説明

発振器

【課題】水晶振動子を使った発振器の起動特性を向上させる。
【解決手段】第1の端子と、第2の端子と、第1の端子と第2の端子との間に、直列に接
続された抵抗素子及びインダクタと、抵抗素子と並列に接続された振動子と、第1の端子
と第2の端子との間に接続されたコンデンサと、第1の端子と第2の端子との間に接続さ
れ、振動子を振動させる発振回路部と、を含み、インダクタの値と抵抗素子の抵抗値と振
動子の等価直列インダクタの値と振動子の等価直列抵抗の抵抗値とは、(インダクタの値
÷抵抗素子の抵抗値)<(振動子の等価直列インダクタの値÷振動子の等価直列抵抗の抵
抗値)の関係を満たす、ことを特徴とする発振器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を用いた発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(Surface Acoustic Wave、弾性表面波)振動子、音叉型振動子、AT振動子な
どの水晶振動子110を用いた発振器1は、例えば図5(A)に示すような回路で構成さ
れている(非特許文献1の図2参照)。また、水晶振動子110の等価回路111は、図
5(B)に示すように直列に接続された等価直列インダクタL1と等価直列コンデンサC
1と等価直列抵抗R1と、これらと平行に接続された等価並列コンデンサC0とからなる
回路で表現される(非特許文献1の図1参照)。水晶振動子の品質係数であるQ特性Q1
は、角周波数をωとすると、Q1=ω×L1/R1のように算出され、発振起動時間td
1は、td1=(2×Q1)/ωのように算出される。
【0003】
【非特許文献1】エプソントヨコム株式会社ホームページ>テクニカルインフォメーション>製品取扱上の注意事項>発振回路設計時の注意事項 (http://www.epsontoyocom.co.jp/C_support/precautions/precautions_1.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水晶振動子110は、Q特性を高く設定すると発振の周波数純度を高く
することができるが、発振の起動時間が遅くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例と
して実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
第1の端子と、第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に、直列に接続
された抵抗素子及びインダクタと、前記抵抗素子と並列に接続された振動子と、前記第1
の端子と前記第2の端子との間に接続されたコンデンサと、前記第1の端子と前記第2の
端子との間に接続され、前記振動子を振動させる発振回路部と、を含み、前記インダクタ
の値と前記抵抗素子の抵抗値と前記振動子の等価直列インダクタの値と前記振動子の等価
直列抵抗の抵抗値とは、(前記インダクタの値÷前記抵抗素子の抵抗値)<(前記振動子
の等価直列インダクタの値÷前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値)の関係を満たす、こと
を特徴とする発振器。
【0007】
この構成によれば、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサによ
り構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動するこ
とができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【0008】
[適用例2]
第1の端子と、第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に、直列に接続
された抵抗素子及びコンデンサと、前記抵抗素子と並列に接続された振動子と、前記第1
の端子と前記第2の端子との間に接続されたインダクタと、前記第1の端子と前記第2の
端子との間に接続され、前記振動子を振動させる発振回路部と、を含み、前記インダクタ
の値と前記抵抗素子の抵抗値と前記振動子の等価直列インダクタの値と前記振動子の等価
直列抵抗の抵抗値とは、(前記インダクタの値÷前記抵抗素子の抵抗値)<(前記振動子
の等価直列インダクタの値÷前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値)の関係を満たす、こと
を特徴とする発振器。
【0009】
この構成によれば、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサによ
り構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動するこ
とができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【0010】
[適用例3]
上記に記載の発振器において、前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値は前記抵抗素子の抵
抗値より小さいことを特徴とする発振器。
【0011】
この構成によれば、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサによ
り構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動するこ
とができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【0012】
[適用例4]
上記に記載の発振器において、前記インダクタの値は前記振動子の等価直列インダクタ
の値より小さいことを特徴とする発振器。
【0013】
この構成によれば、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサによ
り構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動するこ
とができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【0014】
[適用例5]
上記に記載の発振器において、前記発振回路部は、前記第1の端子と前記第2の端子と
の間に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素子を含むクロスカップル型
回路であることを特徴とする発振器。
【0015】
この構成によれば、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサによ
り構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動するこ
とができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発振器の実施形態について図面に従って説明する。
【0017】
(第1実施形態)
<発振器の構成>
まず、第1実施形態に係る発振器の構成について、図1を参照して説明する。図1は、
第1実施形態に係る発振器の構成を示す回路図である。図1に示すように、発振器1は、
第1の端子である端子OUT1と、第2の端子である端子OUT2と、端子OUT1と端
子OUT2との間に直列に接続された抵抗素子R2及びインダクタL2と、抵抗素子R2
と並列に接続された振動子110と、端子OUT1と端子OUT2との間に接続されたコ
ンデンサC2と、端子OUT1と端子OUT2との間に接続され、振動子110を振動さ
せるクロスカップル型回路で構成された発振回路部100と、を含んで構成されている。
【0018】
発振回路部100は、第1の能動素子であるNchトランジスタN1と、第2の能動素
子であるNchトランジスタN2と、を含み、NchトランジスタN1のゲート端子がN
chトランジスタN2のソース端子に接続され、NchトランジスタN2のゲート端子が
NchトランジスタN1のソース端子に接続され、クロスカップル型回路を構成している
。NchトランジスタN1のソース端子は、電流源121を介して電源電位VDDと接続
され、NchトランジスタN2のソース端子は、電流源122を介して電源電位VDDと
接続されている。さらに、NchトランジスタN1のソース端子とNchトランジスタN
2のソース端子との間には、コンデンサCaが接続されている。
【0019】
端子OUT1と端子OUT2とは、電流源120を介して接地電位GNDに接続されて
いる。
【0020】
振動子110は、SAW振動子で構成されており、振動子110の等価回路111は、
図5(B)に示すように、直列に接続された等価直列インダクタL1と等価直列コンデン
サC1と等価直列抵抗R1と、これらと平行に接続された等価並列コンデンサC0とから
なる回路で表現される。
【0021】
<発振器の動作>
次に、発振器の動作について図2を参照して説明する。図2は、発振器の動作を示すタ
イミング図である。
【0022】
図2(A)は、端子OUT1と端子OUT2との間に接続された抵抗素子R2とインダ
クタL2とコンデンサC2とで構成されるLC並列共振回路の発振時間を示すタイミング
図である。抵抗素子R2は、等価回路111の等価直列抵抗R1の抵抗値よりも大きい値
で設定され、インダクタL2は、等価回路111の等価直列インダクタL1よりも小さい
値で設定されている。抵抗素子R2とインダクタL2とコンデンサC2とで構成されるL
C並列共振回路のQ特性Q2は、角周波数をωとすると、Q2=ω×L2/R2となり、
発振起動時間td2は、td2=(2×Q2)/ω=2×L2/R2となる。図2(A)
に示すように、抵抗素子R2とインダクタL2とコンデンサC2とで構成されるLC並列
共振回路は、約6μ秒の時点で発振周波数が24MHzに達するように構成されているも
のとする。
【0023】
一方、図2(B)は、端子OUT1と端子OUT2との間に接続された振動子110と
インダクタL2とコンデンサC2とで構成されるLC並列共振回路の発振時間を示すタイ
ミング図である。振動子110とインダクタL2とコンデンサC2とで構成されるLC並
列共振回路のQ特性Q1は、Q1=ω×(L1+L2)/R1となり、発振起動時間td
1は、td1=(2×Q1)/ω=2×(L1+L2)/R1となる。インダクタL2の
値はインダクタL1の値よりも格段に小さいので、発振起動時間td1は、td1≒2×
L1/R1となる。図2(B)に示すように、振動子110とインダクタL2とコンデン
サC2とで構成されるLC並列共振回路は、0秒から発振周波数が徐々に大きくなり、約
100μ秒の時点で発振周波数が10MHzに達するように構成されているものとする。
【0024】
ここで、発振起動時間td2が発振起動時間td1よりもかなり短くなった理由は、L
C並列共振回路のQ特性Q2は、Q特性Q1よりも桁違いに小さいからである。
【0025】
発振起動時間td2は、前述のようにtd2=2×L2/R2であり、発振起動時間t
d1は、td1=L1/R1であるので、L2/R2<L1/R1であれば、td2<t
d1となる。
【0026】
ここで、抵抗素子R2の抵抗値を等価回路111の等価直列抵抗R1の抵抗値よりも大
きい値で設定しても、発振起動時間td2を発振起動時間td1よりも短くすることがで
きる。インダクタL2を等価回路111の等価直列インダクタL1よりも小さい値で設定
しても、発振起動時間td2を発振起動時間td1よりも短くすることができる。
【0027】
図2(C)は、発振器1の発振時間を示すタイミング図である。発振器1は、(td2
=)約6μ秒の時点で抵抗素子R2とインダクタL2とコンデンサC2とで構成されるL
C並列共振回路による発振周波数=24MHzに達した直後、振動子110とインダクタ
L2とコンデンサC2とで構成される並列共振回路による発振周波数=10MHzになる

【0028】
以上に述べた本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0029】
本実施形態では、振動子が発振を開始するまでの期間にインダクタとコンデンサにより
構成されるLC並列発振回路が先に発振をするので振動子単体より短時間で起動すること
ができ、振動子が発振を開始すれば周波数純度の高い発振器を実現できる。
【0030】
以上、発振器の実施形態を説明したが、こうした実施の形態に何ら限定されるものでは
なく、趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることができる。以下、変
形例を挙げて説明する。
【0031】
(変形例1)発振器の変形例1について説明する。前記第1実施形態では、発振回路部
100をNchトランジスタN1,N2で構成した場合を説明したが、Pchトランジス
タで構成してもよい。
【0032】
(変形例2)発振器の変形例2について説明する。前記第1実施形態の発振器1のコン
デンサC2とインダクタL2を、図3に示すように逆に配置してもよい。
【0033】
(変形例3)発振器の変形例3について説明する。前記第1実施形態の発振器1に含ま
れる抵抗素子R2を、図4に示すように可変抵抗素子VR2にしてもよい。可変抵抗素子
VR2により、起動時間を制御することができる。
【0034】
(変形例4)発振器の変形例4について説明する。前記第1実施形態では、振動子11
0をSAW振動子で構成した場合を説明したが、音叉型振動子、AT振動子、FBAR(
Film Bulk Acoustic Resonator)、MEMS振動子、SMR(Solid Mounted Resonator
)などで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態に係る発振器の構成を示す回路図。
【図2】発振器の動作を示すタイミング図。
【図3】変形例2の発振器の構成を示す回路図。
【図4】変形例3の発振器の構成を示す回路図。
【図5】従来の発振器の構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0036】
1…発振器、100…発振回路部、110…振動子、111…等価回路、120,12
1,122…電流源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子と、
第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、直列に接続された抵抗素子及びインダクタ
と、
前記抵抗素子と並列に接続された振動子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続されたコンデンサと、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続され、前記振動子を振動させる発振回路
部と、
を含み、
前記インダクタの値と前記抵抗素子の抵抗値と前記振動子の等価直列インダクタの値と
前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値とは、
(前記インダクタの値÷前記抵抗素子の抵抗値)<(前記振動子の等価直列インダクタ
の値÷前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値)の関係を満たす、
ことを特徴とする発振器。
【請求項2】
第1の端子と、
第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に、直列に接続された抵抗素子及びコンデンサ
と、
前記抵抗素子と並列に接続された振動子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続されたインダクタと、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に接続され、前記振動子を振動させる発振回路
部と、
を含み、
前記インダクタの値と前記抵抗素子の抵抗値と前記振動子の等価直列インダクタの値と
前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値とは、
(前記インダクタの値÷前記抵抗素子の抵抗値)<(前記振動子の等価直列インダクタ
の値÷前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値)の関係を満たす、
ことを特徴とする発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発振器において、前記振動子の等価直列抵抗の抵抗値は前記
抵抗素子の抵抗値より小さいことを特徴とする発振器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の発振器において、前記インダクタの値は前記振動子の等価直
列インダクタの値より小さいことを特徴とする発振器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の発振器において、前記発振回路部は、前記第1
の端子と前記第2の端子との間に差動接続された一対の第1の能動素子及び第2の能動素
子を含むクロスカップル型回路であることを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−44756(P2009−44756A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253524(P2008−253524)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【分割の表示】特願2007−207516(P2007−207516)の分割
【原出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】