説明

発振回路、圧電発振器および発振回路の制御方法

【課題】 インバータの閾値電圧が可変可能であり、発振段回路内に生じたノイズに影響されることなく圧電振動子を発振させる発振回路、圧電発振器および発振回路の制御方法を提供する。
【解決手段】 圧電発振器10は、圧電振動子12と、PチャネルMOSトランジスタ16およびNチャネルMOSトランジスタ18からなるCMOS回路を多段に接続してなり、前記圧電振動子12に接続したインバータ14と、前記NチャネルMOSトランジスタ18のソース側に接続したスイッチ28と、前記インバータ30の出力側に接続し、前記インバータ14から出力されたパルス信号のカウンタ26と、前記カウンタ26の後段に接続し、前記スイッチ28を制御する制御器22と、を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振回路、圧電発振器および発振回路の制御方法に係り、特にインバータを用いて構成された発振回路、その発振回路を用いた圧電発振器およびその発振回路を用いて圧電振動子を発振させる制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電発振器は、マイクロコンピュータのクロック源等に用いられている。この圧電発振器は、主に圧電振動子およびこの圧電振動子を発振させる回路から構成されている。そして圧電振動子を発振させる回路には、インバータが用いられる場合がある。
【0003】
図6に従来技術に係る圧電発振器の回路構成の説明図を示す。圧電発振器100は圧電振動子101と、この圧電振動子101を発振させるインバータ102と、このインバータ102を動作させるための帰還抵抗103と、位相反転のために使われるゲート容量104およびドレイン容量105と、可変容量ダイオード106や容量アレイ107等の負荷容量とから主に構成されている。圧電振動子101を発振させる場合、発振開始時の負荷容量等の変化により発振の育成が阻害されるのを防止するため、インバータ102におけるNチャネルMOSトランジスタ108の一部をレーザカットまたはマスクオプションの変更等により減らし、インバータ102の出力側に接続された出力段インバータ109との閾値電圧VTH差を大きくしていた。
【0004】
また特許文献1には、CMOSインバータにおけるNチャネルMOSトランジスタおよびPチャネルMOSトランジスタのソース側に、CMOSインバータの動作電流を段階的に制限する複数の制限抵抗をそれぞれ接続し、この複数の制限抵抗の中から1つを選択する周波数制御信号を、電源投入時の発振起動時間に応じて自動的に発生する発振周波数検出回路を備えた発振回路が開示されている。
【特許文献1】特開2000−13143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7にノイズの発生についての説明図を示す。図7の縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。そして図7において、最上段は図6におけるインバータの入力、その下段はインバータの出力、その下段は出力段インバータの入力、最下段は出力段インバータの出力を示す。圧電振動子が発振する場合、インバータに入力される信号の振幅は徐々に大きくなり、インバータの閾値電圧VTH1を超えたときにインバータから信号が出力される。出力段インバータではインバータからの信号を入力し、この信号が出力段インバータの閾値電圧VTH2を超えたときに出力段インバータから信号が出力される。
【0006】
ところがインバータや出力段インバータの入力にノイズが入った場合、インバータの出力や出力段インバータの出力にノイズに基づいた信号が出力されてしまう。なお図7ではノイズおよびノイズに起因する出力を一点鎖線で示している。そして出力段インバータのノイズを含む出力信号は、インバータの入力側に回り込んでインバータに入力される。このとき圧電振動子の発振(振動)が、出力段インバータから回り込んできたノイズを含む出力信号によって打ち消されて、圧電振動子の発振の育成が妨げられる場合が生じる。この場合、圧電振動子は異常発振を生じることになる。
【0007】
したがって従来技術に係る圧電発振器は、インバータのPチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタの両方を制御し、圧電振動子の発振が育成された後に信号を出力段インバータへ伝えるようにして異常発振を抑制していた。しかしこの構成では、インバータの閾値電圧の差が大きくなっているので、出力信号のデューティ特性が悪くなる問題がある。
【0008】
また特許文献1に開示された発明は、PチャネルMOSトランジスタおよびNチャネルMOSトランジスタのそれぞれに接続された制限抵抗を制御しているので、CMOSインバータの閾値電圧を変動させることができない。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、インバータの閾値電圧をかえることができ、発振段回路内に生じたノイズに影響されることなく圧電振動子を発振させる発振回路、圧電発振器および発振回路の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る発振回路は、外部の圧電振動子に接続し、複数の反転素子を多段に接続したインバータと、前記反転素子に直列接続したスイッチと、前記インバータの出力側に設けられ、前記インバータの出力パルスを計数するカウンタと、前記カウンタの出力側に設けられ、前記カウンタの出力信号に基づいて前記スイッチを制御する制御器と、を有することを特徴としている。制御器がスイッチのON/OFFを制御することにより、反転素子の動作を制御することができる。そしてインバータから信号が出力されて、その信号のパルス数がカウンタにおいて予め設定された数に達すると、オーバーフロー信号がカウンタから制御器に出力されてスイッチを全てONにすることができる。これにより反転素子の動作制御を解除することができる。
【0011】
また前記反転素子はCMOSからなり、前記スイッチは、前記CMOSを構成するNチャネルMOSトランジスタのソースに接続されていることを特徴としている。制御器がスイッチのON/OFFを制御することにより、NチャネルMOSトランジスタをON/OFFすることができる。したがってNチャネルMOSトランジスタの一部をOFFにすると、CMOSのNチャネル側の電圧−電流特性が変化し、インバータの閾値電圧をかえることができる。そしてインバータから信号が出力されて、その信号のパルス数がカウンタにおいて予め設定された数に達すると、オーバーフロー信号がカウンタから制御器に出力されてスイッチを全てONにすることができる。これによりNチャネルMOSトランジスタが動作を再開して、インバータの閾値電圧をもとに戻すことができる。そしてインバータから出力される信号のデューティ特性を向上することができる。
【0012】
なお前記スイッチは、前記インバータの閾値電圧をかえるために動作制御される前記NチャネルMOSトランジスタのみに接続することができる。これによりNチャネルMOSトランジスタの一部にのみスイッチが接続されるので、NチャネルMOSトランジスタの全てにスイッチを接続する場合に比べて部品点数を減らすことができる。
【0013】
また前記スイッチは、Nチャネルトランジスタであることを特徴としている。これによりインバータの能力を向上させることができる。
また前記制御器は、この制御器に入力される信号に応じて前記スイッチを制御するNAND回路を備えたことを特徴としている。これにより制御器に入力される信号の大きさに応じて閾値を設定することができ、この閾値を超えるとスイッチをOFFにすることができる。そして複数の閾値を設定することにより、入力された信号の大きさが各閾値を超える毎にスイッチをOFFにしていくことができる。
【0014】
また本発明に係る圧電発振器は、上述した発振回路を圧電振動子に電気的に接続したことを特徴としている。圧電振動子の発振が育成される段階でNチャネルMOSトランジスタの動作を停止させると、インバータの閾値電圧をかえることができる。したがってノイズが入りにくくなり、圧電振動子の発振を育成することができる。また圧電振動子が安定発振すると、NチャネルMOSトランジスタの動作を再開して閾値電圧をもとに戻すことができる。したがってインバータからの出力信号のデューティ特性を向上させることができる。
【0015】
また前記圧電振動子に容量アレイおよび可変容量ダイオードの少なくとも一方を設けたことを特徴としている。容量アレイの容量値を調整することにより、また可変容量ダイオードに入力される電圧により圧電振動子の発振周波数をかえることができる。
【0016】
また本発明に係る発振回路の制御方法は、外部の圧電振動子に接続し、複数の反転素子を多段に接続したインバータと、前記反転素子に直列接続したスイッチと、前記インバータの出力側に設けられ、前記インバータの出力パルスを計数するカウンタと、前記カウンタの出力側に設けられ、前記カウンタの出力信号に基づいて前記スイッチを制御する制御器と、を有する発振回路の制御方法であって、前記圧電振動子の発振開始時は、インバータにおける複数のNチャネルMOSトランジスタのうち少なくとも1つの動作を停止させて前記インバータの閾値電圧を大きくし、前記圧電振動子の発振後は、前記インバータにおける前記NチャネルMOSトランジスタの全てを動作させてスレッショルド電圧を戻す、ことを特徴としている。これにより圧電振動子の発振を育成する時はインバータの閾値電圧を大きくすることができ、ノイズを入れにくくすることができる。したがって発振の育成が妨げられて異常発振することがない。また圧電振動子が安定発振した時はインバータの閾値電圧をもとに戻すので、インバータから出力される信号のデューティ特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る発振回路、圧電発振器および発振回路の制御方法の好ましい実施の形態について説明する。図1に圧電発振器の回路構成の説明図を示す。圧電発振器10は圧電振動子12を有し、この圧電振動子12にはインバータ14が接続されている。前記圧電振動子12は所望の発振周波数が得られるものを用いればよく、例えばATカット圧電振動片等を用いた圧電振動子12であればよい。またインバータ14は、PチャネルMOSトランジスタ16およびNチャネルMOSトランジスタ18からなるCMOS回路を多段に接続したものであり、圧電振動子12を発振させるものである。そしてインバータ14には、このインバータ14のゲインを決める帰還抵抗Rfが並列に接続されている。またインバータ14の出力側と圧電振動子12との間には制限抵抗Rdが接続されている。この制限抵抗Rdは、インバータ14と圧電振動子12との帰還回路を粗結合とし、前記帰還回路の位相を安定させるため等に用いられる。なお実施の形態によっては制限抵抗Rdを設けない構成としてもよい。さらに圧電振動子12の入力側にはドレイン容量Cdの一端が接続され、出力側にはゲート容量Cgの一端が接続されている。そしてドレイン容量Cdおよびゲート容量Cgの他端は接地されている。このドレイン容量Cdおよびゲート容量Cgは位相反転のために用いられる。
【0018】
また前記圧電振動子12の入力側と制限抵抗Rdとの間には可変容量ダイオード20が接続されている。この可変容量ダイオード20は、外部から入力された制御電圧Vcに基づいて圧電振動子12の発振周波数を変化させるために用いられる。そして可変容量ダイオード20の出力側には抵抗の一端が接続され、その他端は制御器22に接続されている。また圧電振動子12やインバータ14等で構成される前記帰還回路の出力側には、出力段インバータ24が接続されている。この出力段インバータ24の出力側にはインバータ25が接続されている。そして出力段インバータ24とインバータ25との間にはカウンタ26の一端が接続され、その他端は制御器22に接続されている。このカウンタ26は、出力段インバータ24から出力された信号のパルス数をカウントするものである。
【0019】
またインバータ14を構成するNチャネルMOSトランジスタ18の一部には、そのソース側にスイッチ28が接続されている。このスイッチ28は、スイッチ28に接続されているNチャネルMOSトランジスタ18の動作をON/OFFさせるために用いられる。そしてスイッチ28は制御器22に接続されている。
【0020】
前記制御器22は、カウンタ26からの信号を反転増幅するインバータ30と、このインバータ30からの出力、制御電圧Vcおよび電源電圧VDDを入力するNAND回路32とを有している。このNAND回路32は、制御電圧Vcをその大きさに応じて複数段に分割し、この分割した位置を閾値とするものである。したがって制御電圧Vcが零から徐々に増加してある閾値に到達すると、NAND回路32からはその閾値に対応したスイッチ28に、スイッチOFF信号を出力する。なお閾値を4つ以上設けてもよく、また2つ以下であってもよい。そして圧電振動子12を発振させる回路は、主にインバータ14、カウンタ26、制御器22およびスイッチ28から構成されている。
【0021】
次に、上述した圧電発振器10の動作について説明する。図2に圧電発振器10の動作を示す論理図を示す。また図3にインバータの閾値電圧VTHの変動図を示す。電源VDDを投入すると、インバータ14および制限抵抗Rdを介して可変容量ダイオード20に電源供給される。そして電源VDDが徐々に大きくなるのに伴って制御電圧Vcも徐々に大きくなる。このとき制御電圧Vcは3段階の閾値に分割されており、制御電圧Vcが徐々に大きくなって各閾値に到達するとスイッチ28がOFFにされて、そのスイッチ28に接続されているNチャネルMOSトランジスタ18が動作を停止する。
【0022】
具体的には、制御電圧Vcに対し、低い側から順にNAND3VTH、NAND2VTHおよびNAND1VTHの各閾値が設定されている。そして電源VDDが投入されると制御電圧Vcが徐々に大きくなり、この制御電圧Vcが閾値NAND3VTHに達するとNAND32aから信号が出力されてスイッチ28aをOFFにする。スイッチ28aがOFFされたことにより、このスイッチ28aに接続するNチャネルMOSトランジスタ18の動作が停止し、インバータ14の電圧−電流特性における閾値電圧(論理レベル)が変化する。すなわちPチャネル層およびNチャネル層の全てのMOSトランジスタを動作させた場合のインバータ14の閾値電圧はVTHであるが、NチャネルMOSトランジスタ18の動作を停止させるとNチャネル層の特性の傾きが小さくなるのでインバータ14の閾値電圧は1VTHに変化する(図3参照)。
【0023】
また電源VDDが大きくなるのに伴って制御電圧Vcも大きくなり、この制御電圧Vcが閾値NAND2VTHに達するとNAND32bから信号が出力されてスイッチ28bをOFFにする。スイッチ28bがOFFされたことにより、このスイッチ28bに接続するNチャネルMOSトランジスタ18の動作が停止し、インバータ14の電圧−電流特性における閾値電圧が2VTHに変化する。
【0024】
さらに制御電圧Vcが大きくなり、この制御電圧Vcが閾値NAND1VTHに達すると、NAND32cから信号が出力されてスイッチ28cをOFFにする。スイッチ28cがOFFされたことにより、このスイッチ28cに接続するNチャネルMOSトランジスタ18の動作が停止し、インバータ14の電圧−電流特性における閾値電圧が3VTHに変化する。そして電源VDDが一定になると制御電圧Vcも一定になり、このときのスイッチ28a,28b,28cはOFFになっている。
【0025】
図4にインバータ14のVin−Vout特性の変動図を示す。Pチャネル層およびNチャネル層の全てのMOSトランジスタを動作させた場合の入出力特性は、図4に示すように、閾値電圧VTHを通る制御前の入出力特性となる。そしてスイッチ28aがOFFにされてNチャネルMOSトランジスタ18の動作が停止されると、入出力特性は右側に移動して閾値電圧1VTHを通る特性となる。同様にスイッチ28bがOFFにされると入出力特性は閾値電圧2VTHを通る特性となる。最後にスイッチ28cがOFFにされると入出力特性は閾値電圧3VTHを通る制御後の入出力特性となる。
【0026】
また出力段インバータ24の閾値電圧はVDD/2よりに設定されている。そしてインバータ14と出力段インバータ24の閾値電圧の差は、少なくとも100mV程度の差が設けられている。
【0027】
そして発振回路10を発振させたときの振幅と閾値電圧1VTH〜3VTHとの関係は図2の「発振出力信号」に示す関係となる。インバータ14に入力される信号の振幅が閾値電圧を超えると、インバータ14から信号が出力される。このため閾値電圧をVTHから3VTHへ高くすると、この高くした分だけ圧電振動子12の発振信号の振幅が大きくならないとインバータ14から信号が出力されないので、閾値電圧よりも振幅の小さなノイズが入力されても、このノイズに基づいた信号がインバータ14から出力されることはない。
【0028】
そして圧電振動子12の発振が育成されて閾値電圧3VTHよりも大きくなるとインバータ14から信号が出力される。出力段インバータ24は、この信号を反転増幅したのち出力する。出力段インバータ24から出力される信号のパルス数はカウンタ26でカウントされる。そしてカウンタ26で、例えば100パルスをカウントするとオーバーフロー信号が制御器22に出力される。制御器22は、このオーバーフロー信号を入力すると安定発振したと認識し、スイッチ28a,28b,28cをONにする。すると動作が停止されていたNチャネルMOSトランジスタ18は動作を再開する。これにより閾値電圧は3VTHからVTHへ変化してVDD/2近くに戻され、インバータ14と出力段インバータ24との閾値電圧の差が無くなる。そしてインバータ14の閾値電圧をVTHに戻すと、インバータ14から出力される信号のデューティ特性が50%になる。なおカウンタ26は、圧電発振器10の発振起動時にカウンタがリセットされる。また圧電振動子12が安定発振すると、クロック信号Foutが出力される。
【0029】
このように制御電圧Vcに応じてスイッチ28をOFFにし、このスイッチ28に接続されたNチャネルMOSトランジスタ18の動作を停止させているので、インバータ14の閾値電圧を変化させることができる。そしてインバータ14の閾値電圧を出力段インバータ24の閾値電圧と離れさせているので、ノイズを入れにくくすることができる。したがって圧電振動子12に異常発振が生じることはなく、圧電振動子12の安定した発振を得ることができる。
【0030】
そして一部のNチャネルMOSトランジスタ18のみにスイッチ28が設けられた構成なので、従来技術に係る発振回路のようにNチャネルMOSトランジスタおよびPチャネルMOSトランジスタの両方に抵抗を接続してインバータを制御する必要がない。したがって本実施形態に係る圧電発振器10は部品点数を減らすことができ、小型化することができる。
【0031】
また圧電振動子12が安定発振した後は全てのスイッチ28をONにしてNチャネルMOSトランジスタ18を動作させるので、インバータ14の閾値電圧をVTHに戻すことができる。すなわちインバータ14の閾値電圧と出力段インバータ24の閾値電圧との差を無くすことができる。そしてインバータ14から出力される信号のデューティ特性を向上することができる。すなわち出力信号の中心(VDD/2)に閾値があるのでデューティ特性を50%にすることができる。またデューティ特性をよくできるので、出力段にデューティ特性をよくするための多段バッファ回路を設ける必要がない。
【0032】
またインバータ14の閾値電圧は、NチャネルMOSトランジスタ18をON/OFFさせることにより可変できるので、従来技術のようにIC製造工程においてマスクの変更する作業を必要としない。したがってICの製造工程を簡略化することができる。
【0033】
また発振段回路内に生ずるノイズは、この回路内の負荷容量の度合いによって大きく変わり、負荷容量は可変容量ダイオード20の位置や制御電圧Vcの大きさによって大きく変化する。そして圧電振動子12からみて可変容量ダイオード20が圧電振動子12に直列に接続されている場合、制御電圧Vcが「Hi」時のほうが負荷容量は小さくなり、ノイズは大きくなる。これに対して、圧電振動子12からみて可変容量ダイオード20がGNDと並列に接続されている場合、負荷容量が大きいとノイズは大きくなる。本実施形態の場合、インバータ14の閾値電圧をかえることにより、負荷容量の度合いによって変化する発振段回路内のノイズをキャンセルすることができる。
【0034】
上述した実施の形態ではスイッチ28を3つ設けて、これらのスイッチ28に接続された3つのNチャネルMOSトランジスタ18を制御する構成としたが、スイッチ28の数や制御されるNチャネルMOSトランジスタ18の数はこれに限定されるものでない。すなわち制御されるNチャネルMOSトランジスタ18は、インバータ14と出力段インバータ24との間の閾値電圧の差を少なくとも100mV程度生じることができる数量であればよい。また実施の形態によっては全てのNチャネルMOSトランジスタ18にスイッチ28を接続してもよい。
【0035】
また上述した実施の形態では圧電振動子12を用いた形態で説明したが、圧電振動片を用いてもよい。また圧電振動子12のかわりに、屈曲振動を生じる音叉型圧電振動子や、圧電基板の表面に弾性表面波を励起する弾性表面波共振子であってもよい。
【0036】
また上述した実施の形態では可変容量ダイオード20を圧電振動子12に接続した形態で説明したが、容量アレイを圧電振動子12に接続した形態であってもよい。図5に容量アレイの説明図を示す。容量アレイ40は、コンデンサ42の一端にスイッチ44が接続されるとともに他端が接地された回路を複数並列に接続したものである。そしてスイッチ44をON/OFFしてコンデンサ42の容量を調整することにより、圧電振動子12の発振周波数を調整するものである。そしてレジストに書き込まれた容量アレイビットを発振開始時に制御器22へ読み込ませて、スイッチ44のON/OFFを制御することもできる。また可変容量ダイオード20および前記容量アレイ40を圧電振動子12に接続した形態としてもよい。なお図5ではコンデンサを3つ設けた形態で記載しているが、コンデンサを4つ以上設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施の形態に係る圧電発振器の回路構成の説明図である。
【図2】本実施の形態に係る圧電発振器の動作を示す論理図である。
【図3】閾値電圧VTHの変動図である。
【図4】インバータのVin−Vout特性の変動図である。
【図5】容量アレイの説明図である。
【図6】従来技術に係る圧電発振器の回路構成の説明図である。
【図7】ノイズ発生についての説明図である。
【符号の説明】
【0038】
10………圧電発振器、12………圧電振動子、14………インバータ、18………NチャネルMOSトランジスタ、20………可変容量ダイオード、22………制御器、24………出力段インバータ、26………カウンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の圧電振動子に接続し、複数の反転素子を多段に接続したインバータと、前記反転素子に直列接続したスイッチと、
前記インバータの出力側に設けられ、前記インバータの出力パルスを計数するカウンタと、
前記カウンタの出力側に設けられ、前記カウンタの出力信号に基づいて前記スイッチを制御する制御器と、
を有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
前記反転素子はCMOSからなり、
前記スイッチは、前記CMOSを構成するNチャネルMOSトランジスタのソースに接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の発振回路。
【請求項3】
前記スイッチは、Nチャネルトランジスタであることを特徴とする請求項1または2に記載の発振回路。
【請求項4】
前記制御器は、この制御器に入力される信号に応じて前記スイッチを制御するNAND回路を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発振回路。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の発振回路を圧電振動子に電気的に接続したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項6】
前記圧電振動子に容量アレイおよび可変容量ダイオードの少なくとも一方を設けたことを特徴とする請求項5に記載の圧電発振器。
【請求項7】
外部の圧電振動子に接続し、複数の反転素子を多段に接続したインバータと、前記反転素子に直列接続したスイッチと、前記インバータの出力側に設けられ、前記インバータの出力パルスを計数するカウンタと、前記カウンタの出力側に設けられ、前記カウンタの出力信号に基づいて前記スイッチを制御する制御器と、を有する発振回路の制御方法であって、
前記圧電振動子の発振開始時は、前記インバータにおける複数のNチャネルMOSトランジスタのうち少なくとも1つの動作を停止させて前記インバータの閾値電圧を大きくし、
前記圧電振動子の発振後は、前記インバータにおける前記NチャネルMOSトランジスタの全てを動作させて前記インバータの閾値電圧を戻す、
ことを特徴とする発振回路の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−33550(P2006−33550A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211099(P2004−211099)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】