説明

発振器

【課題】 MEMS共振器を用いた発振器において、TIAの雑音の影響を低減し、発振器出力の位相雑音特性を改善することができる発振器を提供する。
【解決手段】 MEMS共振器7と、TIA5と、バッファアンプ9とを備えた発振器において、MEMS共振器7の出力をTIA5に入力する配線15に、電磁誘導により結合して、当該配線15を流れる電流を電圧に変換してバッファアンプ9に出力する電流/電圧変換器を備え、発振器出力を電流/電圧変換器から取り出すようにした発振器であり、また、当該電流/電圧変換器を、配線15を非接触に取り囲むように形成され、一端が接地され他端がバッファアンプ9に接続する発振出力コイル11とした発振器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器に係り、特に位相雑音特性を改善することができる発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来の発振器としては、等価直列抵抗が比較的大きい(例えば、500Ω以上)共振器を利用したものがあった。特に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)発振器には、発振用増幅素子として、トランスインピーダンスアンプ(TIA:Transimpedance Amplifier)を用いたものがある。
【0003】
従来の発振器について図7を用いて説明する。図7は、従来のMEMS共振器を用いた発振器の例を示す回路図である。
図7に示すように、従来の発振器は、MEMS共振器7と、TIA5と、バッファアンプ9とを備えている。
TIA5は、発振用増幅素子であり、オペアンプ6と、負帰還抵抗8とから構成されている。また、共振器7には、共振器用バイアス10が印加されている。そして、TIA5の出力をバッファアンプ9を介して発振出力として取り出すようになっている。
発振出力をTIA出力から取り出すのは、TIAが、電流入力/電圧出力の素子であり、電圧で発振振幅を取り出す方が容易だからである。
【0004】
[MEMS共振器の構成:図8]
次に、従来のMEMS共振器の構成について図8を用いて説明する。図8は、従来のディスク型MEMS共振器の断面説明図である。
従来のディスク型MEMS共振器としては、ディスク状の共振子(以下、ディスク23)を2点で支持し、ディスク23の周囲に4個の電極24を配置したものがある。ディスク23と電極24との間には、ギャップ25が設けられ、静電振動によりディスクが直径方向に伸び縮みする。
【0005】
図8に示すように、従来のMEMS共振器は、シリコン(Si)20上に酸化膜(SiO2)21が形成されたSOI基板上に、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)膜22が積層され、その上に多結晶シリコン(ポリシリコン)から成るディスク23、電極24及び配線26が形成されたものである。ディスク23及び電極24の間には、酸化膜の犠牲層エッチングによってギャップ25が形成されている。
【0006】
[TIAの位相雑音]
ところで、従来の発振器では、TIA出力から発振器出力を取り出していたため、TIAのレベルの高いフロア雑音が、発振器の位相雑音に加算され、発振器出力の位相雑音のノイズフロアを劣化させていた。
例えば、従来のMEMS共振器を用いた発振器での位相雑音ノイズフロア(60MHz、100kHzオフセット)は、−130dBc/Hz程度であり、同様の周波数のTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator:温度補償型水晶発振器)と比較して、約20dB悪く、適用できるアプリケーションが限定され、大きな制約が発生してしまう。
【0007】
[関連技術]
尚、共振器に関連する技術としては、特開2005−184851号公報(出願人:三星電子株式会社、特許文献1)、特開2006−311423号公報(出願人:富士通コンポーネント株式会社、特許文献2)、実開平05−067042号公報(出願人:株式会社ジャルコ、特許文献3)がある。
特許文献1には、デュプレクサにおいて、送信端フィルタと受信端フィルタとの間のアイソレーション部に、コイル状のインダクタを設けることが記載されている。
特許文献2には、MEMS共振器において、コイル状の電極を設けることが記載されている。
特許文献3には、高周波回路において、配線をコイル状に巻いた構成が記載されている。
【0008】
また、後述する非特許文献1には、MEMS共振器を用いた発振器の構成や、特性について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−184851号公報
【特許文献2】特開2006−311423号公報
【特許文献3】実開平05−067042号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yu-Wei Lin et al.: "60-MHz Wine-Glass Micromechanical-Disk Reference Oscillator", 2004 IEEE International Solid-State Circuit Conference, Session 17, MEMS AND SENSORS, 17.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来のMEMS共振器を用いた発振器は、レベルの高いフロア雑音が含まれるTIA出力から発振出力を取り出していたため、発振器出力の位相雑音のノイズフロアが劣化してしまうという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、位相雑音特性を改善することができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、基板上に形成された共振器と、発振用の増幅素子と、発振器出力を取り出すバッファアンプとを備えた発振器であって、共振器の出力を増幅素子に入力する入力配線に、電磁誘導によって結合し、入力配線を流れる電流を電圧に変換してバッファアンプに出力する電流/電圧変換手段を備えたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記発振器において、電流/電圧変換手段が、入力配線の周囲に、入力配線を非接触に囲むように形成され、一端が接地され他端がバッファアンプに接続されたコイルであることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記発振器において、電流/電圧変換手段が、入力配線と略平行に隣接して配置され、一端が接地され他端が前記バッファアンプに接続されたマイクロストリップラインであることを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記発振器において、電流/電圧変換手段が、入力配線上に設けられた第1のコイルと、第1のコイルに対向して設けられ、一端が接地され他端がバッファアンプに接続された第2のコイルとで構成されるトランスであることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記発振器において、第1のコイルと第2のコイルとが、基板に対して水平方向に並列して配置されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記発振器において、第1のコイルと第2のコイルとが、絶縁層を介して基板に対して垂直方向に重なって配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に形成された共振器と、発振用の増幅素子と、発振器出力を取り出すバッファアンプとを備えた発振器であって、共振器の出力を増幅素子に入力する入力配線に、電磁誘導によって結合し、入力配線を流れる電流を電圧に変換してバッファアンプに出力する電流/電圧変換手段を備えた発振器としているので、発振用増幅素子の出力側からではなく、電流/電圧変換手段を介してバッファアンプから発振器出力を取り出すため、発振用増幅素子で発生する雑音が共振器で阻止されるので、雑音の影響を低減でき、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、上記発振器において、電流/電圧変換手段が、入力配線の周囲に、入力配線を非接触に囲むように形成され、一端が接地され他端がバッファアンプに接続されたコイルである上記発振器としているので、発振用増幅素子の出力側からではなく、コイルを介してバッファアンプから発振器出力を取り出すため、発振用増幅素子で発生する雑音が共振器で阻止されるので、雑音の影響を低減でき、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、電流/電圧変換手段が、入力配線と略平行に隣接して配置され、一端が接地され他端が前記バッファアンプに接続されたマイクロストリップラインである上記発振器としているので、発振周波数が高くなっても容量が発生しにくく、高周波に対応可能として、高周波の発振器出力の位相雑音特性向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、電流/電圧変換手段が、入力配線上に設けられた第1のコイルと、第1のコイルに対向して設けられ、一端が接地され他端がバッファアンプに接続された第2のコイルとで構成されるトランスである上記発振器としているので、コイルの製造工程における積層数を減らし、製造コストを低減することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、第1のコイルと第2のコイルとが、基板に対して水平方向に並列して配置されている上記発振器としているので、コイルの製造工程における積層数を減らし、製造コストを低減することができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、第1のコイルと第2のコイルとが、絶縁層を介して基板に対して垂直方向に重なって配置されている上記発振器としているので、コイルの配置に必要な面積を低減し、発振器全体の小型化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発振器の回路図である。
【図2】第1の発振器におけるMEMS共振器の構成を示す模式説明図である。
【図3】第2のMEMS共振器においてマイクロストリップラインを用いた構成を示す模式説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る発振器の回路図である。
【図5】第2の発振器におけるMEMS共振器の構成を示す模式説明図である。
【図6】第2のMEMS共振器の別のコイルの模式説明図である。
【図7】従来のMEMS共振器を用いた発振器の例を示す回路図である。
【図8】従来のディスク型MEMS共振器の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る発振器は、MEMS共振器の出力をTIAに入力する配線部に、当該配線部に電磁誘導で結合し、電流を電圧に変換する電流/電圧変換手段を備え、当該電流/電圧変換手段からバッファアンプを介して発振器出力を取り出すようにしているので、高いフロア雑音が含まれるTIAの影響を低減し、発振器の位相雑音特性を向上させることができるものである。
【0027】
また、本発明の実施の形態に係る発振器は、電流/電圧変換手段として、MEMS共振器の出力をTIAに入力する配線に非接触に巻き付くよう、一端が接地され他端がバッファアンプに接続されたコイルを設け、当該コイルが電磁誘導によって配線と結合することにより、配線を流れる電流を電圧に変換してバッファアンプに供給し、当該コイルを介して発振器出力をバッファアンプから得るようにしており、TIAのフロア雑音の影響を低減し、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができるものである。
【0028】
また、本発明の実施の形態に係る発振器は、電流/電圧変換手段として、MEMS共振器とTIA入力とを接続する配線に隣接して、一端が接地され他端がバッファアンプに接続されたマイクロストリップラインを設け、当該マイクロストリップラインが配線と電磁誘導により結合することにより、マイクロストリップラインを介して発振器出力を得るようにしており、位相雑音特性を向上させ、高周波にも対応可能とすることができるものである。
【0029】
また、本発明の実施の形態に係る発振器は、電流/電圧変換手段として、MEMS共振器とTIA入力とを接続する配線上に設けられた第1のコイルと、第1のコイルに対向し、一端が接地され、他端がバッファアンプに接続された第2のコイルを設けてトランスを構成し、第2のコイルを介して発振器出力をバッファアンプから得るようにしており、位相雑音を向上させることができるものである。
【0030】
[第1の実施の形態:図1]
本発明の第1の実施の形態に係る発振器について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発振器の回路図である。
図1に示すように、第1の実施の形態に係る発振器(第1の発振器)は、TIA5と、MEMS共振器7と、バッファアンプ9と、共振器用バイアス10と、発振出力コイル11とを備えている。また、TIA5は、従来と同様に、オペアンプ6と、負帰還抵抗8とを備えている。
【0031】
第1の発振器の特徴部分である発振出力コイル11は、MEMS共振器7の出力をTIAに入力する配線15の周囲に非接触に巻き付くよう形成されており、一端が接地され、他端はバッファアンプ9に接続されている。尚、配線15は、請求項における「入力配線」に相当している。
発振用出力コイル11は、電磁誘導によって配線15と結合して、配線15に流れる電流を電圧に変換してバッファアンプ9に出力する電流/電圧変換手段である。
【0032】
つまり、第1の発振器は、TIA出力から発振器出力を取り出すのではなく、発振出力コイル11から発振器出力を取り出すようにしているものである。
これにより、第1の発振器は、TIAのレベルの高いフロア雑音の影響を低減し、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができるものである。
また、電磁誘導を利用することにより、発振ループへの負荷の影響を軽減でき、負荷変動を防ぐことができるものである。
【0033】
[第1の発振器におけるMEMS共振器の構成:図2]
次に、第1の発振器のMEMS共振器の構成について図2を用いて説明する。図2は、第1の発振器におけるMEMS共振器の構成を示す模式説明図である。
図2に示すように、第1の発振器のMEMS共振器7(第1のMEMS共振器)は、従来と同様のディスク型共振子の、TIA入力側の配線15の周囲に、配線15に非接触に発振出力コイル11を設けた構成である。
つまり、第1のMEMS共振器7は、絶縁層の上に発振出力コイル11の下側の部分が形成され、その上に絶縁層を介して配線15が形成され、更にその上に絶縁層を介して発振出力コイル11の上側の部分が形成され、配線15を挟んでスルーホールにより発振出力コイル11の上下が接続されてコイルを形成する多層構造となっている。
【0034】
また、発振出力コイル11は、発振器周波数が高くなると容量が発生してコイルとして機能しなくなる。そのため、周波数が高い場合には発振出力コイル11の巻き数を減らして調整する。通常は、使用する発振器周波数に応じて最適な特性となる巻き数に設定する。
【0035】
[第1の実施の形態の効果]
本発明の第1の実施の形態に係る発振器によれば、MEMS共振器7と、TIA5と、バッファアンプ9とを備えた発振器において、MEMS共振器7とTIA入力側とを接続する配線15の周囲に、当該配線15を非接触に取り囲むように形成され、一端が接地され他端がバッファアンプ9に接続する発振出力コイル11を備え、発振出力コイル11が電磁誘導により配線15に結合して、電流を電圧に変換してバッファアンプ9に供給するようにしているので、発振器出力をTIA出力側からではなく、発振出力コイル11から取り出すことができ、TIAのフロア雑音の影響を低減し、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができる効果がある。
【0036】
[第2の実施の形態:図4]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る発振器について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施の形態に係る発振器の回路図である。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る発振器(第2の発振器)は、基本的には第1の発振器と同様のTIA5と、MEMS共振器7と、バッファアンプ9とから構成され、第2の発振器の特徴部分として、MEMS共振器7の出力をTIA5に入力する入力配線上にコイル(TIA入力側コイル)12を形成しており、更に、TIA入力側コイル12に対向して、一端が接地され他端がバッファアンプ9に接続された発振出力側コイル13を備えた構成である。
【0037】
つまり、第2の発振器では、TIA入力側コイル12と発振出力側コイル13とでトランスを構成して、TIA入力側コイル12に流れる電流を発振出力側コイル13で巻き数の比に応じた電圧に変換してバッファアンプ9に出力するものである。TIA入力側コイル12と発振出力側コイル13とで構成されるトランスが電流/電圧変換手段となる。TIA入力側コイル12は請求項に記載した第1のコイルに相当し、発振出力側コイル13は第2のコイルに相当している。
【0038】
これにより、第2の発振器では、発振器出力をTIA出力側ではなく、発振出力側コイル13を介して取り出すことができ、TIA5のフロア雑音の影響を低減して、発振器出力の位相雑音特性を向上させることができるものである。
【0039】
[第2の発振器におけるMEMS共振器の構成:図5]
次に、第2の発振器のMEMS共振器の構成について図5を用いて説明する。図5は、第2の発振器におけるMEMS共振器の構成を示す模式説明図である。
図5に示すように、第2の発振器のMEMS共振器7(第2のMEMS共振器)は、上述した第1の発振器と同様のディスク型共振子を備え、ディスク型共振子のTIA入力側の配線15に直列にTIA入力側コイル12が接続し、更にTIA入力側コイル12に対向して発振出力側コイル13を設けた構成である。
図5からもわかるように、TIA入力側コイル12及び発振出力側コイル13は、中に配線を通した構成ではないため、積層数を減らすことができ、製造プロセスを削減しコストを低減することができるものである。
【0040】
[第2のMEMS共振器の別の構成:図6]
次に、第2のMEMS共振器の別の構成について図6を用いて説明する。図6は、第2のMEMS共振器の別のコイルの模式説明図である。
上述した第2のMEMS共振器では、2つのコイルを水平方向に並べて配置して、トランスを形成したものであるが、別の構成では、2つのコイルを基板に垂直な方向に重ねて配置することでトランスを構成するものである。
【0041】
図6では、TIA入力側コイル12又は発振出力側コイル13として用いられるコイルの形状を示しており、金属配線を渦巻状に巻いてコイル状としたものである。短絡しないよう一部多層構造となっている。
そして、絶縁層を挟んで、2つのコイルが対向するように上下に重ねて配置することにより、トランスとして動作するものである。
尚、接続関係は図5に示したものと同じであり、TIA入力側コイル12として用いられるコイルは、共振器7の電極とTIA5の入力側配線に接続し、発振出力側コイル13として用いられるコイルは、GND電極とバッファアンプ9に接続される。
【0042】
このように、TIA入力側コイル12と発振出力側コイル13とを、絶縁層を介して垂直方向に積層して形成することにより、チップ面積を小さくすることができ、発振器の小型化を図ることができるものである。
【0043】
[マイクロストリップラインを用いた構成:図3]
第2のMEMS共振器の変形として、マイクロストリップラインを用いた構成について図3を用いて説明する。図3は、第2のMEMS共振器においてマイクロストリップラインを用いた構成を示す模式説明図である。
図3に示すように、第2のMEMS共振器の変形では、電流/電圧変換手段として、コイルの代わりにマイクロストリップラインを用いて発振器出力を取り出す構成であり、MEMS共振器7とTIA入力側とを接続する配線15に隣接して、略平行にマイクロストリップライン16を設けたものである。
【0044】
マイクロストリップライン16は、発振出力側コイル13と同様に、一端が接地され、他端がバッファアンプ9に接続されている。そして、隣接して配置された配線15と電磁誘導によって結合して、配線15を流れる電流を電圧に変換してバッファアンプ9に出力する。マイクロストリップライン16の厚さ及び幅、配線15との間隔は所望の特性が得られるよう適宜設計可能である。
マイクロストリップライン16を用いることにより、発振器周波数が高くなっても容量の発生を少なくして特性の変動を抑制し、より高周波に適用することが可能となるものである。
【0045】
[第2の実施の形態の効果]
本発明の第2の実施の形態に係る発振器によれば、MEMS共振器7と、TIA5と、バッファアンプ9とを備えた発振器において、MEMS共振器7とTIA入力側とを接続する配線15に直列にTIA入力側コイル12を形成し、TIA入力側コイル12に対向し、一端が接地され他端がバッファアンプ9に接続された発振出力側コイル13を備え、TIA入力側コイル12と発振出力側コイル13とでトランスを形成し、電流を電圧に変換してバッファアンプ9に供給するようにしているので、発振器出力をTIA出力側からではなく、発振出力側コイル13から取り出すことができ、TIAのフロア雑音の影響を低減して、発振器出力の位相雑音特性を向上させ、また、コイルの中に配線を形成しなくてすむので製造を容易にすることができる効果がある。
【0046】
また、第2の発振器の別の構成によれば、トランスを構成するTIA入力側コイル12及び発振出力側コイル13とを渦巻状に形成し、絶縁層を挟んで基板に垂直方向に対抗するよう積層した構成としているので、コイル設置に要するスペースを小さくして、発振器全体の小型化を図ることができる効果がある。
【0047】
また、第2の発振器において、発振出力側コイル13の代わりに、TIA入力側の配線15に隣接して、一端が接地され、他端がバッファアンプ9に接続されたマイクロストリップライン16を設け、マイクロストリップライン16が電磁誘導によって配線15と結合して電流を電圧に変換するので、発振器出力をマイクロストリップライン16から取り出すことができ、発振器出力の位相雑音特性を向上させ、また、容量が発生しにくいため高周波に適用可能とする効果がある。
【符号の説明】
【0048】
5…TIA、 6…オペアンプ、 7…MEMS共振器、 8…負帰還抵抗、 9…バッファアンプ、 10…共振器用バイアス、 11…発振出力コイル、 12…TIA入力側コイル、 13…発振出力側コイル、 15…TIA入力側配線、 16…マイクロストリップライン、 20…シリコン基板、 21…酸化膜、 22…窒化ケイ素膜、 23…ディスク、 24…電極、 25…ギャップ、 26…配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された共振器と、発振用の増幅素子と、発振器出力を取り出すバッファアンプとを備えた発振器であって、
前記共振器の出力を前記増幅素子に入力する入力配線に、電磁誘導によって結合し、前記入力配線を流れる電流を電圧に変換して前記バッファアンプに出力する電流/電圧変換手段を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項2】
電流/電圧変換手段が、入力配線の周囲に、前記入力配線を非接触に囲むように形成され、一端が接地され他端が前記バッファアンプに接続されたコイルであることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
電流/電圧変換手段が、入力配線と略平行に隣接して配置され、一端が接地され他端が前記バッファアンプに接続されたマイクロストリップラインであることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項4】
電流/電圧変換手段が、入力配線上に設けられた第1のコイルと、前記第1のコイルに対向して設けられ、一端が接地され他端が前記バッファアンプに接続された第2のコイルとで構成されるトランスであることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項5】
第1のコイルと第2のコイルとが、前記基板に対して水平方向に並列して配置されていることを特徴とする請求項4記載の発振器。
【請求項6】
第1のコイルと第2のコイルとが、絶縁層を介して前記基板に対して垂直方向に重なって配置されていることを特徴とする請求項4記載の発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−70193(P2012−70193A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212855(P2010−212855)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】