説明

発泡成形体の製造方法

【課題】優れた電磁波シールド性を示す発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂及び導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物の発泡成形体の製造方法であって、発泡剤を含有する溶融状の導電性樹脂組成物を、金型キャビティ内に、キャビティの容積よりも少ない量で充填する充填工程と、金型キャビティの容積を維持したまま前記溶融状の導電性樹脂組成物を発泡させる発泡工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性を有する発泡成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と、導電性のフィラーを含有する樹脂組成物は、電磁波シールド性が必要とされる分野で使用されている。例えば、特許文献1には熱可塑性樹脂成形材料からなる成形品であって、加熱シリンダ内で溶融した発泡性熱可塑性樹脂成形材料を、キャビティ内に射出充填した後、前記金型面に接する表面層が固化し、内層が溶融している状態まで一次冷却し、次いでキャビティの容積を成形品の容積まで拡大し、内層の少なくとも一部を発泡させた後、二次冷却を行って成形品を取り出すことにより成形品を製造する成形品の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、繊維含有熱可塑性樹脂ペレットを成形原料とし、該成形原料中の繊維含有量が5〜80質量%であるものを溶融混練し、最終の成形品に相等する金型容積よりも小さくなるように閉じた金型中に溶融樹脂を射出し、樹脂の射出完了前若しくは完了後に金型を最終成形品の容積まで開くことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂軽量成形品の製造法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−128795号公報
【特許文献2】特開平10−119079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法で導電性繊維を含有する熱可塑性樹脂を用いて成形すると、樹脂充填後のキャビティ容積の拡大によって、導電性繊維同士の絡み合いが解けてしまい、得られる発泡成形体の電磁波シールド性が低下してしまうことがあった。
【0005】
以上の課題に鑑み、本発明では、優れた電磁波シールド性を示す発泡成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂及び導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物の発泡成形体の製造方法であって、発泡剤を含有する溶融状の導電性樹脂組成物を、金型キャビティ内に、キャビティの容積よりも少ない量で充填する充填工程と、金型キャビティの容積を維持したまま前記溶融状の導電性樹脂組成物を発泡させる発泡工程と
を有する発泡成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた電磁波シールド性を示す発泡成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る発泡成形体の製造方法で好ましく用いられる金型の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、以下のような充填工程と、発泡工程とを有する。
〔充填工程〕
本発明における充填工程とは、発泡剤を含有する溶融状の導電性樹脂組成物(以下溶融樹脂とする)を、金型キャビティ内に所定量充填する工程である。
【0010】
図1は本発明で好ましく用いられる成形用金型を用いて溶融樹脂を充填している様子を示す断面図である。金型1は、第一の型(雄型)10及び第二の型(雌型)20が対向して配置されている。第二の型20は、油圧又は電動機によって動作する開閉機構(図示せず)により往復運動する。第一の型10と第二の型20は、第二の型20の往復運動に伴って、第一の型10と第二の型20が接触した「閉状態」と、第一の型10と第二の型20が離間した「開状態」との間を移行し、第一の型10と第二の型20は、その間に所望形状のキャビティ30を形成する。
【0011】
第一の型10には、溶融樹脂を供給するためのゲートが設けられている。ゲートの数は、キャビティの形状や大きさによって異なるが、本実施形態ではゲートの数が1つの成形用金型を用いている。
図1において、ゲート11の一端は、それぞれ溶融樹脂供給路12に接続されている。この溶融樹脂供給路12は、射出装置の射出ノズルと接続されている。射出装置によって可塑化された溶融樹脂13は、溶融樹脂供給路12を通じてキャビティ30内に供給される。このときの溶融樹脂の充填量は、キャビティ容積よりも少ない量であり、好ましくはキャビティ容積の80〜99%に相当する量であり、より好ましくは85〜90%に相当する量である。溶融樹脂の充填量をこのような範囲とすることにより、発泡成形体の質量を低減することができる。なお溶融樹脂の供給量は、予めスクリュの前進ストロークから供給量を算出し、所望の供給量となるように前進ストローク量を調整することにより調整することが可能である。
【0012】
本工程では、溶融樹脂の充填中に金型キャビティのキャビティ容積を変化させながら前記溶融樹脂を充填してもよい。キャビティ容積は、キャビティクリアランスを変動させることにより変化させることができる。例えば溶融樹脂を供給している最中又は供給後にキャビティクリアランスを小さくしてキャビティ容積を小さくする方法や、溶融樹脂を供給している最中に、一旦キャビティクリアランスを小さくしてからキャビティクリアランスを大きくする方法などが挙げられる。
【0013】
なお、キャビティクリアランスを変動させているときのキャビティクリアランスの最大値は、(発泡成形体厚み+0.5)〜(発泡成形体厚み+10)mmであることが好ましい。このキャビティクリアランスが最大値となるのが溶融状態の樹脂組成物の供給開始前であっても、供給中であってもよい。
【0014】
上記の「一旦キャビティクリアランスを小さくしてからキャビティクリアランスを大きくする方法」の場合、即ち、用金型を開きながら溶融樹脂を供給する場合、まず第一の型と第二の型との間隔(キャビティクリアランス)が、所定間隔(L2)となるまで閉じた後に、溶融樹脂の供給を開始する。第一の型と第二の型との間隔(L2)には、特に制限はないが、0.5mm以上、10mm以下とすることが好ましい。間隔を0.5mm以上、10mm以下とすることで溶融状熱可塑性樹脂の供給圧力を低く、かつ、発泡成形体の外観を良好にすることができる。
次いで、第一の型と第二の型との間隔が、所定間隔(L3)となるまで開いていく。このときの間隔(L3)には、特に制限はないが、発泡成形体厚み+10mm以下とすることが発泡成形体の外観の観点から好ましい。
【0015】
第一の型及び第二の型の位置を調整する方法としては、射出成形機の型締め装置を用いて機械的に制御して調整する方法が挙げられる。また、第一の型及び第二の型の間のキャビティクリアランスを拡大する場合には、型締め装置の型締め力を溶融樹脂の供給圧力により若干開く程度に低く設定し、溶融樹脂の供給圧力により拡大する方法を採ってもよい。
【0016】
溶融樹脂中の発泡剤としては、化学発泡剤や物理発泡剤が挙げられる。化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤や有機系化学発泡剤等が挙げられる。無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウムが挙げられる。有機系化学発泡剤としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸等のポリカルボン酸又はポリカルボン酸の塩;アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、スルホニルセミカルバジド系化合物、イソシアネート化合物が挙げられる。上記化学発泡剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガスが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素、窒素が好ましい。また、物理発泡剤は単独又は2種以上組み合わせて用いても、化学発泡剤と組み合わせてもよい。
また、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は、樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状態の熱可塑性樹脂中に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造を有する発泡成形体を得ることができる。
【0018】
化学発泡剤を添加する方法としては、化学発泡剤を熱可塑性樹脂に予め混合してもよく、成形機のバレルの途中から注入してもよい。また、化学発泡剤は粉末状のものでもよく、マスターバッチ状のものでもよい。
物理発泡剤を添加する方法としては、物理発泡剤を成形装置のバレル内に注入する方法が挙げられる。
【0019】
〔発泡工程〕
本発明における発泡工程とは、金型キャビティの容積を維持したまま金型キャビティ内に充填された溶融樹脂を発泡させる工程である。具体的には、金型キャビティのキャビティクリアランスを所定の位置に固定したまま(即ち、金型は動かさない)発泡させることをいう。このときのキャビティクリアランスは、発泡成形体厚みであり、0.3〜1.5mmであることがより好ましく、0.4〜1.0mmであることが更に好ましい。
なお、充填工程で金型キャビティのキャビティ容積を変化させながら前記溶融樹脂を充填した場合には、充填工程完了後のキャビティクリアランスを、所望の発泡体の厚みになるように調整してからキャビティクリアランスを固定して発泡させることが好ましい。
【0020】
このような方法で発泡させることにより、導電性繊維同士の接触効率を高め電磁波シールド性を向上させることが可能となる。所謂コアバックで発泡させた場合、キャビティ容積の拡大により発泡成形体の体積が増加するため、発泡成形体内の繊維同士の距離が離れ、繊維同士の接触が少なくなり発泡成形体の電磁波シールド性が低下してしまうことがある。
金型キャビティ内に充填された溶融樹脂は、発泡が完了し、固化するまで所定時間冷却される。冷却時間は、使用する熱可塑性樹脂や発泡剤の種類、キャビティ形状により異なるが通常、数秒〜数分である。
【0021】
本発明はオーバーモールド成形、インサート成形や2色射出成形法を用いて、2層成形体を製造する方法、サンドイッチ成形法や上記の成形方法を組合せ等を用いて多層の射出成形体を製造する方法など、いずれの射出成形法を用いてもよい。
【0022】
なお、本発明に係る方法を用いて多層の成形体を製造する場合、キャビティクリアランスは発泡成形体の最終厚みが所望の値となるように設定する必要がある。
発泡成形体に他の層が存在する場合、溶融樹脂を金型キャビティに充填完了後のキャビティクリアランスは(他の層の厚み+発泡成形体の最終厚み)として設定することが好ましい。
【0023】
本発明に係る方法を用いて製造された発泡成形体は、軽量化および導電性繊維の絡み合いという観点から、厚さが0.3〜1.5mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。発泡成形体は自動車部品、家電部品、日用品、その他工業用製品等における電磁波シールド機能が必要とされる部品に使用することが可能である。
【0024】
次いで上記導電性樹脂組成物の各成分について説明する。本発明における導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂50〜99質量%及び導電性繊維1〜50質量%を含有する(但し、熱可塑性樹脂及び導電性繊維の合計量を100質量%とする)。
〔熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルイミド、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは単独重合体であっても、他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリスチレンとしては、汎用ポリスチレン(GPPS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。これらのうちポリオレフィンを用いることが好ましく、ポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0025】
ポリエチレンとしては、エチレン単独重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、これらの混合物等が挙げられる。
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンとのブロック共重合体(以下、プロピレン−エチレンブロック共重合体とする)、エチレンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、又は、これらの混合物等が挙げられる。
上記プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体中のα−オレフィンとしては、例えば炭素原子数4〜8のα−オレフィンが挙げられる。また、プロピレン−エチレンランダム共重合体、炭素原子数4〜8のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体中のエチレン、α−オレフィンに由来する構成単位の含有量としては1〜49質量%であることが好ましい。
【0026】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンの単独重合によって得られる結晶性プロピレン単独重合部分と、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分と、を有する共重合体をいう。
得られる発泡成形体の軽量化や耐衝撃性の観点から、プロピレン−エチレンブロック共重合体中の結晶性プロピレン単独重合部分の含有量は、60〜95質量%であることが好ましく、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分の含有量は、40〜5質量%であることが好ましい(但し、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全質量を100質量%とする)。
また、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分に含有されるエチレン由来の構成単位の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい。
【0027】
ポリプロピレンとして、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の混合物を用いる場合、得られる発泡成形体の外観を良好にするという観点から、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい(但し、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の全量を100質量%とする)。
【0028】
熱可塑性樹脂のメルトフローレート(以下、MFRともいう)は20g/10分以上であることが好ましく、50g/10分以上であることがより好ましい。メルトフローレートを20g/10分以上とすることによって、導電性繊維の分散状態を良好にすることができ、導電性繊維の絡み合いが良好な発泡成形体を得ることが可能となる。なお、本発明におけるメルトフローレートは、JIS K 7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0029】
〔導電性繊維〕
本発明で用いられる導電性繊維とは、金属繊維、金属が被覆された有機繊維、金属が被覆された無機繊維、又は、炭素繊維が挙げられる。これらのうち金属繊維又は金属が被覆された有機繊維を用いることが好ましく、金属が被覆された有機繊維を用いることがより好ましい。有機繊維に金属が被覆されたものであると、得られる発泡成形体の比重が小さくなるとともに、成形中に繊維が折れて短くなることが少なく、繊維同士が絡みやすくなる。
導電性繊維として、金属繊維を用いる場合、好ましい金属種としては、ステンレス、黄銅、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、チタン、錫、亜鉛、マグネシウム、白金、ベリリウム、これらの金属種の合金、又は、これらの金属種とリンとの化合物等からなる金属が挙げられる。これらの金属種の中では、黄銅、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、チタンであることが好ましく、ステンレス、銅であることがより好ましい。
【0030】
また、導電性繊維として、金属が被覆された有機繊維を用いる場合、有機繊維は、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、綿、麻等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。
金属が被覆された無機繊維を用いる場合、無機繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、ケイ酸カルシウム繊維、酸化マグネシウム繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、水酸化マグネシウム繊維、石膏繊維等が挙げられる。
上記有機繊維又は無機繊維を被覆する金属としては、例えば、銅、黄銅、金、銀、ニッケル、アルミ、錫、亜鉛などが挙げられる。これらは単独又は2種以上の組合せて用いることが可能である。金属の被覆方法は、特に限定されないが、無電界メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法が挙げられる。金属の被覆量は使用する繊維や金属の種類によって適宜決められるが、繊維表面上に厚さ0.1〜1.0μmで被覆されることが好ましい。
【0031】
導電性繊維の平均繊維長は、1〜20mmであり、1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜6mmである。導電性繊維の長さが上記範囲であると、高い電磁波シールド効果をより少ない導電性繊維添加量で得ることができる。繊維の長さが1mm未満であると、導電性繊維同士の絡まりが少なくなり、導電性繊維同士の接点が少なくなるために、得られる発泡成形体の電磁波シールド性能が低くなる傾向にある。また、繊維の長さが20mmを超えると繊維同士の絡み合いが過度に生じて、樹脂組成物の流動性が低下し、成形機内で詰まるなどの不具合が生じることがある。
なお、本発明における、導電性繊維の平均繊維長は、導電性樹脂組成物中の導電性繊維の長さをいう。樹脂組成物中の導電性繊維の平均繊維長は、樹脂組成物中の樹脂成分を溶剤で溶かしたり、燃焼させたりなどして除去した後、残渣として得られた約500本の繊維の長さを計測し、その平均値を用いている。
【0032】
導電性繊維の断面形状は特に限定されないが、略円形であることが好ましい。導電性繊維の繊維径は、1〜100μmの範囲にあることが好ましく、5〜80μmであることがより好ましい。ここで、導電性繊維の繊維径は、同じ断面積を有する円に換算した時の繊維径をいう。導電性繊維の繊維径は、例えば、繊維の断面を顕微鏡などで拡大し、写真撮影をした後、スケールあるいはデジタイザーなどの測定器具を用いて測定することができる。
繊維径が1〜100μmの範囲にあると、発泡成形体中で導電性繊維同士を効率的に接触させることが可能であるため、少ない含有量で十分な導電性を得ることができる。繊維径が1μm未満であると、成形中に繊維が切れて短くなるため、導電性繊維同士の接触が起こりにくくなる傾向にある。また、繊維径が100μmを超えると繊維が剛直になるために、繊維同士のからみあいが起こりにくくなり、導電性繊維同士の接触が起こりにくくなる傾向にある。
【0033】
導電性樹脂組成物中の導電性繊維の含有量は、得られる発泡成形体の電磁波シールド性や外観という観点から1〜50質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、3〜10質量%がさらに好ましい。
本発明において、導電性樹脂として、プルトルージョン法により導電性繊維を溶融状の熱可塑性樹脂に含浸させて一体化させたペレットを用いてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、溶融樹脂に含有される熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0034】
導電性樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。公知のブレンド方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と導電性繊維と必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。
また導電性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、造核剤、分散剤、可塑剤、銅害防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【実施例】
【0035】
以下本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
実施例で使用した射出成形機、金型、成形条件及び評価法は、以下のとおりである。
【0036】
(1)電磁波シールド性能の評価
電磁波シールド性能を評価するために、得られた成形品の体積抵抗率の測定を行った。上記成形品の中央部から、100×100の大きさの試験片を切り出し、樹脂組成物の流れと平行な方向(MD方向)の両端部に銀ペースト(福田金属箔粉工業製シルコートRL−10)を塗布し、乾燥させた後、銀ペースト塗布部にミリオームテスターの電極を当てて、抵抗値(内部抵抗値)を測定し、以下の式により体積抵抗率を算出した。
体積抵抗率:Ωcm=(抵抗値×断面積)/測定距離
断面積:試験片幅×成形品板厚
測定距離:10cm
【0037】
[実施例1]
射出成形機として、エンゲル社製ES2550/400HL−MuCell(型締力400トン)、金型として、寸法が290mm×370mm、高さ45mm、厚み0.5mmtの箱型形状(ゲート構造:バルブゲート、発泡成形体中央部分)のキャビティを有する雌雄一対の金型を用いて射出発泡成形を実施した。
導電性樹脂組成物として熱可塑性樹脂(ホモポリプロピレン、商品名:住友ノーブレンU501E1、MFR:120g/10分)を90質量%、導電性繊維含有マスターバッチ(ダイワボウオーシャンテック株式会社製、商品名:メタックス(銅メッキ繊維60質量%含有、繊維長5mm))を10質量%でドライブレンドしたものを用いた。
【0038】
上記導電性樹脂組成物を、射出成形機に投入し、溶融させた。次いで発泡剤である二酸化炭素を、溶融状態の樹脂組成物に前記射出成形機のシリンダ内に9MPaに加圧して供給した(発泡剤注入量 充填する樹脂組成物の質量100質量部に対し1質量部)。
成形温度230℃、型温40℃で、キャビティクリアランスが0.5mmとなるように型締めした金型キャビティ内に発泡剤含有の溶融状態の樹脂組成物を射出し、キャビティクリアランスを固定して樹脂組成物を冷却し、固化して厚みが0.5mmの発泡成形体を得た。このときの充填量は金型キャビティ容積の93%であった。
この発泡成形体の抵抗値を評価した。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
金型キャビティ内に溶融樹脂を射出した後、金型を1.0mm開き発泡させたこと以外、実施例1と同様の方法で発泡成形体を製造し、抵抗値を評価した。結果を表1に示す。なお、このときの充填量は金型キャビティ容積の93%であった。
【0040】
【表1】

【符号の説明】
【0041】
1 金型
10 第一の型
11 ゲート
12 溶融樹脂供給路
13 溶融樹脂
20 第二の型
30 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物の発泡成形体の製造方法であって、
発泡剤を含有する溶融状の導電性樹脂組成物を、金型キャビティ内に、キャビティの容積よりも少ない量で充填する充填工程と、
金型キャビティの容積を維持したまま前記溶融状の導電性樹脂組成物を発泡させる発泡工程と
を有する発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記充填工程は、前記金型キャビティのキャビティ容積を変化させながら溶融状の導電性樹脂組成物を充填する工程である請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記充填工程における前記溶融状の導電性樹脂組成物の充填量は、前記キャビティの容積の80〜99%に相当する量である請求項1又は2に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記導電性繊維の平均繊維長は、1mm〜20mmである請求項1〜3いずれかに記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡工程における前記金型キャビティのキャビティクリアランスは、0.3〜1.5mmである請求項1〜4いずれかに記載の発泡成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−135943(P2012−135943A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289618(P2010−289618)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】