説明

発振器

【課題】 本発明は、簡易な構成で、温度変化や経年変化によって、出力信号の発振周波数が変化することを抑制することができる発振器を提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電素子X100と、圧電素子X100とグランドとの間に接続された可変容量素子C100及びC200とを有し、所望の発振周波数を有する出力信号を生成する発振部200と、発振部200から出力された出力信号の発振周波数を電圧に変換することにより、電圧信号を生成する周波数電圧変換部500と、所望の発振周波数に対応する基準電圧データを記憶する記憶部300と、周波数電圧変換部500から出力された電圧信号を、記憶部300から与えられた基準電圧データと比較することにより、電圧信号と基準電圧データとの差分を算出し、これを補償電圧として可変容量素子C100及びC200に印加する比較部700とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発振器としては、種々のものが開発されており、例えば圧電素子として水晶振動子を使用する水晶発振器がある。かかる水晶発振器は、例えば携帯電話機に搭載され、携帯電話機は、水晶発振器から出力される出力信号をクロック信号として使用する。
【0003】
ここで図2に、かかる水晶発振器の一例として発振器10の構成を示す。この発振器10は、圧電素子として水晶振動子X10を有し、所望の発振周波数を有する出力信号Foutを生成する。
【0004】
水晶振動子X10の一端は、帰還抵抗としての抵抗R10の一端に接続されると共に、インバータINV10の入力端子に接続されている。また、水晶振動子X10の一端と、グランドGNDとの間には、可変コンデンサC10が接続されている。
【0005】
一方、水晶振動子X10の他端は、抵抗R10の他端に接続されると共に、インバータINV10の出力端子に接続されている。また、水晶振動子X10の他端と、グランドGNDとの間には、可変コンデンサC20が接続されている。
【0006】
インバータINV10の出力端子には、バッファとしてのインバータINV20の入力端子が接続され、当該インバータINV20の出力端子から、所望の発振周波数を有する出力信号Foutが出力される。
【0007】
ところで、かかる発振器10の場合、温度の変化にかかわらず、一定の発振周波数を有する出力信号Foutを当該発振器10から出力させる方法として、種々の方法が開発されており、例えば発振器10の周波数温度特性を補償する方法がある。
【0008】
この発振器10の周波数温度特性を補償する方法としては、水晶振動子X10の周波数温度特性と逆特性の周波数温度特性(すなわち、水晶振動子X10の周波数温度特性に対して、位相が180度ずれた周波数温度特性)を有する補償電圧を生成し、これを可変コンデンサC10及びC20に印加することにより、温度補償を行う方法がある。
【0009】
また、発振器10を恒温槽に収容することにより、外部の温度変化にかかわらず、一定の発振周波数を有する出力信号Foutを出力する方法もある。
【0010】
以下、温度補償型発振器に関する文献名を記載する。
【特許文献1】特開2006−67079号公報
【特許文献2】特開平10−303645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、発振器10の周波数温度特性を補償する方法では、水晶振動子X10の周波数温度特性のばらつきによって、水晶振動子X10の周波数温度特性と、補償電圧の周波数温度特性との間にずれ(すなわちフィッティング・エラー)が生じ、温度補償の精度が低下するという問題があった。
【0012】
また、水晶振動子X10の特性の経年変化は、水晶振動子X10の製造方法や部材に依存するため、水晶振動子X10の特性の経年変化による、出力信号Foutの発振周波数の変化を調整することが困難であるという問題があった。
【0013】
また、発振器10を恒温槽に収容する方法では、部品点数が増加し、発振器10が大型化するという問題があった。
【0014】
本発明は、簡易な構成で、温度変化や経年変化によって、出力信号の発振周波数が変化することを抑制することができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様による発振器は、圧電素子と、前記圧電素子とグランドとの間に接続された可変容量素子とを有し、所望の発振周波数を有する出力信号を生成する発振部と、前記発振部から出力された前記出力信号の発振周波数を電圧に変換することにより、電圧信号を生成する周波数電圧変換部と、前記所望の発振周波数に対応する基準電圧データを記憶する記憶部と、前記周波数電圧変換部から出力された前記電圧信号を、前記記憶部から与えられた前記基準電圧データと比較することにより、前記電圧信号と前記基準電圧データとの差分を算出し、これを補償電圧として前記可変容量素子に印加する比較部とを備える。
【0016】
また、本発明の一態様による発振器は、前記記憶部は、前記発振部固有の周波数特性を補正するための補正データをさらに記憶し、前記記憶部から与えられた前記補正データに基づいてゲインを調整することにより、前記比較部から出力された前記補償電圧を調整した上で前記可変容量素子に印加するゲイン調整部をさらに備える。
【0017】
また、本発明の一態様による発振器は、前記周波数電圧変換部の出力側に接続され、前記発振器を製造する際には、前記周波数電圧変換部と前記記憶部との間を導通状態にし、前記発振器を使用する際には、前記周波数電圧変換部と前記比較部との間を導通状態にするスイッチをさらに備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発振器によれば、簡易な構成で、温度変化や経年変化によって、出力信号の発振周波数が変化することを抑制することができる。
【0019】
また、本発明の発振器によれば、当該発振器の周波数特性のばらつきを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の発振器によれば、周波数電圧変換部の出力側にスイッチを設けるだけの簡易な構成で、発振器を製造する製造モード、又は発振器を使用する使用モードのいずれかの動作モードで発振器を動作させることができる。
【0021】
また、本発明の発振器によれば、第2のインバータから出力される出力信号を用いて、発振周波数の調整を行う場合と比較して、より高速に発振周波数の調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1に、本発明の実施の形態による発振器100の構成を示す。この発振器100は、例えば携帯電話機などの電子機器に搭載され、当該携帯電話機において要求される発振周波数を有する出力信号Foutを生成し出力する。かかる携帯電話機は、発振器100から出力される出力信号Foutをクロック信号として使用することにより、内蔵する各種回路の動作を制御する。
【0024】
水晶発振回路200は、圧電素子として水晶振動子X100を有し、所望の発振周波数を有する出力信号を生成する。なお、本実施の形態の場合、圧電素子として水晶振動子X100を使用したが、例えば圧電セラミックなど、他の種々の圧電素子を使用することができる。
【0025】
水晶振動子X100の一端は、帰還抵抗としての抵抗R100の一端に接続されると共に、インバータINV100の入力端子に接続されている。また、水晶振動子X100の一端と、グランドGNDとの間には、可変コンデンサC100が接続されている。
【0026】
一方、水晶振動子X100の他端は、抵抗R100の他端に接続されると共に、インバータINV100の出力端子に接続されている。また、水晶振動子X100の他端と、グランドGNDとの間には、可変コンデンサC200が接続されている。
【0027】
可変コンデンサC100及びC200は、印加される電圧に応じて、出力信号Foutの発振周波数を調整するための可変容量素子として動作する。なお、この場合、可変コンデンサC100及びC200ではなく、可変容量ダイオードを使用しても良い。
【0028】
このように、発振部に対応する水晶発振回路200は、圧電素子と、当該圧電素子とグランドとの間に接続された可変容量素子とを有し、所望の発振周波数を有する出力信号を生成する。
【0029】
インバータINV100の出力端子には、バッファとしてのインバータINV200の入力端子が接続され、当該インバータINV200の出力端子から、所望の発振周波数を有する出力信号Foutが出力される。
【0030】
ところで、本実施の形態の場合、発振器100の動作モードとしては、発振器100を製造する製造状態にある製造モードと、発振器100を製造及び出荷した後、発振器100を使用する使用状態にある使用モードとがある。
【0031】
発振器100を製造する際には、製造モードに対応するデータが、データ入出力端子DIOを介してメモリ300に書き込まれ、記憶される。制御回路400は、製造モードに対応するデータがメモリ300に記憶されている場合には、スイッチSW100の接続状態をアナログ/デジタル(A/D)変換回路600側に切り換える。
【0032】
これと共に、外部から電圧入力端子(図示せず)を介して入力される電圧を可変コンデンサC100及びC200に印加することにより、可変コンデンサC100及びC200の容量を変化させ、出力信号Foutの発振周波数が所望の発振周波数になるように調整する。なお、所望の発振周波数とは、発振器100が搭載される電子機器において要求される発振周波数をいう。
【0033】
この状態において、周波数電圧変換部に対応する周波数/電圧(F/V)変換回路500は、水晶発振回路200から出力され、分周回路450によって分周された出力信号の発振周波数を電圧に変換することにより、電圧信号を生成し、これをゲイン調整回路550に出力する。
【0034】
ゲイン調整回路550は、制御回路400から与えられる当該発振器100の電源電圧データに基づいてゲインを調整することにより、周波数/電圧(F/V)変換回路500から出力された電圧信号を、電源電圧に応じた電圧信号に調整した上で、スイッチSW100を介してアナログ/デジタル(A/D)変換回路600に出力する。
【0035】
アナログ/デジタル(A/D)変換回路600は、入力された電圧信号をデジタルデータに変換し、得られた電圧データを基準電圧データとしてメモリ300に書き込み、記憶する。すなわち、記憶部に対応するメモリ300は、所望の発振周波数に対応する基準電圧データを記憶する。
【0036】
なお、発振器100から出力される出力信号Foutの発振周波数を解析することにより、発振器100の周波数特性のばらつきを抑制するための補正データを生成し、これをデータ入出力端子DIOを介してメモリ300に書き込み、記憶する。すなわち、メモリ300は、水晶発振回路200固有の周波数特性を補正するための補正データをさらに記憶する。
【0037】
このようにして、メモリ300には、発振器100が搭載される電子機器において要求される発振周波数に対応する基準電圧データと、発振器100の周波数特性のばらつきを抑制するための補正データとが記憶される。
【0038】
その後、発振器100の製造工程が終了し、出荷しようとする際には、使用モードに対応するデータが、データ入出力端子DIOを介してメモリ300に書き込まれ、記憶されると共に、製造モードに対応するデータがメモリ300から消去される。制御回路400は、使用モードに対応するデータをメモリ300から読み出すと、スイッチSW100の接続状態をコンパレータ700側に切り換える。
【0039】
続いて、この発振器100は、例えば携帯電話機などの電子機器に搭載され、所望の発振周波数を有する出力信号Foutを生成し、出力し続ける。すなわち、本実施の形態の場合、周波数/電圧(F/V)変換回路500は、水晶発振回路200から出力され、分周回路450によって分周された出力信号の発振周波数を電圧に変換することにより、電圧信号を生成し、これをゲイン調整回路550に出力する。
【0040】
ゲイン調整回路550は、制御回路400から与えられる当該発振器100の電源電圧データに基づいてゲインを調整することにより、周波数/電圧(F/V)変換回路500から出力された電圧信号を、電源電圧に応じた電圧信号に調整した上で、スイッチSW100を介してコンパレータ700に出力する。
【0041】
一方、制御回路400は、発振器100が搭載される電子機器において要求される発振周波数に対応する基準電圧データをメモリ300から読み出し、これをデジタル/アナログ(D/A)変換回路800に出力する。デジタル/アナログ(D/A)変換回路800は、入力された基準電圧データをアナログ信号に変換し、得られた基準電圧データをコンパレータ700に出力する。
【0042】
比較部に対応するコンパレータ700は、周波数/電圧(F/V)変換回路500から出力された電圧信号を、メモリ300から与えられた基準電圧データと比較することにより、これら電圧信号と基準電圧データとの差分を算出し、これを補償電圧としてゲイン調整回路900に出力する。
【0043】
その際、制御回路400は、メモリ300から補正データを読み出し、これをゲイン調整回路900に与える。ゲイン調整回路900は、制御回路400から与えられた補正データに基づいてゲインを調整することにより、コンパレータ700から出力された補償電圧を調整し、発振器100の周波数特性のばらつきを抑制する。
【0044】
ゲイン調整回路900から出力される補償電圧を可変コンデンサC100及びC200に印加することにより、可変コンデンサC100及びC200の容量を変化させる。このように、ゲイン調整部に対応するゲイン調整回路900は、メモリ300から制御回路400を介して与えられた補正データに基づいてゲインを調整することにより、コンパレータ700から出力された補償電圧を調整した上で可変コンデンサC100及びC200に印加する。
【0045】
これにより、発振器100は、出力信号Foutの発振周波数が、発振器100が搭載される電子機器において要求される発振周波数になるように調整する。これ以降、発振器100は、上述の動作を繰り返すことにより、出力信号Foutの発振周波数を常に調整し続ける。
【0046】
このように本実施の形態によれば、水晶発振回路200から出力される出力信号の発振周波数を常に監視し、温度変化や経年変化によって、出力信号の発振周波数が変化しても、直ちに当該発振周波数を調整することにより、簡易な構成で、出力信号の発振周波数が変化することを抑制することができる。
【0047】
なお上述の実施の形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、水晶振動子X100及び可変コンデンサC200の接続点と、水晶振動子X100の他端との間に、抵抗を接続しても良い。また、水晶振動子X100の他端、可変コンデンサC200の一端、抵抗R100の他端、インバータINV100の出力端子を接続するための接続線のうち、当該接続線及び水晶振動子X100の接続点と、当該接続線及び抵抗R100の接続点との間に、抵抗を接続しても良い。
【0048】
また上述の実施の形態においては、携帯電話機に発振器100を搭載する場合について述べたが、例えばGPS機能を有するナビゲーション装置など、他の種々の電子機器に発振器100を搭載するようにしても良い。
【0049】
また、上述の実施の形態においては、ゲイン調整回路900から出力される補償電圧を可変コンデンサC100及びC200に印加する場合について述べたが、コンパレータ700から出力される補償電圧を直接可変コンデンサC100及びC200に印加するようにしても良い。
【0050】
また、周波数/電圧(F/V)変換回路500及びアナログ/デジタル(A/D)変換回路600間と、周波数/電圧(F/V)変換回路500及びコンパレータ700間とに、それぞれスイッチを設けるようにしても良い。
【0051】
その際、製造モードに対応するデータがメモリ300に記憶された場合には、アナログ/デジタル(A/D)変換回路600に接続されたスイッチをオン状態にすると共に、コンパレータ700に接続されたスイッチをオフ状態にする。
【0052】
続いて、使用モードに対応するデータがメモリ300に記憶された場合には、アナログ/デジタル(A/D)変換回路600に接続されたスイッチをオフ状態にすると共に、コンパレータ700に接続されたスイッチをオン状態にする。
【0053】
すなわち、要は、周波数/電圧(F/V)変換回路500の出力側に接続され、発振器100を製造する際には、周波数/電圧(F/V)変換回路500とメモリ300との間を導通状態にし、発振器100を使用する際には、周波数/電圧(F/V)変換回路500とコンパレータ700との間を導通状態にするスイッチを設けるようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態による発振器の構成を示す回路図である。
【図2】従来の発振器の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0055】
10、100 発振器
200 水晶発振回路
300 メモリ
400 制御回路
500 周波数/電圧(F/V)変換回路
700 コンパレータ
900 ゲイン調整回路
X10、X100 水晶振動子
R10、R100 抵抗
C10、C20、C100、C200 可変コンデンサ
INV10、INV20、INV100、INV200 インバータ
SW100 スイッチ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、前記圧電素子とグランドとの間に接続された可変容量素子とを有し、所望の発振周波数を有する出力信号を生成する発振部と、
前記発振部から出力された前記出力信号の発振周波数を電圧に変換することにより、電圧信号を生成する周波数電圧変換部と、
前記所望の発振周波数に対応する基準電圧データを記憶する記憶部と、
前記周波数電圧変換部から出力された前記電圧信号を、前記記憶部から与えられた前記基準電圧データと比較することにより、前記電圧信号と前記基準電圧データとの差分を算出し、これを補償電圧として前記可変容量素子に印加する比較部と
を備えることを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記記憶部は、
前記発振部固有の周波数特性を補正するための補正データをさらに記憶し、
前記記憶部から与えられた前記補正データに基づいてゲインを調整することにより、前記比較部から出力された前記補償電圧を調整した上で前記可変容量素子に印加するゲイン調整部
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
前記周波数電圧変換部の出力側に接続され、前記発振器を製造する際には、前記周波数電圧変換部と前記記憶部との間を導通状態にし、前記発振器を使用する際には、前記周波数電圧変換部と前記比較部との間を導通状態にするスイッチ
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の発振器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−109828(P2010−109828A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281270(P2008−281270)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】