説明

発光装置

【課題】発光素子の光利用効率を高め、蛍光体板により波長変換を行ってもイエローリングのない安定した白色光や、赤色、緑色の色むらのない安定した色の光を発光する安価な発光装置を提供するものである。
【解決手段】発光素子と、発光素子が発光する光を波長変換する蛍光体板を備える発光装置において、発光素子を形成する半導体層の表面に、発光素子が発光する光の半波長以下のピッチを有する凹部を形成して、矩形周期構造体を構成し、蛍光体板は、矩形周期構造体の上方に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光ダイオード(以下LEDという)を用いた発光装置に関し、特にLEDの光を蛍光体板により波長変換して、赤色、緑色光を発光する発光装置、あるいは、混合して白色光を発光する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子としてのLEDは、長寿命で、小型で発光効率がよく、発光色が鮮やかであるから、照明用の小型の電子部品として広く利用されてきた。近年、特に、演色性の優れた白光色を発光する発光装置として、青色や紫外線を発光するLEDと蛍光体板を組み合わせ、波長変換した黄色光と青色光を混合して白色光を発光する発光装置が、照明装置や、液晶ディスプレイ、携帯電話等の携帯端末のバックライトとして、広く利用されて来ている。
【0003】
そして、LEDに関しては、青色や紫外線を発光するLEDの表面に周期的な凹凸を有する矩形周期構造体を形成して、発光層で発光した光の取り出し効率を向上したLEDが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、LEDの発光した青色光を、蛍光体板を用いて黄色光に波長変換し混合して、白色光を発光する発光装置において、蛍光体板に含まれる蛍光体の分布の調整、蛍光体の含まない領域の割合の調整、蛍光体板の厚さを部分的に調整する等、蛍光体板の構造を調整して白色光の色調調整を行う発光装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、LEDに波長変換基板を直接接着固定し、LEDの発光層で発光した光が波長変換基板を効率よく透過し光量の減衰を抑えることを可能とした発光装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
図8は、特許文献3に記載の発光装置500の構成を説明するための断面図である。図8に示すように、発光装置500は、発光層513と素子基板514からなるLED510が回路基板540にフリップチップ実装され、LED510の素子基板514に波長変換基板520が一体に接合され、樹脂封止体570によって封止、保護されている。そして、この発光装置500は、マザーボード580に表面実装されて、外部電力の供給を制御されている。
【0007】
これにより、発光装置500は、発光層513で発光した青色光が波長変換基板520の中の微小な蛍光粒子を励起し、長波長の可視光の黄色光に波長変換され、混合して矢印で示す白色光60、61を発光することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−184313号公報
【特許文献2】特開2006−303373号公報
【特許文献3】特開2002−94123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示す従来のLEDは、その表面に周期的な凹凸を有する矩形周期構造体を形成して、発光層で発光した光の取り出し効率を向上したものの、発光した光の指向性については全く言及せず、その特徴を生かす発光装置が提案されていない。
【0010】
そして、特許文献2に示す従来の発光装置は、LEDが発光する光を波長変換して白色光を発光する構成を形成しているが、その白色光の色調の調整を、蛍光体板の形状を調整することで行っている。従って、蛍光体板1個1個を調整するため量産性に乏しく、安価に提供することが出来ない。
【0011】
また、特許文献3の従来の発光装置は、図8に示すように、垂直方向の白色光60と斜め方向の白色光61は、波長変換基板520を透過する光路長に差がある。すなわち、斜め方向の白色光61は、光路長が長い分、蛍光粒子に励起される黄色光が強くなり、黄色味を帯びた白色光となる。従って、斜め方向の光が透過する波長変換基板520の外周付近は、黄色味を帯びた白色光となり、いわゆる、イエローリングが発生し、白色光の色調を乱す問題があった。また、赤色、緑色の光に波長変換する発光装置にあっても、同様の原因で、大きな色むらが発生する問題があった。
【0012】
本発明の目的は、光利用効率が高く、イエローリングのない安定した白色光や、赤色、緑色の色むらのない光を発光する安価な発光装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発光装置は、上記目的を達成するために、下記記載の構成を採用するものである。
発光素子と、発光素子が発光する光を波長変換する蛍光体板を備える発光装置において、発光素子を形成する半導体層の表面に、発光素子が発光する光の半波長以下のピッチを有する凹部を形成して、矩形周期構造体を構成し、蛍光体板は、矩形周期構造体の上方に配置されていることを特徴とする。
【0014】
この場合、矩形周期構造体の凹部は、円柱或いは角柱形状であることが好ましい。
また、矩形周期構造体の凹部は、同心円で形成された溝形状であってもよい。
【0015】
この場合、発光素子は、青色光を発光する発光ダイオードであり、蛍光体板は、青色光を黄色光に波長変換する蛍光体を含有し、青色光と黄色光を混合して白色光を発光することが好ましい。
また、蛍光体板は、矩形周期構造体に当接して配置されていることが好ましい。
【0016】
この場合、発光素子と蛍光体板の周囲が白色反射樹脂で充填されていることが好ましい。
また、白色反射樹脂は、白色顔料を含有するシリコーン系樹脂であってもよい。
【0017】
この場合、蛍光体板と白色反射樹脂が拡散樹脂で封止されていることが好ましい。
また、拡散樹脂は、拡散剤を含有する透明樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明の発光装置は、発光素子を形成する半導体層の表面に、矩形周期構造体を形成したので、光の取り出し効率の優れた垂直方向の光が強く出射し、蛍光体が一様に分布する単なる平板の蛍光体板であっても、蛍光体板における波長変換効率を均一にして、発光する光の発光むらを低減することができる。すなわち、イエローリングの発生がない安定した白色光や、赤色、緑色光の色むらのない光を発光する発光装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の発光装置の外観と構成を説明するための斜視図と断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるLEDを説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施例1におけるLEDに形成された矩形周期構造体を説明するための部分拡大平面図である。
【図4】本発明の実施例1におけるLEDに形成された矩形周期構造体の屈折率と出射光の透過率を説明するためのグラフである。
【図5】本発明の実施例2におけるLEDに形成された矩形周期構造体を説明するための部分拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施例3におけるLEDに形成された矩形周期構造体を説明するための平面図である。
【図7】本発明の実施例4における発光装置の外観と構成を説明するための斜視図と断面図である。
【図8】特許文献3に示した従来技術を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
なお、以下に説明する実施例において、いわゆる、表面実装型の非常に小型の白色光を発光する発光装置であって、LEDが発光する青色光を蛍光体板により黄色光に波長変換して白色光を発光する例として説明する。
【0021】
[実施例1]
図1から図4は、本実施例1の発光装置の構成を説明するための図面であり、図1(a)は、この発光装置の外観を説明するための斜視図である。図1(b)は、この発光装置の構成を説明するためのA−A断面図である。図2(a)は、この発光装置の発光素子であるLEDの構成を説明するための断面図であり、図2(b)は、LEDの表面層に形成した矩形周期構造体を説明するため一部を抜き出した部分拡大斜視図である。図3(a)は、図2(b)の矩形周期構造体の平面図であり、図3(b)は、図2(b)の矩形周期構造体の断面図である。図4は、LEDの表面層に形成された凹部による矩形周期構造体の見かけ上の屈折率とLEDが発光する光の透過率の関係を説明するためのグラフである。各図において、同一の構成部材には同一の番号を付して重複する説明は省略する。
【0022】
[実施例1の発光装置の全体構成:図1]
まず、図1を用いて本発明の発光装置の全体構成を説明する。
図1(a)に示すように、発光装置1は、いわゆる、表面実装型であって、外形寸法は、幅3mm、奥行き3mm、厚さ1mmほどで、非常に小型の形状に形成されている。そして、この発光装置1は、発光源であるLEDがその中央に実装された回路基板40と、LEDの上方で透過する光の波長変換を行う蛍光体板20と、そして、LEDと蛍光体板20の周囲に充填され光の漏洩を防止する白色反射樹脂30により構成されている。
【0023】
図1(b)に示すように、LED10は、窒化物半導体を用いたLEDであって、例えば、青色光を発光し、ガラスエポキシ基板からなる回路基板40の中央部にフリップチップ実装されている。このLED10の最上層の上面には青色光の半波長以下のピッチで凹部を形成して、矩形周期構造体11(後で詳述する)が構成され、その上面全体に蛍光体板20が一体に接合されている。蛍光体板20(例えば、YAG系の蛍光体を含有する平板)は、例えば、LED10が発光する青色光を波長変換して、黄色光に変換し、混合して白色光を発光する機能を有する。
【0024】
白色反射樹脂30は、反射性を良くした材質が好ましく、例えば、白色顔料を含有するシリコーン樹脂からなり、回路基板40の上で蛍光体板20とLED10の周囲を充填してLED10の側面から漏洩する光を遮断して、漏洩した紫外線による各部材の劣化を防止する。回路基板40は、不図示の電極配線パターンとその裏面には不図示の外部接続端子が形成され、フリップチップ実装されたLED10と電気的に接続し、外部接続端子からLED10に電力の供給を行う。以上のように、LED10が発光した光全てが蛍光体板を透過することで、波長変換が最も効率よく、明るい発光装置の提供が可能となる。
【0025】
そして、LED10の発光層から出射した光は、LED10の最上面に形成された矩形周期構造体11を透過する際に、後述するように、光の取り出し効率の優れた垂直方向の光が強く透過し、この垂直透過光は、蛍光体板20を垂直に透過するから光路長が一定で、波長変換される黄色光が均一であり、青色光と混合した矢印で示す垂直白色光60に色むらやイエローリングの問題を生ずることがない。従って、蛍光体板20は、蛍光体を含有する安価な単なる平板形状でありながら、光の均一な色調の波長変換が可能であって、更に、量産性にも優れている。
【0026】
[実施例1のLEDの矩形周期構造体に関する説明:図2〜図4]
図2〜図4において、本発明の基本的な考え方を説明する。
光が空気層から物質に入射、或いは、物質から空気層に出射する場合、その物質の表面に、空気層とその物質の中間の屈折率を有する構造体を形成すると、その物質から直接空気層に出射する場合より、透過率が向上することが良く知られている。
【0027】
すなわち、その構造体は、入射光、或いは、出射光の波長以下、望ましくは半波長以下のピッチの凹凸の矩形周期構造を持った構造体を物質表面に形成するモスアイ構造であって、空気側からその物質中に光が入射する際、物質表面の矩形の周期構造体の存在により、光は空気とこの物質との中間の屈折率を持つ物質が、矩形周期構造体に存在すると感じて、その部分の屈折率が物質本来の屈折率より低下し、透過率が向上するものであり、物質から空気に出射する場合も同様である。
【0028】
図2(a)に示すように、LED10は、窒化物半導体からなり、p型層12、発光層13、n型層14から形成され、更に、p型層12の表面に、凹部からなる矩形周期構造体11が形成されている。
【0029】
発光層13から出射した矢印で示す垂直出射光50は、p型層12を透過し、p型層の表面に形成された矩形周期構造体11も透過して、空気層、すなわち外部に出射する。
一般に知られているように、フレンネルの法則から界面の2つの屈折率をn1、n2とすると、反射率Rと透過率Tは、R=((n2/n1)−1)/((n2/n1)+1)、T=1−R、で表される。
【0030】
図2(a)の矩形周期構造体11の一部分を抜き出し拡大した図2(b)の部分拡大斜視図に示すように、この矩形周期構造体11は、p型層12の表面に、凹部として、発光波長の半波長以下の一定間隔のピッチPで一定深さLの円柱形状の凹部111と、凸部として、円柱形状の凹部の壁部112が形成されており、円柱形状の深さLは、入射光の波長に対しL>λ/(N−1)(p型層の屈折率をN)が望ましいことも知られている。
【0031】
図2(b)の矩形周期構造体の平面図である図3(a)に示すように、矩形周期構造体11は、凹部111とその周囲の壁部112(二点差線で示す)からなるセル113の集合体により形成される。隣り合ったセル113は、青色光の半波長以下の一定ピッチPで配列している。従って、この矩形周期構造体11の屈折率Nxは、平面図上の凹部111の表面積をS1、壁部112の表面積をS2、および、p型層の屈折率をN、凹部の屈折率をnとすると、Nx=(n×S1+N×S2)/(S1+S2)で表される。
【0032】
上記の式により、矩形周期構造体11の屈折率は、表面積S1、S2をパラメータとして、所定の屈折率に設定することが可能となる。すなわち、p型層12の材質による屈折率Nから空気の屈折率=1まで、屈折率Nxを設定することが可能となる。
【0033】
更に、図2(b)の矩形周期構造体の断面図である図3(b)に示すように、発光層13(図2(a)参照)から出射する矢印で示す垂直出射光50は、p型層12を透過し、矩形周期構造体11の凹部111の深さLの底から入射し、見た目上必要な凹部の深さLを透過することで、矩形周期構造体11を認識して、光がp型層と矩形周期構造体と空気層を透過するから、透過率が高くなる。
【0034】
しかし、斜め下方から入射する斜め出射光51は、p型層12を透過後、凹部111の途中で空気層から壁部112を再び透過することになり、見た目上必要な凹部深さLが得られない。そのため、矩形周期構造体11の存在を認識できず、p型層12自体の屈折率と認識して、p型層から空気層に出射するから、透過率の向上が認められない。
すなわち、LED10から垂直方向に出射する光は、発光層13からの光の取り出し効率が良く光強度が優れており、斜め方向に出射する光は、光の取り出し効率が低く光強度も低く、その結果、LED10の出射光が垂直方向の指向性を有することとなる。
【0035】
次に、LED10から垂直方向に出射する光の取り出し効率に関して、すなわち、LED透過率と矩形周期構造体の屈折率Nxの関係を図4で説明する。
図4のグラフの縦軸は、発光層13からp型層12と矩形周期構造体11を透過して出射する青色光の透過率をLED透過率%としたものであり、横軸は、上述した矩形周期構造体11の凹部と壁部の面積と屈折率の関係から算出された屈折率Nxである。グラフに示すように、矩形周期構造体11の屈折率Nxをパラメータとして、上述したフレンネルの法則の関係式から、LED透過率は、矩形周期構造体11の屈折率Nx=1.55のとき、最大透過率=91%が得られる。
【0036】
すなわち、LED10の発光層13から様々な方向に発せられる青色光は、屈折率Nx=1.55となる形状の矩形周期構造体11を透過することにより、光取り出し効率の優れた垂直方向の光だけが強く出射する。従って、LEDのこの垂直方向の出射光は、単純な平板である蛍光体板を垂直に透過し、波長変換効率が均一で、色むらのない、白色光であればイエローリングのない発光装置を提供することが可能となる。そして、矩形周期構造体11は、p型層12に単に2レベルの凹凸として、円柱形状の凹部を形成するだけであるから、加工の容易な安価なLEDを得ることが可能となる。
【0037】
[実施例2の矩形周期構造体の説明:図5]
本発明の実施例2は、実施例1の矩形周期構造体11の凹部が円柱形状であるのと異なり、その凹部が六角柱形状である点である。
【0038】
図5(a)は、本発明の実施例1の図2(b)と同様に、LED10のp型層12表面に形成された矩形周期構造体の一部を拡大して示す図であり、実施例1の円柱形状の凹部の替わりに六角柱形状の凹部を形成した矩形周期構造体の部分拡大斜視図である。図5(b)は、この矩形周期構造体のB部を更に拡大して示した平面図である。各図において、同一の構成部材には同一の番号を付して重複する説明は省略する。
【0039】
図5(a)に示すように、矩形周期構造体11は、p型層12の表面に凹部として、六角柱形状の凹部114が、青色光の半波長以下のピッチPの一定深さLで連続して形成され、そして、凹部114の周囲の壁部115と共に、いわゆる、ハニカム構造の形状で構成されている。凹部114の周囲の壁部115は、実施例1で説明した円柱形状の凹部の壁部112に相当し凸部を形成している。
【0040】
図5(b)に示すように、矩形周期構造体11は、凹部114とその周囲の六角形の壁部115(二点差線で示す)からなるセル116の集合体により形成される。隣り合った六角形のセル116は、青色光の半波長以下の一定ピッチPで配列している。従って、この矩形周期構造体11の屈折率Nxは、平面図上の凹部114の表面積をS1、壁部115の表面積をS2として、実施例1と同様の式で表される。そして、図4のグラフに示すように、透過率が最大となる所定の屈折率Nx=1.55に設定することが可能となる。
【0041】
実施例1と同様に、LED10のp型層12に単に2レベルの凹凸として、六角柱形状の凹部を形成するだけで、加工の容易な安価な矩形周期構造体11を有するLEDを得ることが可能であって、このLED10と単純な平板の量産性の優れた蛍光体板で構成した発光装置であっても、色むらのない、白色光であればイエローリングのない発光装置を提供することが可能となる。
【0042】
[実施例3の矩形周期構造体の説明:図6]
本発明の実施例3は、実施例1のLED10のp型層12の表面に形成された矩形周期構造体11の凹部が円柱形状であるのと異なり、その凹部が同心円状の溝部で形成されている点である。
【0043】
図6(a)は、LEDのp型層とp型層の表面に形成された矩形周期構造体の模式的な平面図であり、矩形周期構造体が同心円の円筒状の凹部によって形成されている。図6(b)は、図6(a)の同心円の中心を通るC−C断面図であり、図6(c)は、図6(b)のD部を拡大して示した部分拡大断面図である。各図において、同一の構成部材には同一の番号を付して重複する説明は省略する。
【0044】
図6(a)、(b)に示すように、LED10のp型層12の表面に形成された矩形周期構造体11は、凹部が同心円の円筒状で形成され、凹部である溝部のピッチが青色光の半波長以下のピッチで形成されている。
【0045】
図6(c)に示すように、この矩形周期構造体11は、p型層12の表面に、凹部として、溝部117が青色光の半波長以下のピッチP、一定深さL、溝幅Wで形成され、凸部が矩形の壁部118で形成されている。そして、溝深さLは、実施例1と同様に、入射光の波長に対しL>λ/(N−1)(p型層の屈折率をN)である。
【0046】
従って、矩形周期構造体11の屈折率Nxは、溝部のピッチをP、溝の幅をW、物質の屈折率をN、空気の屈折率をnとすると、Nx=(n×W+N×(P−W))/Pで表される。実施例1と同様に、溝幅と溝のピッチと物質の屈折率と空気層の屈折率から、透過率が最大となる所定の屈折率に矩形周期構造体11の屈折率Nx=1.55を設定することが可能となる。
【0047】
そして、図3(b)に示す実施例2と同様に、下方垂直方向から透過する青色光50は、矩形周期構造体11を認識して、p型層12と矩形周期構造体11と空気層を最大の透過率で透過し、蛍光体板を垂直に透過する。一方、下方斜めからp型層12を透過してくる青色光51は、周囲の壁部118を再透過し、見た目上必要な溝深さLが得られないため、p型層12そのものの屈折率と認識して、矩形周期構造体11であっても屈折率が変化せず、透過率が向上しない。
【0048】
従って、実施例2と同様に、LED10の発光層13(図2(a)参照)から様々な方向に発せられる青色光は、凹部が同心円の円筒状の溝部で形成される矩形周期構造体11を透過することで、光取り出し効率の優れた垂直方向の光が強く透過する指向性を有する。従って、p型層12に単に2レベルの凹凸として、同心円の円筒状の凹部を形成するだけの、加工の容易な安価なLEDと、単純な平板の蛍光体板で構成する発光装置であっても、色むらのない、白色光であればイエローリングのない発光装置を提供することが可能となる。
【0049】
[実施例4]
図7を用いて実施例4の発光装置の全体構成を説明する。図7(a)は、発光装置の外観の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のE−E断面の断面図である。なお、各図において、同一の構成部材には同一の番号を付して重複する説明は省略する。
【0050】
[実施例4の発光装置の全体構成:図7]
実施例4の発光装置は、実施例1の発光装置の構成に対して、拡散樹脂が追加構成されている点だけが異なっている。
【0051】
図7(a)に示すように、実施例4の発光装置2は、実施例1の発光装置1の上部に拡散樹脂(例えば、拡散剤を含有する透明樹脂)が構成され、蛍光体板20と白色反射樹脂30を封止して保護する機能と、蛍光体板20から出射した白色光を周囲に満遍なく照射拡散することを可能とする機能を有している。
【0052】
すなわち、図1の実施例1で説明したと同様に、LED10から出射した光は、矩形周期構造体11を透過して、垂直方向に強く透過し、蛍光体板20の光路長が一定の均一な厚さを透過して波長変換され、色むらやイエローリングの問題のない混合された白色光となる。
【0053】
そして、図7(b)に示すように、蛍光体板20を透過した白色光が拡散樹脂に入射して拡散され、矢印で示す垂直方向の白色光60、斜め方向の白色光61、そして、横方向の白色光62となる。すなわち、蛍光体板20を覆い封止する拡散樹脂を形成することにより、広い範囲に光を拡散するにもかかわらず、色むらやイエローリングの問題のない白色光を出射することが可能となる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、赤色光、緑色光を蛍光体板で波長変換して出射し、色むらのない発光装置を提供することも可能である。
【0055】
更に、窒化物半導体を用いたLEDの発光側がp型層で説明したが、n型層であっても全く同等の効果が得られることは言うまでもなく、更に、p型層に形成される矩形周期構造体の凹部の六角柱形状は、角柱であれば、四角柱、八角柱形状であっても、良いことは明らかである。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されることはなく、それらの全てを行う必要もなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した内容の範囲で種々変更や省略をすることが出来ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1、2:発光装置
10:LED
11:矩形周期構造体
12:p型層
13:発光層
14:n型層
20:蛍光体板
30:白色反射樹脂
31:拡散樹脂
40:回路基板
50:垂直出射光
51:斜め出射光
60:垂直白色光
61:斜め白色光
111、114:凹部
112、115、118:壁部
113、116:セル
117:溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子が発光する光を波長変換する蛍光体板を備える発光装置において、
前記発光素子を形成する半導体層の表面に、前記発光素子が発光する光の半波長以下のピッチを有する凹部を形成して、矩形周期構造体を構成し、
前記蛍光体板は、前記矩形周期構造体の上方に配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記矩形周期構造体の凹部は、円柱或いは角柱形状であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記矩形周期構造体の凹部は、同心円で形成された溝形状であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、青色光を発光する発光ダイオードであり、前記蛍光体板は、青色光を黄色光に波長変換する蛍光体を含有し、青色光と黄色光を混合して白色光を発光することを特徴とする請求項1〜3記載の発光装置。
【請求項5】
前記蛍光体板は、前記矩形周期構造体に当接して配置されていることを特徴とする請求項1〜4記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子と前記蛍光体板の周囲が白色反射樹脂で充填されていることを特徴とする請求項1〜5記載の発光装置。
【請求項7】
前記白色反射樹脂は、白色顔料を含有するシリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項6記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光体板と前記白色反射樹脂が拡散樹脂で封止されていることを特徴とする請求項6、7記載の発光装置。
【請求項9】
前記拡散樹脂は、拡散剤を含有する透明樹脂からなることを特徴とする請求項8記載の発光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98194(P2013−98194A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236710(P2011−236710)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】