説明

発電装置の地下埋設構造

【課題】
ハンドホールを用いて発電装置を地中埋設する構造において、ハンドホール内の発電装置が浸水されるのを効果的に防止することである。
【解決手段】
ハンドホールB1 内に設置される架台4と、当該架台4上に設置される発電装置Aと、前記ハンドホールB1 内の浸水Wの水位Hが発電装置Aを浸水させる直前の限界水位に達したことを検出するための水位計L1 と、前記ハンドホールB1 内に浸入する水Wを排水するためのポンプPと、ハンドホールB1 内に外気を取り込むための吸気管9と、前記発電装置A及びポンプPの作動により温度が高くなった内部空気を排出するための排気管11とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、風水害等の非常事態発生による停電時に道路表示機や監視カメラといった道路施設に給電するための発電装置を、地中埋設されるハンドホール内に収納する形式の発電装置の地中埋設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震、風水害等の非常事態発生の停電時に道路表示機等に給電する従来の発電装置は、道路際(路肩)の地上に設置されていたので、その存在が景観を害すると共に、通行人にとっては障害物となって、危険でもあり、露出しているエンジンの排気管が高温となり、通行人の接触による火傷を回避するために、防温対策が必要であった。また、発電装置の設置場所の確保も大変であった。そこで、ハンドホールを用いて道路際の地中に発電装置を埋設すると、雨水がハンドホール内に浸入して、発電装置を浸水させて作動不能にさせてしまう問題がある。即ち、多量の水を検出する手段を持たず、浸水に対処可能な構造になっていない。一般的に、屋外で使用されるハンドホールは、通常時においても排水がうまく行われず浸水することが多く、地下の水位レベルが上がることにより徐々に浸水することが多い。
【0003】
一方、特許文献1には、非常電源用の発電設備を建物の地下の電源室に設置する構造が開示されている。この構造は、構造物として設計された建物の地下に発電設備が埋設されているため、浸水の恐れは殆どないが、設置スペースを要し、コストもかかるため、当該道路表示機等には適切でない。また、特許文献2には、ハンドホール内に電気設備を収容する構造が提案されているが、発電装置は燃焼空気の給排気が必要なため、当該発電装置を収容する構造としては、そのまま適用できない。
【特許文献1】実開昭63−26763号公報
【特許文献2】特開2000−27283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハンドホールを用いて発電装置を地中埋設する構造において、ハンドホール内の発電装置が浸水されるのを効果的に防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、停電時に道路施設に給電するための発電装置を、地中埋設されるハンドホール内に収納する形式の発電装置の地中埋設構造であって、前記ハンドホール内に設置される架台と、当該架台上に設置される発電装置と、前記ハンドホール内の浸水の水位が発電装置を浸水させる直前の限界水位に達したことを検出するための水位計と、前記ハンドホール内に浸入する水を排水するためのポンプと、ハンドホール内に外気を取り込むための吸気管と、内部空気を排出するための排気管とを備え、前記ハンドホール内の浸水の水位が限界水位に達することにより前記水位計から発せられる限界水位信号により前記発電装置の発電機が作動し、当該発電機からの給電により前記ポンプが作動してハンドホール内に浸入した水を排水すると共に、前記吸気管から外気が取り込まれて、内部空気は排気管から外部に排出される構成であることを特徴としている。
【0006】
請求項1の発明によれば、地震・風水害等の非常事態発生の停電時には、停電により発生する信号により発電機が作動し、商用電源に替えて当該発電機から道路表示機灯等に給電されて、道路表示機等の道路施設が支障なく作動される。発電機の作動中には、密閉されたハンドホール内の空気の温度が高まるので、吸気管を通して外部の空気がハンドホール内に取り込まれると共に、ハンドホール内の温度が高くなった空気は排気管を通して外部に排気される。このように、密閉空間であるハンドホール内で発電機を作動させても、ハンドホール内の空気の温度が高まり続けることはなくて、一定温度以下に抑えられるため、発電機を運転させられる。
【0007】
一方、ハンドホール内には、蓋体部分の隙間を通して地上の水が内部に浸入すると共に、側壁部に形成された貫通孔との隙間を通して地中の水が内部に浸入するが、少量ずつ浸入する水は、ハンドホールの底壁部に形成された排水孔から自然排水される。しかし、排水孔の目詰まりや、ハンドホールの周囲が湿潤状態では排水されずに、ハンドホール内の浸水が増える。また、集中豪雨時等のように、単位時間当たりの降水量が多くなると、前記自然排水では対応できなくなって、ハンドホール内の浸水の水位が高くなるが、発電装置は架台上に設置してあるので、架台板の部分に水が達するまでは、発電装置が浸水されることはない。また、ハンドホール内には、架台板の近くまで浸水の水位が達したことを検出するための水位計が設置されているので、ハンドホール内の浸水の水位が高まって、架台上の発電装置が浸水される直前の限界水位に達すると、当該限界水位が前記水位計により検出されて、この限界水位信号により発電機が作動され、当該発電機から給電されて作動するポンプによりハンドホール内に浸入した水は外部に排水される。排水が完了するレベルの水位に達すると、ポンプは停止して空運転を防止する。この結果、地中埋設されるハンドホール内に発電装置が設置されていて、地上に露出していないので、道路際の景観を保持できると共に、通行人等に対する障害物ともならない。
【0008】
更に、発電装置の保守・点検時には、ハンドホールの蓋体を取り外して、作業者がハンドホール外部から、又はハンドホール内に入り込むことにより、地中に埋設されている発電装置の保守・点検を簡単に行える。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記吸気管及び排気管の下端部は、ハンドホールの側壁部に形成された貫通孔に接続されて、前記吸気管及び排気管の大部分は地中埋設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明によれば、発電装置のみならず、ハンドホール内の空気温度が高まるのを防止するために換気を行う吸気管及び排気管の双方までもが地中埋設されていて、地上露出部が少なくなって、高温になる排気管の防温構造が簡単になり、通行人が排気管の高温部に触れる危険がなくなると共に、道路際の景観保持を一層確実に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、地中埋設されるハンドホール内に架台を設置して、当該架台上に発電装置が設置されていて、ハンドホール内への浸水により浸水量が増して、前記浸水量が発電装置を浸水させる限界水量に達すると、ハンドホール内に設けた水位計が前記限界水量を検出し、この検出信号により発電機が作動し、当該発電機からの給電によりポンプが作動して、ハンドホール内に浸入した水を外部に排水させる。一方、停電時には、発電機のみが作動して、道路施設に給電され、発電機の作動により温度が高められたハンドホール内の空気は、吸気管により外部空気が取り込まれることにより、排気管を通して外部に排出されるため、ハンドホール内は常に所定温度以下に保持されて、発電装置の連続運転が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、複数の実施形態を挙げて本発明について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の発電装置Aの埋設構造の断面図であり、図2は、図1のX−X線断面図である。図1及び図2において、本発明においては、発電装置Aは、道路表示機が設置されている部分の道路際(路肩)の地中に埋設されるハンドホール内に収納される。発電装置Aは、発電機G、当該発電機Gを制御するコントローラ(図示せず)、前記発電機Gを駆動させるエンジンE、当該エンジンEに給油するための燃料タンク5等から成る。本実施例では、発電機GとエンジンEとコントローラとは一体化されて発電機ユニットUとなっている。実施例のハンドホールB1 は、コンクリートで製造されて、ハンドホール本体1の上面開口2が蓋体3で閉塞された構造である。ハンドホール本体1内には架台4が設置されて、当該架台4の架台板4aに前記発電機ユニットUと燃料タンク5とが設置されている。
【0014】
また、ハンドホールB1 内には、ハンドホール本体1と蓋体3との隙間、吸排気管の隙間、電線管の隙間等から地上の水が浸入すると共に、ハンドホール本体1の側壁部6a,6bに形成した各貫通孔7a,7b,8と、当該各貫通孔7a,7b,8に差し込まれた配管(吸気管9、排気管11、排水管12)との隙間から地中の水が浸入する。このため、架台板4aには、ハンドホール本体1内に浸入した水Wを排水するためのポンプPが設置されている。ポンプPの給水管13は、ハンドホール本体1の底壁部14の近くまで達した状態で垂れ下がっていると共に、ポンプPの強制排水管15は、ハンドホール本体1の側壁部6aの貫通孔8に差し込まれてハンドホール本体1内に達した別の排水管12と連結具16を介して連結されている。また、架台板4aには、ハンドホールB1 内に浸入した水Wの量が前記発電機ユニットU及びポンプPに浸水される直前の水量である浸水Wの限界深さを検出するための第1水位計L1 と、ポンプPによる排水完了の信号を出力する台2水位計L2 とが吊り下げられている。
【0015】
また、ハンドホール本体1の底壁部14の中央の凹部14aに形成された貫通孔17には、ハンドホール本体1内に浸入した水Wを自然排水するための自然排水管18の端部が差し込まれている。このため、ハンドホール本体1内に少量ずつ自然に浸入する水Wは、前記自然排水管18から自然に排水されて、発電装置Aが浸水されるまでハンドホール本体1内で浸水Wが貯水されることは少ない。前記強制排水管15は暗渠(図示せず)に接続される。なお、貫通孔17には、逆止弁19が設けられて、ポンプ運転時の排水が逆流するのを防止している。
【0016】
また、ハンドホール本体1の一方の側壁部6aに開けられた貫通孔7aには、外部空気をハンドホールB1 内に取り込むための吸気管9の屈曲された端部が差し込まれていると共に、他方の対向する側壁部6bに開けられた貫通孔7bには、ハンドホールB1 内の空気を外部に排出するための排気管11の屈曲された端部が差し込まれている。また、ハンドホールB1 内において、吸気管9のハンドホールB1 側の端部には、吸引ファン21aが取付けられて、当該吸引ファン21aの吸引力により外部の空気が吸気管9を通してハンドホールB1 内に取り込まれると共に、排気管11のハンドホールB1 側の端部には、吸引ファン21bが取付けられていて、外部空気がハンドホールB1 内に取り込まれることによりハンドホールB1 内の圧力が高まると、前記吸引ファン21bの送風力により、ハンドホールB1 内の空気は排気管11を通って外部に排出される。この外部空気の取込み作用と内部空気の排気作用とによって、密閉したハンドホールB1 内において発電機Gを作動させることにより内部空気の温度が高められても、当該内部空気の温度は一定温度以下に抑えられるため、発電機Gの連続運転が可能となる。なお、図1及び図2において、Sは、地表面を示し、22は、エンジンEと燃料タンク5とを連結する燃料パイプを示し、23は、吸気管9及び排気管11の上端の地表面よりも僅かに上方に位置する開口を覆うカバーを示す。
【0017】
このため、地震、風水害等の非常事態発生の停電時には、この停電信号により発電機ユニットUが作動し、発電機Gから道路表示機等に給電されて、停電時であっても、道路表示機等は正常に作動する。発電機Gからの給電により前記各吸引ファン21a,21bが作動して、吸気管9から外部空気がハンドホールB1 内に取り込まれると共に、ハンドホールB1 内の温度が高められた空気は排気管11を通って外部に排気される。よって、ハンドホールB1 内の空気温度が一定温度以下に抑えられて、外部と遮断された密閉空間であるハンドホールB1 内に設置された発電機Gを連続運転させられる。
【0018】
特に、水害に関連する非常事態発生により停電した場合において、ハンドホールB1 内に多量の水が短時間のうちに浸入した場合には、自然排水管18によるハンドホール本体1の底壁部14からの排水量を超える浸水量があるために、ハンドホール本体1内における浸水Wの水位Hは上昇して発電機G及びポンプPが浸水されるに至ることがある。しかし、本発明では、架台板4aに垂れ下げられた第1及び第2の各水位計L1 ,L2 により浸水Wの水位Hが検出され、浸水Wが発電機G及びポンプPを浸水させる直前の限界水位に達すると、第1水位計L1 から限界水位信号(排水開始信号)が発せられて、作動中の発電機Gからの給電によりポンプPが作動する。ポンプPの作動により、ハンドホールB1 内の浸水Wは、強制排水管15を通って外部に排出されて浸水Wの水位Hが低下して、発電機G及びポンプPが浸水されるのを確実に防止できる。また、ポンプPの作動によりハンドホールB1 内の水位が安全水位まで下がった場合には、第2水位計L2 から排水完了信号が発せられて、ポンプPの作動が停止し、第1水位計L1 により次の限界水位信号が発せられると、ポンプPは再度作動され、この状態が繰り返される。従って、停電により発電機ユニットUの作動中にハンドホールB1 内に多量の水が短時間のうちに浸入した場合でも、発電機Gは、浸水されることなく連続運転させられる。なお、水位計の例としては、電極又は裸導体を利用したものや、フリクトスイッチ等が挙げられる。また、上記実施例は、2種類の水位計によりハンドホール内に浸入した水の水位を検出してポンプの作動開始、及び停止を行う例であるが、ハンドホールの容積とポンプの容量は、いずれも既知であるので、ポンプの作動開始のみ水位計から取り出して、ポンプの停止は、タイマーで行うことも可能である。
【0019】
このように、非常の停電時に道路表示機等に給電するための発電装置Aを、道路際の地中に埋設されるハンドホールB1 内に設置してあり、しかもハンドホールB1 の内部に対する吸気と排気を行う吸気管9及び排気管11の双方が地中に埋設されていて、地表面から突出している部分がないので、道路際の景観を保持できると共に、道路通行人に対し衝突及び火傷の障害ともならない。
【0020】
また、上記実施例は、ハンドホール内に設置した架台にポンプを載せた例であるが、ハンドホールの底部に設置した水中ポンプを用いることも可能である。
【実施例2】
【0021】
次に、図3及び図4を参照して本発明の実施例2について説明する。図3は、一部に地上露出部を有する既設のハンドホールB2 の内部に発電装置Aを設置した状態の斜視図であり、図4は、同じく縦断面図である。ハンドホールB2 は、ハンドホール本体31の一辺の端部に他の片の全長(全幅)に亘る露出筒部30が一体に形成されたものであって、前記露出筒部30に吸気管32及び排気管33を垂直に配置して、各管32,33の下端部がハンドホール本体31の上壁部34に差し込まれて、起立姿勢を維持している。露出筒部30の上端には、吸気管32及び排気管33の各開口を覆うカバー35が水平に取付けられている。ハンドホール本体31の内部に発電装置Aが設置される構成は、実施例1と同様である。なお、図3及び図4において、36は、ハンドホール本体31の内部において吸気管32の下端開口に接続して取付けられた吸気ファンを示し、37は、ハンドホール本体31の開口38を閉塞する蓋体を示す。
【0022】
実施例2においては、一部に地上に露出する露出筒部30を有する既設のハンドホールB2 を使用していて、前記露出筒部30内に吸気管32及び排気管33を設置できるため、吸気管32及び排気管33を地中埋設する作業が不要となって、施工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1の発電装置Aの埋設構造の断面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】一部に地上露出部を有する既設のハンドホールB2 の内部に発電装置Aを設置した状態の斜視図である。
【図4】同じく縦断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A:発電装置
1,B2 :ハンドホール
E:エンジン
G:発電機
H:浸水の水位
1,L2 :水位計
P:ポンプ
U:発電機ユニット
W:浸水
1,31:ハンドホール本体
4:架台
9,32:吸気管
11,33:排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電時に道路施設に給電するための発電装置を、地中埋設されるハンドホール内に収納する形式の発電装置の地中埋設構造であって、
前記ハンドホール内に設置される架台と、当該架台上に設置される発電装置と、前記ハンドホール内の浸水の水位が発電装置を浸水させる直前の限界水位に達したことを検出するための水位計と、前記ハンドホール内に浸入する水を排水するためのポンプと、ハンドホール内に外気を取り込むための吸気管と、内部空気を排出するための排気管とを備え、
前記ハンドホール内の浸水の水位が限界水位に達することにより前記水位計から発せられる限界水位信号により前記発電装置の発電機が作動し、当該発電機からの給電により前記ポンプが作動してハンドホール内に浸入した水を排水すると共に、前記吸気管から外気が取り込まれて、内部空気は排気管から外部に排出される構成であることを特徴とする発電装置の地中埋設構造。
【請求項2】
前記吸気管及び排気管の下端部は、ハンドホールの側壁部に形成された貫通孔に接続されて、前記吸気管及び排気管の大部分は地中埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置の地中埋設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−102926(P2009−102926A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277134(P2007−277134)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】