説明

発振器

【課題】発振器において、発振周波数可変範囲を狭めることなく位相雑音を低減する。
【解決手段】バイポーラトランジスタTr1のコレクタとベース間にバイアス回路を備える発振器において、電源Vccとコレクタとの間に発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域において十分に高いインピーダンスを示す素子や回路、例えばベースバンドチョークコイル16を接続する。ベースバンド周波数帯域のノイズ信号はチョークコイル16により電源側に漏れることなくバイアス回路を介して負帰還される。チョークコイル16の代わりにカレントミラー回路を設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振器に関し、特に位相雑音の低減化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発振回路は、一般に振幅と位相にて発振条件を満足するように回路定数を設定し、かつ発振信号が発振ループ外に漏れないように抑制する。具体的には、バイポーラトランジスタを用いた発振回路では、コレクタと電源との間にRFチョークコイルを接続する。RFチョークコイルは高周波の発振信号において高いインピーダンスを示し、発振信号を通しにくいので発振ループの形成に用いられる。一方、発振周波数より十分低いベースバンド帯域では、RFチョークコイルは短絡として機能する。この際、増幅動作による不要発振を引き起こさないため、一般に電源へのインピーダンスは低く設定される。
【0003】
発振器は主にPLL構成を採用し、発振周波数のチャネル切替及び低位相雑音を実現している。但し、PLLは一般にループ帯域内の位相雑音は低減しても、帯域外はVCOの特性で決定されることになる。したがって、より効果的な低位相雑音を図るためには、VCO自体の更なる低雑音化が要求される。VCOの低雑音化はQ値の高い共振器を使用することで実現可能であるが、この方法では発振周波数の可変範囲が狭くなってしまう。すなわち、VCOの特性は、位相雑音と発振周波数範囲のトレードオフの関係内で制限されてしまう。このため、位相雑音と発振周波数範囲のトレードオフを生じることなく位相雑音を抑制できる、言い換えれば、発振周波数範囲を確保しつつ、位相雑音を一層低減できる技術が望まれている。
【0004】
下記の特許文献1には、バイポーラトランジスタを用いた発振器において、コレクタとベースとの間に接続されてバイポーラトランジスタをバイアスするとともに、3端子能動デバイスで発生した位相ノイズをフィードバックして位相ノイズを低減させる回路を設けることが開示されている。
【0005】
図6に、この従来技術の回路構成を示す。符号12で示すトランジスタTr1のコレクタに電源Vccが接続され、エミッタがコイルL1を介して接地され、ベースに共振器10からの信号が入力される。エミッタからの出力信号はキャパシタC5、C6、抵抗R3を介して出力端子OUTから出力される。コレクタには符号14で示す上述のRFチョークコイルRFCが接続され、さらに抵抗R5、トランジスタTr2及び抵抗R7からなるバイアス回路が設けられる。
【0006】
また、下記の特許文献2や特許文献3には、バイポーラトランジスタのコレクタに定電流源が接続される構成が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特表2007−501574号公報
【特許文献2】特開平8−288752号公報
【特許文献3】特開2006−279608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6に示す従来の回路構成では、発振周波数に対して高いインピーダンスを示すRFチョークコイルRFCがコレクタに接続されているものの、電源側のインピーダンスは未だ低く設定されているため、発振周波数より十分低いベースバンド帯域におけるノイズ信号(低周波ノイズ信号)が電源側に漏れてしまい、したがってコレクタとベースとを接続するバイアス回路が存在していても低周波ノイズ信号を負帰還させることができず、結果として低周波ノイズ信号が残存し、低周波ノイズ信号のアップコンバートにより発生する位相雑音を抑制することができない問題がある。
【0009】
なお、特許文献2や特許文献3にはインピーダンスについて記載されているものの、低周波雑音の低減については開示されていない。
【0010】
本発明の目的は、発振周波数範囲を確保しつつ、位相雑音を一層低減することができる発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、3端子能動デバイスと、前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器とを有する発振器であって、前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すことで前記ベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させる回路を有する。
【0012】
また、本発明は、3端子能動デバイスと、前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器とを有する発振器であって、前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させるチョークコイルを有する。
【0013】
また、本発明は、3端子能動デバイスと、前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器とを有する発振器であって、前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させる定電流源回路を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チョークコイルや定電流源回路等の高インピーダンス素子あるいは回路をコレクタと電源との間に接続することで、ベースバンド周波数帯域のノイズ信号が電源側に漏れることを抑制し、バイアス回路を用いてノイズ信号を負帰還させることで低減させることができる。ベースバンド周波数帯域のノイズ信号を低減させることで、位相雑音を効果的に抑制することができる。本発明によれば、電源側のインピーダンスを高く設定しバイアス回路を負帰還回路として機能させることで位相雑音を低減するため、発振周波数可変範囲を狭めることなく、すなわち発振周波数可変範囲とは独立に位相雑音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態における発振器の回路構成を示す。符号12で示すバイポーラトランジスタTr1のコレクタに電源Vccが接続される。トランジスタTr1のベースに共振器10からの信号が入力される。具体的には、トランジスタTr1のベースには抵抗R1、キャパシタC1、C2が直列接続されて電圧VTが印加され、抵抗R1とキャパシタC1の間の接点とアース間にダイオードDが接続されるとともにキャパシタC1とキャパシタC2の間の接点とアース間に共振器10が接続される。トランジスタTr1のエミッタはコイルL1を介して接地され、エミッタとコイルL1との間の接点にキャパシタC5、抵抗R3、キャパシタC6がそれぞれ直列接続され、キャパシタC5と抵抗R3の間の接点とアース間に抵抗R2が接続されるとともに抵抗R3とキャパシタC6の間の接点とアース間に抵抗R4が接続され、エミッタからの出力信号が出力端子OUTから出力される。
【0017】
トランジスタTr1のコレクタには電源Vccが接続されるが、コレクタと電源Vccとの間に符号14で示す発振周波数において高インピーダンスのRFチョークコイルRFCが接続される。発振周波数は例えば1.5GHz〜2GHzである。また、トランジスタTr1のコレクタにはバイアス回路が設けられる。バイアス回路は、抵抗R5〜R8及びトランジスタTr2、Tr3から構成される。電源VccとRFチョークコイルRFCとの間に直列に抵抗R5が接続され、トランジスタTr2のエミッタが抵抗R5とRFチョークコイルRFCとの間に接続され、トランジスタTr2のベースはトランジスタTr3のベースに接続され、トランジスタTr2のコレクタは抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースとキャパシタC2との間に接続される。トランジスタTr2のコレクタとトランジスタTr1のベースとの接点は、キャパシタC3、C4を介して接地される。キャパシタC3とキャパシタC4の間の接点はトランジスタTr1のエミッタとコイルL1の間に接続される。また、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R6を介して電源Vccに接続され、コレクタは抵抗R8を介して接地される。トランジスタTr3のベースは上述したようにトランジスタTr2のベースに接続されるとともに、トランジスタTr3のコレクタに接続される。
【0018】
このようにバイアス回路を備えた発振器において、本実施形態では抵抗R5とRFチョークコイルRFCとの間、すなわちトランジスタTr2のエミッタが接続される接点と抵抗R5との間に符号16で示すベースバンドチョークコイルBFCを接続する。ベースバンドチョークコイルBFCは、発振周波数よりも十分低いベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すコイルである。ベースバンド周波数帯域は例えば一般的な狭帯域通信において1MHz以下である。
【0019】
既述したように、図6に示す従来の回路構成ではベースバンド周波数帯域においては電源側のインピーダンスが低く設定されているためベースバンド周波数帯域のノイズ信号(低周波ノイズ信号)が電源側に漏れてしまうが、本実施形態ではベースバンドチョークコイルBFCがベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すため低周波ノイズ信号の電源側への漏れを防止し、トランジスタTr2及び抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースに負帰還させることができるため、低周波ノイズ信号を抑制することができる。したがって、低周波ノイズ信号がアップコンバートされて生じる位相雑音も抑制することができる。ベースバンドチョークコイルBFCは、低周波ノイズ信号の負帰還量を著しく増大させ、バイアス回路を負帰還回路へと機能転化させるものといえる。
【0020】
本実施形態では、トランジスタTr1のコレクタ側にベースバンドチョークコイルBFCを接続し、バイアス回路を負帰還回路として機能させることで低周波ノイズ信号、ひいては位相雑音を抑制させているので、VCOの低雑音化を図るためにあえてQ値の高い共振器を使用する必要もない。したがって、発振周波数範囲を狭めることなく、位相雑音を効果的に抑制することが可能である。VCOのQ値に依存することなく位相雑音を低減できるといえる。
【0021】
<第2実施形態>
図2に、本実施形態における発振器の回路構成を示す。図1に示す回路構成と同様に、符号12で示すバイポーラトランジスタTr1のコレクタに電源Vccが接続される。トランジスタTr1のベースに共振器10からの信号が入力される。具体的には、トランジスタTr1のベースには抵抗R1、キャパシタC1、C2が直列接続されて電圧VTが印加され、抵抗R1とキャパシタC1の間の接点とアース間にダイオードDが接続されるとともにキャパシタC1とキャパシタC2の間の接点とアース間に共振器10が接続される。トランジスタTr1のエミッタはコイルL1を介して接地され、エミッタとコイルL1との間の接点にキャパシタC5、抵抗R3、キャパシタC6がそれぞれ直列接続され、キャパシタC5と抵抗R3の間の接点とアース間に抵抗R2が接続されるとともに抵抗R3とキャパシタC6の間の接点とアース間に抵抗R4が接続され、エミッタからの出力信号が出力端子OUTから出力される。また、トランジスタTr1のコレクタには電源Vccが接続されるが、コレクタと電源Vccとの間に符号14で示す発振周波数において高インピーダンスのRFチョークコイルRFCが接続される。発振周波数は例えば1.5GHz〜2GHzである。また、トランジスタTr1のコレクタにはバイアス回路が設けられる。バイアス回路は、抵抗R5〜R8及びトランジスタTr2、Tr3から構成される。電源VccとRFチョークコイルRFCとの間に直列に抵抗R5が接続され、トランジスタTr2のエミッタが抵抗R5とRFチョークコイルRFCとの間に接続され、トランジスタTr2のベースはトランジスタTr3のベースに接続され、トランジスタTr2のコレクタは抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースとキャパシタC2との間に接続される。トランジスタTr2のコレクタとトランジスタTr1のベースとの接点は、キャパシタC3、C4を介して接地される。キャパシタC3とキャパシタC4の間の接点はトランジスタTr1のエミッタとコイルL1の間に接続される。また、トランジスタTr3のエミッタは抵抗R6を介して電源Vccに接続され、コレクタは抵抗R8を介して接地される。トランジスタTr3のベースは上述したようにトランジスタTr2のベースに接続されるとともに、トランジスタTr3のコレクタに接続される。
【0022】
このようにバイアス回路を備えた発振器において、電源とRFチョークコイルRFCとの間にベースバンドチョークコイルBFCを接続する代わりに、定電流源としてのカレントミラー回路18を接続する。カレントミラー回路18は、トランジスタTr4、Tr5、抵抗R5、R9、R10及びキャパシタC7で構成される。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R5に接続され、コレクタはRFチョークコイルRFCに接続され、ベースはトランジスタTr5のベースに接続される。一方、トランジスタTr5のエミッタは抵抗R9を介して電源Vccに接続され、コレクタは抵抗R10を介して接地される。トランジスタTr5のベースとコレクタは接続され(ダイオード接続)、キャパシタC7を介して電源Vccに接続される。トランジスタTr4とトランジスタTr5の特性は略同一であり、トランジスタTr5のエミッタ電流によりトランジスタTr4に流れる電流が定常化されるため、負荷側から見れば極めて高いインピーダンスとなる。したがって、ベースバンドチョークコイルBFCを接続した場合と同様に、ベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すため低周波ノイズ信号の電源側への漏れを防止し、トランジスタTr2及び抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースに負帰還させることができるため、低周波ノイズ信号を抑制することができる。カレントミラー回路18は、低周波ノイズ信号の負帰還量を著しく増大させ、バイアス回路を負帰還回路へと機能転化させるものということができる。
【0023】
本実施形態では、トランジスタTr1のコレクタ側に定電流源としてのカレントミラー回路18を接続し、バイアス回路を負帰還回路として機能させることで低周波ノイズ信号、ひいては位相雑音を抑制させているので、VCOの低雑音化を図るためにあえてQ値の高い共振器を使用する必要もない。したがって、発振周波数範囲を狭めることなく、位相雑音を効果的に抑制することが可能である。また、カレントミラー回路18は、ベースバンドチョークコイルBFCと比べて非常に低い周波数まで高いインピーダンス特性を示すので、より低周波のノイズ信号及び位相雑音を抑制することができる。
【0024】
<第3実施形態>
図3に、本実施形態における発振器の回路構成を示す。本実施形態は、第2実施形態と同様に、ベースバンドチョークコイルの代わりに定電流源としてのカレントミラー回路19を用いる。すなわち、バイアス回路を備えた発振器において、電源VccとRFチョークコイルRFCとの間にベースバンドチョークコイルBFCを接続する代わりに、定電流源としてのカレントミラー回路19を接続する。カレントミラー回路19は、トランジスタTr4、Tr5、抵抗R5、R9、キャパシタC8で構成される。トランジスタTr4のエミッタは抵抗R5に接続され、コレクタはRFチョークコイルRFCに接続され、ベースはトランジスタTr5のベースに接続される。一方、トランジスタTr5のエミッタは抵抗R9を介して電源Vccに接続され、コレクタはトランジスタTr3のエミッタに接続される。トランジスタTr5のベースとコレクタは接続され(ダイオード接続)、キャパシタC8を介して電源Vccに接続される。トランジスタTr4とトランジスタTr5の特性は略同一であり、トランジスタTr5のエミッタ電流によりトランジスタTr4に流れる電流が定常化されるため、負荷側から見れば極めて高いインピーダンスとなる。
【0025】
図2に示す第2実施形態との主な相違点は、カレントミラー回路19を構成する一対のトランジスタTr4、Tr5のうち、トランジスタTr5のコレクタが、バイアス回路を構成するトランジスタTr3のエミッタに直列接続されている点である。これにより、図2に比べて回路構成を簡易化し、かつ回路素子数を削減することができる。
【0026】
本実施形態においても、カレントミラー回路19はベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すため低周波ノイズ信号の電源側への漏れを防止し、トランジスタTr2及び抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースに負帰還させることができるため、低周波ノイズ信号を抑制することができる。カレントミラー回路19は、低周波ノイズ信号の負帰還量を著しく増大させ、バイアス回路を負帰還回路へと機能転化させるものということができる。また、トランジスタTr1のコレクタ側に定電流源としてのカレントミラー回路19を接続し、バイアス回路を負帰還回路として機能させることで低周波ノイズ信号、ひいては位相雑音を抑制させているので、発振周波数範囲を狭めることなく、位相雑音を効果的に抑制することが可能である。
【0027】
<第4実施形態>
図4に、本実施形態における発振器の回路構成を示す。図2に示す第2実施形態の回路構成において、バイアス回路を抵抗R7に置換した回路である。すなわち、図2のバイアス回路は、図6における従来技術の回路構成におけるバイアス回路と同様に、トランジスタTr2、Tr3、抵抗R5〜R8で構成されているが、これを抵抗R7で置換したものである。抵抗R7の一端は電源VccとRFチョークコイルRFCとの間に接続され、他端はトランジスタTr1のベースに接続される。抵抗R7でもバイアス回路として機能し得ることは明らかであろう。抵抗R7からなるバイアス回路をトランジスタTr1のコレクタとベース間に設けるのみでは、図6に示す従来技術の回路構成と同様に低周波ノイズ信号の電源Vcc側への漏れが生じる。しかしながら、本実施形態では電源VccとRFチョークコイルRFCとの間に定電流源としてのカレントミラー回路18が接続されているので、図2に示す第2実施形態と同様に、低周波ノイズ信号の電源Vcc側への漏れを防止し、抵抗R7を介してトランジスタTr1のベースに負帰還させることができるため、低周波ノイズ信号を抑制することができる。カレントミラー回路18は、低周波ノイズ信号の負帰還量を著しく増大させ、抵抗R7からなるバイアス回路を負帰還回路へと機能転化させるものということができる。
【0028】
本実施形態でも、トランジスタTr1のコレクタ側に定電流源としてのカレントミラー回路18を接続し、バイアス回路を負帰還回路として機能させることで低周波ノイズ信号、ひいては位相雑音を抑制させているので、発振周波数範囲を狭めることなく、位相雑音を効果的に抑制することが可能である。また、負帰還回路は抵抗R7から構成されているので、回路構成の簡略化及び回路部品数の削減も図ることができる。
【0029】
<第5実施形態>
図5に、本実施形態における発振器の回路構成を示す。図4に示す第4実施形態の回路構成におけるカレントミラー回路18に変えて、ベースバンドチョークコイルBFC16を接続した例である。あるいは、図1に示す第1実施形態の回路構成におけるバイアス回路を抵抗R7で構成した場合ということもできる。
【0030】
本実施形態でも、トランジスタTr1のコレクタ側にベースバンドチョークコイルBFCを接続し、抵抗R7からなるバイアス回路を負帰還回路として機能させることで低周波ノイズ信号、ひいては位相雑音を抑制させているので、VCOの低雑音化を図るためにあえてQ値の高い共振器を使用する必要がない。したがって、発振周波数範囲を狭めることなく、位相雑音を効果的に抑制することが可能である。また、負帰還回路は抵抗R7から構成されているので、回路構成の簡略化及び回路部品数の削減も図ることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の要旨は、能動素子としてのバイポーラトランジスタが増幅動作するためのDCバイアスを印加するバイアス回路を利用し、発振周波数に対して低いベースバンド周波数帯域において電源側を十分に高いインピーダンスに設定してベースバンド周波数帯域のノイズ信号を負帰還させることにある。したがって、ベースバンド周波数帯域のノイズ信号の漏れを防止あるいは一定値以下にまで抑制できる程度の高いインピーダンスを有する素子あるいは回路であればチョークコイルあるいは定電流源に限らず他の素子または回路でもよいことは当業者には理解されよう。また、本実施形態における「高インピーダンス」とは、正確には一定値以上のインピーダンスを有するものであると定義され得るが、ベースバンド周波数帯域で負帰還回路の開ループ利得が位相雑音の抑制に十分な値となるために必要なインピーダンスの意味であり、一般的には電源側のインピーダンスとトランジスタTr1のベース側入力インピーダンスとの比が1/10以上あれば十分雑音抑制効果を得ることができる。本実施形態では、3端子能動デバイスの例としてバイポーラトランジスタを例示したが、電界効果トランジスタ(FET)を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の回路構成図である。
【図2】第2実施形態の回路構成図である。
【図3】第3実施形態の回路構成図である。
【図4】第4実施形態の回路構成図である。
【図5】第5実施形態の回路構成図である。
【図6】従来技術の回路構成図である。
【符号の説明】
【0033】
10 共振器、12 バイポーラトランジスタ、14 RFチョークコイル、16 ベースバンドチョークコイル、18,19 カレントミラー回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3端子能動デバイスと、
前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、
前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器と、
を有する発振器であって、
前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域において高インピーダンスを示すことで前記ベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させる回路
を有することを特徴とする発振器。
【請求項2】
3端子能動デバイスと、
前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、
前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器と、
を有する発振器であって、
前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させるチョークコイル
を有することを特徴とする発振器。
【請求項3】
3端子能動デバイスと、
前記3端子能動デバイスの第1端子と第2端子との間に接続され、前記3端子能動デバイスをバイアスするバイアス回路と、
前記3端子能動デバイスの前記第2端子に接続され前記3端子能動デバイスへの入力を供給する共振器と、
を有する発振器であって、
前記3端子能動デバイスの前記第1端子と電源との間に接続され、発振周波数よりも低いベースバンド周波数帯域におけるノイズ信号を前記バイアス回路を用いて負帰還させる定電流源回路
を有することを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項3記載の発振器において、
前記定電流源回路はカレントミラー回路であることを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の発振器において、
前記3端子能動デバイスはバイポーラトランジスタであり、前記3端子能動デバイスの前記第1端子と前記第2端子はそれぞれ前記バイポーラトランジスタのコレクタとベースからなることを特徴とする発振器。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の発振器において、
前記3端子能動デバイスは電界効果トランジスタであり、前記3端子能動デバイスの前記第1端子と前記第2端子はそれぞれ前記電界効果トランジスタのドレインとゲートからなることを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−165048(P2009−165048A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2776(P2008−2776)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】