説明

発泡体の製造方法及び発泡体

【課題】発泡前の成形体の高次構造(モルフォロジー)を制御し、発泡構造の制御が容易な新たな発泡体を提案する。
【解決手段】主成分として(a)成分及び(b)成分を含有し、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御してなる成形体を得、該成形体中に加圧ガスを含浸させた後、該成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域で、主に(b)成分の領域で発泡させてなり、厚みが50μm以上、かつ500μm以下のシート形状の発泡体を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体の製造方法に関し、更に詳しくは発泡構造の制御が容易な発泡体の製造方法、及びその製造方法により得られた発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等に代表される熱可塑性樹脂からなる発泡体は、その優れた断熱性、緩衝性等により、食品容器や建築用材料等の分野で広く活用されている。
熱可塑性樹脂発泡体の代表的な製造方法としては、化学発泡法と物理発泡法がある。化学発泡法は、低分子量の化学発泡剤を混合し、発泡剤の分解温度以上に加熱することにより発泡成形する方法である。また物理発泡法は、ブタン等の低沸点有機化合物を供給して混練した後、低圧域に押出することにより発泡成形する方法である。この方法は、樹脂中への発泡剤の添加量を調整すれば、低倍率から高倍率までの種々の発泡体を容易に製造することができるのが特徴であるが、樹脂を溶融、押出しすると、得られる樹脂成形体の厚みや密度が不均一になる等、多孔構造の制御が困難であるといった問題があった。
【0003】
一方、これまでの発泡法に対して、発泡体の気泡を微細化(例えば、平均気泡径が10μm以下)することにより、発泡材料の性能幅を拡大するために、具体的には、例えば発泡倍率の増加に伴う強度低下の抑制ないしは強度の向上などを図る技術としてマイクロセルラープラスチックと呼ばれる技術がある。この方法は、具体的には、(1)高圧容器内で熱可塑性樹脂に高圧下もしくは超臨界状態で窒素や二酸化炭素などのガスを含浸させ、次いで、(2)ガスを含浸させた熱可塑性樹脂を高圧容器より取り出し、オイルバス等で熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度まで昇温し、(3)核生成を誘発して気泡成長させることにより微細な気泡の発泡体を得るものである。
【0004】
このような製造方法として、特許文献1には、加圧下において、少なくとも1種の結晶性熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の非晶性熱可塑性樹脂とを混合、分散してなるポリマーアロイ中に非反応性ガスを含有させる工程と、非加圧下において、非反応性ガスを含有したポリマーアロイを加熱により発泡させる工程とを具備したことを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法が開示されている。また、特許文献2には2種類以上のモノマーの共重合体よりなるミクロ相分離構造を有する樹脂材料に、高圧ガスを接触させた後、発泡させることを特徴とする共重合樹脂発泡体の製造方法が開示されている。また、特許文献3には二酸化炭素の溶解度及び拡散係数が異なり、かつ互いに非相溶の樹脂(A)及び樹脂(B)からなり、(A)/(B)の質量比が1〜99/99〜1である樹脂成形体に、樹脂(A)及び樹脂(B)の融点以下の温度で、二酸化炭素を含浸させた後、発泡させることを特徴とする樹脂発泡成形体の製造方法、及びその製造方法により得られた樹脂成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−55651号公報
【特許文献2】特開2001−151924号公報
【特許文献3】特開2005−271504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したいずれの製造方法においても、発泡前の成形体の高次構造(モルフォロジー)を積極的に制御し、発泡前の成形体の高次構造(モルフォロジー)を反映させる製造方法は開示されていない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、発泡構造の制御が容易な発泡体の製造方法及び発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、発泡させる前の成形体の構造を制御した後に加圧ガスを含浸し、ある特定の温度域で発泡させることにより上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]主成分として、(a)成分及び(b)成分を質量比(a)/(b)=97/3〜60/40の範囲で含有し、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御してなる成形体を得、該成形体中に加圧ガスを含浸させた後、該成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域で、主に(b)成分の領域で発泡させることを特徴とする発泡体の製造方法。
【0010】
[2]前記(a)成分が結晶性樹脂であり、前記(b)成分が非晶性樹脂であり、かつ、前記(a)成分の融点Tmaと前記(b)成分のガラス転移温度Tgbとが下記(1)式を満足することを特徴とする[1]記載の発泡体の製造方法。
Tma>Tgb ・・・(1)
【0011】
[3][1]または[2]に記載の製造方法により得られた発泡体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡体の製造方法は、成形体の高次構造(モルフォロジー)を制御した後に加圧ガスを用いて発泡させる。このため、発泡体の多孔構造、発泡倍率等を容易に制御することができる。また得られた発泡体は、軽量高強度、光学的性質、断熱性、低誘電性、ガス透過性、イオン透過性を要求される分野に有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた成形体1のモルフォロジー観察像(倍率5000倍)である。
【図2】実施例1で得られた成形体1の弾性率の温度依存性である。
【図3】実施例1で得られた発泡体1の観察像(倍率3000倍)である。
【図4】実施例1で得られた発泡体2の観察像(倍率3000倍)である。
【図5】実施例1で得られた発泡体2にエッチング処理を施した発泡体の観察像(倍率6000倍)である。
【図6】実施例2で得られた成形体2のモルフォロジー観察像(倍率10000倍)である。
【図7】実施例2で得られた成形体2、(a)成分及び(b)成分の弾性率の温度依存性である。
【図8】実施例2で得られた発泡体3の観察像(倍率3000倍)である。
【図9】実施例3で得られた成形体3のモルフォロジー観察像(倍率2500倍)である。
【図10】実施例3で得られた成形体3、(a)成分及び(b)成分の弾性率の温度依存性である。
【図11】実施例3で得られた発泡体4の観察像(倍率3000倍)である。
【図12】比較例2で得られた成形体の弾性率の温度依存性である。
【図13】実施例4で得られた成形体4の弾性率の温度依存性である。
【図14】実施例4で得られた発泡体5の観察像(倍率3000倍)である。
【図15】実施例5で得られた成形体5のモルフォロジー観察像(倍率2500倍)である。
【図16】実施例5で得られた成形体5の弾性率の温度依存性である。
【図17】実施例5で得られた成形体6のモルフォロジー観察像(倍率2500倍)である。
【図18】実施例5で得られた発泡体6の観察像(倍率3000倍)である。
【図19】実施例5で得られた発泡体7の観察像(倍率3000倍)である。
【図20】比較例3、実施例6の成形体7のモルフォロジー観察像(倍率5000倍)である。
【図21】比較例3、実施例6の成形体7の弾性率の温度依存性である。
【図22】実施例6で得られた発泡体8の観察像(倍率3000倍)である。
【図23】実施例6で得られた発泡体9の観察像(倍率3000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
なお、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特定する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。また、本発明における主成分とは、最も多量に含有されている成分のことであり、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含有する成分のことである。
【0015】
また、本発明においては、特に断りのない限り、発泡前の状態は成形体、発泡後の状態は発泡体と称して両者を区別している。
【0016】
本発明の発泡体の製造方法は、主成分として、(a)成分及び(b)成分を質量比(a)/(b)=97/3〜60/40の範囲で含有し、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御してなる成形体を得る工程と、該成形体中に加圧ガスを含浸させる工程と、加圧ガスを含有した該成形体を、該成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域で発泡させる工程とを具備する。
【0017】
本発明の発泡体の製造方法の最初の工程として、主成分として、(a)成分及び(b)成分を質量比(a)/(b)=97/3〜60/40の範囲で含有し、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御してなる成形体を得ることが重要である。
【0018】
また、本発明における(a)成分及び(b)成分は、上記要件を満足すれば特に制限なく使用することができる。本発明に於いて使用する(a)成分及び(b)成分としては、(a)成分と(b)成分との共重合体や、(a)成分と(b)成分とのブレンド又はアロイなどが挙げられる。これらは1種のみを単独で、または2種以上を混合して用いても構わない。
【0019】
(a)成分と(b)成分との共重合体としては、(a)成分と(b)成分との交互相互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等がある。本発明に好適な共重合の形態としては、(a)成分と(b)成分により構成される高次構造(モルフォロジー)が良好な相分離構造を有する点からブロック共重合体、グラフト共重合体、及びブロック性の高いランダム共重合体である。
本発明で用いられる共重合体としては、例えばプロピレンとエチレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体の他、スチレンとイソブチレン、ブタジエン、イソブテンとの共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレンとメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、フッ化ビニルとの共重合体、プロピレンとメチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレートとの共重合体、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体、ジメチルシロキサン−イソブテン共重合体、プロピレンオキシド−ポリブタジエン共重合体、ポリスルホン−ポリジメチルシロキサン共重合体などを用いることができる。
【0020】
上記共重合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が適用できる。
【0021】
(a)成分と(b)成分とのブレンド又はアロイとしては、(a)成分と(b)成分からなり、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御できるものであれば、特に制限無く使用することができる。成形体の(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御することにより、緻密で微細な発泡構造を有する発泡体が得られる。
【0022】
(a)成分と(b)成分とのブレンド又はアロイとしては、例えば、(a)成分、(b)成分ともに結晶性熱可塑性樹脂の組み合わせ、(a)成分が結晶性熱可塑性樹脂であり、(b)成分が非晶性熱可塑性樹脂の組み合わせ、(a)成分が非晶性熱可塑性樹脂であり、(b)成分が結晶性熱可塑性樹脂の組み合わせ、(a)成分、(b)成分ともに非晶性熱可塑性樹脂の組み合わせが挙げられる。ここでいう非晶性熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化し、冷却すると固化する特徴を有する熱可塑性樹脂のうち、結晶状態となりえないか、結晶化しても結晶融解熱量が10J/g以下となる結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂を示す。
【0023】
結晶性熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの共重合体などが挙げられる。
【0024】
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−メチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、シクロオレフィン、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリビニルアセテート、ポリフェニレンエーテル、液晶熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0025】
(a)成分と(b)成分の質量比は(a)/(b)=97/3〜60/40の範囲であることが重要である。本発明における(a)成分は、主に発泡体の多孔構造を安定化させるための支持体の役割を果たし、(b)成分は、主に加圧ガスを含浸させて発泡する際の開始点となり、発泡領域を形成させるための役割を果たす。この観点から(a)成分がマトリックスを形成し、(b)成分がドメインを形成する高次構造(モルフォロジー)となることが好ましい。更に(a)/(b)=95/5〜70/30の範囲が好ましく、特には90/10〜75/25の範囲が好ましい。
【0026】
(a)成分と(b)成分から構成される構造には、「球構造」、「シリンダー構造」、「ラメラ構造」等が挙げられるが、本発明においては、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御できるものであればいずれの構造であっても良い。尚、本発明における平均サイズとは、「球構造」の場合には平均粒径、「シリンダー構造」の場合には短径方向の平均粒径、「ラメラ構造」の場合にはラメラ厚みの平均値を指す。本発明における最も好ましい(b)成分の構造は「球構造」である。(b)成分を「球構造」とすることで独立性の高い発泡構造を有する発泡体を得ることができる。
【0027】
本発明においては、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御することにより、緻密で微細な発泡構造を有する発泡体が得られる。本発明における(b)成分は加圧ガスを含浸させ発泡する際の開始点となり、発泡領域を形成させるための役割を主に果たすため、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御することによって、発泡倍率の兼ね合いで発泡体の気泡径を制御できる。例えば発泡倍率が1.5倍程度であれば、発泡体の平均気泡径は7.5μm、発泡倍率が2倍程度であれば、発泡体の平均気泡径は10μm程度とすることが可能となると考えられる。
【0028】
次に、成形体の製造方法について説明する。前記成形体の製造方法としては公知の方法、例えば射出成形、異型押出、プレス成形、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法、インフレーション法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、成形体の製膜性や安定生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好ましい。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね各成分の流動開始温度、好ましくは各成分の流動開始温度+20℃以上の範囲が好適である。また、シート製膜時の冷却方法は特に限定されるものではないが、製膜したシートの結晶化度が多孔構造分布に影響を及ぼすため、出来る限り急冷することが好ましく、Tダイを用いる押出キャスト法でのキャスト温度は、各成分のガラス転移温度±10℃の範囲が好適である。
【0029】
また(a)成分と(b)成分からなる成形体の厚みは50μm以上が好適である。(a)成分と(b)成分からなる成形体の厚みが50μm以上であれば、加圧ガスを含有させた成形体を加熱させる工程時において、含浸した加圧ガスが成形体表面から拡散してしまうことがなく、良好な多孔構造が発現でき生産性も良好である。また成形体の厚みは、成形体の形状にもよるが10mm以下が好適である。成形体の厚みが10mm以下であれば、加圧ガスを含有させる際の保持時間が過剰となることがなく生産コストの面で有利である。尚、成形体がシート形状の場合には、成形体の厚みは500μm以下が良い。
【0030】
次の工程として、得られた成形体に加圧ガスを含浸させる。この工程で言う含浸とは、例えば、成形体中に加圧ガスが溶解したのと同様の状態をいう。含浸条件は、成形体を構成する成分によるが、加圧ガスが含浸できる条件であれば良く、特に制限は無い。成形体に加圧ガスを含浸させる具体的な方法は公知の方法に従って良い。例えば、成形体をオートクレーブ等の耐圧容器に入れ、成形体と、気体状または液体状のガスとを封入する。次いで耐圧容器内の圧力を高めるバッチ式に処理する方法や、樹脂成形体を加圧ガスの処理帯内に導入して連続的に処理する方法などを採用できる。
【0031】
本発明に使用できる加圧ガスは、以下のものに限定されるものではないが、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、亜酸化窒素、エチレン、エタン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロエタン、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1−ジフルオロエチレン、トリフルオロアミドオキシド、シス−ジフルオロジアミン、トランス−ジフルオロジアミン、塩化二フッ化窒素、三重水素化リン、四フッ化二窒素、オゾン、ホスフィン、ニトロシルフルオライド、三フッ化窒素、塩化重水素、キセノン、六フッ化硫黄、フルオロメタン、ペンタフルオロエタン、1,1−ジフルオロエテン、ジボラン、水、テトラフルオロヒドラジン、シラン、四フッ化ケイ素、四水素化ゲルマニウム、三フッ化ホウ素、フッ化カルボニル、クロロトリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン及びフッ化ビニル等が挙げられる。
【0032】
なかでも好ましい加圧ガスとしては、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、エチレン、エタン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロエタン、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタン及び1,1−ジフルオロエチレンが挙げられる。
【0033】
このうち不活性ガスである二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンは非可燃性であり好ましい。更に無毒性、安価、ほとんどの樹脂組成物に対して非反応であるという点から二酸化炭素や窒素が更に好ましく、中でも樹脂組成物への溶解度が比較的高い二酸化炭素が特に好ましい。
【0034】
加圧ガスを含浸させる時間は、(a)成分と(b)成分の組成、及び/又は混合割合や成形体の厚みなどにより異なるので一概には言えないが、5分以上であることが好ましく、より好ましくは30分以上である。5分未満であると、成形体への加圧ガスの拡散の関係で成形体の中心部までに十分含浸させることができない場合がある。上限値は、加圧ガスの含浸温度、及び/または含有圧力に影響されるが、生産効率の観点から48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
【0035】
次の工程として、加圧ガス中から成形体を開放させて、加圧ガスを含浸した成形体を発泡化させる。本工程では、成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域で発泡させることが重要である。ここでいう成形体の弾性率とは、加圧ガスを含浸させる前の成形体のJIS K−7198 A法の動的粘弾性測定により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した貯蔵弾性率をさす。上記成形体の弾性率がかかる範囲となる温度域で発泡させることで、発泡化させる前の(a)成分と(b)成分の高次構造(モルフォロジー)を反映した緻密で微細な多孔構造を有する発泡体を得ることができる。(a)成分と(b)成分の高次構造(モルフォロジー)を反映させる特に好ましい条件は、成形体の弾性率が2.0×10Pa〜1.0×10Paとなる温度域である。
【0036】
更に、(a)成分及び(b)成分の発泡温度域における弾性率の値は、(a)成分の方が(b)成分よりも高いことが好ましい。前記したように本発明における(a)成分は発泡体の多孔構造を安定化させるための支持体の役割を、(b)成分は加圧ガスを含浸させ発泡する際の開始点となり、発泡領域を形成させるための役割を主に果たす。発泡温度域における(a)成分と(b)成分の弾性率の関係が、(a)成分の方が高ければ、発泡時に主に(b)成分が発泡するため好ましい。またその比が10倍以上であることが更に好ましく、特に好ましくは50倍以上である。
【0037】
次に、本発明において、特に好ましい成形体は、(a)成分が結晶性樹脂であり、(b)成分が非晶性樹脂であるブレンド又はアロイであり、かつ(a)成分の融点Tmaと(b)成分のガラス転移温度Tgbが下記(1)式を満足する成形体である。
Tma>Tgb ・・・(1)
【0038】
一般的に、非晶性樹脂のガラス転移に伴う弾性率の変化は約100倍程度であり、結晶性樹脂のガラス転移に伴う弾性率の変化は約10倍以下であり、結晶融解温度前後での弾性率変化は約100倍以上である。
ここで、(a)成分が結晶性樹脂であり、(b)成分が非晶性樹脂であるブレンド又はアロイであり、(a)成分の融点Tmaと(b)成分のガラス転移温度Tgbが、Tma>Tgbとなる場合であって、かつ、(a)成分が結晶化した成形体であれば、発泡させる温度域で(a)成分は(b)成分と比較し弾性率が高く、多孔構造を形成させるための支持体となり、(b)成分は(a)成分と比較し弾性率が低くなるため、主に(b)成分を発泡させることができる。また、(b)成分のガラス転移温度Tgbから(a)成分の結晶融解温度Tmaまでの温度範囲における弾性率の調整が可能となるため、好適な弾性率域の温度範囲が広くすることができるため好ましい。(a)成分の融点Tmaは40℃〜200℃の範囲が良く、(b)成分のガラス転移温度Tgbは−100℃〜200℃の範囲が良い。また、(a)成分の融点Tmaと(b)成分のガラス転移温度Tgbの差(Tma−Tgb)は、10℃以上あることが好ましく、30℃以上がさらに好ましく、50℃以上が特に好ましい。なお、上限としては一般的には200℃以下である。
一方、(a)成分が結晶化してない場合には、(b)成分のガラス転移温度Tgb以上であって、(a)成分の弾性率が(b)成分の弾性率より高くなる温度域で発泡させ、その後結晶化させることによって、発泡温度が低く、耐熱性を有する発泡体を得ることが可能となる。
【0039】
発泡化させる方法としては、発泡化させる温度が上記範囲を満足していれば、特に制限は無く、加圧ガスから成形体を開放する際の減圧化で発泡させることにより非平衡状態を作り出し、含有したガスを気化させることにより発泡化させる急減圧法、及び/又は加圧ガスから成形体を開放し、非加圧下において加圧ガスを含有した成形体を加熱することにより非平衡状態を作り出し、含浸したガスを気化させることにより発泡化させる加熱法のいずれの方法でも良い。
【0040】
急減圧法を用いる場合は、再加熱させる工程がなく、再加熱させるための設備が不要となるため生産コスト面や生産工程面で好ましい。しかし、加圧ガス中から開放させる際の減圧に伴う、加圧ガスの断熱膨張により、雰囲気の温度が急激に下がるため、上記の成形体の弾性率が5.0×10Pa以上となる温度域の制御が困難となる場合があり、減圧速度の調整が必要となる。
【0041】
また加熱法を用いる場合は、加圧ガス中から取り出し、非加圧下において再加熱により発泡させるため、成形体の弾性率が5.0×10Pa以上となる温度域の制御が容易である点で好ましい。加熱法では加熱するまでの時間が変わると、含浸させたガスが成形体表面から雰囲気に拡散してしまうため得られる発泡体の発泡セル径、発泡倍率が変わる場合がある。加圧ガス中から取り出し加熱するまでの時間は、(a)成分と(b)成分のガラス転移温度、及び/又は(a)成分と(b)成分の混合割合や成形体の厚みなどにより異なるので一概には言えないが、12時間以内であることが好ましく、更に好ましくは1時間以内である。
【0042】
加熱法を用いる場合の加熱手段としては、公知の手段で良く、例えば熱風循環式熱処理炉、オイルバス、溶融塩バスなどが挙げられる。取り扱い性の観点から熱風循環熱処理炉が好ましい。加熱時間は発泡化が完了する時間を設定すれば良く、例えば0.2mm厚み程度の成形体であれば、60秒以内が適当である。
【0043】
前記したように、急減圧法では発泡温度の制御が難しく、加熱法の方が発泡温度の制御の精度が高くなるため、望むべき多孔構造を発現させる観点から、加熱法の方が好ましく採用できる。
【0044】
上記発泡化後、所望の多孔構造に制御するためには冷却することが好ましい。冷却温度は(a)成分と(b)成分のガラス転移温度、及び/又は(a)成分と(b)成分の混合割合や成形体の厚みなどにより異なるので一概には言えないが、室温付近まで急速に冷却するのが好ましい。
【0045】
本発明の成形体は、単層であっても構わないし、また成形体表面に平滑性、耐熱性、耐溶剤性、加圧ガスの拡散性などの特性を付与する目的で、積層構成としても良い。積層構成の場合には、樹脂組成や添加剤の異なる層を適宜組み合わせて構成することができる。また、各層の積層比は用途、目的に応じて適宜調整することができる。
【0046】
上記の積層体を形成する方法としては、共押出法、各層のフィルムを形成した後に、重ね合わせて熱融着する方法、接着剤等で接合する方法等が挙げられる。
【0047】
本発明の成形体には、その性質を損なわない程度に添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合してもよい。またその性質を損なわない程度に他の樹脂組成物を含んでも良い。
【0048】
また、本発明の発泡体には、本発明を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工などを施すことができる。
【0049】
本発明の発泡体は、該発泡体の裏面に金属薄膜層を形成することも可能である。
【0050】
金属薄膜層は、金属を蒸着することにより形成することができ、例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成することができる。蒸着金属材料としては、特に制限されることなく使用することができるが、一般的には、銀、アルミニウム等が好ましい。
【0051】
また、金属薄膜層は、金属の単層品や積層品、あるいは、金属酸化物の単層品や積層品でも、金属の単層品と金属酸化物の単層品との2層構成でもよい。金属薄膜層の厚みは、層を形成する材料や層形成等によっても異なるが、通常は10nm〜300nmの範囲内にあることが好ましい。
【0052】
また、本発明の発泡体を金属板もしくは樹脂板に被覆することもできる。
【0053】
また、成形体の高次構造(モルフォロジー)を制御することにより、その範囲内で適宜に発泡構造を制御できることから、本発明の発泡体は、薬物投与の最適化を目的とした薬物送達システム(DDS)等の医療分野やスカホールド(細胞の足場となる基質)等の再生医療工学分野への利用、液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射材、低誘電率性を要求される材料分野への利用、高強度多孔体、断熱材、緩衝材などの用途に有効に活用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、成形体及び発泡体についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。
【0055】
(1)成形体モルフォロジー観察
成形体に染色前処理(RuO気相染色)を施し、透過電子顕微鏡(日本電子製:JEM−1200EX)を用いて、得られた成形体の断面の中心付近の観察を行った。
【0056】
(2)弾性率の温度依存性
成形体をJIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測(株)製粘弾性スペクトロメーター「DVA−200」を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度=3℃/分で、−100℃〜300℃まで測定した。
【0057】
(3)発泡体多孔構造観察
走査電子顕微鏡(日立製作所製:S−4500)を用いて、得られた発泡体の断面の中心付近の観察を行った。
【0058】
(実施例1)
(a)成分がプロピレン、(b)成分がエチレンからなり、プロピレンとエチレンの質量比がプロピレン/エチレン=74/26となるプロピレン−エチレンブロック共重合体(日本ポリプロ社製「商品名:ZELAS5063」)を、押出設定温度180℃〜200℃に設定したφ25mm同方向ニ軸押出機(L/D=40)に投入して溶融混練し、ダイ温度200℃、ダイ幅300mm、リップギャップ1mmとなるTダイから押出し、キャスト温度30℃の設定でキャスティングし、幅=250mm、厚み=250μmの成形体1を得た。
得られた成形体1の中心付近のモルフォロジー観察像を図1に示す。尚、図1の黒く見える部分が(b)成分であり、(b)成分の平均サイズは1.2μmである。また、得られた成形体1の弾性率の温度依存性を図2に示す。
【0059】
次に得られた成形体1を40℃(図2より成形体の40℃における弾性率は3.5×10Paである)に温調された圧力容器に投入し、炭酸ガス(二酸化炭素)で10MPaに加圧し、成形体1に二酸化炭素を1時間含浸させた。その後、圧力容器のリークバルブを全開放し、減圧速度=0.5MPa/secで容器内の圧力を開放し、容器内からシートを取り出し発泡体1を得た。
【0060】
得られた発泡体1の中心付近の空孔観察像を図3に示す。尚、この発泡体1の発泡倍率は約1.5倍であり、平均気泡径は約1.7μmであった。また、圧力容器の温度を120℃(図2より成形体の120℃における弾性率は7.5×10Paである)とした以外は上記と同様の方法で発泡体2を得た。得られた発泡体2の中心付近の観察像を図4に、得られた発泡体2をRu0気相染色した後にイオンエッチング処理した後の観察像を図5に示す。尚、図5において、エッチング処理がされているのが(a)成分の領域であり、白く見える部分が(b)成分の領域となる。
発泡体2の発泡倍率は約2.1倍であり、平均気泡径は2.5μmであった。発泡体1、2共に、成形体1の(b)成分の平均サイズと発泡倍率に見合った気泡径となっており、成形体1のモルフォロジーを反映した発泡体を得ることができていることが確認できる。また発泡体2は主に(b)成分の領域で発泡構造が形成されていることもわかる。
【0061】
(実施例2)
(a)成分としてポリプロピレン(日本ポリプロ社製「商品名:ノバテックPP FY4」(ガラス転移温度(Tg)=−10℃、融点(Tm)=162℃))75質量部、(b)成分としてスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(JSR社製「商品名:DYNARON9901P(スチレン含有量=51%、Tg=−50℃)」25質量部とをドライブレンドしたものを用い、実施例1と同様の方法で成形体2を得た。
成形体2のモルフォロジー観察像を図6に示す。図6中の白線は500nmの長さを示す。(b)成分がナノオーダーで分散した粒子が凝集したような構造を形成し、凝集している領域の平均サイズが300〜500nmとなるモルフォロジーを有している。また成形体2、(a)成分、及び(b)成分の弾性率の温度依存性を図7に示す。
【0062】
ついで、圧力容器を20℃に温調し、炭酸ガス(二酸化炭素)を20MPaに加圧し、含浸時間を6時間、減圧速度を1MPa/sec、熱風循環式熱処理炉の設定温度を120℃(図7より120℃の成形体の弾性率は1.6×10Paである)に設定した後に1分間投入し、投入後圧空エアーで表面を冷却した以外は実施例1と同様の方法で本発明の発泡体3を得た。
得られた発泡体3の観察像を図8に示す。尚、この発泡体3の発泡倍率は約1.2倍であり、平均気泡径は約0.6μmであった。成形体2の(b)成分の凝集サイズと発泡倍率に見合った気泡径となっており、成形体2のモルフォロジーを反映した発泡体を得ることができていることが確認できる。
【0063】
(比較例1)
実施例2と同じ成形体を40℃に温調された圧力容器に投入し、二酸化炭素で20MPaに加圧し、6時間後に、減圧速度=1MPa/secで容器内の圧力を開放し、容器内から成形体を取り出した。
結果(a)成分と(b)成分を含有しているが、成形体の弾性率が5.0×10Pa以上となる温度域であるため、発泡体は得られず、二酸化炭素を含浸させる前と同じ状態であった。
【0064】
(実施例3)
(a)成分としてポリプロピレン(日本ポリプロ社製「商品名:ノバテックPP FY4」(結晶性樹脂、ガラス転移温度(Tg)=−10℃、融点(Tm)=162℃))75質量部、(b)成分として水添スチレン−ブタジエン共重合体(旭化成ライフ&リビング社製「タフテックH1051」(非晶性樹脂、スチレン含有量=42%、Tg=−50℃))25質量部とをドライブレンドしたものを、実施例1と同様の条件で本発明の成形体3を得た。
成形体3のモルフォロジー観察像を図9に示す。図9中の白線は2μmの長さを示す。成形体3のモルフォロジーは海島構造を有しており、(b)成分の平均サイズが1.1μmである。また成形体3の弾性率の温度依存性を図10に示す。
【0065】
ついで、実施例2と同様の条件(図10より120℃の成形体の弾性率は1.6×10Paである)で発泡体4を得た。得られた発泡体4の観察像を図11に示す。尚、この発泡体4の発泡倍率は約1.5倍であり、平均気泡径は約1.8μmであった。成形体3の(b)成分の平均サイズと発泡倍率に見合った気泡径となっており、成形体3のモルフォロジーを反映した発泡体を得ることができていることが確認できる。
【0066】
(比較例2)
実施例2において、(a)成分のみで成形体を作製し、耐圧容器の温度を120℃にした以外は実施例1と同様の方法で実施した。
得られた成形体の弾性率の温度依存性を図12に示す。結果、成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域であるが、(b)成分を有さないため、得られた成形体は発泡しておらず、二酸化炭素を含浸させる前と同じ状態であった。
【0067】
(実施例4)
(a)成分としてポリ乳酸(NatureWorks社製「商品名:NatureWorks4032D」(結晶性樹脂、Tg=65℃、Tm=165℃))75質量部、(b)成分としてシリコーンアクリル複合ゴム(三菱レイヨン社製「商品名:メタブレンS−2001」(非晶性樹脂、Tg=−42℃))25質量部とし、キャスト温度を55℃とした以外は実施例1と同様の方法で成形体4を得た。
得られた成形体4のモルフォロジーは、海島構造を有し(b)成分のサイズが0.9μmである、弾性率の温度依存性を図13に示す。
【0068】
ついで、圧力容器温度を20℃に温調し、炭酸ガス(二酸化炭素)で20MPa、含浸時間は4時間、熱風循環式熱処理炉の設定温度を70℃(図13より120℃の成形体の弾性率は1.7×10Paである)に設定とした以外は実施例2と同様の方法で本発明の発泡体5を得た。
得られた発泡体5の観察像を図14に示す。尚、この発泡体4の発泡倍率は約1.4倍であり、平均気泡径は約1.3μmであった。ほぼ成形体4の(b)成分の平均サイズの発泡倍率見合いの微細な発泡体を得ることができていることが確認できる。
【0069】
(実施例5)
(a)成分として結晶性樹脂であるポリプロピレン(日本ポリプロピレン製「商品名:ノバテックPP FY4」(ガラス転移温度(Tg)=−10℃、融点(Tm)=162℃))50質量部、(b)成分として結晶性樹脂であるプロピレン−エチレン共重合体(出光石油化学社製「商品名:プライムTPO R110E(Tg=−50℃)」)50質量部とをドライブレンドしたものを、実施例1と同様の条件で成形体5を得た。
【0070】
成形体5のモルフォロジー観察像を図15(図15中の白線は2μmの長さを示す。)、弾性率の温度依存性を図16に示す。また成形体5を230℃で10分間プレス成形し、厚さ3mmのプレート状の成形体6を得た。成形体6のモルフォロジー観察像を図17に示す(図17中の白線は2μmの長さを示す。)。
【0071】
成形体5については、圧力容器温度を40℃(図16より40℃の成形体の弾性率は3.4×10Paである)、含浸圧力を10MPa、含浸時間を1時間として、減圧速度を1MPa/secで発泡させ発泡体6を得た。
得られた発泡体6の観察像を図18に示す。成形体6については、圧力容器温度を40℃(図16より40℃の成形体の弾性率は3.4×10Paである)、含浸圧力を20MPa、含浸時間を8時間として成形体に炭酸ガス(二酸化炭素)を含有させ、減圧速度を1MPa/secで発泡させ、発泡体7を得た。
得られた発泡体7の観察像を図19に示す。成形体の(b)成分の分散構造が変化すると、発泡構造も変化しており、(b)成分のモルフォロジーを反映した発泡構造となることが確認できる。
【0072】
(比較例3)
(a)成分がプロピレン、(b)成分がエチレンからなり、プロピレンとエチレンの質量比がプロピレン/エチレン=90/10となるプロピレン−エチレンランダム共重合体(三菱化学製「ZELAS7053」)を用いた以外は実施例1と同様の方法で成形体7を得た。
得られた成形体7のモルフォロジーを図20に、弾性率の温度依存性を図21に示す。
【0073】
次に得られた成形体7を20℃(図21より20℃の成形体の弾性率は5.2×10Paである)に温調した圧力容器に投入し、含浸圧力を10MPa、含浸時間を1時間として成形体に炭酸ガス(二酸化炭素)を含有させ、急減圧により発泡させ発泡体8を得た。
得られた発泡体8の観察像を図22に示す。得られた発泡体8には空孔は認められるものの数が少ない。
【0074】
(実施例6)
比較例3で得られ成形体7を用い、40℃に温調した圧力容器に投入し、含浸圧力を20MPa、含浸時間を6時間として成形体に炭酸ガス(二酸化炭素)を含有させた後、圧力容器のリークバルブを全開放し、減圧速度=1MPa/secで容器内の圧力を開放し、容器内から成形体を取り出し、ガスが含浸した成形体を120℃に設定した熱風循環式熱処理炉内に1分間投入し、投入後圧空エアーで表面を冷却し本発明の発泡体9を得た。
得られた発泡体9の観察像を図23に示す。比較例3と比べ緻密で微細な発泡体となり、成形体のモルフォロジーを反映した緻密で微細な発泡体を得ることができていることが確認できる。
【0075】
実施例1〜6の本発明の製造方法によって得られた発泡体は、成形体のモルフォロジーを反映した微細で緻密な多孔構造を有していることがわかる。具体的にはドメインが小さい場合には得られる発泡体の空孔径も小さくなり、成形体中の(b)成分の平均サイズと発泡倍率に見合った空孔が形成していることが確認できる。これに対して、(a)成分と(b)成分を含有しているが、成形体の弾性率が5.0×10Paを越える温度域で発泡させた場合(比較例1、及び3)には、発泡体を得ることできない場合や、空孔は認められるものの数が少ない発泡体となっていることが確認できる。また、成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域であるが、(b)成分を有さない場合(比較例2)でも、発泡体を得ることができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分として(a)成分及び(b)成分を含有し、かつ、(b)成分の平均サイズを5μm以下に制御してなる成形体を得、該成形体中に加圧ガスを含浸させた後、該成形体の弾性率が5.0×10Pa以下となる温度域で、主に(b)成分の領域で発泡させてなり、厚みが50μm以上、かつ500μm以下のシート形状の発泡体。
【請求項2】
前記(a)成分が結晶性樹脂であり、前記(b)成分が非晶性樹脂であり、かつ、前記(a)成分の融点Tmaと前記(b)成分のガラス転移温度Tgbとが下記(1)式を満足することを特徴とする請求項1記載の発泡体。
Tma>Tgb ・・・(1)
【請求項3】
表面にさらに、金属薄膜層を備えた請求項1又は2に発泡体。



【図2】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図21】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−140630(P2012−140630A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51104(P2012−51104)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【分割の表示】特願2007−149131(P2007−149131)の分割
【原出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】