説明

発振装置

【課題】消費電流が大きく、また、発振信号の振幅が小さかった。
【解決手段】第1のNPN型トランジスタと、第2のNPN型トランジスタと、水晶振動子と、第1の抵抗器と、第1のキャパシタと、第2のキャパシタと、を含み、第1のNPN型トランジスタのエミッタが、実質的に接地電位に接続され、第2のNPN型トランジスタのコレクタが、実質的に電源電位に接続され、第1のNPN型トランジスタのベースと第2のNPN型トランジスタのエミッタとが、接続され、水晶振動子及び第1の抵抗器は、第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び第2のNPN型トランジスタのベース間で相互に並列接続され、第1のキャパシタは、第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び電源電位間に接続され、第2のキャパシタは、第2のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電圧で動作可能な、バイポーラトランジスタを含む発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図28に示されるように、従来の発振装置OSC100は、発振周波数fを有する発振信号OSを生成する発振ユニットU101(下記の特許文献1に記載の「圧電発振器」に相当。)と、当該発振ユニットU101から前記発振信号OSを取り出して出力するための出力ユニットU102とを含む。
【0003】
前記発振ユニットU101では、前記発振信号OSを生成すべく、第1のNPN型トランジスタTR101と、第2のNPN型トランジスタTR102を有する。
【0004】
第1のNPN型トランジスタTR101は、第2のNPN型トランジスタTR102のベース電圧、即ち、ベース電流を安定させるべく、ベースが第2のNPN型トランジスタTR102のエミッタに接続されており、かつ、コレクタが第2のNPN型トランジスタTR102のベースに実質的に接続されており、これにより、第2のNPN型トランジスタTR102のエミッタ電圧の変動に応じて、第2のNPN型トランジスタTR102のベース電圧を変化させる。
【0005】
第2のNPN型トランジスタTR102は、前記発振信号OSを低電圧(例えば、3V、5V)で生成することができるように、そのコレクタが電源電位Vcc(例えば、3V、5V)に直接、接続されている。
【0006】
このような構成を有する発振ユニットU101では、前記発振信号OSを生成するための電流が、図28中の矢印で示されるように流れる。
【0007】
他方で、出力ユニットU102はバッファの機能を有し、エミッタ接地された第3のNPN型トランジスタTR103が、前記発振信号OSを出力端OUTから出力するようになっている。
【0008】
図29は上述した従来の発振装置の負性抵抗(水晶振動子の両端から回路側を見たインピーダンス)を実測した結果を示したものである。当該発振装置OSC100は、C101=10pF、C102=20pF、R101=2.2kΩ、R102=10kΩ、R103=1kΩの場合、図29に示されるように、例えば、電源電位Vcc=2.0Vのとき、負性抵抗Rbciは、620Ω(絶対値)であり、前記発振を行うに足りる値となっている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−48631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
負性抵抗Rbciの大きさは、第2のNPN型トランジスタTR102の相互コンダクタンスgmの大きさに概ね正比例することが知られている。すなわち、相互コンダクタンスgmを大きくするためには、図28に矢印で図示した回路電流を大きくしなければならない。ところが、前記回路電流を大きくすると、図30に示すように発振装置OSC100の消費電流も増えてしまう。例えば、電源電位Vcc=2.0Vのときには、1.8mAもの電流を消費してしまうという問題があった。
【0011】
また、発振ユニットU101内で、第2のNPN型トランジスタTR102のみが発振信号OSの生成に寄与し、第1のNPN型トランジスタTR101は発振信号OSの生成に寄与しないことから、発振信号OSの振幅が、図31に示されるように、電源電位Vcc=2.0Vのとき、560mVpp(peak to peak)であり、出力電圧が比較的小さい値に制限されてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決すべく、本発明に係る第1の発振装置は、
第1のNPN型トランジスタと、
第2のNPN型トランジスタと、
水晶振動子と、
第1の抵抗器と、
第1のキャパシタと、
第2のキャパシタと、を含み、
前記第1のNPN型トランジスタのエミッタが、実質的に接地電位に接続され、
前記第2のNPN型トランジスタのコレクタが、実質的に電源電位に接続され、
前記第1のNPN型トランジスタのベースと前記第2のNPN型トランジスタのエミッタとが、接続され、
前記水晶振動子及び前記第1の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記第2のNPN型トランジスタのベース間で相互に並列接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に交流的に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されている。
【0013】
上記した本発明に係る第1の発振装置は、
第3のキャパシタを更に含み、
前記第3のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されている。
【0014】
上記した本発明に係る第1の発振装置は、
第2の抵抗器を更に含み、
前記第2の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に接続されている。
【0015】
本発明に係る第2の発振装置は、
第1のNPN型トランジスタと、
第2のNPN型トランジスタと、
水晶振動子と、
第1の抵抗器と、
第1のキャパシタと、
第2のキャパシタと、を含み、
前記第1のNPN型トランジスタのエミッタが、電源電位に接続され、
前記第2のNPN型トランジスタのコレクタが、接地電位に接続され、
前記第1のNPN型トランジスタのベースと前記第2のNPN型トランジスタのエミッタとが、接続され、
前記水晶振動子は、前記第1のNPN型トランジスタのベース及びコレクタ間に接続され、
前記第1の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記第2のNPN型トランジスタのベース間に、又は、前記第1のNPN型トランジスタのベース及び前記第2のNPN型トランジスタのエミッタ間に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に交流的に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されている。
【0016】
上記した本発明に係る第1、第2の発振装置は、
第2の抵抗器を更に含み、
前記第2の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に接続されている。
【0017】
本発明に係る第1、第2の発振装置によれば、前記第1のNPN型トランジスタと、前記第2のNPN型トランジスタと、前記水晶振動子と、前記第1の抵抗器と、前記第1のキャパシタと、前記第2のキャパシタとが、上記したような接続関係を有することから、従来の発振装置に比して、消費電流を低減し、かつ、発振信号の振幅を増大させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る発振装置の実施例について図面を参照して説明する。
【0019】
《実施例1》
図1は、実施例1の発振装置の構成を示したものである。実施例1の発振装置OSC1は、図1に示されるように、第1のNPN型トランジスタTR1と、第2のNPN型トランジスタTR2と、第1のインピーダンスZ1と、第2のインピーダンスZ2と、第3のインピーダンスZ3と、第4のインピーダンスZ4とを含む。
【0020】
ここで、実施例1の主要な特徴点は、第1のNPN型トランジスタTR1に関する接続、及び、第1のインピーダンスZ1に関する接続である。また、第2のインピーダンスZ2は、後述されるように、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間のインピーダンス(内部インピーダンス)により自ずと存在することから、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間に外付けしなくとも良い。
【0021】
低電圧で動作することを目的として、第1のNPN型トランジスタTR1は、そのエミッタが、接地電位GNDに直接、接続されており、また、同目的のために、従来と同様に、第2のNPN型トランジスタTR2は、そのコレクタが電源電位Vccに直接、接続されている。加えて、第2のNPN型トランジスタTR2のベース電流を安定化すべく、第1のNPN型トランジスタTR1のベースと第2のNPN型トランジスタTR2のエミッタとが接続されており、また、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR2のベースが接続されている。
【0022】
第1のインピーダンスZ1は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR2のベース間に接続されており、第2のインピーダンスZ2は、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間に接続され、第3のインピーダンスZ3は、第2のNPN型トランジスタTR2のベース及びエミッタ間に接続されており、第4のインピーダンスZ4は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び電源電位Vcc間に接続されている。
【0023】
図2は、実施例1の発振装置の等価回路を示したものである。実施例1の発振装置OSC1の等価回路OSC1(eq)は、図2に示されるように、第1のNPN型トランジスタTR1の機能を有する、電流(gm×Z2×i2)を供給する定電流源CC1と、第2のNPN型トランジスタTR2の機能を有する、電流(gm×Z3×i1)を供給する定電流源CC2と、第1〜第4のインピーダンスZ1〜Z4とにより構成される。
【0024】
図3は、本発明に係る発振装置の実施例1の詳細な等価回路を示したものである。実施例1の発振装置OSC1の詳細な等価回路OSC1(eq_dt)は、図3に示されるように、第1のインピーダンスZ1は、相互に並列接続された水晶振動子X(インピーダンスzxt)と抵抗器R1とにより構成され、第2のインピーダンスZ2は、相互に並列接続された、抵抗器R2と、キャパシタC2と、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間の内部抵抗Rπ及び内部容量Cπとから構成され、第3のインピーダンスZ3は、相互に並列接続された、キャパシタC3と、第2のNPN型トランジスタTR2のベース及びエミッタ間の内部抵抗Rπ及び内部容量Cπとから構成され、第4のインピーダンスZ4は、相互に並列接続された、抵抗器R4とキャパシタC4とから構成されている。
【0025】
発振装置OSC1の詳細な等価回路OSC1(eq_dt)に、キルヒホッフの法則を適用すると、電流及び電圧の関係より、(1)式、(2)式、(3)式、及び(4)式が得られる。
【0026】
【数1】

【0027】
【数2】

【0028】
【数3】

【0029】
【数4】

(1)式〜(4)式を整理すると、(5)式が得られる。
【0030】
【数5】

(5)式中のZ1〜Z5は、(6)式で与えられ、(5)式中のr2、c2、r4、c4、r5、c5は、(7)式で与えられる。
【0031】
【数6】

【0032】
【数7】

水晶振動子Xを除く、詳細な等価回路OSC1(eq_dt)の回路抵抗をRciとし、容量性リアクタンスをCciとすると、(5)式は、(8)式に置き換えることができる。
【0033】
【数8】

(8)式中のRci、Cciは、(9)式により与えられ、また、(8)式中のra、xa、rb、xb、rs、xs、rt、xtは、(10)式により与えられる。
【0034】
【数9】

【0035】
【数10】

図4は、実施例1の発振装置の具体的回路を示したものである。図1と図4との比較から明らかなように、具体的回路OSC1(emb1)では、第1のインピーダンスZ1は、相互に並列接続された水晶振動子X及び抵抗器R1により構成され、第2のインピーダンスZ2は、「外付け素子」としては存在せず(内部的には存在する。)、第3のインピーダンスZ3は、キャパシタC3により構成され、第4のインピーダンスZ4は、相互に並列接続された、抵抗器R4及びキャパシタC4により構成されている。なお、キャパシタC4は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及びエミッタ間に接続されているものの、交流的には、キャパシタCp(電源−GND間を交流的に短絡する素子)を介して抵抗器R4と並列接続されていることと等価である。
【0036】
ここで、キャパシタC4は、交流的な動作(発振動作)の意味で必要な素子であり、他方で、抵抗器R4は、直流的な動作(トランジスタのバイアス設定)の意味で必要な素子である。キャパシタCpは、バイパスコンデンサ(パスコン)であり、また、キャパシタCcは、カップリングコンデンサである。
【0037】
図5、図6、図7は、本発明に係る発振装置の実施例1の具体的回路の実験結果を示す。上記した具体的回路OSC1(emb1)では、水晶振動子Xの周波数f=10MHz、抵抗器R1=20kΩ、抵抗器R4=2kΩ、キャパシタC3=C4=22pF、Cp=Cc=0.1μFの場合、電源電圧Vcc=2.0Vのとき、負性抵抗Rbciは、1200Ω(絶対値)であり、具体的回路OSC1(emb1)の消費電流は、950μAであり、発振信号OSの振幅は、2000mVppである。即ち、従来の発振装置OSC100と比較すると、従来の発振装置OSC100と同様に、2.0Vの低電圧での動作を維持することができ、他方で、従来の発振装置OSC100と異なり、負性抵抗Rbciを620Ωから1200Ωに増大させ、消費電流を1800μAから950μAへ減少させ、かつ、発振信号OSの振幅を560mVppから2000mVppに増大させることができる。
【0038】
発振装置OSC1の具体的回路OSC1(emb1)は、また、図6に示されるように、電源電位Vccが1.5Vから3.0Vまでの範囲において、発振信号OSの周波数偏差df/fが50ppm内に抑えられることから、比較的安定的に発振することができる。
【0039】
発振装置OSC1の具体的回路OSC1(emb1)では、さらに、その発振信号OSは、図7に示されるように、比較的歪みの少ない正弦波に近い波形が得られる。
【0040】
《実施例1の変形例》
図8は、実施例1の発振装置の他の具体的回路を示す。図8に図示された他の具体的回路OSC1(emb2)は、図4に図示された具体的回路OSC1(emb1)と同様な構成を有し、加えて、第2のインピーダンスZ2として、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間にキャパシタC2を有する。
【0041】
図9、図10、図11は、実施例1の発振装置の他の具体的回路の実験結果を示したものである。具体的回路OSC1(emb2)では、水晶振動子Xの周波数f=10MHz、抵抗器R1=470kΩ、抵抗器R4=2kΩ、キャパシタC3=C4=22pF、キャパシタC2=20pF、Cp=Cc=0.1μFの場合、電源電位Vcc=2.0Vのとき、負性抵抗Rbciは、850Ω(絶対値)であり、具体的回路OSC1(emb2)の消費電流は、700μAであり、発振信号OSの振幅は、1100mVppである。即ち、上記した具体的回路OSC1(emb1)と比較すると、消費電流及び発振信号OSの振幅は、概ね同一であるが、負性抵抗Rbciは、やや劣る。
【0042】
しかしながら、当該具体的回路OSC1(emb2)は、図10に示されるように、発振信号OSの周波数偏差df/fが、電源電位Vccが1.5Vから3.0Vまでの範囲において、発振信号OSの周波数偏差df/fを3ppm内に抑えられることから、上記の具体的回路OSC1(emb1)に比して、より安定的に発振することができる。
【0043】
当該具体的回路OSC1(emb2)では、加えて、その発振信号OSは、図11に示されるように、図7に示される具体的回路OSC1(emb1)に比して、より歪みの少ない正弦波にほぼ等しい波形が得られる。
【0044】
《実施例2》
図12は、本発明に係る発振装置の実施例2の構成を示したものである。実施例2の発振装置OSC2Aは、図12に示されるように、第1のNPN型トランジスタTR1と、第2のNPN型トランジスタTR2と、第1のインピーダンスZ1と、第2のインピーダンスZ2と、第3のインピーダンスZ3と、第4のインピーダンスZ4と、第5のインピーダンスZ5とを含む。ここで、実施例2Aの発振装置OSC2の主要な特徴点は、第1のNPN型トランジスタTR1に関する接続、及び、第3のインピーダンスZ3に関する接続である。
【0045】
実施例2の発振装置OSC2Aでは、実施例1の発振装置OSC1と同様に、低電圧で動作することを目的として、第1のNPN型トランジスタTR1は、そのエミッタが、接地電位GNDに直接、接続されており、また、第2のNPN型トランジスタTR2は、そのコレクタが電源電位Vccに直接、接続されている。更に、第2のNPN型トランジスタTR2のベース電流を安定化すべく、第1のNPN型トランジスタTR1のベースと第2のNPN型トランジスタTR2のエミッタとが接続されており、また、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR2のベースが、実質的に接続されている。
【0046】
第1〜第5のインピーダンスZ1〜Z5については、第1のインピーダンスZ1は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及びベース間に接続されており、第2のインピーダンスZ2は、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間に接続されており、第3のインピーダンスZ3は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR2のベース間に接続されており、第4のインピーダンスZ4は、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び電源電位Vcc間に接続されており、第5のインピーダンスZ5は、第2のNPN型トランジスタTR2のベース及びエミッタ間に接続されている。
【0047】
図13は、本発明に係る発振装置の実施例2の等価回路を示したものである。実施例2の発振装置OSC2Aの等価回路OSC2A(eq)は、図13に示されるように、第1のNPN型トランジスタTR1の機能を有する、電流(gm×Z2×i2)を供給する定電流源CC1と、第2のNPN型トランジスタTR2の機能を有する、電流(gm×Z3×i5)を供給する定電流源CC2と、水晶振動子Xからなる第1のインピーダンスZ1と、相互に並列接続された、キャパシタC2と第1のNPN型トランジスタTR1のベース及びエミッタ間の内部抵抗Rπ及び内部容量Cπとからなる第2のインピーダンスZ2と、抵抗器R3からなる第3のインピーダンスZ3と、相互に並列接続されたキャパシタC4及び抵抗器R4からなる第4のインピーダンスZ4と、相互に並列接続された、キャパシタC5と第2のNPN型トランジスタTR2のベース及びエミッタ間の内部抵抗Rπ及び内部容量Cπとからなる第5のインピーダンスZ5とにより表される。
【0048】
実施例2の等価回路OSC2A(eq)に、キルヒホッフの法則を適用すると、電流及び電圧の関係より、(11)式〜(15)式が得られる。
【0049】
【数11】

【0050】
【数12】

【0051】
【数13】

【0052】
【数14】

【0053】
【数15】

上記の(11)式〜(15)式を整理すると、(16)式が得られる。
【0054】
【数16】

(16)式中のZ1〜Z5は、上記した(6)式で与えられ、(15)式中のr2、c2、r4、c4、r5、c5は、上記した(7)式で与えられる。
【0055】
等価回路OSC2A(eq)の回路抵抗Rci、容量性リアクタンスCciを用いると、(16)式は、(17)式に置き換えることができる。
【0056】
【数17】

(17)式中のRci、Cciは、(18)式により与えられ、また、(17)式中のra、xa、rb、xb、rs、xs、rt、xtは、(19)式により与えられる。
【0057】
【数18】

【0058】
【数19】

図14は、本発明に係る発振装置の実施例2の具体的回路を示したものである。発振装置OSC2Aの具体的回路OSC2A(emb)では、図14に示されるように、第1のインピーダンスZ1は、水晶振動子Xから構成され、第2のインピーダンスZ2は、キャパシタC2から構成され、第3のインピーダンスZ3は、抵抗器R3から構成され、第4のインピーダンスZ4は、交流的に相互に並列接続された、抵抗器R4及びキャパシタC4から構成され、第5のインピーダンスZ5は、キャパシタC5から構成されている。
【0059】
ここで、キャパシタC4は、交流的な動作(発振動作)の意味で必要な素子であり、他方で、抵抗器R4は、直流的な動作(トランジスタのバイアス設定)の意味で必要な素子である。
【0060】
図15、図16、図17は、実施例2の発振装置の具体的回路の実験結果を示したものである。上記した発振装置OSC2Aの具体的回路OSC2A(emb)では、水晶振動子Xの周波数f=10MHz、抵抗器R3=100kΩ、抵抗器R4=12kΩ、キャパシタC3=C4=22pF、C5=0pF、Cp=0.1μF、Cc=33μFの場合、電源電位Vcc=2.0Vのとき、負性抵抗Rbciは、600Ω(絶対値)であり、具体的回路OSC2A(emb)の消費電流は、200μAであり、発振信号OSの振幅は、1000mVppである。即ち、従来の発振装置OSC100と比較すると、従来の発振装置OSC100と同様に、2.0Vの低電圧での動作を維持し、かつ、負性抵抗Rbciを発振可能な程度の値に維持することができ、他方で、従来の発振装置OSC100と異なり、消費電流を1800μAから200μAへ減少させ、かつ、発振信号OSの振幅を560mVppから1000mVppに増大させることができる。
【0061】
発振装置OSC2Aの具体的回路OSC2A(emb)は、また、図16に示されるように、電源電位Vccが1.5Vから3.0Vまでの範囲において、発振信号OSの周波数偏差を5ppm内に抑えられることから、極めて安定的に発振することができる。
【0062】
発振装置OSC2Aの具体的回路OSC2A(emb)では、さらに、その発振信号OSは、図17に示されるように、歪みの少ない正弦波にほぼ等しい波形が得られる。
【0063】
《実施例2の変形例》
図18は、本発明に係る発振装置の実施例2の変形例の構成を示し、図19は、その等価回路を示し、図20は、その具体的回路を示したものである。実施例2の変形例の発振装置OSC2Bは、図18、図19に示されるように、実施例2の発振装置OSC2Aと同様に、第1のNPN型トランジスタTR1と、第2のNPN型トランジスタTR2と、第1のインピーダンスZ1と、第2のインピーダンスZ2と、第3のインピーダンスZ3と、第4のインピーダンスZ4と、第5のインピーダンスZ5とを含む。
【0064】
変形例の発振装置OSC2Bでは、図12と図18との比較、図13と図19との比較、及び図14と図20との比較から明らかなように、第1、第2、第4、第5のインピーダンスZ1、Z2、Z4、Z5は、発振装置OSC2Aのそれらと同様な位置に接続されており、他方で、第3のインピーダンスZ3は、実施例2の発振装置OSC2Aのそれと挿入位置のみが異なり、第1のNPN型トランジスタTR1のコレクタ及び第2のNPN型トランジスタTR2のベース間に代えて、第1のNPN型トランジスタTR1のベース及び第2のNPN型トランジスタTR2のエミッタ間に接続されている。
【0065】
変形例の等価回路OSC2B(eq)の回路抵抗Rci、容量性リアクタンスCciは、実施例2の等価回路OSC2A(eq)と同様に、(18)式により表わされる。
【0066】
図21、図22、図23は、本発明に係る発振装置の実施例2の変形例の具体的回路の実験結果を示す。上記した発振装置OSC2Bの具体的回路OSC2B(emb)では、水晶振動子Xの周波数f=10MHz、抵抗器R3=100kΩ、抵抗器R4=12kΩ、キャパシタC3=C4=22pF、C5=0pF、Cp=0.1μF、Cc=33μFの場合、電源電位Vcc=2.0Vのとき、負性抵抗Rbciは、250Ω(絶対値)であり、具体的回路OSC2B(emb)の消費電流は、100μAであり、発振信号OSの振幅は、1000mVppである。即ち、従来の発振装置OSC100と比較すると、従来の発振装置OSC100と同様に、2.0Vの低電圧での動作を維持し、かつ、負性抵抗Rbciを発振可能な程度の値に維持することができ、他方で、従来の発振装置OSC100と異なり、消費電流を1800μAから100μAへ減少させ、かつ、発振信号OSの振幅を560mVppから1000mVppに増大させることができる。
【0067】
発振装置OSC2Bの具体的回路OSC2B(emb)は、また、図22に示されるように、電源電位Vccが2Vから3.0Vまでの範囲において、発振信号OSの周波数偏差を3ppm内に抑えられることから、極めて安定的に発振することができる。
【0068】
発振装置OSC2Bの具体的回路OSC2B(emb)では、さらに、その発振信号OSは、図23に示されるように、比較的歪みの少ないほぼ正弦波に近い波形が得られる。
【0069】
《実施例1、2の他の変形例》
実施例1、2の発振装置の他の変形例について説明する。
【0070】
〈実施例1の他の変形例〉
図24〜図27に示されるように、実施例1の他の変形例の発振装置OSC1p(1)、OSC1p(2)、及び、実施例2の他の変形例の発振装置OSC2p(1)、OSC2p(2)は、実施例1、2の発振装置OSC1、OSC2A、OSC2Bに用いられているNPN型トランジスタに代えて、PNP型トランジスタを用いている。
【0071】
より詳細には、発振装置OSC1p(1)は、図24に示されるように、実施例1の発振装置OSC1と異なり、第1のNPN型トランジスタTR1に代わる第3のPNP型トランジスタTR3と、第2のNPN型トランジスタTR2に代わる第4のPNP型トランジスタTR4とを有する。
【0072】
低電圧での動作を可能にすべく、第3のPNP型トランジスタTR3は、そのエミッタが、電源電位Vccに接続されており、第4のPNP型トランジスタTR4は、そのコレクタが接地電位GNDに接続されている。加えて、第4のPNP型トランジスタTR4のベース電流を安定化すべく、第3のPNP型トランジスタTR3のベースと第4のPNP型トランジスタTR4のエミッタとが接続されており、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタと第4のPNP型トランジスタTR4のベースが実質的に接続されている。
【0073】
また、発振装置OSC1p(1)は、実施例1の発振装置OSC1と同様に、第1のインピーダンスZ1(抵抗器R1と水晶振動子X)、第3のインピーダンスZ3(キャパシタC3)と、第4のインピーダンスZ4(抵抗器R4)とを有する。
【0074】
第1のインピーダンスZ1は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び第4のPNP型トランジスタTR4のベース間に接続されており、第3のインピーダンスZ3は、第4のPNP型トランジスタTR4のベース及びエミッタ間に接続されており、第4のインピーダンスZ4は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び接地電位GND間に接続されている。なお、図25に示されるように、図8に図示された実施例1の変形例OSC1(emb2)と同様に、第2のインピーダンスZ2として、第3のPNP型トランジスタTR3のベース及び接地電位GND間にキャパシタC2が接続されていてもよい。
【0075】
〈実施例2の他の変形例〉
また、実施例2の変形例の発振装置OSC2p(1)は、図26に示されるように、実施例2の発振装置OSC2Aと異なり、第1のNPN型トランジスタTR1に代わる第3のPNP型トランジスタTR3と、第2のNPN型トランジスタTR2に代わる第4のPNP型トランジスタTR4とを有する。
【0076】
低電圧での動作を可能にすべく、第3のPNP型トランジスタTR3は、そのエミッタが、電源電位Vccに接続されており、第4のPNP型トランジスタTR4は、そのコレクタが接地電位GNDに接続されている。加えて、第4のPNP型トランジスタTR4のベース電流を安定化すべく、第3のPNP型トランジスタTR3のベースと第4のPNP型トランジスタTR4のエミッタとが接続されており、また、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び第4のPNP型トランジスタTR4のベースが実質的に接続されている。
【0077】
また、発振装置OSC2p(1)は、実施例2の発振装置OSC2Aと同様に、第1のインピーダンスZ1(水晶振動子X)、第2のインピーダンスZ2(キャパシタC2)と、第3のインピーダンスZ3(抵抗器R3)と、第4のインピーダンスZ4(抵抗器R4とキャパシタC4)と、第5のインピーダンスZ5(キャパシタC5)とを有する。
【0078】
第1のインピーダンスZ1は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及びベース間に接続されており、第2のインピーダンスZ2は、第3のPNP型トランジスタTR3のベース及び接地電位GND間に接続されており、第3のインピーダンスZ3は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び第4のPNP型トランジスタTR4のベース間に接続されており、第4のインピーダンスZ4は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び接地電位GND間に接続されており、第5のインピーダンスZ5は、第4のPNP型トランジスタTR4のエミッタ及びベース間に接続されている。
【0079】
なお、図27に示されるように、図18に図示された実施例2の変形例の発振装置OSC2Bと同様に、第3のインピーダンスZ3は、第3のPNP型トランジスタTR3のコレクタ及び第4のPNP型トランジスタTR4のベース間に代えて、第3のPNP型トランジスタTR3のベース及び第4のPNP型トランジスタTR4のエミッタ間に接続されても良い。
【0080】
上記したような構成を有する発振装置OSC1p(1)、OSC1p(2)、OSC2p(1)、OSC2p(2)によっても、上記した実施例1、実施例2の発振装置OSC1、OSC2A、OSC2Bと同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1の発振装置の構成を示す図。
【図2】実施例1の発振装置の等価回路を示す図。
【図3】実施例1の発振装置の詳細な等価回路を示す図。
【図4】実施例1の発振装置の具体的回路を示す図。
【図5】実施例1の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その1)。
【図6】実施例1の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その2)。
【図7】実施例1の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その3)。
【図8】実施例1の発振装置の他の具体的回路を示す図。
【図9】実施例1の発振装置の他の具体的回路の実験結果を示す図(その1)。
【図10】実施例1の発振装置の他の具体的回路の実験結果を示す図(その2)。
【図11】実施例1の発振装置の他の具体的回路の実験結果を示す図(その3)。
【図12】実施例2の発振装置の構成を示す図。
【図13】実施例2の発振装置の等価回路を示す図。
【図14】実施例2の発振装置の具体的回路を示す図。
【図15】実施例2の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その1)。
【図16】実施例2の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その2)。
【図17】実施例2の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その3)。
【図18】実施例2の変形例の発振装置の構成を示す図。
【図19】実施例2の変形例の発振装置の等価回路を示す図。
【図20】実施例2の変形例の発振装置の具体的回路を示す図。
【図21】実施例2の変形例の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その1)。
【図22】実施例2の変形例の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その2)。
【図23】実施例2の変形例の発振装置の具体的回路の実験結果を示す図(その3)。
【図24】実施例1の他の変形例の発振装置の構成を示す図(その1)。
【図25】実施例1の他の変形例の発振装置の構成を示す図(その2)。
【図26】実施例2の他の変形例の発振装置の構成を示す図(その1)。
【図27】実施例2の他の変形例の発振装置の構成を示す図(その2)。
【図28】従来の発振装置の構成を示す図。
【図29】従来の発振装置の負性抵抗を示す図。
【図30】従来の発振装置の消費電流を示す図。
【図31】従来の発振装置の発振信号の振幅を示す図。
【符号の説明】
【0082】
OSC1(emb1)…具体的回路、TR1…第1のNPN型トランジスタ、TR2…第2のNPN型トランジスタ、X…水晶振動子、R1…第1の抵抗器、C3、C4…キャパシタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のNPN型トランジスタと、
第2のNPN型トランジスタと、
水晶振動子と、
第1の抵抗器と、
第1のキャパシタと、
第2のキャパシタと、を含み、
前記第1のNPN型トランジスタのエミッタが、接地電位に接続され、
前記第2のNPN型トランジスタのコレクタが、電源電位に接続され、
前記第1のNPN型トランジスタのベースと前記第2のNPN型トランジスタのエミッタとが、接続され、
前記水晶振動子及び前記第1の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記第2のNPN型トランジスタのベース間で相互に並列接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に交流的に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されていることを特徴とする発振装置。
【請求項2】
第3のキャパシタを更に含み、
前記第3のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項3】
第2の抵抗器を更に含み、
前記第2の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項4】
第1のNPN型トランジスタと、
第2のNPN型トランジスタと、
水晶振動子と、
第1の抵抗器と、
第1のキャパシタと、
第2のキャパシタと、を含み、
前記第1のNPN型トランジスタのエミッタが、電源電位に接続され、
前記第2のNPN型トランジスタのコレクタが、接地電位に接続され、
前記第1のNPN型トランジスタのベースと前記第2のNPN型トランジスタのエミッタとが、接続され、
前記水晶振動子は、前記第1のNPN型トランジスタのベース及びコレクタ間に接続され、
前記第1の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記第2のNPN型トランジスタのベース間に、又は、前記第1のNPN型トランジスタのベース及び前記第2のNPN型トランジスタのエミッタ間に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に交流的に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のNPN型トランジスタのベース及びエミッタ間に接続されていることを特徴とする発振装置。
【請求項5】
第2の抵抗器を更に含み、
前記第2の抵抗器は、前記第1のNPN型トランジスタのコレクタ及び前記電源電位間に接続されていることを特徴とする請求項4記載の発振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−92401(P2008−92401A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272639(P2006−272639)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】