説明

発熱組成物収容用袋の包材及びそれを用いた温熱材

【課題】発熱によって温熱材の温度が高くなった場合であっても、発熱組成物収容袋の人体への付着性が低下せず、快適に使用できる発熱組成物収容用袋の包材、特に、使用時に身体に密着し充分な柔らかさを有する包材であって、貼付面の包材としての使用に適する包材、発熱組成物収容袋及び貼付用温熱材を提供する。
【解決手段】(A)天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、及びこれらとポリオレフィンとの混合物からなる群から選択されるエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと、(B)不織布とを含む積層シートからなり、前記(A)のエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと前記(B)の不織布とが、凹凸のあるニップロールで押出しラミネートされていることを特徴とする、発熱組成物収容用袋の貼付面用包材、これらの包材を用いた発熱組成物収容用袋及び温熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱組成物収容用袋の包材、発熱組成物収容用袋、及びこれを用いた温熱材に関する。さらに詳しくは、身体の任意の所定箇所に自在に貼着でき、身体への追従性がよく、身体に貼付した場合に安定して快適に使用される温熱材のための、発熱組成物収容用袋の包材及び発熱組成物収容用袋、及びそれを用いた温熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と接触して発熱する発熱組成物を収容した通気性袋を含む温熱材は、温熱により疼痛を軽減するための医療用具や防寒のためのカイロなどとして一般に広く用いられている。この発熱組成物収容用袋には、一般に、不織布と多孔質フィルムとを含む積層シート及び/又は不織布と非通気性フィルムとの積層シート等が、包材として使用されている。
【0003】
このような温熱材は、表面に粘着剤層を備えた構成とすることにより、衣類又は皮膚に貼付して用いることができる。しかし、発熱組成物が発熱とともに次第に硬化したり、包材が柔軟では無いため、人体に不快感を与える、温熱材の人体への付着性が悪化する、さらには温熱材が剥がれたり、落下したりする、という問題があった。このような問題を解決し、人体への安全性、快適な使用感などを向上させるために、貼付用温熱材については、粘着剤や、包材表面の不織布についての種々の改良が提案されている。
【0004】
例えば、熱可塑性樹脂の連続フィラメントからなる多数の熱圧着部を均一に有するウェブと熱可塑性樹脂フィルムとをラミネートした通気性上被層および非通気層からなる袋(例えば、特許文献1)や、保温袋の周囲が厚さ方向に凹凸模様を有するもの(例えば、特許文献2)等のように、風合いの柔軟性に優れたものが提案されてきた。しかし、このような袋を用いても、温熱材を衣類または皮膚に貼り付けて使用する際に、発熱により温度が高くなるにつれてシールされた周縁部および温熱用具自体に周縁部を外に向けた反りが生じ、不快感が生じたり、使用者が動くたびに温熱材が上衣と接触することによって剥がれたりするという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは、片面が不織布と延伸多孔質フィルムとをラミネートして得られる通気性複層構造物からなり、他方の面が貼付手段を有する貼付面である、水分を含有し空気の存在下で発熱する発熱組成物を収容するための袋であって、前記通気性複層構造物が、20℃での寸法に対する50℃における横方向の寸法変化率が正の値であること、及び20℃での寸法に対する50℃における縦方向の寸法変化率が負の値であることを特徴とする、発熱組成物収容用袋を考案し、一定の効果を得ることに成功した(特許文献3)。
【0006】
しかし、貼付面側の包材(裏基材ともいう)については、強度(破袋による内容物の発熱組成物の漏れ防止)や温熱材製造機機械適性(包材のテンション制御のし易さ、寸法安定性など)が優先されてきたため、上記の問題を解決するためには、従来ほとんど検討・改良されてこなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−297362号公報
【特許文献2】特開平7−67907号公報
【特許文献3】特許第3756925号公報
【特許文献4】特開2005−160659号公報
【特許文献5】特開平2−149272号公報
【特許文献6】特開2005−287958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、発熱によって温熱材の温度が高くなった場合であっても、発熱組成物収容袋の人体への付着性が低下せず、快適に使用できる発熱組成物収容用袋の包材、特に、使用時に身体に密着し充分な柔らかさを有する包材であって、貼付面の包材としての使用に適する包材、発熱組成物収容袋及び貼付用温熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討して本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
〔1〕 (A) 天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー及びこれらとポリオレフィンとの混合物からなる群から選択されるエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと、
(B) 不織布と
を含む積層シートからなり、前記(A)のエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと前記(B)の不織布とが、凹凸のあるニップロールで押出しラミネートされていることを特徴とする、発熱組成物収容用袋の貼付面用包材;
〔2〕 実質的に非通気性である、前記〔1〕記載の包材;
〔3〕 前記積層シートの不織布側表面上に粘着剤層を有する、前記〔1〕又は〔2〕記載の包材;
〔4〕 前記エラストマー層が、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとの混合物からなる層である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の包材;
〔5〕 前記不織布がスパンレース不織布である、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の包材;
〔6〕 ドレープ形状面積が450mm以下である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の包材;
〔7〕 ドレープ係数が0.8以下である、前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の包材;
〔8〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の包材を少なくとも片面に用いた、発熱組成物収容用袋;
〔9〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の包材を少なくとも貼付面に用いた発熱組成物収容用袋及びこの袋に収容された空気の存在下で発熱する発熱組成物を含む、貼付用温熱材;
〔10〕 気密性外袋に収容されている、前記〔9〕記載の貼付用温熱材;
〔11〕 前記〔1〕〜〔7〕のいずれか1項記載の包材の製造方法であって、前記(A)のエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと前記(B)の不織布とを凹凸のあるニップロールで押出しラミネートする工程を含むことを特徴とする方法;
〔12〕 前記凹凸のあるニップロールで押出しラミネートする工程の後に、得られた積層シートをフラットロールでラミネートする工程をさらに含む、前記〔11〕記載の方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、下記の効果を奏する。
(1)本発明の包材は、エラストマー層を有するフィルムを不織布と積層しているので、柔軟で、身体に密着し易く、温熱材使用中の剥離又は脱落を防止又は軽減し、結果として身体に安定した温熱を供給できる温熱材の製造を可能にする。
(2)本発明の包材は、低コストで簡便な製造工程で製造することができるので、従来と同程度の製造コストで改良された製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包材は、基本的に、エラストマー層を有するフィルム(A)と不織布(B)とを含む積層シートからなる。
【0012】
エラストマー
本発明において、エラストマーとしては、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、及びこれらとポリオレフィンとの混合物から選択されるものを1種又は2種以上使用することができる。
【0013】
合成ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエン、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、ポリアルキレンスルフィド、シリコーンゴム、ポリ(クロル・トリフルオロエチレン)、フッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体、ウレタンゴム、プロピレンオキシドゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−2−クロルエチルビニルエーテル共重合体等が拳げられる。
【0014】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、塩ビ系エラストマー、シンジオタクチックポリ(1,2−ブタジエン)、ポリ(トランス−1,4−イソプレン)、シリコーン系エラストマー等が拳げられる。
【0015】
オレフィン系エラストマーの例としては、エチレン−プロピレン・コポリマー、エチレン−プロピレン−ジエン・ターポリマー、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル・コポリマー等が拳げられる。中でも、シクロペンタジエニル錯体(すなわち、メタロセン触媒)を用いて形成されたエチレン−α−オレフィンエラストマーは、特に好ましい。α−オレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチルペンテン−1等が特に好ましい。
【0016】
ウレタン系エラストマーの例としては、ウレタン結合を有するブロックと、ポリカーボネート系ポリオール、又はエーテル系ポリオール、又はポリエーテル・ポリエステル系ポリオール、又はカプロラクトン系ポリエステルブロックとからなるウレタン系エラストマー等が挙げられる。
【0017】
エステル系エラストマーの例としては、芳香族ポリエステルを有するブロックと、脂肪族ポリエステル又は脂肪族ポリエーテルを有するブロックとからなるエステル系エラストマーが挙げられる。
【0018】
好ましいエラストマーは、熱可塑性エラストマーであり、特にスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン ブロック共重合体(SEBS)などのスチレン系エラストマーである。
【0019】
上記のようなエラストマーは、単独で用いてもよく、2種以上の混合物(ブレンド)として用いてもよいが、フィルム製膜適性(延性、展性、流動性など)又は製袋の際のヒートシール性能(ホットタック性、融点など)の向上などを図るため、オレフィン系樹脂とのブレンドとして用いることができる。このようなブレンドは、エラストマー含有量を50重量%以上とすることが好ましい。
【0020】
また、上記のようなエラストマー層を有するフィルムは、単層のエラストマーフィルムでもよく、他の層との積層フィルムでもよい。例えば、ウレタン系エラストマーフィルムとオレフィン系エラストマーフィルムとの積層フィルム、SEBSのようなスチレン系エラストマーとオレフィン系エラストマーとの積層フィルムを用いることができる。エラストマー層を有するフィルムを2層以上の積層フィルムとすることにより、包材の強度を向上させたり、包材表面の性質を改変又は改善することができる。例えば、SEBS層とオレフィン系エラストマー層との積層フィルムを、SEBS層を不織布側、オレフィン系エラストマー層を表面(外側)にして用いると、SEBSフィルム単独の場合と比較して包材の防滑性を小さくし、ブロッキングを生じ難くすることができ、またオレフィン系樹脂の通気性フィルムとのヒートシール性能が向上するため、ロール状での保存や高速での加工(粘着剤の塗工、温熱材の製造)に有利となる。
【0021】
不織布
不織布としては、従来用いられる任意のものが使用できる。具体的には、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の人工繊維、綿、麻、絹等の天然繊維を含むものの、スパンボンド、サーマルボンド、スパンレース等の形態の不織布が挙げられる。
【0022】
不織布は、本発明の包材において、温熱材の使用時の吸汗、包材強度の補強、機械適性の改善などの観点から使用される。特に、機械特性については、本発明の包材は、エラストマーフィルムを用いるため、フィルム単体では、MD方向に伸び、押出し加工工程、粘着剤塗布工程、温熱材製造工程でのテンション制御などが困難となる。これらの点から、MD方向及びCD方向に伸縮する不織布も使用できるが、特にCD方向のみに伸び易い不織布(例えばスパンレース不織布、特にセミランダム製法のもの)が好ましい。また、材質としては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の不織布が好適に使用される。
【0023】
不織布の目付けは、不織布材質の比重や交絡法の違いによる嵩高さにより変わってくるが、一般に約10g/m〜約200g/m程度のものが適しており、特に約20g/m〜約100g/mが好ましい。
【0024】
積層シートの製造
エラストマー層を有するフィルムは、予め公知の方法で製膜した後、ドライラミネーションやホットメルトラミネーション等の公知の方法で不織布とラミネートすることができる。押出しラミネーションにて、エラストマーを熱溶融し、製膜時に不織布と熱融着ラミネートすることもできる。後者の方法は、製造が容易である点から、望ましい。
【0025】
こうして得られた積層シートは、実質的に非通気性であることができる。本発明に関して(実質的に)非通気性であるとは、完全に非通気性であるものに加えて、製造上発生したピンホールによる多少の通気性があるもの、温熱材において非通気性包材として使用する上で支障のない程度の通気性があるものなどを含む趣旨である。言い換えれば、製造過程において意図的に多孔質化又は穿孔などの加工を施したものでなく、その通気性が温熱材において非通気性包材として使用する上で支障のない程度であれば、(実質的に)非通気性である。
【0026】
ラミネートのニップロールは、公知のものから当業者が適宜選択することができる。一般的なフラットロールを用いることができるが、凹凸ロールの使用は好ましい。凹凸ロール(例えばストライプやドット形状)を使用すると、凸部のみが貼り合わされ、貼り合わされていない部分が遊びとなり、CD方向に伸縮し易くなる。
凹凸ロールは、フラットロールと組み合わせて用いてもよい。例えば、毛羽立ちのある不織布とラミネーションする場合、押出しラミネーションの1次加工で凹凸のあるニップロールを使用し、2次加工でフラットロールを使用してラミネーションすることができる。また、タンデムラミネーションの場合、1つ目の押出し加工で凹凸ロールを使用し、2つ目の押出し加工でフラットロールを使用してラミネーションすることにより、凹凸ニップロールで生じたピンホールを防止又は修復することもできる。フラットロールと組み合わせることにより、凹凸ロールの使用によってピンホールが生じた場合でも、ピンホールが修復されるため、温熱材の良好な温度安定性が確保できる。
エラストマー層を有するフィルムとして積層フィルムを用いる場合、予め製膜されたフィルムと不織布との間にエラストマー層を押出しラミネーションすることもできる。このようにすることにより、1工程の加工でピンホールの防止が可能になる。
【0027】
粘着剤層
本発明の包材には、不織布側に粘着剤層を設けることができる。粘着剤としては、人体に適用可能なものであれば使用できるが、一般に温熱材の貼付用に使用されているものが好ましい。特に、ラミネート後の水分や溶剤の乾燥装置を必要とせず、設備がコンパクトで、低コストで簡便に包材の製造に使用できるホットメルト型粘着剤が好ましい。
【0028】
粘着剤層は、任意の方法で包材の不織布上に粘着剤を適用することにより形成することができる。適用方法としては、例えば(i)粘着剤を溶融してシートに塗工する方法(スパイラル塗工、ロール塗工、スロットコート塗工、コントロールシーム塗工、ビード塗工等)、(ii)粘着剤のフィルム等をシートに接触させてから溶融する方法等が挙げられる。
【0029】
粘着剤層の形成は、包材を発熱組成物収容袋とし、発熱組成物を封入して温熱材を形成した後でもよく、温熱材を形成する前でもよい。後者の場合、例えば、発熱組成物を収容する包材上に予め粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、これを後述のように充填機で熱シールして袋状にし、そこに発熱組成物を充填して温熱材を形成することができる。また、粘着剤を、離型紙又は別のフィルム等の離型材の上に予め塗布した後、これを基材シート(積層シート)上に圧着転写して粘着層を設けることもできる。粘着剤層は、不織布表面上に全面的に設けられていてもよく、また、部分的に設けられていてもよい。
【0030】
温熱材
本発明の温熱材は、包材で形成された発熱組成物収容用袋及びこれに内包される発熱組成物から基本的に構成され、この発熱組成物収容用袋の少なくとも片面(貼付面)に本発明の包材を備えている。本発明の温熱材は、上記の構成に加えて、任意の付加的な要素を含んでいてもよい。
【0031】
発熱組成物収容用袋の少なくとも片面(通気面)は、通気性フィルム(又はシート)で構成される。通気性フィルムとしては、一般に単層又は多層の多孔質フィルム(特に延伸多孔質フィルム)等が用いられ、多孔質フィルム等と不織布等とのラミネートフィルムも好適に用いられる。多孔質フィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化エチレン等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン(PE)が好ましく、中でも線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が加工性等の点からより好ましい。これらは単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0032】
通気面を構成する包材は、非多孔質非通気性フィルムに適当な孔径の孔を穿孔したものであってもよく、本発明の包材をそのように穿孔加工して通気面及び/又は貼付面に用いてもよい。
【0033】
発熱組成物としては、空気と接触して発熱するものであればどのようなものでもよい。一般に、鉄粉等の主剤に、塩類溶液、活性炭、吸水性樹脂及び/又はバーミキュライト等の補助剤を添加した公知の材料が用いられる。
【0034】
本発明の温熱材は、例えば以下のようにして製造することができる。貼付面を構成する包材(本発明の包材)及び通気面を構成する包材を、それぞれ同じ大きさの長方形(例えば縦10〜20cm、横5〜10cm)等の所定形状に裁断する。裁断された貼付面側包材の不織布上に、予め作製しておいた離型フィルムに塗布された粘着剤を圧着転写して粘着層を設ける。次に、粘着層の離型フィルムが外側(すなわち、エラストマーフィルムが内側)にくるようにして、貼付面側包材を通気面側包材と重ね合わせ、その周辺部の3つの辺を熱圧着又は粘着剤等の手段でシールすることによって袋体を得る。次に、シールされていない開口部から発熱組成物を入れ、開口部を熱圧着等によりシールする。
【0035】
温熱材は、通常、使用時まで粘着剤層が離型フィルムで覆われた状態とし、さらに、気密性の包装(外袋)内に密封されて保存される。離型フィルム(紙を含む)、外袋の材質、製造については周知である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
<包材の製造例>
包材A:
ポリエステルスパンレース(PET−SL)不織布(ダイワボウポリテック社製、「ST−40」、40g/m)及びSEBSフィルム(アロン化成社製、「AR−S−4913S」、50μm厚)からなる包材を、押し出しラミネーションによって製造した。押出しニップロールとしては、3mm幅の凹部及び3mm幅の凸部のストライプ状のものを使用した。得られた包材は、凸部のみが不織布と接着されており、凹部に生じたゆとり部の存在により、伸縮性が高いものであった。
【0038】
包材B:
ポリエステルスパンレース不織布(ダイワボウポリテック社製、「ST−40」、40g/m)、及びSEBS(アロン化成社製、「AR−S−4913S」) 85重量%及びメタロセン線状低密度ポリエチレン(mLLDPE) 15重量%のブレンド樹脂のフィルム(55μm厚)からなる包材を、押し出しラミネーションによって製造した。押出しニップロールとしては、3mm幅の凹部及び3mm幅の凸部のストライプ状のものを使用した。得られた包材は、凸部のみが不織布と接着されており、凹部に生じたゆとり部の存在により、伸縮性が高いものであった。
【0039】
包材C:
上記包材Aの不織布上に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ディスポメルトME026」、120g/m)を塗工し、粘着性包材を製造した。ホットメルト粘着剤塗布パターンは、8.5mm幅の糊部と8.5mm幅の糊無部とが交互に並んだストライプ状であった。
【0040】
包材D:
上記包材Aの不織布上に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ダーマタック34−542B」、120g/m)を塗工し、粘着性包材を製造した。ホットメルト粘着剤塗布パターンは、8.5mm幅の糊部と8.5mm幅の糊無部とが交互に並んだストライプ状であった。
【0041】
包材E:
上記包材Aと同様に押し出しラミネーションによって作製したポリエステルスパンレース不織布(ダイワボウポリテック社製、「ST−40」、40g/m)及びSEBSフィルム(アロン化成社製、「AR−S−4913S」、70μm厚)からなる包材の不織布上に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社「ディスポメルトME026」、120g/m)を塗工し、粘着性包材を製造した。ホットメルト粘着剤塗布パターンは、8.5mm幅の糊部と8.5mm幅の糊無部とが交互に並んだストライプ状であった。
【0042】
包材F:
上記包材Bの不織布上に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社「ディスポメルトME026」、120g/m)を塗工し、粘着性包材を製造した。ホットメルト粘着剤塗布パターンは、8.5mm幅の糊部と8.5mm幅の糊無部とが交互に並んだストライプ状であった。
【0043】
<試験例1>
各種包材のドレープ性能を、「JISL1096 一般織物試験方法 」8.19剛軟性の8.19.7G法(ドレープ係数)に準拠して、20℃×65%RHの環境下で以下のようにして試験した。
【0044】
直径25.4cmの円形試験片5枚を採取し、各試験片の中心に直径1cmの孔を空けた。試験片をドレープテスター(株式会社大栄科学精器製作所製、「ドレープテスターYD−100」)の試料台(直径12.7cm)の上に置いた。この際、人体への追従性を想定し、温熱材の使用時に肌側にあたる面(不織布側)を下方に向けて置き、ドレープを形成させた。ただし、JIS法では3回上下振動させた後、1分放置したときのドレープ形状面積(試験片の垂直投影面積)を測定するが、本試験機では、1/2rpm×10秒間回転させた直後のドレープ形状面積を測定した。
各試験片について次の式によってドレープ係数を算出し、平均値を小数点以下3桁まで求めた。
【0045】
ドレープ係数=Ad−S1 / S2−S1
(Ad:試験片の垂直投影面積(ドレープ形状面積)(mm)
S1:試料台の面積(直径12.7cm)
S2:試料の面積(直径25.4cm))
なお、ドレープ形状面積とドレープ係数の値は、小さい程、追従性が良い。
結果を表1に示す。
【0046】
【表1−1】

【0047】
【表1−2】

【0048】
上記の表において、比較のために測定したサンプルはそれぞれ以下のとおりである:
「比較1」=従来の温熱材の貼付面側包材(PET−SL不織布(50g/m)と低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(35μm厚)とmLLDPEフィルム(15μm厚)とを押出しラミネーションした積層シート)
「比較2」=従来の温熱材の貼付面側包材(PET−SL不織布(70g/m、ポリオレフィン繊維20%含有)と、LDPE15μm/LLDPE20μm/mLLDPE15μm積層フィルムとを押出しラミネーションした積層シート)
「比較3」=従来の温熱材の貼付面側包材(レーヨンスパンレース(Ry−SL)不織布(55g/m)と、MDPE28μm/VLDPE12μm積層フィルムとをドライラミネーションした積層シート
「比較4」=従来の温熱材の通気面側包材(PET−SL不織布(30g/m)とPE多孔質フィルム(50μm厚)とをドライラミネーションした通気性積層シート)
「単体1」=従来の温熱材の貼付面側包材フィルム(LLDPE23μm/LLDPE及びHDPEのブレンド25μm/mLLDPE12μm)
「単体2」=SEBSフィルム(SEBS(アロン化成社製、「AR−S−4913S」) 85重量%及びmLLDPE 15重量%のブレンド樹脂のフィルム(55μm厚))
「単体3」=不織布(PET−SL不織布、ダイワボウポリテック社製、「ST−40」、40g/m
【0049】
表1からわかるように、従来の積層シートからなる包材(比較1〜4)は、ドレープ形状面積が約480〜520mm程度、ドレープ係数が約0.9〜1.0であるのに対し、本発明の包材は、ドレープ形状面積が400mm以下であり、ドレープ係数が0.7以下であって、単体シートと同程度であった。このことから、本発明の包材は、積層シートでありながら、単体シートに匹敵する優れた柔軟性及び人体への追従性を有することが明らかとなった。
【0050】
<試験例2>
試験例1と同様にして、粘着剤層を有する本発明の包材についてドレープ形状面積及びドレープ係数を測定した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2−1】

【0052】
【表2−2】

【0053】
上記の表において、比較のために測定したサンプルはそれぞれ以下のとおりである:
「比較1」=従来の温熱材の貼付面側粘着包材(PET−SL不織布(シンワ社、「7870A−5」70g/m(ポリオレフィン繊維20%含有)と、LDPE 15μm/LLDPE 20μm/mLLDPE 15μm積層フィルムとを押出しラミネーションした積層シートに、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ディスポメルトME026」120g/mを塗工したもの)
「比較2」=従来の温熱材の貼付面側粘着包材(PET−SL不織布(70g/m、ポリオレフィン繊維20%含有)と、LDPE 15μm/LLDPE 20μm/mLLDPE 15μm積層フィルムとを押出しラミネーションした積層シートに、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ダーマタック34−542B」200g/mを塗工したもの)
「比較3」=従来の温熱材の貼付面側包材(レーヨンスパンレース不織布(シンワ社、「7155HCD」55g/m)と、MDPE28μm/VLDPE12μm積層フィルムとをドライラミネーションした積層シートに、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ディスポメルトME026」120g/mを塗工したもの)
「比較4」=従来の温熱材の通気性粘着包材(PET−SL不織布(シンワ社、「7830A」30g/m)とPE多孔質フィルム(40g/m)とをドライラミネーションした通気性積層シートに、ホットメルト粘着剤(三洋化成社「PS−19」50g/mを塗工したもの)
【0054】
なお、従来の温熱材の貼付面側包材フィルム(LLDPE 48μm/mLLDPE 20μm)にホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社、「ディスポメルトME026」)120g/mを塗工したものについても同様に測定したが、すべて上方に反り、測定できなかった。
【0055】
表2からわかるように、従来の積層シートを用いた粘着包材は、ドレープ形状面積が約480〜530mm程度、ドレープ係数が約0.9〜1.1であるのに対し、本発明の包材は、ドレープ形状面積が400mm以下であり、ドレープ係数が0.7以下であった。したがって、本発明の包材は、粘着剤層を有する粘着包材であっても、優れた柔軟性及び人体への追従性を有することが明らかとなった。
【0056】
<包材の製造例2>
包材G:
ポリエステルスパンレース不織布(ダイワボウポリテック社製、「ST−40」、40g/m)及びオレフィン系エラストマーフィルム(愛知プラスチックス工業社製、「LAPUフィルム」、35μm厚)の中間層としてSEBSフィルム(アロン化成社製、「AR−S−4913S」、25μm)を有する包材を、1工程のSEBSフィルム押出しラミネーションによって製造した。
押出しニップロールとしては、3mm幅の凹部及び3mm幅の凸部のストライプ状のものを使用した。得られた包材は、凸部のみが不織布と接着されており、凹部に生じたゆとり部の存在により、伸縮性が高いものであった。
【0057】
包材H:
上記包材Gの不織布の上に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社(ヘンケルジャパン社)、「ディスポメルトME026」、120g/m)を塗工し、粘着性包材を製造した。ホットメルト粘着剤塗布パターンは、8.5mm幅の糊部と8.5mm幅の糊無部とが交互に並んだストライプ状であった。
【0058】
<試験例3>
試験例1と同様にして、上記包材G及びHについてドレープ形状面積及びドレープ係数を測定した。結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
包材G及びHは、いずれもドレープ形状面積が400mmを上回っており、また、ドレープ係数が0.7を上回っているものの、表1及び表2に示す従来の積層シートからなる包材(表1、比較1〜4)及び従来の積層シートを用いた粘着包材(表2、比較1〜4)と比較して、十分に優れた柔軟性及び人体への追従性を有することが明らかとなった。
したがって、本発明の包材は、ドレープ形状面積が480mm未満、好ましくは450mm以下であることができ、また、ドレープ係数が0.9未満、好ましくは0.8以下であることができる。
【0061】
<試験例4>
本発明の温熱材の人体への追従性を25℃、45%RHの環境下で以下のようにして試験した。
【0062】
温熱材は、寸法95mm×130mmの発熱組成物収容用袋に発熱組成物25gを封入することにより製造した。
【0063】
通気面側の包材としては、市販カイロに使用されている一般的な通気膜A(日東ライフテック社製、Ny−SB不織布(35g/m)及びPE多孔質フィルム(70μm厚)をホットメルト粘着剤で積層したもの、透気度25,000秒/100cc(JIS P−8117))、及び最近使用され始めた改良された通気膜B(興人社製、ポリエステルスパンレース不織布(30g/m)及びPE多孔質フィルム(50μm厚)をドライラミネーションしたもの、透気度25,000秒/100cc(JIS P−8117))を用いた。
【0064】
貼付面側包材としては、以下のいずれかを用いた:
A(比較例):市販カイロに使用されている一般的な包材(レーヨンスパンレース不織布(シンワ社製、「7155HCD」、55g/m)及びMDPE28μm/VLDPE12μmフィルムをドライラミネーションしたもの)に、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社製、「ディスポメルトME026」120g/m)を塗工。
B(本発明の包材例):ポリエステルスパンレース不織布(ダイワボウ社製、「ST−40」40g/m)及びSEBS(アロン化成社、「AR−S−4913S」 50μm)を押出しラミネーションしたものに、ホットメルト粘着剤(ヘンケルテクノロジーズジャパン社製、「ディスポメルトME026」120g/m)を塗工。
【0065】
いずれも、粘着剤の塗布パターンは、カイロの長辺方向のストライプとし、幅はカイロの両端が12.5mm幅の粘着剤層、両端の間にはそれぞれ10mm幅の粘着剤層及び粘着剤のない部分を交互に設けた。
【0066】
上記のようにして作製したカイロを、被験者の腰(皮膚)の背骨の両側に1枚ずつ横長に貼り付けた。被験者は、着座5分ごとに4km/hで30秒間歩いた。貼付した時から被験者の身体からカイロが剥がれて落下するまでの時間を測定した。
結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
この結果から、本発明の温熱材は、柔軟性が高く、人体への追従性がよいため、剥がれや落下が低減され、快適に貼付することができることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー、及びこれらとポリオレフィンとの混合物からなる群から選択されるエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと、
(B) 不織布と
を含む積層シートからなり、
前記(A)のエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと前記(B)の不織布とが、凹凸のあるニップロールで押出しラミネートされていることを特徴とする、発熱組成物収容用袋の貼付面用包材。
【請求項2】
実質的に非通気性である、請求項1記載の包材。
【請求項3】
前記積層シートの不織布側表面上に粘着剤層を有する、請求項1又は2記載の包材。
【請求項4】
前記エラストマー層が、熱可塑性エラストマー又は熱可塑性エラストマーとポリオレフィンとの混合物からなる層である、請求項1〜3のいずれか1項記載の包材。
【請求項5】
前記不織布がスパンレース不織布である、請求項1〜4のいずれか1項記載の包材。
【請求項6】
ドレープ形状面積が450mm以下である、請求項1〜5のいずれか1項記載の包材。
【請求項7】
ドレープ係数が0.8以下である、請求項1〜6のいずれか1項記載の包材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の包材を少なくとも片面に用いた、発熱組成物収容用袋。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項記載の包材を少なくとも貼付面に用いた発熱組成物収容用袋及びこの袋に収容された空気の存在下で発熱する発熱組成物を含む、温熱材。
【請求項10】
気密性外袋に収容されている、請求項9記載の貼付用温熱材。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項記載の包材の製造方法であって、前記(A)のエラストマー層を有する単層又は積層フィルムと前記(B)の不織布とを凹凸のあるニップロールで押出しラミネートする工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記凹凸のあるニップロールで押出しラミネートする工程の後に、得られた積層シートをフラットロールでラミネートする工程をさらに含む、請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2010−75683(P2010−75683A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194312(P2009−194312)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000112509)フェリック株式会社 (14)
【出願人】(599019133)シンコーラミ工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】