発振回路
【課題】 異なる周波数を発振することのできる発振回路を、簡単な構成で具現化することを可能とする技術を提供する。
【解決手段】 発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路とを備えている。
【解決手段】 発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振回路に関する。特に、発振周波数を経時的に変化させることによって、周波数の異なる高周波信号を生成することのできる発振回路に関する。あるいは、同時に周波数の異なる高周波信号を生成することのできる発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路では、正弦波信号をはじめとする周期的な信号が利用されており、そのような周期的な信号を生成するために発振回路が用いられている。
発振回路は、増幅器と、増幅器の出力端子と入力端子の間を接続する帰還回路を組合せて構成することができる。このように構成された発振回路では、回路内で生じた電気振動(例えば電流の振動)が増幅器によって増幅され、増幅された電気振動が帰還回路によって増幅器に帰還される。電気振動の位相は帰還回路を伝播している間に変化し、所定の周波数の電気振動は同位相となって増幅器に帰還する。即ち、正帰還する。発振回路は、増幅と正帰還という循環によって、所定の周波数で発振する。発振回路が発振する周波数を発振周波数という。発振回路は、発振周波数に等しい周波数の信号を生成する。
発振周波数は、発振器の回路の電気特性に依存する。発振回路に含まれる受動素子や能動素子の電気特性を変化させることによって、発振周波数を変化させることができる。
例えば特許文献1には、回路上に可変容量ダイオードを備えており、可変容量ダイオードに印加する電圧を調節することによって、発振周波数を変化させることのできる発振器が記載されている。
【特許文献1】特開2004−7037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の発振器のように、従来の発振回路では、発振回路の発振周波数を変化させるために、発振回路の電気特性を外部から変化させる必要があった。それにより、単一の周波数の信号を生成する発振回路に比して、発信周波数を変化させることができる発振回路は、構成が複雑になるという問題がある。また、従来の発振回路では、高調波等の特別な関係にある周波数を除外すると、周波数の異なる高周波信号を同時に生成することはできない。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、発信周波数を変化させることができる発振回路を、簡単な構成で具現化することを可能とする技術を提供する。あるいは、同時に周波数の異なる高周波信号(高調波に限られない)を生成することのできる発振回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する一つの発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路とを備えている。
【0005】
この発振回路は、各トランジスタのベースに適当なバイアス電圧(直流電圧)を供給し、各トランジスタのコレクタに適当な電源電圧(直流電圧)を供給すると、発振動作を開始する。このとき、各伝送線路に介在するコンデンサによって、一方のトランジスタのベースと他方のトランジスタのコレクタとの間は、直流に対して遮断される。
各トランジスタでは、ベース電流に生じた微小な振動が、コレクタ電流の大きな振動となって現れる。その結果、各トランジスタでは、ベース側電圧の微小な振動成分が、コレクタ側電圧の大きな振動に増幅される。よく知られているように、トランジスタでは、ベース側電圧の振動に対して、コレクタ側電圧の振動は位相が反転することとなる。
【0006】
第1トランジスタのコレクタ側電圧の振動は、第2伝送線路と第2トランジスタと第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。振動電圧の位相は第2伝送線路と第2トランジスタと第1伝送線路を伝播している間に変化し、所定の周波数の振動については、第1トランジスタのコレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相(位相差が180度)となる。第1トランジスタは、振動電圧の位相を反転させることから、コレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相となるときに正帰還となる。第1トランジスタは、増幅と正帰還の循環によって、所定の周波数で発振する。第2トランジスタも同様に、所定の周波数で発振する。なお、第1トランジスタの発振周波数と、第2トランジスタの発振周波数は、発振回路の電気特性等によって決まり、両者が同一になるとは限らない。
【0007】
発振回路が発振している高周波信号は、第1伝送線路や第2伝送線路をアンテナとして周囲に放射される。放射された高周波電波は周囲の反射体によって反射され、その反射波は第1伝送線路や第2伝送線路をアンテナとして受信される。即ち、各伝送線路は、高周波電波の送受信アンテナとしても機能する。その結果、各トランジスタのベースには、発振している高周波電圧と受信した高周波電圧が併せて入力される。
【0008】
トランジスタは、ベースに入力する電圧とコレクタから出力する電圧との関係に非線形性を有している。この非線形性を利用して、トランジスタは高周波信号の検波回路(ミクサ)等に用いられている。この発振回路においても、第1トランジスタや第2トランジスタは、発振している高周波電圧と受信した高周波電圧を検波し、コレクタから検波電圧を出力する。各トランジスタは、検波回路(ミクサ)としても機能する。
第1トランジスタが出力する検波電圧は、第2伝送線路、第2トランジスタ、第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。検波電圧の周波数は十分に低いことから、各伝送線路を伝播する間では位相がほとんど変化せず、第1、第2トランジスタによる2回の位相反転によって、検波電圧は正帰還することとなる。それにより、第1トランジスタが出力する検波電圧は増幅されることとなり、増幅された検波電圧によって第1トランジスタや第2トランジスタのベース電圧は変化する。第2トランジスタが出力する検波電圧も同様に増幅され、第1トランジスタや第2トランジスタのベース電圧は変化する。第1トランジスタと第2トランジスタは、ベース電圧(動作点)が変化することによって、発振周波数を変化させることとなる。
発振周波数が変化すると、第1トランジスタや第2トランジスタが出力する検波電圧も変化する。検波電圧の変化と発振周波数の変化の循環によって、第1トランジスタや第2トランジスタの発振周波数は経時的に変化しつづけることとなる。この発振周波数の変化は非周期的であり、その変動の様子にはカオス現象が発現する。
【0009】
この発振回路は、発振周波数を自励的に変化させつづけることによって、周波数の異なる信号を生成することができる。この発振回路は、発振周波数を変化させるための特別な構成を必要としないことから、簡単な構成によって具現化することができる。
【0010】
本発明が提供する他の発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、エミッタが接地されている第3トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第3トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、一端が第3トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第3伝送線路とを備えている。
【0011】
この発振回路は、各トランジスタのベースに適当なバイアス電圧(直流電圧)を供給し、各トランジスタのコレクタに適当な電源電圧(直流電圧)を供給すると、発振動作を開始する。このとき、各伝送線路に介在するコンデンサによって、一方のトランジスタのベースと他方のトランジスタのコレクタとの間は、直流成分に対して遮断される。
各トランジスタは、ベース側電圧の振動成分を増幅し、コレクタに増幅された振動成分を出力する増幅器として機能する。
第1トランジスタのコレクタ側電圧の振動は、第3伝送線路、第3トランジスタ、第2伝送線路、第2トランジスタ、第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。所定の周波数の振動は第1トランジスタに正帰還し、第1トランジスタは所定の周波数で発振する。第2トランジスタや第3トランジスタも同様に、所定の周波数で発振する。第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタの各発振周波数は、発振回路の電気特性等によって決まり、三者は異なる周波数で発振することができる。
【0012】
この発振回路では3つのコンデンサが直列に接続されたループ状の回路が構成されており、3つのトランジスタによる3度の位相反転によって、低周波信号が負帰還となる構成となっている。その結果、各トランジスタが発生する検波電圧等は減衰されることとなり、各トランジスタのベース電圧が比較的に安定する。各トランジスタのベース電圧が安定することにより、各トランジスタの発振周波数は安定する。
この発振回路は、第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタが異なる振動数で発振することにより、周波数の異なる多数の高周波信号を同時に生成することができる。この発振回路が生成する各高周波信号の周波数は、広い周波数帯域に広がるとともに、それぞれが十分な強度をもっている。この発振回路は、発振周波数を変化させるための特別な構成を必要としないことから、簡単な構成によって具現化することができる。
【0013】
上述した2つの発振回路はともに、エミッタが接地されているトランジスタと、一端がトランジスタのベースに接続されており、その一端と他端との間にコンデンサが介在している伝送線路を利用している。すなわち、トランジスタと伝送線路によって一つの基本回路を構成している。最初の発振回路は2個の基本回路を利用し、次の発振回路は3個の基本回路を利用している。
本発明は、基本回路の数が2個ないし3個の場合に限られるものでなく、2個以上の任意の複数個で構成することができる。即ち、本発明の発振回路は、一般化すれば、トランジスタと伝送線路を備えている基本回路を複数備えており、一つの基本回路の伝送線路の他端が他の一つの基本回路のトランジスタのコレクタに接続されているというルールに従って基本回路群が順に接続されており、最後の基本回路の伝送線路の他端が最初の基本回路のトランジスタのコレクタに接続されていることができる。
このように構成された発振回路は、外部からの指令を必要とすることなく、周波数の異なる高周波信号を生成することができる。
【0014】
複数の基本回路を用いて発振回路を構成する場合、発振回路が偶数個の基本回路を備えていると、発振回路は発振周波数を自励的に変化させつづけることによって、周波数の異なる信号を生成する。
一方、発振回路が奇数個の基本回路を備えていると、発振回路は周波数の異なる複数の高周波信号を同時に生成することができる。
【0015】
本発明による発振回路では、伝送線路の少なくとも一部がマイクロストリップ線路で形成されていることが好ましい。
マイクロストリップ線路は、高周波信号に対して、分布定数のインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)として機能する。伝送線路にマイクロストリップ線路を用いることにより、インダクタやキャパシタを用いることなく、伝送線路のインダクタンスやキャパシタンスを設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、周波数の異なる高周波信号を、同時および/または経時的に、生成することのできる発振回路を、簡単な構成で具現化することが可能となる。例えば、本発明をマイクロ波レーダのための発振回路に利用すると、同時に複数の周波数で観測するマイクロ波レーダ、あるいは経時的に周波数を変えながら観測するマイクロ波レーダを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発振回路は、主に、複数の基本回路によって構成されている。図1に基本回路の構成を示す。基本回路は、トランジスタ1と、一端3aがトランジスタ1のベースに接続されており、他端3bが他の基本回路のトランジスタのコレクタに接続される伝送線路3を備えている。伝送線路3上にはコンデンサ5が介在している。伝送線路3は、コンデンサ5の一端からトランジスタ1のベースへと伸びているベース側線路6と、コンデンサ5の他端から他のトランジスタのコレクタへと伸びるコレクタ側線路4を備えている。
基本回路は、コレクタ側線路4に直流電圧VAを入力するための電源入力回路7を備えている。電源入力回路7は、伝送線路3のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。電源入力回路7は、インダクタ(コイル)7aと、抵抗7bと、入力端子7cを備えており、それらが直列に接続されている。入力端子7cに入力された直流電圧VAは、抵抗7bとインダクタ7aを介してコレクタ側線路4に入力される。
基本回路は、トランジスタ1のベースにバイアス電圧VBを入力するためのバイアス電圧入力回路9を備えている。バイアス電圧入力回路9は、ベース側線路6に接続されている。バイアス電圧入力回路9は、インダクタ9aと、抵抗9bと、入力端子9cを備えており、それらが直列に接続されている。入力端子9cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗9bとインダクタ9aを介してベース側線路6に入力される。
トランジスタ1のエミッタは接地されて用いられる。トランジスタ1のコレクタは、他の基本回路の伝送線路3の他端3bに接続されて用いられる。
【実施例】
【0018】
本発明を実施する実施例について図面を参照して説明する。本実施例は、本発明の技術を、高周波(周波数帯域がおよそ百メガヘルツから数ギガヘルツ)用の発振回路に具現化するものである。
図2は、本実施例の発振回路30の構成を示している。発振回路30は、主に、第1の基本回路10と、第2の基本回路20によって構成されている。
発振回路30は、第1トランジスタ11と、第2トランジスタ21を備えている。第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は共に、エミッタが接地されている。第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、互いに同一仕様のものでもよいし異なる仕様のものでもよい。本実施例の第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、npn型バイポーラトランジスタである。なお、第1トランジスタ11と第2トランジスタ21には、電界効果型トランジスタ等を用いることもできる。
発振回路30は、第1トランジスタ11のベースと第2トランジスタ21のコレクタを接続している第1伝送線路13を備えている。第1伝送線路13上には第1コンデンサ15が介在している。第1伝送線路13では、第1コンデンサ15の一端と第1トランジスタ11のベースを接続している第1ベース側線路16と、第1コンデンサ15の他端と第2トランジスタ21のコレクタを接続している第1コレクタ側線路14が形成されている。第1伝送線路13は、第1コンデンサ15を介して第1トランジスタ11のベースと第2トランジスタ21のコレクタを接続している。
発振回路30は、第2トランジスタ21のベースと第1トランジスタ11のコレクタを接続している第2伝送線路23を備えている。第2伝送線路23上には第2コンデンサ25が介在している。第2伝送線路23では、第2コンデンサ25の一端と第2トランジスタ21のベースを接続している第2ベース側線路26と、第2コンデンサ25の他端と第1トランジスタ11のコレクタを接続している第2コレクタ側線路24が形成されている。第2伝送線路23は、第2コンデンサ25を介して第2トランジスタ21のベースと第1トランジスタ11のコレクタを接続している。
第1伝送線路11と第2伝送線路21は、互いに同一となるように構成してもよいし、異なるように構成してもよい。
【0019】
発振回路30では、第1コレクタ側線路14と、第1ベース側線路16と、第2コレクタ側線路24と、第2ベース側線路26が、マイクロストリップ線路で構成されている。
図3は、図2のIII−III断面図であり、第1コレクタ側線路14を構成しているマイクロストリップ線路の断面構成をよく示している。図3に示すように、第1コレクタ側線路14は、接地されている導体基板14aと、導体基板14a上に形成されている誘電体層14bと、誘電体層14b上に形成されているストリップ導体14cを備えている。誘電体層14bは、テフロン(登録商標)樹脂で形成されており、誘電率が略2.6であり、厚みDが略0.8ミリメートルである。ストリップ導体14cは、銅で形成されており、幅Wが略2ミリメートルであり、厚みが略0.02ミリメートルである。
第1ベース側線路16と、第2コレクタ側線路24と、第2ベース側線路26についても、第1コレクタ側線路14と同様に構成されている。
第1トランジスタ11のベースから第2トランジスタ21のコレクタまで、第1伝送線路13が伸びている長さは略50mmである。第2トランジスタ21のベースから第1トランジスタ11のコレクタまで、第2伝送線路23が伸びている長さも略50mmである。
上記した第1伝送線路13と第2伝送線路23の構成は、具体的な一例を示すものである。よく知られているように、第1伝送線路13や第2伝送線路23の構成を変更することによって、第1伝送線路13や第2伝送線路23の電気的な特性を変更することができる。特にマイクロストリップ線路は、高周波信号に対して、分布定数のインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)として機能する。マイクロストリップ線路を用いる場合、誘電体層14bの誘電率や、誘電体層14bの厚さDや、スリップ導体14cの幅Wや、スリップ導体14cの厚さTを変更することにより、発振回路30の電気特性を変更することができる。第1伝送線路13や第2伝送線路23の具体的な形態は、発振回路30に所望する特性に合わせて設定するとよい。
【0020】
図2に示すように、発振回路30は、第1コレクタ側線路14に直流電圧VAを入力するための第1電源入力回路17を備えている。第1電源入力回路17は、第1伝送線路13のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。第1電源入力回路17は、インダクタ17aと抵抗17bと入力端子17cを備えている。入力端子17cに入力された直流電圧VAは、抵抗17bとインダクタ17aを介して第1コレクタ側線路14に入力される。
発振回路30は、第2コレクタ側線路24に直流電圧VAを入力するための第2電源入力回路27を備えている。第2電源入力回路27は、第2伝送線路23のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。第2電源入力回路27は、インダクタ27aと抵抗27bと入力端子27cを備えている。入力端子27cに入力された直流電圧VAは、抵抗27bとインダクタ27aを介して第2コレクタ側線路14に入力される。
【0021】
発振回路30は、第1トランジスタ11のベースにバイアス電圧VBを入力するための第1バイアス電圧入力回路19を備えている。バイアス電圧入力回路19は、第1ベース側線路16に接続されている。第1バイアス電圧入力回路19は、インダクタ19aと、抵抗19bと、入力端子19cを備えている。入力端子19cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗19bとインダクタ19aを介して第1ベース側線路16に入力される。バイアス電圧VBによって、第1トランジスタ11の動作点が設定される。
発振回路30はまた、第2トランジスタ21のベースにバイアス電圧VBを入力するための第2バイアス電圧入力回路29を備えている。第2バイアス電圧入力回路29は、第2ベース側線路26に接続されている。バイアス電圧入力回路29は、インダクタ29aと、抵抗29bと、入力端子29cを備えている。入力端子29cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗29bとインダクタ29aを介して第2ベース側線路26に入力される。バイアス電圧VBによって、第2トランジスタ21の動作点が設定される。
なお、第1ランジスタ11と第2トランジスタ21に印加するバイアス電圧VBは、同一であってもよいし、互いに異なるようにしてもよい。
【0022】
上記のように構成された発振回路30では、第1電源入力回路17の入力端17cと第2電源入力回路27の入力端27cに直流電圧VAを印加し、第1バイアス電圧入力回路19の入力端19cと第2バイアス電圧入力回路29の入力端29cにバイアス電圧VBを印加することによって、発振回路30の発振動作が開始される。このとき、第1コンデンサ15や第2コンデンサ25は、直流電圧を絶縁するように作用することから、直流電圧VAが、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21のベースに印加されることはない。
直流電圧VAには略4から10ボルトの直流電圧を用いることができ、バイアス電圧VBには略0.8ボルトの直流電圧を用いることができる。
【0023】
各トランジスタ11、21では、ベース電流に生じた微小な振動が、コレクタ電流の大きな振動となって現れる。その結果、各トランジスタ11、21では、ベース側電圧の微小な振動成分が、コレクタ側電圧の大きな振動となって現れる。よく知られているように、トランジスタでは、ベース側電圧の振動に対して、コレクタ側電圧の振動は位相が反転することとなる。
第1トランジスタ11のコレクタ側電圧の振動は、第2伝送線路23と第2トランジスタ21と第1伝送線路13を順に伝播し、第1トランジスタ21のベースに帰還する。振動電圧の位相は第2伝送線路23と第2トランジスタ21と第1伝送線路13を伝播している間に変化し、所定の周波数の振動電圧については、第1トランジスタのコレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が、逆位相(位相差が180度)となる。第1トランジスタ11は、振動電圧の位相を反転させることから、コレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相となるときに正帰還となる。第1トランジスタ11は、この増幅と正帰還の循環によって、所定の周波数で発振する。同様に、第2トランジスタ21も所定の周波数で発振する。
第1トランジスタ11の発振周波数と、第2トランジスタ21の発振周波数は、発振回路30の電気特性等によって決まり、両者が同一となるとは限らない。この場合、同時に異なる2つの周波数で発振する。
第1トランジスタ11と第2トランジスタ21の発振により、発振回路30のループ状の回路には高周波信号が生成される。発振回路30に生成されている高周波信号は、例えば発振回路30の近傍にループコイル等を配置することによって、ループコイル側に取り出すことができる。
【0024】
図4は、発振回路30が所定時間内に発振する高周波信号をスペクトルアナライザによって観測したときのスペクトル分布を示している。図4に示すように、発振回路30では、所定の周波数帯域において幅をもつスペクトルが観測される。先に説明した本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略1.6G〜1.7GHzの周波数帯域において幅をもつスペクトルが観測される。これは、発振回路30の発振周波数が、所定の範囲において経時的に変動していることを示している。この発振周波数の変動は、外部からの指令等を必要とせず、自励的に発生する。
【0025】
発振回路30が発振周波数を変動させる原理について説明する。発振回路30が発振した高周波信号は、第1伝送線路13や第2伝送線路23をアンテナとして周囲に放射される。即ち、高周波電波となって送信される。放射された高周波電波は周囲の反射体によって反射され、その反射波は第1伝送線路13や第2伝送線路23をアンテナとして受信される。即ち、各伝送線路13、23は、高周波電波の送受信アンテナとしても機能する。特に本実施例の発振回路30では、第1伝送線路13や第2伝送線路23にマイクロストリップ線路が採用されているので、高周波電波が送信されやすく、また受信されやすい構成となっている。
一般にトランジスタは、ベースに入力する電圧とコレクタから出力する電圧との関係に非線形性を有している。この非線形性を利用して、トランジスタは高周波信号の検波回路等に用いられている。発振回路30においても、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21は、発振(送信)している高周波信号と受信した高周波信号を検波し、検波電圧VDを出力する。
この検波によってトランジスタが出力する検波電圧VDについて説明する。例えば、発振回路30が波長λの高周波電波を送信し、その高周波電波が距離Lの位置にある反射体で反射され、その反射波が受信されたとする。この場合の検波電圧VDは、
VD=A・cos(4πL/λ) ・・(1);
と表される。上記の(1)式のAは、送信出力に対する受信出力の割合を示す。(1)式は、従来のドップラレーダで用いられる式である。(1)式では、反射体が移動することによって距離Lが変化すると、検波電圧VDが変化する。ドップラレーダでは、検波電圧VDの変動から、移動している反射体の存在を検出するものである。その一方において、反射体が停止していると距離Lが一定となることから、検波電圧VDが一定となる。この場合、例えばL=(2・n−1)・λ/8(n:自然数)の関係が成立する状態では、検波出力VDがゼロとなってしまい、反射体を検出することができなくなる。このことはドップラレーダの欠点として知られている。
本実施例における反射体は、例えば回路のアース線やケース等であることから、反射体は停止しているものとし、距離Lが一定であるとすることが適当であるといえる。ただし、様々な距離にある反射体から反射波を受信することから、検波出力VDがゼロとなることはない。
【0026】
第1トランジスタ11が出力する検波電圧の変動は、第2伝送線路23、第2トランジスタ11、第1伝送線路13を順に伝播し、第1トランジスタ11のベースに帰還する。検波電圧の周波数は十分に低いことから、各伝送線路13、23を伝播する間では位相がほとんど変化しない。発振回路30を周回する検波電圧は、第1、第2トランジスタによる2回の位相反転によって、第1トランジスタ11に正帰還することとなる。それにより、第1トランジスタ11が出力する検波電圧は増幅されることとなり、増幅された検波電圧によって各トランジスタ11、21のベース電圧は変化する。第2トランジスタ21が出力する検波電圧も同様に増幅され、増幅された検波電圧によって各トランジスタ11、21のベース電圧は変化する。一般に、トランジスタのベース、エミッタ、コレクタ間には寄生容量(キャパシタ)が存在しており、この寄生容量はベース電圧によって変化する。そしてトランジスタの発振周波数は、帰還回路の電気特性のみならず、この寄生容量によっても変化する。従って、第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、ベース電圧(動作点)が変化することによって、発振周波数を変化させることとなる。
発振回路30のようにエミッタを接地している回路では、ベース−エミッタ間のほうがコレクタ−エミッタ間よりもインピーダンスが高いために、小さなキャパシタでも発振周波数に与える影響は大きい。そのことから、発振回路30は、ベース電圧の変動によるベース−エミッタ間の寄生容量の変動が、発振周波数の変動に影響しやすい構成であるといえる。
第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数が変化すると、前記の(1)式において波長λが変化する。その結果、検波出力VDが変化する。検波出力が変化することによって、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数が再び変化する。検波電圧の変化と発振周波数の変化の循環によって、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数は経時的に変化しつづけることとなる。
発振回路30は、2つのトランジスタ11、21が直列に接続されたループ状の回路を構成している。このループ状の回路を伝播する信号(電圧)は、トランジスタ11、21を通過する際に位相が反転される。この発振回路は、2つのトランジスタ11、21によって偶数回の位相反転が行われるように構成されている。それにより、例えば検波電圧のように、伝送線路13、23において位相がずれないような低周波信号は、ちょうど正帰還することとなる。検波電圧のような低周波信号が増幅されることによって、各トランジスタ11、21のベース電圧(動作点)の変動が大きくなることから、発振周波数が有意に変動することとなる。
【0027】
図5は、第1伝送線路13の第1コレクタ側線路14の電圧V1と、第2伝送線路23の第2コレクタ側線路24の電圧V2を測定した結果を示している。図4のグラフは、横軸が電圧V1を示しており、横軸が電圧V2を示しており、(電圧V1,電圧V2)のプロット点が描く軌跡を示している。なお、第1コレクタ側線路14の電圧V1は、第1電源入力回路17のインダクタ17aと抵抗17bの間(図2参照)の電位を測定したものである。従って、電圧V1は、インダクタ17aを介して第1コレクタ側線路14の電圧を測定したものであるから、第1コレクタ側線路14の電圧から高周波成分を除去したものとなる。また、第2コレクタ側線路24の電圧V2は、第2電源入力回路27のインダクタ27aと抵抗27bの間(図2参照)の電位を測定したものである。従って、電圧V2は、第2コレクタ側線路24の電圧から高周波成分を除去したものとなる。
図5に示すように、第1コレクタ側線路14の電圧V1と第2コレクタ側線路24の電圧V2は、それぞれ経時的に変化しつづけている。これは、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21が出力する検波電圧が経時的に変化しつづけていることを示している。さらに特徴的なことは、第1コレクタ側線路14の電圧V1と第2コレクタ側線路24の電圧V2が、それぞれ非周期的に変化していることである。詳しくは、電圧V1と電圧V2の変動に、カオスとよばれる現象が発現している。このことは、発振回路30が、発振周波数を非周期的に変化させることを意味し、その発振周波数の変動にカオスが発現することを示している。発振回路30は、このカオス現象が発現する発振周波数の変動を、外部からの指令を必要とせずに実現する。
【0028】
発振回路30において発振周波数の変動にカオスが発現する原理を説明する。先に説明したように、発振回路30の発振周波数は経時的に変化しつづける。ある時点の発振周波数をfiとし、時定数を経て変化したあとの発振周波数をfi+1とし、検波で発生した電圧VDが周波数の変化に寄与する係数をαとすると、
fi+1=fi・(1+α・VD) ・・(2);
と表すことができる。(2)式に、(1)式と光速c=波長λ×周波数fの関係を代入すると、
fi+1=fi・[1+α・cos{2πfi・(2L/c)}] ・・(3);
となる。
ここの説明で重要なことは、発振周波数自体の大きさではなく、発振周波数の変動量であることから、下記の(4)式に示す無次元値Δiを定義する。
fi=f0・(1+Δi) ・・(4);
(4)式において、f0は発振周波数の初期値f0であり、Δiは発振周波数fiの初期値f0からの変動率を示すといえる。(4)式を(3)式に代入すると、
f0・(1+Δi+1)
=f0・(1+Δi)・[1+α・cos{2πf0・(1+Δi)・(2L/c)}] ;
となる。ここで、Δi・αが1に対して十分に小さいとすると、
Δi+1=α・cos{2πf0・(1+Δi)・(2L/c)} ;
となる。f0=c/λ0、β=2L/λ0とすると、
Δi+1=α・cos{2π・(1+Δi)・β} ・・(5);
と表すことができる。(5)式は発振周波数の変動率Δiに関する漸化式となる。発振回路30の具体的な構成によって、発振周波数の初期値f0や反射体(アース線等)の距離L等が定まることから、上記のα、β等は、発振回路30の具体的な形態によって定めることができるパラメータである。
図6は、(5)式の解の振る舞いを図示するものである。図6は、横軸にΔiをとり、横軸にΔi+1をとり、Δi=Δi+1の直線と、(5)式の余弦曲線を示している。
変動率Δiの初期値をΔ0とし、順にΔ1、Δ2、Δ3、・・、Δiを解いたときの解は、図6において、点P0(Δ0,0)、点P1(Δ0,Δ1)、点P2(Δ1,Δ1)、点P3、・・、点Piと表すことができる。図6示すように、点Piは非周期的に変動しつづける。この点Piの振る舞いにも、カオスを確認することができる。
図6に示す点Piの振る舞いを、図5に示した電圧V1と電圧V2によるプロット点の挙動に対応させて考えることで、発振回路30で発現する発振周波数の非周期的な変動を理解することができる。
【0029】
発振回路30は、例えば反射体の存在を検出するレーダに用いる発振回路として有効に利用することができる。
図7は、発振回路30を用いるレーダの構成を模式的に示している。図7に示すように、レーダは、発振回路30と、発振回路30から高周波信号を入力するループコイル102と、ループコイル102が入力した高周波信号を電波にして送信する送信アンテナ104と、反射体Rからの反射波を受信する受信アンテナ106と、受信アンテナ106の出力信号を検波する検波回路108を備えている。発振回路30を用いることを除くと、従来のドップラレーダと略等しい構成である。
受信アンテナ106は、反射体Rからの反射波を受信するとともに、送信アンテナ104が送信する電波を直接的に受信する。従って、受信アンテナ106は、送信アンテナ104の送信波と、反射体Rからの反射波を併せて出力する。
検波回路108は、受信アンテナ106の出力信号を検波することにより、送信波と反射波を検波することとなる。検波回路108の出力する検波信号(電圧)は、前出の(1)式と同じく、VD=A・cos(4πL/λ)で表される。なお、反射体Rが存在しない場合は、検波出力VDは出力されない。
発振回路30の発振周波数が変動しつづけることから、(1)式では波長λが変動しつづけることとなる。それにより、反射体Rが存在している限り、検波出力VDが変動しつづけることとなる。即ち、検波電圧VDの変動の有無に基づいて、反射体の存否を判断することができる。
発振周波数が単一である発振回路を用いるレーダでは、反射体が所定の距離(例えばL=λ/8)において停止している場合、検波電圧VDがゼロとなってしまい、反射体を検出できないという問題が発生する。発振回路30を用いることにより、この問題を解決することができる。
【0030】
図4、図5に示した発振回路30の挙動は、発振回路30の具体的な構成によって様々に変化する。例えば、第1伝送線路13や第2伝送線路23の構成や配置、印加するバイアス電圧VB等を変化させると、発振回路30の電気特性が変化することとなり、発振回路30は異なる挙動を示すようになる。発振回路30の具体的な構成によっては、発振周波数が変動しないで、単一スペクトルが観測されることもある。このような場合は、従来の高周波回路と同様に、発振回路30の電気特性を調節することによって、発振周波数が変動する発振回路30を得ることができる。
【0031】
(実施例2) 図8は、本実施例の発振回路40の構成を示している。図8に示すように、発振回路40は、主に、第1の基本回路50と、第2の基本回路60と、第3の基本回路70によって構成されている。発振回路40では、第1基本回路50と第2基本回路60と第3基本回路70によって、ループ状の回路が構成されている。
発振回路40は、第1トランジスタ51と、第2トランジスタ61と、第3トランジスタ71を備えている。第1トランジスタ51と第2トランジスタ61と第3トランジスタ71のそれぞれのエミッタは接地されている。
発振回路40は、第1トランジスタ51のベースと第2トランジスタ61のコレクタを接続している第1伝送線路53を備えている。第1伝送線路53では、第1コンデンサ55が介在しており、第1ベース側線路56と、第1コレクタ側線路54が形成されている。第1伝送線路53は、第1コンデンサ55を介して第1トランジスタ51のベースと第2トランジスタ61のコレクタを接続している。
発振回路40は、第2トランジスタ61のベースと第3トランジスタ71のコレクタを接続している第2伝送線路63を備えている。第2伝送線路63では、第2コンデンサ65が介在しており、第2ベース側線路66と、第2コレクタ側線路64が形成されている。第2伝送線路63は、第2コンデンサ65を介して第2トランジスタ61のベースと第3トランジスタ71のコレクタを接続している。
発振回路40は、第3トランジスタ71のベースと第1トランジスタ51のコレクタを接続している第3伝送線路73を備えている。第3伝送線路73では、第3コンデンサ75が介在しており、第3ベース側線路76と、第3コレクタ側線路74が形成されている。第3伝送線路73は、第3コンデンサ75を介して第3トランジスタ71のベースと第1トランジスタ51のコレクタを接続している。
発振回路40では、コレクタ側線路54、64、74や、ベース側線路56、66、76が、マイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成によるマイクロストリップ線路を採用している。また、伝送線路53、63、73の長さは、それぞれ略20mmとなるように形成されている。
【0032】
図8に示すように、発振回路40は、第1コレクタ側線路54に直流電圧VAを入力するための第1電源入力回路57と、第2コレクタ側線路64に直流電圧VAを入力するための第2電源入力回路67と、第3コレクタ側線路74に直流電圧VAを入力するための第3電源入力回路77を備えている。第1電源入力回路57は、インダクタ57aと抵抗57bと入力端子57cを備えている。第2電源入力回路67は、インダクタ67aと抵抗67bと入力端子67cを備えている。第3電源入力回路77は、インダクタ77aと抵抗77bと入力端子77cを備えている。
【0033】
発振回路40は、第1トランジスタ51のベースにバイアス電圧VBを入力するための第1バイアス電圧入力回路59と、第2トランジスタ61のベースにバイアス電圧VBを入力するための第2バイアス電圧入力回路69と、第3トランジスタ71のベースにバイアス電圧VBを入力するための第3バイアス電圧入力回路79を備えている。第1バイアス電圧入力回路59は、インダクタ59aと抵抗59bと入力端子59cを備えている。第2バイアス電圧入力回路69は、インダクタ69aと抵抗69bと入力端子69cを備
えている。第3バイアス電圧入力回路79は、インダクタ79aと抵抗79bと入力端子79cを備えている。
発振回路40では、第1基本回路50と第2基本回路60と第3基本回路70を、同一となるように構成してもよいし、互いに異なるように構成してもよい。
【0034】
上記のように構成された発振回路40では、実施例1の発振回路30と同様に、各電源入力回路57、67、77の各入力端57c、67c、77cに直流電圧VAを入力し、各バイアス電圧入力回路59、69、79の各入力端59c、69c、79cにバイアス電圧VBを入力することによって、発振回路40の発振動作が開始される。
図9は、発振回路40が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図9に示すように、発振回路40では、所定の周波数間隔で並ぶ多数の線状スペクトルが観測される。先に説明した本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略76MHzという低い周波数帯域から、1.5GHzを超える高周波帯域に亘って、略76MHz毎に等間隔でならぶ離散スペクトルが観測される。ここで特徴的なことは、各スペクトルが比較的に低い周波数帯域から広く離散していることと、各スペクトルが十分な強度をもっていることである。従来の発振回路においても、基本周波数のスペクトルとその高調波のスペクトルが観測されるが、高調波成分がこのように十分な強度を持つことはない。この観測結果から、発振回路40は、周波数の異なる多数の高周波信号を、それぞれが十分な強度をもつように生成していることが確認される。
【0035】
図10は、第1伝送線路53の第1コレクタ側線路54の電圧V1(図8に示す位置の電位)と、第2伝送線路63の第2コレクタ側線路64の電圧V2(図8に示す位置の電位)を測定した結果を、図4と同様に示すものである。図10に示すように、(電圧V1,電圧V2)のプロット点は、ある図形を描くように変動する。図10に示す図形が描かれる場合、電圧V1と電圧V2が、それぞれ異なる周波数で振動していることを示している。
同様にして、第2伝送線路63の第2コレクタ側線路64の電圧V2と、第3伝送線路73の第3コレクタ側線路74の電圧V3を測定し、(電圧V2,電圧V3)をプロットすると、プロット点は別の図形を描く。また、(電圧V3,電圧V1)のプロット点も、また別の図形を描く。
これらのことから、電圧V1と電圧V2と電圧V3が、それぞれ異なる周波数で変動していることが確認される。即ち、第1トランジスタ51と第2トランジスタ61と第3トランジスタ71は、それぞれ異なる周波数で発振していることを確認することができる。
【0036】
実施例1の発振回路30と本実施例の発振回路40では、発振の様子に有意な差異がみられる。これは、各発振回路30、40のループ状回路に存在しているトランジスタの数に由来している。実施例1の発振回路30では、ループ状回路に2つのトランジスタが介在していることから、低周波信号が正帰還されることを先に説明した。一方、本実施例の発振回路40では、ループ状回路に3つのトランジスタ51、61、71が介在している。それにより、ループ状回路を伝播する低周波信号は、3度の位相反転によって、位相が反転されて帰還する。即ち、発振回路40では、低周波信号が負帰還されることとなる。各トランジスタ51、61、71が出力する検波電圧は減衰されることになり、発振周波数の変動は抑制されることとなる。
従って、発振回路30と発振回路40の発振の様子の違いは、ループ状回路に介在するトランジスタの数が、偶数であるのか奇数であるのかということに由来している。ループ状回路に偶数個のトランジスタが介在していると、検波電圧が増幅されることによって、発振周波数の変動が助長される。それに対し、ループ状回路に奇数個のトランジスタが介在していると、検波電圧が減衰されて、発振周波数の変動が抑制される。
なお、本実施例の発振回路40においても、各基本回路50、60、70の電気特性を調節することによって、検波電圧が減衰される程度を調節することができる。検波電圧の減衰が抑えられるような電気特性に調節することで、発振回路40の発振周波数が不規則的(カオスが発現するように)に変動するように構成することもできる。
【0037】
発振回路40は、周波数の異なる多数の高周波信号を発振することができることから、例えば実施例1で説明したレーダの発振回路として有効に用いることができる。レーダに発振回路40を用いると、レーダは複数の高周波電波を同時に送信することができる。それにより、単一周波数の電波を用いるレーダのように、所定距離に停止している反射体を検出できないという問題が発生することがなく、反射体の存否を確実に検出することが可能となる。
図11は、発振回路40の一変形例を示すものである。図11に示すように、各基本回路50、60、70の各伝送線路は直線に限定されず、各基本回路50、60、70によって円が描かれるように構成することもできる。
【0038】
(実施例3) 図12は、本実施例の発振回路80の構成を示している。図12から明らかなように、発振回路80は、主に、第1の基本回路81と、第2の基本回路82と、第3の基本回路83と、第4の基本回路84によって構成されている。発振回路80では、基本回路81、82、83、84によってループ状の回路が構成されている。基本回路81、82、83、84の個別の構成は、図12とこれまでの説明から明らかであることから、ここでは説明を省略する。なお、発振回路80では、コレクタ側線路やベース側線路がマイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成のマイクロストリップ線路を採用している。また、各トランジスタ間に伸びている各伝送線路の長さは、それぞれ略20mmとなるように形成されている。
【0039】
図13は、発振回路80が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図13に示すように、発振回路80では、所定の範囲に広がる幅をもつスペクトルが観測される。これは、発振回路80の発振周波数が、所定の範囲において変動していることを示している。なお、図13に示す2つのスペクトルは、基本周波数に基づくスペクトルと、その2次高調波に基づくスペクトルである。発振回路80において発振周波数が変動する様子は、実施例1の発振回路30のその様子と類似している。
発振回路80において、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第2基本回路82のコレクタ側線路の電圧V2を測定し、(電圧V1,電圧V2)をプロットすると、図5に示すような非周期的な軌跡が描かれる。また、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第3基本回路83のコレクタ側線路の電圧V3を測定した場合でも、図5に示すように非周期的な軌跡が描かれる。同様に、基本回路81、82、83、84のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4のうち、いずれの2つを選択して測定した場合でも、同様に非周期的な軌跡が描かれる。このことから、基本回路81、82、83、84のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4が、それぞれ非周期的に変化していることが確認される。
この測定結果から、本実施例の発振回路80が、実施例1の発振回路30と略同様にして、発振周波数を非周期的に変動させていることを確認することができる。発振回路30と発振回路80の発振動作が類似することは、発振回路30と発振回路80が共に、偶数個の基本回路によってループ状回路を形成していることに由来している。
【0040】
(実施例4) 図14は、本実施例の発振回路90の構成を示している。図14から明らかなように、発振回路90は、主に、第1の基本回路91と、第2の基本回路92と、第3の基本回路93と、第4の基本回路94と、第5の基本回路95によって構成されている。発振回路90では、基本回路91、92、93、94、95によってループ状回路が形成されている。基本回路91、92、93、94、95の個別の構成は、図13とこれまでの説明から明らかであることから、ここでは説明を省略する。なお、発振回路90では、コレクタ側線路やベース側線路がマイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成のマイクロストリップ線路を採用している。また、各トランジスタ間に伸びている伝送線路の長さは、それぞれ略20mmである。
【0041】
図15は、発振回路90が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図15に示すように、発振回路90では、所定の周波数毎に等間隔で並ぶ多数のスペクトルが観測される。本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略66MHzという低い周波数帯域から、1.5GHzを超える高周波帯域に亘って、略66MHzの等間隔でならぶ離散スペクトルが観測される。これら多数の離散スペクトルは、それぞれ十分な強度をもっている。発振回路90が、周波数の異なる多数の高周波信号を、それぞれ十分な強度で発振していることを確認することができる。この発振回路90の発振の様子は、実施例2の発振回路40の発振の様子と類似している。
【0042】
発振回路90において、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第2基本回路82のコレクタ側線路の電圧V2を測定し、(電圧V1,電圧V2)をプロットすると、図10に示すような図形が描かれる。同様に、基本回路91、92、93、94、95のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4、V5のうち、いずれの2つを選択して測定した場合でも、同様にある図形(図形の形状は異なる)が描かれる。このことから、基本回路91、92、93、94、95のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4、V5が、それぞれ異なる周波数で変動していることが確認される。
この測定結果から、本実施例の発振回路90が、実施例2の発振回路40と略同様にして、周波数の異なる複数の高周波信号を生成していることを確認することができる。発振回路40と発振回路90の発振動作が類似することは、発振回路40と発振回路90が共に、奇数個の基本回路によってループ状回路を形成していることに由来している。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】発振回路が備える基本回路の構成を示す図。
【図2】実施例1の発振回路の構成を示す図。
【図3】マイクロストリップ線路の断面構成を示す図。
【図4】実施例1の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図5】実施例1の発振回路における(電圧V1,電圧V2)の変動の様子を示す図。
【図6】周波数変動率Δiの挙動を示す図。
【図7】レーダ装置の構成を示す図。
【図8】実施例2の発振回路の構成を示す図。
【図9】実施例2の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図10】実施例2の発振回路における(電圧V1,電圧V2)の変動の様子を示す図。
【図11】実施例2の発振回路の変形例を示す図。
【図12】実施例3の発振回路の構成を示す図。
【図13】実施例3の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図14】実施例4の発振回路の構成を示す図。
【図15】実施例4の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【符号の説明】
【0045】
30・・実施例1の発振回路
40・・実施例2の発振回路
80・・実施例3の発振回路
90・・実施例4の発振回路
10、20・・実施例1の発振回路が備える基本回路
50、60、70・・実施例2の発振回路が備える基本回路
81、82、83、84・・実施例3の発振回路が備える基本回路
91、92、93、94、95・・・・実施例4の発振回路が備える基本回路
1、11、21、51、61、71・・トランジスタ
3、13、23、53、63、73・・伝送線路
4、14、24、54、64、74・・コレクタ側線路
5、15、25、55、65、75・・コンデンサ
6、16、26、56、66、76・・ベース側線路
7、17、27、57、67、77・・電源入力回路
9、19、29、59、69、79・・バイアス電圧入力回路
【技術分野】
【0001】
本発明は発振回路に関する。特に、発振周波数を経時的に変化させることによって、周波数の異なる高周波信号を生成することのできる発振回路に関する。あるいは、同時に周波数の異なる高周波信号を生成することのできる発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路では、正弦波信号をはじめとする周期的な信号が利用されており、そのような周期的な信号を生成するために発振回路が用いられている。
発振回路は、増幅器と、増幅器の出力端子と入力端子の間を接続する帰還回路を組合せて構成することができる。このように構成された発振回路では、回路内で生じた電気振動(例えば電流の振動)が増幅器によって増幅され、増幅された電気振動が帰還回路によって増幅器に帰還される。電気振動の位相は帰還回路を伝播している間に変化し、所定の周波数の電気振動は同位相となって増幅器に帰還する。即ち、正帰還する。発振回路は、増幅と正帰還という循環によって、所定の周波数で発振する。発振回路が発振する周波数を発振周波数という。発振回路は、発振周波数に等しい周波数の信号を生成する。
発振周波数は、発振器の回路の電気特性に依存する。発振回路に含まれる受動素子や能動素子の電気特性を変化させることによって、発振周波数を変化させることができる。
例えば特許文献1には、回路上に可変容量ダイオードを備えており、可変容量ダイオードに印加する電圧を調節することによって、発振周波数を変化させることのできる発振器が記載されている。
【特許文献1】特開2004−7037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の発振器のように、従来の発振回路では、発振回路の発振周波数を変化させるために、発振回路の電気特性を外部から変化させる必要があった。それにより、単一の周波数の信号を生成する発振回路に比して、発信周波数を変化させることができる発振回路は、構成が複雑になるという問題がある。また、従来の発振回路では、高調波等の特別な関係にある周波数を除外すると、周波数の異なる高周波信号を同時に生成することはできない。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、発信周波数を変化させることができる発振回路を、簡単な構成で具現化することを可能とする技術を提供する。あるいは、同時に周波数の異なる高周波信号(高調波に限られない)を生成することのできる発振回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する一つの発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路とを備えている。
【0005】
この発振回路は、各トランジスタのベースに適当なバイアス電圧(直流電圧)を供給し、各トランジスタのコレクタに適当な電源電圧(直流電圧)を供給すると、発振動作を開始する。このとき、各伝送線路に介在するコンデンサによって、一方のトランジスタのベースと他方のトランジスタのコレクタとの間は、直流に対して遮断される。
各トランジスタでは、ベース電流に生じた微小な振動が、コレクタ電流の大きな振動となって現れる。その結果、各トランジスタでは、ベース側電圧の微小な振動成分が、コレクタ側電圧の大きな振動に増幅される。よく知られているように、トランジスタでは、ベース側電圧の振動に対して、コレクタ側電圧の振動は位相が反転することとなる。
【0006】
第1トランジスタのコレクタ側電圧の振動は、第2伝送線路と第2トランジスタと第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。振動電圧の位相は第2伝送線路と第2トランジスタと第1伝送線路を伝播している間に変化し、所定の周波数の振動については、第1トランジスタのコレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相(位相差が180度)となる。第1トランジスタは、振動電圧の位相を反転させることから、コレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相となるときに正帰還となる。第1トランジスタは、増幅と正帰還の循環によって、所定の周波数で発振する。第2トランジスタも同様に、所定の周波数で発振する。なお、第1トランジスタの発振周波数と、第2トランジスタの発振周波数は、発振回路の電気特性等によって決まり、両者が同一になるとは限らない。
【0007】
発振回路が発振している高周波信号は、第1伝送線路や第2伝送線路をアンテナとして周囲に放射される。放射された高周波電波は周囲の反射体によって反射され、その反射波は第1伝送線路や第2伝送線路をアンテナとして受信される。即ち、各伝送線路は、高周波電波の送受信アンテナとしても機能する。その結果、各トランジスタのベースには、発振している高周波電圧と受信した高周波電圧が併せて入力される。
【0008】
トランジスタは、ベースに入力する電圧とコレクタから出力する電圧との関係に非線形性を有している。この非線形性を利用して、トランジスタは高周波信号の検波回路(ミクサ)等に用いられている。この発振回路においても、第1トランジスタや第2トランジスタは、発振している高周波電圧と受信した高周波電圧を検波し、コレクタから検波電圧を出力する。各トランジスタは、検波回路(ミクサ)としても機能する。
第1トランジスタが出力する検波電圧は、第2伝送線路、第2トランジスタ、第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。検波電圧の周波数は十分に低いことから、各伝送線路を伝播する間では位相がほとんど変化せず、第1、第2トランジスタによる2回の位相反転によって、検波電圧は正帰還することとなる。それにより、第1トランジスタが出力する検波電圧は増幅されることとなり、増幅された検波電圧によって第1トランジスタや第2トランジスタのベース電圧は変化する。第2トランジスタが出力する検波電圧も同様に増幅され、第1トランジスタや第2トランジスタのベース電圧は変化する。第1トランジスタと第2トランジスタは、ベース電圧(動作点)が変化することによって、発振周波数を変化させることとなる。
発振周波数が変化すると、第1トランジスタや第2トランジスタが出力する検波電圧も変化する。検波電圧の変化と発振周波数の変化の循環によって、第1トランジスタや第2トランジスタの発振周波数は経時的に変化しつづけることとなる。この発振周波数の変化は非周期的であり、その変動の様子にはカオス現象が発現する。
【0009】
この発振回路は、発振周波数を自励的に変化させつづけることによって、周波数の異なる信号を生成することができる。この発振回路は、発振周波数を変化させるための特別な構成を必要としないことから、簡単な構成によって具現化することができる。
【0010】
本発明が提供する他の発振回路は、エミッタが接地されている第1トランジスタと、エミッタが接地されている第2トランジスタと、エミッタが接地されている第3トランジスタと、一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第3トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、一端が第3トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第3伝送線路とを備えている。
【0011】
この発振回路は、各トランジスタのベースに適当なバイアス電圧(直流電圧)を供給し、各トランジスタのコレクタに適当な電源電圧(直流電圧)を供給すると、発振動作を開始する。このとき、各伝送線路に介在するコンデンサによって、一方のトランジスタのベースと他方のトランジスタのコレクタとの間は、直流成分に対して遮断される。
各トランジスタは、ベース側電圧の振動成分を増幅し、コレクタに増幅された振動成分を出力する増幅器として機能する。
第1トランジスタのコレクタ側電圧の振動は、第3伝送線路、第3トランジスタ、第2伝送線路、第2トランジスタ、第1伝送線路を順に伝播し、第1トランジスタのベースに帰還する。所定の周波数の振動は第1トランジスタに正帰還し、第1トランジスタは所定の周波数で発振する。第2トランジスタや第3トランジスタも同様に、所定の周波数で発振する。第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタの各発振周波数は、発振回路の電気特性等によって決まり、三者は異なる周波数で発振することができる。
【0012】
この発振回路では3つのコンデンサが直列に接続されたループ状の回路が構成されており、3つのトランジスタによる3度の位相反転によって、低周波信号が負帰還となる構成となっている。その結果、各トランジスタが発生する検波電圧等は減衰されることとなり、各トランジスタのベース電圧が比較的に安定する。各トランジスタのベース電圧が安定することにより、各トランジスタの発振周波数は安定する。
この発振回路は、第1トランジスタと第2トランジスタと第3トランジスタが異なる振動数で発振することにより、周波数の異なる多数の高周波信号を同時に生成することができる。この発振回路が生成する各高周波信号の周波数は、広い周波数帯域に広がるとともに、それぞれが十分な強度をもっている。この発振回路は、発振周波数を変化させるための特別な構成を必要としないことから、簡単な構成によって具現化することができる。
【0013】
上述した2つの発振回路はともに、エミッタが接地されているトランジスタと、一端がトランジスタのベースに接続されており、その一端と他端との間にコンデンサが介在している伝送線路を利用している。すなわち、トランジスタと伝送線路によって一つの基本回路を構成している。最初の発振回路は2個の基本回路を利用し、次の発振回路は3個の基本回路を利用している。
本発明は、基本回路の数が2個ないし3個の場合に限られるものでなく、2個以上の任意の複数個で構成することができる。即ち、本発明の発振回路は、一般化すれば、トランジスタと伝送線路を備えている基本回路を複数備えており、一つの基本回路の伝送線路の他端が他の一つの基本回路のトランジスタのコレクタに接続されているというルールに従って基本回路群が順に接続されており、最後の基本回路の伝送線路の他端が最初の基本回路のトランジスタのコレクタに接続されていることができる。
このように構成された発振回路は、外部からの指令を必要とすることなく、周波数の異なる高周波信号を生成することができる。
【0014】
複数の基本回路を用いて発振回路を構成する場合、発振回路が偶数個の基本回路を備えていると、発振回路は発振周波数を自励的に変化させつづけることによって、周波数の異なる信号を生成する。
一方、発振回路が奇数個の基本回路を備えていると、発振回路は周波数の異なる複数の高周波信号を同時に生成することができる。
【0015】
本発明による発振回路では、伝送線路の少なくとも一部がマイクロストリップ線路で形成されていることが好ましい。
マイクロストリップ線路は、高周波信号に対して、分布定数のインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)として機能する。伝送線路にマイクロストリップ線路を用いることにより、インダクタやキャパシタを用いることなく、伝送線路のインダクタンスやキャパシタンスを設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、周波数の異なる高周波信号を、同時および/または経時的に、生成することのできる発振回路を、簡単な構成で具現化することが可能となる。例えば、本発明をマイクロ波レーダのための発振回路に利用すると、同時に複数の周波数で観測するマイクロ波レーダ、あるいは経時的に周波数を変えながら観測するマイクロ波レーダを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発振回路は、主に、複数の基本回路によって構成されている。図1に基本回路の構成を示す。基本回路は、トランジスタ1と、一端3aがトランジスタ1のベースに接続されており、他端3bが他の基本回路のトランジスタのコレクタに接続される伝送線路3を備えている。伝送線路3上にはコンデンサ5が介在している。伝送線路3は、コンデンサ5の一端からトランジスタ1のベースへと伸びているベース側線路6と、コンデンサ5の他端から他のトランジスタのコレクタへと伸びるコレクタ側線路4を備えている。
基本回路は、コレクタ側線路4に直流電圧VAを入力するための電源入力回路7を備えている。電源入力回路7は、伝送線路3のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。電源入力回路7は、インダクタ(コイル)7aと、抵抗7bと、入力端子7cを備えており、それらが直列に接続されている。入力端子7cに入力された直流電圧VAは、抵抗7bとインダクタ7aを介してコレクタ側線路4に入力される。
基本回路は、トランジスタ1のベースにバイアス電圧VBを入力するためのバイアス電圧入力回路9を備えている。バイアス電圧入力回路9は、ベース側線路6に接続されている。バイアス電圧入力回路9は、インダクタ9aと、抵抗9bと、入力端子9cを備えており、それらが直列に接続されている。入力端子9cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗9bとインダクタ9aを介してベース側線路6に入力される。
トランジスタ1のエミッタは接地されて用いられる。トランジスタ1のコレクタは、他の基本回路の伝送線路3の他端3bに接続されて用いられる。
【実施例】
【0018】
本発明を実施する実施例について図面を参照して説明する。本実施例は、本発明の技術を、高周波(周波数帯域がおよそ百メガヘルツから数ギガヘルツ)用の発振回路に具現化するものである。
図2は、本実施例の発振回路30の構成を示している。発振回路30は、主に、第1の基本回路10と、第2の基本回路20によって構成されている。
発振回路30は、第1トランジスタ11と、第2トランジスタ21を備えている。第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は共に、エミッタが接地されている。第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、互いに同一仕様のものでもよいし異なる仕様のものでもよい。本実施例の第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、npn型バイポーラトランジスタである。なお、第1トランジスタ11と第2トランジスタ21には、電界効果型トランジスタ等を用いることもできる。
発振回路30は、第1トランジスタ11のベースと第2トランジスタ21のコレクタを接続している第1伝送線路13を備えている。第1伝送線路13上には第1コンデンサ15が介在している。第1伝送線路13では、第1コンデンサ15の一端と第1トランジスタ11のベースを接続している第1ベース側線路16と、第1コンデンサ15の他端と第2トランジスタ21のコレクタを接続している第1コレクタ側線路14が形成されている。第1伝送線路13は、第1コンデンサ15を介して第1トランジスタ11のベースと第2トランジスタ21のコレクタを接続している。
発振回路30は、第2トランジスタ21のベースと第1トランジスタ11のコレクタを接続している第2伝送線路23を備えている。第2伝送線路23上には第2コンデンサ25が介在している。第2伝送線路23では、第2コンデンサ25の一端と第2トランジスタ21のベースを接続している第2ベース側線路26と、第2コンデンサ25の他端と第1トランジスタ11のコレクタを接続している第2コレクタ側線路24が形成されている。第2伝送線路23は、第2コンデンサ25を介して第2トランジスタ21のベースと第1トランジスタ11のコレクタを接続している。
第1伝送線路11と第2伝送線路21は、互いに同一となるように構成してもよいし、異なるように構成してもよい。
【0019】
発振回路30では、第1コレクタ側線路14と、第1ベース側線路16と、第2コレクタ側線路24と、第2ベース側線路26が、マイクロストリップ線路で構成されている。
図3は、図2のIII−III断面図であり、第1コレクタ側線路14を構成しているマイクロストリップ線路の断面構成をよく示している。図3に示すように、第1コレクタ側線路14は、接地されている導体基板14aと、導体基板14a上に形成されている誘電体層14bと、誘電体層14b上に形成されているストリップ導体14cを備えている。誘電体層14bは、テフロン(登録商標)樹脂で形成されており、誘電率が略2.6であり、厚みDが略0.8ミリメートルである。ストリップ導体14cは、銅で形成されており、幅Wが略2ミリメートルであり、厚みが略0.02ミリメートルである。
第1ベース側線路16と、第2コレクタ側線路24と、第2ベース側線路26についても、第1コレクタ側線路14と同様に構成されている。
第1トランジスタ11のベースから第2トランジスタ21のコレクタまで、第1伝送線路13が伸びている長さは略50mmである。第2トランジスタ21のベースから第1トランジスタ11のコレクタまで、第2伝送線路23が伸びている長さも略50mmである。
上記した第1伝送線路13と第2伝送線路23の構成は、具体的な一例を示すものである。よく知られているように、第1伝送線路13や第2伝送線路23の構成を変更することによって、第1伝送線路13や第2伝送線路23の電気的な特性を変更することができる。特にマイクロストリップ線路は、高周波信号に対して、分布定数のインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)として機能する。マイクロストリップ線路を用いる場合、誘電体層14bの誘電率や、誘電体層14bの厚さDや、スリップ導体14cの幅Wや、スリップ導体14cの厚さTを変更することにより、発振回路30の電気特性を変更することができる。第1伝送線路13や第2伝送線路23の具体的な形態は、発振回路30に所望する特性に合わせて設定するとよい。
【0020】
図2に示すように、発振回路30は、第1コレクタ側線路14に直流電圧VAを入力するための第1電源入力回路17を備えている。第1電源入力回路17は、第1伝送線路13のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。第1電源入力回路17は、インダクタ17aと抵抗17bと入力端子17cを備えている。入力端子17cに入力された直流電圧VAは、抵抗17bとインダクタ17aを介して第1コレクタ側線路14に入力される。
発振回路30は、第2コレクタ側線路24に直流電圧VAを入力するための第2電源入力回路27を備えている。第2電源入力回路27は、第2伝送線路23のおよそ中間位置(長手方向からみて)に接続されている。第2電源入力回路27は、インダクタ27aと抵抗27bと入力端子27cを備えている。入力端子27cに入力された直流電圧VAは、抵抗27bとインダクタ27aを介して第2コレクタ側線路14に入力される。
【0021】
発振回路30は、第1トランジスタ11のベースにバイアス電圧VBを入力するための第1バイアス電圧入力回路19を備えている。バイアス電圧入力回路19は、第1ベース側線路16に接続されている。第1バイアス電圧入力回路19は、インダクタ19aと、抵抗19bと、入力端子19cを備えている。入力端子19cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗19bとインダクタ19aを介して第1ベース側線路16に入力される。バイアス電圧VBによって、第1トランジスタ11の動作点が設定される。
発振回路30はまた、第2トランジスタ21のベースにバイアス電圧VBを入力するための第2バイアス電圧入力回路29を備えている。第2バイアス電圧入力回路29は、第2ベース側線路26に接続されている。バイアス電圧入力回路29は、インダクタ29aと、抵抗29bと、入力端子29cを備えている。入力端子29cに入力されたバイアス電圧VBは、抵抗29bとインダクタ29aを介して第2ベース側線路26に入力される。バイアス電圧VBによって、第2トランジスタ21の動作点が設定される。
なお、第1ランジスタ11と第2トランジスタ21に印加するバイアス電圧VBは、同一であってもよいし、互いに異なるようにしてもよい。
【0022】
上記のように構成された発振回路30では、第1電源入力回路17の入力端17cと第2電源入力回路27の入力端27cに直流電圧VAを印加し、第1バイアス電圧入力回路19の入力端19cと第2バイアス電圧入力回路29の入力端29cにバイアス電圧VBを印加することによって、発振回路30の発振動作が開始される。このとき、第1コンデンサ15や第2コンデンサ25は、直流電圧を絶縁するように作用することから、直流電圧VAが、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21のベースに印加されることはない。
直流電圧VAには略4から10ボルトの直流電圧を用いることができ、バイアス電圧VBには略0.8ボルトの直流電圧を用いることができる。
【0023】
各トランジスタ11、21では、ベース電流に生じた微小な振動が、コレクタ電流の大きな振動となって現れる。その結果、各トランジスタ11、21では、ベース側電圧の微小な振動成分が、コレクタ側電圧の大きな振動となって現れる。よく知られているように、トランジスタでは、ベース側電圧の振動に対して、コレクタ側電圧の振動は位相が反転することとなる。
第1トランジスタ11のコレクタ側電圧の振動は、第2伝送線路23と第2トランジスタ21と第1伝送線路13を順に伝播し、第1トランジスタ21のベースに帰還する。振動電圧の位相は第2伝送線路23と第2トランジスタ21と第1伝送線路13を伝播している間に変化し、所定の周波数の振動電圧については、第1トランジスタのコレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が、逆位相(位相差が180度)となる。第1トランジスタ11は、振動電圧の位相を反転させることから、コレクタでの振動の位相とベースでの振動の位相が逆位相となるときに正帰還となる。第1トランジスタ11は、この増幅と正帰還の循環によって、所定の周波数で発振する。同様に、第2トランジスタ21も所定の周波数で発振する。
第1トランジスタ11の発振周波数と、第2トランジスタ21の発振周波数は、発振回路30の電気特性等によって決まり、両者が同一となるとは限らない。この場合、同時に異なる2つの周波数で発振する。
第1トランジスタ11と第2トランジスタ21の発振により、発振回路30のループ状の回路には高周波信号が生成される。発振回路30に生成されている高周波信号は、例えば発振回路30の近傍にループコイル等を配置することによって、ループコイル側に取り出すことができる。
【0024】
図4は、発振回路30が所定時間内に発振する高周波信号をスペクトルアナライザによって観測したときのスペクトル分布を示している。図4に示すように、発振回路30では、所定の周波数帯域において幅をもつスペクトルが観測される。先に説明した本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略1.6G〜1.7GHzの周波数帯域において幅をもつスペクトルが観測される。これは、発振回路30の発振周波数が、所定の範囲において経時的に変動していることを示している。この発振周波数の変動は、外部からの指令等を必要とせず、自励的に発生する。
【0025】
発振回路30が発振周波数を変動させる原理について説明する。発振回路30が発振した高周波信号は、第1伝送線路13や第2伝送線路23をアンテナとして周囲に放射される。即ち、高周波電波となって送信される。放射された高周波電波は周囲の反射体によって反射され、その反射波は第1伝送線路13や第2伝送線路23をアンテナとして受信される。即ち、各伝送線路13、23は、高周波電波の送受信アンテナとしても機能する。特に本実施例の発振回路30では、第1伝送線路13や第2伝送線路23にマイクロストリップ線路が採用されているので、高周波電波が送信されやすく、また受信されやすい構成となっている。
一般にトランジスタは、ベースに入力する電圧とコレクタから出力する電圧との関係に非線形性を有している。この非線形性を利用して、トランジスタは高周波信号の検波回路等に用いられている。発振回路30においても、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21は、発振(送信)している高周波信号と受信した高周波信号を検波し、検波電圧VDを出力する。
この検波によってトランジスタが出力する検波電圧VDについて説明する。例えば、発振回路30が波長λの高周波電波を送信し、その高周波電波が距離Lの位置にある反射体で反射され、その反射波が受信されたとする。この場合の検波電圧VDは、
VD=A・cos(4πL/λ) ・・(1);
と表される。上記の(1)式のAは、送信出力に対する受信出力の割合を示す。(1)式は、従来のドップラレーダで用いられる式である。(1)式では、反射体が移動することによって距離Lが変化すると、検波電圧VDが変化する。ドップラレーダでは、検波電圧VDの変動から、移動している反射体の存在を検出するものである。その一方において、反射体が停止していると距離Lが一定となることから、検波電圧VDが一定となる。この場合、例えばL=(2・n−1)・λ/8(n:自然数)の関係が成立する状態では、検波出力VDがゼロとなってしまい、反射体を検出することができなくなる。このことはドップラレーダの欠点として知られている。
本実施例における反射体は、例えば回路のアース線やケース等であることから、反射体は停止しているものとし、距離Lが一定であるとすることが適当であるといえる。ただし、様々な距離にある反射体から反射波を受信することから、検波出力VDがゼロとなることはない。
【0026】
第1トランジスタ11が出力する検波電圧の変動は、第2伝送線路23、第2トランジスタ11、第1伝送線路13を順に伝播し、第1トランジスタ11のベースに帰還する。検波電圧の周波数は十分に低いことから、各伝送線路13、23を伝播する間では位相がほとんど変化しない。発振回路30を周回する検波電圧は、第1、第2トランジスタによる2回の位相反転によって、第1トランジスタ11に正帰還することとなる。それにより、第1トランジスタ11が出力する検波電圧は増幅されることとなり、増幅された検波電圧によって各トランジスタ11、21のベース電圧は変化する。第2トランジスタ21が出力する検波電圧も同様に増幅され、増幅された検波電圧によって各トランジスタ11、21のベース電圧は変化する。一般に、トランジスタのベース、エミッタ、コレクタ間には寄生容量(キャパシタ)が存在しており、この寄生容量はベース電圧によって変化する。そしてトランジスタの発振周波数は、帰還回路の電気特性のみならず、この寄生容量によっても変化する。従って、第1トランジスタ11と第2トランジスタ21は、ベース電圧(動作点)が変化することによって、発振周波数を変化させることとなる。
発振回路30のようにエミッタを接地している回路では、ベース−エミッタ間のほうがコレクタ−エミッタ間よりもインピーダンスが高いために、小さなキャパシタでも発振周波数に与える影響は大きい。そのことから、発振回路30は、ベース電圧の変動によるベース−エミッタ間の寄生容量の変動が、発振周波数の変動に影響しやすい構成であるといえる。
第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数が変化すると、前記の(1)式において波長λが変化する。その結果、検波出力VDが変化する。検波出力が変化することによって、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数が再び変化する。検波電圧の変化と発振周波数の変化の循環によって、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21の発振周波数は経時的に変化しつづけることとなる。
発振回路30は、2つのトランジスタ11、21が直列に接続されたループ状の回路を構成している。このループ状の回路を伝播する信号(電圧)は、トランジスタ11、21を通過する際に位相が反転される。この発振回路は、2つのトランジスタ11、21によって偶数回の位相反転が行われるように構成されている。それにより、例えば検波電圧のように、伝送線路13、23において位相がずれないような低周波信号は、ちょうど正帰還することとなる。検波電圧のような低周波信号が増幅されることによって、各トランジスタ11、21のベース電圧(動作点)の変動が大きくなることから、発振周波数が有意に変動することとなる。
【0027】
図5は、第1伝送線路13の第1コレクタ側線路14の電圧V1と、第2伝送線路23の第2コレクタ側線路24の電圧V2を測定した結果を示している。図4のグラフは、横軸が電圧V1を示しており、横軸が電圧V2を示しており、(電圧V1,電圧V2)のプロット点が描く軌跡を示している。なお、第1コレクタ側線路14の電圧V1は、第1電源入力回路17のインダクタ17aと抵抗17bの間(図2参照)の電位を測定したものである。従って、電圧V1は、インダクタ17aを介して第1コレクタ側線路14の電圧を測定したものであるから、第1コレクタ側線路14の電圧から高周波成分を除去したものとなる。また、第2コレクタ側線路24の電圧V2は、第2電源入力回路27のインダクタ27aと抵抗27bの間(図2参照)の電位を測定したものである。従って、電圧V2は、第2コレクタ側線路24の電圧から高周波成分を除去したものとなる。
図5に示すように、第1コレクタ側線路14の電圧V1と第2コレクタ側線路24の電圧V2は、それぞれ経時的に変化しつづけている。これは、第1トランジスタ11や第2トランジスタ21が出力する検波電圧が経時的に変化しつづけていることを示している。さらに特徴的なことは、第1コレクタ側線路14の電圧V1と第2コレクタ側線路24の電圧V2が、それぞれ非周期的に変化していることである。詳しくは、電圧V1と電圧V2の変動に、カオスとよばれる現象が発現している。このことは、発振回路30が、発振周波数を非周期的に変化させることを意味し、その発振周波数の変動にカオスが発現することを示している。発振回路30は、このカオス現象が発現する発振周波数の変動を、外部からの指令を必要とせずに実現する。
【0028】
発振回路30において発振周波数の変動にカオスが発現する原理を説明する。先に説明したように、発振回路30の発振周波数は経時的に変化しつづける。ある時点の発振周波数をfiとし、時定数を経て変化したあとの発振周波数をfi+1とし、検波で発生した電圧VDが周波数の変化に寄与する係数をαとすると、
fi+1=fi・(1+α・VD) ・・(2);
と表すことができる。(2)式に、(1)式と光速c=波長λ×周波数fの関係を代入すると、
fi+1=fi・[1+α・cos{2πfi・(2L/c)}] ・・(3);
となる。
ここの説明で重要なことは、発振周波数自体の大きさではなく、発振周波数の変動量であることから、下記の(4)式に示す無次元値Δiを定義する。
fi=f0・(1+Δi) ・・(4);
(4)式において、f0は発振周波数の初期値f0であり、Δiは発振周波数fiの初期値f0からの変動率を示すといえる。(4)式を(3)式に代入すると、
f0・(1+Δi+1)
=f0・(1+Δi)・[1+α・cos{2πf0・(1+Δi)・(2L/c)}] ;
となる。ここで、Δi・αが1に対して十分に小さいとすると、
Δi+1=α・cos{2πf0・(1+Δi)・(2L/c)} ;
となる。f0=c/λ0、β=2L/λ0とすると、
Δi+1=α・cos{2π・(1+Δi)・β} ・・(5);
と表すことができる。(5)式は発振周波数の変動率Δiに関する漸化式となる。発振回路30の具体的な構成によって、発振周波数の初期値f0や反射体(アース線等)の距離L等が定まることから、上記のα、β等は、発振回路30の具体的な形態によって定めることができるパラメータである。
図6は、(5)式の解の振る舞いを図示するものである。図6は、横軸にΔiをとり、横軸にΔi+1をとり、Δi=Δi+1の直線と、(5)式の余弦曲線を示している。
変動率Δiの初期値をΔ0とし、順にΔ1、Δ2、Δ3、・・、Δiを解いたときの解は、図6において、点P0(Δ0,0)、点P1(Δ0,Δ1)、点P2(Δ1,Δ1)、点P3、・・、点Piと表すことができる。図6示すように、点Piは非周期的に変動しつづける。この点Piの振る舞いにも、カオスを確認することができる。
図6に示す点Piの振る舞いを、図5に示した電圧V1と電圧V2によるプロット点の挙動に対応させて考えることで、発振回路30で発現する発振周波数の非周期的な変動を理解することができる。
【0029】
発振回路30は、例えば反射体の存在を検出するレーダに用いる発振回路として有効に利用することができる。
図7は、発振回路30を用いるレーダの構成を模式的に示している。図7に示すように、レーダは、発振回路30と、発振回路30から高周波信号を入力するループコイル102と、ループコイル102が入力した高周波信号を電波にして送信する送信アンテナ104と、反射体Rからの反射波を受信する受信アンテナ106と、受信アンテナ106の出力信号を検波する検波回路108を備えている。発振回路30を用いることを除くと、従来のドップラレーダと略等しい構成である。
受信アンテナ106は、反射体Rからの反射波を受信するとともに、送信アンテナ104が送信する電波を直接的に受信する。従って、受信アンテナ106は、送信アンテナ104の送信波と、反射体Rからの反射波を併せて出力する。
検波回路108は、受信アンテナ106の出力信号を検波することにより、送信波と反射波を検波することとなる。検波回路108の出力する検波信号(電圧)は、前出の(1)式と同じく、VD=A・cos(4πL/λ)で表される。なお、反射体Rが存在しない場合は、検波出力VDは出力されない。
発振回路30の発振周波数が変動しつづけることから、(1)式では波長λが変動しつづけることとなる。それにより、反射体Rが存在している限り、検波出力VDが変動しつづけることとなる。即ち、検波電圧VDの変動の有無に基づいて、反射体の存否を判断することができる。
発振周波数が単一である発振回路を用いるレーダでは、反射体が所定の距離(例えばL=λ/8)において停止している場合、検波電圧VDがゼロとなってしまい、反射体を検出できないという問題が発生する。発振回路30を用いることにより、この問題を解決することができる。
【0030】
図4、図5に示した発振回路30の挙動は、発振回路30の具体的な構成によって様々に変化する。例えば、第1伝送線路13や第2伝送線路23の構成や配置、印加するバイアス電圧VB等を変化させると、発振回路30の電気特性が変化することとなり、発振回路30は異なる挙動を示すようになる。発振回路30の具体的な構成によっては、発振周波数が変動しないで、単一スペクトルが観測されることもある。このような場合は、従来の高周波回路と同様に、発振回路30の電気特性を調節することによって、発振周波数が変動する発振回路30を得ることができる。
【0031】
(実施例2) 図8は、本実施例の発振回路40の構成を示している。図8に示すように、発振回路40は、主に、第1の基本回路50と、第2の基本回路60と、第3の基本回路70によって構成されている。発振回路40では、第1基本回路50と第2基本回路60と第3基本回路70によって、ループ状の回路が構成されている。
発振回路40は、第1トランジスタ51と、第2トランジスタ61と、第3トランジスタ71を備えている。第1トランジスタ51と第2トランジスタ61と第3トランジスタ71のそれぞれのエミッタは接地されている。
発振回路40は、第1トランジスタ51のベースと第2トランジスタ61のコレクタを接続している第1伝送線路53を備えている。第1伝送線路53では、第1コンデンサ55が介在しており、第1ベース側線路56と、第1コレクタ側線路54が形成されている。第1伝送線路53は、第1コンデンサ55を介して第1トランジスタ51のベースと第2トランジスタ61のコレクタを接続している。
発振回路40は、第2トランジスタ61のベースと第3トランジスタ71のコレクタを接続している第2伝送線路63を備えている。第2伝送線路63では、第2コンデンサ65が介在しており、第2ベース側線路66と、第2コレクタ側線路64が形成されている。第2伝送線路63は、第2コンデンサ65を介して第2トランジスタ61のベースと第3トランジスタ71のコレクタを接続している。
発振回路40は、第3トランジスタ71のベースと第1トランジスタ51のコレクタを接続している第3伝送線路73を備えている。第3伝送線路73では、第3コンデンサ75が介在しており、第3ベース側線路76と、第3コレクタ側線路74が形成されている。第3伝送線路73は、第3コンデンサ75を介して第3トランジスタ71のベースと第1トランジスタ51のコレクタを接続している。
発振回路40では、コレクタ側線路54、64、74や、ベース側線路56、66、76が、マイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成によるマイクロストリップ線路を採用している。また、伝送線路53、63、73の長さは、それぞれ略20mmとなるように形成されている。
【0032】
図8に示すように、発振回路40は、第1コレクタ側線路54に直流電圧VAを入力するための第1電源入力回路57と、第2コレクタ側線路64に直流電圧VAを入力するための第2電源入力回路67と、第3コレクタ側線路74に直流電圧VAを入力するための第3電源入力回路77を備えている。第1電源入力回路57は、インダクタ57aと抵抗57bと入力端子57cを備えている。第2電源入力回路67は、インダクタ67aと抵抗67bと入力端子67cを備えている。第3電源入力回路77は、インダクタ77aと抵抗77bと入力端子77cを備えている。
【0033】
発振回路40は、第1トランジスタ51のベースにバイアス電圧VBを入力するための第1バイアス電圧入力回路59と、第2トランジスタ61のベースにバイアス電圧VBを入力するための第2バイアス電圧入力回路69と、第3トランジスタ71のベースにバイアス電圧VBを入力するための第3バイアス電圧入力回路79を備えている。第1バイアス電圧入力回路59は、インダクタ59aと抵抗59bと入力端子59cを備えている。第2バイアス電圧入力回路69は、インダクタ69aと抵抗69bと入力端子69cを備
えている。第3バイアス電圧入力回路79は、インダクタ79aと抵抗79bと入力端子79cを備えている。
発振回路40では、第1基本回路50と第2基本回路60と第3基本回路70を、同一となるように構成してもよいし、互いに異なるように構成してもよい。
【0034】
上記のように構成された発振回路40では、実施例1の発振回路30と同様に、各電源入力回路57、67、77の各入力端57c、67c、77cに直流電圧VAを入力し、各バイアス電圧入力回路59、69、79の各入力端59c、69c、79cにバイアス電圧VBを入力することによって、発振回路40の発振動作が開始される。
図9は、発振回路40が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図9に示すように、発振回路40では、所定の周波数間隔で並ぶ多数の線状スペクトルが観測される。先に説明した本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略76MHzという低い周波数帯域から、1.5GHzを超える高周波帯域に亘って、略76MHz毎に等間隔でならぶ離散スペクトルが観測される。ここで特徴的なことは、各スペクトルが比較的に低い周波数帯域から広く離散していることと、各スペクトルが十分な強度をもっていることである。従来の発振回路においても、基本周波数のスペクトルとその高調波のスペクトルが観測されるが、高調波成分がこのように十分な強度を持つことはない。この観測結果から、発振回路40は、周波数の異なる多数の高周波信号を、それぞれが十分な強度をもつように生成していることが確認される。
【0035】
図10は、第1伝送線路53の第1コレクタ側線路54の電圧V1(図8に示す位置の電位)と、第2伝送線路63の第2コレクタ側線路64の電圧V2(図8に示す位置の電位)を測定した結果を、図4と同様に示すものである。図10に示すように、(電圧V1,電圧V2)のプロット点は、ある図形を描くように変動する。図10に示す図形が描かれる場合、電圧V1と電圧V2が、それぞれ異なる周波数で振動していることを示している。
同様にして、第2伝送線路63の第2コレクタ側線路64の電圧V2と、第3伝送線路73の第3コレクタ側線路74の電圧V3を測定し、(電圧V2,電圧V3)をプロットすると、プロット点は別の図形を描く。また、(電圧V3,電圧V1)のプロット点も、また別の図形を描く。
これらのことから、電圧V1と電圧V2と電圧V3が、それぞれ異なる周波数で変動していることが確認される。即ち、第1トランジスタ51と第2トランジスタ61と第3トランジスタ71は、それぞれ異なる周波数で発振していることを確認することができる。
【0036】
実施例1の発振回路30と本実施例の発振回路40では、発振の様子に有意な差異がみられる。これは、各発振回路30、40のループ状回路に存在しているトランジスタの数に由来している。実施例1の発振回路30では、ループ状回路に2つのトランジスタが介在していることから、低周波信号が正帰還されることを先に説明した。一方、本実施例の発振回路40では、ループ状回路に3つのトランジスタ51、61、71が介在している。それにより、ループ状回路を伝播する低周波信号は、3度の位相反転によって、位相が反転されて帰還する。即ち、発振回路40では、低周波信号が負帰還されることとなる。各トランジスタ51、61、71が出力する検波電圧は減衰されることになり、発振周波数の変動は抑制されることとなる。
従って、発振回路30と発振回路40の発振の様子の違いは、ループ状回路に介在するトランジスタの数が、偶数であるのか奇数であるのかということに由来している。ループ状回路に偶数個のトランジスタが介在していると、検波電圧が増幅されることによって、発振周波数の変動が助長される。それに対し、ループ状回路に奇数個のトランジスタが介在していると、検波電圧が減衰されて、発振周波数の変動が抑制される。
なお、本実施例の発振回路40においても、各基本回路50、60、70の電気特性を調節することによって、検波電圧が減衰される程度を調節することができる。検波電圧の減衰が抑えられるような電気特性に調節することで、発振回路40の発振周波数が不規則的(カオスが発現するように)に変動するように構成することもできる。
【0037】
発振回路40は、周波数の異なる多数の高周波信号を発振することができることから、例えば実施例1で説明したレーダの発振回路として有効に用いることができる。レーダに発振回路40を用いると、レーダは複数の高周波電波を同時に送信することができる。それにより、単一周波数の電波を用いるレーダのように、所定距離に停止している反射体を検出できないという問題が発生することがなく、反射体の存否を確実に検出することが可能となる。
図11は、発振回路40の一変形例を示すものである。図11に示すように、各基本回路50、60、70の各伝送線路は直線に限定されず、各基本回路50、60、70によって円が描かれるように構成することもできる。
【0038】
(実施例3) 図12は、本実施例の発振回路80の構成を示している。図12から明らかなように、発振回路80は、主に、第1の基本回路81と、第2の基本回路82と、第3の基本回路83と、第4の基本回路84によって構成されている。発振回路80では、基本回路81、82、83、84によってループ状の回路が構成されている。基本回路81、82、83、84の個別の構成は、図12とこれまでの説明から明らかであることから、ここでは説明を省略する。なお、発振回路80では、コレクタ側線路やベース側線路がマイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成のマイクロストリップ線路を採用している。また、各トランジスタ間に伸びている各伝送線路の長さは、それぞれ略20mmとなるように形成されている。
【0039】
図13は、発振回路80が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図13に示すように、発振回路80では、所定の範囲に広がる幅をもつスペクトルが観測される。これは、発振回路80の発振周波数が、所定の範囲において変動していることを示している。なお、図13に示す2つのスペクトルは、基本周波数に基づくスペクトルと、その2次高調波に基づくスペクトルである。発振回路80において発振周波数が変動する様子は、実施例1の発振回路30のその様子と類似している。
発振回路80において、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第2基本回路82のコレクタ側線路の電圧V2を測定し、(電圧V1,電圧V2)をプロットすると、図5に示すような非周期的な軌跡が描かれる。また、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第3基本回路83のコレクタ側線路の電圧V3を測定した場合でも、図5に示すように非周期的な軌跡が描かれる。同様に、基本回路81、82、83、84のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4のうち、いずれの2つを選択して測定した場合でも、同様に非周期的な軌跡が描かれる。このことから、基本回路81、82、83、84のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4が、それぞれ非周期的に変化していることが確認される。
この測定結果から、本実施例の発振回路80が、実施例1の発振回路30と略同様にして、発振周波数を非周期的に変動させていることを確認することができる。発振回路30と発振回路80の発振動作が類似することは、発振回路30と発振回路80が共に、偶数個の基本回路によってループ状回路を形成していることに由来している。
【0040】
(実施例4) 図14は、本実施例の発振回路90の構成を示している。図14から明らかなように、発振回路90は、主に、第1の基本回路91と、第2の基本回路92と、第3の基本回路93と、第4の基本回路94と、第5の基本回路95によって構成されている。発振回路90では、基本回路91、92、93、94、95によってループ状回路が形成されている。基本回路91、92、93、94、95の個別の構成は、図13とこれまでの説明から明らかであることから、ここでは説明を省略する。なお、発振回路90では、コレクタ側線路やベース側線路がマイクロストリップ線路で構成されている。詳しくは、図3に示した構成のマイクロストリップ線路を採用している。また、各トランジスタ間に伸びている伝送線路の長さは、それぞれ略20mmである。
【0041】
図15は、発振回路90が発振する高周波信号を観測したときのスペクトルを示している。図15に示すように、発振回路90では、所定の周波数毎に等間隔で並ぶ多数のスペクトルが観測される。本実施例の具体的な構成を採用する場合では、略66MHzという低い周波数帯域から、1.5GHzを超える高周波帯域に亘って、略66MHzの等間隔でならぶ離散スペクトルが観測される。これら多数の離散スペクトルは、それぞれ十分な強度をもっている。発振回路90が、周波数の異なる多数の高周波信号を、それぞれ十分な強度で発振していることを確認することができる。この発振回路90の発振の様子は、実施例2の発振回路40の発振の様子と類似している。
【0042】
発振回路90において、第1基本回路81のコレクタ側線路の電圧V1と、第2基本回路82のコレクタ側線路の電圧V2を測定し、(電圧V1,電圧V2)をプロットすると、図10に示すような図形が描かれる。同様に、基本回路91、92、93、94、95のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4、V5のうち、いずれの2つを選択して測定した場合でも、同様にある図形(図形の形状は異なる)が描かれる。このことから、基本回路91、92、93、94、95のコレクタ側線路の電圧V1、V2、V3、V4、V5が、それぞれ異なる周波数で変動していることが確認される。
この測定結果から、本実施例の発振回路90が、実施例2の発振回路40と略同様にして、周波数の異なる複数の高周波信号を生成していることを確認することができる。発振回路40と発振回路90の発振動作が類似することは、発振回路40と発振回路90が共に、奇数個の基本回路によってループ状回路を形成していることに由来している。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】発振回路が備える基本回路の構成を示す図。
【図2】実施例1の発振回路の構成を示す図。
【図3】マイクロストリップ線路の断面構成を示す図。
【図4】実施例1の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図5】実施例1の発振回路における(電圧V1,電圧V2)の変動の様子を示す図。
【図6】周波数変動率Δiの挙動を示す図。
【図7】レーダ装置の構成を示す図。
【図8】実施例2の発振回路の構成を示す図。
【図9】実施例2の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図10】実施例2の発振回路における(電圧V1,電圧V2)の変動の様子を示す図。
【図11】実施例2の発振回路の変形例を示す図。
【図12】実施例3の発振回路の構成を示す図。
【図13】実施例3の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【図14】実施例4の発振回路の構成を示す図。
【図15】実施例4の発振回路の発振スペクトルの分布を示す図。
【符号の説明】
【0045】
30・・実施例1の発振回路
40・・実施例2の発振回路
80・・実施例3の発振回路
90・・実施例4の発振回路
10、20・・実施例1の発振回路が備える基本回路
50、60、70・・実施例2の発振回路が備える基本回路
81、82、83、84・・実施例3の発振回路が備える基本回路
91、92、93、94、95・・・・実施例4の発振回路が備える基本回路
1、11、21、51、61、71・・トランジスタ
3、13、23、53、63、73・・伝送線路
4、14、24、54、64、74・・コレクタ側線路
5、15、25、55、65、75・・コンデンサ
6、16、26、56、66、76・・ベース側線路
7、17、27、57、67、77・・電源入力回路
9、19、29、59、69、79・・バイアス電圧入力回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタが接地されている第1トランジスタと、
エミッタが接地されている第2トランジスタと、
一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、
一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、
を備える発振回路。
【請求項2】
前記第1伝送線路および/または前記第2伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項1の発振回路。
【請求項3】
エミッタが接地されている第1トランジスタと、
エミッタが接地されている第2トランジスタと、
エミッタが接地されている第3トランジスタと、
一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、
一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第3トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、
一端が第3トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第3伝送線路と、
を備える発振回路。
【請求項4】
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路と第3伝送線路の少なくとも一つの伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項3の発振回路。
【請求項5】
エミッタが接地されているトランジスタと、
一端がトランジスタのベースに接続されており、その一端と他端との間にコンデンサが介在している伝送線路と、
を備える基本回路を複数備えており、
一つの基本回路の伝送線路の他端が、他の一つの基本回路のトランジスタのコレクタに接続されているというルールに従って、基本回路群が順に接続されており、最後の基本回路の伝送線路の他端が、最初の基本回路のトランジスタのコレクタに接続されていることを特徴とする発振回路。
【請求項6】
偶数個の基本回路を備えていることを特徴とする請求項5の発振回路。
【請求項7】
奇数個の基本回路を備えていることを特徴とする請求項5の発振回路。
【請求項8】
前記基本回路群の少なくとも一つの基本回路の前記伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれかの発振回路。
【請求項1】
エミッタが接地されている第1トランジスタと、
エミッタが接地されている第2トランジスタと、
一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、
一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、
を備える発振回路。
【請求項2】
前記第1伝送線路および/または前記第2伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項1の発振回路。
【請求項3】
エミッタが接地されている第1トランジスタと、
エミッタが接地されている第2トランジスタと、
エミッタが接地されている第3トランジスタと、
一端が第1トランジスタのベースに接続されており、他端が第2トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第1伝送線路と、
一端が第2トランジスタのベースに接続されており、他端が第3トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第2伝送線路と、
一端が第3トランジスタのベースに接続されており、他端が第1トランジスタのコレクタに接続されており、両端間にコンデンサが介在している第3伝送線路と、
を備える発振回路。
【請求項4】
前記第1伝送線路と前記第2伝送線路と第3伝送線路の少なくとも一つの伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項3の発振回路。
【請求項5】
エミッタが接地されているトランジスタと、
一端がトランジスタのベースに接続されており、その一端と他端との間にコンデンサが介在している伝送線路と、
を備える基本回路を複数備えており、
一つの基本回路の伝送線路の他端が、他の一つの基本回路のトランジスタのコレクタに接続されているというルールに従って、基本回路群が順に接続されており、最後の基本回路の伝送線路の他端が、最初の基本回路のトランジスタのコレクタに接続されていることを特徴とする発振回路。
【請求項6】
偶数個の基本回路を備えていることを特徴とする請求項5の発振回路。
【請求項7】
奇数個の基本回路を備えていることを特徴とする請求項5の発振回路。
【請求項8】
前記基本回路群の少なくとも一つの基本回路の前記伝送線路の少なくとも一部が、マイクロストリップ線路で形成されていることを特徴とする請求項5から7のいずれかの発振回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−74395(P2006−74395A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254701(P2004−254701)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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