説明

発光装置

【課題】 コリメート光の光軸の調整を容易にしかも最小の調整しろで行うことができる発光装置を提供する。
【解決手段】 ホルダ20にコリメータレンズ25が固定され、さらに半導体レーザ32を有する発光ユニット30が、コリメータレンズ25との距離が最適化されて固定されている。ホルダ20の先部に凸部26が、支持部15に凹部16が形成され、凸部26と凹部16とが当接部Eで当接して、ホルダ20の傾きが調整できるようになっている。ベース11に対して支持部15の位置を調整し、ホルダ20の傾きを調整することで、コリメート光の光軸O2をベース11の基準光軸O1に一致させることができる。凸部26の球面の中心Ogが発光起点25aに一致しているので、ホルダ20を傾けたときの発光起点25aの軸ずれを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ、光再生装置、光記録装置、光通信装置などに使用され、光源を備えて光を発する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1と特許文献2には、発光装置を備えた光ピックアップが開示されている。
【0003】
光ピックアップには、データの記録または再生のための発光ユニットが設けられている。この発光ユニットは、ケース内に光源として半導体レーザが収納されており、半導体レーザから発せられたレーザ光が、ケースの前方の窓から拡散光として前方に出射される。前記特許文献1,2にも記載されているように、発光ユニットは、ケース内での半導体レーザの取付け誤差があるため、発せられるレーザ光の光軸が、必ずしもケースの中心線と一致しない。
【0004】
そこで、特許文献1と特許文献2に記載の光ピックアップでは、発光ユニットのケースを保持するサブホルダが設けられている。サブホルダに、半導体レーザを中心とする凸球面が形成され、筐体に設けられたメインホルダに凹球面が形成されている。凸球面を凹球面に摺動させることで、半導体レーザから発せられる光の光軸の傾きを調整できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−310319号公報
【特許文献2】特開2005−311203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1と特許文献2に記載された光ピックアップに搭載された発光装置は、ケース内に半導体レーザのみが収納された発光ユニットの傾きを調整可能にしており、半導体レーザから発せられたレーザ光の拡散光をコリメート光とするコリメータレンズは、筐体内に固定されたままである。
【0007】
図7は、前記構造の課題を説明する説明図である。
図7では、ベース1に光通過穴2が開口しており、光通過穴2の内部にコリメータレンズ3が固定されている。発光ユニット4は、ケース5の内部に半導体レーザのチップ6が収納されている。特許文献1と特許文献2に記載された発光装置は、凸部と凹部との摺動により、発光ユニット4の傾きを調整し、発光ユニット4から発せられるレーザ光の光軸Obを、ベース1の内部になるべく正しい角度で入射させようとしている。
【0008】
しかし、コリメータレンズ3が発光ユニット4とは独立して固定されているため、発光ユニット4の傾きのみを調整したときに、発光ユニット4から発せられるレーザ光の光軸Obと、コリメータレンズ3の光軸Oaとに軸ずれδが形成されやすく、この軸ずれδが大きくなると、コリメータレンズ3を通過したレーザ光を高精度なコリメート光にできなくなる。
【0009】
そのため、発光ユニット4を取り付ける際に、発光ユニット4とコリメータレンズ3との距離を変えて、チップ6の発光点をコリメータレンズの焦点に一致させる調整と、発光ユニット4の傾きを変える調整と、さらに発光ユニット4を光軸と直交する向きに移動させて、発光ユニット4の光軸Obとコリメータレンズ3の光軸Oaとの軸ずれδを解消する調整、の少なくとも3通り以上の調整作業を、同時に組み合わせて行うことが必要になり、調整作業が複雑になる。
【0010】
また、図7に示す軸ずれδの調整が必要になる分だけ、調整しろが広くなる。よって、発光ユニット4を光軸と交叉する方向へ移動させる移動量が大きくなり、その分だけベース1を大きくしなくてはならなくなる。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、光源とコリメータレンズとの距離を維持し且つ光源とコリメータレンズとの軸ずれを最小にして、コリメート光の光軸の向きを最小の調整しろで調整できる発光装置を提供することを目的としている。
【0012】
また、本発明は、光源とレンズを保持しているホルダの傾きを調整する際に、ベースに大きな径の光通過穴を形成することを不要とし、ベースを小型化しやすい構造の発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光源と、前記光源から発せられる光をコリメート光に変換するレンズとが設けられた発光装置において、
ホルダに、前記光源と、前記光源の発光方向の前方に位置する前記レンズとが保持され、前記ホルダが取り付けられるベースに、前記ホルダを支持する支持部が設けられており、
前記ホルダに凸部が、前記支持部に凹部が形成され、前記凸部と前記凹部の一方は、その表面の少なくとも一部が、前記ホルダの中心軸上にその中心が位置する仮想球面上に位置し、前記凸部の表面と前記凹部の表面とが摺動して、前記ホルダが、前記レンズの光軸が傾くように調整されて前記支持部に固定されており、
前記レンズが、前記凸部と前記凹部との当接部よりも前記ベースから離れる後方に位置していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の発光装置は、ホルダ内に光源とレンズとが保持されているため、ホルダ内で光源とレンズとの焦点距離を合わせることが可能である。また、ホルダ内で光源とレンズが互いに接近して収納されているため、光源とレンズとの光軸のずれがあったとしてもそのずれ量を最小にできる。図7とは異なり、正確なコリメート光を形成させる目的のためだけに、発光ユニットを光軸と直交する向きに移動させるという調整作業を不要にできる。そのため、発光ユニットの調整作業の複雑化を抑制でき、また発光ユニットを調整する際に調整しろも小さくしやすくなる。
【0015】
ホルダ内では、レンズと光源とが、凸部と凹部との当接部よりも後方に位置しているため、凸部と凹部とを摺動させて、ホルダの傾きを調整したときに、発光ユニットの光の発光起点と、ベース側の基準となる光軸とのずれを少なくできる。これによっても、光軸の位置を調整する調整しろを小さくできる。
【0016】
本発明は、前記仮想球面の中心が、前記中心軸と前記レンズの発光側の最表面との交点にほぼ一致していることが好ましい。
【0017】
前記発光ユニットは、中心軸と前記レンズの発光側の最表面との交点が、コリメート光の発光起点となるため、ホルダを、前記発光起点を支点として傾けることで、レンズの光軸のずれを最小にしたまま、傾き調整を行うことができる。
【0018】
本発明は、前記支持部は、前記レンズの光軸と直交する方向の位置が調整されて、前記ベースに固定されているものとすることが可能である。
【0019】
前記のように、ホルダの傾き調整に起因するコリメート光の光軸のずれを最小にできるため、支持部をレンズの光軸と直交する方向へ移動させる調整作業における調整しろを小さくできる。そのため、発光装置の薄型化を実現しやすい。
【0020】
本発明は、前記ベースに、前記コリメート光が通過する光通過穴が開口しており、前記ホルダの発光側の先部が、前記光通過穴の開口部よりも、後方に離れて位置しているものが好ましい。
【0021】
光源とレンズを搭載したホルダが、光通過穴の外部で傾けられて調整が行われるため、光通過穴の内径に調整しろ分を加算する必要がなく、光通過穴の内径を小さくでき、発光装置を薄型化しやすい。
【0022】
また、本発明は、前記凸部と前記凹部との当接部よりも後方に、ブラケットが前記ベースとは別体にまたは前記ベースと一体に設けられており、前記ブラケットによって、前記ホルダが保持されていることが好ましい。
【0023】
光通過穴の外でホルダの傾き調整を行うときに、ブラケットでホルダを保持することで、傾きを調整した後のホルダを安定させて固定することができる。
【0024】
この場合に、前記ブラケットに、前記ホルダの姿勢を光軸が傾く向きに調整する第1の調整機構が設けられているものが好ましい。
【0025】
ブラケットに設けられた調整機構で発光ユニットの傾きを調整することで、調整作業を容易にできる。
【0026】
また、前記ホルダが前記支持部に固定されている状態で、調整機構により前記ホルダが押圧されて、光軸の傾きが微調整されているものとすることも可能である。この調整によって、コリメート光の光軸の微細な傾き調整が可能である。
【0027】
本発明は、前記ホルダに、前記凸部と前記凹部との当接部よりも、前記ベースの内方である前方へ延長する延長部が設けられており、前記ベースに、前記延長部が保持されているものであってもよい。
【0028】
この場合も、前記ベースに、前記ホルダの姿勢を光軸が傾く向きに調整する第2の調整機構が設けられているものとすることができる。
【0029】
さらに、本発明は、前記レンズが前記ホルダ内に固定され、前記光源を備えた発光ユニットが、前記ホルダ内で、光軸方向への位置が調整された後に固定されているものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、光源を含む発光ユニットとレンズとを収納するホルダが使用され、このホルダと共に発光ユニットの傾きが調整される。ホルダ内では、光源とレンズとの光軸の軸ずれをきわめて小さくできるため、光源の発光点とレンズの光軸との軸ずれを解消するための調整作業が不要になり、ホルダを移動させて光軸の位置を調整する際の調整しろを小さくできる。
【0031】
また、傾き調整のための凸部と凹部との当接部よりも、レンズが後方に後退しているため、ホルダを傾けて調整するときに、コリメート光の発光起点の位置ずれが小さくなる。これによっても、調整しろを小さくしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の発光装置を示す部分斜視図、
【図2】前記発光装置の分解斜視図、
【図3】発光ユニットの分解斜視図、
【図4】前記発光装置の断面図、
【図5】前記発光装置の拡大断面図、
【図6】第2の実施の形態の発光装置を示す断面図、
【図7】従来の課題を説明する説明図、
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示す発光装置10は、RGB発光モジュールに搭載される。
RGB発光モジュールは、ベース11に、赤色(R)のレーザ光を発生する発光ユニットと、緑色(G)のレーザ光を発生する発光ユニットと、青色(B)のレーザ光を発生する発光ユニットとが搭載されている。図1以下の各図には、RGBのいずれか1つの発光ユニットが取り付けられた発光装置10が示されている。発光装置10は、Y1側が前方で、Y2側が後方である。
【0034】
図2に示すように、ベース11には、3箇所に光通過穴12が形成され、ひとつの光通過穴12に、RGBのいずれかひとつの発光ユニットが対向している。発光ユニットから光通過穴12に向けて発光した光は、反射板などで反射され、RGBのそれぞれのレーザ光が同じ光軸上を通過できるようになる。RGB発光モジュールは、いずれかの発光ユニットを選択して発光させることで、同じ光軸上に、赤色(R)のレーザ光と、緑色(G)のレーザ光と、青色(B)のレーザ光を切換えて照射することができる。例えば、3原色を混色させたカラー画像を形成するプロジェクタなどに使用される。
【0035】
発光装置10は、筒状のホルダ20を有している。ホルダ20は金属材料で形成されている。図4と図5に示すように、ホルダ20は、発光側の先端部20aに開口するレンズ保持穴21を有している。レンズ保持穴21のY2側の後端部に段差部21aが形成されている。コリメータレンズ25は、1枚のレンズで構成されており、その直径は、レンズ保持穴21の内周面にほとんど隙間を有することなく挿入できる大きさに形成されている。コリメータレンズ25は、レンズ保持穴21に挿入され、段差部21aに押し付けられ位置決めされて、接着剤などで固定されている。なお、コリメータレンズが、複数のレンズが組み合わされて構成されていてもよい。
【0036】
ホルダ20の内部には、前記レンズ保持穴21の後方に連続するユニット収納穴22が形成されており、その後方には、さらに直径が大きいユニット位置決め穴23が形成されている。ユニット位置決め穴23は、ホルダ20の後端部に開口している。発光ユニット30は、ユニット収納穴22に収納され、ユニット位置決め穴23内で光軸と直交する向きに動かないように保持される。
【0037】
図4と図5に示すように、発光ユニット30は、支持基板31を有している。支持基板31は、金属材料で円板状に形成されている。支持基板31の前面に、光源としてRGBのいずれかの色のレーザ光を発する半導体レーザ32が実装されており、半導体レーザ32のそれぞれの電極に導通する線状端子34が、支持基板31から後方に延びている。支持基板31と半導体レーザ32との間、ならびに支持基板31と線状端子34との間には、絶縁層が設けられている。支持基板31の前方に金属製のケース33が固定されて、半導体レーザ32が、ケース33の内部に密封されている。ケース33の前面には、半導体レーザ32から発せられた光を前方へ出射するための窓33aが開口し、窓33aは、透明板で塞がれている。
【0038】
図4と図5に示すように、発光ユニット30のケース33が、ホルダ20内のユニット収納穴22に挿入され、支持基板31が、ユニット位置決め穴23に挿入されている。
【0039】
支持基板31の直径と、ユニット位置決め穴23の内径はほとんど一緒であり、支持基板31の外周面が、ユニット位置決め穴23にほとんど隙間なく挿入されている。図3にも示すように、支持基板31の外周面の3箇所に保持溝31aが形成されている。治具で前記保持溝31aを保持し、治具を前後させることで、支持基板31の外周面をユニット位置決め穴23の内周面に摺動させて前後に移動させることができる。この作業で、半導体レーザ32の発光点32aが、コリメータレンズ25の焦点に合わせられて、支持基板31とホルダ20とがレーザ溶接などの手段でホルダ20に固定される。
【0040】
発光ユニット30は、ホルダ20内で前後に位置調整されて固定されているので、発光点32aから前方へ発せられるレーザ光の拡散光が、コリメータレンズ25によってコリメート光に変換されて発光ユニット30の前方へ出力されるようになる。
【0041】
発光ユニット30は、その製造過程で、支持基板31上での半導体レーザ32の取付け誤差が生じることがあり、発光点32aから発せられるレーザ光の光軸が、コリメータレンズ25の光軸に対して若干傾く可能性がある。しかし、ホルダ20の内部において、半導体レーザ32の発光点32aとコリメータレンズ25とがきわめて接近しているため、発光点32aとコリメータレンズ25の光軸との軸ずれがわずかであり、ほとんど無視することができる。
【0042】
図5に拡大して示すように、ホルダ20の発光側の先端部20aの外周面には、凸部26が形成されている。凸部26は、空間上に仮定される仮想球面Gの一部に一致している。すなわち、凸部26は、仮想球面Gの中心Ogの周囲を一周する赤道よりも前方(Y1方向)の半球において、緯度G1から緯度G2の間で、光軸の回りに帯状に形成されている。
【0043】
仮想球面Gの中心Ogは、半導体レーザ32の発光点32aよりも前方において、ホルダ20の中心軸Oh上に位置している。図3と図5に示すように、前記中心軸Ohは、ホルダ20に形成されたレンズ保持穴21とユニット収納穴22およびユニット位置決め穴23の中心軸に一致している。最も好ましい実施の形態では、図5に示すように、仮想球面Gの中心Ogが、コリメータレンズ25の最も前方の表面(出射面)とホルダ20の中心軸Ohとの交点である発光起点25aとほぼ一致している。
【0044】
図2および図4と図5に示すように、光通過穴12の開口部において、ベース11の表面11aに支持部15が設けられている。支持部15は金属でリング状に形成されている。支持部15のY1方向に向く取付面15bは、平面であり、取付面15bが、ベース11の表面11aに密着して取り付けられ、レーザ溶接などで固定されている。支持部15の中心には前後に貫通する中心穴15aが開口しており、中心穴15aの内径が、前記光通過穴12の内径よりも大きく形成されている。
【0045】
支持部15には、後方に向く凹部16が形成されている。図5に拡大して示すように、凹部16の表面は、前記仮想球面Gとは別の仮想球面の一部に一致している。凹部16を形成する仮想球面の半径R2は、前記凸部26が一致している前記仮想球面Gの半径R1よりも小さく設定されている。また、半径R2の中心は、ホルダ20の中心軸Oh上に位置している。したがって、凸部26が凹部16との当接部Eが、凹部16の後方(Y2方向)に向く開口エッジに一致する。
【0046】
図1と図2および図3に示すように、ベース11にはブラケット40が固定されている。ブラケット40は、外周部に前方Y1に向く取付面40aが形成されている。取付面40aは平面であり、ベース11の表面11aに密着し、レーザ溶接などで固定されている。
【0047】
ブラケット40には、ベース11の表面11aから後方(Y2方向)に離れた位置に保持穴41が形成されている。保持穴41の内径は、ホルダ20の直径よりも十分に大きく形成されている。ブラケット40には、前記保持穴41に向けて放射状に開口する雌ねじ穴41aが4箇所に形成されており、それぞれの雌ねじ穴41aに保持ねじ42が螺着されている。図4に示すように、ホルダ20は当接部Eよりも後方において保持ねじ42によって外側から保持される。
【0048】
次に、前記ホルダ20などの取付け方法の一例を説明する。
図3に示すように、ホルダ20のレンズ保持穴21内にコリメータレンズ25を挿入し、コリメータレンズ25を段差部21aに押し付けて位置決めし、接着剤などで固定する。発光ユニット30は、ホルダ20の内部に向けて後方から挿入され、支持基板31がユニット位置決め穴23に隙間無く挿入される。支持基板31の保持溝31aを治具で保持し、ホルダ20内で発光ユニット30を前後に移動させて、半導体レーザ32の発光点32aを、コリメータレンズ25の焦点に一致させ、ホルダ20のレンズ保持穴21から前方へコリメート光が出射できるようにする。この調整の後に、支持基板31とホルダ20とをレーザ溶接などで固定する。
【0049】
発光ユニット30は、半導体レーザ32の取付け誤差によって、レーザ光の光軸が、ケース33の中心軸に対して傾いて出射することがある。しかし、半導体レーザ32の発光点32aとコリメータレンズ25が接近しているので、発光点32aから発せられるレーザ光の光軸と、コリメータレンズ25の光軸との軸ずれはほとんど無視できる程度である。
【0050】
支持部15は治具で保持され、取付面15bがベース11の表面11aに密着するように設置される。また、他の治具によって、組み立てが完了したホルダ20が保持され、ホルダ20の先部の凸部26が、支持部15に形成された凹部16に突き当てられる。
【0051】
ホルダ20を保持している治具を動かして、凸部26と凹部26を当接部Eにおいて摺動させてホルダ20を傾かせ、コリメータレンズ25で変換されたコリメート光の光軸O2が、ベース11に設定される基準光軸O1(光通過穴12の中心線)と平行になるように調整作業を行う。また、支持部15を保持している治具をX方向とZ方向に移動させて、コリメート光の光軸O2とベース11の基準光軸O1とを一致させる調整作業を行う。この2種類の調整作業は、どちらを先に行ってもよく、また同時に行うことも可能である。
【0052】
図5に示すように、ホルダ20の内部では、コリメータレンズ25が、凸部26と凹部16との当接部Eよりも後方(Y2方向)に位置しているために、凸部26が含まれる仮想球面Gの中心Ogと、コリメータレンズ25の表面の発光起点25aとを接近させやすく、ホルダ20の傾きを調整したときに、発光起点25aが基準光軸O1と直交する方向へずれる軸ずれ量を小さくできる。図5に示すように、仮想球面Gの中心Ogが発光起点25aに一致していると、ホルダの傾きを調整したときに、理論的には、発光起点25aと基準光軸O1との軸ずれがゼロである。発光起点25aの軸ずれを小さくするためには、仮想球面Gの中心Ogが、発光起点25aの前方および後方においてレンズの中心厚みの範囲内に収まっていることが好ましい。最も好ましくは、発光起点25aと中心Ogとが一致することである。
【0053】
また、半導体レーザ32の発光点32aとコリメータレンズ25との距離がホルダ20内で決められており、半導体レーザ32の取付け誤差などがあったとしても、発光点32aとコリメータレンズ25の中心との軸ずれが無視できるほど小さい。そのため、図7に示す従来例とは異なり、半導体レーザ32の発光点32aとコリメータレンズ25の光軸との軸ずれを調整する必要がない。よって、支持部15をX方向とZ方向へ動かす調整しろをきわめて小さくできる。
【0054】
また、ホルダ20が、光通過穴12の開口部よりも後方(Y2側)に位置し、ホルダ20の一部が光通過穴12の内部に入り込んでいないため、光通過穴12の直径を最小にできる。光通過穴12の直径を小さくでき、且つ支持部15を動かす調整しろが小さい、発光装置10を薄型に構成しやすくなる。
【0055】
前記のように、ホルダ20の傾き調整と、支持部15の位置調整を完了した後に、支持部15とベース11とをレーザ溶接で固定し、ホルダ20と支持部15とをレーザ溶接で固定する。
【0056】
その後、ブラケット40の取付面40aをベース11の表面11aに突き当て、ブラケット40とベース11とをレーザ溶接で固定する。あるいは、ブラケット40をベース11にねじ止めで固定する。
【0057】
ブラケット40をベース11に固定した後に、ブラケット40に形成された4箇所の雌ねじ穴41aに保持ねじ42を螺着し、図4に矢印で示すように、ホルダ20を4方向から保持する保持力Fを与える。ホルダ20は、その先部の凸部26が支持部15に溶接されて固定された不安定な支持状態であるが、ホルダ20の溶接部から後方に離れた場所が保持ねじ42で保持されることで、ホルダ20が安定して固定される。
【0058】
なお、支持部15がベース11にレーザ溶接で固定され、ホルダ20の先部が支持部15にレーザ溶接で固定された後に、4箇所の前記保持ねじ42のねじ込み量を調整し、保持ねじ42による保持力Fを可変させて、コリメート光の光軸O2の傾きを微調整することもできる。保持ねじ42の保持力Fによってホルダ20が光軸O2と交叉する方向へ押されると、凸部26と支持部15との溶接部が変形するなどして、コリメート光の光軸O2の傾きがわずかに矯正されて微調整が行われる。すなわち、保持ねじ42をホルダ20の傾きを調整するための第1の調整機構として使用することが可能である。
【0059】
図6は、本発明の第2の実施の形態の発光装置110を示す断面図である。発光装置110の構成部材のうち、第1の実施の形態の発光装置10と同じ部分には同じ符号を付して、詳しい説明を省略する。
【0060】
この発光装置110に用いられるホルダ120も、コリメータレンズ25が、凸部26と凹部16との当接部Eよりも後方(Y2方向)に位置している。ホルダ120の先部には、ベース11の光通過穴12の内部に延びる延長部120aが設けられている。延長部120aが設けられていることを除き、ホルダ120の構造は、第1の実施の形態のホルダ20と同じである。
【0061】
また、ベース11に保持ねじ42が螺着され、光通過穴12の内部でホルダ120の延長部120aに保持力Fを与えることができる。ホルダ120は、凸部26と凹部16とのレーザ溶接と、前記保持ねじ42の保磁力Fとで保持されているため、ホルダ120が離脱することなく、安定して固定される。
【0062】
この場合も、保持ねじ42を第2の調整機構として利用し、ホルダ120と支持部15とが溶接された後に、保持ねじ42の保持力Fを可変することで、溶接部の変形などを生じさせて、ホルダ120の傾きの微調整を行うことができる。
【0063】
なお、前記実施の形態は、ホルダ20,120の先部に形成された凸部26を含む仮想球面Gの中心Ogが、発光起点25aと一致し、凹部16が含まれる仮想球面の半径R2が前記仮想球面Gの半径R1よりも短くなっている。ただし、これとは逆に、凹部16が含まれる仮想球面の中心が発光起点25aに一致し、前記半径R1が半径R2よりも短くてもよい。
【0064】
あるいは、支持部15に形成されている凹部16は、Y1−Y2方向に延びる円筒形の穴であって、その開口エッジが、凸部26との当接部Eであってもよい。ただし、図5に示すように、凸部26と凹部16の双方を球面の一部で形成すると、当接部E以外での凸部26と凹部16との隙間を小さくでき、支持部15とホルダ20とをレーザ溶接で固定しやすくなる。
【符号の説明】
【0065】
10 発光装置
11 ベース
12 光通過穴
15 支持部
16 凹部
20 ホルダ
21 レンズ保持穴
22 ユニット収納穴
23 ユニット位置決め穴
25 コリメータレンズ
25a 発光起点
26 凸部
30 発光ユニット
31 支持基板
32 半導体レーザ
32a 発光点
33 ケース
40 ブラケット
41 保持穴
42 保持ねじ
120 ホルダ
120a 延長部
E 当接部
G 仮想球面
O1 基準光軸
O2 コリメート光の光軸
Og 仮想球面の中心
Oh ホルダの中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から発せられる光をコリメート光に変換するレンズとが設けられた発光装置において、
ホルダに、前記光源と、前記光源の発光方向の前方に位置する前記レンズとが保持され、前記ホルダが取り付けられるベースに、前記ホルダを支持する支持部が設けられており、
前記ホルダに凸部が、前記支持部に凹部が形成され、前記凸部と前記凹部の一方は、その表面の少なくとも一部が、前記ホルダの中心軸上にその中心が位置する仮想球面上に位置し、前記凸部の表面と前記凹部の表面とが摺動して、前記ホルダが、前記レンズの光軸が傾くように調整されて前記支持部に固定されており、
前記レンズが、前記凸部と前記凹部との当接部よりも前記ベースから離れる後方に位置していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記仮想球面の中心が、前記中心軸と前記レンズの発光側の最表面との交点にほぼ一致している請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記レンズの光軸と直交する方向の位置が調整されて、前記ベースに固定されている請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
前記ベースに、前記コリメート光が通過する光通過穴が開口しており、前記ホルダの発光側の先部が、前記光通過穴の開口部よりも、後方に離れて位置している請求項1ないし3のいずれかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記凸部と前記凹部との当接部よりも後方に、ブラケットが前記ベースとは別体にまたは前記ベースと一体に設けられており、前記ブラケットによって、前記ホルダが保持されている請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項6】
前記ブラケットに、前記ホルダの姿勢を光軸が傾く向きに調整する第1の調整機構が設けられている請求項5記載の発光装置。
【請求項7】
前記ホルダが前記支持部に固定されている状態で、前記調整機構により前記ホルダが押圧されて、光軸の傾きが微調整されている請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記ホルダに、前記凸部と前記凹部との当接部よりも、前記ベースの内方である前方へ延長する延長部が設けられており、前記ベースに、前記延長部が保持されている請求項1ないし4のいずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
前記ベースに、前記ホルダの姿勢を光軸が傾く向きに調整する第2の調整機構が設けられている請求項8記載の発光装置。
【請求項10】
前記レンズが前記ホルダ内に固定され、前記光源を備えた発光ユニットが、前記ホルダ内で、光軸方向への位置が調整された後に固定されている請求項1ないし9のいずれかに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151308(P2011−151308A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13227(P2010−13227)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】