説明

発光風鈴

【課題】
従来からの音色鑑賞に加え釣鐘外において風力と連動した発光を伴う可視的観賞の両方が可能な風鈴を提供する。
【解決手段】
釣鐘から吊り下げられている紐や短冊に発光機能を持たせることにより、風力に連動した光の3次元的な揺らぎと音色とが混ざり合った従来にはない独特の鑑賞手段を有する発光風鈴が提供できる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風鈴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の風を受けて鳴る風鈴は、上端が固定された紐により吊下げられた釣鐘(風鈴本体)と、釣鐘を貫通した紐に釣鐘内で取り付けられた振り子と、前記振り子と連なって紐の下端に吊下げられた短冊とから構成される。短冊が風力を受けると、短冊に連動して振り子が振られ、振り子が釣鐘内部に衝突して風鈴独特の音色を生じさせることが一般的に知られている。
【0003】
しかし従来の風鈴では、風鈴と振り子とが衝突した際に生じる音色しか味わえないため、単調で飽きやすいといった問題を抱えている。 一方特許文献1および2では、短冊が受ける風により振り子が釣鐘内部に衝突した時、釣鐘内部で発光させる方法が記載されている。音と同時に視覚的にも風を観賞し得る風鈴が開示されているが、光は釣鐘内での発生に限定されており光の動的効果に乏しかった。
【特許文献1】特開2001−209386号公報
【特許文献2】実用新案登録第3121130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来からの音色鑑賞に加え釣鐘外において風力と連動した発光を伴う可視的観賞の両方が可能な風鈴を提供するものである。すなわち釣鐘から吊り下げられている紐や短冊に発光機能を持たせることにより、風力に連動した光の3次元的な揺らぎと音色とが混ざり合った従来にはない独特の鑑賞効果を演出させる発光風鈴を提供することを目的としている。また短冊や紐が風に揺られて大きく右左に躍動して発光するため遠方からでも人目につきやすく、例えば、短冊面を発光する広告や情報媒体として利用できる。このように短冊や紐に発光機能をもたせることにより娯楽、観賞、癒し、情報発信、広告、等従来以上に幅広い用途への使用が可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1では、中空である釣鐘に吊設された紐と前記紐の下端に吊り下げられた短冊とのいずれかまたはすべてが発光機能を有した発光風鈴であることを特徴としている。同時に従来法により振り子にも発光機能を持たせることもできる。その結果、風により紐や短冊が連動して左右に大きく揺れると同時に短冊および紐が発光するという従来にはない光と音による風情のある3次元的な鑑賞空間が生まれる。
【0006】
請求項2では、紐の一部または全てが導電繊維または導電繊維と絶縁繊維(非導電繊維)とを撚糸することにより得られる導電糸を含んでおり、導電糸または導電繊維に直接接続された発光素子を組込む(または埋込む)ことにより発光機能をもつ紐(「発光紐」または「光る紐」)であることを特徴としている。この場合、導電糸または導電繊維はその周辺を電気絶縁材で被覆して、お互いが接触した際の電気的短絡を防いだり耐水効果を持たせる必要がある。導電繊維または導電糸と発光素子との接続部分においては機械的方法や電気的方法や化学的方法などにより被覆を剥がして電気的に接続することができる。
【0007】
請求項3では、布または皮でできた短冊において、前記布または皮の構成要素の一部として導電繊維または導電糸を有し、前記導電繊維または前記導電糸を織込む、編込む、縫込むなどにより形成された回路パターン配線と発光素子とを備えた短冊(「発光短冊」または「光る短冊」)であることを特徴としている。その結果、短冊としての概観を損なうことがなくかつ発光機能を持つ風鈴として音と光の同時鑑賞を提供できる。
【0008】
導電繊維としては直径が10μmから500μm程度の銅細線などで、その周辺をポリウレタンやポリエチレンなどの絶縁材で被覆された金属繊維(金属細線)や、前記導電繊維と従来からの絶縁繊維(非導電繊維)または絶縁糸とを撚糸した導電糸を使用する。
【0009】
請求項4では、短冊は導電インク、金属インク、半導体インク、絶縁インクなどの各種インクを所定の方法で組み合わせで使用したスクリーン印刷法やインクジェット印刷法やグラビア印刷法などによって作成された配線パターンや電子部品や発光素子などから構成さ、その素材としては紙、布、皮またはフレキシブルなフィルム状シートのいずれかであることを特徴としている。その結果、短冊としての概観を損なうことがなくかつ発光機能を有する短冊(「発光短冊」または「光る短冊」)から構成される風鈴として音と光の同時鑑賞を提供できる。
【0010】
請求項5では、発光素子は微小なLEDまたはEL(エレクトロルミネセンス)あることを特徴としている。特にLEDの場合は紐を構成している導電糸または絶縁糸の太さと同程度のサイズを有する素子(長さが0.1mmから2mm、幅が0.1mmから1mm程度のサイズを有する長方形状)を使用することを特徴としている。その結果短冊または紐としての概観を損なうことがないため従来の風鈴と同じよな概観を保ち音と光の同時鑑賞を提供できる。
【0011】
請求項6では、紐の一構成要素である導電繊維または導電糸は釣鐘内または釣鐘外に配置された電源からの出力信号を取り出しているリード線と接続され、前記発光素子にエネルギーを与え発光させることを特徴としている。その結果、紐および短冊はそれぞれ発光機能を持つ「発光紐」および「発光短冊」が実現できる。
【0012】
請求項7では、釣鐘内またはその近傍に風を検知するための振動センサ、衝撃センサ、衝突センサ、風センサ、加速度センサ、音センサなどの各種センサのうち少なくとも1以上のセンサを配置し、電源は風が発生した時には前記センサ信号によりONになり、連続またはパルス電圧を一定時間発生させ、前記電圧を取り出すリード線および前記リード線に電気的に接続されている導電繊維または導電糸を通して紐や短冊に含まれている発光素子へエネルギーを供給し連続的またはパルス的(点滅)に前記発光素子を発光させることを特徴としている。その結果、風鈴は風により音と光とのミックスした調和のとれた幻想的な3次元空間が実現できる。
【0013】
また請求項7では風を検知するための上記各種センサのうち1個以上が振り子内に設置されており、釣鐘内または近傍に設置された電源は、前記振り子が釣鐘に衝突した際にセンサ信号によりONになり、連続またはパルス電圧を一定時間発生させ、前記電圧を取り出すリード線および前記リード線に接続された導電糸または導電繊維を有する紐を通し紐と短冊とに含まれる発光素子へエネルギーを供給し、連続的またはパルス的(点滅)に前記発光素子を発光させることを特徴としている。その結果、風により風鈴は音と光の調和のとれた幻想的な3次元空間が実現する。
【発明の効果】
【0014】
短冊や紐は風に揺られて大きく右左に振動するため遠方からも非常に人目がつきやすく、特に発光する短冊は、娯楽、観賞、癒し、情報発信、広告、等の幅広い用途への応用が可能になる。風力に応じ短冊や紐は風に連動したダイナミックな動きを伴う発光空間を鑑賞することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明により図1のように、紐13や短冊15に発光機能を有する風鈴が実現し、その結果風力により紐や短冊が大きく左右に風と連動した独特の光の揺らぎが実現できる。具体的な実施例を以下で説明する。
【実施例1】
【0016】
釣鐘11はガラス、磁器、プラスチック或いは金属材等からなり、天井や軒下などから吊り下げられた風鈴の例が図2に示されている。また電源31はボタン電池32、LED駆動回路などで構成され、釣鐘11の上端から紐で吊り下げられ釣鐘内に配置されている。電源31の出力は導電糸35入り紐13に接続され、前記紐13は振り子14および短冊15を吊り下げている。
【0017】
ここで使用する導電糸は直径0.1mmから1mm程度で、外部が被覆された1本または複数の導電繊維(直径10μmから500μm程度の銅やステンレスなどで外側が絶縁膜で被覆された金属細線)とポリエステルなどの絶縁糸とを撚糸したものである。または前記導電繊維をそのまま導電糸として使用してもよい。なお、導電糸とLED電極やリード線とを電気的に接続する際は接続部分において導電糸の絶縁膜を加熱や研磨などで剥離するする必要がある。
【0018】
紐14は多数の糸から構成されている組紐または織紐で、その一部には導電糸35を含んでおり、前記導電糸には糸の太さサイズの微小LEDチップ16が直接接続されている(図3)。
【0019】
布から成る短冊の例を図3に示す。短冊15を構成する縦糸(非導電糸)および横糸(非導電糸)の一部は直径100μm程度の導電繊維(銅などの金属細線)36が規則的に置き換え織込まれている。そして導電繊維36によりLED16を動作させるための配線パターンを形成している。LED16の電極と導電繊維36は図のように直接接続してLEDの存在をできるだけわからないようにする。前記導電繊維のかわりに導電繊維とポリエステルなどの絶縁糸を撚り合わせた導電糸を使用してもよい。
【0020】
電源31には振り子14が釣鐘12の縁に衝突した際に発生する音を感知する音センサ37が内蔵されている。前記音センサが音を検知すると電源31は連続またはパルス状の出力電圧が一定時間発生する回路を有し、導電糸35を通し紐13および短冊15に埋め込まれているLED16を一定時間点灯または点滅させる。センサとしては音センサ以外に、加速度センサ、振動センサ、衝撃センサなどでもよい。
【0021】
短冊の素材として皮やビニールなどの薄いシートを使用することもできる。この場合、ミシンなどにより導電糸を皮に縫込み配線パターンを形成することができる。
【0022】
LEDの色として涼しさを感じる青や緑がよい。LEDによるロゴマークを作ってもよいし、店頭であればPR用の記号や絵柄などを作ってもよい。また短冊に風鈴特有の柄をあらかじめ描画しておき、随所にLEDを配置する(散りばめる)こともできる。
【実施例2】
【0023】
図4し示されている電源41は釣鐘の上に置かれ、振り子44とはリード線42で接続されている。振り子44内には振動センサまたは加速度センサなどのうちのいずれか1個のセンサ47を有しており、その信号はリード線42を通して電源41に送信される。その結果電源41からは一定時間連続またはパルス状の電圧を発生しLEDを点灯または点滅させる。
【0024】
振り子内44でリード線42と接続された紐14は、多数のLED16を備えた図2、図3と同様な短冊15を吊り下げている。
【0025】
衝突時に釣鐘11と振り子44の接触部分に発生する音を最小限にするため、ゴムなどの消音
材を取り付けることにより、発光機能のみに制限することもできる。
【実施例3】
【0026】
図5は振り子54内に電源51およびセンサ57が配置された例である。センサとしては加速度センサ、衝撃センサ、衝突センサ、振動センサなどが適している。その他は実施例2と同じである。
【実施例4】
【0027】
図6は実施例2と同じく電源61を釣鐘の上に配置した例であるが、電源61と振り子内64に装着されたセンサ67とはリード線68で電気的に接続されている。さらに電源61の出力は導電糸を有する紐63を経て短冊65へ導き、紐63および短冊65に含まれる発光素子にエネルギーを与えている。
【0028】
短冊65はフレキシブルな0.5mm程度の薄いフィルム状のプラスチックシート69で構成されている。このシートをプリント基板(フレキシブル基板)として、この基板上にLED駆動用配線やLEDなどがプリント法などの微細加工法で作成してある。LEDの代わりにフィルム状のEL(エレクトロルミネセンス)を作成してもよい。
【0029】
図7にプリント法で作成された短冊65の一例を示す。配線パターンは導電インクによって、電子部品やLED、ELなどの発光素子は金属インク、半導体インク、絶縁インクなどによって印刷する。印刷法としてはスクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷などを使用する。このようにして配線71とLED66および抵抗72などの電子部品を作製する。LEDや抵抗などの電子部品は直接を貼り付けるなどにより組み込み配線と接続してよい。
【0030】
紐を構成している導電糸は短冊であるフレキシブル基板に印刷された配線71を電気的に接続してLED60を動作させ発光させる。
【0031】
短冊の素材としては、シート状の布、皮、紙などでもよい。それぞれの表面に同様な方法で配線パターンや発光素子などを印刷する。LEDや抵抗などの既存電子部品は直接を実装するなどにより組み込み配線と接続する。
【0032】
紐および短冊に加え従来法により振り子にも発光機能を持たせることにより、風鈴全体に発光機能を持たせることが可能になる。
【0033】
本発明は風鈴に吊設されている紐および短冊についての記載であるが、風鈴以外に例えば七夕などに使用される紐付き短冊などにも本発明による発光機能を持たせることにより、より風情のある鑑賞効果が期待できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】発光風鈴の概観
【図2】布から成る「発光短冊」を備えた発光風鈴の一例(実施例1)
【図3】図2示された発光風鈴のうち電源31、紐13、短冊15の詳細(実施例1)
【図4】釣鐘外に設置された電源およびセンサを備えた発光風鈴の一例(実施例2)
【図5】振り子内に電源およびセンサを備えた発光風鈴の一例(実施例3)
【図6】薄いシート(フレキシブル基板)からなる「発光短冊」を備えた発光風鈴(実施例4)
【図7】図6で使用したフレキシブル基板の一例
【符号の説明】
【0035】
10 発光風鈴
12 釣鐘
13 紐(発光紐)
14 振り子
15 短冊(発光短冊)
16 LED
31 電源
32 ボタン電池
33 リード線
35 導電糸
36 導電繊維
37 センサ
41 電源
42 リード線
43 振り子
47 センサ
51 電源
54 振り子
57 センサ
61 電源
62 釣鐘
63 紐(発光紐)
64 振り子
65 短冊(発光短冊)
66 LED
67 センサ
69 フレキシブル基板
71 配線
72 電子部品



【特許請求の範囲】
【請求項1】
中が空である釣鐘に吊設された紐と前記紐の下端に吊り下げられた短冊とのいずれかまたはすべてが発光機能を有していることを特徴とする発光風鈴。
【請求項2】
請求項1で記載の紐は一部または全てが導電繊維または導電糸から構成されており、前記導電糸または前記導電繊維に直接接続された発光素子を備えていることを特徴とする請求項1に記載の発光風鈴。
【請求項3】
請求項1で記載の短冊は布または皮でできており、前記布または皮の構成要素の一部として導電繊維または導電糸を有し、前記導電繊維または導電糸を縦方向や横方向に織り込む、編み込む、縫込むことにより形成された回路パターン配線および発光素子を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の発光風鈴。
【請求項4】
請求項1で記載の短冊はその表面に導電インク、金属インク、半導体インク、絶縁インクを使った印刷法によって作成された配線パターンと発光素子とを備えた紙、布、皮またはフィルム状シートのいずれかであることを特徴とする請求項1または2で記載の発光風鈴。
【請求項5】
請求項2から4で記載の発光素子はLEDまたはEL(エレクトロルミネセンス)あることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の発光風鈴。
【請求項6】
請求項2で記載の紐を構成している導電繊維または導電糸は釣鐘内または釣鐘外に配置された電源からの出力信号を取り出しているリード線と電気的に接続され、請求項目2から5で記載の発光素子にエネルギーを与えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の発光風鈴。
【請求項7】
請求項6で記載の電源は、釣鐘内または釣鐘外に設置された風力を検知するための振動センサ、衝撃センサ、衝突センサ、風センサ、加速度センサ、音センサ、の中で少なくとも1つ以上のセンサにより風が発生した時にONになり、リード線および導電繊維または導電糸を通し請求項1から6で記載の紐と短冊とに含まれる請求項2から5で記載の発光素子へエネルギーを供給し所定の時間、連続的またはパルス的(点滅)に前記発光素子を発光させることを特徴とした請求項1から6のいずれかに記載の発光風鈴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24289(P2012−24289A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165117(P2010−165117)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(303050805)
【Fターム(参考)】