説明

発電機及び吐水制御装置

【課題】 設置条件や機器などに対応して幅広い範囲で使用が可能な発電機及びこの発電機を備えた吐水制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 流入口と、流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通させる流路と、前記流路を流れる水の水流の作用を受けて運動する受力体と、前記受力体の前記運動を電力に変換する発電部と、を備え、
前記流入口から前記受力体に至る前記流路の少なくとも一部が、着脱可能な流路規制部材により構成されてなることを特徴とする発電機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機及び吐水制御装置に関し、特に、水力を利用した発電機であって、水洗便器や手洗い器などに流す水の水流により電力を発生する発電機、及びこの発電機により生成された電力により吐水の供給を自動制御する吐水制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗便器や手洗い器などに洗浄水を流す場合、電磁開閉弁とセンサとを組合せることにより、いわゆる「自動洗浄システム」が可能となる。つまり、使用者を検知して自動的に電磁開閉弁を開け、洗浄水を流すことができる。またさらに、このような吐水制御装置において、電解槽を設け、各種のイオンや分解性物質を洗浄水に付加すると、殺菌作用などの有用な効果が得られる。しかし、これら電磁開閉弁、センサ、電解槽などを動作させるためには、電力が必要とされる。電力源として、いわゆる商用の交流100ボルト電源を用いるためには、外部からの電力線の配線が必要とされる。一方、1次電池や2次電池などの電源を用いる場合には、電力の消耗に応じて交換や充電の手間が必要とされる。
【0003】
これに対して、洗浄水の水力を利用した発電機を設ければ、外部からの電力線の配線や電池の交換・充電の手間が不要となり、幅広い設置環境に対応できる吐水制御装置を実現できる(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
これらの発明によれば、自動洗浄動作や殺菌成分の添加などに際して家庭用100ボルト電源などの商用電源や電池の交換などの手間が不要となり、停電や感電などの問題を解消し、低ランニングコストでメンテナンスフリーの吐水制御装置を提供できる。
【特許文献1】特開2000−27262号公報
【特許文献2】特開2001−232369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吐水制御装置を設置する衛生設備、例えば、水洗便器や手洗い器などにおいては、機器によって最適な流量が異なる。また、これら衛生設備が設置される環境によって、給水圧力や最大流量が異なる。従って、吐水制御装置を設置する機器やその設置条件などに応じて、発電機をそれぞれ用意する必要がある。
【0006】
例えば、吐水制御装置の設置条件によっては、給水圧力が高く、予定通水量よりも過大な流量が流される場合がある。このような場合に、発電機の水車やプロペラなどが最適範囲よりも高速回転すると、回転機構や発電機構に過度の負荷がかかり、また、過充電により蓄電手段に過度の負担を与えることもありうる。
【0007】
また、水洗便器の場合にも、機種毎に最適な流量が異なる。例えば、いわゆる「スプレッダー式」の小便器と、「淀掛け式」の小便器とでは最適な流量が異なるため、発電機の共通化は困難であり、それぞれに適した発電機を用意する必要がある。
【0008】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、設置条件や機器などに対応して幅広い範囲で使用が可能な発電機及びこの発電機を備えた吐水制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、流入口と、流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通させる流路と、前記流路を流れる水の水流の作用を受けて運動する受力体と、前記受力体の前記運動を電力に変換する発電部と、を備え、
前記流入口から前記受力体に至る前記流路の少なくとも一部が、着脱可能な流路規制部材により構成されてなることを特徴とする発電機が提供される。
【0010】
上記構成によれば、最適な流路規制部材を適宜選択して装着する、若しくは、流路規制部材の装着状態と非装着状態とを適宜選択することにより、最適流量が変わっても発電量が変化することがなく、安定して電力を生成できる。また、可変弁のような機械的に動作する機構を設ける必要がないので、故障や漏水の心配がない。またさらに、流路変更を外部からの操作で行わないので誤動作がなく、機器の小型化も容易となる。
【0011】
ここで、前記流路規制部材は、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く流路のみを形成するものとすることができ、この流路の断面積あるいはオフセット量を適宜選択することにより、最適な発電量を確実且つ容易に得ることができる。例えば、オフセット量を大きくすると、その部分が「バイパス」として作用し、発電機などに負担をかけることなく、圧力損失を生ずることもなく、大流量を確実且つ容易に流すことができる。また、流路がひとつであれば、機器の小型化も容易である。
【0012】
または、前記流路規制部材は、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く第1の流路と、前記流入口から流入した水を前記受力体を介さずに前記流出口に導く第2の流路と、を形成するものとすることができる。この場合には、第1の流路と第2の流路の断面積比を変更するだけで受力体に流入する流量を制御できるので、最適な発電量を確実且つ容易に得ることができる。また、第2の流路が「バイパス」として作用し、発電機などに負担をかけることなく、圧力損失を生ずることもなく、大流量を確実且つ容易に流すことができる。
【0013】
また、本発明の他の態様によれば、流入口と、流出口と、前記流入口と前記流出口とを連通させる流路と、前記流路を流れる水の水流の作用を受けて運動する受力体と、前記受力体の前記運動を電力に変換する発電部と、を備え、
前記流入口から前記受力体に至る前記流路の少なくとも一部が、着脱可能な流路規制部材により構成され、
前記流路規制部材として、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く流路のみを形成する第1の流路規制部材と、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く第1の流路と、前記流入口から流入した水を前記受力体を介さずに前記流出口に導く第2の流路と、を形成する第2の流路規制部材と、のいずれかを選択可能としたことを特徴とする発電機が提供される。
【0014】
第1の流路規制部材と第2の流路規制部材とを適宜選択して装着することより、小流量から大流量まで幅広い範囲で発電機に負担をかけず無用な圧力損失も生ずることなく、確実且つ容易に水を流すことができる。
【0015】
また、前記流路規制部材の種別を判別する判別手段をさらに備えたものとすれば、流量により異なる各種の衛生洗浄装置などの各種の設定を自動的に変更することが可能となる。また、手動変更に伴う誤操作などの心配もない。また、変更スイッチなどを設ける必要もなくなる。さらに、自動で変更を実施するようにすれば、流量検知手段などを別途設ける必要もなくなる。
【0016】
また、前記受力体は、水車であるものすれば、簡単な構造で水流エネルギを機械的なエネルギに確実且つ容易に変換できる。
【0017】
一方、本発明のさらに他の態様によれば、開閉弁と、センサと、前記センサからの検出信号に応じて前記開閉弁の動作を制御する制御部と、前記開閉弁、前記センサ及び前記制御部が消費する電力の少なくとも一部を生成する、上記のいずれかの発電機と、を備えたことを特徴とする吐水制御装置が提供される。
【0018】
上記構成によれば、最適な流路規制部材を適宜選択して装着することにより、最適流量が変わっても発電量が変化することがなく、安定して電力を生成して安定動作可能な吐水制御装置を提供できる。また、可変弁のような機械的に動作する機構を設ける必要がないので、故障や漏水の心配がない。またさらに、流路変更を外部からの操作で行わないので誤動作がなく、機器の小型化も容易となる。
【0019】
また、本発明のさらに他の態様によれば、開閉弁と、殺菌成分を生成する電解槽と、前記開閉弁及び前記電解槽の動作を制御する制御部と、前記開閉弁、前記電解槽及び前記制御部が消費する電力の少なくとも一部を生成する、上記第5の発電機と、を備え、
前記判別手段が判別した前記流路規制部材の種別に応じて、前記電解槽に与える電力を変更することを特徴とする吐水制御装置が提供される。
【0020】
上記構成によれば、流量により異なる各種の衛生洗浄装置などの各種の設定を自動的に変更することが可能となる。また、手動変更に伴う誤操作などの心配もない。また、変更スイッチなどを設ける必要もなくなる。さらに、自動で変更を実施するようにすれば、流量検知手段などを別途設ける必要もなくなる。
【0021】
なお、本願明細書において、銀イオンの「放出」とは、銀電極の表面から銀イオンが遊離することを意味し、銀イオンの「溶出」とは、放出された銀イオンが洗浄水中にイオンしてとどまることをいうものとする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設置条件や機器などに対応して幅広い範囲で使用が可能な発電機を備えた吐水制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる吐水制御装置の要部構成を例示する模式図である。すなわち同図は、本実施形態の吐水制御装置10を小用水洗便器600に設置した具体例を表す。
【0024】
本実施形態の吐水制御装置10は、制御部100と、センサ160と、開閉弁200と、発電機500と、を有する。上水や中水などの水道水Wは、例えば、プランジャ式ラッチング・ソレノイド・バルブからなる開閉弁200によりその流路が開閉される。開閉弁200は、制御部100により自動開閉される。開閉弁200の開動作により流路を開いて、水道水Wを下流側に流すことができる。開閉弁200の下流には、発電機500が設けられている。発電機500は、水道水Wの水流エネルギーの一部を電気エネルギーに変換し、制御部100や、センサ160、開閉弁200の動作のための電力として供給する。制御部100に図示しない蓄電手段を設け、発電機500により生成された電力の一部あるいは全てを蓄電可能としてもよい。
【0025】
本実施形態の吐水制御装置10は、センサ160が人体を感知すると、制御部100が所定のタイミングで所定の時間だけ、開閉弁200を開くことにより水道水Wを流す。この時に、発電機500により電力が生成され吐水制御装置の電力源として利用される。
【0026】
さて、このような小用水洗便器の場合、便器の構造に応じて最適な流量が異なる。例えば、「スプレッダー式」などと呼ばれる便器の場合、ボウル面上部に設けられたスプレッダー(散水弁)から洗浄水が流され、最適な流量は、例えば、毎分14プラスマイナス3リッター程度である。これに対して、「淀かけ式」などと呼ばれる便器の場合、ボウル面の周囲に設けられたリム(縁)を介してボウル面に洗浄水が供給され、その最適な流量は、例えば、毎分21プラスマイナス4リッター程度である。
【0027】
このように、便器の構造に応じて流量を変える必要がある。しかし、発電機500を流れる流量が所定範囲よりも小さいと十分な電力が得られず、一方、流量が大きすぎると余剰な電力による発熱や軸受けなどの機械要素の摩耗や損傷が加速されるという問題がある。
【0028】
これに対して、本実施形態においては、発電機500の中に交換可能なアタッチメントを設けることにより、適合できる流量範囲を大幅に拡大できる。
【0029】
図2は、本実施形態の発電機500の内部構造を例示する斜視図である。
すなわち、発電機500は、ハウジング510と、その中に内蔵された水車520と、を有する。ハウジング510には、水道水Wが流入する流入口512と、水道水Wが流出する流出口516と、これら流入口512、流出口516を連通する流路514が形成され、この流路上に水車520が設けられている。ハウジング510の側面は、液密に封止されている。水車520は、流路514を流れる水道水Wの水流エネルギーを受けて回転し、その回転による運動エネルギーがモータと類似した構造の発電部に伝えられ電気エネルギーに変換される。
【0030】
そして、水車520に至る流路の途中に、流路を規制するアタッチメント(流路規制部材)550が設けられている。
図3乃至図5は、アタッチメント550の組み立てを表す斜視図である。なお、図4においては、アタッチメント550の一部を切断してその流路が表されている。
【0031】
これら図面に表したように、アタッチメント550は、ハウジング510に着脱可能とされ、ハウジング510に形成された流路514の一部として、水車520に至る流路552を形成する。アタッチメント550は、ハウジング510内に設けられた凹部の中に単に挿入することにより固定してもよく、また、図示しない嵌合機構や接着剤、ねじなどを用いてハウジング510に固定してもよい。
【0032】
本具体例の場合、アタッチメント550に形成された流路552は、水車520に供給される流路のみを形成する。そして、アタッチメント550を取り替えることによって、水車520における流路の断面積を適宜調節することができる。
【0033】
図6は、流路のオフセット量が異なる2種類のアタッチメントを表す一部拡大図である。
【0034】
すなわち、同図(a)に表したアタッチメント550の場合、水車520に最も接近した流路554において、水車520の先端から対向する流路壁までの距離(オフセット量)はほぼゼロである。つまり、流路554を流れる水流のほぼ全てが水車520に作用する。
【0035】
これに対して、図6(b)に表したアタッチメント550の場合、水車520に最も近接した流路554のオフセット量が、例えば、1ミリメータ程度とされている。つまり、水車520の先端から対向する流路壁までの距離が1ミリメータ程度とされている。このようにオフセットを設けることにより、水車520に対する水流の作用を低下できる。
なお、アタッチメント550を非装着(すなわち装着しない)とすれば、オフセット量は最も大きくなり、水車520に対する水流の作用をさらに低下できる。
【0036】
図7は、オフセット量に対する発電量Wと2次圧Pの関係を例示するグラフ図である。ここで、2次圧Pは、洗浄水が発電機を通過した後に大気圧に対して有するゲージ圧として表した。
【0037】
すなわち、オフセット量を大きくすると、水流が水車520に与える作用が低下するため、同図(a)に表したように、発電量Wが低下する。一方、2次圧についてみると、オフセット量を大きくすると流路554における圧力損失が減るので、2次圧Pが上昇する。
【0038】
つまり、発電部の最適水量と比較して大きな流量を流す場合には、オフセット量を大きくし、発電部の最適水量に近い流量を流す場合にはオフセット量を小さくすればよい。こうすることで、発電機に最適な流量を流すことができるばかりでなく、発電部において無用な圧力損失が生じないので2次圧Pが上昇し、2次側に装着できる吐水機器の選択肢も広がる。
【0039】
本実施形態によれば、このようにアタッチメント550を適宜交換することにより、要求される吐水水量に合わせることができる。つまり、発電機500の全体を交換する必要がなく、また、流量に応じて多品種の発電機500を製造する必要もなくなる。
なお、本発明においては、アタッチメント550により形成される流路をフィンなどにより分割して整流効果を得ることもできる。
図8及び図9は、フィン553によって水流を2つの流路552に分割して流すようにしたアタッチメントを例示する模式図である。このように、フィン553などにより流路を適宜分割すると、整流効果が得られ、発電機の水車520や後に詳述する電解槽に対して好適な水流を形成することができる。
例えば、発電機の上流側で生じた偏流を整流することにより、より均一な流れを水車に導くことができ、羽根車への流れの「片当たり」による効率の低下や軸の偏摩耗による耐久性の低下などの問題を抑制できる。従って、例えば配管曲がりの直後や、定流量弁やバルブなどの機能部材の直後など、流れに偏りが生ずる上流部位との接続の際にも性能の低下を招くことがなく配管接続性に優れる発電機を実現できる。
【0040】
次に、分流路を形成するアタッチメントについて説明する。
図10は、分流路を形成するアタッチメントが装着された発電機を表す斜視断面図である。 また、図11乃至図13は、本具体例の斜視組立図である。なお、図12においては、アタッチメント550の一部を切断してその流路が表されている。
【0041】
本具体例においても、アタッチメント550は、ハウジング510内に設けられた凹部の中に単に挿入することにより固定してもよく、また、図示しない嵌合機構や接着剤、ねじなどを用いてハウジング510に固定してもよい。
【0042】
そして、本具体例においては、アタッチメント550が分流路を形成している。すなわち、ハウジング510にアタッチメント550を装着した状態を見ると、ハウジング510に形成された流路514は、アタッチメント550において、第1の流路552と、第2の流路556の2つの流路に分岐されている。
【0043】
第1の流路552は、水車520に水流を与える流路であり、第2の流路556は、いわゆる「バイパス流路」を構成している。つまり、本具体例においては、発電機500に供給される水道水Wの水流を分流し、その一部のみを水車520に作用させる。このようにすれば、発電部に過度の電気的あるいは機械的な負荷を与えることなく、また、圧力の損失も抑制しつつ、大流量の洗浄水を流すことが可能となる。つまり、発電部の最適流量を大きく超える量の洗浄水を便器や洗面台などに流すことができる。
例えば、図2乃至図5、図8、図9などに例示したように水車に導く流路のみを有するアタッチメント550を装着した場合、いわゆる「スプレッダー式」の小用水洗便器に必要とされる毎分14リッタープラスマイナス3リッターの流量を流すことができる。この時、水車520に最適な水流を作用させ、適度な発電量を得ることができる。
【0044】
一方、これと同一の構造を有する発電機500において、図10乃至図13に例示したように分流路を形成するアタッチメント550を装着すると、いわゆる「淀かけ式」の小用水洗便器に必要とされる毎分21リッタープラスマイナス4リッターの洗浄水を流すこどかできる。この時にも、水車520に最適な水流を作用させ、残余の水流はバイパスとなる流路556を介して下流に流すことにより、圧力損失も抑制できる。
【0045】
図14は、本発明者が試作検討した結果の一例を表すグラフ図である。
すなわち、同図(a)は、流量と発電量の関係を表し、同図(b)は流量と発電部の回転数との関係を表す。
【0046】
ここで、曲線Aは、図2乃至図5、図8、図9などに例示したように水車に導く流路のみを有するアタッチメント550を装着した場合を表し、曲線Bは、図10乃至図13に例示したように分流路を有するアタッチメント550を装着した場合を表す。
【0047】
ここで、要求される発電量は、直線C1で表したように、200ミリワットであるとする。また、発電部の回転数の上限は、直線C2で表したように、毎分2000回転であるものとする。回転数が上限を超えると、軸受けの摩耗や振動、騒音などの発生がありうる。
【0048】
例えば、水車に導く流路のみを形成するアタッチメントを装着した場合(曲線A)、毎分11リッターで必要な発電量が得られており、毎分17リッターに増加すると発電量は1200ミリワット以上となる(R1)。発電量が多すぎると、余剰な電力を捨てることにより発熱などの問題が生ずる場合がある。また、この時、回転数も上限を超えて約2800回転まで上昇してしまう。つまり、機械的にも負荷が大きくなるおそれがある(R3)。
【0049】
一方、分流路を有するアタッチメントを装着した場合(曲線B)、毎分11リッターでは発電量が不十分である(R2)が、毎分17リッターにおいては要求される発電量が得られている。また、回転数についてみると、毎分11リッターでも毎分17リッターでも上限値を超えることはない。
【0050】
つまり、毎分11リッターの水量が必要とされる場合には、水車に導く流路のみを形成するアタッチメント(曲線A)を装着すればよく、毎分17リッターの水量が必要とされる場合には、分流路を有するアタッチメント(曲線B)を装着すればよい。
【0051】
このように、本発明によれば、要求される水量に応じてアタッチメントを適宜選択して装着することにより、最適な発電量を確保しつつ、機械的な負荷も抑制し、さらに水流の圧力損失も低減しながら、要求される流量の水を流すことができる。
【0052】
次に、本発明においてアタッチメントの種類を自動的に判別する実施例について説明する。
図15は、装着されたアタッチメントを自動的に判別可能な発電機を例示する斜視組立図である。
すなわち、本具体例においては、図2乃至図5、図8、図9に例示したように水車に導く流路552を有するアタッチメント550に磁石580が埋め込まれている。一方、ハウジング510には磁力に感応するスイッチ582が埋め込まれている。このようなスイッチとしては、例えば、磁力に応じて可動する切替部を有するスイッチや、ホールセンサなどを挙げることができる。
【0053】
図15(a)に表したように、磁石580が埋め込まれたアタッチメント550がハウジング510に装着されると、スイッチ582が磁力によって作動する。
一方、図15(b)に表したように、分流路556を有するアタッチメントには磁石は埋め込まれていない。
このように、アタッチメントに磁石を埋め込むか否かによって、スイッチ582の切替を制御できる。スイッチ582からの切替信号を用いることより、吐水制御装置の動作モードや回路定数の設定値などを適宜変更できる。
【0054】
図16は、自動判別のもうひとつの具体例を表す斜視組立図である。
本具体例の場合、アタッチメント550に導電部590が設けられている。導電部590は、例えば、金属などにより形成できる。また、この導電部590に対応して、ハウジング510の対応する箇所に複数の電気接点(図示せず)が設けられている。つまり、導電部590が設けられたアタッチメント550がハウジング510内に装着されると、その導電部590がハウジング510に設けられた複数の電気接点を適宜接続する。従って、導電部590を設けたアタッチメントと、設けないアタッチメントと、を判別できる。
【0055】
また、ハウジング510に3以上の電気接点を設け、アタッチメント550に設ける導電部590のパターンを適宜設定すれば、電気接点間の接続状態を調べることにより3種類以上のアタッチメントを自動的に判別できる。
【0056】
アタッチメント550を判別する方法としては、上記具体例の他にも、例えば、ハウジング510に設けたスイッチをアタッチメントの装着により機械的に切り替える方法や、光学センサにより判別する方法などの各種の方法を用いることが可能である。
【0057】
次に、本発明の吐水制御装置の具体例として、次亜塩素酸や銀イオンなどを添加する電解槽を設けた吐水制御装置について説明する。
図17は、電解槽を設けた吐水制御装置を表す概念図である。
すなわち、本具体例においては、開閉弁200と発電機500との間に、電解槽300が設けられている。
図18は、電解槽300の内部構造を例示する斜視図である。
すなわち、電解槽300は、洗浄水に浸された一対の電極320a、320bを有し、これら電極間に電圧を印加することにより、次亜塩素酸や銀イオンなどの殺菌成分を含有した洗浄水を生成することができる。電解槽300において生成される殺菌成分としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などの抗菌性金属のイオン、遊離塩素、オゾン、結合塩素などを挙げることができる。
【0058】
図19は、電解槽300において次亜塩素酸を生成する場合のメカニズムを表す概念図である。すなわち、一対の電極320a、320bに電圧を印加すると、負(マイナス)極420bにおいては、水の電気分解により、水素(H)とOHイオンとが生成される。一方、正(プラス)極420aにおいては、水道水に含有される塩素イオン(Cl)から電荷が放出され、塩素ガス(Cl)が生成される。この塩素ガス(Cl)は活性であり、水中で水(HO)と結合して次亜塩素酸(HClO)が生成される。この次亜塩素酸が殺菌作用を奏する。なお、一対の電極320a、320bの材料としては、白金とイリジウムとの合金などを用いることが望ましい。
【0059】
次に、第2の具体例として、電解槽300において銀イオンを生成する場合について説明する。
図20は、電解槽300において銀イオンを生成する場合のメカニズムを表す概念図である。
すなわち、銀イオンを生成する場合には、電解槽300に、一対の銀電極320a及び320bを設ける。厳密には正(プラス)極側の電極が銀を含めばよいが、極性反転させて使用する場合には、両側ともに銀電極とすることが望ましい。これら銀電極の間で電流を流すと、電気分解反応により、銀イオンが陽極(アノード)側の電極から放出される。なお、これら銀イオンの一部は、マイナスの電荷をもつ塩素イオンと結合して塩化銀(AgCl)を生成し消費されるが、未反応の銀イオンが殺菌効果を奏する。
【0060】
以上、図19及び図20を参照しつつ説明した次亜塩素酸や銀イオンなどの殺菌成分が添加された洗浄水を小用便器に流すと、小用便器及びその排水管の防汚性という点で秀逸な効果を発揮する。小用便器への尿石の付着のメカニズムは、次のようなものと考えられる。
【0061】
すなわち、小用便器に排尿をすると、小用便器の表面に尿が付着するとともに、小用便器内のトラップ部に尿が滞留する。一般に、小用便器には、多数の細菌が存在する。尿には、多量の尿素が含有されているが、小用便器の表面やトラップ部の滞留水に細菌が存在すると、尿素は細菌の有する酵素ウレアーゼの作用によりアンモニアと二酸化炭素に分解される。この時生成するアンモニア量が多いと、臭気の一因となる。また、アンモニアが生成すると、小用便器の表面に付着した液体やトラップ部の滞留水に溶解し、その液体のpHが上昇する。pHが上昇すると、小用便器の表面に付着した液体やトラップ部の滞留水に含まれるカルシウムイオンが炭酸塩やリン酸塩へと変化して析出し、「尿石」として便器や排水管に付着し、着色汚れや詰まりの原因となる。
【0062】
これに対して、本具体例の吐水制御装置を小用水洗便器に適応した態様では、次亜塩素酸や銀イオンなどの殺菌効果の高い成分を含有した洗浄水を便器に流すことにより、便器内に存在する細菌を効果的に殺菌することができる。その結果として、尿石付着の原因が排除され、便器は常に清浄な状態に保たれて美観を損ねることもなく、尿石の配管内への付着による汚水通過路の狭小化が防止され、また、アンモニア等による臭気の発生も防止される。
【0063】
本発明者は、一例として、水洗便器に流す洗浄水に含まれる銀イオンの濃度と殺菌効果について調査検討を行った。その結果、銀イオンの添加量が少ないと殺菌効果が十分に得られず、一方、銀イオンの添加量が多すぎると、銀電極の消耗が激しく、また、銀イオンと同時に発生する塩化銀が便器の陶器面に付着することにより「黒ずみ」などの変色が生ずる場合があることを知得した。そして、これらの観点から、洗浄水に対する銀イオンの添加量は、1〜50ppbの範囲内とすることが望ましいことが分かった。
【0064】
一方、所定の濃度の銀イオン水を生成するために電解槽300に供給すべき電流、電圧、あるいは電力の値は、供給される水道水の電気伝導度によって変化する。
【0065】
図21は、銀イオンの添加量を5ppbとするための特性線を例示するグラフ図である。すなわち、同図において「制御電流値」と表したものは、銀イオンの添加量を5ppbとするために必要な電流値を表す。また、同図には、この制御電流値に対応する電圧及び電力の特性線も表した。水道水の電気伝導度が高いほど、含有される塩素イオン量が大きくなり銀イオンの溶出を阻害するため、必要とされる電流値が増大する傾向が見られる。
【0066】
なおここで、電極間の電気伝導度と電流値との関係は、流量や印加電圧や電解槽300の構造に応じて変化する。図21に表した具体例の場合、洗浄流量は毎分14リッターであり、銀電極320a、320bの対向部を10mm×10mmの略正方形とし、電極間の間隔を3mmとした。また、最高印加電圧を30ボルトとし(低伝導度水の場合)、電流の最大値は30ミリアンペアとした(最も清浄度が低い中水の場合)。
【0067】
銀イオンなどの殺菌成分の濃度を最適な範囲とするためには、洗浄水の流量に応じて電解槽300に印加する電圧あるいは電力を制御する必要がある。例えば、「スプレッダー式」の便器と、「淀かけ式」の便器と、では洗浄水の流量が異なる。これに対して、本発明によれば、図15及び図16に関して前述したように、発電機500に装着するアタッチメント550の種類を自動判別することにより、これに対応する洗浄水の流量も判別できる。その結果として、洗浄水の流量に応じて、電解槽300に印加する電力(電圧)を自動的に変更することができる。
【0068】
図22は、電解槽300を組み込んだ吐水制御装置の具体例を表す断面図である。
すなわち、一次側給水配管に接続される止水弁50の2次側に、開閉弁200、発電機500、電解槽300がこの順に接続されている。なお、発電機500と電解槽300の配置関係が図17に表したものとは逆であるが、これはいずれでもよい。
【0069】
本発明によれば、発電機500のアタッチメント550を適宜選択して装着することにより、要求される水量を流しつつ、発電電力の過不足や、圧力損失の増加や、発電機の機械的な負荷の増大を防ぐことができる。
【0070】
以上、本発明を水洗便器について用いた具体例について説明したが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
例えば、本発明は、大便器に対する洗浄水の吐水制御装置に適用しても同様の作用効果が得られる。
また、本発明の吐水制御装置は、便器以外にも、例えば、手洗器や台所用水洗、浴室水洗などに用いることもできる。
図23は、自動水栓の手洗器に本発明の吐水制御装置を適用した具体例を表す模式図である。すなわち、手洗器800は、赤外線などのセンサ160を内蔵し、使用者が手を近づけると、開閉弁200を開いて自動的に水を吐出させる。センサ160や開閉弁200に対する電力の供給は、発電機500から直接行うことができる。
【0071】
このような手洗器の場合にも、通常の吐水では毎分4リッター程度の瞬間流量が必要とされ、また一方で、節水型の泡沫吐水式の吐水装置などと組み合わせる時には毎分2リッター程度の瞬間流量に設定される。従って、本具体例においても、図1乃至図22に関して前述したように、発電機500のアタッチメント550を適宜選択して装着することにより、手洗器に要求される水量を満足しつつ、安定的な発電が可能となり、電気的あるいは機械的な負荷や、圧力損失の増大を抑制できる。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【0073】
例えば、発電機の代わりに、水流で回転する脱臭ファンなどを設けた吐水制御装置の場合、要求される水量に対して、アタッチメントを適宜選択して装着することにより、脱臭性能の不足や、過剰にファンが回転することによる騒音や供給水の圧力損失などの問題を抑制できる。
【0074】
また、吐水制御装置を構成する開閉弁、電解槽、発電機、アタッチメント、制御部、センサをはじめとする各要素について当業者が適宜設計変更して採用したものも、本発明の要旨を有する限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態にかかる吐水制御装置の要部構成を例示する模式図である。
【図2】本発明の実施形態の吐水制御装置に設けられた発電機500の内部構造を例示する斜視図である。
【図3】アタッチメント550の組み立てを表す斜視図である。
【図4】アタッチメント550の組み立てを表す斜視図である。
【図5】アタッチメント550の組み立てを表す斜視図である。
【図6】流路のオフセット量が異なる2種類のアタッチメントを表す一部拡大図である。
【図7】オフセット量に対する発電量Wと2次圧Pの関係を例示するグラフ図である。
【図8】フィン553によって水流を2つの流路552に分割して流すようにしたアタッチメントを例示する模式図である。
【図9】フィン553によって水流を2つの流路552に分割して流すようにしたアタッチメントを例示する模式図である。
【図10】分流路を形成するアタッチメントが装着された発電機を表す斜視断面図である。
【図11】分流路を有するアタッチメントの斜視組立図である。
【図12】分流路を有するアタッチメントの斜視組立図である。
【図13】分流路を有するアタッチメントの斜視組立図である。
【図14】本発明者が試作検討した結果の一例を表すグラフ図である。
【図15】装着されたアタッチメントを自動的に判別可能な発電機を例示する斜視組立図である。
【図16】自動判別のもうひとつの具体例を表す斜視組立図である。
【図17】電解槽を設けた吐水制御装置を表す概念図である。
【図18】電解槽300の内部構造を例示する斜視図である。
【図19】電解槽300において次亜塩素酸を生成する場合のメカニズムを表す概念図である。
【図20】電解槽300において銀イオンを生成する場合のメカニズムを表す概念図である。
【図21】銀イオンの添加量を5ppbとするための特性線を例示するグラフ図である。
【図22】電解槽300を組み込んだ吐水制御装置の具体例を表す断面図である。
【図23】自動水栓の手洗器に本発明の吐水制御装置を適用した具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
10 吐水制御装置
50 止水弁
100 制御部
160 センサ
200 開閉弁
300 電解槽
320a、320b 電極
500 発電機
510 ハウジング
514 流路
520 水車
550 アタッチメント
552 流路
554 流路
556 分流路
580 磁石
582 スイッチ
590 導電部
600 小用水洗便器
800 手洗器
W 水道水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と、
流出口と、
前記流入口と前記流出口とを連通させる流路と、
前記流路を流れる水の水流の作用を受けて運動する受力体と、
前記受力体の前記運動を電力に変換する発電部と、
を備え、
前記流入口から前記受力体に至る前記流路の少なくとも一部が、着脱可能な流路規制部材により構成されてなることを特徴とする発電機。
【請求項2】
前記流路規制部材は、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く流路のみを形成することを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項3】
前記流路規制部材は、前記流入口から流入した水を前記受力体に導く第1の流路と、前記流入口から流入した水を前記受力体を介さずに前記流出口に導く第2の流路と、を形成することを特徴とする請求項1記載の発電機。
【請求項4】
流入口と、
流出口と、
前記流入口と前記流出口とを連通させる流路と、
前記流路を流れる水の水流の作用を受けて運動する受力体と、
前記受力体の前記運動を電力に変換する発電部と、
を備え、
前記流入口から前記受力体に至る前記流路の少なくとも一部が、着脱可能な流路規制部材により構成され、
前記流路規制部材として、
前記流入口から流入した水を前記受力体に導く流路のみを形成する第1の流路規制部材と、
前記流入口から流入した水を前記受力体に導く第1の流路と、前記流入口から流入した水を前記受力体を介さずに前記流出口に導く第2の流路と、を形成する第2の流路規制部材と、
のいずれかを選択可能としたことを特徴とする発電機。
【請求項5】
前記流路規制部材の種別を判別する判別手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の発電機。
【請求項6】
前記受力体は、水車であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の発電機。
【請求項7】
開閉弁と、
センサと、
前記センサからの検出信号に応じて前記開閉弁の動作を制御する制御部と、
前記開閉弁、前記センサ及び前記制御部が消費する電力の少なくとも一部を生成する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の発電機と、
を備えたことを特徴とする吐水制御装置。
【請求項8】
開閉弁と、
殺菌成分を生成する電解槽と、
前記開閉弁及び前記電解槽の動作を制御する制御部と、
前記開閉弁、前記電解槽及び前記制御部が消費する電力の少なくとも一部を生成する、請求項5記載の発電機と、
を備え、
前記判別手段が判別した前記流路規制部材の種別に応じて、前記電解槽に与える電力を変更することを特徴とする吐水制御装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−70865(P2006−70865A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258102(P2004−258102)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】