説明

発泡壁紙製造システム及び当該システムにより製造された発泡壁紙

【課題】溶融押出し法を利用した、簡便に発泡壁紙原反及び発泡壁紙を製造できるシステムを提供する。
【解決手段】下記手段を有することを特徴とする、発泡壁紙製造システム:
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の少なくとも1種と熱分解型発泡剤とを含有し、メルトフローレートが20〜50g/10分である発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しする手段1、
(2)手段1により溶融押出しされた樹脂シートの端部をトリミングする手段2、
(3)手段2によりトリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく加熱し、樹脂シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする手段3、
(4)紙質基材と樹脂層との積層体に電子線を照射することにより、樹脂架橋する手段4、
(5)樹脂架橋後の積層体を加熱することにより、発泡樹脂層を形成する手段5。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡壁紙製造システム及び当該システムにより製造された発泡壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙としては、紙質基材に発泡樹脂層を積層したものが知られている。具体的には、特許文献1には、紙質基材に発泡樹脂層及び非発泡樹脂層(表面保護層)を積層してなる発泡壁紙が開示されている。
【0003】
市販のオレフィン発泡壁紙は、原反の製造方法で大別される。1つは、エマルジョンコーティング法によって樹脂層を紙質基材に積層してなる原反に対して絵柄印刷、加熱発泡及びエンボス加工を施したもの;2つは、カレンダー法によって樹脂層を紙質基材に積層してなる原反に対して絵柄印刷、加熱発泡及びエンボス加工を施したものである。例えば、特許文献1では、カレンダー法により原反を製造している。
【0004】
ここで、発泡壁紙用原反(材料)と発泡壁紙(製品)との関係は次の通りである。即ち、発泡壁紙用原反は、発泡壁紙の製造材料であって、発泡剤含有樹脂層を有するが、絵柄模様層などの装飾層は有していない。発泡剤含有樹脂層は、一般に熱分解型発泡剤を含み、加熱により発泡樹脂層となる。原反購入者は、原反の表面に所望の装飾層を形成した後、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層とすることにより、発泡壁紙(製品)を作製する。
【0005】
前記エマルジョンコーティング法及びカレンダー法による原反製造は実用化されている。他方、溶融押出し(例えばTダイ押出し)法により作製した原反に対して絵柄印刷、加熱発泡及びエンボス加工を施す発泡壁紙の製造方法は、未だ実用化されていない。
【0006】
溶融押出しを用いた製造方法が実用化されていない理由は、次の通りである。先ず、発泡剤含有樹脂層を非発泡状態で、且つ、事業として採算のとれる加工速度で混練するのは困難である。また、溶融押出しシート(特にTダイ押出しシート)はネッキングによりシートの両端の厚みが増すため、端部樹脂をトリミングする必要があるが、樹脂シートのみをシワなく安定して巻き取ることは困難である。更に、溶融押出しシートをトリミングせずに紙質基材と同時ラミネート後、端部の樹脂及び紙質基材をカットする方法では、樹脂層と紙層との断面が同一面となるため、後加工の発泡工程で樹脂層が紙幅よりはみ出し、加工性に問題がある。
【0007】
溶融押出しにより原反を簡便に製造できれば、カレンダー法では不可能な多層構造の原反を容易に製造できる上、エマルジョンコーティング法による不陸隠蔽に係る欠点もない。
【0008】
従って、溶融押出しにより原反を簡便に製造するためのシステムの開発が望まれている。
【特許文献1】特開2003−266549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、溶融押出し法を利用した、簡便に発泡壁紙原反及び発泡壁紙を製造できるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の手段を有する発泡壁紙製造システムが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の発泡壁紙製造システムに関する。
【0012】
1.下記手段を有することを特徴とする、発泡壁紙製造システム:
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の少なくとも1種と熱分解型発泡剤とを含有し、メルトフローレートが20〜50g/10分である発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しする手段1、
(2)手段1により溶融押出しされた樹脂シートの端部をトリミングする手段2、
(3)手段2によりトリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく加熱し、樹脂シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする手段3、
(4)紙質基材と樹脂層との積層体に電子線を照射することにより、樹脂架橋する手段4、
(5)樹脂架橋後の積層体を加熱することにより、発泡樹脂層を形成する手段5。
【0013】
2.手段1において、融点が40〜90℃である樹脂を含有する接着層形成用組成物と、発泡剤含有樹脂層形成用組成物と、を同時溶融押出しし、
手段3において、接着層を紙質基材にラミネートする、
上記項1に記載の発泡壁紙製造システム。
【0014】
3.手段1において、線状低密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の少なくとも1種を含有する表面強化層形成用組成物と、発泡剤含有樹脂層形成用組成物と、を同時溶融押出しし、
手段3において、表面強化層形成用組成物が紙質基材と接触しない態様で樹脂層と紙質基材とをラミネートする、
上記項1又は2に記載の発泡壁紙製造システム。
【0015】
4.接着層は、融点が40〜90℃の樹脂を含み、且つ、厚さが0.1〜30μmである、上記項2又は3に記載の発泡壁紙製造システム。
【0016】
5.上記項1〜4のいずれかに記載のシステムを用いることにより製造される発泡壁紙。
【0017】
6.上記項1〜4のいずれかに記載のシステムを備えた発泡壁紙製造装置。

以下、本発明の発泡壁紙製造システムについて詳細に説明する。
【0018】
本発明の発泡壁紙製造システムは、下記手段を有することを特徴とする。
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA)の少なくとも1種と熱分解型発泡剤とを含有し、メルトフローレート(MFR)が20〜50g/10分である発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しする手段1、
(2)手段1により溶融押出しされた樹脂シートの端部をトリミングする手段2、
(3)手段2によりトリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく加熱し、樹脂シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする手段3、
(4)紙質基材と樹脂層との積層体に電子線を照射することにより、樹脂架橋する手段4、
(5)樹脂架橋後の積層体を加熱することにより、発泡樹脂層を形成する手段5。
【0019】
以下、本発明のシステムを手段ごとに分けて説明する。
【0020】
≪手段1≫
本発明のシステムは、EVA、LLDPE及びEMAAの少なくとも1種と熱分解型発泡剤とを含有し、MFRが20〜50g/10分である発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しする手段1を有する。
【0021】
発泡剤含有樹脂層形成用組成物に含まれる樹脂成分としては、EVA、LLDPE及びEMAAの少なくとも1種を必須成分として含む。EVAとしては、MFR(樹脂架橋前)は30〜70g/10分程度が好ましく、VA含有量は20〜30重量%程度が好ましい。LLDPEとしては、通常は密度0.910〜0.938g/cm程度であるが、この中でも0.915〜0.925g/cm程度が好ましい。LLDPEは、MFR(樹脂架橋前)は20〜30g/10分程度が好ましい。EMAAとしては、MFR(樹脂架橋前)は10〜50g/10分程度が好ましく、MAA含有量は10〜30重量%程度が好ましい。これらの樹脂特性は、特に発泡剤含有樹脂層形成用組成物のMFR(樹脂架橋前)が20〜50g/10分、好ましくは30〜45g/10分を満たすように設定することが好ましい。このようなMFRに設定することにより、溶融押出し(特にTダイを用いた溶融押出し)の効率を高めることができる。なお、樹脂成分としては、上記3成分以外に、例えば、EMMAなどの他の樹脂も配合できる。なお、溶融押出しの際は、ローターを主として使用し、補助的にニーダーを使用するスクリュー構成を有する混練機を用いることが好ましい。
【0022】
発泡剤含有樹脂層形成用組成物は、樹脂成分以外に熱分解型発泡剤を含有する。熱分解型発泡剤は、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;パラトルエンスルホニルヒドラジド等のビドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、種類、所望の発泡倍率等に応じて調整できる。通常は、発泡剤含有樹脂層中の樹脂100重量部に対して1〜20重量部程度が好ましい。なお、溶融押出しの効率を高めるためには低温分解発泡剤は使用しないことが好ましい。例えば、OBSHは使用しないことが好ましい。
【0023】
発泡剤含有樹脂層は、必要に応じて、無機充填剤、顔料等を含んでもよい。
【0024】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。
【0025】
顔料としては、次のものが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムエロー、ニッケルチタンエロー、クロムチタンエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。
【0026】
発泡剤含有樹脂層は、必要に応じて、その他の添加剤を含んでもよい。例えば、発泡セル調整剤、架橋助剤が含まれる。発泡セル調整剤としては、例えば、金属石鹸、亜鉛化合物等が挙げられる。また、架橋助剤としては、アクリルモノマーなどが挙げられる。架橋助剤の添加量としては、発泡剤含有樹脂層中の樹脂100重量部に対して、0〜10重量部程度が好ましく、1〜4重量部がより好ましい。
【0027】
発泡剤含有樹脂層の厚みは限定的ではないが、10〜200μm程度が好ましく、準不燃の防火性能を持たせるのであれば、30〜80μm程度が好ましい。
【0028】
手段1では、発泡剤含有樹脂層に加えて、他の層を同時溶融押出ししてもよい。例えば、接着層、表面強化層等である。具体的には、接着層は発泡剤含有樹脂層と紙質基材との接着性を高めるための補助層である。表面強化層は、発泡剤含有樹脂層のおもて面(紙質基材とは逆側)に設けられる非発泡樹脂層である。
【0029】
接着層は、接着層形成用組成物を溶融押出しすることにより形成する。接着層に含まれる樹脂は特に限定されないが、EVA及びEMMAの少なくとも1種が好ましい。EVA及びEMMAは、メルトフローレート(MFR)は20〜70g/10分程度が好ましく、VA含有量(MMA含有量)は25〜45重量%程度が好ましい。また、樹脂層と紙質基材とのラミネートを容易化する観点からは、樹脂層に含まれる樹脂の融点は、40〜90℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。なお、過度に融点が低いと、樹脂ペレットを保存中に固着するおそれがある。他方、過度に融点が高いと、ラミネート時に高温印加する必要があり、紙質基材の水分蒸発に基づく原反のカールが発生し易い。
【0030】
接着層の厚みは限定的ではないが、0.1〜30μm程度が好ましい。
【0031】
表面強化層は、表面強化層形成用組成物を溶融押出しすることにより形成する。表面強化層に含まれる樹脂は特に限定されないが、LLDPE及びEMAAの少なくとも1種が好ましい。LLDPEは、MFR(樹脂架橋前)は20〜40g/10分程度が好ましい。EMAAとしては、MFR(樹脂架橋前)は20〜50g/10分程度が好ましく、MAA含有量は25〜40重量%程度が好ましい。これらの樹脂特性は、表面強化層の特性(例えば、所望の耐スクラッチ性や耐擦傷性)に応じて設定できる。
【0032】
表面強化層の厚みは限定的ではないが、5〜30μm程度が好ましく、準不燃の防火性能を持たせる観点からは、10〜15μm程度が好ましい。
【0033】
≪手段2≫
手段2は、手段1により溶融押出しされた樹脂シートの端部をトリミングする。これは、溶融押出し(特にTダイ押出し)の際に、口金から取り出された樹脂シートの端部が中心部と比べて盛り上がっているため、盛り上がり部分をカットするものである。カットの方法は特に限定されず、盛り上がり部分をカッター等で削除できる方法であればよい。
【0034】
≪手段3≫
手段3は、手段2によりトリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく加熱し、樹脂シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする。手段3ではトリミング後の樹脂シートは巻き取らない。このため、巻き取りにより生じるシワ等の発生を回避できる。
【0035】
即ち、手段3では、トリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく連続工程で加熱し、紙質基材にラミネートする。なお、樹脂層として前記接着層を設けた場合には、接着層が紙質基材と接触するようにラミネートする。加熱温度は限定的ではないが、紙質基材と接触する樹脂の溶融温度以上であればよい。例えば、融点が40〜90℃である樹脂を含む接着層を設けた場合には、90℃程度に加熱することによりラミネート可能である。
【0036】
手段3では、加熱した樹脂シートは、シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする。これは、発泡剤含有樹脂層が加熱発泡した際に膨張し、紙質基材の端部からはみ出ることを防止するためである。従って、紙幅は、樹脂シートが加熱発泡工程によりどの程度膨張するかを考慮することにより設定することができる。
【0037】
紙質基材は、壁紙基材として適した機械強度、耐熱性等を有する限り特に限定されず、繊維質シートが一般に使用できる。
【0038】
具体的には、繊維質シートの中でも、難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0039】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜80g/m程度が好ましい。
【0040】
紙質基材の厚さは限定的ではないが、80〜150μm程度が好ましい。
【0041】
≪手段4≫
手段4は、紙質基材と樹脂層との積層体に電子線を照射することにより、樹脂架橋する。
【0042】
例えば、樹脂層側から電子線照射を行うことにより樹脂架橋できる。樹脂架橋により樹脂層の強度が高まり、発泡壁紙の表面特性(例えば耐スクラッチ性)が向上する。加速電圧は、樹脂層の厚み、比重等を考慮して設定できるが、150〜250kV程度が好ましい。照射量は、1〜20Mrad程度が好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0043】
樹脂層にアクリルモノマー等の架橋助剤を含めない場合には、例えば、175kV、5〜10Mrad程度の電子線照射が好適である。他方、樹脂100重量部に対してアクリルモノマーを0.1〜3重量部程度含有する場合には、電子線量は1〜5Mrad程度とするのが好ましい。
【0044】
≪手段5≫
手段5は、樹脂架橋後の積層体を加熱することにより、発泡樹脂層を形成する。
【0045】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は200〜300℃程度が好ましく、加熱時間は10〜40秒程度が好ましい。これにより、発泡剤含有樹脂層は発泡樹脂層となる。
【0046】
手段5において、樹脂架橋後の積層体を加熱する前に、樹脂層のおもて面に絵柄模様層を形成してもよい。
【0047】
絵柄模様層は、発泡壁紙に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0048】
絵柄模様層は、例えば、印刷により形成する。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、ビヒクル、溶剤を含む公知の印刷インキが使用できる。
【0049】
着色剤としては、前記顔料が使用できる。
【0050】
ビヒクルは、基材シートの種類に応じて設定できるが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0051】
印刷インキに含まれる溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。
【0052】
絵柄模様層の厚みは絵柄模様の種類より異なるが、0.1〜10μm程度が好ましい。
【0053】
なお、絵柄模様層の形成を容易とするために、原反のおもて面に対してコロナ放電処理、プライマー層形成等を行ってもよい。プライマー剤は特に限定されないが、EVA系プライマー剤が好ましい。その他、プラズマ放電処理により原反表面の濡れ性を55dyne程度にすることも好ましい。この場合に、プラズマ発光域を窒素パージ(特にアセチレン混入窒素パージ)とすると効果が向上する。
【0054】
加熱発泡後は、必要に応じて、発泡壁紙のおもて面にエンボス模様を付してもよい。
【0055】
エンボス模様は、例えば、公知のエンボス版により付与できる。例えば、発泡壁紙のおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0056】
上記手段を有する本発明の発泡壁紙製造システムによれば、溶融押出し法を用いて簡便に発泡壁紙を製造できる。本発明のシステムによれば、カレンダー法では不可能な多層構造の原反を容易に製造できる上、エマルジョンコーティング法による不陸隠蔽に係る欠点もない。
【0057】
上記システム又はシステムを備えた発泡壁紙製造装置により製造される本発明の発泡壁紙は、それを貼り付ける被着材は特に限定されず、例えば、石膏ボード、パーライトボード、襖、扉等の平板、曲面板等の板材、立体形状物品(成形品)等が挙げられる。
【0058】
被着材への積層方法としては、例えば、1)接着剤層を間に介して被着材に加圧ローラーで加圧して積層する方法、2)被着材の表面に発泡壁紙を、接着剤層を介して対向又は載置後、被着材(成形品)側からの真空吸引による圧力差により発泡壁紙を成形品表面に積層する、いわゆる真空プレス積層方法、3)円柱、多角柱等の柱に発泡壁紙を、接着剤層を介して供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、柱状体を構成する複数の側面に順次壁紙を加圧接着して積層してゆく、いわゆるラッピング加工法等がある。特に、凹凸立体物に貼り合わせる方法としては、ラッピング加工法が好ましい。
【0059】
本発明の発泡壁紙は、所定の成形加工等を施して各種用途に用いる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、家具又は弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輛内装、航空機内装、窓ガラスの化粧等の用途が挙げられる。
【発明の効果】
【0060】
本発明の発泡壁紙製造システムによれば、溶融押出し法を用いて簡便に発泡壁紙を製造できる。本発明のシステムによれば、カレンダー法では不可能な多層構造の原反を容易に製造できる上、エマルジョンコーティング法による不陸隠蔽に係る欠点もない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記手段を有することを特徴とする、発泡壁紙製造システム:
(1)エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、線状低密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の少なくとも1種と熱分解型発泡剤とを含有し、メルトフローレートが20〜50g/10分である発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しする手段1、
(2)手段1により溶融押出しされた樹脂シートの端部をトリミングする手段2、
(3)手段2によりトリミングされた樹脂シートを巻き取ることなく加熱し、樹脂シート幅を超える幅を有する紙質基材にラミネートする手段3、
(4)紙質基材と樹脂層との積層体に電子線を照射することにより、樹脂架橋する手段4、
(5)樹脂架橋後の積層体を加熱することにより、発泡樹脂層を形成する手段5。
【請求項2】
手段1において、融点が40〜90℃である樹脂を含有する接着層形成用組成物と、発泡剤含有樹脂層形成用組成物と、を同時溶融押出しし、
手段3において、接着層を紙質基材にラミネートする、
請求項1に記載の発泡壁紙製造システム。
【請求項3】
手段1において、線状低密度ポリエチレン樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の少なくとも1種を含有する表面強化層形成用組成物と、発泡剤含有樹脂層形成用組成物と、を同時溶融押出しし、
手段3において、表面強化層形成用組成物が紙質基材と接触しない態様で樹脂層と紙質基材とをラミネートする、
請求項1又は2に記載の発泡壁紙製造システム。
【請求項4】
接着層は、融点が40〜90℃の樹脂を含み、且つ、厚さが0.1〜30μmである、請求項2又は3に記載の発泡壁紙製造システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシステムを用いることにより製造される発泡壁紙。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のシステムを備えた発泡壁紙製造装置。

【公開番号】特開2007−98574(P2007−98574A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287236(P2005−287236)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】