説明

発電システム

【課題】作動媒体の大気中への漏洩を抑制しつつ発電機本体の温度上昇を抑制できる発電システムを提供する。
【解決手段】膨張機本体30と発電機本体40を連結した状態で筐体50内に収容し、この筐体50に、膨張機本体30が収容される第1空間51aと発電機本体40が収容される第2空間54aとを区画する隔壁部56を設け、隔壁部56に、第1空間51aと第2空間54aとを連通して第1空間51aで膨張した蒸気を第2空間54aに導くための蒸気導出部56bを設けるとともに、凝縮器から排出された液状の作動媒体をこの蒸気導出部56bの第2空間54a側の出口に向かって噴射する噴射装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を利用して発電を行う発電装置を備える発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低温の廃熱から動力を回収するための発電システムとして、沸点の低い作動媒体を廃熱により蒸発させてこの作動媒体の蒸気により膨張機本体を回転駆動させるとともに、この膨張機本体の回転に伴い発電機本体を回転させることで発電を行うバイナリー発電システムが知られている。
【0003】
また、このような発電システムにおいて、前記作動媒体の大気中への漏洩を抑制するべく、前記膨張機本体と発電機本体とが互いに連結された状態で共通の筐体に収容されたいわゆる密閉式(半密閉式ともいう)のシステムの開発が行われている。前記膨張機本体と前記発電機本体とが個別の筐体に収容されてこれらの連結部分が各筐体に形成された開口部を通って各筐体の内外に延びている場合では、前記膨張機本体側の筐体内から前記開口部と前記連結部分との間の隙間を通って前記作動媒体が筐体外の大気中等に漏洩するおそれがあるが、前記密閉式の発電システムでは、発電機本体と膨張機本体とが連結された状態で共通の筐体内に収容されているので、前記作動媒体が筐体外の大気中等へ漏洩するのが抑制される。しかしながら、この密閉式の発電システムでは、発電機本体単体を冷却するのが困難になり、発電効率が悪化するという問題がある。
【0004】
これに対して、特許文献1には、前記発電機本体が、前記膨張機本体と連結される回転子とこの回転子の周囲に配置される固定子とからなり、前記発電機本体のうち前記回転子のみが前記筐体内に収容されて、前記発電機本体の固定子が筐体の外側に配置された発電システムが開示されている。
【0005】
この発電システムでは、前記固定子が筐体の外側に配置されているため、この固定子を比較的容易に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−98902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に開示されている従来の発電システムでは、発電機本体のうち前記固定子のみが筐体内に収容されて、この筐体の外壁によって固定子と前記回転子とが隔離されている。そのため、前記回転子の回転に伴って前記固定子で電気エネルギが生成されるように、前記筐体の外壁うち前記固定子と回転子とを隔てる部分をアモルファス半磁性体等により構成せねばならず、構造が複雑になるとともに、コスト面で不利になる。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構造で、作動媒体の大気中等への漏洩を抑制しつつ発電機本体を冷却して発電効率を高く維持することのできる発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明による発電システムは、所定の熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行う発電装置と、前記発電装置で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、前記凝縮器から排出された液状の作動媒体を前記発電装置に供給する冷却用媒体供給装置とを備え、前記発電装置は、前記蒸気の膨張を伴いつつこの蒸気により回転駆動される膨張機本体と、当該膨張機本体に連結されて前記張機本体の回転に伴い回転する発電機本体と、これら膨張機本体と発電機本体とをこれらが互いに連結された状態で収容する筐体とを有し、前記筐体は、前記膨張機本体が収容される第1空間と前記発電機本体が収容される第2空間とを区画する隔壁部を有し、前記隔壁部は、前記第1空間と前記第2空間とを連通して前記第1空間で膨張した蒸気を前記第2空間に導くための蒸気導出部と、前記膨張機本体と前記発電機本体との連結部分が収容される連結部分収容部とを有し、前記筐体には、前記蒸発器から前記蒸気を吸込んで当該蒸気を前記膨張機本体に供給する吸込み部と、前記第2空間で前記発電機本体を冷却した蒸気を前記凝縮器側に流出させる流出部とが形成されており、前記冷却用媒体供給装置は、前記凝縮器の下流側と前記筐体とを接続して前記凝縮器から排出された液状の作動媒体を前記筐体側に導く冷却用ラインと、この冷却用ラインにより導かれた前記液状の作動媒体を前記第2空間に噴射可能な噴射装置とを備え、前記噴射装置は、前記冷却用ラインにより導かれた液状の作動媒体を前記蒸気導出部の第2空間側の出口付近に向かって噴射する。
【0010】
この発電システムでは、膨張機本体と発電機本体とが連結された状態で共通の筐体内に収容されている。そのため、膨張機本体に供給された作動媒体が膨張機本体と発電機本体との連結部分周りから筐体外に漏洩するのが抑えられる。
【0011】
しかも、前記膨張機本体が収容される前記第1空間と前記発電機本体が収容される前記第2空間とは前記蒸気導出部により連通されているので、この蒸気導出部により前記第1空間の膨張後の蒸気が前記第2空間に導かれる。そのため、発電機本体全体を前記筐体内に収容した状態で、この膨張後の低温化した蒸気により第2空間に収容された発電機本体を冷却することができ、発電機本体の温度上昇を抑制して発電機本体の発電効率の悪化を抑制することができる。
【0012】
さらに、この発電システムでは、凝縮器から排出された液状の作動媒体が前記冷却用ラインにより筐体側に導かれ、この導かれた液状の作動媒体が前記噴射装置により前記蒸気導出部の第2空間側の出口付近に向かって噴射されるので、前記膨張後の蒸気全体をこの液状の作動媒体の気化潜熱を利用してより一層低温化することができる。そのため、このより低温化した蒸気によって前記発電機本体を効率よく冷却することができる。
【0013】
本発明において、前記凝縮器と前記蒸発器との間に設けられて、前記凝縮器から排出された前記液状の作動媒体を前記蒸発器へ圧送するポンプを備え、前記冷却用ラインは、前記ポンプの下流側と前記筐体とを接続するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、前記凝縮器から排出された作動媒体を前記凝縮器へ圧送するためのポンプを利用して、前記液状の作動媒体を容易に前記第2空間に供給することができる。
【0015】
また、前記噴射装置は、前記液状の作動媒体を微粒化して前記蒸気導出部の第2空間側の出口付近に向かって噴射するのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、前記第2空間に供給される液状の作動媒体の表面積が大きくなり、この液状の作動媒体と前記蒸気導出部によって第2空間に導出された蒸気との接触面積が大きくなる。そのため、前記液状の作動媒体により前記蒸気をより一層低温化して、この低温化された作動媒体により前記発電機本体をより効率よく冷却することができる。
【0017】
また、前記発電機本体は、特定方向に延びる回転軸と、前記膨張機本体の回転に伴い当該回転軸を中心として回転する回転子と、当該回転子から前記特定方向と略直交する方向に離間した位置に配置される固定子とを有し、前記蒸気導出部は、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向一方側の部分と前記第1空間とを連通しており、前記流出部は、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向他方側の部分に開口しているのが好ましい。
【0018】
この構成では、前記蒸気導出部と前記流出部とが前記発電機本体を挟んで前記第2空間の特定方向両側部分にそれぞれ設けられているので、前記蒸気導出部により第2空間に導かれた前記蒸気は、この蒸気導出部側から前記回転子と前記固定子との隙間を通って前記流出部側に移動する。そのため、この蒸気を回転子と固定子の前記特定方向全体にわたって接触させることができ、この回転子および固定子を効率よく冷却することができる。
【0019】
この場合において、前記固定子は、前記回転子の回転径方向外側に設けられるとともに、前記特定方向に延びる外側面を有し、前記筐体は、前記固定子の外側面との間で前記特定方向に延びて、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向一方側の部分と他方側の部分とを連通する連通部を有するのが好ましい。
【0020】
この構成では、前記蒸気導出部により前記第2空間に導かれた前記蒸気が、前記回転子と固定子との間の隙間に加えて前記連通部を通って、前記流出部側に移動する。そのため、この蒸気と固定子および回転子との接触面積がより広くなり、より一層効率よく発電機本体を冷却することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、作動媒体の大気中等への漏洩を抑制しつつ、発電機本体を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態による発電システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す発電装置の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態による発電システム1の構成を示す図である。この発電システム1は、沸点の低い作動媒体を利用して、低温の廃熱から動力を回収するバイナリー発電方式の発電システムとして構成されている。前記作動媒体としては、例えば、R245faが挙げられる。
【0025】
前記発電システム1は、作動媒体が循環する循環ライン2上に、蒸発器10と、発電装置20と、凝縮器70と、ポンプ80とを備える。また、発電システム1は、冷却用ライン92と、液体を霧状に噴射可能な噴霧ノズル(噴射装置)94とからなる冷却用媒体供給装置90を備える。
【0026】
前記蒸発器10は、前記作動媒体の蒸気を生成するためのものである。この蒸発器10は、前記循環ライン2を通じて前記凝縮器30から送られた作動媒体を廃熱により蒸発させる。この蒸発器10は、外部から供給された温水や加熱空気といった前記作動媒体の沸点よりも高い温度を有する流体と前記作動媒体とを間接的に接触させることで、前記作動媒体を蒸発させる。この蒸発器10で生成された蒸気は、前記発電装置20に送られる。
【0027】
前記発電装置20は、前記蒸発器10から供給された蒸気を利用して発電を行うためのものである。この発電装置20の詳細は後述するが、この発電装置20は、スクリュ式膨張機(膨張機本体)30と、発電機(発電機本体)40とを有しており、前記スクリュ式膨張機30が前記作動媒体の蒸気により回転駆動されるのに伴い前記発電機40が回転して発電する。この発電装置20で発電に利用された蒸気は、前記凝縮器70に送られる。
【0028】
前記凝縮器70は、前記発電装置20から供給された前記作動媒体の蒸気を冷却して、この蒸気を液化させるためのものである。本実施形態では、この凝縮器70は、低温の冷却水と前記作動媒体とを間接的に接触させることで、前記作動媒体を冷却する。この凝縮器70から排出される液状の作動媒体は、この凝縮器70と前記蒸発器10との間に設けられたポンプ80により、この凝縮器70から前記蒸発器10へ圧送される。前記蒸発器10へ圧送された液状の作動媒体は、再び蒸発器10で蒸発される。
【0029】
このようにして、本発電システム1では、作動媒体が、循環ライン2を通じて、前記蒸発器10から前記発電装置20に供給され、発電装置20から前記凝縮器70に供給され、その後、凝縮器70からポンプ80を介して蒸発器10に戻るという循環回路が構成されている。そして、作動媒体がこの循環回路を循環することで廃熱から電気エネルギが生成される。
【0030】
前記冷却用ライン92は、前記循環ライン2のポンプ80の下流側、より詳細には、このポンプ80と前記蒸発器10との間の部分と、前記発電装置20の後述する発電機本体収容部54とを接続している。この冷却用ライン92には、前記凝縮器70で凝縮した液状の作動媒体の一部が前記ポンプ80により送り込まれる。この送り込まれた液状の作動媒体の一部は、前記冷却用ライン92を通って前記発電機本体収容部54側に導かれる。
【0031】
前記噴霧ノズル94は、前記発電機本体収容部54に取り付けられている。この噴霧ノズル94は、前記冷却用ライン92に接続された状態で、前記発電機本体収容部54内に臨んでいる。この噴霧ノズル94は、前記冷却用ライン92を通って前記発電機本体収容部54側に導かれた前記液状の作動媒体を微粒化して、この作動媒体を前記発電機本体収容部54内に霧状に噴射する。
【0032】
次に、前記発電装置20の詳細について説明する。図2は、この発電装置20の構成を示す概略断面図である。
【0033】
前記発電装置20は、前述のように、前記スクリュ式膨張機30と発電機40とに加えて、これらスクリュ式膨張機30と発電機40とを連結された状態で収容する筐体50と、油回収装置60とを有している。
【0034】
前記スクリュ式膨張機30は、互いに噛み合って回転する一対のスクリュロータ32と、これらスクリュロータ32を回転可能に支持するスクリュロータ支持部34とを有している。これらスクリュロータ32は、前記蒸発器10から前記発電装置20に供給された蒸気により、この蒸気を膨張させつつ所定の回転軸周りに回転する。
【0035】
前記発電機40は、所定の回転軸周りに回転する略円柱状のロータ(回転子)42と、このロータ42の回転径方向外側に配置されてこのロータ42を囲むステータ(固定子)44とを有している。前記ステータ44は、前記ロータ42の円柱面を構成する外側面から径方向外側すなわち回転軸方向と直交する方向に離間した位置に配置されており、ステータ44とロータ42との間にはロータ42の回転軸方向に延びる隙間46が形成されている。
【0036】
前記スクリュ式膨張機30と前記発電機40とは、前記スクリュロータ32の一方の回転中心線と前記ロータ42の回転中心線とが同一の直線となるように配置されている。前記一方のスクリュロータ32と前記ロータとは回転軸32aを共有している。前記スクリュ式膨張機30と前記発電機40とは、この回転軸32aの両端に配置されてこの回転軸32aにより連結されており、この回転軸32aがこれらスクリュ式膨張機30と発電機40とを連結する連結部分を構成している。前記発電機40は、前記スクリュ式膨張機30が蒸気の供給を受けて回転して前記回転軸32aが回転するに伴い前記ロータ42が回転することで、電気エネルギを生成する。
【0037】
前記筐体50は、前記スクリュ式膨張機30が収容される第1空間51aと前記発電機40が収容される第2空間54aとを区画する隔壁部56を有している。具体的には、前記筐体50は、前記隔壁部56を共有して内側に前記第1空間51aが形成される膨張機本体収容部51と前記第2空間54aが形成される発電機本体収容部54とを有している。前記膨張機本体収容部51は、前記回転軸32aと平行な方向に延びる中空の略円柱状を有している。前記発電機本体収容部54は、前記回転軸32aと平行な方向に延びる中空の略円柱状を有している。この膨張機本体収容部51と発電機本体収容部54とは、前記回転軸32aと平行な方向に並んでいる。以下、この回転軸32a方向を前後方向といい、前記膨張機本体収容部51側を前方、前記発電機本体収容部54側を後方という。前記隔壁部56は、前記膨張機本体収容部51の後端部と、前記発電機本体収容部54の前端部とにより構成されており、前後方向と略直交する方向に延びている。
【0038】
前記膨張機本体収容部51の内部空間である第1空間51aの前側部分には、前記スクリュロータ支持部34が収容されており、この膨張機本体収容部51の前側部分は、スクリュロータ支持部収容部52として機能している。前記第1空間51aの後側部分には、前記スクリュロータ32が収容されており、この膨張機本体収容部51の後側部分はスクリュロータ収容部53として機能している。前記スクリュロータ収容部53は前記スクリュロータ支持部収容部52よりも大径であって、前記スクリュロータ収容部53の前端面53bは、このスクリュロータ支持部収容部52の外周面よりも径方向外側に延びている。前記膨張機本体収容部51の外周端には、前方に突出して前記油回収装置60の後述する油回収部ケース62が連結されるケース連結部51bが設けられている。
【0039】
前記スクリュロータ収容部53は、前記蒸発器10から前記蒸気を吸い込んでこの蒸気を前記スクリュロータ32に供給する吸込み部53cを有している。この吸込み部53cは、前記蒸発器10から前記蒸気が流入する後述する第2蒸気案内管68の内部と前記第1空間51aより詳細には前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aとを連通している。この吸込み部53cは、前記スクリュロータ収容部53の前端面53bから前記スクリュロータ32の前端部分まで延びている。前記蒸発器10から排出された蒸気はこの吸込み部53cにより前記スクリュロータ32の前端部分に供給される。このスクリュロータ32の前端部分に供給された蒸気は、前記スクリュロータ32を回転させて膨張しつつ後方に移動する。
【0040】
前記隔壁部56は、この隔壁部56を前後方向に貫通して前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aと前記発電機本体収容部54の内部空間すなわち前記第2空間54aとをそれぞれ連通する回転軸連通部(連結部分収容部)56aと蒸気導出部56bとを有している。
【0041】
前記回転軸連通部56a内には、前記回転軸32aが挿通、収容されている。この回転軸32aは、この回転軸連通部56aを介して、前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aに収容された前記スクリュロータ32と前記第2空間54aに収容された前記発電機40とにわたって延びている。この回転軸32aは、この回転軸連通部56a内において軸受けにより回転可能に支持されている。
【0042】
前記蒸気導出部56bの前端部は、前記スクリュロータ32の後端部分と対向している。この蒸気導出部56bには、前記スクリュロータ32で膨張した前記蒸気が流入する。この蒸気は、前記蒸気導出部56bを通って前記第2空間54aに流入する。このように、この蒸気導出部56bは、前記第1空間51a、より詳細には、前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aの膨張後の蒸気を前記第2空間54aに導く。
【0043】
前記発電機本体収容部54は、複数の保持壁54dと、流出部54fと、噴霧ノズル取付部54hとを有している。
【0044】
前記発電機本体40は、前記発電機本体収容部54の内部空間すなわち前記第2空間54aのうち、前後方向の中央付近に配置されており、この第2空間54aには、前記発電機本体40よりも前方の発電機前方空間54bと前記発電機本体40よりも後方の発電機後方空間54cが形成されている。前述のように、前記蒸気導出部56bが設けられた前記隔壁部56は前記発電機本体収容部54の前端部で構成されており、この蒸気導出部56bは前記第2空間54aのうちの前記発電機前方空間54bと前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aとを連通している。そのため、前記スクリュロータ32で膨張した前記蒸気は、前記蒸気導出部56bにより、前記発電機前方空間54bに導出される。
【0045】
前記噴霧ノズル取付部54hは、発電機本体収容部54の内外を連通している。この噴霧ノズル取付部54hには、前記噴霧ノズル94が取り付けられている。この噴霧ノズル取付部54hは、前記発電機本体収容部54のうち前記発電機本体40よりも前方に設けられている。前記噴霧ノズル94は、この噴霧ノズル取付部54hに、前述のように、前記冷却用ライン92に接続された状態で発電機本体収容部54内、より詳細には、前記発電機前方空間54bに臨む姿勢で取り付けられている。この噴霧ノズル94から噴射された霧状の作動媒体は、前記蒸気導出部56bによりこの発電機前方空間54bに導出された膨張後の蒸気と接触する。この接触により、前記霧状の作動媒体は気化し、この気化熱により前記膨張後の蒸気は冷却される。
【0046】
さらに、前記噴霧ノズル取付部54hは、前記蒸気導出部56bの発電機本体収容部54側の出口、すなわち、発電機本体収容部54のうちこの蒸気導出部56bが開口する部分の近傍に設けられている。また、前記噴霧ノズル94は、その噴霧口が前記蒸気導出部56bの発電機本体収容部54側の出口を向きこの出口に向かって霧状の作動媒体を噴射する姿勢で、この噴霧ノズル取付部54hに取り付けられている。そのため、この噴霧ノズル94により噴射された霧状の作動媒体は、前記発電機前方空間54bに導出された膨張後の蒸気がこの発電機前方空間54bで拡散する前に、この蒸気と接触する。この接触により、前記膨張後の蒸気全体は均一に冷却される。
【0047】
前記保持壁54dは、前記発電機40を保持するためのものである。これら保持壁54dは、周方向に互いに離間する位置において、前記発電機本体収容部54の内周面から径方向内側に突出して前記ステータ44の外周面に沿って前後方向に延びる形状を有している。これら保持壁54dは、前記ステータ44の外周面と当接しており、この当接により、前記発電機40はこれら保持壁54dにより保持されている。一方、前記発電機本体収容部54の内周面のうちこれら保持壁54d間の部分は、前記ステータ44の外周面と径方向に離間しており、各保持壁54dとステータ44の外周面との間には、前記発電機前方空間54bと前記発電機後方空間54cとを連通する連通部54eが形成されている。
【0048】
前記連通部54eは、前記蒸気が通過可能な形状を有しており、前記蒸気導出部56bにより前記発電機前方空間54bに導出されて前記霧状の作動媒体により冷却された前記蒸気の一部は、この連通部54eを通って、ステータ44の外周面と接触しつつ、前記発電機後方空間54cに流入する。ここで、前述のように、前記発電機40のロータ42とステータ44との間には前後方向に延びる隙間46が形成されており、前記蒸気導出部56bにより前記発電機前方空間54bに導出された前記蒸気の残りは、この隙間46を通ってこれらロータ42とステータ44と接触しつつ前記発電機後方空間54cに流入する。
【0049】
前記流出部54fは、前記発電機本体収容部54の内部空間すなわち前記第2空間54aの蒸気を前記凝縮器70に排出させるためのものである。この流出部54fは、前記発電機本体収容部54の後端部に設けられており、前記発電機後方空間54cに開口している。前記蒸気導出部56bにより前記発電機前方空間54bに導出されて前記霧状の作動媒体により冷却された蒸気は、前記連通部54e等を通って前記発電機後方空間54bに流入した後、この流出部54fにより前記凝縮器70側に排出される。
【0050】
なお、本実施形態では、前記流出部54fには、オイルフィルタ54gが取付けられており、前記発電機後方空間の蒸気は、このオイルフィルタ54gを通過して、含有しているオイルが除去された後、前記凝縮器70側に排出される。
【0051】
前記油回収装置60は、前記蒸発器10から排出された蒸気に含有している油を除去して、この油が除去された蒸気を前記スクリュロータ32に供給するためのものである。この油回収装置60は、油回収部ケース62と、フィルタ64と、第1蒸気案内管66と、第2蒸気案内管68とを有している。
【0052】
前記油回収部ケース62は、前後方向に延びる有底の略円筒状を有している。この油回収部ケース62の開口側の外周端は前記膨張機本体収容部51のケース連結部51bに連結されており、この油回収部ケース62はこのケース連結部51bから前方に延びている。この油回収部ケース62の内側には、前記膨張機本体収容部51の一部が収容されている。前記発電装置20のケーシング22は、この油回収部ケース62と前記筐体50とによって構成されている。
【0053】
前記フィルタ64は前記蒸気から油を除去するためのものである。このフィルタ64は、前記油回収部ケース62内において前記膨張機本体収容部51よりも前側部分に設けられており、この油回収部ケース62の前後方向と直交する面のほぼ全体にわたって設けられている。
【0054】
前記第1蒸気案内管66は、前記蒸発器10から排出された蒸気を前記フィルタ64に案内するためのものである。この第1蒸気案内管66は、前記油回収部ケース62の前端に設けられた底部62aの略中央に形成された貫通孔62b内に固定されており、この底部62aから前記フィルタ64の後端まで前後方向に延びている。この第1蒸気案内管66は、前記蒸発器10に連通しており、前記蒸発器10から排出された前記蒸気は、この第1蒸気案内管66を通って前記フィルタ64の後方に流入する。
【0055】
前記第2蒸気案内管68は、前記フィルタ64を通過して油が除去された後の前記蒸気を前記吸込み部53cに案内するためのものである。この第2蒸気案内管68は、前記フィルタ64の後端から前記吸込み部53cまで前後方向に延びている。前記第1蒸気案内管66を通って前記フィルタ64の後方に流入した蒸気は、このフィルタ64を通って前方に移動した後、再び、このフィルタ64を通って後方に移動して、この第2蒸気案内管68に流入する。この第2蒸気案内管68に流入した蒸気は、この第2蒸気案内管68を通って前記吸込み部53cに流入する。なお、前記フィルタ64において分離された油は前記油回収部ケース62の下部に溜まる。この油回収部ケース62の下部に貯留している油は図示しない油供給装置により前記スクリュロータ収容部53内に供給される。また、この油は前記回転軸連通部56aに供給されて前記回転軸32aの周囲をオイルシールする。
【0056】
以上のように構成された本発電装置20では、前記蒸発器10から供給された蒸気は、前記油分離装置60において油分離された後、前記吸込み部53cにより前記第1空間51aより詳細にはスクリュロータ収容部53の内部空間53aに収容されている前記スクリュロータ32に供給される。このスクリュロータ32に供給された蒸気は、前記スクリュロータ収容部53内において、スクリュロータ32を回転させつつ膨張する。この膨張後の蒸気は、前記蒸気導出部56bにより前記発電機本体収容部54の内部空間すなわち前記第2空間54aに導出される。なお、この膨張後の蒸気の一部は、前記隔壁部56に形成された前記回転軸連通部56aを通ってスクリュロータ収容部53からこのスクリュロータ収容部53外に流出しようとするが、この回転軸連通部56aは前記スクリュロータ収容部53の内部空間53aと前記第2空間54aとを連通しており、この蒸気は筐体50外へ漏洩することなくこの第2空間54aに流入する。
【0057】
前記蒸気導出部56bによりこの第2空間54aに導出された蒸気は、前記噴霧ノズル94から噴射された霧状の作動媒体と接触して冷却された後、前記ロータ42とステータ44との間の隙間46と前記連通部54eを通過した後、前記流出部54fから前記凝縮器70に排出される。ここで、この第2空間54aに導出された蒸気は、前記スクリュロータ32で膨張されることで低温化した上に、前記霧状の作動媒体と接触することで冷却されており、十分に低温化している。そのため、この十分に低温化した蒸気が前記ロータ42とステータ44との間の隙間46および前記連通部54eすなわち発電機40の外周部分を通過することで、このロータ42とステータ44とを含む発電機40は確実に冷却される。
【0058】
なお、この凝縮器70に排出された蒸気は、凝縮器70において液状の作動媒体となった後、前記ポンプ80により、再び、前記循環ライン2側すなわち前記蒸発器10内に圧送されるとともに、前記冷却用ライン92側すなわち発電装置20側に圧送される。
【0059】
このように、本発電システム1では、前記スクリュロータ32に供給された作動媒体がスクリュロータ32と発電機40との連結部分である回転軸32aの周囲から大気中といった筐体50外に漏洩するのが抑えられつつ、スクリュロータ32で膨張、低温化した蒸気を利用して発電機40の温度上昇を抑制することができる。特に、前記蒸気導部56bの発電機本体収容部54側の出口に向かって凝縮器70から排出された液状の作動媒体が霧状で噴射されて、前記スクリュロータ32で膨張、低温化した蒸気が、この作動媒体の気化により均一に冷却されてさらに低温化されているので、前記発電機40の温度上昇をより確実に抑制することができる。
【0060】
ここで、前記連通部54eは省略可能である。ただし、前記ステータ44の外周面と発電機本体収容部54の内周面との間で、前後方向に延びて前記発電機前方空間54bと発電機後方空間54cとを連通する連通部54eを設ければ、前記発電機前方空間54bに導出された膨張後の蒸気をステータ44の外周面に沿って通過させてステータ44と蒸気との接触面積を増加させることができるため、発電機40を効率よく冷却することができる。
【0061】
また、前記噴霧ノズル94に代えて、前記液状の作動媒体を霧状にすることなく前記第2空間54bに噴射する噴射装置を用いてもよい。ただし、噴霧ノズル94を設けて、液状の作動媒体を霧状にして噴射すれば、液状の作動媒体の表面積が大きくなり、この液状の作動媒体と前記蒸気導出部56bから供給された膨張後の蒸気との接触面積が増加して、この膨張後の蒸気を効率よく冷却することができる。
【0062】
また、本発明において、前記膨張機本体はスクリュ式膨張機に限らない。
【符号の説明】
【0063】
1、101 発電システム
10 蒸発器
20 発電装置
30 スクリュ式膨張機(圧縮機本体)
40 発電機(発電機本体)
42 ステータ(固定子)
44 ロータ(回転子)
50 筐体
51 膨張機本体収容部
51a 第1空間
54 発電機本体収容部
54a 第2空間
54e 連通部
56 隔壁部
56a 回転軸連通部(連結部分収容部)
56b 蒸気導出部
53c 吸込み部
54f 流出部
70 凝縮器
80 ポンプ
92 冷却用ライン
94 噴霧ノズル(噴射装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の熱源により液状の作動媒体を蒸発させて蒸気を生成する蒸発器と、
前記蒸発器で生成された蒸気を利用して発電を行う発電装置と、
前記発電装置で発電に利用された蒸気を凝縮させて、前記蒸発器に供給される液状の作動媒体を生成する凝縮器と、
前記凝縮器から排出された液状の作動媒体を前記発電装置に供給する冷却用媒体供給装置とを備え、
前記発電装置は、前記蒸気の膨張を伴いつつこの蒸気により回転駆動される膨張機本体と、当該膨張機本体に連結されて前記張機本体の回転に伴い回転する発電機本体と、これら膨張機本体と発電機本体とをこれらが互いに連結された状態で収容する筐体とを有し、
前記筐体は、前記膨張機本体が収容される第1空間と前記発電機本体が収容される第2空間とを区画する隔壁部を有し、
前記隔壁部は、前記第1空間と前記第2空間とを連通して前記第1空間で膨張した蒸気を前記第2空間に導くための蒸気導出部と、前記膨張機本体と前記発電機本体との連結部分が収容される連結部分収容部とを有し、
前記筐体には、前記蒸発器から前記蒸気を吸込んで当該蒸気を前記膨張機本体に供給する吸込み部と、前記第2空間で前記発電機本体を冷却した蒸気を前記凝縮器側に流出させる流出部とが形成されており、
前記冷却用媒体供給装置は、前記凝縮器の下流側と前記筐体とを接続して前記凝縮器から排出された液状の作動媒体を前記筐体側に導く冷却用ラインと、この冷却用ラインにより導かれた前記液状の作動媒体を前記第2空間に噴射可能な噴射装置とを備え、
前記噴射装置は、前記冷却用ラインにより導かれた液状の作動媒体を前記蒸気導出部の第2空間側の出口付近に向かって噴射することを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記凝縮器と前記蒸発器との間に設けられて、前記凝縮器から排出された前記液状の作動媒体を前記蒸発器へ圧送するポンプを備え、
前記冷却用ラインは、前記ポンプの下流側と前記筐体とを接続することを特徴とする発電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発電システムにおいて、
前記噴射装置は、前記液状の作動媒体を微粒化して前記蒸気導出部の第2空間側の出口付近に向かって噴射することを特徴とする発電システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発電システムにおいて、
前記発電機本体は、特定方向に延びる回転軸と、前記膨張機本体の回転に伴い当該回転軸を中心として回転する回転子と、当該回転子から前記特定方向と略直交する方向に離間した位置に配置される固定子とを有し、
前記蒸気導出部は、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向一方側の部分と前記第1空間とを連通しており、
前記流出部は、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向他方側の部分に開口していることを特徴とする発電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の発電システムにおいて、
前記固定子は、前記回転子の回転径方向外側に設けられるとともに、前記特定方向に延びる外側面を有し、
前記筐体は、前記固定子の外側面との間で前記特定方向に延びて、前記第2空間のうち前記発電機本体よりも前記特定方向一方側の部分と他方側の部分とを連通する連通部を有することを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−147567(P2012−147567A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3927(P2011−3927)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】