペクトルにおいて、最大の透過率を示す光の波長をピーク波長、前記ピーク波長における光の透過率を最大透過率とし、さらに、前記最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長を第1波長、最大の波長を第2波長としたときに、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける光のピーク波長よりも小さくてもよい。
この構成によれば、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルのピーク波長が確実に長波長側にシフトする。つまり、青色光が取り出される着色層を構成する第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0013】
本発明においては、前記所定割合は、前記着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されていることが望ましい。
本願発明者は、前記所定割合を、着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%とし、かつ、第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされると、第1着色層で透過される光と第2着色層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられることを見出した。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0014】
本発明においては、前記第1着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、前記第2着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’としたときに、Δu’v’<0.02を満たすことが望ましい。
この構成によれば、観察者から色ずれが分からない程度に色度シフトの量が調整される。このため、着色層の透過前に、発光層から斜め方向に射出された光が発光層からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトしていても、着色層の透過後には、発光層から斜め方向に射出された光と発光層からほぼ鉛直方向に射出された光との色度がほぼ同じになる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0015】
本発明においては、前記第2着色層が、前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、前記発光層から前記基板の法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換する色変換層となっていてもよい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側に変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられ、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。また、発光層から射出される光の発光色は所定の色に限定されないため、輝度の高い発光素子を光源に用いることができる。したがって、輝度特性の高い光を取り出すことができる。
【0016】
本発明においては、前記色変換層が、青色光を緑色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された青色光が長波長の緑色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0017】
本発明においては、前記色変換層が、青色光を赤色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された青色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0018】
本発明においては、前記色変換層が、緑色光を赤色光に波長変換することが望ましい。
この構成によれば、発光層から斜め方向に射出された緑色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層で透過される光と色変換層で透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、青色光に加えて緑色光を波長変換することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0019】
本発明の電子機器は、前述した本発明の発光装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、上述した発光装置を備えているため、視野角の違いによって発生する色ずれを抑制した高性能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成断面図である。
【図2】第1実施形態に係る有機EL装置の概略構成平面図である。
【図3】図1のA部拡大図である。
【図4】視野角による光の射出方向の違いを示す図である。
【図5】光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとの関係を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る色度の視野角特性を示す色度図である。
【図7】第2実施形態に係る有機EL装置の概略構成断面図である。
【図8】図7のA’部拡大図である。
【図9】本発明の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【図10】従来における発光輝度の視野角特性を示すグラフである。
【図11】従来における色度の視野角特性を示す色度図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明の発光装置の一例として挙げる有機EL装置の概略を示す模式図である。図1は本実施形態に係る有機EL装置1の断面図である。図2は本実施形態に係る有機EL装置1の平面図である。本実施形態における有機EL装置1は、トップエミッション構造の有機EL装置である。この有機EL装置1は、素子基板20A上の陽極(第1電極)10と陰極(第2電極)11の間に挟持された有機機能層12と金属反射板(光反射層)15とを有する複数の発光素子21を備えている。
【0023】
また、有機EL装置1は、発光素子21を画素領域XR,XG,XB毎に区切る画素隔壁13と、素子基板20Aに対向配置された封止基板31と、を備えている。また、有機EL装置1は、複数の発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て、画素隔壁13が形成されていない領域の有機機能層12と重なる領域に、着色層37R,37G,37Bを有している。この有機EL装置1は、素子基板20Aの対向側である封止基板31側から発光光を取り出す構成であるため、素子基板20Aの材料としては、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。
【0024】
素子基板20A上には、窒化珪素等からなる無機絶縁層14が形成されている。無機絶縁層14上にはアルミ合金等からなる金属反射板15が内装された平坦化層16が形成されている。この平坦化層16は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、薄膜トランジスタ(TFT)123や配線等による表面の凹凸をなくすために形成されている。
【0025】
平坦化層16上には、陽極10が形成されている。この陽極10は、酸化物系透明導電材料によって形成され、具体的にはITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)が好適に用いられている。陽極10は、各発光素子21に対応して形成されており、その一端側が無機絶縁層14に形成されたコンタクトホール17を介してTFT123に接続されている。
【0026】
陽極10上には、画素隔壁13が形成されている。この画素隔壁13は、陽極10上に開口部を有し、複数の発光素子21を独立させて区分するものである。つまり、画素隔壁13に囲まれた領域が発光素子21の画素領域Xとなっており、これらは赤色光、青色光、緑色光のそれぞれの光が封止基板31側から取り出される画素領域XR,XG,XBとして割り当てられている。なお、画素隔壁13の形成材料としては、例えばポリイミド、アクリル等の絶縁性を有する有機物を用いることができる。なお、画素隔壁13の形成材料としては、無機物と有機物とを組み合わせたものであってもよい。
【0027】
有機機能層12は、正孔注入・輸送層30と発光層40とを備えている。正孔注入・輸送層30は、陽極10の正孔を発光層40に注入・輸送するためのものである。正孔注入・輸送層30は、素子基板20A上の陽極10上に各画素隔壁13を跨いで形成されている。正孔注入・輸送層30の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の水分散液が好適に用いられる。なお、正孔注入・輸送層30の形成材料としては、上述のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0028】
発光層40は、陰極11から注入される電子と正孔注入・輸送層30から注入される正孔とが結合して所定の波長の光が射出される部分である。発光層40は、正孔注入・輸送層30上の全域に亘って形成されている。発光層40は、赤色、緑色、青色を発光する発光材料が積層されて白色に発光する白色発光層を採用している。このような発光層40の構成材料として、例えばポリフルオレン誘導体(PF)やポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などの高分子有機材料を用いることができる。また、上記高分子有機材料に、例えばペリレン系色素や、クマリン系色素、ローダミン系色素、ルブレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、キナクリドンなどの低分子有機材料をドープしたものを用いてもよい。なお、発光層40の上層に、電子輸送層やホールブロック層を形成することが好ましい。
【0029】
陰極11は、発光層40から発光した光の一部を透過し、残りの光の一部又は全部を金属反射板15側に反射する半透過反射性を有している(図3中矢印参照)。陰極11は、素子基板20A上の画素隔壁13及び発光層40を覆うように形成されている。一般に、上述したITO等の透光性導電膜は、大気層との界面で10%程度の反射率を有しており、特段の工夫を施さなければ、このような透光性導電膜を用いた陰極11は、上記のような半透過反射性を有するものとなっている。
【0030】
陰極11上には、有機緩衝層18が形成されている。有機緩衝層18は、画素隔壁13の形状の影響により、凹凸状に形成された陰極11の凹凸部分を埋めるように形成されている。そして、有機緩衝層18の上面は略平坦になるように形成されている。有機緩衝層18は、素子基板20Aの反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、不安定な形状の画素隔壁13からの陰極11の剥離を防止する機能を有する。
【0031】
有機緩衝層18上には、有機緩衝層18を覆うようにガスバリア層19が形成されている。ガスバリア層19は、酸素や水分が内部に浸入するのを防止するためのもので、これにより酸素や水分による発光素子21の劣化等を抑えることができる。ガスバリア層19の材質は、透明性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。また、上述した有機緩衝層18の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層18上に形成される硬い被膜からなるガスバリア層19も平坦化される。したがって、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリア層19でのクラックの発生を防止することができる。
【0032】
ガスバリア層19上には、ガスバリア層19を覆うようにシール層22が形成されている。シール層22は、ガスバリア層19上に封止基板31を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有し、発光層40やガスバリア層19の保護をするものである。シール層22は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、封止基板31より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されている。
【0033】
封止基板31は、上述した素子基板20Aに対向配置されている。封止基板31は、その上面が発光光を取り出す表示面として機能するため、ガラスまたは透明プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネ―ト、ポリオレフィン等)などの光透過性を有する材料で構成されている。
【0034】
封止基板31の下面には、平面視矩形状の赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bがマトリクス状に配列形成されたカラーフィルター37が構成されている。各着色層37R,37G,37Bは、透明バインダー層に顔料または染料が混合して構成された層で、顔料を選択することにより目的とする赤(R)、緑(G)あるいは青(B)に調整されている。なお、着色層37R,37G,37Bは、各色のカラーレジストをパターニングして形成してもよい。また、着色層37R,37G,37Bの色は目的に応じてライトブルーやライトシアン、白などを加えてもよい。
【0035】
着色層37R,37G,37Bの各々は、発光素子21の陽極10に対向して配置されている。これにより、発光層40から射出された光のうち、各色の波長に対応した光(例えば、赤色光は波長610nm、緑色光は波長530nm、青色光は波長470nm)のみが着色層37の各々を透過し、各色光として観察者側に射出されるようになっている。
【0036】
着色層37R,37G,37Bの領域の間には、ブラックマトリクス層32が形成されている。このブラックマトリクス層32は、着色層37を区分して非発光部分として構成しており、隣接する画素領域XR,XG,XB間の光漏れを防止するものである。ブラックマトリクス層32の構成材料としては、カーボンブラック等の顔料が混入された樹脂からなる遮光層である。なお、このブラックマトリクス層32には、フッ素樹脂等の撥液性を有する樹脂を混合させてもよい。
【0037】
図3は、図1のA部拡大図である。なお、図3においては、説明を分かり易くするため陰極11より上層を省略する。図1,3に示すように、上述した発光層40は、上述した半透過反射機能を有する陰極11と金属反射板15との間に挟持されており、これら陰極11と金属反射板15との間で、発光層40から射出された光を共振させる光共振構造が形成されている。この構成によれば、発光層40から射出された光は、金属反射板15と陰極11との間で往復し、その光学的距離Lに対応した共振波長の光だけが増幅されて取り出される(図3中矢印参照)。このため、発光輝度が高く、スペクトルもシャープな光を取り出すことができる。
【0038】
各発光素子21の共振波長は、金属反射板15と陰極11との間の光学的距離L、つまり金属反射板15と陰極11との間に形成された各層(例えば、有機機能層12、陽極10)の膜厚と屈折率とのそれぞれの積の総和によって求められる。本実施形態では、各画素領域XR,XG,XBの金属反射板15と陰極11との間の光共振器構造における光学的距離Lを調整することで、各画素領域XR,XG,XBの共振波長を異ならせている。つまり、光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子21が含まれているため、白色光を発光する発光層40からそれぞれ異なった色(赤色光、緑色光、青色光)が取り出されるようになっている。そして、赤色光、緑色光、青色光が、それぞれ赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bを透過するため、より色再現性の高い光を取り出すことができる。
【0039】
ここで、青色着色層37Bは、発光素子21の陽極10に対向する位置の発光層40と重なる領域の中央部(例えば、金属反射板15に重なる領域)に設けられた第1青色着色層37Baと、発光層40と重なる領域の周辺部(例えば、金属反射板15に重なる領域外)に設けられた第2青色着色層37Bbと、を備えている。また、緑色着色層37Gは、発光素子21の陽極10に対向する位置の発光層40と重なる領域の中央部(例えば、金属反射板15に重なる領域)に設けられた第1緑色着色層37Gaと、発光層40と重なる領域の周辺部(例えば、金属反射板15に重なる領域外)に設けられた第2緑色着色層37Gbと、を備えている。
【0040】
図4は、視野角による光の射出方向の違いを示す図である。図4においては、説明を分かり易くするために、発光層40、青色着色層37B、ブラックマトリクス層32を除いた構成を省略している。図4に示すように、青色着色層37Bの中央部の第1青色着色層37Baは、発光層40の中央部に重なる位置に設けられている。また、青色着色層37Bの周辺部の第2青色着色層37Bbは、発光層40の周辺部に重なる位置に設けられている。
【0041】
このような構造により、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光、言い換えると観察者の視覚方向の正面(視野角0°)の光は、ほとんど第1青色着色層37Baを透過することがわかる。一方、発光層40から斜め方向に射出された光、例えば視野角θ1(30°)、視野角θ2(60°)の光は、ほとんど第1青色着色層37Baを透過せずに、第2青色着色層37Bbを透過することがわかる。
【0042】
なお、本図では青色着色層37Bを透過する光を例に挙げて視野角による光の射出方向の違いを説明しているが、緑色着色層37Gを透過する光についても青色着色層37Bを透過する光と同様になっている。つまり、第1着色層37Ba,37Gaの各々は、発光層40から射出された光のうち、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光を透過するようになっている。また、第2着色層37Bb,37Gbの各々は、発光層40から射出された光のうち、発光層40から斜め方向に射出された光を透過するようになっている。
【0043】
ところで、発光層40から斜め方向に射出された光は、発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光に対して、光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトする(図5参照)。つまり、視野角が大きくなるにつれ光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光が、第2着色層37Bb,37Gbの各々を透過することになる。そこで、本実施形態の着色層37B,37Gは、第2着色層37Bb,37Gbの各々で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、第1着色層37Ba,37Gaの各々で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されている。
【0044】
本願発明者は、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量を所定の波長の範囲に設定してシミュレーションを行った。そして、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされることにより、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出した。以下、本願発明者が行ったシミュレーションの結果を説明する。
【0045】
図5は、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとの関係を示す図である。本図は、視野角による光の波長と強度との関係(光の強度のスペクトル)と、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係(光の透過率のスペクトル)と、を示している。なお、本図では、光の強度のスペクトルと光の透過率のスペクトルとが掛け合わされる様子がよくわかるように、視野角による光の波長と強度との関係と、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係と、の2つの関係を同図に示している。
【0046】
先ず、視野角による光の波長と強度との関係について説明する。視野角による光の波長と強度との関係において、横軸は波長、縦軸は強度(図示略)を示している。符号S1は視野角0°における光の強度のスペクトル、符号S2は視野角θ1(30°)における光の強度のスペクトル、符号S3は視野角θ2(60°)における光の強度のスペクトル、を示している。
【0047】
視野角0°における光の強度のスペクトルS1にあっては、ピーク波長が480nm程度となっている。また、視野角30°における光の強度のスペクトルS2にあっては、ピーク波長が470nm程度となっている。また、視野角60°における光の強度のスペクトルS3にあっては、ピーク波長が460nm程度となっている。このように、視野角が大きくなるにつれて光の強度のスペクトルのピーク波長が短波長側にシフトしていくことがわかる。また、視野角が大きくなるにつれて光の強度のスペクトルのピーク強度についても低い値にシフトしていくことがわかる。
【0048】
次に、青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係について説明する。青色着色層37Bで透過される光の波長と透過率との関係において、横軸は波長、縦軸は透過率を示している。符号C1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトル、符号C2は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトル、を示している。
【0049】
また、符号P1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長(第1波長)、符号P2は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最大の波長(第2波長)、符号P1’は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長(第1波長)、符号P2’は第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最大の波長(第2波長)、を示している。
【0050】
また、符号F1は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長との間のシフト量を示している。また、符号F2は第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長P1と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2の最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長P1’との間のシフト量を示している。
【0051】
第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1にあっては、光の強度のスペクトルS1と同様にピーク波長が480nm程度となっている。一方、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2にあっては、ピーク波長が510nm程度となっている。このように、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1におけるピーク波長が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2におけるピーク波長よりも小さくなっている。
【0052】
本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1を波長30nm程度に設定している。
【0053】
これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C1と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出したことによる。
【0054】
具体的には、第2青色着色層37Bbにおいては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3と、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルC2と、が掛け合わされる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。
【0055】
なお、本図では青色着色層37Bで透過される光を例に挙げてシミュレーション結果を説明しているが、緑色着色層37Gで透過される光についても青色着色層37Bで透過される光と同様のシミュレーション結果となると、本願発明者は推測している。
【0056】
また、本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1における第1波長P1が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2における第1波長P1’よりも小さくなっている。また、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1における第2波長P2が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2における第2波長P2’よりも小さくなっている。
【0057】
図6は、本実施形態における色度の視野角特性を示す色度図(xy色度図)である。図6中の実線は、視野角が0°から所定の角度まで変化した場合におけるスペクトルのピーク波長の変化を示している。
【0058】
図6に示すように、視野角0°における各色の色度は赤色光がR1、緑色光がG1、青色光がB1となっており、視野角が大きくなるにつれ赤色光がR2、緑色光がG2、青色光がB2に向かって短波長側へシフトしている。そして、これら各色の色度の合成となる白色光の色度は、視野角0°においてW1となっており、視野角が大きくなるにつれW2に向かって短波長側へシフトしている。
【0059】
本実施形態では、xy色度図をu’v’色度図(図示略)に変換したときに、第1青色着色層37Baを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、第2青色着色層37Bbを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’とすると、Δu’v’の値が0.02より小さくなるように設定されている(Δu’v’<0.02)。これにより、観察者から色ずれが分からない程度に色度シフトの量が調整されることになる。
【0060】
本実施形態の有機EL装置1によれば、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長が、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長よりも長波長側にシフトするように調整されている。このため、第2青色着色層37Bbにおいては、ピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3と、ピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光の透過率のスペクトルC2と、が掛け合わされることになる。これにより、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が長波長側にシフトする。このようにして、青色光が取り出される青色着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。すなわち、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0061】
また、この構成によれば、緑色光を発光する発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て発光層40と重なる領域に、第1緑色着色層37Gaと第2緑色着色層37Gbとを有する緑色着色層37Bが設けられている。このため、緑色光が取り出される緑色着色層37Gを構成する第1緑色着色層37Gaで透過される光と第2緑色着色層37Gbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、青色光を透過する青色着色層37Bに加えて緑色光を透過する緑色着色層37Gを最適な透過率に調整することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0062】
また、この構成によれば、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1が波長5〜100nmの範囲内に設定されているので、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトし色ずれが生じてしまうことがない。これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C2と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0063】
また、この構成によれば、第1波長P1が第1波長P1’よりも小さく、第2波長P2が第2波長P2’よりも小さく、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1におけるピーク波長が、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2におけるピーク波長よりも小さくなっているので、短波長側にシフトした光の強度のスペクトルS2,S3のピーク波長が確実に長波長側にシフトする。つまり、青色光が取り出される青色着色層37Bを構成する第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれがより最小限に抑えられる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0064】
また、この構成によれば、色度の視野角特性を示す色度図において、第1青色着色層37Baを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、第2青色着色層37Bbを透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離Δu’v’が、0.02より小さくなるように設定されている。このため、着色層37R,37G,37Bの透過前に、発光層40から斜め方向に射出された光が発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光に対して光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトしていても、着色層37R,37G,37Bの透過後には、発光層40から斜め方向に射出された光と発光層40からほぼ鉛直方向に射出された光との色度がほぼ同じになる。したがって、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0065】
なお、所定割合は、着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、第1波長P1と第1波長P1’と、の間のシフト量F2が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されているのがよい。
【0066】
この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトし色ずれが生じてしまうことがない。これは、本願発明者が、所定割合を光の透過率のスペクトルの最大透過率の50%とし、かつ、前記シフト量F2を波長5〜40nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と光の透過率のスペクトルC1,C2とが掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが、より最小限に抑えられることを見出したことによる。したがって、この構成によれば、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑え、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、第1青色着色層37Baで透過される光の透過率のスペクトルC1のピーク波長と、第2青色着色層37Bbで透過される光の透過率のスペクトルC2のピーク波長と、の間のシフト量F1を波長30nm程度に設定しているが、これに限らず、波長5〜100nmの範囲内に設定することができる。これは、本願発明者が、前記シフト量F1を波長5〜100nmの範囲内に設定することにより、光の強度のスペクトルS1,S2,S3と、光の透過率のスペクトルC1,C2と、が掛け合わされ、その結果、第1青色着色層37Baで透過される光と第2青色着色層37Bbで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられることを見出したことによる。
【0068】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとが、それぞれ光の透過率のスペクトルが異なる第1着色層と第2着色層との2つの着色層を有しているがこれに限らない。例えば、青色着色層37Bのみが、光の透過率のスペクトルが異なる第1着色層と第2着色層との2つの着色層を有していてもよい。
【0069】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bが平面視矩形状であるが、これに限らない。例えば、赤色着色層37R、緑色着色層37G、青色着色層37Bが平面視円形状であってもよいし、平面視楕円形状であってもよい。
【0070】
なお、本実施形態の有機EL装置1は、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が金属反射板15に重なる領域に、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第2着色層が金属反射板15に重なる領域外に設けられている例を示したが、これに限らない。例えば、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が、金属反射板15に重なる領域よりも内側に、あるいは金属反射板15に重なる領域よりも外側に設けられていてもよい。すなわち、青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第1着色層が、少なくとも金属反射板15に重なる領域に設けられ、その周辺部に青色着色層37Bと緑色着色層37Gとの各第2着色層が設けられていればよい。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る有機EL装置2の構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、図1に対応した、第2実施形態における有機EL装置2の概略構成を示した断面図である。図8は、図3に対応した、図7のA’部拡大図である。図7及び図8に示すように、本実施形態の有機EL装置2は、各画素隔壁13間(画素領域XR,XG,XB)に有機機能層12R,12G,12Bがそれぞれ形成されている点、複数の発光素子21の素子基板20Aの法線方向から見て、有機機能層12R,12G,12Bと重なる領域に、着色層37R,37G’,37B’を有している点、着色層37B’,37G’が、それぞれ第1実施形態の第2着色層37Bb,37Gbに代えて色変換層37Bc,37Gcを有している点、で上述の第1実施形態で説明した有機EL装置1と異なっている。その他の点は第1実施形態と同様であるので、図1及び図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0072】
有機機能層12R,12G,12Bは、それぞれ正孔注入・輸送層30Rと赤色発光層40R、正孔注入・輸送層30Gと緑色発光層40G、正孔注入・輸送層30Bと青色発光層40B、を備えている。カラーフィルター37’は、赤色着色層37Rと、緑色着色層37G’と、青色着色層37B’と、を有して構成されている。
【0073】
青色着色層37B’は、青色発光層40Bと重なる領域の中央部に設けられた第1青色着色層37Baと、青色発光層40Bと重なる領域の周辺部に設けられた色変換層37Bcと、を備えている。また、緑色着色層37G’は、緑色発光層40Gと重なる領域の中央部に設けられた第1緑色着色層37Gaと、緑色発光層40Gと重なる領域の周辺部に設けられた色変換層37Gcと、を備えている。色変換層37Bc,37Gcの各々は、発光層40B,40Gから射出された光のうち、発光層40B,40Gから斜め方向に射出された光を透過するようになっている。
【0074】
色変換層37Bc,37Gcは有機蛍光色素をマトリックス樹脂に含有させて形成された層である。色変換層37Bc,37Gcは、それぞれ発光層40B,40Gから射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、発光層40B,40Gから素子基板20Aの法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換するものである。マトリックス樹脂は、有機蛍光色素を分散させる母材の樹脂(バインダー)である。
【0075】
色変換層37Bcは、発光素子21Bから発せられる青色光を緑色光に波長変換する有機蛍光色素を有している。発光素子21Bから発せられる青色光を緑色光に波長変換する有機蛍光色素としては、例えばクマリン系色素、クマリン色素系染料、ナフタルイミド系色素がある。また、色変換層37Gcは、発光素子21Gから発せられる緑色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素を有している。
【0076】
本実施形態の有機EL装置2によれば、発光層40B,40Gから斜め方向に射出された光の強度のスペクトルのピーク波長が長波長側に変換される。このため、第1着色層37Ba,37Gaで透過される光と色変換層37Bc,37Gcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられ、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。また、発光層40B,40Gから射出される光の発光色は所定の色に限定されないため、輝度の高い発光素子を光源に用いることができる。したがって、輝度特性の高い光を取り出すことができる。
【0077】
また、この構成によれば、色変換層37Bcが、青色光を緑色光に波長変換するため、青色発光層40Bから斜め方向に射出された青色光が長波長の緑色光に波長変換される。このため、第1着色層37Baで透過される光と色変換層37Bcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、視野角の違いにより発生する色ずれを抑制することができる。
【0078】
また、この構成によれば、色変換層37Gcが、緑色光を赤色光に波長変換するため、緑色発光層40Gから斜め方向に射出された緑色光が長波長の赤色光に波長変換される。このため、第1着色層37Gaで透過される光と色変換層37Gcで透過される光とのスペクトルのピーク波長のずれが最小限に抑えられる。そして、視野角が大きくなるにつれて白色光が青色光にシフトするのを抑えることになる。したがって、青色光に加えて緑色光を波長変換することにより、視野角の違いにより発生する色ずれを格段に抑制することができる。
【0079】
なお、本実施形態に係る色変換層37Bcは、発光素子21Bから発せられる青色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素を有していてもよい。発光素子21Bから発せられる青色光を赤色光に波長変換する有機蛍光色素としては、例えばローダミン系色素、シアニン系色素、ピリジン系色素、オキサジン系色素がある。
【0080】
なお、本実施形態の有機EL装置2は、青色着色層37B’と緑色着色層37G’とが、それぞれ第1着色層と色変換層との2つの着色層を有しているがこれに限らない。例えば、青色着色層37B’のみが、第1着色層と色変換層との2つの着色層を有していてもよい。
【0081】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器について説明する。
電子機器は、上述した有機EL装置1を表示部として有したものであり、具体的には図9に示すものが挙げられる。
図9(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図9(a)において、携帯電話1000は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1001を備える。
図9(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図9(b)において、時計(電子機器)1100は、上述した有機EL装置1を用いた表示部1101を備える。
図9(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図9(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述した有機EL装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
図9(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図9(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上述した有機EL装置1を用いた表示部1306を備える。
【0082】
図9(a)〜(d)に示すそれぞれの電子機器は、上述した有機EL装置1を有した表示部1001,1101,1206,1306を備えているので、表示部における視野角の違いによって発生する色ずれを抑制することが図られたものとなる。
【0083】
また、有機EL装置1を表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、有機EL装置1を露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,2…有機EL装置(発光装置)、10…陽極(第1電極)、11…陰極(第2電極)、15…金属反射板(光反射層)、20A…素子基板(基板)、21…発光素子、37R…赤色着色層(着色層)、37Ra…第1赤色着色層(第1着色層)、37Rb…第2赤色着色層(第2着色層)、37G,37G’…緑色着色層(着色層)、37Ga…第1緑色着色層(第1着色層)、37Gb…第2緑色着色層(第2着色層)、37Gc,37Bc…色変換層、37B,37B’…青色着色層(着色層)、37Ba…第1青色着色層(第1着色層)、37Bb…第2青色着色層(第2着色層)、40,40R,40G,40B…発光層、1000…携帯電話(電子機器)、1100…時計(電子機器)、1200…情報処理装置(電子機器)、1300…薄型大型テレビ(電子機器)、1001,1101,1206,1306…表示部(発光装置)、F1,F2…シフト量、P1,P1’…第1波長、P2,P2’…第2波長
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に光透過性を有する第1電極と半透過反射性を有する第2電極との間に挟持された発光層と、前記第1電極を挟んで前記発光層の反対側に配置された光反射層と、を有する複数の発光素子を備え、前記光反射層と前記第2電極との間で、前記発光層から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置において、
前記複数の発光素子には、前記光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれ、前記複数の発光素子から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に着色層が設けられ、
前記着色層は、前記発光層と重なる領域の中央部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光を透過する第1着色層と、前記発光層と重なる領域の周辺部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光を透過する第2着色層と、を有し、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
緑色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に前記着色層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量が波長5〜100nmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記着色層を透過する光のスペクトルにおいて、最大の透過率を示す光の波長をピーク波長、前記ピーク波長における光の透過率を最大透過率とし、さらに、前記最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長を第1波長、最大の波長を第2波長としたときに、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記所定割合は、前記着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、前記第2着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’としたときに、Δu’v’<0.02を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2着色層が、前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、前記発光層から前記基板の法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換する色変換層となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記色変換層が、青色光を緑色光に波長変換することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記色変換層が、青色光を赤色光に波長変換することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記色変換層が、緑色光を赤色光に波長変換することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上に光透過性を有する第1電極と半透過反射性を有する第2電極との間に挟持された発光層と、前記第1電極を挟んで前記発光層の反対側に配置された光反射層と、を有する複数の発光素子を備え、前記光反射層と前記第2電極との間で、前記発光層から射出された光を共振させる光共振器構造が構成された発光装置において、
前記複数の発光素子には、前記光共振器構造における共振波長の異なる複数の発光素子が含まれ、前記複数の発光素子から射出される異なる色の光のうち、少なくとも青色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に着色層が設けられ、
前記着色層は、前記発光層と重なる領域の中央部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に長波長側にシフトした光を透過する第1着色層と、前記発光層と重なる領域の周辺部に設けられ前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長が相対的に短波長側にシフトした光を透過する第2着色層と、を有し、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長が、前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長より長波長側にシフトするように調整されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
緑色光を発光する発光素子の前記基板の法線方向から見て前記発光層と重なる領域に前記着色層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、前記第2着色層で透過される光の透過率のスペクトルのピーク波長と、の間のシフト量が波長5〜100nmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記着色層を透過する光のスペクトルにおいて、最大の透過率を示す光の波長をピーク波長、前記ピーク波長における光の透過率を最大透過率とし、さらに、前記最大透過率の所定割合の透過率を示す光の波長のうち最小の波長を第1波長、最大の波長を第2波長としたときに、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第2波長よりも小さく、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長が、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおけるピーク波長よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記所定割合は、前記着色層を透過する光のスペクトルの最大透過率の50%であり、かつ、前記第1着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、前記第2着色層を透過する光のスペクトルにおける第1波長と、の間のシフト量が波長5〜40nmの範囲内になるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、前記第2着色層を透過した光のu’v’色度座標における色度座標と、の距離をΔu’v’としたときに、Δu’v’<0.02を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2着色層が、前記発光層から射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値を、前記発光層から前記基板の法線方向に射出される光の強度のスペクトルのピーク波長の値よりも長波長側に変換する色変換層となっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記色変換層が、青色光を緑色光に波長変換することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記色変換層が、青色光を赤色光に波長変換することを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記色変換層が、緑色光を赤色光に波長変換することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−192138(P2010−192138A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32356(P2009−32356)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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