説明

発泡成形用射出成形機

【課題】加熱シリンダの計量樹脂溜め部に供給された物理発泡剤がチェックリングを超えてスクリュー本体側に逆流せず、均質な発泡成形品を成形可能な発泡成形用射出成形機を提供する。
【解決手段】サックバック時に樹脂通路を機械的にロック可能なロック機構付きのチェックリング24を、スクリュー14の先端部に取り付ける。スクリュー14を回転駆動して、計量樹脂溜め部16に所定量の溶融樹脂が蓄えられた後、樹脂通路を機械的に遮断し、計量樹脂溜め部16内に物理発泡剤を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形用射出成形機に係り、特に、超臨界流体を発泡剤として用いる射出装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超臨界流体を発泡剤として用いる発泡成形用の射出成形機が種々提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。これらの各公知例のうち、特許文献1の図18には、ポリマー材料を投入するためのホッパーアセンブリが連結された混合スクリューの収納部と、該収納部の前方に配置された静的ミキサーと、該静的ミキサーの前方に配置された拡散チャンバとを有し、該拡散チャンバの先端部に溶融樹脂の射出孔が開設された押出バレルを射出装置に備え、混合スクリューの収納部におけるホッパーアセンブリの連結位置よりも前方側に超臨界状態のCOガスの導入口が設定された発泡成形用の射出成形機が記載されている。
【0003】
また、特許文献2の図2〜図5には、スクリューと、該スクリューが回転可能かつ前後進可能に収納された可塑化シリンダーを備え、該可塑化シリンダーの先端部に開設された溶融樹脂の射出孔に、超臨界状態のCOガスやNガスの導入口が設定された射出装置を有する発泡成形用の射出成形機が記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3の図2〜図6には、前端側に逆流防止用のチェックリングが取り付けられたスクリューと、該スクリューが回転可能かつ前後進可能に収納された射出用シリンダと、該射出用シリンダの計量樹脂溜め部に超臨界状態のCOガスやNガスを注入する発泡剤注入機構とを備え、該発泡剤注入機構により、計量樹脂溜め部の前側から後ろ側に至る複数位置から計量樹脂溜め部内に、超臨界状態のCOガスやNガスを注入する射出装置を有する発泡成形用の射出成形機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2625576号公報
【特許文献2】特開2007−130982号公報
【特許文献3】特開2008−1015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の射出成形機は、押出バレルにおける混合スクリューの収納部に超臨界状態のCOガスを導入するので、拡散チャンバ内に蓄えられた溶融樹脂だけでなく、押出バレル内に残留した溶融樹脂にも拡散する。拡散チャンバ内に蓄えられたポリマー溶融材料とCOガスの混合体は、静的ミキサーを通過しており、しかも高温・高圧に保持されているので、完全な一相溶液となり、かつ気泡の成長が抑制されるが、押出バレル内に残留したポリマー溶融材料とCOガスの混合体は、静的ミキサーを通過しておらず、しかも拡散チャンバ内よりも低温かつ低圧に保持されているので、完全な一相溶液とはならず、かつ気泡が成長しやすい。このため、各ショット毎に金型キャビティ内に射出される混合体中のCOガスの拡散状態が不均一になり、均質な成形体を得ることが難しいという問題がある。また、(未発泡剤の密度/発泡剤の密度)で定義される発泡倍率を上げること、及び平均気泡径を小さくすることが難しいという問題もある。
【0007】
特許文献2に記載の射出成形機は、可塑化シリンダーの先端部に開設された溶融樹脂の射出孔内に超臨界状態のCOガスやNガスを導入するので、特許文献1に記載の射出成形機よりは、スクリューの設定部に残存する溶融樹脂へのCOガスやNガスの拡散が抑制されるものと考えられるが、スクリューの先端側に逆流防止用のチェックリングが備えられていないので、スクリューの設定部に残存する溶融樹脂へのCOガスやNガスの拡散をほとんど防止することができず、特許文献1に記載の射出成形機と同様の不都合が生じる。
【0008】
これに対して、特許文献3に記載の射出成形機は、スクリューの先端側にチェックリングが備えられており、かつ、当該チェックリングの設定位置よりも前方の計量樹脂溜め部に超臨界状態のCOガスやNガスを注入するので、特許文献1,2に記載の射出装置を備えた射出成形機よりも、チェックリングの設定位置よりも後方側に存在する溶融樹脂にCOガスやNガスが拡散しにくい構造になっている。しかしながら、特許文献3に記載の射出成形機は、サックバック時におけるチェックリングの前方側から後方側への溶融樹脂及びCOガスやNガスの逆流について何ら考慮されていないので、現実的には、上述した各種の不都合を防止することができない。
【0009】
即ち、従来知られている一般的な逆流防止用のチェックリングは、スクリューヘッドとスクリュー本体との間に設けられた小径の頸部に、所定量前後進可能かつ回転可能に遊嵌した構成となっている。そして、スクリューを樹脂の可塑化方向に回転することにより、スクリュー本体側から前方側に送り込まれる溶融樹脂の樹脂圧によって、チェックリングが前方に位置している際には、チェックリングがスクリュー本体側のチェックシートから離間した開放状態となって、チェックリングとチェックシートとの間には溶融樹脂の通路が形成され、この通路を通って、溶融樹脂がスクリューヘッドの前方側に送り込まれる。また、計量完了後の射出行程においては、スクリューを急速前進させてスクリューの前方側に貯えた溶融樹脂を金型内に射出・充填するが、この際には、スクリューの急速前進によって高まるスクリュー前方側の樹脂圧と、スクリューの急速前進によって下がるスクリュー本体側の樹脂圧との差圧によって、チェックリングが直ちに後方に移動して、チェックリングがスクリュー本体側のチェックシートに密着した閉塞状態に移行し、これによって、スクリューの前方側からスクリュー本体側への溶融樹脂の逆流が防止される。
【0010】
ところで、計量が完了した後、スクリューの前方側に貯えられた溶融樹脂の樹脂圧が高いと、加熱シリンダ先端のノズルから溶融樹脂が垂れ出すドルーリング現象が生じるため、計量完了後にスクリューを強制的に後退させるサックバック動作を行って、スクリュー前方側の樹脂圧を減圧させることがしばしば行われる。
【0011】
しかし、サックバック動作を行うと、スクリューの強制後退によってスクリュー前方側の樹脂圧が減じられ、チェックリングがスクリューヘッド側に移動するので、スクリュー本体側からスクリュー前方側に溶融樹脂が流れ込み、せっかく計量した樹脂量が変動して、成形品重量にバラツキを生じてしまう。また、スクリューヘッドの前方側に超臨界状態のCOガスやNガスを注入するタイプの射出成形機においては、この際に、COガスやNガスが溶融樹脂と共に溶融樹脂通路を通ってスクリュー本体側に逆流するので、上述した種々の不都合を生じることになる。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加熱シリンダの計量樹脂溜め部に供給された超臨界状態のCOガスやNガスがチェックリングを超えてスクリュー本体側に逆流せず、均質かつ高品質の発泡成形体を成形可能な発泡成形用の射出成形機を提供することにある。なお、以下においては、超臨界状態のCOガスやNガスを、「物理発泡剤」という。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するため、スクリュー本体とその先端部に取り付けられたスクリューヘッドとを有し、前記スクリュー本体と前記スクリューヘッドとの間に設けられた小径の頸部に逆流防止用のチェックリングが前後進可能かつ回転可能に遊嵌されたスクリューと、当該スクリューを前後進可能かつ回転可能に収納する加熱シリンダと、前記スクリューの外面先端部と前記加熱シリンダの内面先端部とで構成される計量樹脂溜め部に物理発泡剤を供給する発泡剤供給装置とを備え、前記計量樹脂溜め部に蓄えられた溶融樹脂と物理発泡材の混合体を金型キャビティ内に射出充填し、所要の発泡成形体を成形する射出成形機において、前記チェックリングは、前記スクリュー本体側に備えられたチェックシートに密着した閉塞状態では溶融樹脂の流通を不能とし、前記チェックリングが前記チェックシートから離間した開放状態では溶融樹脂の流通を可能とするもので、前記チェックシートに強制的密着させるロック機構を有しており、前記発泡剤供給装置は、前記ロック機構により前記チェックリングが前記チェックシートに密着された後であって、前記金型キャビティ内への前記混合体の射出充填が開始される前に、前記計量樹脂溜め部内に物理発泡剤を供給することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によると、ロック機構によりチェックリングがチェックシートに密着された後に計量樹脂溜め部内に物理発泡剤を供給するので、物理発泡剤がチェックリングを超えて、スクリュー本体側に蓄えられた溶融樹脂内に拡散することがなく、各ショット毎における金型キャビティ内に射出される混合体中の物理発泡剤の拡散状態を均一化することができて、均質な成形体を得ることができる。また、適度な圧力管理や温度管理を施すことにより、発泡倍率の引き上げや平均気泡径の小径化を容易に行うことができる。
【0015】
また本発明は、前記構成の射出成形機において、前記ロック機構は、前記スクリューヘッドの後端に設けられ、前記チェックリング側に突出する係止爪部と、前記チェックリングにおける前記スクリューヘッド側の端部に設けられた前記係止爪部の収納凹部と、該収納凹部と連なり、前記スクリューヘッド側に突出する係止部とからなり、前記スクリューが溶融樹脂を前方に送り込む方向に回転しているときには、前記係止爪部が前記収納凹部に嵌まり込んで、前記チェックリングが前記チェックシートから離間し、この状態から前記スクリューを所定量逆回転すると、前記係止爪部の端面が前記係止部の端面に乗り上げて、前記チェックリングを前記チェックシートに強制的に密着することを特徴とする。
【0016】
サックバックは、スクリューをいずれの方向にも回転することなく後退させる動作であるので、スクリューヘッドに形成された係止爪部の端面がチェックリングにおけるスクリューヘッド側の端部に形成された係止部の端面に乗り上げて、チェックリングがチェックシートに密着されている状態でサックバックを行っても、係止爪部の端面と係止部の端面との突き合わせ状態が維持され、チェックリングはチェックシートに密着され続ける。このため、サックバックにより、スクリューヘッドの前方側の樹脂圧が下がり、スクリューヘッドをスクリュー本体側から前方に押圧する樹脂圧が、スクリューヘッドの前方側の樹脂圧よりも大きくなっても、スクリュー本体側からチェックリングを通って計量樹脂溜め部内に溶融樹脂が流入せず、計量樹脂量のバラツキを低減させることができる。また、計量樹脂溜め部からスクリュー本体側への物理発泡剤の拡散も防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、機械的・強制的にチェックシートに密着させることが可能なロック機構付きのチェックリングをスクリューに備えるので、サックバック動作時に計量樹脂溜め部からスクリュー本体側に物理発泡剤が拡散せず、各ショット毎における金型キャビティ内に射出される混合体中の物理発泡剤の拡散状態を均一化することができて、均質な成形体を得ることができる。また、適度な圧力管理や温度管理を施すことにより、発泡倍率の引き上げや、平均気泡径の小径化を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る射出成型機の構成図である。
【図2】実施形態に係るスクリューの正転時の状態を示す要部断面図である。
【図3】実施形態に係るスクリューの一定量逆転したときの状態を示す要部断面図である。
【図4】射出成形品の断面の顕微鏡写真である。
【図5】射出成形品の発泡倍率を示すグラフである。
【図6】射出成形品中に形成される気泡の平均気泡径を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、実施形態に係る射出成形機は、機台1上において対向に配置された射出装置2及び型締め装置3と、射出装置2の計量樹脂溜め部に物理発泡剤を供給する発泡剤供給装置4とを備えている。
【0020】
射出装置2は、インラインスクリュー式であって、先端部に射出ノズル11を備え、後端側に原料供給用のホッパ12を備えた加熱シリンダ13と、該加熱シリンダ13内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュー14と、該スクリュー14を加熱シリンダ13内で回転駆動及び前後進駆動する動力部15とを備えている。加熱シリンダ13の外周には、図示しないバンドヒータが巻装されており、ホッパ12から加熱シリンダ13内に供給された原料樹脂ペレットを所定の温度で加熱するようになっている。なお、動力部15は、計量用モータと、計量用モータの回転力をスクリューに伝達する回転機構部と、射出用モータと、射出用モータの回転力を直進運動に変換してスクリューに伝達するボールねじ機構などの運動変換機構等から構成されるが、公知に属する事項であり、かつ本発明の要旨でもないので、これ以上の説明を省略する。
【0021】
スクリュー14は、図2及び図3に示すように、外周面に螺旋溝が形成されたスクリュー本体21と、該スクリュー本体21の先端部に取り付けられたスクリューヘッド22とから構成されており、これらスクリュー本体21とスクリューヘッド22との間に形成された小径の頸部23には、逆流防止用のチェックリング24が回転可能かつ前後進可能に遊嵌されている。また、スクリュー本体21の先端面には、チェックリング24の密着時に樹脂通路を遮断するチェックシート25が固設されている。
【0022】
スクリューヘッド22の後端には、チェックリング24側に突出する係止爪部22aが形成され、スクリューヘッド22の外周面には、軸方向に平行な溝22bが形成されている。一方、チェックリング24のスクリューヘッド22側の端部には、係止爪部22aを収納可能な凹部24aと、該凹部24aに連なって、スクリューヘッド22側に突出する係止部24bと、これら凹部24aと係止部24bとの間に設けられたテーパー面24cと、チェックシート25に密着する平坦なシール面24dと、チェックリング24の軸方向に貫通する樹脂通路24eが形成されている。上述の係止爪部22a、凹部24a及び係止部24bは、チェックリング24をチェックシート25に強制的に密着させるロック機構を構成する。
【0023】
即ち、スクリュー14が溶融樹脂を前方に送り込む方向に回転しているときには、図2に示すように、スクリューヘッド22に形成された係止爪部22aが、チェックリング24に形成された凹部24aに嵌まり込む回転位相関係となり、かつチェックリング24は、スクリュー本体21側から前方に送り出される溶融樹脂の圧力で前方に移動するので、スクリューヘッド22の係止爪部22aは、チェックリング24の凹部24aに嵌まり込んだ状態になる。また、この状態においては、チェックリング24がチェックシート25から離間するので、チェックリング24のシール面24dとチェックシート25との間に樹脂通路が形成される。
【0024】
この状態からスクリュー14を所定量だけ逆回転すると、スクリューヘッド22の係止爪部22aが、チェックリング24のテーパー面24cに案内されてチェックリング24の係止部24b上に乗り上げる。これにより、チェックリング24が後方に押し下げられて、図3に示すように、チェックリング24がチェックシート25に密着し、スクリューヘッド22及びチェックリング24に形成された樹脂通路が遮断されると共に、チェックリング24は、スクリューヘッド22とチェックシート25とで挾持されて、前後方向の動きを拘束された状態となる。
【0025】
スクリューヘッド22の係止爪部22aがチェックリング24の係止部24b上に乗り上げた状態では、図3のA部拡大図に示すように、スクリューヘッド22の係止爪部22aとチェックリング24の係止部24bとは、互いに平坦面同士で当接し合った状態となるので、チェックリング24に対して樹脂圧による軸方向の推力が作用しても、チェックリング24に対して回転方向の分力が作用する虞は一切ない。したがって、図3に示した状態からサックバックを行い、スクリューヘッド22の前方側の樹脂圧が下がり、スクリューヘッド22をスクリュー本体21側から前方に押圧する樹脂圧が、スクリューヘッド22の前方側の樹脂圧よりも大きくなっても、チェックリング24が回転してチェックリング24の係止部24bがスクリューヘッド22の係止爪部22aから外れず、チェックリング24はチェックシート25に密着した状態で確実に維持される。
【0026】
型締め装置3は、機台1上において対向に配置されたテールストック31及び固定ダイプレート32と、これらテールストック31と固定ダイプレート32とに両端が連結された複数本のタイバー33と、テールストック31と固定ダイプレート32との間に配置され、タイバー33に案内されて、固定ダイプレート32に接近する方向又は固定ダイプレート32から離隔する方向に移動する可動ダイプレート34と、テールストック31に取り付けられ、可動ダイプレート34を前後進駆動する動力部35と、固定ダイプレート32に取り付けられた固定側金型36と、可動ダイプレート34に取り付けられた可動側金型37を備えている。固定側金型36と可動側金型37の合わせ面には、成形品の成形部である所定形状の図示しない金型キャビティが形成されており、金型キャビティは、射出ノズル11から射出される混合体を受け入れる図示しないスプールと連通している。なお、動力部35は、型開閉用モータと、型開閉用モータの回転力を直進運動に変換するボールねじ機構などの運動変換機構と、運動変換機構の直進力を倍力して可動ダイプレート34に伝達するトグル機構などの倍力機構等から構成されるが、公知に属する事項であり、かつ本発明の要旨でもないので、これ以上の説明を省略する。
【0027】
固定側金型36は、動力部35から供給される動力により可動ダイプレート34を固定ダイプレート32側に前進することによって固定側金型36と型締めされ、金型キャビティ内への混合体の射出・充填が可能になる。また、動力部35から供給される動力により可動ダイプレート34を固定ダイプレート32から離隔することにより、固定側金型36から型開きされ、金型キャビティからの成形品の取り出しが可能になる。
【0028】
発泡剤供給装置4は、COガスやNガスなどの原料ガスを貯えるボンベ41と、ボンベ41から供給される原料ガスを高温高圧にして超臨界状態の物理発泡剤とする超臨界流体生成装置42と、超臨界流体生成装置42から供給される物理発泡剤を、各ショット毎に計量樹脂溜め部16に注入する発泡剤注入部43とから構成される。
【0029】
以下、上述のように構成された射出成形機の動作について説明する。
【0030】
バンドヒータに通電した状態で、射出装置2の動力部15から供給される動力によりスクリュー14を特定の一方向に回転すると、ホッパ12内の原料樹脂ペレットが重力の作用により加熱シリンダ13内に順次導入される。加熱シリンダ13内に供給された原料樹脂ペレットは、スクリュー14の送り作用によって順次加熱シリンダ13の前方へと移送され、この間に、バンドヒータから与えられる熱と、スクリュー14を回転することにより原料樹脂ペレット間に発生する剪断熱及び摩擦熱の作用によって溶融される。上述のように、スクリュー14が溶融樹脂を前方に送り込む方向に回転しているときには、スクリューヘッド22の係止爪部22aがチェックリング24の凹部24aに嵌まり込み、チェックリング24がチェックシート25から離間するので、チェックリング24のシール面24dとチェックシート25との間に樹脂通路が形成され、スクリュー本体21側から前方に送り出された溶融樹脂は、チェックリング24とチェックシート25との間の樹脂通路、チェックリング24に穿設された貫通孔24e、及びスクリューヘッド22に形成された溝22bを通ってスクリューヘッド22の前方側に送り込まれ、加熱シリンダ13の内面先端部とスクリュー14の外面先端部との間に形成される計量樹脂溜め部16に貯えられる。
【0031】
所定量の溶融樹脂が計量樹脂溜め部16に貯えられた後、スクリュー14を所定量だけ逆回転して、チェックリング24をチェックシート25に密着させる。上述のように、スクリュー14を所定量だけ逆回転した場合には、チェックリング24がチェックシート25に密着し、スクリューヘッド22及びチェックリング24に形成された樹脂通路が機械的に遮断されるので、計量樹脂溜め部16からチェックリング24の後方側への溶融樹脂の逆流が防止される。
【0032】
所定量の溶融樹脂が貯えられた後、計量樹脂溜め部16には、発泡剤供給装置4から所定量の物理発泡剤が供給される。これにより、計量樹脂溜め部16に蓄えられた溶融樹脂は、物理発泡剤が均一に分散された溶融樹脂と物理発泡剤との混合体となる。この状態においても、チェックリング24がチェックシート25に密着されたままであるので、計量樹脂溜め部16からチェックリング24の後方側への物理発泡剤の拡散が防止される。物理発泡剤の注入後、スクリュー14は溶融樹脂のドローリングを防止するためにサックバックされるが、サックバック時においても、チェックリング24とチェックシート25との密着状態が維持されるので、計量樹脂溜め部16からチェックリング24の後方側への物理発泡剤の拡散が防止される。
【0033】
しかる後に、動力部15から供給される動力によりスクリュー14を急速に前進すると、計量樹脂溜め部16に蓄えられた溶融樹脂と物理発泡剤の混合体がスクリュー14により押されて、金型キャビティ内に射出・充填され、所要の発泡成形品が成形される。
【0034】
上述のように、実施形態に係る発泡成形用射出成形機は、サックバック時においても計量樹脂溜め部16からチェックリング24の後方側への物理発泡剤の拡散を防止可能なチェックリング24をスクリュー14に設け、チェックリング24をチェックシート25に密着して、計量樹脂溜め部16からチェックリング24の後方側への物理発泡剤の拡散を防止した状態で、計量樹脂溜め部16に物理発泡剤を供給するので、物理発泡剤の拡散領域を計量樹脂溜め部16内のみに限定することができる。よって、各ショット毎における金型キャビティ内に射出される混合体中の物理発泡剤の拡散状態を均一化することができるので、均質な成形体を得ることができると共に、適度な圧力管理や温度管理を施すことにより、発泡倍率の引き上げや、平均気泡径の小径化を容易に行うことができる。
【0035】
以下、実施形態に係る発泡成形用射出成形機の効果を、チェックリングの取付位置よりも後方で加熱シリンダ内に物理発泡剤を供給する、比較例に係る発泡成形用射出成形機との比較で説明する。
【0036】
図4は、射出成形品の断面の顕微鏡写真であり、(a1)〜(a3)の列は実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の顕微鏡写真、(b1)〜(b3)の列は比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の顕微鏡写真である。(a1)及び(b1)は板状に成形された射出成形品のゲートから近い部分の顕微鏡写真、(a2)及び(b2)は中間部分の顕微鏡写真、(a3)及び(b3)はゲートから遠い部分の顕微鏡写真である。これらの各写真を比較することにより明らかなように、実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品は、内部に形成される気泡が微細で、成形部位に拘わらず気泡径が比較的安定しているのに対して、比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品は、内部に形成される気泡が粗大で、かつゲートから離れるほど極端に気泡の直径が大きくなる。
【0037】
図5は、射出成形品の発泡倍率を示すグラフであり、図5(a)は実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の発泡倍率、図5(b)は比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の発泡倍率である。これらの各図において、横軸にはショットナンバーが目盛られ、縦軸には発泡倍率が目盛られている。これらの各図を比較することにより明らかなように、比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の発泡倍率は、1.0〜1.3ほどであるのに対して、実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の発泡倍率は、1.3〜1.7ほどであり、実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いると、比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いる場合に比べて、射出成形品の発泡倍率を改善できることが分かる。
【0038】
図6は、射出成形品中に形成される気泡の平均気泡径を示すグラフであり、図6(a)は実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の平均気泡径、図6(b)は比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の平均気泡径である。これらの各図において、横軸にはショットナンバーが目盛られ、縦軸には平均気泡径が目盛られている。これらの各図を比較することにより明らかなように、比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の平均気泡径は、10〜600μmほどであるのに対して、実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いて成形された射出成形品の平均気泡径は、1〜12μmほどであり、実施形態に係る発泡成形用射出成形機を用いると、比較例に係る発泡成形用射出成形機を用いる場合に比べて、射出成形品の平均気泡径を微細化できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、スクリュー式射出装置を備えた射出成形機に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 機台
2 射出装置
3 型締め装置
4 発泡剤供給装置
11 射出ノズル
12 ホッパ
13 加熱シリンダ
14 スクリュー
15 動力部
21 スクリュー本体
22 スクリューヘッド
22a 係止爪部
22b 溝
23 頸部
24 チェックリング
24a 凹部
24b 係止部
24c テーパー面
24d シール面
24e 樹脂通路
25 チェックシート
31 テールストック
32 固定ダイプレート
33 タイバー
34 可動ダイプレート
35 動力部
36 固定側金型
37 可動側金型
41 ボンベ
42 超臨界流体生成装置
43 発泡剤注入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー本体とその先端部に取り付けられたスクリューヘッドとを有し、前記スクリュー本体と前記スクリューヘッドとの間に設けられた小径の頸部に逆流防止用のチェックリングが前後進可能かつ回転可能に遊嵌されたスクリューと、当該スクリューを前後進可能かつ回転可能に収納する加熱シリンダと、前記スクリューの外面先端部と前記加熱シリンダの内面先端部とで構成される計量樹脂溜め部に物理発泡剤を供給する発泡剤供給装置とを備え、前記計量樹脂溜め部に蓄えられた溶融樹脂と物理発泡材の混合体を金型キャビティ内に射出充填し、所要の発泡成形体を成形する射出成形機において、
前記チェックリングは、前記スクリュー本体側に備えられたチェックシートに密着した閉塞状態では溶融樹脂の流通を不能とし、前記チェックリングが前記チェックシートから離間した開放状態では溶融樹脂の流通を可能とするもので、前記チェックシートに強制的密着させるロック機構を有しており、
前記発泡剤供給装置は、前記ロック機構により前記チェックリングが前記チェックシートに密着された後であって、前記金型キャビティ内への前記混合体の射出充填が開始される前に、前記計量樹脂溜め部内に物理発泡剤を供給することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記スクリューヘッドの後端に設けられ、前記チェックリング側に突出する係止爪部と、前記チェックリングにおける前記スクリューヘッド側の端部に設けられた前記係止爪部の収納凹部と、該収納凹部と連なり、前記スクリューヘッド側に突出する係止部とからなり、前記スクリューが溶融樹脂を前方に送り込む方向に回転しているときには、前記係止爪部が前記収納凹部に嵌まり込んで、前記チェックリングが前記チェックシートから離間し、この状態から前記スクリューを所定量逆回転すると、前記係止爪部の端面が前記係止部の端面に乗り上げて、前記チェックリングを前記チェックシートに強制的に密着することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40839(P2012−40839A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186246(P2010−186246)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】