説明

発色調節されたサファイアの製造方法

本発明は、金属材料を気化させた後、電子ビームまたは高周波を加えてプラズマ状態にした後、そこから金属イオンを抽出して加速してサファイア表面に注入させる工程(工程1)及び前記工程1のイオンが注入されたサファイアを酸素が豊富な気体雰囲気または空気中で熱処理する工程(工程2)を含む工程を数回反復して行なって発色調節されたサファイアを製造する方法に関するものである。
本発明の発色調節されたサファイアの製造方法は、サファイアに光学的バンドギャップ変化を誘発することができるイオンを注入することで、多様な発色をするサファイアを製造することができ、酸素雰囲気で熱処理を行なうことで照射損傷がなく、均一に発色調節されたサファイアを製造することができる。また、前記の過程を反復することで、照射損傷がなく、高濃度かつ均一な発色が可能なサファイアを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色調節されたサファイアの製造方法に関し、詳細には、イオン注入及び熱処理を用いて発色調節することによってサファイアを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サファイアは、単結晶酸化アルミニウムでダイヤモンドの次に高い硬度を有し、純粋なサファイアは可視光線に透明な鉱物である。自然界に存在する天然サファイアは、環境によって異なる不純物が含まれ、含まれる不純物が単結晶酸化アルミニウムの格子中で置換されて単結晶酸化アルミニウムのエネルギーバンドギャップに影響を与える。その結果、高い硬度、透明性及び不純物によって青色、緑色、赤色、黄色などの固有の色を有するサファイアは、宝石に加工して用いられている。有色サファイアは、天然に多量に産出され、産出場所によって異なる色相を呈するのが一般的である。これらサファイアを宝石に用いるために後処理をする場合においても、サファイア中の不純物の含量や種類などがすでに決まっているので、サファイアの価値を高める能力には限界がある。ダイヤモンドとは異なり、発色サファイアは、透明なサファイアより数倍以上高い価値を有する。したがって、本発明は、透明または不純物含量が少なく発色程度が低いサファイアに、多様な金属不純物をドープして多様な色を呈することができる発色方法を提供するものである。
【0003】
従来の人工的な宝石発色方法としては、放射線照射法、表面拡散法、イオン注入法などがある。
【0004】
まず、放射線照射法は、α線やγ線などの高エネルギー粒子を宝石表面部に照射して格子欠陥を誘発させることによって色を出す原理である。放射線をサファイアに照射すると、サファイアに格子欠陥が誘発されて前記格子欠陥は、発色源(color center)として作用する。このような原理のため、放射線の種類とエネルギーサイズによってサファイアは多様な色を呈することができる。しかし、一時的な格子欠陥を誘発する放射線照射法は、酸素との結合で安定化するサファイアの特性上、大気中に一定時間放置される、またはわずかに加熱される場合においてすら、酸素と結合して格子欠陥が消失して元来の色相に戻るという問題がある。また、照射された放射線がサファイアから継続して放射され、半減期を考慮した安全な数値まで低下するまで10年以上の時間が必要となって価格が上昇するため、商用化しにくい問題があるだけではなく、極めて高い温度で処理する場合、宝石サファイア自体の変質も誘発し得る。
【0005】
一方、表面拡散法は、表面に不純物をコーティングした後、熱処理を通じて不純物が鉱物内部に拡散するように処理する方法である。前記放射線の照射方法と比較して、表面拡散法は、元来の色相に戻る問題と放射能が放射される問題は解決することができるが、サファイア内部により深く拡散させるためには、長期間及び高温の処理条件が必要とされ、製造費用が比較的に高いという問題がある。
【0006】
そして、イオン注入法は、イオン化した元素を真空下で加速させて鉱物表面に衝突させて注入する方法で、イオンの種類によって調節されるエネルギーバンドギャップが変わるので多様な発色が可能であるという長所があるが、各鉱物とイオンの種類及び化学反応性が考慮されなければならない。また、イオン注入時のエネルギーが極めて大きい場合、鉱物の表面での照射損傷が大きくなり、非常に弱い場合、イオン注入が表面でのみ起きて表面拡散法で処理したサファイアと差がないことがあり得、不均一に発色する問題が発生し得る。
【0007】
一方、サファイアの元素添加による発色効果は、他の宝石材料と異なる。例えば、ダイヤモンドは、炭素で構成されているため炭素より原子番号が一つ多いか一つ少ない窒素及びホウ素を添加した場合、黄色または青色系に発色する。しかし、サファイアは、窒素またはホウ素などの非金属元素を添加する場合には、独特の色を呈することができないが、金属元素を注入する場合には、際立った色を呈する。これは、サファイアのバンドギャップが、約9.0eVであり、ダイヤモンドの約5.5eVよりはるかに大きいからである。そのためサファイアは、金属元素を注入することによって際立った色を呈する。
【0008】
しかし、すべての金属元素を添加することが、サファイアの発色に好ましい結果を示すのではない。例えば、C.Marquesなどは、金(Au)をサファイアに注入するとダークブラック色を呈すると報告した[非特許文献1]。しかし、熱処理をするとサファイアと反応性のない金は、アルミニウム及び酸素と結合することができずに遊離して析出され、色は除去されるので、ダークブラック色は単なる照射損傷による結果であると言える。
【0009】
一方、Saitoなどは、コバルトイオンをサファイアに注入してそれぞれ800℃と1000℃で熱処理して、それぞれ緑または淡青色を発色するサファイアを得たと発表した[非特許文献2]。しかし、用いられたイオンエネルギーは、20keVであるため、イオン注入深さは極めて浅く、低エネルギーによってコバルトがサファイアの構成元素であるアルミニウムと酸素の注入直後には化学結合を形成することができなかったが、熱処理によってエネルギーを受けながらの化学結合による結果であるといえる。
【0010】
また、Alvesなどは、チタン及びコバルトをサファイアに注入後、熱処理過程で発生する現象に対して研究したが、イオン注入後、1000℃まではチタン及びコバルトがアルミニウムと置換されて安定した状態を維持すると発表した。還元雰囲気下で熱処理をした場合及び多量のイオンを注入する場合には、注入されたイオン同士が結合して金属状態でより多く存在することを報告し、1回の注入量がイオン注入法で重要な要因であることを発表した[非特許文献3]。
【0011】
したがって、本発明者等は、照射損傷がなく、サファイア内部まで均一に発色調節されたサファイアを製造するために研究を行う中、一定範囲のエネルギー及びイオン量の金属イオンをサファイアに照射すると、サファイア内部にイオンが注入される効果及び酸素雰囲気中で一定の熱を加えると、イオン注入時に発生した照射損傷を除去しながらも、サファイア内部まで均一に注入された元素が拡散することを見出して本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Nuclear Instrument and Methods in Physics Research b,1991年,第59巻,p.1173−1176
【非特許文献2】Nuclear Instrument and Methods in Physics Research b,2004年,第218巻,p.139−144
【非特許文献3】Nuclear Instrument and Methods in Physics Research b,2003年,第207巻,p.55−62
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、サファイアの表面損傷を最小化するだけでなく、均一で濃い色の発色を可能にすることで、商業的に価値が高いサファイア製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、金属材料を気化させ、電子ビームまたは高周波を加えてプラズマ状態を作り、そこから金属イオンを抽出して加速し、サファイア表面に注入させる工程(工程1)、及び前記工程1のイオンが注入されたサファイアを酸素を豊富に含む気体雰囲気または空気中で熱処理する工程(工程2)を含む発色調節されたサファイアの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発色調節されたサファイアの製造方法は、サファイアに光学的バンドギャップ変化を誘発することができるイオンを注入することで、多様な発色が可能なサファイアを製造することができ、酸化雰囲気下で熱処理を行なうことによって照射損傷を無くし、均一に発色するサファイアを製造することができる。また、前記の過程を反復することによって、照射損傷がなく、高濃度かつ均一に発色調節されたサファイアを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明による、鉄イオンを注入して発色調節されたサファイアの写真。
【図2】図2は、本発明による、クロムイオンを注入して発色調節されたサファイアの写真。
【図3】図3は、本発明による、コバルトイオンを注入して発色調節されたサファイアの写真。
【図4】図4は、本発明の工程1による、コバルトイオンを注入して発色調節されたサファイアのCo2pをX線光電子分光光度計で測定したスペクトル。
【図5】図5は、本発明による、コバルトイオンを注入して発色調節されたサファイアのCo2pをX線光電子分光光度計で測定したスペクトル。
【図6】図6は、本発明による、鉄イオンを注入して発色調節されたサファイアの元素をエネルギー分散型X線蛍光分析装置で測定したスペクトル。
【図7】図7は、本発明による、コバルトイオンを注入して発色調節されたサファイアの紫外−可視光吸収スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
本発明による発色調節されたサファイアの製造方法は、アルミニウムと酸素からなるサファイア結晶内に、特定の金属イオンがアルミニウムの格子点に置換されると、既存アルミニウムが電子供与体として、酸素が電子受容体として作用して生じるエネルギーバンドギャップが、特定金属が電子供与体として、酸素が電子受容体として作用して生じるエネルギーバンドギャップに変化する。それによって発色変化が起こる現象を用いたものである。
【0019】
本発明の前記原理を用いて2工程からなる発色調節されたサファイアの製造方法を提供する。
【0020】
まず、工程1は、金属イオンをサファイア表面に注入する工程である。詳細には、金属材料をスパッタリングまたは加熱によって気化させ、電子ビームまたは高周波を加えてプラズマ状態を作り、プラズマ状態の金属イオンを抽出して加速し、サファイア表面に注入する。
【0021】
金属イオンは、サファイアに光エネルギーバンドギャップ変化を誘起することができるイオンであり、サファイア内のアルミニウムの格子点に置換されて発色変化を誘発する役割を担う。アルミニウム及び酸素と化学反応性がある鉄、コバルト、ニッケル、クロム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テルル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及びカドミウムからなる群から選択される1種または2種以上の金属を用いてイオンの形態で注入することができ、鉄、コバルト、クロムを用いることが好ましい。イオン注入エネルギーは、50keV〜1000keVで注入される。イオン注入エネルギーが、50keV以下で注入した場合にも発色はするが、注入されたイオンが表面に集中し、サファイア内部にイオンを拡散させるためには、極めて長期間の熱処理が必要であるという短所がある。また、イオン注入エネルギーが1000keVを超過すると、著しい照射損傷が起こる問題がある。
【0022】
イオン注入エネルギーの範囲で、金属イオン注入は、1回に5×1017イオン/cm以下で注入して目標濃度に到達するまでイオン注入及び熱処理を1〜10回反復して発色調節されたサファイアを製造する。1回当り1×1015〜5×1017イオン/cmの範囲で注入することが好ましい。1回当りのイオン注入量が5×1017イオン/cmを超過するとサファイアの非晶質化が深刻になって熱処理による照射損傷の回復がよくなされず、注入元素間の偏析現象が発生し得るという問題がある。
【0023】
工程2では、前記金属イオンが注入されたサファイアを、酸素を豊富に含む気体雰囲気及び空気中で熱処理して発色調節されたサファイアを製造する。
【0024】
熱処理は、イオン注入直後、照射によるサファイア内部の格子欠陥を減少させ、イオン分布をサファイア内部で拡散させて均一化させる役割を担う。前記工程2の熱処理は、熱処理温度を、与えられた温度範囲内で上げることによって熱処理時間を減少させる方法、または前記熱処理温度を下げることによって前記熱処理時間を増加させる方法で行なうことができる。空気中でまたはチャンバー内部に酸素を吹き入れて酸素を豊富に含む雰囲気を形成して、900℃〜1400℃の温度範囲で熱処理を行なうことが好ましい。酸素が不足した還元雰囲気で熱処理する場合、偏析現象が深刻になるという問題がある。そして、前記熱処理が900℃未満である場合、サファイアの照射損傷回復には長時間が必要であり、色も澄んだ青色ではなく濁った緑色を呈し得るという問題がある。また、1400℃を超過すると、サファイアに亀裂が発生し得るという問題がある。
【0025】
これと関連して、前記熱処理が500℃以上で行なわれる場合には、1℃/分〜3℃/分の速度で加熱及び冷却する。
【0026】
前記熱処理時間は、6時間〜36時間で行なわれる。前記熱処理時間が、6時間以下なら発色が不完全になる問題があり、36時間を超過すると付加効果がそれ以上なくなり経済的ではない。
【0027】
工程3では、前記熱処理されたサファイアを工程1及び工程2を、目標のイオン注入濃度に到達するまで反復して行なう。
【0028】
本発明による前記工程1と工程2においては、色の濃度を徐々に上昇させ、表面層の照射損傷を最小化するとともに、サファイア内部まで均一にイオンを注入させて、イオン注入によって発生する照射損傷を回復させるために、前記工程1と2を数回反復して行なうことができる。
【発明の実施のための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例によって詳しく説明する。
【0030】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するだけのものであって本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0031】
<実施例1>発色調節されたサファイア製造1
工程1;
無色のサファイアをイオン注入機の真空チャンバー内のイオン注入照射ジグに位置させた後、鉄をスパッタリングするか、または鉄を加熱して気化させた。その後、電子ビームまたは高周波を照射してプラズマ状態にし、鉄イオンを50keVで抽出して50keVで加速して、100keVの総イオン注入エネルギーを用いて、1×1017イオン/cmの注入量で鉄イオンをサファイアに注入した。
【0032】
工程2;
工程1の鉄イオンが注入されたサファイアを、空気中で900℃まで3℃/分の加熱速度で加熱した後、6時間加熱した。その後、3℃/分の冷却速度で冷却した。前記工程1及び2を3回反復して色の濃度を増加させた。
【0033】
<実施例2>発色調節されたサファイア製造2
鉄イオンの代わりにクロムイオンを用いたことを除き、実施例1の方法と同一の方法で行なった。但し、前記工程1及び2を1回実施した。
【0034】
<実施例3>発色調節されたサファイア製造3
鉄イオンの代わりにコバルトイオンを用いたことを除き、実施例1の方法と同一の方法で行なった。但し、前記工程1及び2を1回実施した。
【0035】
分析
1.肉眼観察
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1ないし実施例3の発色結果は、表1及びそれぞれ図1ないし図3に示した。図1及び図2に示したように、イオンが注入されていないサファイア(図2の右側)に比べて鉄イオンが注入されたサファイア(図1)とクロムが注入されたサファイア(図2)は、同じ黄色系の発色を示すが、彩度において差がでることが読み取れる。これは、注入されたイオンの種類によってそれぞれ異なる発色をするサファイアを製造することができることを示す。また、コバルトを注入したサファイアは、青色を示したが、温度が高いほど、熱処理時間が長いほど、若干薄い色に変化した。コバルトはより深く拡散し、サファイア内部まで色が均一に発色調節されたサファイアが製造された。
【0038】
2.X線光電子分光光度計分析
コバルトイオン注入と熱処理によって発色変化が生じる機構を明らかにするために、X線光電子分光光度計(AXIS−NOVA,Kratos)を用いて注入コバルトのCo2p化学結合状態を分析した。前記X線光電子分光光度計を用いて、X線を試料に照射してコバルトの2pの結合エネルギーを測定することによりコバルト中の電子の結合状態を確認することができる。前記分析により、サファイアの構成元素であるアルミニウム及び酸素の結合状態が確認されると、注入されたコバルトがサファイアと化学結合を通じて安定的化し、発色調節されたサファイアを製造できることを示す。
【0039】
実施例3のX線光電分光光度計分析の結果を図4及び図5に示した。
【0040】
図4は、実施例3で工程1のみ行なったサファイア内にあるコバルトの化学結合状態を示したスペクトルである。図4に示したように、778.7eVのピークは金属コバルトを、782.2eVのピークはCoAlを、780.6eVのピークはCoを示す。熱処理が行なわれていないサファイアにおいて778.7eVのピークが現われたことから、金属コバルト自体が存在することを示すが、782.2eV及び780.6eVのピークが現われたことから、コバルトとサファイア内にアルミニウムと酸素が化学結合をしていることを示す。すなわち、金属イオンの注入だけでも注入イオンのエネルギーが駆動力になって化合物を形成することを意味するが、結合の安定性は極めて低く照射損傷によって黒色を示した。
【0041】
図5は、実施例3の工程1ないし工程3をすべて行なったサファイア内にあるコバルトの化学結合状態を示したスペクトルである。図5に示さるように、金属コバルト自体を示す778.7eVのピークが弱くなり、相対的にコバルトとアルミニウム及び酸素からなる化合物を示す782.2eVのピークが強く現われた。これは、コバルトが熱を駆動力にして金属コバルトの大部分が、サファイアを構成するアルミニウム及び酸素と安定に結合して光エネルギーバンドに変化を起こし、青色を呈するサファイアが製造されたことを意味する。
【0042】
3.エネルギー分散型蛍光X線分析
発色調節されたサファイアの主な発色イオンを知るためにエネルギー分散型蛍光X線分析(ELVAX,ELVA)を行なった。物質内に存在する元素の定量及び定性分析ができるエネルギー分散型X線蛍光分析装置は、検出される元素の種類と硬度により主要な発色源を明らかにすることができる。
【0043】
実施例1のエネルギー分散型蛍光X線分析結果を図6に示した。図6に示したように、鉄イオンピークが強く現われたことから、鉄イオンがサファイア内に存在することを意味する。一方、ガリウム(Ga)、クロムのピークが現われたことから、鉄イオンを注入する前の天然状態においてもガリウム、クロムが存在したことを意味する。すなわち、不純物はサファイア内に存在しているものの、サファイアのバンドギャップを変化させて発色に影響を及ぼすには低濃度すぎたため、鉄イオンを注入して熱処理したサファイアの主要発色源は、鉄イオンであることを意味する。
【0044】
4.紫外可視(UV−Vis)分光分析
実施例3によって製造された発色調節されたサファイアが吸収する波長を分析して、前記サファイアが示す色を決定するためにUV−Vis分析(UV3101PC,Shimadzu)を実施した。可視光線領域で吸収される波長を観測してコバルトが注入されたサファイアが発色する色の種類を推定することができる。
【0045】
図7は、コバルトイオン注入及び熱処理後、青色試料に紫外線及び可視光線を照射して、コバルトイオンが注入されたサファイアが吸収した波長領域を示した。図7に示したように、本発明によって製造されたサファイアは、388nm〜450nm及び588nm〜626nmの領域の波長を吸収し、その外側の波長は比較的吸収が少なく、青色を呈することを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、コバルト、ニッケル、クロム、スカンジウム、チタン、バナジウム、マンガン、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テルル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム及びカドミウムからなる群から選択される1種または2種以上の金属材料をスパッタリングまたは加熱して気化させ、電子ビームまたは高周波で該気化させた金属材料に照射して、該気化させた金属材料をプラズマ状態にし、次いで、プラズマ状態から金属イオンを抽出して加速してサファイア表面に注入する工程(工程1)、及び
前記工程1の金属イオンが注入されたサファイアを酸素雰囲気または空気中で熱処理する工程(工程2)を含む、発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項2】
金属材料が、鉄、コバルト及びクロムからなる群から選択される1種または2種以上の金属であることを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項3】
工程1におけるイオン注入エネルギーが、50keV〜1000keVの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項4】
工程1及び工程2が、1〜10回反復して行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項5】
金属イオンが、1×1015〜5×1017イオン/cmの量でサファイアに注入されることを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項6】
工程2において、金属イオン注入されたサファイアが、900〜1400℃の温度にて熱処理され、その後、冷却することを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。
【請求項7】
工程2において、サファイアの熱処理が、6〜36時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の発色調節されたサファイアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−524326(P2011−524326A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513401(P2011−513401)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003268
【国際公開番号】WO2009/151160
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(500002490)コリア アトミック エナジー リサーチ インスティチュート (20)
【Fターム(参考)】