説明

発色反応検査用キット及び発色反応検査方法

【課題】 バイオチップを用いた発色反応を安定化する発色反応検査用キットを提供する。
【解決手段】
基板10と、基板10上に配置され、プローブ生体分子を有するバイオチップ100と、基板10上に配置され、バイオチップ100の周囲を囲む枠20と、枠20の上に配置され、バイオチップ100を覆う蓋板21とを備え、基板10、枠20、及び蓋板21で囲まれた空間に、プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体分子検出技術に関し、特に発色反応検査用キット及び発色反応検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップとは、被検対象であるターゲット生体分子と特異的に結合するプローブ生体分子を基板表面の特定位置に固定した素子の総称である。DNAチップにおいては、例えばスライドガラス板等の基板上に、それぞれ既知の配列を有する1本鎖DNAであるプローブDNAが、数千〜数万種類、アレイ状に配列されている。DNAチップに蛍光標識したターゲットDNAを含む溶液を滴下すると、配列がプローブDNAと相補関係にあるターゲットDNAのみがプローブDNAと水素結合で結合して相補的2本鎖を形成する。そのため、蛍光の有無により溶液中にプローブDNAと相補関係にあるターゲットDNAが存在するか否かを確認することができる(例えば、特許文献1参照。)。したがってDNAチップは遺伝病等の疾患の検査ツールとして有用であり、医療機関や家庭に広く普及することが期待されている。しかし、蛍光の検出は高額な検出装置が必要であるという問題があった。そのため、目視で確認可能な発色反応をバイオチップに適用することが検討されたが、発色反応は不安定であるという問題があった。
【特許文献1】特表2002−537869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、バイオチップを用いた発色反応を安定化する発色反応検査用キット及び発色反応検査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の特徴は、(イ)基板と、(ロ)基板上に配置され、プローブ生体分子を有するバイオチップと、(ハ)基板上に配置され、バイオチップの周囲を囲む枠と、(ニ)枠の上に配置され、バイオチップを覆う蓋板とを備え、(ホ)基板、枠、及び蓋板で囲まれた空間に、プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キットであることを要旨とする。
【0005】
本発明の特徴に係る発色反応検査用キットによれば、試薬溶液が基板、枠、及び蓋板で囲まれた空間に充填される。そのため、試薬溶液と基板の間の界面張力、試薬溶液と枠の間の界面張力、及び試薬溶液と蓋板の間の界面張力のバランスが崩れにくくなり、試薬溶液の流動を抑制することが可能となる。そのため、試薬溶液の流動に起因する発色反応の不安定化を抑制することが可能となる。
【0006】
本発明の他の特徴は、(イ)凹部が設けられた基板と、(ロ)基板の凹部に配置され、プローブ生体分子を有するバイオチップと、(ハ)基板の凹部を覆う蓋板とを備え、(ニ)蓋板で覆われた基板の凹部に、プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キットであることを要旨とする。
【0007】
本発明の他の特徴に係る発色反応検査用キットによれば、試薬溶液が蓋板で覆われた基板の凹部に充填される。そのため、試薬溶液と基板の間の界面張力、及び試薬溶液と蓋板の間の界面張力のバランスが崩れにくくなり、試薬溶液の流動を抑制することが可能となる。そのため、試薬溶液の流動に起因する発色反応の不安定化を抑制することが可能となる。
【0008】
本発明のさらに他の特徴は、(イ)凹部が設けられた基体と、(ロ)基体の凹部の底面に結合されたプローブ生体分子と、(ハ)基体の凹部を覆う蓋板とを備え、(ニ)蓋板で覆われた基板の凹部に、プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キットであることを要旨とする。
【0009】
本発明の他の特徴に係る発色反応検査用キットによれば、試薬溶液が蓋板で覆われた基体の凹部に充填される。そのため、試薬溶液と基体の間の界面張力、及び試薬溶液と蓋板の間の界面張力のバランスが崩れにくくなり、試薬溶液の流動を抑制することが可能となる。そのため、試薬溶液の流動に起因する発色反応の不安定化を抑制することが可能となる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴は、(イ)基板上にプローブ生体分子を有するバイオチップを配置することと、(ロ)基板上に、バイオチップの周囲を囲む枠を配置することと、(ハ)プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を枠内に滴下することと、(ニ)ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を枠内に滴下することと、(ホ)内部が試薬溶液で満たされた枠を蓋板で覆うことと、(ヘ)基板、枠、及び蓋板で囲まれた空間に充填された試薬溶液に含まれる発色試薬の発色反応を検出することとを備える発色反応検査方法であることを要旨とする。
【0011】
本発明のさらに他の特徴は、(イ)凹部が設けられた基板の凹部に、プローブ生体分子を有するバイオチップを配置することと、(ロ)プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を凹部に滴下することと、(ハ)ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を凹部に滴下することと、(ニ)試薬溶液で満たされた基板の凹部を蓋板で覆うことと、(ホ)蓋板で覆われた基板の凹部に充填された試薬溶液に含まれる発色試薬の発色反応を検出することとを備える発色反応検査方法であることを要旨とする。
【0012】
本発明のさらに他の特徴は、(イ)凹部が設けられた基体、及び基体の凹部の底面に結合されたプローブ生体分子を備えるバイオチップの凹部に、プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を滴下することと、(ロ)ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を凹部に滴下することと、(ハ)試薬溶液で満たされた基体の凹部を蓋板で覆うことと、(ニ)蓋板で覆われた基体の凹部に充填された試薬溶液に含まれる発色試薬の発色反応を検出することとを備える発色反応検査方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオチップを用いた発色反応を安定化する発色反応検査用キット及び発色反応検査方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る発色反応検査用キットは、図1及びA-A方向から見た断面図である図2に示すように、バイオチップ100、及びバイオチップ100を視認可能に格納し、内部が溶液で充填されるケース50を備える。
【0016】
バイオチップ100は、表面に複数の水酸(-OH)基を導入可能な透光性の基体15、基体15の表面に結合されたプローブ生体分子を含む複数の反応層91a, 91b, 91c, 91d, 91e, 91f, 91g, 91h, 91iを備える。
【0017】
基体15上には、図1に示すように、基体15に達する複数の貫通孔41a, 41b, 41c, 41d, 41e, 41f, 41g, 41h, 41i, 42a, 42b, 42c, 42d, 42e, 42f, 42g, 42h, 42i, 43a, 43b, 43c, 43d, 43e, 43f, 43g, 43h, 43i, 44a, 44b, 44c, 44d, 44e, 44f, 44g, 44h, 44i, 45a, 45b, 45c, 45d, 45e, 45f, 45g, 45h, 45i, 46a, 46b, 46c, 46d, 46e, 46f, 46g, 46h, 46i, 47a, 47b, 47c, 47d, 47e, 47f, 47g, 47h, 47i, 48a, 48b, 48c, 48d, 48e, 48f, 48g, 48h, 48i, 49a, 49b, 49c, 49d, 49e, 49f, 49g, 49h, 49iが設けられた遮光膜13が配置されている。基体15の材料としては合成石英(SiO2)等が使用可能である。遮光膜13の材料としてはチタン(Ti)、白金(Pt)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びタングステン(W)等の遷移金属、或いはアルミニウム(Al)及び金(Au)等の金属が使用可能である。遮光膜13の材料としては、他に、一酸化チタン(TiO)或いは二酸化チタン(TiO2)等の遷移金属酸化物、窒化チタン(TiN)等の遷移金属窒化物、及び炭化チタン(TiC)等の遷移金属炭化物等が使用可能である。複数の貫通孔41a〜49iのそれぞれの直径は300μm以上である。
【0018】
図2に示すように、複数の貫通孔41a〜41iのそれぞれを介して表出する基体15の表面に、複数の反応層91a, 91b, 91c, 91d, 91e, 91f, 91g, 91h, 91iが配置されている。複数の反応層91a〜91iのそれぞれにおいては、複数のデオキシリボ核酸(DNA)、複数のリボ核酸(RNA)、複数のペプチド核酸(PNA)、あるいは複数のタンパク質等の複数のプローブ生体分子のそれぞれの官能基が、図3に示すように基体15表面の水酸(-OH)基と共有結合している。プローブ生体分子がDNA、RNA、あるいはPNAである場合は、それぞれの配列は被検対象であるターゲット生体分子と相補的となるよう設計される。
【0019】
なお、基体15表面に直接反応層91a〜91iのそれぞれを配置することに第1の実施の形態は限定されない。図4に示す例では、基体15の複数の貫通孔41a〜41iのそれぞれを介して表出する部分の表面上に、シランカップリング層81a, 81b, 81c, 81d, 81e, 81f, 81g, 81h, 81iが配置されている。シランカップリング層81a〜81iのそれぞれにおいては、図5に示すように、複数のシランカップリング剤のそれぞれのメチル基(-CH3)あるいはエチル基(-C2H5)が基体15表面の水酸(-OH)基と酸塩基反応で化学結合している。
【0020】
複数のシランカップリング剤のそれぞれには、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が使用可能である。
【0021】
シランカップリング層81a〜81iのそれぞれの上には、反応層91a, 91b, 91c, 91d, 91e, 91f, 91g, 91h, 91iが配置されている。反応層91a〜91iのそれぞれにおいては、複数のプローブ生体分子のそれぞれに導入されたリン酸アミダイト誘導体がシランカップリング層81a〜81iのシランカップリング剤のエポキシ基と加水分解反応により共有結合している。
【0022】
あるいは、シランカップリング剤とプローブ生体分子は架橋剤を介して結合してもよい。例えば、受容体、リガンド、アンタゴニスト、抗体、抗原等のタンパク質に含まれるリジン(Lys)のアミノ(-NH2)基、アスパラギン酸(Asp)及びグルタミン酸(Glu)のカルボキシル(-COOH)基、チロシン(Tyr)のフェノール(-C6H4(OH))基、ヒスチジン(His)のイミダゾール(-C3H3N2)基、システイン(Cys)のチオール(-SH)基等の官能基と、シランカップリング剤のアミノ基やエポキシ基とを架橋剤で結合してもよい。図6に示す例においては、シランカップリング剤のアミノ(-NH2)基と抗体95a, 95b, 95cのアミノ(-NH2)基とを、両端でアミノ(-NH2)基と反応する架橋剤であるジスクシンイミジルスベレート(Disuccinimidyl suberate : DSS)で結合している。
【0023】
架橋剤としては、他に、両端でアミノ基と反応するビスサルフォスクシンイミジルスベレート(Bis [Sulfosuccinimidyl] suberate : BS3)、ジメチルスベルイミデート(Dimethyl suberimidate・HCl : DMS)、ジスクシンイミジルグルタレート(Disuccinimidyl glutarate : DSG)、ローマン試薬(Loman's Reagent)、 3, 3' - ジチオビスサルフォスクシンイミジルプロピオネート(3, 3' - Dithiobis [sulfosuccinimidyl propionate] : DTSSP)、 エチレングリコールビススクシンイミジルスクシネート(Ethylene glycol bis [succinimidylsuccinate] : EGS)、アミノ基とカルボキシル基と反応する1-エチル - 3 - [3 - ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロライド(1 - Ethyl - 3 - [3 - Dimethylaminopropyl] carbodiimide Hydrochloride : EDC)等が使用可能である。
【0024】
またさらに架橋剤としては、アミノ基とチオール基と反応するm-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(m - Maleimidobenzyl - N - hydroxysuccinimide ester : MBS)、 スクシンイミジル4 - [N - マレイミドメチル] - シクロヘキサン - 1 - カルボキシレート(Succinimidyl 4 - [N - maleimidomethyl] - cyclohexane - 1 - carboxylate : SMCC)、 スクシンイミジル 4 - [p - マレイミドフェニル] - ブチレート(Succinimidyl 4 - [p - maleimidophenyl] - buthrate : SMPB)、 N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(N - Succinimidyl 3 - [2 - pyridyldithio] propionate : SPDP)、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)サルフォスクシンイミドエステル(N - [γ - Maleimidobutyloxy] sulfosuccinimide ester : Sulfo - GMBS)、 サルフォスクシンイミジル6 - [3' (2 - ピリジルジチオ) - プロピオンアミド] ヘキサノエート(Sulfosuccinimidyl 6 - [3' (2 - pyridyldithio) - propionamide] hexanoate : Sulfo - LC - SPDP)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシサルフォスクシンイミドエステル(m - Maleimidebenzoyl - N - hydoroxysulfo - succinimide ester : Sulfo - MBS)、サルフォスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(Sulfosuccinimidyl 4 [N - maleimidomethyl] - cyclohexane - 1 - carboxylate : Sulfo - SMCC)、サルフォスクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート(Sulfosuccinimidy 4 - [p - maleimidophenyl] - butyrate : Sulfo - SMPB)等が使用可能である。なお、図1に示す他の複数の貫通孔42a〜42i, 43a〜43i, 44a〜44i, 45a〜45i, 46a〜46i, 47a〜47i, 48a〜48i, 49a〜49iのそれぞれの断面図も、図2乃至図6と同様であるので説明は省略する。
【0025】
図2に示すケース50は、バイオチップ100が配置される透明な基板10、基板10上に配置され、バイオチップ100の周囲を囲む枠20、及び枠20の上に配置され、バイオチップ100を覆う透明な蓋板21を備える。基板10は合成石英等からなり、スライドガラス等が使用可能である。枠20は酸素透過性を有し、基板10及び蓋板21に対し吸着性を有する。そのため、枠20と基板10の接触面から溶液は漏水しない。また枠20と蓋板21の接触面からも溶液は漏水しない。例えば枠20は、ポリジメチルシロキサン(PDMS: Polydimethylsiloxane)等のシリコーンゴムからなる。蓋板21は、例えばシリコーンゴム又は合成石英等からなり、カバーガラス等が使用可能である。なお、基板10及び蓋板21のそれぞれが酸素透過性を有していてもよい。
【0026】
次に、図1及び図2に示す発色反応検査用キットを用いた第1の実施の形態に係る発色反応検査方法について説明する。
【0027】
(a) 図7に示すように、基板10上にバイオチップ100を配置する。次に図8に示すように、バイオチップ100の周囲を囲むように基板10上に枠20を配置し、基板10と吸着性のある枠20とを密着させる。その後、基板10と枠20で囲まれた空間に、ビオチンで標識されたターゲット生体分子を含む被験溶液を滴下し、枠20内を被験溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子と複数の反応層91a〜91iのそれぞれのプローブ生体分子との相互作用に必要な時間バイオチップ100を放置する。なお放置している間、図2に示すように蓋板21を枠20上に配置してもよい。その後、図8に示すように蓋板21を取り除いて被験溶液を捨ててバイオチップ100を洗浄し、未反応のターゲット生体分子を除去する。
【0028】
(b) 基板10と枠20で囲まれた空間に、西洋わさび過酸化酵素(HRP: Horseradish Peroxidase)標識ストレプトアビジンを含む第1の試薬溶液を滴下し、枠20内を第1の試薬溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子を標識するビオチンとの相互作用に必要な時間バイオチップ100を放置する。なお放置している間、図2に示すように蓋板21を枠20上に配置してもよい。その後、図8に示すように蓋板21を取り除いて第1の試薬溶液を捨ててバイオチップ100を洗浄し、未反応のHRP標識ストレプトアビジンを除去する。
【0029】
(c) 基板10と枠20で囲まれた空間に、テトラメチルベンジジン(TMB: Tetramethyl benzidine)を含む第2の試薬溶液を滴下し、枠20内を第2の試薬溶液で満たす。次に、図2に示すように蓋板21を枠20上に配置し、吸着性のある枠20と蓋板21とを密着させる。結果として、基板10、枠20、及び蓋板21で囲まれた空間が、第2の試薬溶液で充填される。複数の反応層91a〜91iのそれぞれにターゲット生体分子がトラップされていれば、その後30分放置すると、ターゲット生体分子に結合されたHRPによってTMBが酸化されて発色する。透明な蓋板21の上方から発色反応を確認し、第1の実施の形態に係る発色反応検査方法を終了する。
【0030】
以上示した第1の実施の形態に係る発色反応検査用キット及び発色反応検査方法によれば、バイオチップ100を格納するケース50の内部が被験溶液、第1の試薬溶液、あるいは第2の試薬溶液で充填される。そのため、被験溶液、第1の試薬溶液、及び第2の試薬溶液のそれぞれの量を減らすことが可能となる。また発色反応検査用キットを持ち歩いても、ケース50の内部が被験溶液、第1の試薬溶液、あるいは第2の試薬溶液で充填されているため、被験溶液、第1の試薬溶液、あるいは第2の試薬溶液が複数の反応層91a〜91iのそれぞれの表面からこぼれ落ちない。またHRPによるTMBの発色には酸素(O2)が必要である。これに対し、枠20は溶液に対して非透過性であるが酸素透過性を有するため、HRPによるTMBの発色反応を妨げない。
【0031】
また第1の実施の形態に係るバイオチップ100は、透光性の基体15上に複数の反応層91a〜91iのそれぞれがスポット状に配置され、さらに複数の反応層91a〜91iのそれぞれの周囲に遮光膜13が配置されている。したがって、基体15の遮光膜13が配置された面と反対側の背面から照明光を照射すれば、遮光膜13によりコントラストが向上するため、複数の反応層91a〜91iのそれぞれにおける発色反応の有無を基体15の透過光で容易に確認することが可能となる。また複数の貫通孔41a〜49iのそれぞれの直径を300μm以上にすることにより、複数の反応層91a〜91iのそれぞれにおける発色反応の有無を肉眼で確認することも可能となる。そのため、高価なスキャナを使用する必要がなくなる。なお発色反応は、透明な基板10側から確認してもよいのは勿論である。
【0032】
ここで図9に示す比較例に係る検査キットは、表面が疎水性処理された基板300、及びバイオチップ200を備える。バイオチップ200は基体15及び複数の反応層91a〜91iを備える。比較例に係る検査キットで検査方法を実施する時には、バイオチップ200上に発色試薬を含む試薬溶液72が滴下され、滴下された試薬溶液は、疎水性処理された基板300の撥水作用によってバイオチップ200上に保持される。この場合、持ち運び等により比較例に係る検査キットに衝撃が加わると、バイオチップ200と試薬溶液72の間の界面張力、基板300と試薬溶液72の間の界面張力、試薬溶液72と周囲の気体の間の表面張力、及び基板300と周囲の気体の間の表面張力のバランスが崩れ、図10に示すように、試薬溶液72が流動する。試薬溶液72が流動すると、例えば反応層91aの一部又は全部の上で生じている発色反応が反応層91a上から移動する場合がある。そのため、どの反応層で発色反応が生じたのか確認するのが困難となる。特に、発色反応の有無を肉眼で確認可能にするために、複数の反応層91a〜91iのそれぞれの直径を300μm以上にすると、バイオチップ200の面積も大きくなるため、試薬溶液72はより流動しやすくなる。そのため、試薬溶液72の流動性が無視できなくなる。すなわち、肉眼で確認可能とするために、複数の反応層91a〜91iのそれぞれの直径を300μm以上にすると、試薬溶液72の流動性が増し、HRPによるTMBの発色等の確認が困難となる。
【0033】
これに対し図2に示す第1の実施の形態に係る発色反応検査用キットは、バイオチップ100がケース50内部に格納されており、ケース50の内部に試薬溶液が充填される。そのため、外部から衝撃が加わっても、ケース50と試薬溶液の間の界面張力のバランスは崩れにくい。そのため、バイオチップ100上における試薬溶液の流動を抑制することが可能となり、発色反応の安定化が可能となる。また、バイオチップ表面に対して垂直方向における溶液の厚みを、ケース50によって強制的に小さくすることも可能となる。そのため、検査に必要な溶液を減少させることが可能となり、検査コストを低減させ、かつ発色反応検査方法の実施を容易かつ有用にすることが可能となる。
【0034】
次に、図11乃至図29を用いて、第1の実施の形態に係るバイオチップ100の製造方法について説明する。
【0035】
(a) 図11に示すように、合成石英等からなる基体15を用意し、基体15上にTi等からなる遮光膜13をスパッタリング法又は化学的気相堆積法(CVD)法等を用いて形成する。遮光膜13形成後、表面を酸素(O2)プラズマで5分間処理する。次に図12に示すように、遮光膜13上に化薬マイクロケム社のエスユー8(SU-8)3000シリーズ等の感光性のエポキシ樹脂含有溶液をスピン塗布し高分子膜11を形成する。スピン塗布の条件としては、例えば、5秒かけて毎分300回転まで加速し、10秒間毎分300回転を維持する。さらに5秒かけて毎分500回転まで加速し、15秒間毎分500回転を維持する。その後5秒かけて毎分4500回転まで加速し、30秒間毎分4500回転を維持する。最後に5秒かけてスピンを停止させる。
【0036】
(b) 高分子膜11を形成後、高分子膜11を予備硬化(プリベーク)処理する。まず基体15を65℃に設定されたホットプレートにのせ、2分経過後、ホットプレートを80℃に設定する。20分経過後、ホットプレートを95℃に設定し、15分間放置する。15分経過後、ホットプレートの電源を切り、1時間放置する。その後、図1に示した複数の貫通孔41a〜41i, 42a〜42i, 43a〜43i, 44a〜44i, 45a〜45i, 46a〜46i, 47a〜47i, 48a〜48i, 49a〜49iのそれぞれの形状に対応するマスクパターンを有するフォトマスクを用いて、紫外線で高分子膜11の一部を選択的に露光する。露光後、高分子膜11を露光後ベーク(PEB)処理する。具体的には、基体15を65℃に設定されたホットプレートにのせ、2分経過後、ホットプレートを95℃に設定し、6分間放置する。6分経過後、ホットプレートの電源を切り、1時間放置する。その後SU-8現像液等を用いて高分子膜11を現像すると、高分子膜11は感光性を有するため、図13に示すように、高分子膜11の一部が選択的に除去される。
【0037】
(c) 一部が選択的に除去された高分子膜11をエッチングマスクとして用いて、遮光膜13の一部を等方性のウェットエッチングにより選択的に除去する。エッチング溶液としてはフッ酸(HF)、硝酸(HNO3)、及び水(H2O)の混合液等が使用可能である。選択的除去により、図14に示す複数の貫通孔41a〜41i, 42a〜42i, 43a〜43i, 44a〜44i, 45a〜45i, 46a〜46i, 47a〜47i, 48a〜48i, 49a〜49iのそれぞれが形成される。
【0038】
(d) 次に基体15を撹拌された水酸化ナトリウム(NaOH)溶液中に室温で2時間放置する。ここでNaOH溶液とは、98gのNaOH、294mlの蒸留水、及び392mlのエタノールを混合した溶液である。NaOH溶液中に放置することにより、図15に示すように、貫通孔41a〜41iのそれぞれから表出する基体15の表面に複数の水酸(-OH)基が導入される。なお、水酸(-OH)基の導入はUVオゾンクリーナ等で行ってもよい。
【0039】
(e) 3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の官能基にエポキシ基を有するシランカップリング剤、あるいはN-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等の官能基にアミンを有するシランカップリン剤等を図14に示す貫通孔41a〜41iのそれぞれから表出する基体15の表面上に滴下し、図16に示すシランカップリング層81a, 81b, 81c, 81d, 81e, 81f, 81g, 81h, 81iのそれぞれを形成させる。例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤を15℃の環境下で滴下した場合、図17に示すように、基体15表面に複数のエポキシ基が導入される。なお、図16に示す透光性の基体15と遮光膜13とのコントラストにより、シランカップリング剤を滴下する時に、貫通孔41a〜41iの位置は容易に判別できる。
【0040】
(f) 基体15表面に残った未反応の水酸(-OH)基を、例えば、無水酢酸と1-メチルイミダゾール(テトラヒドロフラン溶液)で処理してアセチル化し、キャッピングする。次に図18に示すように、基体15表面に導入されたシランカップリング剤のエポキシ基を加水分解し、シランカップリング層81a〜81iのそれぞれに水酸(-OH)基を導入する。
【0041】
(g) 図19に示すように、5’末端がジメトキシトリチル(DMTr)基で保護され、3'末端の水酸基が三価のリン酸アミダイト誘導体にされた1塩基目のヌクレオシドを準備する。なお図20に示すように、ヌクレオシドに含まれるアデニン(A)及びシトシン(C)のアミノ基はベンゾイル基で保護されており、グアニン(G)のアミノ基はイソブチル基で保護されている。次に1塩基目のヌクレオシドを、図16に示すシランカップリング層81a〜81iのそれぞれに滴下する。滴下によって、図21に示すようにシランカップリング剤の水酸(-OH)基に1塩基目のヌクレオシドのリン酸シアノエチルアミダイト誘導体を塩基触媒等を用いて結合させる。
【0042】
(h) シランカップリング剤の未反応の水酸(-OH)基は無水酢酸と1-メチルイミダゾール(テトラヒドロフラン溶液)で処理してアセチル化し、2塩基目以降のヌクレオシドとの結合を阻害する。次に、1塩基目のヌクレオシドのジメトキシトリチル(DMTr)基を3%トリクロロ酢酸/ジクロロメタン酸性溶剤で脱保護し、図22に示すように5’水酸(-OH)基を1塩基目のヌクレオシドに導入する。
【0043】
(i) 3'末端の水酸基が三価のリン酸アミダイト誘導体にされた2塩基目のヌクレオシドをシランカップリング層81a〜81iに滴下し、図23に示すように、1塩基目のヌクレオシドの5’水酸(-OH)基に2塩基目のヌクレオシドのリン酸シアノエチルアミダイト誘導体を塩基触媒等を用いて縮合反応で結合させる。なお、1塩基目のヌクレオシドの未反応の5’水酸(-OH)基は無水酢酸とテトラヒドロフラン溶液で処理してアセチル化し、キャッピングする。
【0044】
(j) 縮合反応で生じた亜リン酸トリエステル結合は、ヨウ素と水(ピリジン含有テトラヒドロフラン溶液)で酸化し、図24に示すように、より安定なリン酸トリエステル結合に変換させる。その後、2塩基目のジメトキシトリチル(DMTr)基を除去し、図25に示すように目的のDNA鎖長になるまでヌクレオシドホスホロアミダイトとの縮合反応を繰り返し、図2に示した反応層91a〜91iを形成する。
【0045】
(k) DNA伸長後、高分子膜11が浸るように基体15を55℃でアンモニア(NH4OH)水等のアルカリ溶液に30分間沈めるアルカリ溶液処理を行う。なお、NH4OH水の重量パーセント濃度は調整時で40%である。アルカリ溶液処理により、図26に示すように、リン酸基に結合したシアノエチル保護基が脱離する。またアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)等の塩基が図27に示すように脱保護される。さらにアルカリ溶液処理により、遮光膜13と高分子膜11の密着力が低下する。その後、基体15をNH4OH水から取り出し、図28に示す高分子膜11の側面115にエアガン等で空気等の気体を吹き付け、高分子膜11を遮光膜13から剥離させる。最後に末端のジメトキシトリチル(DMTr)基を図29に示すように脱保護し、第1の実施の形態に係るバイオチップ100の製造方法を終了する。
【0046】
なお、第1の実施の形態に係るバイオチップ100の製造法は、これに限られない。例えば、図11で基体15上に遮光膜をスパッタリング法又は化学的気相堆積法(CVD)法等を用いて形成すると説明した。これに対し、例えばUV硬化型の黒色スクリーンインキ等を用いて、基体15上に複数の貫通孔41a〜49iを有する遮光膜13を形成してもよい。あるいは、予め複数の貫通孔41a〜49iを有する遮光膜13を準備し、接着剤等で基体15上に貼り付けてもよい。この場合も、遮光膜13の材料は金属類に限られず、樹脂や不溶紙等を用いてもよい。その他、インクジェットプリンタ等を用いて遮光膜を形成してもかまわない。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る図30に示す発色反応検査用キットのケース150は、図31に示すように、凹部111が設けられ、凹部111の内部にバイオチップ100が配置される基板110、及び基板110の凹部111を覆う図30に示す蓋板121を備える。基板110は石英等からなる。蓋板121は酸素透過性を有する。蓋板121は、例えばポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴムからなり、基板110に対し吸着性を有する。第2の実施の形態に係る発色反応検査用キットのその他の構成要素は図2と同様であるので、説明は省略する。
【0048】
次に、図30に示す発色反応検査用キットを用いた第2の実施の形態に係る発色反応検査方法について説明する。
【0049】
(a) 図32に示すように、基板110の凹部111にバイオチップ100を配置する。次に、基板110の凹部111の内部にビオチンで標識されたターゲット生体分子を含む被験溶液を滴下し、凹部111の内部を被験溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子と複数の反応層91a〜91iのそれぞれに含まれるプローブ生体分子との相互作用に必要な時間バイオチップ100を放置する。なお放置している間、図30に示すように蓋板121で基板110の凹部111を覆ってもよい。その後、図32に示すように蓋板121を取り除いて被験溶液を捨ててバイオチップ100を洗浄し、未反応のターゲット生体分子を除去する。
【0050】
(b) 基板110の凹部111の内部に、HRP標識ストレプトアビジンを含む第1の試薬溶液を滴下し、凹部111の内部を第1の試薬溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子を標識するビオチンとの相互作用に必要な時間バイオチップ100を放置する。なお放置している間、図30に示すように蓋板121で基板110の凹部111を覆ってもよい。その後、図32に示すように蓋板121を取り除いて第1の試薬溶液を捨ててバイオチップ100を洗浄し、未反応のHRP標識ストレプトアビジンを除去する。
【0051】
(c) 基板110の凹部111の内部に、TMBを含む第2の試薬溶液を滴下し、凹部111の内部を第2の試薬溶液で満たす。次に、図30に示すように蓋板121で基板110の凹部111を覆い、吸着性のある蓋板121と基板110とを密着させる。結果として、蓋板121で覆われた基板110の凹部111は第2の試薬溶液で充填される。複数の反応層91a〜91iのそれぞれにターゲット生体分子がトラップされていれば、その後30分放置すると、ターゲット生体分子に結合されたHRPによってTMBが酸化されて発色する。透明な蓋板121の上方から発色反応を確認し、第2の実施の形態に係る発色反応検査方法を終了する。
【0052】
以上示した第2の実施の形態に係る発色反応検査用キット及び発色反応検査方法によれば、バイオチップ100を格納する基板110の凹部111が被験溶液、第1の試薬溶液、及び第2の試薬溶液のいずれかで充填され、蓋板121でカバーされる。そのため発色反応検査用キットを持ち歩いても、バイオチップ100上における被験溶液、第1の試薬溶液、あるいは第2の試薬溶液の流動を抑制することが可能となる。また蓋板121は酸素透過性を有するため、HRPによるTMBの発色反応を妨げない。
【0053】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るバイオチップ120は、図33に示すように、凹部122が設けられた基体25、及び基体25の凹部122の底面に結合されたプローブ生体分子をそれぞれ含む複数の反応層91a〜91iを備える。また第3の実施の形態に係る発色反応検査用キットは、図34に示すように、バイオチップ120、及びバイオチップ120の基体25の凹部122を覆う蓋板121を備える。透明な基体25の材料としては合成石英等が使用可能である。蓋板121は酸素透過性を有し、基体25に対し吸着性を有する。蓋板121は例えばポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴムからなり、基板110に対し吸着性を有する。第3の実施の形態に係る発色反応検査用キットのその他の構成要素は図2と同様であるので、説明は省略する。
【0054】
次に、図34に示す発色反応検査用キットを用いた第3の実施の形態に係る発色反応検査方法について説明する。
【0055】
(a) 図33に示すバイオチップ120の基体25の凹部122の内部にビオチンで標識されたターゲット生体分子を含む被験溶液を滴下し、凹部122の内部を被験溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子と複数の反応層91a〜91iのそれぞれに含まれるプローブ生体分子との相互作用に必要な時間バイオチップ120を放置する。なお放置している間、図34に示すように蓋板121で基体25の凹部122を覆ってもよい。その後、図33に示すように蓋板121を取り除いて被験溶液を捨ててバイオチップ120を洗浄し、未反応のターゲット生体分子を除去する。
【0056】
(b) 基体25の凹部122の内部に、HRP標識ストレプトアビジンを含む第1の試薬溶液を滴下し、凹部122の内部を第1の試薬溶液で満たす。その後、ターゲット生体分子を標識するビオチンとの相互作用に必要な時間バイオチップ120を放置する。なお放置している間、図34に示すように蓋板121で基体25の凹部122を覆ってもよい。その後、図33に示すように蓋板121を取り除いて第1の試薬溶液を捨ててバイオチップ120を洗浄し、未反応のHRP標識ストレプトアビジンを除去する。
【0057】
(c) 基体25の凹部111の内部に、TMBを含む第2の試薬溶液を滴下し、凹部122の内部を第2の試薬溶液で満たす。次に、図34に示すように蓋板121で基体25の凹部111を覆い、吸着性のある蓋板121と基体25とを密着させる。結果として、蓋板121で覆われた基体25の凹部111は、第2の試薬溶液で充填される。複数の反応層91a〜91iのそれぞれにターゲット生体分子がトラップされていれば、その後30分放置すると、ターゲット生体分子に結合されたHRPによってTMBが酸化されて発色する。透明な蓋板121の上方から発色反応を確認し、第3の実施の形態に係る発色反応検査方法を終了する。
【0058】
以上示した第3の実施の形態に係る発色反応検査用キット及び発色反応検査方法によれば、バイオチップ120の基体25の凹部122が被験溶液、第1の試薬溶液、及び第2の試薬溶液のいずれかで充填され、蓋板121でカバーされる。そのため発色反応検査用キットを持ち歩いても、バイオチップ120上における被験溶液、第1の試薬溶液、あるいは第2の試薬溶液の流動を抑制することが可能となる。また蓋板121は酸素透過性を有するため、HRPによるTMBの発色反応を妨げない。
【0059】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば図33に示す基体25の凹部122の底面に、図35に示すように、複数の貫通孔41a〜41iが設けられた遮光膜13を配置してもよい。この場合、複数の反応層91a〜91iは、複数の貫通孔41a〜41iのそれぞれを介して表出する基体15の表面に配置される。遮光膜13によりコントラストが向上するため、複数の反応層91a〜91iのそれぞれにおける発色反応を図36に示す蓋板121の上方から容易に確認することが可能となる。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発色反応検査用キットの上面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る発色反応検査用キットの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第1の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第1の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第2の拡大断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第3の拡大断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る発色反応検査方法の第1の工程断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る発色反応検査方法の第2の工程断面図である。
【図9】本発明の比較例に係るバイオチップの第1の断面図である。
【図10】本発明の比較例に係るバイオチップの第2の断面図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第1の工程断面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第2の工程断面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第3の工程断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第4の工程断面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第5の工程断面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第6の工程断面図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第7の工程断面図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第8の工程断面図である。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係るヌクレオシドホスホロアミダイトの化学式である。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係るヌクレオシドの塩基の第1の化学式である。
【図21】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第9の工程断面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第10の工程断面図である。
【図23】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第11の工程断面図である。
【図24】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第12の工程断面図である。
【図25】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第13の工程断面図である。
【図26】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第14の工程断面図である。
【図27】本発明の第1の実施の形態に係るヌクレオシドの塩基の第2の化学式である。
【図28】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第15の工程断面図である。
【図29】本発明の第1の実施の形態に係るバイオチップの第16の工程断面図である。
【図30】本発明の第2の実施の形態に係る発色反応検査用キットの第1の断面図である。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係る発色反応検査用キットの第2の断面図である。
【図32】本発明の第2の実施の形態に係る発色反応検査用キットの工程断面図である。
【図33】本発明の第3の実施の形態に係るバイオチップの断面図である。
【図34】本発明の第3の実施の形態に係る発色反応検査用キットの断面図である。
【図35】本発明のその他の実施の形態に係るバイオチップの断面図である。
【図36】本発明のその他の実施の形態に係る発色反応検査用キットの断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10, 110…基板
11…高分子膜
13…遮光膜
15, 25…基体
20…枠
21, 121…蓋板
41a〜49i…貫通孔
50, 150…ケース
71a〜71i…溶液
81a〜81i…シランカップリング層
91a〜91i…反応層
95a, 95b, 95c…抗体
100, 120, 200…バイオチップ
111, 122…凹部
115…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置され、プローブ生体分子を有するバイオチップと、
前記基板上に配置され、前記バイオチップの周囲を囲む枠と、
前記枠の上に配置され、前記バイオチップを覆う蓋板とを備え、
前記基板、前記枠、及び前記蓋板で囲まれた空間に、前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キット。
【請求項2】
前記枠及び蓋板のいずれかが、酸素透過性を有することを特徴とする請求項1に記載の発色反応検査用キット。
【請求項3】
前記枠は、吸着性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発色反応検査用キット。
【請求項4】
凹部が設けられた基板と、
前記基板の凹部に配置され、プローブ生体分子を有するバイオチップと、
前記基板の凹部を覆う蓋板とを備え、
前記蓋板で覆われた前記基板の凹部に、前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キット。
【請求項5】
凹部が設けられた基体と、
前記基体の凹部の底面に結合されたプローブ生体分子と、
前記基体の凹部を覆う蓋板とを備え、
前記蓋板で覆われた前記基板の凹部に、前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液が充填される発色反応検査用キット。
【請求項6】
前記蓋板は、酸素透過性を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の発色反応検査用キット。
【請求項7】
前記蓋板は、吸着性を有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の発色反応検査用キット。
【請求項8】
基板上にプローブ生体分子を有するバイオチップを配置することと、
前記基板上に、前記バイオチップの周囲を囲む枠を配置することと、
前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を前記枠内に滴下することと、
前記ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を前記枠内に滴下することと、
内部が前記試薬溶液で満たされた前記枠を蓋板で覆うことと、
前記基板、前記枠、及び前記蓋板で囲まれた空間に充填された前記試薬溶液に含まれる前記発色試薬の発色反応を検出すること
とを備えることを特徴とする発色反応検査方法。
【請求項9】
凹部が設けられた基板の前記凹部に、プローブ生体分子を有するバイオチップを配置することと、
前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を前記凹部に滴下することと、
前記ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を前記凹部に滴下することと、
前記試薬溶液で満たされた前記基板の凹部を蓋板で覆うことと、
前記蓋板で覆われた前記基板の凹部に充填された前記試薬溶液に含まれる前記発色試薬の発色反応を検出すること
とを備えることを特徴とする発色反応検査方法。
【請求項10】
凹部が設けられた基体、及び前記基体の凹部の底面に結合されたプローブ生体分子を備えるバイオチップの前記凹部に、前記プローブ生体分子と結合するターゲット生体分子を含む被験溶液を滴下することと、
前記ターゲット生体分子を検出するための発色試薬を含む試薬溶液を前記凹部に滴下することと、
前記試薬溶液で満たされた前記基体の凹部を蓋板で覆うことと、
前記蓋板で覆われた前記基体の凹部に充填された前記試薬溶液に含まれる前記発色試薬の発色反応を検出すること
とを備えることを特徴とする発色反応検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2008−209130(P2008−209130A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43842(P2007−43842)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】