説明

発泡体の製造方法

【課題】 気泡径10μm以下、さらには0.005〜1μmの微細気泡発泡体において、所望の厚さ、形状、及び発泡構造を有する微細気泡発泡体の発泡構造制御および形状制御を容易に、安定して得られるようにする。それにより力学強度の低下を抑制、成型加工品のヒケ・ソリの低減、及び寸法安定性の向上などが得られる。
【解決手段】 活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、次いで、前記低沸点揮発物質が分解脱離する温度領域において圧力制御下で発泡させる発泡工程とを含む発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した複数の気泡および/または連続している複数の気泡を形成させた発泡体およびその製造方法に関するもので、とくに気泡径10μm以下、さらには0.005〜1μmの微細気泡発泡体において、所望の厚さ、形状、及び発泡構造を有する微細気泡発泡体の製造方法に関するものである。また本発明の製造方法により得られる発泡体は、従来にはない高機能性微細気泡発泡体、すなわち発泡体の力学強度の低下を抑制する効果、射出成形等の成型加工品のヒケ・ソリの低減効果、及び寸法安定性の向上効果に加えて、発泡体の断熱性、低誘電率性、光散乱性、光反射性、隠蔽性、白色性、不透明性、波長選択的反射および透過性、軽量性、浮揚性、遮音性、吸音性、緩衝性、クッション性、吸収性、吸着性、貯蔵性、透過性、濾過性などの特性を自在に制御された素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
慣用の発泡体は、ウレタンフォームや発泡スチロール、発泡ポリエチレンのような有機物材料からなるものが多いが、その他に多孔質セラミックや多孔質ガラスなどの無機材料からなるものも報告されている。有機材料からなる発泡体には、高分子材料をベースとした発泡プラスチックが多く、高分子材料の発泡時点では液状であり、かつ適度な粘性を有するという特性を活用したものが多い(非特許文献1または非特許文献2)。
種々の方法により製造した発泡体の特性として、断熱機能、緩衝およびクッション機能、軽量および浮揚機能、吸振動機能などが挙げられる。これらの有用な特性は、冷蔵庫や建築材料、食品用トレイ、サーマル記録紙、包装材料、サーフボード、音響機器など、幅広い分野で利用されている。さらに発泡体が連続気泡を有する場合は、表面積が著しく増加するため、ガス材料又は液体材料に対して、吸着機能および貯蔵機能、担体機能および触媒機能、並びに透過機能およびろ過機能などが発現し、家庭用スポンジや医療用分離膜などに利用されている。
【0003】
発泡体プラスチックの代表的な製造方法には、高分子材料中に発泡剤を混入する方法が大半を占めているが、延伸処理により発生する内部剥離を利用する方法(特許文献1)、高分子材料の架橋密度差から発生する相分離を利用する方法(特許文献2)なども用いられている。発泡剤を混入する方法に関しては、非常に多くの報告がなされており、大別すると化学的発泡剤と物理的発泡剤に分類される。
【0004】
化学的発泡剤には、熱分解型と光分解型がある。熱分解型発泡剤は、熱分解して一種類以上の気体、例えば窒素や二酸化炭素などを放出する。アゾジカルボンアミドやアゾビスイソブチロニトリルなどに代表されるアゾ系化合物、p,p'−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどに代表されるスルホニルヒドラジド系化合物などの有機化合物および重炭酸ナトリウムなどの無機化合物が知られている。熱分解型発泡剤を用いた発泡法は、発泡剤の分解温度以下の温度領域で軟化させた高分子に混練又は溶解した後に、発泡剤の分解温度以上の温度領域に加熱するもので、広く実用化されている。必要に応じて発泡助剤、架橋剤、安定剤なども併用される。光分解型発泡剤は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線により分解して例えば窒素等のガスを放出する。p−アジドベンズアルデヒドなどのアジド基を有する化合物およびp−ジアゾジフェニルアミンなどのジアゾ基を持つ化合物などがあげられる。光分解発泡剤を利用した発泡法は、エネルギー線照射で発泡、または照射後に加熱して発泡させるものである。また一般に高分子重合過程で気体を発生する有機化合物も化学的発泡剤に包含され、その代表的な材料にはポリウレタンなどがあげられる。ポリウレタンは、ポリオール(アルコール性水酸基である−OH基を2個以上持つオリゴマー)とポリイソシアネート(分子中にイソシアネート基である−NCO基を2個以上持つもの)との重合物であり、重合反応過程でCO2ガスが発生して発泡体を形成する。
【0005】
物理的発泡剤としては、低沸点揮発性物質、例えばブタンやペンタンなどに代表される揮発性飽和炭化水素系物質、並びにフルオロエタンなどに代表される揮発性フッ化炭化水素系物質などが挙げられる。物理的発泡剤としては、常温では液体であるが、50〜100℃で揮発して気体になる低沸点揮発性物質が多く用いられており、これらをその沸点以下の温度において高分子材料中に含浸し、これを、物理的発泡剤の沸点以上に加熱することにより発泡体を形成することができる。また、常温常圧で気体状態である不活性ガス、例えば二酸化炭素及び窒素などを、物理的発泡剤として利用することもできる。この場合、気体状態にある不活性ガスを、適度な圧力・温度に制御された溶融状態の高分子材料中に溶解させた後、この混合系を常温・常圧状態に開放させることによって、液相物質が急激に気相化し、膨張して発泡体が得られる。他の発泡剤として、熱可塑性高分子材料を外殻として、その中に低沸点揮発性物質を封止して製造されたカプセル状発泡剤も知られている。
【0006】
近年、気泡径が0.1〜10μmで、気泡密度が109〜1015個/cm3であることを特徴とする微細気泡を含有する発泡体、すなわちマイクロセルラープラスチック(MCP)と呼ばれる材料がマサチューセッツ工科大学のN.P.Suhらにより提案された(特許文献3)。従来にない構造をもつ新たな発泡体として注目され、さまざまな機関でMCPの研究が盛んに行われている。微細発泡化により、発泡による力学強度の低下を抑制する効果や、射出成形等の成型加工品のヒケ・ソリの低減効果、寸法安定性の向上が図れるといわれている。
【0007】
このマイクロセルラープラスチックの製造法すなわちMCP発泡法は、物理発泡剤として二酸化炭素や窒素などの不活性ガスを、高圧下もしくは超臨界状態下においてプラスチック中に含浸飽和させた後、減圧および加熱することによって得られる。気泡の微細化は樹脂中に溶解した不活性ガスの過飽和度を高くすることにより達成されるため、このMCP発泡法では、ガス含浸時に高圧含浸で高い飽和含浸量を得て、発泡時にその圧力を開放して高い過飽和度を得る。一般にガスの溶解度は低温ほど高いため、気泡径10μm以下の微細発泡化には常温高圧含浸が可能なバッチ法が用いられる。バッチ法では飽和に達するまでに長いガス含浸時間を要するという問題点がある。例えば、ポリエチレンテレフタレート中に二酸化炭素を含浸飽和させるには、数日間を要するという報告があり、製造効率の悪さが問題となっている。不活性ガスの含浸時間を短くするため、含浸しやすい材料を用いれば一見解決できるように見える。しかし、含浸しやすいという性質の裏返しに、一度含浸したガスが抜けやすい性質をもつ。したがって、短い含浸時間を達成できたとしても、プラスチックに高圧状態で含浸されたガスの一部分が、減圧工程で発泡前にプラスチック表面から多量に放散するガス抜け現象が起こるため、発泡に有効な高い過飽和度を得ることが難しくなり気泡微細化が難しくなる。バッチ法では、気泡微細化と製造効率の悪さのと間に基本原理上のジレンマを抱えている。MCP発泡法には製造効率の高い射出法や押出法もある。シリンダー内で溶融状態の樹脂に超臨界状態の不活性ガスを導入して混練、溶解させるのでバッチ法と比較して、ガス含浸時間は短く、また連続製法のため製造効率が良い。しかし、発泡工程で高い過飽和状態を維持するのが難しく、気泡径を数十ミクロンオーダー以下にするのが困難といわれている。高温含浸のため含浸できる不活性ガス量が少なくなること、溶融高温状態を経て発泡するためにガス抜けが生じやすい,粘性が低く気泡が成長しやすいなどが原因と考えられる。以上のことから、MCP発泡法では厚さ100μm以下および気泡径1μm以下の発泡体を実用的に得ることが難しい。
【0008】
本発明者らは最近、微細気泡発泡体である気泡径1μm以下のスーパーマイクロセルラープラスチック(SMCP)を容易に得られること、厚さ100μm以下の薄物発泡体を作成できることを特徴とした、光酸・塩基分解発泡法について発明した(特許文献4)。この発泡法では活性エネルギー線と熱により発泡する発泡性組成物が用いられる。発泡性組成物は、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する分解発泡性化合物を含有する。
【0009】
光酸・塩基分解発泡法において、発泡性組成物の設計若しくは活性エネルギー線の照射条件及び加熱条件の制御を行うことで所望の発泡構造をもつ発泡体を自在に得ることが一見容易にできるように見える。しかし、常圧で発泡した場合、発泡性組成物の種類によっては気泡径1μm以下かつ厚さ100μm以下の薄物SMCPを得ることが難しい場合や、並びに発泡による変形が大きくなりすぎてしまい所望の発泡形状を維持することが困難になる場合があった。また気泡径1μm以下かつ厚さ100μm以上の厚物のSMCPを作成することが困難であり、基材及び基板上への発泡体の形成、二層以上の多層積層構造を持つ発泡体の形成、並びにシート状、フィルム状、ファイバー状、及びロッド状等比較的単純な構造でない複雑形状の発泡体の形成が難しい場合もあった。
【特許文献1】特開平11−174213号公報
【特許文献2】特開平10−504582号公報
【特許文献3】米国特許4473665号公報
【特許文献4】特開2004−2812号公報
【特許文献5】特開平8−248561号公報
【特許文献6】特開2000−330270号公報
【特許文献7】特開平8−17257号公報
【特許文献8】特開平9−102230号公報
【非特許文献1】「発泡体・多孔質体技術と用途展開(発行:東レリサーチセンター、1996年)」
【非特許文献2】「樹脂の発泡成形技術(技術情報協会発行、2001年)」
【非特許文献3】K.Ichimura et al.,Chemistry Letters,551−552(1995)
【非特許文献4】http://www.kuranami.co.jp/toku_guide01.htm(株式会社クラナミの公式ホームページ内)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、光酸・塩基分解発泡法において、微細気泡発泡体の発泡制御および形状制御を容易にすることである。とくに、気泡径10μm以下、さらには0.005〜1μmの微細気泡発泡体において、所望の厚さ、形状、及び発泡構造を有する微細気泡発泡体の発泡構造制御および形状制御を容易に、安定して得られるようにすることである。またそれにより得られた従来にはない高機能性微細気泡発泡体により、力学強度の低下を抑制する効果、射出成形等の成型加工品のヒケ・ソリの低減効果、及び寸法安定性の向上効果に加えて、発泡体の光反射・散乱・透過特性、誘電特性、及び断熱特性などを自在に制御させた素材を生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(7)の構成を採用する。
(1) 活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、次いで、前記低沸点揮発物質が分解脱離する温度領域において圧力制御下で発泡させる発泡工程とを含む発泡体の製造方法。
(2) 発泡工程と同時またはその前の任意の時点で、発泡性組成物を成形する成形工程を有することを特徴とする上記(1)に記載の発泡体の製造方法。
(3) 照射工程の前に成形工程を有する上記(2)に記載の発泡体の製造方法。
(4) 照射工程と発泡工程の間に成形工程を有する上記(2)に記載の発泡体の製造方法。
(5) 発泡工程と成形工程が同時であることを特徴とする上記(2)に記載の発泡体の製造方法。
(6) 活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に、前記低沸点揮発物質が分解脱離する温度領域において活性エネルギー線を照射し、同時に圧力制御下で発泡させる発泡工程を有することを特徴とする発泡体の製造方法。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかの発明において、発泡工程の後に圧力制御しながら冷却する工程を有することを特徴とする発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光酸・塩基分解発泡法において、微細気泡発泡体の発泡制御および形状制御を容易にすることができる。とくに、気泡径10μm以下、さらには0.005〜1μmの微細気泡発泡体において、所望の厚さ、形状及び発泡構造を有する微細気泡発泡体の発泡構造制御及び形状制御を容易に、安定的に達成できる。またそれにより得られた従来にはない高機能性微細気泡発泡体により、力学強度の低下を抑制する効果、射出成形等の成型加工品のヒケ・ソリの低減効果、及び寸法安定性の向上効果に加えて、発泡体の光反射散乱特性、誘電特性、及び断熱特性などを自在に制御させた素材を生み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の製造方法は、発泡組成物に活性エネルギー線を照射する工程と、発泡性組成物から低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域で圧力制御して発泡させる工程とを含む。低沸点揮発物質が分解脱離して発泡する際に圧力を制御することにより、発泡体の発泡構造制御及び形状制御を容易にすることが可能になる。
本発明において、活性エネルギー線照射工程と圧力制御下で発泡させる工程の関係として、照射工程の後に発泡工程が来る場合と、発泡工程において同時に照射する場合がある。
所望の厚さ、形状及び発泡構造を有する微細気泡発泡体を安定的に得るために、本発明の製造方法では成形工程を含めることができる。成形工程は予備成形工程と発泡体成形工程に分類できる。予備成形工程とは、活性エネルギー線を照射する工程の前後に設けた成形工程、および照射中に成形する工程で、発泡前の樹脂である発泡性組成物を成形する工程である。発泡体成形工程とは、低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域で圧力制御して発泡させながら成形する工程、または発泡後に発泡した樹脂を成形する工程である。
【0014】
発泡工程では、発泡性組成物にかかる温度が高いほど、低沸点揮発物質が分解脱離する反応速度が高いので気泡が微細化しやすくなる。ところが発泡後の発泡体樹脂のガラス転移温度が低いとき、発泡工程の後に高温状態のまま圧力を開放すると、気泡が成長及び合一して気泡径が一気に大きくなり微細気泡を維持できない場合や、発泡による変形倍率が大きくなるため所望の形状の発泡体を得られなくなる場合がある。このような場合、圧力制御発泡工程の後に圧力を制御しながら冷却する工程を含めることがより好ましい。冷却方法としてはプレス機の加圧加熱部位及び成形型に、冷却水を流せる構造を作り水冷によって冷却する方法、ペルチェ素子を用いて電気的に強制冷却する方法、およびベルト状になっている2枚のシートに挟み込んでベルトテンション等でサンプルに加圧される圧力制御したままベルトごと空冷、水冷等で冷却する方法などが挙げられる。
【0015】
本発明の発泡体の製造方法における工程はこれらに限定されるものではなく、これら以外にもさまざまな工程を適宜の所望の部分で付加できる。例えば延伸工程、洗浄工程、乾燥工程及び緩和工程などの工程を適宜導入してもかまわない。本発明の製造方法はこれらの工程の組合せにより成り、各工程を不連続若しくは連続に組み合わせたり、又は少なくとも二つ以上の工程を同時工程とすることもできる。バッチ法でも連続法どちらの方法となってもかまわない。さらに本発明の発泡体の製造方法において、活性エネルギーの強度分布、熱エネルギーの強度分布、発泡組成物の濃度分布などをつけることができるので,気泡径や気泡密度に係る気泡分布の制御が任意可変となり、気泡分布を有する発泡体を得ることもできる。以下に各工程の具体例について説明するが、本発明を限定するものではない。
【0016】
はじめに、発泡性組成物から低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域で圧力制御して発泡させる工程について説明する。微細発泡体を得るのに、好ましい圧力範囲は0.1MPa以上であり、より好ましくは1MPa〜20MPa、最も好ましくは2MPa〜15MPaである。圧力制御法の例としては、図1のように2枚の板を用いて対向する面からのみ加圧して圧力制御する一部対向面圧力制御方法、図2のように型を用いて全面から加圧して圧力制御する全面圧力制御方法などがあげられる。また、図1及び図2のようにギャップ制御機能を持たないで押込力に応じて圧力を可変できるタイプ、図3及び図4などのようにギャップ制御機能を有しているタイプなどがある。全面圧力制御法の場合、閉じた型内に気体、液体、溶融体などの流体を注入して圧力制御する方法、発泡組成物の発泡による発泡体自己膨張力及び発生ガス圧力により圧力制御する方法、型や型内容物の熱膨張力により圧力制御する方法などがあげられる。また、図1の発展形としてベルト状になっている2枚のシートを対向させて加圧する圧力制御法もあげられる。
【0017】
低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域にするためには、加熱器を用いて加熱したり、または前工程で熱がかかる場合、その余熱を利用したりすることができる。発泡性組成物から低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域とは、低沸点揮発性物質が分解脱離する最低温度より高く、さらに低沸点揮発性物質が分解脱離した後の樹脂(すなわち発泡体樹脂)の分解温度若しくは強度などの諸物性を損なわない温度より低い範囲の温度領域をいう。この温度領域は発泡性組成物の種類により変化する。例えば、アクリル系発泡性組成物の場合は分解脱離最低温度は約75〜85℃、発泡体樹脂の分解温度は約180〜200℃であり、スチレン系発泡性組成物の場合は分解脱離最低温度は約65〜80℃、発泡体樹脂の分解温度は約160〜180℃である。発泡時の温度は高い方が低沸点揮発性物質の分解脱離速度が大きくなり過飽和度が上りやすく気泡微細化には一見好ましく思える。しかし、高温になるほど樹脂粘度が低下して気泡が成長及び合一して巨大化しやすくなる。しがたって発泡に適した温度領域が存在する。その領域は発泡性組成物の種類によって異なるが、65〜200℃、好ましくは90〜180℃、さらに好ましくは100〜160℃である。
【0018】
加熱器としては特に制限はないが、誘導加熱、抵抗加熱、誘電加熱(およびマイクロ波加熱)、赤外線加熱により加熱ができるもの等が例示できる。放射熱を利用した電気あるいはガス式の赤外線ドライヤーや、電磁誘導を利用したロールヒーター、油媒を利用したオイルヒーター、電熱ヒーター、およびこれらの熱風を利用した熱風ドライヤーなどが挙げられる。誘電加熱や赤外線加熱の場合,材料内部を直接加熱する内部加熱方式なので,熱風ドライヤーなどの外部加熱法よりも瞬時に均一な加熱を行うことができるが、圧力制御に用いる板や型の材質を適宜選択する必要がある。誘電加熱の場合,周波数1MHzから300MHz(波長30m〜1m)の高周波エネルギーを用いる。6MHz〜40MHzの周波数が用いられることが多い。誘電加熱のうち特にマイクロ波加熱では周波数が300MHzから300GHz(波長が1m〜1mm)のマイクロ波をもちいるが、2450MHz、915MHz(電子レンジと同じ)を使うことが多い。赤外線加熱の場合,赤外領域の波長0.76〜1000μmの電磁波を利用する。ヒータ表面温度および被加熱材料の赤外吸収スペクトルなどから、状況により選択される波長の最適帯は変化するが、好ましくは1.5〜25μm、さらに好ましくは2〜15μmの波長帯を用いることができる。
【0019】
本発明の製造方法では、気泡分布を任意に変化させた発泡体を得るために、熱エネルギーの強度分布が生じるように加熱処理を施すこともできる。熱エネルギーの強度分布は、加熱温度により調整することが好ましい。熱エネルギーの強度分布を作り出す方法としては、対向する面で温度差を設けておく方法、一般の熱記録用プリンターに使用されている加熱方式を応用した方法、すなわち感熱プリンターに用いられるプリントヘッドのような電流を流すことで発熱する微細な発熱体を多数並べた加熱体により加熱部位を制御する方式、レーザープリンターに用いられるレーザ加熱ヘッドのようなレーザ照射により加熱部位を制御する方式などがあげられる。
【0020】
次に、発泡組成物に活性エネルギー線を照射する工程について説明する。本発明で使用する活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、可視光線、γ線等の電離性放射線などが挙げられる。これらの中では電子線および紫外線を用いることが好ましい。
電子線照射を用いる場合は、十分な透過力を得るために、加速電圧が30〜1000kVであり、より好ましくは30〜300kVの電子線加速器を用い、ワンパスの吸収線量を0.5〜20Mradにコントロールすることが好ましい(1rad=0.01Gy)。加速電圧、あるいは電子線照射量が上記範囲より低いと、電子線の透過力が不十分になり、成形体の内部まで十分に透過することができず、またこの範囲より大きすぎると、エネルギー効率が悪化するばかりでなく、得られた成形体の強度が不十分になり、それに含まれる樹脂及び添加剤の分解を生じ、得られる発泡体の品質が不満足なものになることがある。電子線加速器としては、例えば、エレクトロカーテンシステム、スキャンニングタイプ、ダブルスキャンニングタイプ等のいずれを用いてもよい。電子線照射に際しては照射雰囲気の酸素濃度が高いと、酸もしくは塩基の発生、および/または硬化性分解性化合物の硬化が妨げられることがあり、このため照射雰囲気の空気を、窒素、ヘリウム、二酸化炭素等の不活性ガスにより置換することが好ましい。照射雰囲気の酸素濃度は1000ppm以下であることが好ましく、さらに安定的な電子線エネルギーを得るため、500ppm以下に抑制されることがより好ましい。
【0021】
紫外線照射の場合は、半導体・フォトレジスト分野や紫外線硬化分野などで一般的に使用されている紫外線ランプを用いることができる。一般的な紫外線ランプとしては、例えば、ハロゲンランプ、ハロゲンヒーターランプ、キセノンショートアークランプ、キセノンフラッシュランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、ディープUVランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、クリプトンアークランプ、エキシマランプなどがあり、近年では、極短波長(214nmにピーク)を発光するY線ランプもある。これらのランプには、オゾン発生の少ないオゾンレスタイプもある。これらの紫外線は、散乱光であっても、直進性の高い平行光であってもよい。部分発泡を精度よく形成するためには、平行光が好ましい。また、紫外線照射には、ArFエキシマ−レーザー、KrFエキシマ−レーザーや、非線形光学結晶を含む高調波ユニットを介したYAGレーザーなどに挙げられる種々のレーザーや、紫外発光ダイオードを用いることもできる。紫外線ランプやレーザー、紫外発光ダイオードの発光波長は、発泡性組成物の発泡性を妨げないものであれば限定はないが、好ましくは、光酸発生剤または光塩基発生剤が酸または塩基を効率よく発生させられる発光波長がよい。すなわち、使用する光酸発生剤または光塩基発生剤の感光波長領域と重なる発光波長が好ましい。さらには、それら発生剤の感光波長領域における極大吸収波長または最大吸収波長と重なる発光波長がより好ましく、発生効率が高くなりやすい。紫外線のエネルギー照射強度は、発泡性組成物によって適宜決められる。種々の水銀ランプやメタルハライドランプなどに代表される照射強度が高い紫外線ランプを使用する場合は、生産性を高めることができ、その照射強度(ランプ出力)はロングアークランプのときは30W/cm以上が好ましい。紫外線の積算照射光量(J/cm2)は、エネルギー照射強度に照射時間を積算したものであり、発泡組成物および所望の気泡分布によって適宜決められる。酸発生剤や塩基発生剤の吸光係数に応じて設定することもある。安定かつ連続的に製造する上では、1.0mJ/cm2〜20J/cm2の範囲が好ましい。紫外線ランプを使用する場合は、照射強度が高いため、照射時間を短縮することができる。エキシマ−ランプやエキシマ−レーザーを使用する場合は、その照射強度は弱いが、ほぼ単一光に近いため、発光波長が発生剤の感光波長に最適化したものであれば、より高い発生効率および発泡性が可能となる。照射光量を多くした場合、紫外線ランプによっては熱の発生が発泡性を妨げる場合がある。そのときは、コールドミラーなどの冷却処置を行なうことができる。
【0022】
本発明の発泡体の製造方法では、気泡分布を任意に変化させた発泡体を得るために、照射工程において活性エネルギーの強度分布が生じるように活性エネルギー線を照射することができる。例えば、電子線または紫外線の透過深度を利用することで、照射方向にそって活性エネルギーの強度分布を生じさせることができる。電子線または紫外線照射用のフォトマスクの使用により、照射面内に活性エネルギーの強度分布を生じさせることもできる。描画パターンが含まれるフォトマスクを使用した場合は、その描画パターンを転写した活性エネルギー線の強度分布を得ることができる。フォトマスクの描画パターンには、デルタ状、ストライプ状、蜂の巣状、エネルギー透過性が階調になっているものなど様々なものを用途によって適宜設計できる。フォトマスクには、クロムマスクやメタルマスク、銀塩ガラスマスク、銀塩フィルム、スクリーンマスク、ガラスをイオンエッチングしたマスク、及び集光機能を有する平面レンズの干渉縞を電子線描画したマスクなどが利用できる。波長300nm以下の紫外線を照射する場合は、フォトマスクの基材は石英ガラスを使用することが好ましい。本発明で得られた気泡分布を有する発泡体をフォトマスクとして利用しても構わない。フォトマスクを使用した照射方法は、密着照射、投影照射など方式が採用できる。フォトマスクのパターンを精度良く転写させるためには、照射する光が均一平行光であることが好ましい。平行光を照射するための露光システムとしては、例えば、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系、フレネルレンズを利用した光学系、ハニカムボードと拡散板を利用した光学系などが挙げられる(非特許文献4)。高い均一性を得るには、インテグレーターと放物鏡を利用した光学系が一般的に好ましく、この光学系に用いる光源としては、ショートアークランプが好ましい。ショートアークランプには、メタルハライドランプや超高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、ナトリウムランプ、Y線ランプが挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法に含まれる成形工程について説明する。成形工程で用いられる成形法法としては、成形したい形状に応じて、塗工成形、押出成形、射出成形、キャスト成形、プレス成形など選択することができる。成形工程で得られる樹脂形状はとくに限定されず、発泡体の使用目的によって適宜決められる。シート状物(フィルム状を含む)、ファイバー状物、ロッド状物、それ以外の所望の形状を有した物などが挙げられる。シート状物においては、単独のシート状物であっても支持体上に密着したシート層であってもよいし、複数の樹脂の積層構造物であってもよい。
塗工成形の例としては、支持体に塗工ヘッドを用いて発泡性組成物を塗工した後、発泡性組成物が溶剤等で希釈された溶液ならば、乾燥器にて溶剤分を除去し、支持体上に発泡性組成物からなるシート層を得る方法などが挙げられる。このとき、支持体からシート層を剥離することで、発泡性組成物からなる単独のシート状物を得ることもできる。塗工方法には、バーコート法、エアードクターコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法、コンマコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、マルチロールコート法、ディップコート法、ロッドコート法、キスコート法、ゲートロールコート法、落下カーテンコート法、スライドコート法、ファウンテンコート法、およびスリットダイコート法などがあげられる。支持体としては、紙、合成紙、プラスチック樹脂シート、金属シート、金属蒸着シート等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、或は、互いに積層されていてもよい。プラスチック樹脂シートは、例えば、ポリスチレン樹脂シート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シート、並びにポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂シート等の汎用プラスチックシートやポリイミド樹脂シート、ABS樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート等のエンジニアリングプラスチックシートなどが挙げられ、また金属シートを構成する金属としては、アルミニウムおよび銅などが挙げられる。金属蒸着シートとしては、アルミ蒸着シート・金蒸着シート・銀蒸着シートなどが挙げられる。
【0024】
押出成形法としては、スクリュー状の押出軸を用いた一般の押出成形法、ピストン状押出軸を用いたラム押出成形法などがあげられる。
射出成形法の例としては、通常の射出成形方法に加えて、真空充填成形法、射出圧縮成形法、高速真空充填成形法、ガス吸収溶融成形法、型温冷熱サイクル成形法、低圧低速充填成形法、射出プレス成形法、スタックモールド成形法等があげられる。最近の動向である薄肉成形および微細形状の高転写率成形に向けた方法として、断熱金型成形法、射出速度が1000〜2000mm/secという超高速射出成形法、二酸化炭素や窒素などの不活性ガスを超臨界状態で溶融樹脂に溶解させて発泡させずに成形する超臨界流体を利用した射出成形法なども挙げられる。
キャスト成形の例としては、活性エネルギー線硬化型モノマーを含む液状発泡性組成物をプリズムシート状の型にキャストし、活性エネルギー線を照射して硬化して脱型することで、プリズムシート状成形物を得る方法などが挙げられる。活性エネルギー線の光源および波長等の照射条件を適宜選択することにより、樹脂硬化と酸及び塩基発生剤からの酸及び塩基発生を同時に起こすことも可能である。
【0025】
前述した通り成形工程は、発泡前の樹脂である発泡性組成物を成形する予備成形工程と発泡後の発泡樹脂を成形する発泡体成形工程に分けることができる。予備成形工程では、原料である発泡性組成物を発泡体の最終形状もしくはそれに近い形状に直接成形する方法を用いることもできるし、シート状、ロッド状、ペレット状、粉体状など比較的単純な形状に仮成形してから発泡体の最終形状もしくはそれに近い形状に多段階で成形する方法を用いることもできる。どちらの方法でも、前述した成形方法を適宜使うことができる。
【0026】
発泡体成形工程としては、低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域で圧力制御して発泡させながら成形する工程、および発泡工程後に発泡体を成形する工程がある。前者の発泡させながら成形する工程では、前述した成形方法の他、インモールド射出成形法および成形型内で活性エネルギー線照射と温度及び圧力制御を同時に行う方法などもある。
【0027】
インモールド射出成形法を用いた発泡体成形法の例としては、Ag蒸着シート上に塗工成形で形成した50μm発泡性組成物層を形成し、活性エネルギー線で照射したシートを成形型内の所定の位置にセットし、前記発泡性組成物の分解性官能基を有する化合物のみからなる樹脂を前記成形型に射出成形する方法があげられる。得られた発泡体はAg蒸着シート上に薄肉発泡層と未発泡樹脂層を有する光学部材になる。Agシート上の発泡性組成物はシリンダーより射出されてくる溶融樹脂の温度により加熱かつ加圧された状態で発泡する。発泡体成形工程で用いられるインモールド射出成形用の成形型に特に制限はないが、通常用いられるスチール製、アルミニウム合金製及びステンレススチール製などの金型よりも、高断熱性の断熱成形型を用いることが好ましい。断熱成形型としては金型表面に低熱伝導材料を埋設した断熱金型と呼ばれるものがあげられる。埋設される材料はポリイミド、HDPE、ガラス及び石英ガラス、フェノール樹脂、Zrセラミックスなどがあげられる。断熱成形型の使用が好ましい理由を述べる。従来の金型は熱伝導性が高いため溶融樹脂が金型に触れても金型温度が上がりにくく低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域に達しにくいが、断熱性成形型を用いると熱伝導性が低いため金型温度が上がりやすく適切な発泡温度領域に達しやすくなるからである。断熱金型を用いたことによる冷却性能は低下する傾向にあるが、実用上問題になるほどの低下はない。
【0028】
成形型内で活性エネルギー線照射と温度及び圧力制御を同時に行う方法としては、成形型に石英ガラスを用いて成形型周辺から活性エネルギー線を照射、さらに加熱および加圧制御するものである。また射出成形のシリンダーの一部に石英ガラスを取付け、シリンダー外部からシリンダー内の樹脂に活性エネルギー線を照射し、成形型内に射出成形し、発泡と成形を同時に行う方法などもある。
【0029】
発泡工程後に発泡体を成形する工程はこれまでにあげた成形法を適宜用いることができるが、発泡工程後の成形よりも、発泡させながらの成形の方が好ましい。せっかく形成された発泡構造をつぶすことがなく、発泡による内圧で成形型面の転写効率を上げることもできるからである。
成形工程では積層成形することにより少なくとも二層以上の積層構造をもつ発泡体を得ることができる。積層されている各層は発泡層でも未発泡層でもかまわない。気泡分布を任意に変化させた発泡体を得るために積層成形を利用することができる。発泡組成物の濃度分布が変化するように設けた積層成形体に活性エネルギー線を照射して、低沸点揮発性物質が分解脱離する温度領域で圧力制御して発泡させることで作成することができる。発泡組成物の濃度分布を変えた積層成形体には、分解性化合物と光酸発生剤(あるいは塩基発生剤)の混合比が異なる層の積層物、発泡組成物と非発泡組成物の層の積層物等があげられる。
【0030】
以下に、本発明の発泡性組成物について説明する。発泡組成物は活性エネルギー線を照射して加熱処理を施すことで発泡性が発現する組成物である。その発泡性組成物としては、少なくとも次の2つの構成要素を共存させた組成物であることが望ましい。その一つは、活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤、または塩基を発生する塩基発生剤であり、他のもう一つは、前記発生した酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性化合物を分解脱離する分解発泡性化合物である。
【0031】
酸発生剤及び塩基発生剤
本発明に使用する発泡性組成物に用いられる酸発生剤又は塩基発生剤には、一般的に化学増幅型フォトレジスト、及び光カチオン重合などに利用されている光酸発生剤や光塩基発生剤と呼ばれているものを用いることができる。
【0032】
本発明に好適な光酸発生剤としては、
(1)ジアゾニウム塩系化合物
(2)アンモニウム塩系化合物
(3)ヨードニウム塩系化合物
(4)スルホニウム塩系化合物
(5)オキソニウム塩系化合物
(6)ホスホニウム塩系化合物
などから選ばれた芳香族もしくは脂肪族オニウム化合物のPF6−、AsF6−、SbF6−、CF3SO3−塩を挙げることができる。その具体例を下記に列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
【0033】
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、
ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、
ベンゾイルフェニルスルホニルジアゾメタン、
【0034】
トリフルオロメタンスルホネート、
トリメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、
4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムヘキサフルオロアンチモネート、
1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウムトリフルオロメタンスルホネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、
4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(シクロヘキシル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(2−オキソ−1−シクロヘキシル)(2−ノルボルニル)メチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムパーフルオロメタンスルホネート、
ジフェニル−4−tert−ブチルフェニルスルホニウムパーフルオロオクタンスルホネート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムパーフルオロブタンスルホネート、
【0035】
ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−メトキシフェニルスルホニウムトシレート、
ジフェニル−4−イソプロピルフェニルスルホニウムトシレート
【0036】
ジフェニルヨードニウム、
ジフェニルヨードニウムトシレート、
ジフェニルヨードニウムクロライド、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ジフェニルヨードニウムナイトレート、
ジフェニルヨードニウムパークロレート、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0037】
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、
ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート、
【0038】
2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリ(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−フェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ナフチル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−ビフェニル−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4'−ヒドロキシ−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(4'−メチル−4−ビフェニル)−4,6−ジトリクロロメチル−1,3,5−トリアジン、
2−(p−メトキシフェニルビニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、
【0039】
2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリリウムトリフルオロメタンスルホネート、
トリメチルオキシニウムテトラフルオロボレート、
トリエチルオキシニウムテトラフルオロボレート、
N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
N−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、
(α−ベンゾイルベンジル)p−トルエンスルホネート、
(β−ベンゾイル−β−ヒドロキシフェネチル)p−トルエンスルホネート、
1,2,3−ベンゼントリイルトリスメタンスルホネート、
(2,6−ジニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(2−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
(4−ニトロベンジル)p−トルエンスルホネート、
などが挙げられる。なかでも、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物が好ましい。
【0040】
また、前記オニウム化合物以外にも、活性エネルギー線照射によりスルホン酸を光発生するスルホン化物、例えば2−フェニルスルホニルアセトフェノン、活性エネルギー線照射によりハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、例えば、フェニルトリブロモメチルスルホン、及び1,1−ビス(4−クロロフェニル)−2,2,2−トリクロロエタン、並びに活性エネルギー線照射により燐酸を光発生するフェロセニウム化合物、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェート、及びビス(ベンジル)フェロセニウムヘキサフルオロフォスフェートなどを用いることができる。
さらには、下記に挙げる酸発生能を有するイミド化合物誘導体も使用できる。
N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、
N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミド。
【0041】
本発明に好適な光塩基発生剤としては、
(1)オキシムエステル系化合物
(2)アンモニウム系化合物
(3)ベンゾイン系化合物
(4)ジメトキシベンジルウレタン系化合物
(5)オルトニトロベンジルウレタン系化合物
などが挙げられ、これらは活性エネルギー線の照射により塩基としてアミンを発生する。その他にも、光の作用によりアンモニアやヒドロキシイオンを発生する塩基発生剤を用いてもよい。これらは、例えばN−(2−ニトロペンジルオキシカルボニル)ピペリジン、1,3−ビス〔N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)−4−ピペリジル〕プロパン、N,N'−ビス(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ジヘキシルアミン、及びO−ベンジルカルボニル−N−(1−フェニルエチリデン)ヒドロキシルアミンなどから選ぶことができる。さらには加熱により塩基が発生する化合物を上記光塩基発生剤と併用してもよい。
【0042】
また、光酸発生剤または光塩基発生剤の活性エネルギー線の波長領域をシフトまたは拡大するために、適宜光増感剤を併用してもよい。例えば、オニウム塩化合物に対する光増感剤には、アクリジンイエロー、ベンゾフラビン、アクリジンオレンジなどが挙げられる。
【0043】
必要な酸を生成しながらも酸発生剤または塩基発生剤の添加量や光照射エネルギーを最小限に抑制する方法として、酸増殖剤や塩基増殖剤(非特許文献3、特許文献5及び特許文献6)を酸発生剤または塩基発生剤とともに用いることができる。酸増殖剤は、常温付近で熱力学的に安定であるが、酸によって分解し、自ら強酸を発生し、酸触媒反応を大幅に加速させる。この反応を利用することにより、酸または塩基の発生効率を向上させて、発泡生成速度や発泡構造をコントロールすることも可能である。
【0044】
分解発泡性化合物
本発明に使用する発泡性組成物に用いられる分解発泡性化合物(以下、分解性化合物と略す)は、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質(低沸点揮発性化合物)が分解脱離する。すなわち、この分解性化合物には、低沸点揮発性物質を発生し得る分解性官能基があらかじめ導入されていなければならない。低沸点とは発泡時にガス化する温度が上限になる。通常100℃以下、常温以下が好ましい。低沸点揮発性物質としては、例えばイソブテン(沸点;−7℃) 、二酸化炭素(沸点;−79℃)、窒素(沸点;−196℃)などがあげられる。分解性官能基としては、酸と反応するものとしてtert−ブチル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、ケト酸およびケト酸エステル基などが挙げられ、塩基と反応するものとしてウレタン基、カーボネート基などが挙げられる。酸と反応するものとしては、tert−ブチル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、酸と反応して、tert−ブチル基はイソブテンガスを、tert−ブチルオキシカルボニル基はイソブテンガスと二酸化炭素を、ケト酸部位は二酸化炭素を、ケト酸エステルたとえばケト酸tert−ブチル基は二酸化炭素とイソブテンを発生する。塩基と反応するものとしては、ウレタン基、カーボネート基は二酸化炭素ガスを発生する。このようにして、それぞれのガスが分解性化合物から離脱する。酸と反応して分解する酸分解性化合物また塩基と反応して分解する塩基分解性化合物の形態としては、モノマー、オリゴマー、高分子化合物(ポリマー)等として使用することができ、例えば、以下のような化合物群に分類することができる。
(1) 非硬化性低分子系の分解性化合物群
(2) 硬化性モノマー系の分解性化合物群
(3) 重合体系の分解性化合物群
硬化性モノマー系の分解性化合物に代表される例として、活性エネルギー線を照射したときに重合反応を生じるようなビニル基を含んだ活性エネルギー線硬化性化合物の場合には、均一な微細気泡の形成が容易であり、強度的に優れた発泡体を得ることが可能である。分解性化合物の具体例を下記に列挙するが、これら例示したものに限定されるものではない。
【0045】
(1)−a、非硬化性低分子系の分解性化合物群
<酸分解性化合物>
1−tert−ブトキシ−2−エトキシエタン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ナフタレン、
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、
2,2−ビス「p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパンなど
【0046】
(1)−b、非硬化性低分子系の分解性化合物群
<塩基分解性化合物>
N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)ピペリジンなど
【0047】
(2)−a、硬化性モノマー系の分解性化合物群
<酸分解性化合物>
tert−ブチルアクリレート、
tert−ブチルメタクリレート、
tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート、
1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート、
4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ
[5.2.1.02,6]デカン、
2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート、
2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート、
6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート、
p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート、
(2−tert−ブトキシエチル)アクリレート、
(3−tert−ブトキシプロピル)アクリレート、
(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート、
3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート、
4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート、
p−(tert−ブトキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシ)スチレン、
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、
アクリロイル酢酸、メタクロイル酢酸
tert−ブチルアクロイルアセテート、
tert−ブチルメタクロイルアセテートなど
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド
【0048】
(2)−b、硬化性モノマー系の分解性化合物群
<塩基分解性化合物>
4−[(1,1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1,1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−[(1,1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン、
4−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン、
(1,1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート、
(1,1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレートなど
【0049】
(3)−a、重合体系の分解性化合物群
<酸分解性化合物>
ポリ(tert−ブチルアクリレート)、
ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、
ポリ(tert−ブトキシカルボニルメチルアクリレート)、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニル)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニル)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルエチル)フェニルアクリレート]、
ポリ[1−(tert−ブトキシカルボニルメチル)シクロヘキシルアクリレート]、
ポリ{4−tert−ブトキシカルボニル−8−ビニルカルボニルオキシ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン}、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)エチルアクリレート]、
ポリ[6−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ヘキシルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)フェニルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンジルアクリレート]、
ポリ(2−tert−ブトキシエチルアクリレート)、
ポリ(3−tert−ブトキシプロピルアクリレート)、
ポリ[(1−tert−ブチルジオキシ−1−メチル)エチルアクリレート]、
ポリ[3,3−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)プロピルアクリレート]、
ポリ[4,4−ビス(tert−ブチルオキシカルボニル)ブチルアクリレート]、
ポリ[p−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシ)スチレン]、
ポリ[p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリアクリロイル酢酸、ポリメタクロイル酢酸、
ポリ[tert−ブチルアクロイルアセテート]、
ポリ[tert−ブチルメタクロイルアセテート]
N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)マレイミド/スチレン共重合体など
【0050】
(3)−b、重合体系の分解性化合物群
<塩基分解性化合物>
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ{p−[(1、1−ジメチル−2−メトキシカルボニル)エトキシカルボニルオキシ]スチレン}、
ポリ[p−(2−シアノエトキシカルボニルオキシ)スチレン]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−フェニルスルホニル)エチルメタクリレート]、
ポリ[(1、1−ジメチル−2−シアノ)エチルメタクリレート]、
などを挙げることができる。
分解性官能基を導入したポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、デンドリマーなどの有機系高分子化合物を酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物として用いることができる。さらには、シリカなどの無機系化合物に分解性官能基を導入した酸分解性又は塩基分解性重合体系化合物も含む。なかでも、分解性官能基は、カルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる官能基を有する化合物群に導入されることが好ましい。
【0051】
上記分解性化合物群は単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。また、上記分解性化合物は他の樹脂と混合して用いることもできる。混合した時に分解性化合物と他樹脂とが相溶でも非相溶でもどちらでもかまわない。他の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系複合樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリロイル樹脂、ABS樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、塩化ビニル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂など一般に用いられる樹脂から適宜選択して用いることができる。また、分解性化合物から分解してガス化する低沸点揮発性物質を成形体内に内在させることを目的として、ガスバリヤ性樹脂を用いることもできる。ガスバリヤ性樹脂は、混合しても被覆または積層してもよく、低沸点揮発性物質を成形体内により内在させるには、成形体表面に被覆または積層するのが好ましい。
分解性発泡化合物のうち、硬化性モノマー系の分解性化合物群および重合体系の分解性化合物群は単独で用いてもよいし、上記の一般に用いられる樹脂と混合して用いてもよい。これに対して、非硬化性低分子系の分解性化合物群は単独では成形できないので、上記の一般に用いられる樹脂と混合して用いる必要がある。
【0052】
本発明の発泡体の耐水性をあげるためには、発泡性組成物として少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。本発明に用いられる疎水性官能基は、主に脂肪族基、脂肪環族基、芳香族基、ハロゲン基、ニトリル基からなる群の中から選ばれることが好ましい。分解発泡性官能基は、主にカルボン酸基または水酸基、アミン基からなる群の中から選ばれる親水性官能基に導入されやすい。したがって、本発明の分解性化合物としては、前記親水性官能基に分解発泡性官能基を導入した分解性ユニットと、疎水性官能基を含む疎水性ユニットからなる複合化合物が好ましい。より好ましい前記複合化合物は、分解性ユニットおよび疎水性ユニットがビニル系重合体である。疎水性ユニットは、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族(メタ)アクリレート群、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル化合物群、(メタ)アクリロニトリル化合物群、酢酸ビニル化合物群、塩化ビニル化合物群などが挙げられる。分解性化合物の代表的な例としては、分解性ユニットが、親水性官能基のカルボン酸基を有するアクリル酸に分解性官能基であるtert−ブチル基を導入したtert−ブチルアクリレートであり、そして疎水性ユニットが疎水性官能基のメチル基を有するメチルアクリレートである組合わせからなるビニル系共重合体が挙げられる。分解性ユニット/疎水性ユニットの組合わせからなる分解性化合物の具体例を以下に示す。
tert−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/メチルアクリレート共重合体
tert−ブチルメタアクリレート/メチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/エチルアクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/エチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/エチルアクリレート共重合体
tert−ブチルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体
tert−ブチルアクリレート/スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/塩化ビニル共重合体
tert−ブチルアクリレート/アクリロニトリル共重合体
p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン/スチレン共重合体
また、分解性化合物中の分解性ユニットおよび疎水性ユニットは、一種単独でまたは2種以上併用することができる。共重合の形式は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合などの任意に行なうことができる。また、疎水性ユニットの共重合比は、分解性化合物全量に対して5〜95質量%であることが好ましく、分解性化合物の分解発泡性および発泡構造の環境保存性を勘案すると、20〜80質量%がより好ましい。
上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。 上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、少なくとも一種類以上の疎水性官能基を含む化合物となる。
【0053】
本発明の発泡体の耐水性をあげるためには、発泡性組成物として、温度30℃相対湿度60%の環境雰囲気下においてJIS K−7209D法で測定した平衡吸水率が10%未満低の吸湿性化合物に分解発泡性官能基を導入した化合物を用いることもできる。分解発泡性官能基を導入しやすい構造を有する低吸湿性化合物としては、例えばp−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。したがって、分解性化合物は、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン、m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレンが挙げられる。これらは硬化性モノマーでも一種類以上を混合した重合体でもよい。
【0054】
また、吸水率が10%以上の高吸湿性化合物と、吸水率10%未満の低吸湿性化合物との組合わせからなる複合化合物に分解発泡性官能基を導入してもよい。ただし、複合化合物は、適切な組合わせにより10%未満の吸水率を有していることが好ましい。例えば、高吸湿性化合物であるアクリル酸と低吸湿性化合物であるp−ヒドロキシスチレンの共重合体(複合化合物)は、その共重合比がアクリル酸/p−ヒドロキシスチレン=90/10〜0/100であることが好ましい。分解性化合物の具体的な例としては、
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルアクリレート/m−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
tert−ブチルメタクリレート/p−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)スチレン共重合体
さらには、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、デンドリマーからなる群の中から選ばれた低吸湿性高分子材料などに分解発泡性官能基を導入してもよい。
上記分解性化合物は、単独で用いてもよいし、異なる2種以上を混合併用してもよい。 上記分解性化合物は、分解発泡性官能基が分解脱離して気泡形成ガスを発生した後に、低吸湿性化合物となる。
【0055】
発泡性組成物
本発明に使用する発泡性組成物には、酸発生剤または塩基発生剤と分解発泡性化合物以外に、他の活性エネルギー線硬化性不飽和有機化合物を組み合わせて用いてもよい。併用化合物の例としては、
(1)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコール及びポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート類
(2)脂肪族、脂環族、芳香族の1〜6価のアルコールにアルキレンオキサイドを付加させて得られた化合物の(メタ)アクリレート類
(3)ポリ(メタ)アクリロイルアルキルリン酸エステル類
(4)多塩基酸とポリオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物
(5)イソシアネート、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(6)エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物
(7)エポキシ化合物、ポリオール、(メタ)アクリル酸の反応生成物
(8)メラミンと(メタ)アクリル酸の反応生成物
等を挙げることができる。
【0056】
併用できる化合物の中で、硬化性モノマーや樹脂は、発泡体の強度や耐熱性といった物性の向上効果や発泡性の制御効果などが期待できる。また分解性化合物および併用化合物に硬化性モノマーを用いれば、無溶剤成形ができ、環境負荷の少ない製造方法を提供できる。たとえば特許文献7及び特許文献8ではこのような材料が用いられている。
併用化合物の具体的な例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロヘキシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、イソボロニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ダイマー、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリル酸−9,10−エポキシ化オレイル、マレイン酸エチレングリコールモノアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチレンアクリレート、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3−メチル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸アクリレート、エタンジオールジアクリレート、エタンジオールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性水添ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ポリオキシエチレンエピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることが出来るが、これらに限られるものではない。
【0057】
さらに、前記の併用活性エネルギー線硬化性不飽和有機化合物の一部または全部として、分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を有する分子量が400〜5000程度の活性エネルギー線硬化性樹脂を組み合わせることもできる。このような硬化性樹脂として、例えば、ポリウレタン変性ポリエーテルポリ(メタ)アクリレートやポリウレタン変性ポリエステルポリ(メタ)アクリレートなどのポリウレタンポリ(メタ)アクリレートポリマー類を用いることが好ましい。
【0058】
本発明に使用する発泡性組成物は、必要により、分解性化合物以外の添加物を含ませることができる。添加物としては、無機系または有機系化合物充填剤、並びに各種界面活性剤などの分散剤、多価イソシアネート化合物、エポキシ化合物、有機金属化合物などの反応性化合物および酸化防止剤、シリコーンオイルや加工助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、光安定剤、滑剤、軟化剤、有色染料、その他の安定剤等が一種類以上を含ませてもよい。添加剤を用いることにより、成形性や発泡性、光学的物性(とくに白色顔料の場合)、電気および磁気的特性(とくにカーボン等の導電性粒子の場合)などの向上が期待できる。
【0059】
無機系化合物充填剤の具体例としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、シリカ等の顔料、ステアリン酸亜鉛のような金属石鹸、並びに各種界面活性剤などの分散剤、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、カオリン、珪酸白土、珪藻土、酸化亜鉛、酸化珪素、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、マイカ、アスベスト粉、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライトなどが遂げられる。有機系化合物充填剤としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末が挙げられる。
有機系化合物充填剤としては、例えば、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末、ポリマービーズなどが挙げられる。ポリマービーズとしては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂又はセルロース誘導体、ポリビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン及びポリカーボネート、架橋用モノマーなどから製造されたものが使用できる。
これらの充填剤は、2種類以上混合したものであってもよい。
【0060】
紫外線吸収剤の具体例としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、またはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤から選ばれる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0061】
酸化防止剤の具体例としては、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0062】
光安定剤としては、代表的なものにヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0063】
軟化剤は、成形性または成形体の加工性を向上させる目的で使用でき、具体的には、エステル化合物類、アミド化合物類、側鎖を有する炭化水素重合体類、鉱油類、流動パラフィン類、ワックス類などが挙げられる。
エステル化合物としては、アルコールとカルボン酸からなる構造のモノまたはポリエステルであれば特に制限はなく、ヒドロキシル基およびカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、エステル基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的には、ステアリルステアレート、ソルビタントリステアレート、エポキシ大豆油、精製ひまし油、硬化ひまし油、脱水ひまし油、エポキシ大豆油、極度硬化油、トリメリット酸トリオクチル、エチレングリコールジオクタノエート、ペンタエリスリトールテトラオクタノエートなどが挙げられる。
アミド化合物としては、アミンとカルボン酸からなる構造のモノまたはポリアミド化合物であれば特に制限はなく、アミノ基およびカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、アミド基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的には、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、トリメチレンビスオクチル酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、トリオクタトリメリット酸アミド、ジステアリル尿素、ブチレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルフタル酸アミド、ジステアリルオクタデカ二酸アミド、イプシロンカプロラクタム、およびこれらの誘導体が挙げられる。
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリα−オレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有する通常オリゴマーに分類されるものが好ましい。具体的には、エチレン−プロピレンの共重合体やそのマレイン酸誘導体、イソブチレンの重合体、ブタジエン、イソプレンのオリゴマーおよびその水添物、1−ヘキセンの重合物、ポリスチレンの重合物およびこれらから誘導される誘導体、ヒドロキシポリブタジエンやその水添物、末端ヒドロキシポリブタジエン水添物などが挙げられる。
【0064】
本発明に使用する発泡性組成物は、一般的な混練機を用いて調製することができる。例えば、二本ロール、三本ロール、カウレスデゾルバー、ホモミキサー、サンドグラインダー、プラネタリーミキサー、ボールミル、ニーダー、高速ミキサー、ホモジナイザーなどである。また超音波分散機などを使用することもできる。
以下に、本発明の製造方法で得られた発泡体に関する発泡構造の特徴を述べる。得られた発泡体は、その気泡径が10μm以下さらには0.005〜1μm、気泡数密度が109個/cm3以上さらには1011個/cm3以上の範囲内で気泡分布が制御されることが好ましい。得られた発泡体の特性は、本発明者らが先の出願(特願2004−209107)に示したように、光学特性、熱特性、電気特性などにおいてさまざまな特徴がある。さらに、本発明の発泡体は、気泡分布の制御が任意可変であることから、制御された発泡特性分布をもつ高機能性素材としての位置付けをもち、非常に有用である。発泡特性としては、例えば、発色性、嵩高性、ドライ感、ふくらみ感、ソフト感、通気性、断熱性、低誘電率性、光散乱性、光反射性、隠蔽性、白色性、不透明性、波長選択的反射および透過性、軽量性、浮揚性、遮音性、吸音性、緩衝性、クッション性、吸収性、吸着性、貯蔵性、透過性、濾過性などがあげられる。この発泡体は様々な用途に用いることができ、例えば、包装材料や建築材料、医療材料、電気機器材料、電子情報材料、自動車材料などに使用される。
【実施例】
【0065】
本発明を下記実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」および「%」は各々「質量部」および「質量%」を表わす。
【0066】
<実施例1>
(1)発泡性組成物
分解性化合物としてtert−ブチルアクリレート(20%)とtert−ブチルメタクリレート(40%)とメタクリル酸メチル(40%)との共重合体100部に対して、ヨードニウム塩系酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート(商標:BBI−109、ミドリ化学製)3部の配合比した発泡性組成物Aを用いた。
【0067】
(2)予備成形工程
前記配合比の発泡性組成物をMEK/酢酸エチル=65/35(質量比)の希釈液で25%の溶液を調製し、これを塗布液として用いた。この塗布液を、厚さ75μmのシリコーンPET(商標:MR−75:三菱ポリエステル製)からなる支持体のシリコーン処理面上に300μmのクリアランスをもつアプリケーターを用いてコーティングし、温度110℃の恒温乾燥機内で10分間放置して希釈液を蒸発除去した。サンプルを恒温乾燥機から取り出した後、塗布層をシリコーンPETから剥離して、厚さ45μmのフィルムを得た。このフィルムから5cm×6cmで10枚切り出し積層させたものを、10cm×10cm、厚さ1mmのSUS板で挟み、ハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)を用いて、当該積層サンプルに6MPaの圧力がかかる状態で150℃3分間プレス成形した。プレスを開放した後、SUS板にはさんだ状態のままサンプルをプレス機から取り出し、自然空冷し、SUS板から板状発泡性組成物成形品を取り外した。
【0068】
(3)紫外線照射
前記工程(2)の板状発泡組成物成形品に、メタルハライドランプ(商標:アイグラフィック(株)製 紫外線硬化用マルチメタルランプM03−L31)を光源として、照射線量2000mJ/cm2でそれぞれ上下面から紫外線照射した。
【0069】
(4)発泡工程
前記工程(3)によって得られた紫外線照射された板状発泡組成物成形品を、10cm×10cm、厚さ1mmのSUS板で挟み、ハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)を用いて、当該積層サンプルに4MPaの圧力がかかる状態で130℃2分間プレスしながら発泡した。プレス開放した後、SUS板にはさんだ状態のままサンプルをプレス機から取り出し、自然空冷し、SUS板から板状発泡体を取り外した。
【0070】
(5)発泡体構造評価
得られた発泡体の発泡構造を確認するために断面観察した。サンプルを液体窒素中で凍結割断し、発泡体断面上に金蒸着処理を施し、この金蒸着面を走査型電子顕微鏡(商標:S−510、日立製作所製)を用いて断面構造を観察した。断面写真を図5に示す。平均気泡径は、発泡樹脂層断面の観察画像(拡大倍率:3000倍)から無作為に100個の気泡を選び出し、それらの直径の平均とした。発泡倍率は室温でアルキメデス法により発泡体の密度(A)、および発泡体を溶剤に溶かし再び成膜して未発泡状態にしたときの密度(B)を測定し、B/Aより発泡倍率を求めた。発泡体の厚さはマイクロメーター(商標:Mitutoyo製 MCD−25M)を用いて測定した。得られた発泡体は、平均気泡径0.3μm、発泡倍率1.3倍、厚さ500μmの板状発泡体であった。
【0071】
<実施例2>
発泡工程での積層サンプルにかかる圧力を2MPaにした以外は、実施例1と同様な方法で発泡体を作成した。断面写真を図6に示す。
実施例1と同様に発泡体の構造評価をした結果、得られた発泡体は、平均気泡径1.0μm、発泡倍率1.8倍、厚さ700μmの板状発泡体であった。
【0072】
<実施例3>
(1)発泡性組成物
実施例1と同様のものを使用した。
(2)予備成形工程
実施例1と同様にしてシリコーンPET上に発泡性組成物の厚さ45μmの塗工層がのった支持体付塗工層を作成した。
(3)紫外線照射工程
(2)の支持体付塗工層を塗工層面側からメタルハライドランプ(商標:アイグラフィック(株)製 紫外線硬化用マルチメタルランプM03−L31)を光源として、照射線量2000mJ/cm2で紫外線照射した。紫外線照射後シリコーンPETから塗工層を剥離して、紫外線照射済み発泡組成物フィルムを得た。
【0073】
(4)発泡成形工程
(3)で得たフィルムから5cm×6cmのフィルムを10枚切り出しそれを積層させたものを、図2のようなの底面が5cm×6cmの直方体成形用金型をセットしたハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)を用いて、当該積層サンプルに4MPaの圧力がかかる状態で130℃2分間プレス成形しながら発泡させた。プレス開放後に型をハンドプレス機から取り外し自然空冷し、金型温度が40℃程度になったところで、直方体成形用型から発泡体成形品を取り外した。
【0074】
(5)発泡体構造評価
実施例1と同様に発泡体の構造評価をした結果、得られた発泡体は、平均気泡径0.2μm、発泡倍率1.2倍、厚さ450μmの板状発泡体であった。
【0075】
<実施例4>
(1)発泡性組成物
分解性化合物としてtert−ブチルアクリレート(60%)とメタクリル酸メチル(30%)とメタクリル酸(10%)の共重合体100部に対して、ヨードニウム塩系酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート(商標:BBI−109、ミドリ化学製)3部の配合比した発泡性組成物Bを用いた。
【0076】
(2)予備成形工程
前記配合比の発泡性組成物を酢酸エチルで25%の溶液に調製し、これを塗布液として用いた。この塗布液を、厚さ75μmのシリコーンPET(商標:MR−75:三菱ポリエステル製)からなる支持体のシリコーン処理面上に300μmのクリアランスをもつアプリケーターを用いてコーティングし、温度110℃の恒温乾燥機内で10分間放置して希釈液を蒸発除去し、シリコーンPET上に発泡性組成物の厚さ45μmの塗工層がのった支持体付塗工層を作成した。
【0077】
(3)紫外線照射工程
(2)の支持体付塗工層を塗工層面側からメタルハライドランプ(商標:アイグラフィック(株)製 紫外線硬化用マルチメタルランプM03−L31)を光源として、照射線量1000mJ/cm2で紫外線照射した。紫外線照射後シリコーンPETから塗工層を剥離して、紫外線照射済み発泡組成物フィルムを得た。
【0078】
(4)発泡成形工程
(3)で得たフィルムから5cm×6cmのフィルムを10枚切り出しそれを積層させたものを、図7のような底面が5cm×6cmの直方体成形用金型をセットしたハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)を用いて、当該積層サンプルに4MPaの圧力がかかる状態で130℃2分間プレス成形しながら発泡させた。その後4MPaの圧力を維持した状態で、直方体成形用金型の冷却水導入部から冷却水を導入した。金型温度が50℃になったところでハンドプレス機から金型を取り外し、冷却水を流したまま40℃程度になった時点で直方体成形用型から発泡体成形品を取り出した。
【0079】
(5)発泡体構造評価
実施例1と同様に発泡体の構造評価をした結果、得られた発泡体は、平均気泡径0.1μm、発泡倍率1.1倍、厚さ450μmの板状発泡体であった。
【0080】
<実施例5>
(1)発泡性組成物
分解性化合物としてtert−ブチルアクリレートモノマー20部、tert−ブチルメタクリレートモノマー40部、メタクリル酸メチルモノマー40部、ヨードニウム塩系酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート(商標:BBI−109、ミドリ化学製)3部を配合した発泡性組成物Cを用いた。
【0081】
(2)予備成形工程(紫外線照射工程)
(1)のモノマーおよび酸発生剤混合物を図2に示す直方体成形用型の下型に流し込み、その上面からメタルハライドランプ(商標:アイグラフィック(株)製 紫外線硬化用マルチメタルランプM03−L31)を光源として、照射線量3000mJ/cm2でそれぞれ上下面から紫外線照射した。
【0082】
(3)発泡成形工程
(2)で得られた硬化した樹脂が入っているキャスト型に図2のように上型を装着し、ハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)にセットした。当該積層サンプルに4MPaの圧力がかかる状態で130℃2分間プレス成形しながら発泡させた。その後4MPaの圧力を維持した状態で、金型の冷却水導入部から冷却水を導入した。金型温度が40℃程度になったところでハンドプレス機から金型を取り外し、直方体成形用型から発泡体成形品を取り出した。
【0083】
(4)発泡体構造評価
実施例1と同様に発泡体の構造評価をした結果、得られた発泡体は、平均気泡径0.3μm、発泡倍率1.3倍、厚さ500μmの板状発泡体であった。
【0084】
<実施例6>
(1)発泡性組物
実施例1と同様のものを使用した。
(2)予備成形工程および紫外線照射工程
実施例3と同様にして紫外線照射済み発泡組成物フィルムを得た。
(3)発泡成形工程
(2)で得た紫外線照射済み発泡組成物フィルムを5cm×6cmに切り出し、5cm×6cmに切り出した厚さ1mmのポリカーボネートシート(帝人製 パンライトシートPC−1151)と積層して、実施例1と同様にプレス発泡させた。
【0085】
(4)発泡体構造評価
実施例1と同様に発泡体の構造評価をした結果、得られた発泡体は、平均気泡径0.3μm、発泡倍率1.3倍、厚さ45μmの発泡層がポリカーボネートシート上に形成された発泡体が得られた。
【0086】
<比較例1>
発泡工程において、板状発泡性組成物を特に加圧せず常圧状態で恒温加熱器(恒温乾燥機)内でつるして130℃2分間発泡させた以外は実施例1と同様にした。得られた発泡体断面写真を図8に示す。100μmを超える気泡径を多数含有する巨大気泡をもつ発泡体であった。また外観ではきれいな板状平面発泡体が得られず、歪んだ不定形の発泡体で、表面にも凹凸ができている成形不良発泡体となった。
【0087】
<比較例2>
(1)発泡性組成物
実施例1と同様の物を使用した。
【0088】
(2)予備成形工程
実施例1と同様にしてシリコーンPET上から発泡性組成物塗工層を剥離して、厚さ45μmのフィルムを得た。このフィルムから5cm×6cmを切り出し、実施例6と同様のポリカーボネートシートと積層させたものを、10cm×10cm、厚さ1mmのSUS板で挟み、ハンドプレス機(商標:TOYOSEIKI製 Mini TEST PRESS−10)を用いて、当該積層サンプルに6MPaの圧力がかかる状態で150℃3分間プレス成形した。プレスを開放した後、SUS板にはさんだ状態のままサンプルをプレス機から取り出し、自然空冷し、SUS板から厚さ45μmの発泡性組成物層がポリカーボネートシートに積層されている成形品を取り外した。
【0089】
(3)紫外線照射工程
ポリカーボネートシート上に形成された発泡性組成物層側から、メタルハライドランプ(商標:アイグラフィック(株)製 紫外線硬化用マルチメタルランプM03−L31)を光源として、照射線量2000mJ/cm2で紫外線照射した。
【0090】
(4)発泡成形工程
前記紫外線照射された成形体を特に加圧せず常圧状態で恒温加熱器(恒温乾燥機)内でつるして130℃2分間発泡させ、恒温加熱器(恒温乾燥機)から取り出して自然空冷した。
【0091】
(5)発泡体概観
得られた発泡体はポリカーボネートシートの支持体から発泡層が剥離した部分を多数持つ、すなわち直径数mmの半球状にの凹凸が支持体上にできた発泡体となり、支持体状にきれいに製膜され、積層された均一な微細発泡体をつくることができず、成形不良発泡体となった。
【0092】
<参考例>
実施例4と同じ発泡性組成物を用いて、実施例4と同様な予備成形工程及び紫外線照射工程を経て、実施例3と同様な発泡工程で発泡させた。すなわち実施例4の冷却工程で圧力を予め開放した後に冷却した。目視でもわかる数ミリの気泡径を多数含有する巨大気泡をもつ発泡体であり、外観ではきれいな板状平面発泡体が得られず、歪んだ不定形の発泡体で、表面にも凹凸ができている成形不良発泡体となった。
以上の結果を表1および表2にまとめる。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明により、光酸・塩基分解発泡法において、微細気泡発泡体の発泡制御および形状制御を容易にすることが可能となり、とくに、気泡径10μm以下、さらには0.005〜1μmの微細気泡発泡体において、所望の厚さ、形状及び発泡構造を有する微細気泡発泡体の発泡構造制御及び形状制御を容易に、安定的に達成できる。またそれにより得られた従来にはない高機能性微細気泡発泡体により、力学強度の低下を抑制する効果、射出成形等の成型加工品のヒケ・ソリの低減効果、及び寸法安定性の向上効果に加えて、発泡体の光反射散乱特性、誘電特性、及び断熱特性などを自在に制御された素材を容易に生み出すことができる。包装材料や建築材料、医療材料、電気機器材料、電子情報材料、自動車材料などさまざまな分野に大きな寄与を与える。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】板を用いた圧力制御法(ギャップ制御機能なし)
【図2】金型を用いた圧力制御法(ギャップ制御機能なし)
【図3】板を用いた圧力制御法(ギャップ制御機能あり)
【図4】金型を用いた圧力制御法(ギャップ制御機能あり)
【図5】実施例1の発泡体の断面写真
【図6】実施例2の発泡体の断面写真
【図7】金型を用いた圧力制御法(冷却機能あり)
【図8】比較例1の発泡体の断面写真
【符号の説明】
【0097】
1.発泡性組成物(板状)、2.圧力制御用の板(ギャップ調整機能なし)、3.圧力制御用金型の上型、4.圧力制御用の金型の下型(ギャップ調整機能なし)、5.圧力制御用の板(ギャップ調整機能あり)、6.圧力制御用の金型の下型(ギャップ調整機能あり)、7.ギャップ調整用機能部分、8.冷却水導入部、9.冷却水排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に活性エネルギー線を照射する照射工程と、次いで、前記低沸点揮発物質が分解脱離する温度領域において圧力制御下で発泡させる発泡工程とを含む発泡体の製造方法。
【請求項2】
発泡工程と同時またはその前の任意の時点で、発泡性組成物を成形する成形工程を有することを特徴とする請求項1に記載の発泡体の製造方法。
【請求項3】
照射工程の前に成形工程を有する請求項2に記載の発泡体の製造方法。
【請求項4】
照射工程と発泡工程の間に成形工程を有する請求項2に記載の発泡体の製造方法。
【請求項5】
発泡工程と成形工程が同時であることを特徴とする請求項2に記載の発泡体の製造方法。
【請求項6】
活性エネルギー線の作用によって酸を発生する酸発生剤または塩基を発生する塩基発生剤を含有し、さらに、酸または塩基と反応して一種類以上の低沸点揮発性物質を分解脱離する分解発泡性官能基を有する化合物を含有する発泡性組成物に、前記低沸点揮発物質が分解脱離する温度領域において活性エネルギー線を照射し、同時に圧力制御下で発泡させる発泡工程を有することを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項7】
発泡工程の後に圧力制御しながら冷却する工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−124697(P2006−124697A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289339(P2005−289339)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】