説明

発酵成分

提供するのは、乳酸桿菌種を用いる加水分解されたエンドウマメタンパク質に基づく発酵方法、生成した成分、前記成分を含む食品および食品の塩味を増強する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、35 U.S.C. §111(b)に準拠する仮特許出願である。
技術分野
新規な成分および食品、特に低いかまたは低減されたナトリウム含量を有する食品における塩味を増強する前記成分を生成して、これらの味を改善するための発酵方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
背景
多量のナトリウム摂取は健康に有害であると考えられており、したがって、同時に所望の塩味を低減することなしに、食品中の塩化ナトリウム(NaCl)の量を減少させるという欲求がある。塩味は、特に良好な味の食品についての知覚された味強度およびプロフィールに対して極めて重要である。
【0003】
食品の塩味を増強してNaClを減少させることができる成分を提供する食品産業におけるニーズが存在する。さらに、食品、特に良好な味の食品の旨味を増強する成分を提供する必要がある。
【0004】
塩化カリウム(KCl)は、他の塩類、特にNaClと交換するために用いられる。NaCl濃度を減少させるのに望ましい濃度でKClを用いる場合には、所望されない苦味および金属のような味が消費者により知覚される。したがって、KClを部分的に、または完全に交換することができるように、NaClの塩味を増強することができる製品を見出すことは、興味深い。
【0005】
驚くべきことに、ここで、以下に記載する加水分解されたエンドウマメタンパク質の発酵に基づく方法により、食品における塩味の知覚に対して増強効果を有する成分を生成することができることが見出された。
【0006】
加水分解されるタンパク質の豊富な植物学的物質をベースとする発酵製品は、旨味を有すると知られている。特に、大豆および小麦グルテンからのタンパク質は、旨味を有する成分を生成するために用いられる。このような成分を生成するために、高い含量のグルタミン酸を有する材料が選択され、これは、旨味についての極めて重要な要因である。小麦グルテンは34%のグルタミン酸含量を有し、大豆タンパク質は20%のグルタミン酸含量を有する。同様の効果に到達するために、同様の、または一層高いグルタミン酸含量を有する物質を選択する。これらの成分のいずれも、食塩増強効果を有するとは知られていない。
【発明の概要】
【0007】
食塩増強成分を生成する方法であって、
a)エンドウマメタンパク質を加水分解し、
b)加水分解されたかまたは部分的に加水分解されたエンドウマメタンパク質に、少なくとも6の開始pHにて種に適する温度にて乳酸桿菌種と共に発酵を施し、5.5またはこれ以下のpHに到達するまでインキュベートする、
前記方法を提供する。
【0008】
段階a)における加水分解が、酵素に適する温度にてプロテイナーゼ活性とペプチダーゼ活性とを共に有する酵素または酵素調製物を用いて行う酵素的加水分解である、本明細書中に記載する方法を提供する。
【0009】
酵素調製物がコウジカビ(umamizyme(登録商標))からのものであり、加水分解を40℃〜60℃にて行う、本明細書中に記載する方法を提供する。
加水分解を、十分な量の酸を加えることにより化学的に行う、本明細書中に記載する方法を提供する。
【0010】
酸が塩酸、乳酸、リン酸およびクエン酸からなる群から選択される、本明細書中に記載する方法を提供する。
加水分解温度が50℃〜70℃である、本明細書中に記載する方法を提供する。
【0011】
加水分解を、酸と酵素または、酵素もしくは酵素調製物に適する温度にてプロテイナーゼ活性とペプチダーゼ活性との両方を有する酵素調製物との組み合わせにより行う、本明細書中に記載する方法を提供する。
乳酸桿菌種がL. plantarum、L. casei、L. brevisおよびL. helveticusの1種または2種以上から選択される、本明細書中に記載する方法を提供する。
【0012】
本明細書中に記載した方法により生成した、食塩増強成分を提供する。
水を除去することにより少なくとも1.5倍濃縮される、本明細書中に記載する食塩増強成分を提供する。
食塩増強成分を噴霧乾燥する、本明細書中に記載する食塩増強成分を提供する。
【0013】
本明細書中に記載する食塩増強成分を含む食品のためのフレーバー組成物を提供する。
本明細書中に記載する食塩増強成分の濃度が、噴霧乾燥した2倍濃縮物を基準として0.02%〜0.3%(wt/wt)である、本明細書中に記載するフレーバー組成物を提供する。
【0014】
本明細書中に記載する食塩増強成分を含む食品を提供する。
本明細書中に記載する食塩増強成分の濃度が、噴霧乾燥した2倍濃縮物を基準として0.002%〜0.03%(wt/wt)である、本明細書中に記載する食品を提供する。
【0015】
ナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品である、本明細書中に記載する食品を提供する。
塩化ナトリウム濃度が0.15%(wt/wt)〜3%(wt/wt)である、本明細書中に記載する食品を提供する。
塩化ナトリウム濃度が0.15%(wt/wt)〜1.5%(wt/wt)である、本明細書中に記載する食品を提供する。
【0016】
さらにKClを、例えば0.1%〜2%のKClの濃度で含む、本明細書中に記載したナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品を提供する。
本明細書中に記載する食塩増強成分を食品に混合する、塩味が増強された食品を提供する方法を提供する。
食品が、任意にKClを任意に0.1%〜2%のKClの濃度で含むナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品である、本明細書中に記載した方法を提供する。
【0017】
詳説
本明細書中で用いる用語エンドウマメは、食用の種子を含む長い緑色の鞘を有する、植物エンドウおよびこの栽培品種の円形の種子を表す。ほとんどが円形であるマメ科族の数種の他の種子はまた、エンドウマメと呼ばれているが、これらは明確に除外される。あるいはまた、エンドウマメ種子の代わりに、エンドウマメの芽を用いてもよい。
【0018】
本明細書中に提供する方法に用いるためのエンドウマメタンパク質を、すべての好適な形態、例えばエンドウマメの種子または芽(全体の、もしくは挽き砕いた種子および全体の、もしくは切断した芽)の形態で、またはエンドウマメから単離したタンパク質、またはエンドウマメおよび任意に追加の成分からのタンパク質を含むすべての天然物質としてとすることができる。エンドウマメタンパク質は、約13%に過ぎない比較的低いグルタミン酸含量を有する。
【0019】
エンドウマメタンパク質を、最初に加水分解するかまたは部分的に加水分解し、次にラクトバチルス・プランタルムで発酵させる;当該プロセスを、1つの加水分解/発酵容器中で連続的に行うことができる。加水分解を酵素的に行う場合には、加水分解および発酵を平行して行うことができる。酸加水分解を用いる場合には、用いる特定の菌株に依存して酸を約pH6〜7に中和した後に、乳酸桿菌属を加えなければならない。pHが6より低い場合には、ラクトバチルス・プランタルムは極めてゆっくりと増殖し、通常は十分ではない。
【0020】
エンドウマメタンパク質の加水分解を、酵素的に、または十分な量の酸を加えることにより、または酵素(1種もしくは2種以上)(プロテイナーゼ活性およびペプチダーゼ活性)と酸との組み合わせにより、行うことができる。例えば、塩酸を用いる場合には、これを、5.5Mの加水分解混合物中の最終濃度において用いる。5.5Mの塩酸を相応に得るのと同様のpHを得る量で、他の酸を用いることができる
【0021】
酵素的加水分解のために、1種より多い酵素を含み、プロテイナーゼ活性とペプチダーゼ活性とを共に有する酵素または酵素調製物を、1種または2種以上の酵素に適する温度にて用いる。好適な温度を、酵素の温度要件に応じて選択し、例えば、umamizyme(登録商標)は、約40℃〜約60℃の温度に耐容し、最適は約55℃である。有用な酵素は、プロテアーゼ酵素調製物、例えばumamizyme(登録商標)(Amano, Elgin, IL)である。プロテアーゼ調製物は、2種のタイプの酵素を含む;タンパク質を加水分解して小さいペプチドを形成するプロテイナーゼ、ならびにアミノ酸をタンパク質およびペプチドの末端から遊離させるペプチダーゼ。umamizyme(登録商標)は、コウジカビに由来し、エンドおよびエクソ活性(Endo & Exo activity)が豊富である。
【0022】
用いるすべての酵素は、食物等級でなければならない。必要である酵素の量または単位を、十分な活性を確実にし、苦味のノートが発生するのを回避するように選択する。酵素の量は、タンパク質の量に依存し、0.5:20〜3:20の酵素:タンパク質比(20部のエンドウマメタンパク質について0.5〜3部の酵素)、例えば1:20の酵素:タンパク質がなければならない(umamizyme(登録商標)は、pH7にて70U/gを有する)。
【0023】
酸加水分解において、例えば塩酸、乳酸、リン酸およびクエン酸の1種または2種以上を含む酸を、用いてもよい。加水分解を、好適な温度、例えば約50℃〜約70℃にて行う。
他の代替法は、酸加水分解と酵素的加水分解との組み合わせである。この場合において、酸、酵素、pHおよび温度を、これらが適合性であるように選択する必要がある。関連するデータは知られており、多種のプロテイナーゼおよびペプチダーゼ酵素に容易に利用可能である。
【0024】
酸加水分解は、可能性を有するものであるが、酸を中和する際に少量の食塩が加えられるとして欠点を有する。得られる食塩エンハンサーは尚、食塩が低減された製品に有用であるが、還元電位はわずかに制限され得る。一層重要なことに、汚染物質3−クロロプロパン−1,2−ジオール(3−MCPD)ならびに他のモノおよびジクロロプロパノール汚染物質が生成し得、これは、可能性のある健康への悪影響について議論されており、したがって消費者は、3−MCPDを含むかまたは潜在的に含む製品を回避する傾向がある。
【0025】
以下の発酵のための種子培養/一晩培養物を、当該分野において十分知られている方法によって調製することができる。これは、微生物に適切な温度にて一晩、例えば12時間増殖し得る。37℃は、ラクトバチルス・プランタルムに好適な温度である。すべての好適な培地、例えばMRSブロス(Difco, United States of America)を選択することができる。
【0026】
乳酸桿菌での発酵を、発酵ブロスとして加水分解されたタンパク質を用い、少なくとも6またはこれより高いpH、例えば6〜7のpHにて十分な容積の一晩種子培養物を加えて、開始する。pHが少なくともpH5.5またはこれより低い、例えばpH5.5〜pH4.5に低下するまで、発酵を放置して進行させ、これには通常約5〜12時間を要する。発酵温度を、微生物が適応するために選択する。乳酸桿菌および特にラクトバチルス・プランタルムに有用な温度範囲は、例えば20℃〜40℃、30℃〜40℃、35〜40℃を含み、最適なのは約36℃〜38℃である。低温にて、増殖速度は低く、高温にて、微生物は死滅する。
【0027】
ラクトバチルス・プランタルムを発酵のために用いるが、他の乳酸桿菌種もまた有用であり得、例えば、L. casei、L. brevisおよびL. helveticusもまた有用であり得る。
発酵後(低いpHに到達した後)、発酵ブロスを90℃にて30分間低温殺菌して、微生物および酵素を不活性化させる。
【0028】
その後、低温殺菌した発酵ブロスを濾過して、すべての比較的大きい粒子を除去してもよく、例えば、例えば100℃までにて沸騰させることを含む蒸発により濃縮してもよい。
食塩エンハンサーを、これ自体で、または濃縮された形態で用いてもよい。あるいはまた、濃縮された食塩エンハンサーを、ペーストもしくは粉末として用いるか、または当該分野において十分知られている方法によって噴霧乾燥してもよい。噴霧乾燥した食塩エンハンサーについて、十分知られている担体および凝固防止剤を、加えてもよい。
【0029】
食塩エンハンサーの最終的な形態を、当該分野において十分知られている方法に従って選択してもよく、これは、特定の食品用途に依存する。流動食、例えばスープについて、食塩エンハンサーを、この液体形態においてさらに加工せずに用いることができる。クラッカーなどの乾燥用途について、噴霧乾燥した濃縮食塩エンハンサーを、用いることができる。
食塩エンハンサーを、食品に直接加えるか、または食品に風味を付与するためのフレーバー組成物の一部として供してもよい。
【0030】
増強するにより、増強成分を加えずに食物に対する増強効果を有する成分を含む食物を比較した際に、当該ノートに感受性の訓練されたパネリストによって分析して、この風味の強度において一層顕著である(より強く、増強された)と見出される食物における特定のフレーバーノートに対する成分の効果を意味する。
【0031】
食品の用語を、広範囲の意味において用いて、食物、飲料、栄養補給食品およびうがい薬を含む歯の手入れ製品を含む口中に摂取するすべての製品を含む。
【0032】
食品には、穀物製品、米製品、パスタ製品、ラビオリ、タピオカ製品、サゴ製品、パン屋の製品、ビスケット製品、ペストリー製品、パン製品、菓子類製品、デザート製品、ガム、チューインガム、チョコレート、アイス、蜂蜜製品、糖蜜製品、酵母製品、食塩および香辛料製品、良好な風味の製品、マスタード製品、酢製品、ソース(調味料)、加工食品、調理された果物および野菜製品、肉および肉製品、肉類似物/代替品、ゼリー、ジャム、果物ソース、卵製品、乳製品および酪農製品、チーズ製品、バターおよびバター代替製品、ミルク代替製品、大豆製品、食用油脂製品、医薬、飲料、ジュース、果物ジュース、野菜ジュース、食物エキス、植物エキス、肉エキス、調味料、栄養補給食品、ゼラチン、錠剤、トローチ剤、ドロップ、エマルジョン、エリキシル、シロップおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0033】
特に興味深いのは、伝統的に減少したナトリウム塩濃度を有する、ナトリウム塩が多量である食品であり、これには、調味料およびソース(低温、暖かい、即席、保存された、サテー、トマト、BBQソース、ケチャップ、マヨネーズおよび類似物、ベシャメル)、グレイビー、チャツネ、サラダドレッシング(棚で安定な(shelf stable)、冷蔵)、生地混合物、酢、ピザ、パスタ、即席麺、フレンチフライ、クルトン、塩味のある軽食(ポテトチップス、クリスプ、ナッツ、トルティーヤ−トスターダ(tortilla-tostada)、プレッツェル、チーズ軽食、コーン軽食、ジャガイモ軽食、インスタントのポップコーン、電子レンジで調理可能なポップコーン、キャラメルコーン、ポークの皮、ナッツ)、クラッカー(塩振りクラッカー(Saltine)、「リッツ」タイプ)、「サンドイッチタイプ」のクラッカー軽食、朝食の穀物、チーズ類似物(ナトリウムが減少したチーズ、低温殺菌されたプロセスチーズ(食物、軽食およびスプレッド)、良好な風味のスプレッド、低温缶詰チーズ製品、チーズソース製品)を含むチーズおよびチーズ製品、肉、アスピック、塩漬け肉(ハム、ベーコン)、昼食/朝食肉(ホットドッグ、コールドカット、ソーセージ)、大豆ベースの製品、トマト製品、ジャガイモ製品、乾燥香辛料または調味料組成物、ペスト、マリネを含む液体の香辛料または調味料組成物、ならびにスープタイプ/食事代替飲料、ならびにトマトジュース、ニンジンジュース、混合野菜ジュースおよび他の野菜ジュースを含む野菜ジュースが含まれる。
【0034】
好ましい加工食品には、マーガリン、ピーナッツバター、スープ(透明な、缶詰の、クリームの、インスタントの、UHT)、グレイビー、缶詰ジュース、缶詰野菜ジュース、缶詰トマトジュース、缶詰果物ジュース、缶詰ジュース飲物、缶詰野菜、パスタソース、冷凍アントレ(entree)、冷凍ディナー、冷凍ハンドヘルドアントレ、乾燥包装された(dry packaged)ディナー(マカロニおよびチーズ、乾燥ディナー−肉添加、乾燥サラダ/付け合わせミックス、乾燥ディナー−肉添え)が含まれる。スープは、濃密な湿潤した(condensed wet)、インスタントの、ラーメン、乾燥およびブロス、加工された、および予め調理済みの低ナトリウム食品を含む種々の形態であり得る。
【0035】
食品に依存して、類似の食品より約10〜100%、例えば25〜50%少ないナトリウムを含む食品(例えば25%の減少を有する「減少したナトリウム」製品または50%の減少を有する「ナトリウムが軽度の」製品)について、食塩エンハンサーを、以下のように用いてもよい:ほとんどの食物用途のための有用な濃度は、噴霧乾燥2倍濃縮物(以下の例1と比較)を基準として25〜300ppmまたは0.002%〜0.03%(wt/wt)である。食塩エンハンサーを、濃縮されていないかもしくは濃縮された形態で用いてもよく、または濃縮物を、当該分野において知られている方法によってペーストまたは粉末に配合してもよい。この場合において、用いるべき量を、相応に調節しなければならない。香辛料などのフレーバー組成物は、しばしば一層濃縮されており(例えば10倍濃縮物)、濃度を、相応に一層高く(250ppm〜3000ppm)調節する。
【0036】
均一なNaCl濃度を有する一般的な食品中のNaCl含量は、ほとんどの製品について0.5%〜5%のNaClの範囲内で変動する。調味料または調味料として用いる製品、例えば少量(例えばサラダもしくは麺に適用するために)で用いるクルトン、ソースもしくはサラダドレッシングは、例えば2%〜5%のNaClの濃度を有する。スープは、通常0.6%〜1.25%のNaClを含む。塩味を有するクラッカーおよび肉製品(サラミ、ハム、ベーコン)は、通常2%〜4%のNaClを含む。穀物は、通常0.6〜3%のNaClを含む。再構成する必要がある製品(乾燥スープ)は、通常再構成の後に示す濃度範囲内で変動する。
【0037】
減少したナトリウム含量(一人前あたり353mg)を有する製品より尚少量のNaClを含む低ナトリウム製品について、食塩エンハンサーの量を増大させなければならない場合がある。
【0038】
食品に依存したKClおよび前記成分が加えられた食品について、KClの濃度を、ナトリウム濃度がどのくらい減少するかに依存して、約0.1%または0.2%から1%まで、1.5%まで、2%までまたはこれ以上としてもよい。0.25%〜1.5%のKCl濃度、例えば0.5%〜1.5%のKClは、ほとんどの低ナトリウム製品に有用である。NaCl濃度をほとんどの用途について有用に減少させてもよい範囲は、例えば0.25%〜2.5%または0.125%〜1.25%である。成分として食品に加えるべき食塩エンハンサーの量は、用いるKClの濃度ならびに、特定のベースおよびフレーバーを含む特定の食品に依存する。一般的に、食塩エンハンサーの噴霧乾燥2倍濃縮物を用いる場合には、製品中の0.002%〜0.03%の前記濃縮物(製品重量を基準とする)を用いてもよい。食塩エンハンサーを、濃縮していない形態で用いてもよく、または濃縮物を、当該分野において知られている方法によってペーストまたは粉末または噴霧乾燥食塩エンハンサー中に配合してもよい。この場合において、用いるべき量を、相応に調節しなければならない。
【0039】
食塩エンハンサーの適切な濃度を、感覚刺激性滴定によって容易に試験することができる。この手法は、感覚的分析の分野において十分知られている。
【0040】

他に示さない限り、百分率をwt/wtとして示す。
【0041】
例1
ラクトバチルス・プランタルムでの発酵によるエンドウマメベースノートの生成
【表1】

【表2】

【0042】
種子培養物を、ラクトバチルス・プランタルム、ATCC 14917を12時間にわたり、37℃にて上記に示した種子培養培地中でインキュベートすることにより、調製する。
【0043】
発酵ブロスを、以下のように生成する:
水、食塩およびエンドウマメタンパク質単離物を、発酵容器中で十分混合し、初期pHを記録し(通常約6.3)、混合物に、〜150rpmにて撹拌を施し、加熱し、60分間121℃に施す。滅菌した混合物を、55℃に冷却し、umamizyme(登録商標)を加える(6gのumamizyme(登録商標)を少量の水に溶解し、0.45ミクロンのフィルターを用いて濾過滅菌した)。umamizyme(登録商標)との混合物を、24時間55℃および150rpmにて放置して加水分解させる。
【0044】
生成する加水分解物を、37℃に放冷し、37℃にて15〜30分間インキュベートする。pHを決定して(典型的に約5.6〜5.7)、潜在的汚染を検出する(汚染が起こる場合には、手順全体を、新鮮な材料を用いて繰り返されなければならない)。
【0045】
加水分解物に、3mlのラクトバチルス・プランタルム培養物(約10個の細胞/gの細胞密度での一晩種子培養物の接種材料)を接種し、pH(最初は約pH6)が約5(典型的にはpH4.5〜pH5.5)に到達するまで、37℃および60rpmにて6〜8時間インキュベートする。
次に、培養物を低温滅菌し、これにより90℃にて30分間不活性化し、30℃に冷却する。
【0046】
得られた不活性培養物を、フィルター遠心分離機中のフェルトフィルター袋を通過させることにより濾過する。濾過した培養物(残留する比較的小さい固体を含む上澄み、比較的大きい消化されていないタンパク質を含むバイオマスを除く)を、100℃にて蒸発/沸騰させることにより2倍に濃縮する。得られた2倍濃縮物の固形分を、水分分析装置を用いて決定し、ジャガイモマルトデキストリン担体上に、1:1の2倍濃縮物の固体対担体の比率で噴霧乾燥する。
【0047】
最後に、担体上の2倍濃縮物の合計重量を基準として0.5%(wt/wt)のリン酸三カルシウム(TPC)を、凝固防止剤として加える。
凝固防止剤を有する生成した噴霧乾燥食塩エンハンサーを、以下の例において「エンドウマメベースノート」または「PBN」と呼ぶ。
【0048】
例2
感覚的評価:PBNの風味
水中の0.2%の濃度での例1のPBNの試料を、このうまみおよび塩味について6人の訓練されたパネリストにより評価する。
パネリストは、PBNの風味を、0.25%のNaCl(塩味)および0.15%のグルタミン酸一ナトリウム(MSG、旨味)の基準に対する比較において評価する。
パネリストは、PBN試料が単独でうまみを有するが塩味を有しないと決定した。
【0049】
例3
感覚評価:低ナトリウムチキンブロスにおける塩味の増強
エンドウベースノート(PBN、例1に記載したように生成した)の食塩増強効果を、PBNを含む、および含まない食塩を減少させたチキンブロスを比較することにより、決定した。
【0050】
以下の試料を、強制選択法において比較した:
・低ナトリウムチキンブロス(50%の減少−240gのブロスあたり960mgのナトリウム)
・同一の低ナトリウムチキンブロス中の0.1%(wt/wt)の濃度における例1のPBN
【0051】
15mlの各々の試料を、60℃の温度にて、2ozのプラスチックカップにおいて、また15人のパネリストに対して順不同に提示した。
2つの複製(1回のセッションにわたり)において、パネリストに、2つの試料を比較し、高い方の塩味を有する試料を選択するように依頼した。口蓋を洗浄するための温蒸留水を、試料の間に用いるために用意した。データにR指数(R-index)分析を施し、結果を以下の表に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
50%のR指数は、純粋な機会に等しく、2つの試料が検出可能な差異を有しないことを意味する。PBN試料は、50%より高い71%の計算されたR指数を有しており、これは、チキンブロス試料と比較して顕著に塩味が強度であったことを意味する。したがって、PBNは、チキンブロスの塩味強度を顕著に増強したと結論づけることができる。
【0054】
対照として、すでに0.1%の低い濃度にてタンパク質可溶性および酵素活性を最適化するために用いた塩化ナトリウムを完全に除外した以外は、例1に記載したようにPBNを生成した。この対照を用いた結果により、強制選択法において同様の増強効果が示された。
【0055】
例4
感覚評価:KClでの低ナトリウムチキンブロスにおける塩味の増強
以下の2種の試料を比較した以外は、例3に記載したように評価を行った:
・0.30%(wt/wt)のKClを含む低ナトリウムチキンブロス(50%の減少−240gのブロスあたり960mgのナトリウム)
・同一の低ナトリウムチキンブロス中の120ppmの濃度における例1のPBN
【0056】
結果を以下の表に示す。
【表4】

【0057】
PBN試料は、50%より高い71%の計算されたR指数を有しており、これは、KClを含む低ナトリウムチキンブロス試料と比較して顕著に塩味が強度であったことを意味する。したがって、PBNは、KClを含む低ナトリウムチキンブロスの知覚された強度を顕著に増強したと結論づけることができる。
【0058】
対照として、すでに0.1%の低い濃度にてタンパク質可溶性および酵素活性を最適化するために用いた塩化ナトリウムを完全に除外した以外は、例1に記載したようにPBNを生成した。この対照を用いた結果により、強制選択法において同様の増強効果が示された。
【0059】
例5
感覚評価:ブイヨンにおける旨味
ブイヨン中の以下の表に示す濃度におけるエンドウマメベースノート試料(PBN、例1に記載したように生成した)の旨味の強度を、自己消化酵母エキス、加水分解した植物タンパク質または培養した小麦グルテンを含む種々のブイヨン試料(あっさりした風味のチキンブイヨン)とこれを比較することにより決定した。
【0060】
17人の訓練されたパネリストは、旨味の強度を、0〜100ポイントの固定した尺度(0=うまみ感覚なし、10〜25=低い、25〜40=低いないし中程度、40〜60=中程度、60〜80=中程度/高い、80〜100=高いうまみ強度)で、3つの別個の複製にわたり評価した。あっさりした風味のブイヨンについての平均のうまみ強度スコアを用いて、うまみ強度をさらに固定した。
【0061】
1.5オンスの試料を、60℃にて2ozのプラスチックカップにおいてパネリストに1つずつ(monadicaly)提示した。試料の間に口蓋を洗浄するための温蒸留水を、パネリストに用意した。
複製とパネリストとの全域で評価を平均し、これに分散分析を施した。分散をa、b、cとして示し、同一の文字は、調査が有意な差異を有しないことを示す。
【0062】
【表5】

【0063】
結果は、PBNが、はるかに一層低いグルタミン酸含量を有する濃度において用いた際にも、自己消化酵母エキス、加水分解された植物タンパク質および培養した小麦グルテンと同様に高いかまたは一層良好なうまみ強度を有することを示す。
【0064】
例6
感覚評価:ポテトチップスにおけるうまみ強度
ポテトチップス中0.5%の以下の表に示す濃度におけるエンドウマメベースノート試料(PBN、例1に記載したように生成した)の旨味の強度を、自己消化酵母エキス、加水分解した植物タンパク質または培養した小麦グルテンで風味を付加したポテトチップス試料とこれを比較することにより決定した。
【0065】
11人の訓練されたパネリストは、旨味の強度を、0〜100ポイントの固定した尺度(0=うまみ感覚なし、10〜25=低い、25〜40=低いないし中程度、40〜60=中程度、60〜80=中程度/高い、80〜100=高いうまみ強度)で、2つの別個の複製にわたり評価した。風味を付加していないポテトチップスについての平均のうまみ強度スコアを用いて、うまみ強度をさらに固定した。
【0066】
7gの各々の試料(加えられた成分の均一な分布を確実にするために粉砕したチップ)を、60℃にて2ozのプラスチックカップにおいてパネリストに1つずつ提示した。試料の間に口蓋を洗浄するためのローズヒップティーおよび水を、パネリストに用意した。
複製とパネリストとの全域で評価を平均し、これに分散分析を施した。分散をa、b、cとして示し、同一の文字は、調査が有意な差異を有しないことを示す。
【0067】
【表6】

【0068】
結果は、PBNが、はるかに一層低いグルタミン酸含量を有する濃度において用いた際にも、自己消化酵母エキス、加水分解された植物タンパク質および培養した小麦グルテンと同様に高いうまみ強度を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食塩増強成分を生成する方法であって、
a)エンドウマメタンパク質を加水分解し、
b)加水分解されたかまたは部分的に加水分解されたエンドウマメタンパク質に、少なくとも6の開始pHにて種に適する温度にて乳酸桿菌種と共に発酵を施し、5.5またはこれ以下のpHに到達するまでインキュベートする、
前記方法。
【請求項2】
段階a)における加水分解が、酵素に適する温度にてプロテイナーゼ活性とペプチダーゼ活性とを共に有する酵素または酵素調製物を用いて行う酵素的加水分解である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素調製物がコウジカビ(umamizyme(登録商標))からのものであり、加水分解を40℃〜60℃にて行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加水分解を、十分な量の酸を加えることにより化学的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
酸が塩酸、乳酸、リン酸およびクエン酸からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
加水分解温度が50℃〜70℃である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
加水分解を、酸と酵素または、酵素もしくは酵素調製物に適する温度にてプロテイナーゼ活性とペプチダーゼ活性との両方を有する酵素調製物との組み合わせにより行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
乳酸桿菌種がL. plantarum、L. casei、L. brevisおよびL. helveticusの1種または2種以上から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにより生成した、食塩増強成分。
【請求項10】
水を除去することにより少なくとも1.5倍濃縮される、請求項9に記載の食塩増強成分。
【請求項11】
食塩増強成分を噴霧乾燥する、請求項9または10に記載の食塩増強成分。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の食塩増強成分を含む、食品のためのフレーバー組成物。
【請求項13】
請求項9に記載の食塩増強成分の濃度が、噴霧乾燥した2倍濃縮物を基準として0.02%〜0.3%(wt/wt)である、請求項12に記載のフレーバー組成物。
【請求項14】
請求項9〜11のいずれかに記載の食塩増強成分を含む、食品。
【請求項15】
請求項9〜11のいずれかに記載の食塩増強成分の濃度が、噴霧乾燥した2倍濃縮物を基準として0.002%〜0.03%(wt/wt)である、請求項14に記載の食品。
【請求項16】
ナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品である、請求項14または15に記載の食品。
【請求項17】
塩化ナトリウム濃度が0.15%(wt/wt)〜3%(wt/wt)である、請求項16に記載の食品。
【請求項18】
塩化ナトリウム濃度が0.15%(wt/wt)〜1.5%(wt/wt)である、請求項16に記載の食品。
【請求項19】
さらにKClを、例えば0.1%〜2%のKClの濃度で含む、請求項16〜18のいずれかに記載のナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品。
【請求項20】
塩味が増強された食品を提供する方法であって、請求項9〜11のいずれかにおいて定義した食塩増強成分を食品に混合する、前記方法。
【請求項21】
食品が、任意にKClを任意に0.1%〜2%のKClの濃度で含むナトリウムが減少しているかまたは低ナトリウムの食品である、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523090(P2010−523090A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501349(P2010−501349)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000148
【国際公開番号】WO2008/122138
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】