説明

発光装置

【課題】放熱性に優れた発光装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、発光装置は、発光チップと、金属材料からなる外部端子と、前記外部端子を介して前記発光チップが実装された配線板とを備える。前記発光チップは、半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、絶縁層と、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の金属ピラーと、第2の金属ピラーと、樹脂層と、を有する。前記配線板は、前記外部端子を介して前記第1の金属ピラー及び前記第2の金属ピラーと接合された配線と、前記配線の下で前記配線に接して設けられた放熱材と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光や白色光を放出可能な発光装置の用途は、照明装置、画像表示装置のバックライト光源、ディスプレイ装置などに拡大している。特に、白熱電球のような高光束を得るには、大電流を流すことによる発熱が避けられず、高い放熱性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−244012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、放熱性に優れた発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、発光装置は、発光チップと、金属材料からなる外部端子と、前記外部端子を介して前記発光チップが実装された配線板とを備える。前記発光チップは、半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、絶縁層と、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の金属ピラーと、第2の金属ピラーと、樹脂層と、を有する。前記半導体層は、第1の主面と、その反対側に形成された第2の主面と、発光層とを含む。前記第1の電極は、前記第2の主面における前記発光層を有する領域に設けられた。前記第2の電極は、前記第2の主面における前記発光層の外周よりも外側に設けられた。前記絶縁層は、前記半導体層の前記第2の主面側に設けられた。前記第1の配線層は、前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第1の電極に達して形成された第1の開口内に設けられ、前記第1の電極と接続された。前記第2の配線層は、前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第2の電極に達して形成された第2の開口内に設けられて前記第2の電極と接続され、前記第2の電極と接続する面よりも前記第2の電極に対する反対側の面において面積が大である。前記第1の金属ピラーは、前記第1の配線層における前記第1の電極に対する反対側の面に設けられた。前記第2の金属ピラーは、前記第2の配線層における前記第2の電極に対する反対側の前記面に設けられた。前記樹脂層は、前記第1の金属ピラーの側面と前記第2の金属ピラーの側面との間に設けられた。前記配線板は、前記外部端子を介して前記第1の金属ピラー及び前記第2の金属ピラーと接合された配線と、前記配線の下で前記配線に接して設けられた放熱材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態に係る発光装置の模式断面図。
【図2】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図3】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図4】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図5】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図6】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図7】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図8】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図9】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図10】実施形態に係る発光チップの製造方法を示す模式図。
【図11】発光チップの他の具体例を示す模式断面図。
【図12】発光チップのさらに他の具体例を示す模式断面図。
【図13】第2実施形態に係る発光装置の模式断面図。
【図14】第2実施形態の他の具体例を示す模式断面図。
【図15】変形例の発光装置の模式断面図。
【図16】他の変形例の発光装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。また、工程を表す図面においては、ウェーハ状態における一部の領域を表す。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る発光装置の模式断面図である。
【0009】
本実施形態に係る発光装置は、発光チップ5と、外部端子50と、外部端子50を介して発光チップ5が実装された配線板60とを備える。
【0010】
発光チップ5は半導体層15を有する。例えば、本実施形態では、発光チップ5は、互いに分離された複数の半導体層15を有する。各半導体層15は、第1の主面15aと、その反対側に形成された第2の主面を有する。第2の主面側に電極及び配線層が設けられ、光は、主として第1の主面15aから取り出される。
【0011】
各半導体層15は、第1の半導体層11と第2の半導体層13を有する。第1の半導体層11は、例えばn型のGaN層であり、電流の横方向経路として機能する。但し、第1の半導体層11の導電型はn型に限らず、p型であってもよい。第2の半導体層13は、発光層(活性層)12を、n型層とp型層とで挟んだ積層構造を有する。
【0012】
半導体層15の第2の主面側は凹凸形状に加工され、第2の主面側には上段部と下段部が設けられている。第1の主面15aから見て下段部よりも上段側に位置する上段部は、発光層12を含む。下段部は、発光層12を含まず、発光層12の外周(端部)よりも外側に設けられている。
【0013】
上段部の表面である第2の半導体層13の表面には、第1の電極としてp側電極16が設けられている。すなわち、p側電極16は、発光層12を有する領域に設けられている。下段部の第1の半導体層11の表面には、第2の電極としてn側電極17が設けられている。
【0014】
図2(b)に、p側電極16とn側電極17の平面レイアウトの一例を示す。一つの半導体層15において、p側電極16の面積の方がn側電極17の面積よりも広い。したがって、発光領域を広く確保できる。
【0015】
半導体層15の第2の主面側は、絶縁層18で覆われている。また、隣り合う複数の半導体層15の間にも絶縁層18が充填され、各半導体層15の端部(側面)は絶縁層18で覆われている。絶縁層18は、p側電極16とn側電極17との間にも充填されている。絶縁層18は、例えば、微細開口のパターニング性に優れたポリイミド等の樹脂である。あるいは、絶縁層18としてシリコン酸化物を用いてもよい。
【0016】
絶縁層18において、半導体層15に対する反対側の面は平坦化され、その面に第1の配線層としてのp側配線層21と、第2の配線層としてのn側配線層22が設けられている。p側配線層21は、p側電極16に達して絶縁層18に形成された第1の開口18a内にも設けられ、p側電極16と接続されている。n側配線層22は、n側電極17に達して絶縁層18に形成された第2の開口18b内にも設けられ、n側電極17と接続されている。
【0017】
p側配線層21においてp側電極16に対する反対側の面には、第1の金属ピラーとしてp側金属ピラー23が設けられている。n側配線層22においてn側電極17に対する反対側の面には、第2の金属ピラーとしてn側金属ピラー24が設けられている。
【0018】
p側金属ピラー23の周囲、n側金属ピラー24の周囲、p側配線層21およびn側配線層22は、樹脂層25で覆われている。樹脂層25は、隣接するピラー間に充填されている。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの下面は、樹脂層25から露出している。
【0019】
各半導体層15において発光層12を含まない部分に設けられたn側電極17と接続するn側配線層22の面積は、n側電極17側の面よりも、n側電極17とは反対側の面において大きくなっている。すなわち、n側配線層22とn側金属ピラー24とが接触する面積は、n側配線層22とn側電極17とが接触する面積より大きい。また、p側配線層21とp側金属ピラー23とが接触する面積は、p側配線層21とp側電極16とが接触する面積より大きい。また、n側配線層22の一部は、絶縁層18上を、発光層12の下に重なる位置まで延在する。
【0020】
これにより、より広い発光層12によって高い光出力を保ちつつ、半導体層15における発光層12を含まない部分の狭い面積に設けられたn側電極17から、n側配線層22を介して、より広い引き出し電極を形成できる。
【0021】
第1の半導体層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2の半導体層13は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0022】
なお、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの表面(図1において下面)には、必要に応じて、防錆などを目的とした表面処理膜(例えば、Ni、Auなどの無電解メッキ膜、プリコートされたはんだ等)が形成される。
【0023】
n側配線層22、p側配線層21、n側金属ピラー24、p側金属ピラー23の材料としては、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性及び絶縁材との優れた密着性を備えた銅がより好ましい。
【0024】
絶縁層18には、複数の微細開口18a、18bが形成されるパターニングが行われる。このため、絶縁層18として、微細開口のパターニング性に優れた例えばポリイミドなどの樹脂を用いるのが望ましい。
【0025】
樹脂層25は、低コストで厚く形成でき、且つn側金属ピラー24及びp側金属ピラー23の補強に適した樹脂を用いるのが望ましい。例えば、樹脂層25として、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。
【0026】
半導体層15の第1の主面15a上には蛍光体層28が設けられ、さらに蛍光体層28の上にレンズ27が設けられている。蛍光体層28は、各半導体層15の第1の主面15a上、および隣接する半導体層15間の絶縁層18上に連続して一体に設けられている。
【0027】
蛍光体層28は、発光層12からの光を吸収し波長変換光を放出可能である。このため発光層12からの光と蛍光体層28における波長変換光との混合光が放出可能となる。例えば発光層12を窒化物系とすると、その発光層12からの青色光と、例えば黄色蛍光体層28における波長変換光である黄色光との混合色として白色または電球色などを得ることができる。なお、蛍光体層28は、複数種の蛍光体(例えば、赤色蛍光体と緑色蛍光体)を含む構成であってもよい。
【0028】
発光層12から発光された光は、主に、第1の半導体層11、第1の主面15a、蛍光体層28およびレンズ27を進んで、外部に放出される。
【0029】
p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24の下面は、例えば、はんだ、あるいは他の金属材料からなるボールもしくはバンプ形状の外部端子50を介して、配線板60の表面に形成された配線62に対して接合されている。
【0030】
配線板60は、配線62と、配線62の下で配線62に接して設けられた放熱材を有する。放熱材は、絶縁性のセラミック基板61である。セラミック基板61の材料は、例えば、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化アルミニウムなどである。中でも優れた熱伝導性及び高い電気絶縁性を備えた窒化アルミニウムが好ましい。
【0031】
放熱材であるセラミック基板61の厚みは、配線62の厚みよりも厚い。配線62は、例えば銅などの金属材料からなり、セラミック基板61の表面に、所望のパターンでレイアウトされている。セラミック基板61は、配線62を支持すると共に、配線62間を絶縁する。
【0032】
接続対象の半導体層15が異なり、且つ極性も異なる隣接する金属ピラーが、同じ配線62に対して接合されている。例えば、図1の場合、隣接する2つの半導体層15における一方の半導体層15に対応して設けられたp側金属ピラー23と、他方の半導体層15に対応して設けられたn側金属ピラー24とが、図1において真ん中に図示された配線62に対して共通に接合されている。
【0033】
すなわち、2つの半導体層15が直列接続されている。複数の半導体層15を直列接続することにより、高出力化が容易となる。さらに、すべての金属ピラー(あるいは外部端子50)ごとに配線62を形成する必要がなく、配線62の幅やピッチに微細さが要求されず、信頼性が向上する。
【0034】
なお、半導体層15の直列接続数は2つに限定されることなく、より多段の直列接続が可能である。また、複数の半導体層15を並列接続してもよい。
【0035】
また、図15に示すように、各々の金属ピラー23、24(あるいは外部端子50)ごとに配線62を形成してもよい。この場合、複数の半導体層15を直列接続するために、接続対象の半導体層15が異なり、且つ極性も異なる隣接するp側配線層21とn側配線層22とを絶縁層18の表面上でつなげてもかまわない。
【0036】
n側金属ピラー24及びp側金属ピラー23のそれぞれの厚み(図1において上下方向の厚み)は、半導体層15、n側電極17、p側電極16、絶縁層18、n側配線層22およびp側配線層21を含む積層体の厚みよりも厚い。各金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は1以上であることに限らず、その比は1よりも小さくてもよい。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズよりも厚みが小さくてもよい。
【0037】
本実施形態の構造によれば、半導体層15が薄くても、n側金属ピラー24、p側金属ピラー23および樹脂層25を厚くすることで機械的強度を保つことが可能となる。また、外部端子50を介して半導体層15に加わる応力をn側金属ピラー24とp側金属ピラー23が吸収することで緩和することができる。
【0038】
発光チップ5において、電極16、17、配線層21、22、金属ピラー23、24などの熱伝導性に優れた金属から構成される要素がいずれも、半導体層15よりも実装面側に形成されている。これにより、半導体層15から発生した熱を実装面側の下方に効率よく伝導させることができる。さらに、金属ピラー23、24が、金属材料からなる外部端子50を介して、金属材料からなる配線62へと接合され、その配線62の下には熱伝導性に優れたセラミック基板61が設けられている。したがって、発光装置全体として、下方への熱伝導効率がよく、下方への放熱が促進され、発光効率を高めることができる。
【0039】
セラミック基板61は絶縁体である。したがって、発光装置を照明器具等に組み込むにあたって、セラミック基板61の裏面(配線62が形成された面の反対側の面)を、金属体80に結合させても配線62間の短絡を生じさせない。セラミック基板61の裏面を金属体80に結合させることで、放熱性をさらに向上させることができる。さらに、金属体80にフィン構造部80aを設けることで、放熱面積を大きくしてよりいっそうの放熱性の向上を図れる。金属体80は、発光装置が組み込まれる照明器具等の筐体であってもよいし、筐体とは別に設けられたものであってもよい。
【0040】
次に、図2(a)〜図10(b)を参照して、発光チップ5の製造方法について説明する。
【0041】
まず、基板10の主面上に第1の半導体層11を形成し、その上に発光層12を含む第2の半導体層13を形成する。これら半導体層15が例えば窒化物系半導体の場合、半導体層15は例えばサファイア基板上に結晶成長させることができる。
【0042】
次に、図示しないレジストを用いた例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で、図2(a)及びその下面図である図2(b)に示すように、半導体層15を貫通して基板10に達する分離溝14を形成する。分離溝14は、ウェーハ状態の基板10上で例えば格子状に形成され、半導体層15を複数に分離する。
【0043】
また、図示しないレジストを用いた例えばRIE法で、発光層12を含む第2の半導体層13の一部を除去して、第1の半導体層11の一部を露出させる。これにより、半導体層15の第2の主面側に、基板10から見て相対的に上段に位置する上段部と、上段部よりも基板10側の下段に位置する下段部が形成される。上段部は発光層12を含み、下段部は発光層12を含まない。
【0044】
そして、上段部の表面(第2の半導体層13の表面)にp側電極16を、下段部の表面(第1の半導体層11の表面)にn側電極17を形成する。p側電極16とn側電極17はどちらを先に形成してもよく、あるいはp側電極16とn側電極17とを同じ材料で同時に形成してもよい。
【0045】
次に、基板10上の露出している部分すべてを絶縁層18で覆った後、図3(a)に示すように、例えばウェットエッチングにより絶縁層18をパターニングし、絶縁層18に選択的に第1の開口18aと第2の開口18bを形成する。第1の開口18aは、p側電極16に達する。第2の開口18bは、n側電極17に達する。分離溝14には、絶縁層18が充填される。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、絶縁層18の表面、第1の開口18aおよび第2の開口18bの内面に、連続したシードメタル19を形成する。さらに、シードメタル19上に選択的にレジスト41を形成し、シードメタル19を電流経路としたCu電解メッキを行う。
【0047】
これにより、図4(a)及びその下面図である図4(b)に示すように、シードメタル19上に、選択的にp側配線層21とn側配線層22が形成される。p側配線層21及びn側配線層22はメッキ法により同時に形成される銅材料からなる。p側配線層21は、第1の開口18a内にも形成され、シードメタル19を介してp側電極16と接続される。n側配線層22は、第2の開口18b内にも形成され、シードメタル19を介してn側電極17と接続される。
【0048】
n側配線層22においてn側電極17に対する反対側の面は、n側電極17と接続する面よりも大きな面積でもって、絶縁層18の表面上にパッド状に形成される。同様に、p側配線層21においてp側電極16に対する反対側の面は、p側電極16と接続する面よりも大きな面積でもって、絶縁層18の表面上にパッド状に形成される。
【0049】
p側配線層21及びn側配線層22のメッキに使ったレジスト41は、例えば薬液で除去される(図5(a))。この後、図5(b)に示すように、金属ピラー形成用の別のレジスト42を形成し、シードメタル19を電流経路としたCu電解メッキを行う。レジスト42は、レジスト41よりも厚い。
【0050】
これにより、図6(a)及びその下面図である図6(b)に示すように、p側配線層21の表面にp側金属ピラー23が形成され、n側配線22の表面にn側金属ピラー24が形成される。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24は、メッキ法により同時に形成される銅材料からなる。
【0051】
レジスト42は、図7(a)に示すように、例えば薬液で除去される。この後、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24をマスクにして、シードメタル19の露出している部分をウェットエッチングする(図7(b))。これにより、p側配線層21とn側配線層22とのシードメタル19を介した電気的接続が分断される。
【0052】
次に、図8(a)に示すように、絶縁層18に対して樹脂層25を積層させる。樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間、およびp側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に充填される。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの側面は、樹脂層25で覆われる。樹脂層25の裏面は研削され、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの下面は露出される。
【0053】
この後、図8(b)に示すように、基板10を除去する。基板10は、例えばレーザーリフトオフ法により除去される。具体的には、基板10の裏面側から第1の半導体層11に向けてレーザ光が照射される。レーザ光は、基板10に対して透過性を有し、第1の半導体層11に対しては吸収領域となる波長を有する。
【0054】
レーザ光が基板10と第1の半導体層11との界面に到達すると、その界面付近の第1の半導体層11はレーザ光のエネルギーを吸収して分解する。例えば、第1の半導体層11がGaNの場合、Gaと窒素ガスに分解する。この分解反応により、基板10と第1の半導体層11との間に微小な隙間が形成され、基板10と第1の半導体層11とが分離する。
【0055】
レーザ光の照射を、設定された領域ごとに複数回に分けてウェーハ全体にわたって行い、基板10を除去する。第1の主面15a上から基板10が除去されることで、光取り出し効率の向上を図れる。
【0056】
基板10が除去された面は洗浄され、さらにフロスト処理により粗面化される。第1の主面15aが粗面化されることで、光取り出し効率を向上できる。
【0057】
その後、図9(a)に示すように、第1の主面15a上及び隣接する半導体層15間の絶縁層18上に蛍光体層28が形成される。例えば、蛍光体粒子が分散された液状の透明樹脂をスピンコート法で塗布した後、熱硬化させることで、蛍光体層28が形成される。さらに、図9(b)に示すように、蛍光体層28上にレンズ27が形成される。
【0058】
その後、図10(a)に示すように、p側金属ピラー23の下面及びn側金属ピラー24の下面に、外部端子50を設ける。なお、外部端子50は、配線板60側に供給してもよい。
【0059】
そして、分離溝14(図2(a)、(b))の位置でダイシングし、発光チップ5に個片化する(図10(b))。ダイシング時、基板10はすでに除去されている。さらに、分離溝14には、半導体層15は存在せず、絶縁層18として樹脂を埋め込んでおけば、容易にダイシングでき生産性を向上できる。さらに、ダイシング時に半導体層15が受けるダメージを回避することができる。また、個片化後に、半導体層15の端部(側面)が樹脂で覆われて保護された構造が得られる。
【0060】
個片化された発光チップ5は、複数の半導体層15を含む。また、図11に示すように、発光チップ5が、より多数の半導体層15を含む構成であってもよい。あるいは、個片化された一つの発光チップ5は、1つの半導体層15のみを含む構成であってもよい。この場合、図16に示すように、複数の発光チップ5を配線板60上に実装してもよい。また、複数の発光チップ5を配線板60上に実装した構成において、発光チップ5は複数の半導体層15を含んでいてもよい。
【0061】
ダイシングされる前までの前述した各工程は、ウェーハ状態で一括して行われるため、個片化された個々の発光チップ5ごとに、配線及びパッケージングを行う必要がなく、大幅な生産コストの低減が可能になる。すなわち、個片化された状態で、すでに配線及びパッケージングが済んでいる。また、ウェーハレベルで検査することが可能となる。このため、生産性を高めることができ、その結果として価格低減が容易となる。
【0062】
また、図12に示すように、第1の主面15a上にレンズ27を設け、そのレンズ27を覆うように第1の主面15a上に蛍光体層28を設けてもよい。また、レンズ27は、凸状に限らず、凹状であってもよい。
【0063】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る発光装置の模式断面図である。
【0064】
本実施形態に係る発光装置は、発光チップ5と、外部端子50と、外部端子50を介して発光チップ5が実装された配線板70とを備える。発光チップ5の構成及び製造方法は、前述した第1実施形態と同じである。
【0065】
配線板70は、配線62と、絶縁性の樹脂基板75を有する。樹脂基板75は、例えば、ガラス繊維にエポキシ樹脂等の樹脂材料を含浸させた構造を有する。配線62は、例えば銅などの金属材料からなり、樹脂基板75の表面に、所望のパターンでレイアウトされている。樹脂基板75は、配線62を支持すると共に、配線62間を絶縁する。
【0066】
配線板70は、さらに、配線62の下で配線62に接して設けられた放熱材を有する。放熱材は、配線62の下の樹脂基板75に形成されたサーマルビア(放熱用スルーホール)75a内に充填された金属材73である。サーマルビア75aの深さ方向寸法、すなわち金属材3の縦方向の厚みは、配線62の厚みよりも厚い。
【0067】
一つの配線62の下には、放熱材として複数本の金属材73が設けられ、隣接する金属材73間は、樹脂基板75で絶縁されている。あるいは、複数本の金属材73を結合させた、より大きな直径の金属材にしてもよい。
【0068】
樹脂基板75の裏面(配線62が形成された面の反対側の面)には、金属パターン72が形成されている。サーマルビア75aは金属パターン72に達し、金属材73の下端が金属パターン72に接続している。金属パターン72は、複数の配線62に対応して複数形成されている。互いに対応する配線62と金属パターン72とは、金属材73を介して接続されている。複数の金属パターン72間は、複数の配線62間を短絡させないように、互いに分離されている。金属パターン72が分離された部分には樹脂基板75が存在する。
【0069】
p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24の下面は、外部端子50を介して、配線板70の表面に形成された配線62に対して接合されている。
【0070】
本実施形態でも、発光チップ5において、電極16、17、配線層21、22、金属ピラー23、24などの熱伝導性に優れた金属から構成される要素がいずれも、半導体層15よりも実装面側に形成されている。これにより、半導体層15から発生した熱を実装面側の下方に効率よく伝導させることができる。
【0071】
さらに、金属ピラー23、24が、金属材料からなる外部端子50を介して、金属材料からなる配線62へと接合され、その配線62の下には金属材73及び金属パターン72が設けられている。したがって、発光装置全体として、下方への熱伝導効率がよく、下方への放熱が促進され、発光効率を高めることができる。
【0072】
金属パターン72の下面の面積は、金属材73と接続する面積よりも広い。すなわち、金属パターン72は、金属材73よりも広い面積で樹脂基板75の裏面に広がっている。したがって、発光装置を照明器具等に組み込むにあたって、樹脂基板75の裏面を放熱体81に結合させることで、放熱性をさらに向上させることができる。さらに、放熱体81にフィン構造部81aを設けることで、放熱面積を大きくしてよりいっそうの放熱性の向上を図れる。この場合、放熱体81は絶縁性の放熱体であるため、複数の金属パターン72間が短絡することがない。したがって、複数の配線62間も短絡しない。放熱体81は、例えば窒化アルミニウムなどの高放熱性のセラミックスからなる。あるいは、放熱体81は、金属の表面に絶縁膜を被覆処理したものであってもよい。
【0073】
あるいは、図14に示すように、金属パターン72の下に絶縁体85を設ければ、配線板70の裏面を、金属体80に対して結合させることができる。絶縁体85は、熱伝導性を有し、ペースト状、フィルム状あるいは板状に形成される。絶縁体85は、例えば、セラミック粉末を含有するシリコーン樹脂などである。
【0074】
前述した各実施形態において、基板10をすべて除去しないで、薄く研削した上で第1の主面15a上に残してもよい。基板10を薄層化して残すことにより、基板10をすべて除去する構造よりも機械的強度を高めることができ、信頼性の高い構造とすることができる。また、基板10が残っていることで、個片化した後の反りを抑制でき、実装基板等への実装が容易になる。
【0075】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形、代用、省略が可能である。
前述した金属体もしくは放熱体の一部分は、フィン形状になっているが、必ずしもフィン形状である必要はなく、表面積を大きくする構造であればよい。例えば、金属体もしくは放熱体が、より大きなものであっても構わないし、多数のワイヤーが付設されていても構わない。また、金属体もしくは放熱体が、他の大きな部品、例えば家屋の壁などに嵌め込まれる構造であっても構わない。
【0076】
赤色蛍光体層は、例えば、窒化物系蛍光体CaAlSiN:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra1AlSib1c1d1・・・組成式(1)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.6<a1<0.95、2<b1<3.9、0.25<c1<0.45、4<d1<5.7)を用いることが好ましい。
組成式(1)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0077】
黄色蛍光体層は、例えば、シリケート系蛍光体(Sr,Ca,Ba)SiO:Euを含有することができる。
【0078】
緑色蛍光体層は、例えば、ハロ燐酸系蛍光体(Ba,Ca,Mg)10(PO・Cl:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra2AlSib2c2d2・・・組成式(2)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.93<a2<1.3、4.0<b2<5.8、0.6<c2<1、6<d2<11)を用いることが好ましい。
組成式(2)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0079】
青色蛍光体層は、例えば、酸化物系蛍光体BaMgAl1017:Euを含有することができる。
【符号の説明】
【0080】
5…発光チップ、10…基板、11…第1の半導体層、12…発光層、13…第2の半導体層、15…半導体層、15a…第1の主面、16…p側電極、17…n側電極、18…絶縁層、19…シードメタル、21…p側配線層、22…n側配線層、23…p側金属ピラー、24…n側金属ピラー、25…樹脂層、27…レンズ、28…蛍光体層、50…外部端子、60,70…配線板、61…セラミック基板、62…配線、72…金属パターン、73…金属材、75…樹脂基板、75a…サーマルビア、80…金属体、81…絶縁性放熱体、85…絶縁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光チップと、金属材料からなる外部端子と、前記外部端子を介して前記発光チップが実装された配線板とを備え、
前記発光チップは、
第1の主面と、その反対側に形成された第2の主面と、発光層とを含む半導体層と、
前記第2の主面における前記発光層を有する領域に設けられた第1の電極と、
前記第2の主面における前記発光層の外周よりも外側に設けられた第2の電極と、
前記半導体層の前記第2の主面側に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第1の電極に達して形成された第1の開口内に設けられ、前記第1の電極と接続された第1の配線層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第2の電極に達して形成された第2の開口内に設けられて前記第2の電極と接続され、前記第2の電極と接続する面よりも前記第2の電極に対する反対側の面において面積が大である第2の配線層と、
前記第1の配線層における前記第1の電極に対する反対側の面に設けられた第1の金属ピラーと、
前記第2の配線層における前記第2の電極に対する反対側の前記面に設けられた第2の金属ピラーと、
前記第1の金属ピラーの側面と前記第2の金属ピラーの側面との間に設けられた樹脂層と、
を有し、
前記配線板は、
前記外部端子を介して前記第1の金属ピラー及び前記第2の金属ピラーと接合された配線と、
前記配線の下で前記配線に接して設けられた放熱材と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記放熱材の厚みは、前記配線の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記放熱材は、絶縁性のセラミック基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記セラミック基板における前記配線が形成された面の反対側の面が、金属体に結合されたことを特徴とする請求項3記載の発光装置。
【請求項5】
前記金属体は、フィン構造部を有することを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
前記配線板は、前記配線を支持する樹脂基板をさらに有し、
前記放熱材は、前記配線の下の前記樹脂基板に形成されたサーマルビア内に設けられた金属材であることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項7】
前記配線板は、前記樹脂基板における前記配線が形成された面に対する反対側の面に形成された金属パターンをさらに有し、
前記サーマルビアは前記金属パターンに達し、前記金属材の下端が前記金属パターンに接続されたことを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記金属パターンにおける前記金属材に対する反対側の面の面積は、前記金属材と接続する面積よりも広いことを特徴とする請求項7記載の発光装置。
【請求項9】
前記金属パターンの下面が、絶縁性放熱体に結合されたことを特徴とする請求項7または8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記絶縁性放熱体は、フィン構造部を有することを特徴とする請求項9記載の発光装置。
【請求項11】
前記金属パターンの下面が、熱伝導性を有する絶縁体を介して金属体に結合されたことを特徴とする請求項7または8に記載の発光装置。
【請求項12】
前記金属体は、フィン構造部を有することを特徴とする請求項11記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1の電極の面積は、前記第2の電極の面積よりも広いことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項14】
前記第2の配線層と前記第2の金属ピラーとが接触する面積は、前記第2の配線層と前記第2の電極とが接触する面積より大であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項15】
前記第2の配線層の一部は、前記絶縁層上を、前記発光層に重なる位置まで延在することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項16】
前記第1の金属ピラー及び前記第2の金属ピラーのそれぞれの厚みは、前記半導体層、前記第1の電極、前記第2の電極、前記絶縁層、前記第1の配線層及び前記第2の配線層を含む積層体の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−249501(P2011−249501A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120260(P2010−120260)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】