説明

発電装置及び一方向クラッチ

【課題】増速機の出力軸を支持するころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制し、発電機に焼き付きが生じた場合等に増速機にかかる負担を軽減することができる発電装置を提供する。
【解決手段】風力発電装置1は、増速機3の出力軸35に一体回転可能に設けられた入力回転体5と、発電機4の駆動軸41に一体回転可能に設けられた出力回転体6と、入力回転体5と出力回転体6との間に配置された一方向クラッチ7とを備える。一方向クラッチ7は、入力回転体5の回転速度が出力回転体6の回転速度を上回る状態で、入力回転体5と出力回転体6とを一体回転可能に接続し、入力回転体5の回転速度が出力回転体6の回転速度を下回る状態で、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断する。一方向クラッチ7は、入力回転体5から出力回転体6への伝達トルクが上限を超えたときに入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断するトルクリミッタ9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力による主軸の回転を増速機により増速させて発電機を駆動する発電装置、及びこの発電装置に好適に利用することができる一方向クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレードにより風力を受けて当該ブレードに接続された主軸を回転させ、その主軸の回転を増速させて発電機を駆動する風力発電装置が知られている。主軸の回転を増速させるための増速機は、例えば図7に示されるように、主軸200から入力された回転を増速する遊星歯車機構203と、この遊星歯車機構203から入力された回転をさらに増速する高速段歯車機構204と、この高速段歯車機構204の回転トルクを出力する出力軸205とを備えている。この出力軸205が、図示しない発電機の駆動軸に動力伝達可能に連結される。
【0003】
遊星歯車機構203は、主軸200の回転が入力軸203aに伝達されると、遊星キャリア203bが回転することによって、遊星歯車203cを介して太陽歯車203dを増速回転させ、その回転を高速段歯車機構204の低速軸204aに伝達する。
また、高速段歯車機構204は、遊星歯車機構203から低速軸204aに回転が伝達されると、低速ギヤ204b及び第1中間ギヤ204cを介して中間軸204dを増速回転させ、さらに第2中間ギヤ204e及び高速ギヤ204fを介して出力軸205を増速回転させる。
【0004】
増速機202の低速軸204a、中間軸204d及び出力軸205をそれぞれ回転自在に支持する軸受として、ころ軸受206〜211が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−232186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の風力発電装置では、高速回転する出力軸を支持するころ軸受において、ころの転動面や回転輪の軌道面にスメアリング(表層焼付きが起こる現象)が発生し、ころ軸受の寿命が低下するという問題があった。
また、発電機に焼き付き等が生じるとその駆動軸が回転し難くなり、出力軸から駆動軸への伝達トルクが過大になるとともに、増速機にも大きな負担がかかり、増速機が損傷してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、増速機の出力軸を支持するころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制し、しかも出力軸から発電機の駆動軸への伝達トルクが過大になった場合には増速機の負担を軽減することができる発電装置と、この発電装置等に好適に利用することができる一方向クラッチとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本願発明者は、スメアリングの発生メカニズムについて鋭意研究を重ねた。その結果、風力の低下により主軸の回転速度が急激に低下すると、重量の重い発電機のロータの慣性により、出力軸の回転速度よりも発電機の駆動軸の回転速度が上回ることによっていわゆるトルク抜け(荷重抜け)が発生し、このトルク抜けによって出力軸を支持するころ軸受に作用するラジアル荷重が減少し、ころ軸受のころと回転輪との転がり摩擦抵抗よりも、ころとそれを保持する保持器との摺動摩擦抵抗等が上回ることにより、ころの自転が遅れることを見出した。そして、この状態から風力の増加により主軸の回転速度が急激に増加したときに、増速の慣性トルクが加わり出力軸を支持するころ軸受に作用するラジアル荷重が増加するため、その瞬間にころに高荷重がかかった状態でころが回転輪との接触面で滑り、その接触面が昇温することにより、スメアリングが発生するという知見を得、かかる知見に基づいて本願発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、外力により回転する主軸と、前記主軸の回転を入力して増速する回転伝達機構、及びこの回転伝達機構の回転トルクを出力する出力軸を回転自在に支持するころ軸受を有する増速機と、前記出力軸の回転を入力として回転する駆動軸を有するとともに、当該駆動軸と一体回転するロータの回転に伴って発電する発電機と、を備えた発電装置であって、前記出力軸に一体回転可能に設けられた入力回転体と、前記駆動軸に一体回転可能に設けられ、前記入力回転体の径方向内側又は径方向外側に同心上に配置された出力回転体と、前記入力回転体と前記出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と前記出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチとを備え、前記一方向クラッチには、前記入力回転体から前記出力回転体への伝達トルクが上限を超えたときに前記入力回転体と前記出力回転体との接続を遮断するトルクリミッタが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記のように構成された発電装置によれば、一方向クラッチにより、入力回転体の回転速度が出力回転体の回転速度を上回るときは、入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、入力回転体の回転速度が出力回転体の回転速度を下回ると、入力回転体と出力回転体との接続を遮断することができる。つまり、外力の低下により主軸を介して出力軸の回転速度が急激に低下しても、発電機のロータの慣性による回転が駆動軸を介して出力軸に伝達されるのを防止することができる。これにより、出力軸を支持しているころ軸受に作用するラジアル荷重の減少及びこれに伴うころの自転遅れを抑制することができる。したがって、この状態から外力変化により主軸の回転速度が急激に増加してころに高荷重がかかったときに、ころが回転輪との接触面で滑りにくくなるため、ころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0011】
また、一方向クラッチにはトルクリミッタが設けられているので、例えば発電機の焼き付きによって駆動軸が回転し難くなり、出力軸側の入力回転体から駆動軸側の出力回転体への伝達トルクが上限を超える(入力回転体が出力回転体に接続されてロック状態になる)と、トルクリミッタによって入力回転体と出力回転体との接続を遮断させることができる。これによって、増速機にかかる負担を軽減し、増速機の損傷を防止することができる。また、一方向クラッチにトルクリミッタを設けることにより、これらを別々に設ける場合に比べて構造の簡素化及びコンパクト化を図ることができる。
【0012】
(2)前記一方向クラッチは、前記入力回転体及び前記出力回転体の一方側に設けられた外輪内周面と、同他方側に設けられるとともに、前記外輪内周面との間に周方向に複数のくさび状空間を形成する内輪外周面と、前記複数のくさび状空間のそれぞれに配置されたころと、を有し、前記ころが前記内輪外周面及び前記外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いが解除されることにより前記接続を遮断するものであり、前記トルクリミッタは、前記内輪外周面に形成されると共に、前記伝達トルクが上限を超えたときに前記くさび状空間から離脱した前記ころを収容し、当該ころと前記内輪外周面及び前記外輪内周面との噛み合いを解除させる収容凹部を備えていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、入力回転体から出力回転体への伝達トルクが上限を超えると、くさび状空間から離脱したころが収容凹部に収容され、ころと内輪外周面及び外輪内周面との噛み合いが解除される。したがって、入力回転体から出力回転体への接続を適切に遮断することができる。
【0014】
(3) 前記内輪外周面が前記入力回転体側に設けられており、前記トルクリミッタは、前記入力回転体の回転に伴う遠心力で前記収容凹部内のころが当該収容凹部から離脱するのを防止する離脱防止手段をさらに備えていることが好ましい。
収容凹部内にころが収容された状態で入力回転体が回転し、その遠心力によって収容凹部からころが飛び出すと、再度、ころが内輪外周面及び外輪内周面に噛み合ってしまうおそれがあるが、本発明のトルクリミッタは、収容凹部からころが離脱するのを防止する離脱防止手段を備えているので、このような問題を解消することができる。
【0015】
(4) 前記離脱防止手段は、前記収容凹部の周方向の端縁に、当該収容凹部内に収容された前記ころの径方向外方への移動を規制する規制部を突設することによって構成されていてもよい。
このような構成によって、入力回転体の回転による遠心力でころが収容凹部から径方向外方へ向けて離脱しようとしても、規制部が障害となって当該離脱が防止される。したがって、ころが内輪外周面及び外輪内周面に再び噛み合ってしまうのを好適に防止することができる。
【0016】
(5) 前記内輪外周面と前記外輪内周面との間には、前記ころを収容可能なポケットを有すると共に複数の前記ころの周方向間隔を保持する保持器と、前記ポケット内の前記ころを前記くさび状空間の狭小方向へ付勢する圧縮バネからなる弾性部材とを備えており、前記離脱防止手段は、前記弾性部材よりも径方向内側に前記ころを位置づけることができる深さに前記収容凹部を形成することによって構成されていてもよい。
この構成によれば、保持器のポケットからころが離脱して収容凹部内に入り込むと、弾性部材が伸張することによってころの径方向外側に配置される。したがって、入力回転体の回転に伴う遠心力で収容凹部からころが径方向外方へ離脱しようとしても、弾性部材が障害となって当該離脱が防止される。
【0017】
(6) 前記弾性部材には、前記ころが収容された前記収容凹部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、上記のように収容凹部に入り込んだころの径方向外側に弾性部材が配置されたときに、この閉塞部材が収容凹部の少なくとも一部を塞ぎ、ころの離脱を確実に防止することができる。
【0018】
(7) 本発明の一方向クラッチは、入力回転体とこの入力回転体の径方向外側に同心上に配置された出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と前記出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチであって、前記出力回転体側に設けられた外輪内周面と、前記入力回転体側に設けられるとともに、前記外輪内周面との間に周方向に複数のくさび状空間を形成する内輪外周面と、前記複数のくさび状空間のそれぞれに配置されるとともに、前記内輪外周面及び前記外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いが解除されることにより前記接続を遮断するころと、前記内輪外周面に形成されると共に、前記入力回転体から前記出力回転体への伝達トルクが上限を超えたときに前記くさび状空間から離脱した前記ころを収容し、当該ころと前記内輪外周面及び前記外輪内周面との噛み合いを解除させる収容凹部を備えたトルクリミッタと、を備え、前記トルクリミッタは、前記入力回転体の回転に伴う遠心力で前記収容凹部内のころが当該収容凹部から離脱するのを防止する離脱防止手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一方向クラッチは、トルクリミッタを備えているので、入力回転体から出力回転体への伝達トルクが上限を超える(入力回転体が出力回転体に接続されてロック状態になる)と、トルクリミッタによって入力回転体と出力回転体との接続を遮断させることができる。また、収容凹部内にころが収容された状態で入力回転体が回転し、その遠心力によって収容凹部からころが飛び出すと、再度、ころが内輪外周面及び外輪内周面に噛み合ってしまうおそれがあるが、本発明のトルクリミッタは、収容凹部からころが離脱するのを防止する離脱防止手段を備えているので、このような問題も解消することができる。
【0020】
(8) 前記離脱防止手段は、前記収容凹部の周方向の端縁に、当該収容凹部内に収容された前記ころの径方向外方への移動を規制する規制部を突設することによって構成されていてもよい。
このような構成によって、入力回転体の回転による遠心力で収容凹部からころが離脱しようとしても、規制部が障害となって当該離脱が防止される。したがって、ころが内輪外周面及び外輪内周面に再び噛み合ってしまうのを好適に防止することができる。
【0021】
(9) 前記内輪外周面と前記外輪内周面との間には、前記ころを収容可能なポケットを有すると共に複数の前記ころの周方向間隔を保持する保持器と、前記ポケット内の前記ころを前記くさび状空間の狭小方向へ付勢する圧縮バネからなる弾性部材とを備えており、前記離脱防止手段は、前記弾性部材よりも径方向内側に前記ころを位置づけることが可能な深さに前記収容凹部を形成することによって構成されていてもよい。
この構成によれば、保持器のポケットからころが離脱して収容凹部内に入り込むと、弾性部材が伸張することによってころの径方向外側に配置される。したがって、入力回転体の回転に伴う遠心力で収容凹部からころが径方向外方へ離脱しようとしても弾性部材が障害となり、当該離脱を防止することができる。
【0022】
(10) 前記弾性部材には、前記ころが収容された前記収容凹部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部材が設けられていてもよい。
この構成によれば、上記のように収容凹部に入り込んだころの径方向外側に弾性部材が配置されたときに、この弾性部材に取り付けられた閉塞部材が収容凹部の少なくとも一部を塞ぎ、ころの離脱を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の発電装置によれば、増速機の出力軸を支持するころ軸受にスメアリングが発生するのを効果的に抑制し、しかも出力軸から発電機の駆動軸への伝達トルクが過大になったときに増速機の負担を軽減することができる。また、本発明の一方向クラッチによれば、入力回転体から出力回転体への伝達トルクが過大になったときに入力回転体と出力回転体との接続を好適に遮断することができ、さらに、入力回転体の回転による遠心力でころが収容凹部から離脱して再び内輪外周面及び外輪内周面に噛み合ってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る発電装置を示す概略側面図である。
【図2】図1に示される発電装置における増速機のころ軸受を示す断面図である。
【図3】図1に示される発電装置における増速機の出力軸と発電機の駆動軸との連結部分を示す断面図である。
【図4】図1に示される発電装置における一方向クラッチを示す断面図である。
【図5】一方向クラッチの一部を拡大して示す断面図である。
【図6】収容凹部内にころが収容された状態の一方向クラッチの一部を拡大して示す断面図である。
【図7】従来の増速機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る発電装置を示す概略側面図である。本実施形態の発電装置は風力発電装置1であり、この風力発電装置1は、風力(外力)を受けて回転する主軸2と、この主軸2に連結された増速機3と、この増速機3に連結された発電機4とを備えており、主軸2の回転が増速機3によって増速され、この増速された回転動力で発電機4が駆動される。
【0026】
主軸2の先端部には、例えばブレード(図示省略)が一体回転可能に連結されており、このブレードは風力を受けて主軸2とともに回転するようになっている。
発電機4は、増速機3により増速された回転動力が入力されて回転する駆動軸41と、発電機4に内蔵されたロータ42と、図示しないステータ等とを有する。ロータ42は駆動軸41に一体回転可能に連結されており、駆動軸41が回転してロータ42が駆動することに伴って発電するようになっている。
【0027】
増速機3は、主軸2の回転を増速する歯車機構(回転伝達機構)30を備えている。この歯車機構30は、遊星歯車機構31と、この遊星歯車機構31により増速された回転をさらに増速する高速段歯車機構32とを備えている。
遊星歯車機構31は、内歯車(リングギヤ)31aと、主軸2に一体回転可能に連結された遊星キャリア(図示省略)に保持された複数の遊星歯車31bと、遊星歯車31bに噛み合う太陽歯車31cとを有している。これにより、前記主軸2とともに遊星キャリアが回転すると、遊星歯車31bを介して太陽歯車31cが回転し、その回転が高速段歯車機構32の低速軸33に伝達される。
【0028】
高速段歯車機構32は、低速ギヤ33aを有する低速軸33と、第1中間ギヤ34a及び第2中間ギヤ34bを有する中間軸34と、高速ギヤ35aを有する出力軸35とを備えている。
低速軸33は、その直径が例えば約1mの大型の回転軸からなり、主軸2と同心上に配置されている。低速軸33の軸方向両端部はころ軸受36a,36bにより回転自在に支持されている。
【0029】
中間軸34は、低速軸33の上方に配置されており、その軸方向両端部はころ軸受37a,37bにより回転自在に支持されている。中間軸34の第1中間ギヤ34aは低速ギヤ33aと噛み合い、第2中間ギヤ34bは高速ギヤ35aと噛み合っている。
出力軸35は、中間軸34の上方に配置されており、回転トルクを出力するようになっている。出力軸35の軸方向の一端部35b及び他端部(出力端部)35c側は、それぞれころ軸受38,39により回転自在に支持されている。
【0030】
以上の構成により、主軸2の回転は、遊星歯車機構31のギヤ比、低速ギヤ33aと第1中間ギヤ34aとのギヤ比、及び第2中間ギヤ34bと高速ギヤ35aとのギヤ比により3段階に増速され、出力軸35の出力端部35cから回転トルクが出力される。したがって、風力による主軸2の回転は、増速機3により3段階に増速されて、発電機4を駆動するようになっている。
【0031】
図2は、出力軸35の一端部35bを支持するころ軸受38を示す断面図である。図2において、ころ軸受38は、円筒ころ軸受からなり、出力軸35に外嵌固定された内輪38aと、ハウジング(図示省略)に固定された外輪38bと、内輪38aと外輪38bとの間に転動可能に配置された複数の円筒ころ38cと、各円筒ころ38cを円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器38dとを備えている。内輪38a、外輪38b、円筒ころ38cは例えば軸受鋼によって形成されており、保持器38dは例えば銅合金によって形成されている。
【0032】
内輪38aは、その外周の軸方向中央部に形成された内輪軌道面38a1を有している。外輪38bは、内輪38aと同心上に配置されており、その内周の軸方向中央部に形成された外輪軌道面38b1と、この外輪軌道面38b1の軸方向両側に形成された一対の外輪鍔部38b2とを有している。外輪軌道面38b1は、内輪軌道面38a1に対向して配置されている。外輪鍔部38b2は、外輪38bの内周の軸方向両端部から径方向内側に向かって突出して形成されており、この外輪鍔部38b2に円筒ころ38cの端面が摺接する。
【0033】
円筒ころ38cは、内輪38aの内輪軌道面38a1と外輪38bの外輪軌道面38b1との間に転動可能に配置されている。
保持器38dは、軸方向に離反して配置された一対の円環部38d1と、この円環部38d1の周方向に沿って等間隔おきに配置されて両円環部38d1同士を連結する複数の柱部38d2とを有している。一対の円環部38d1と隣接する柱部38d2との間には、それぞれポケット38d3が形成されており、このポケット38d3内に円筒ころ38cが配置されている。
【0034】
図1に示されるように、風力発電装置1は、増速機3の出力軸35に一体回転可能に設けられた入力回転体5と、発電機4の駆動軸41に一体回転可能に設けられた出力回転体6と、入力回転体5と出力回転体6との間に配置された一方向クラッチ7と、一方向クラッチ7の軸方向両側に配置された一対の転がり軸受8とをさらに備えている。一方向クラッチ7及び転がり軸受8は、出力軸35の回転を入力回転体5及び出力回転体6を介して駆動軸41に伝達するようになっている。なお、本実施形態の風力発電装置1は、転がり軸受8が一方向クラッチ7の軸方向両側に配置されているが、一方向クラッチ7の軸方向一方側のみに配置されたものであってもよい。
【0035】
図3は、増速機3の出力軸35と発電機4の駆動軸41との連結部分を示す断面図である。図3において、入力回転体5は、出力軸35と同心上に配置されており、その軸方向一端部(図3の左端部)から軸方向他端部(図3の右端部)に向けて、フランジ部51、大径部52a、中径部52b、及び小径部52cをこの順に有している。
【0036】
フランジ部51は、大径部52aの外周面よりも径方向外側に延びて形成されており、出力軸35の出力端部35cに着脱可能に固定されている。具体的には、フランジ部51は、出力軸35の出力端部35cに形成されたフランジ部35c1に当接した状態で、図示しないボルト・ナットにより当該フランジ部35c1に締結固定されている。小径部52cの端面と駆動軸41のフランジ部41aの端面との間には、隙間S1が形成されている。
【0037】
出力回転体6は、入力回転体5の径方向外側に同心上に配置されており、円筒部61と、この円筒部61の軸方向他端部(図3の右端部)に形成されたフランジ部62とを有している。
フランジ部62は、円筒部61の外周面よりも径方向外側に延びて形成されており、駆動軸41の一端部(図3の左端部)に着脱可能に固定されている。具体的には、フランジ部62は、駆動軸41の一端部に形成されたフランジ部41aに当接した状態で、図示しないボルト・ナットにより当該フランジ部41aに締結固定されている。
【0038】
円筒部61の内周面は円筒面とされており、円筒部61の軸方向一端部(図3の左端部)の内周面と、入力回転体5の大径部52aの外周面との隙間には、円筒部61と入力回転体5の中径部52b及び小径部52cとの間の環状空間を密封するための環状のシール部材10が設けられている。円筒部61の一端部側の端面と、この端面に対向する入力回転体5のフランジ部51の端面との間には、隙間S2が形成されている。これにより、駆動軸41から出力回転体6を切り離した状態で、出力回転体6は入力回転体5に対して軸方向両側に移動可能となっている。
【0039】
図4は、一方向クラッチ7を示す断面図、図5は、一方向クラッチの一部を拡大して示す断面図である。図3〜図5において、一方向クラッチ7は、内輪71及び外輪72と、この内輪71の外周面71aと外輪72の内周面72aとの間に配置された複数のころ73とを備えている。
内輪71は、入力回転体5の小径部52cの左側部に外嵌して固定されており、この小径部52cとともに図4の矢印A方向に一体回転するようになっている。出力回転体6における円筒部61の軸方向中央部の領域Bは、一方向クラッチ7の外輪72とされている。したがって、円筒部61の領域Bの内周面に、前記内周面72aが形成されている。ころ73は、円柱形状であり、本実施形態では周方向に6個配置されている。
【0040】
一方向クラッチ7は、各ころ73を円周方向に沿って所定間隔毎に保持する環状の保持器74と、各ころ73を一方向に弾性的に付勢する複数の弾性部材75とをさらに備えている。
保持器74は、軸方向に対向する一対の円環部74aと、両円環部74aの間で軸方向に延びかつ周方向等間隔に配列されて当該両円環部74aを連結する複数の柱部74bとを有している。両円環部74aと隣接する柱部74bとの間には複数のポケット74cが形成されており、各ポケット74cに各ころ73が個別に収容されている。
弾性部材75は、圧縮コイルバネからなり、保持器74の各ポケット74cに個別に収容されて柱部74bに取り付けられている。
【0041】
図4において、内輪71の外周面71aにはころ73と同数(6個)の平坦なカム面71a1が形成されており、外輪72の内周面72aは円筒面とされている。内輪71のカム面71a1と外輪72の円筒面72aとの間には、くさび状空間Sが周方向に複数(6つ)形成されている。そして、ころ73は各くさび状空間Sに個別に配置されており、弾性部材75がころ73をくさび状空間Sが狭くなる方向(狭小方向)に付勢している。ころ73の外周面は、内輪71のカム面71a1及び外輪72の円筒面72aに接触する接触面となっている。なお、一方向クラッチ7は、内外輪71,72間に、基油にエステル、増ちょう剤にウレア系のもの等を用いた温度変化に影響をうけにくい潤滑剤であるグリースが設けられた環境にある。
【0042】
以上の構成を有する一方向クラッチ7において、入力回転体5が増速回転することによってその回転速度が出力回転体6の回転速度を上回ると、内輪71は外輪72に対して一方向(図4の矢印A方向(反時計回り方向))に相対回転しようとする。この場合、ころ73は、弾性部材75の付勢力によってくさび状空間Sが狭くなる方向へ僅かに移動し、その外周面が内輪71の外周面71a(カム面71a1)及び外輪72の内周面72aに圧接し、内外輪71,72の間に噛み合った状態となる。これにより、内輪71及び外輪72が矢印A方向に一体回転し、入力回転体5と出力回転体6とが一体回転可能に接続される。
【0043】
また、入力回転体5が増速回転後に一定速回転となり、入力回転体5の回転速度が、出力回転体6の回転速度と同一になった場合には、ころ73が内外輪71,72の間に噛み合った状態で保持される。このため、内輪71及び外輪72は矢印A方向への一体回転を維持し、入力回転体5及び出力回転体6が一体回転し続ける。
【0044】
一方、入力回転体5が減速回転することによって、その回転速度が出力回転体6の回転速度を下回ると、内輪71は外輪72に対して他方向(図4の矢印Aの反対方向(時計回り方向))に相対回転しようとする。この場合、ころ73は、弾性部材75の付勢力に抗してくさび状空間Sが広くなる方向へ僅かに移動し、その外周面と内輪71及び外輪72との噛み合いが解除される。これにより、入力回転体5と出力回転体6との接続が遮断される。
【0045】
したがって、風力発電装置1は、増速機3の出力軸35とともに一体回転する入力回転体5と、発電機4の駆動軸41とともに一体回転する出力回転体6との間に配置した一方向クラッチ7により、入力回転体5の回転速度が出力回転体6の回転速度を下回ると、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断することができる。つまり、風力の低下により主軸2を介して出力軸35の回転速度が急激に低下しても、発電機4のロータ42の慣性による回転が駆動軸41を介して出力軸35に伝達されるのを防止することができる。これにより、出力軸35を支持しているころ軸受38に作用するラジアル荷重の減少及びこれに伴う円筒ころ38cの自転遅れを抑制することができる。したがって、この状態から風力変化により主軸2の回転速度が急激に増加して円筒ころ38cに高荷重がかかったときに、円筒ころ38cが内輪38aとの接触面で滑りにくくなるため、ころ軸受38にスメアリングが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0046】
また、ロータ42の慣性による回転が出力軸35に伝達されるのを防止することにより、増速機3のころ軸受36a,36b,37a,37b,38,39等に作用する負荷を低減することができる。これにより、遊星歯車機構31の各歯車31b,31cや、高速段歯車機構32の各軸33〜35及びころ軸受36a,36b,37a,37b,38,39をいずれも小型化することができるため、増速機3を軽量化することができ、かつ低コストで製造することができる。
【0047】
さらに、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断することにより、発電機4のロータ42は、急激に減速することなく慣性によって回転し続けるため、ロータ42の平均回転速度を上げることができる。これにより、発電機4の発電効率を向上させることができる。
【0048】
本実施形態の一方向クラッチ7には、トルクリミッタ9が設けられている。このトルクリミッタ9は、入力回転体5から出力回転体6へ伝達される回転トルクが所定値(上限値)を超える場合に、入力回転体5と出力回転体6との接続を遮断するものである。
前述したように、一方向クラッチ7は、入力回転体5が矢印A方向に増速回転することによって、ころ73がカム面71a1と外輪72の内周面72aとの間に噛み合い、出力回転体6を矢印A方向に一体回転させる。しかし、発電機4に焼き付き等が生じて駆動軸41が回転し難くなると、この駆動軸41に連結された出力回転体6も回転し難くなり、入力回転体5から出力回転体6に伝達される回転トルクが過大となる。そのため、入力回転体5に連結された出力軸35と主軸2との間の増速機3にも大きな負担がかかり、増速機3内の歯車や軸受等を損傷させてしまう可能性がある。
【0049】
本実施形態のトルクリミッタ9は、上記のような不都合を解消するために設けられており、図4及び図5に示されるように、内輪71の外周面71aに形成され、かつころ73を収容可能な収容凹部91を有している。この収容凹部91は、周方向に隣接するカム面71a1の間に相当する位置に形成されている。したがって、本実施形態では、合計6個の収容凹部91が形成されている。また、各収容凹部91には、その矢印A方向に隣接して配置されたカム面71a1に当接するころ73が、カム面71a1の端部71a2を乗り越えたときに落ち込み、収容されるようになっている。
【0050】
図5に示されるように、収容凹部91は、その底部91aがころ73と略同一半径の円弧面に形成され、底部91aの周方向両側に形成された側壁部91b1,91b2は、互いに平行に形成されると共に、一方向クラッチ7の軸心Oと底部91aの曲率中心とを通る径方向の仮想線Yに対して径方向外側ほど矢印A方向に位置するように傾斜する傾斜面に形成されている。そのため、ころ73に近い側の側壁部91b1の方が長く、遠い側の側壁部91b2が短く形成されている。また、カム面71a1と一方の側壁部91b1との間の角度は90°以上(例えば、90°〜120°程度)とされている。
【0051】
また、収容凹部91は、ころ73の全体を収容することができる深さに形成されている。そのため、収容凹部91に収容されたころ73は、弾性部材75よりも径方向内側に位置づけられる。
弾性部材75にはカバー部材93が設けられている。このカバー部材93は、図5に示されるように、弾性部材75の周方向一端面(ころ73側の端面)、径方向外側面、径方向内側面、及び軸方向両側面を取り囲むように有底角筒形状に形成されており、周方向一端面を覆う部分93aがころ73に当接している。また、弾性部材75の径方向外側面を覆う部分93bは、外輪72の内周面72aに沿って円弧状に形成されており、この部分93bは、外輪72の内周面72aに接触しても円滑に滑ることができるように、フッ素樹脂や二硫化モリブデン等によるコーティングが施され、摩擦抵抗が低減されている。
【0052】
入力回転体5から出力回転体6に伝達される回転トルクが上限を超えると、ころ73がカム面71a1上から端部71a2を乗り越え、図6に示されるように、収容凹部91に落ち込み、カム面71a1と外輪72の内周面72aとの間のくさび状空間Sから離脱した状態となる。そのため、入力回転体5と出力回転体6との接続は完全に遮断され、両者の間の回転トルクの伝達が絶たれた状態となる。そのため、入力回転体5はほとんど負荷を受けることなく回転し、増速機3にかかる負担を軽減することができ、増速機3の損傷も防止することができる。
【0053】
また、入力回転体5は、主軸2が回転している限り、ころ73が収容凹部91内に収容された後も増速機3によって増速されて回転を継続するが、この入力回転体5の回転による遠心力で収容凹部91からころ73が径方向外方へ離脱し、再びころ73がカム面71a1と外輪72の内周面72aとに噛み合ってしまうと、入力回転体5が出力回転体6に接続されてロック状態となり、増速機3に大きな負担がかかってしまう。このような事態を防止するため、本実施形態のトルクリミッタ9には、ころ73の収容凹部91からの離脱を防止する離脱防止手段が設けられている。
【0054】
具体的に、離脱防止手段は、収容凹部91の一方の側壁部(周方向一方の端縁;規制部)91b2が、ころ73の径方向外側へ向けて突出していることによって構成されている。すなわち、遠心力によってころ73が径方向外方(仮想線Yに沿った白抜き矢印B方向)へ移動しようとしたとしても、収容凹部91の側壁部91b2が障害となって移動し難くなり、収容凹部91からの離脱が防止される。また、入力回転体5が矢印A方向に回転することによって、ころ73には矢印Aとは反対方向への慣性力が付与されるため、より収容凹部91から離脱し難くなっている。
【0055】
また、離脱防止手段は、弾性部材75及びカバー部材93によっても構成されている。すなわち、カム面71a1上のころ73が収容凹部91に落ち込むと、ポケット74c内の弾性部材75が伸張し、ころ73は、弾性部材75及びカバー部材93の径方向内側に位置づけられるとともに、収容凹部91は、カバー部材93によって少なくとも一部が閉塞される。そのため、入力回転体5の回転による遠心力でころ73が径方向外方へ移動しようとしたとしても弾性部材75及びカバー部材93が障害となって、その移動が阻止され、収容凹部91からのころ73の離脱が好適に防止される。特に、弾性部材75にカバー部材93が設けられることによって収容凹部91からのころ73の離脱を確実に防止することができる。
【0056】
図3において、一対の転がり軸受8は、入力回転体5の中径部52bと出力回転体6の円筒部61との間、及び入力回転体5の小径部52cに一体回転可能に嵌合された中間輪体53と円筒部61との間にそれぞれ配置されており、入力回転体5及び出力回転体6を互いに相対回転可能に支持している。また、各転がり軸受8は、その軸方向端部に一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面にそれぞれ当接可能に、前記一方向クラッチ7の軸方向両側にそれぞれ隣接して配置されている。
【0057】
転がり軸受8は、内輪81及び外輪82と、内輪81と外輪82との間に転動可能に配置された複数の円筒ころ83とを備えた円筒ころ軸受からなる。
内輪81は、外周に形成された内輪軌道面81aと、この内輪軌道面81aの軸方向両側において径方向外側に向かって突出して形成された内輪鍔部81bとを有している。各内輪鍔部81bの内側面には、円筒ころ83の両端面がそれぞれ摺接するようになっている。また、一方向クラッチ7に隣接する内輪鍔部81bの外側面81b1は、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向端面である円環部74aの外側面が当接する当接面とされている。
【0058】
出力回転体6における円筒部61の軸方向両端部の領域A及び領域Cは、転がり軸受8の外輪82とされており、この領域A,Cの各内周面に外輪82の外輪軌道面82aが形成されている。この外輪軌道面82aと内輪軌道面81aとの間には、円筒ころ83が転動可能に配置されている。
【0059】
また、入力回転体5と出力回転体6との間には、これらを互いに相対回転可能に支持する転がり軸受8が配置されているため、一方向クラッチ7においてころ73と内外輪71,72との噛み合いが解除されることにより、くさび状空間Sでころ73と内外輪71,72との間に隙間が発生したときに、転がり軸受8によって入力回転体5及び出力回転体6が互いに径方向に相対移動するのを防止することができる。したがって、風力発電装置1の運転中に、入力回転体5及び出力回転体6が径方向にがたつくのを防止することができる。
【0060】
また、一対の転がり軸受8を一方向クラッチ7の軸方向両側に隣接して配置し、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面を転がり軸受の軸方向端部に当接可能に構成しているので、当該保持器74が軸方向両側に移動するのを規制することができる。
より具体的には、転がり軸受8の内輪鍔部81bに、一方向クラッチ7の保持器74の軸方向両端面(円環部74aの外側面)を当接させているので、転がり軸受8の内輪鍔部81bを、前記保持器74の軸方向移動を規制する部材として兼用することができる。これにより、転がり軸受8の構造を簡略化することができる。
【0061】
また、出力回転体6の内周面に、一方向クラッチ7の外輪内周面72a及び転がり軸受8の外輪軌道面82aを形成したので、出力回転体6を一方向クラッチ7の外輪72、及び各転がり軸受8の外輪82として兼用することができる。これにより、風力発電装置1全体の構造を簡略化することができる。
また、出力回転体6は、発電機4の駆動軸41に着脱可能に固定されるとともに、入力回転体5に対して軸方向に移動可能に配置されているため、出力回転体6を駆動軸41から取り外して入力回転体5に対して軸方向へ移動させれば、入力回転体5から出力回転体6を取り外すことができる。これにより、一方向クラッチ7の外輪72及び転がり軸受8の外輪82を同時に取り外すことができるため、一方向クラッチ7及び転がり軸受8のメンテナンス作業を容易に行うことができる。この際、発電機4を移動させる必要がないため、前記メンテナンス作業をさらに容易に行うことができる。
【0062】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、本実施形態においては、入力回転体及び出力回転体が、それぞれ出力軸及び駆動軸に対して別部材として設けられているが、それぞれ出力軸及び駆動軸と一体に形成されていてもよい。
また、出力回転体は、入力回転体の径方向外側に配置されているが、入力回転体の径方向内側に配置されていてもよい。この場合、一方向クラッチは外輪内周面にカム面を形成し、内輪外周面を円筒面とすればよい。さらにこの場合には、出力回転体の外周面に内輪外周面を形成し、出力回転体を内輪として兼用してもよい。
【0063】
さらに、出力回転体を、一方向クラッチの外輪及び転がり軸受の外輪としているが、これらの外輪を出力回転体に対して別部材として設けてもよい。逆に、入力回転体を、一方向クラッチの内輪及び転がり軸受の内輪とすることも可能である。
また、入力回転体と出力回転体との間に配置される転がり軸受は、出力回転体を軸方向へ移動させるために円筒ころ軸受としているが、出力回転体を軸方向へ移動させない場合には玉軸受としてもよい。
【0064】
トルクリミッタの収容凹部は、必ずしもころの全体を収容できる深さに形成されていなくてもよく、少なくともころの半径よりも深く形成されていればよい。収容凹部がころの半径よりも深く形成されていれば、規制部を内輪外周面から突出しない状態で形成することができる。
一方向クラッチの保持器は、転がり軸受の内輪に当接させているが、転がり軸受の外輪を出力回転体に対して別部材として設け、この外輪に一方向クラッチの保持器を当接させてもよい。
また、上記実施形態においては、外力として風力を用いる風力発電装置を例示したが、本発明は、水力や火力等の他の外力を用いて発電する発電装置にも適用することができる。また、本発明の一方向クラッチは、発電装置以外の用途にも適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:風力発電装置(発電装置)、2:主軸、3:増速機、4:発電機、5:入力回転体、6:出力回転体、7:一方向クラッチ、9:トルクリミッタ、30:歯車機構(回転伝達機構)、35:出力軸、38:ころ軸受、41:駆動軸、42:ロータ、71a:外周面(内輪外周面)、72a:内周面(外輪内周面)、73:ころ、74:保持器、75:弾性部材、91:収容凹部、91b2:側壁部(規制部)、93:カバー部材(閉塞部材)、S:くさび状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力により回転する主軸と、前記主軸の回転を入力して増速する回転伝達機構と、前記回転伝達機構の回転トルクを出力する出力軸を回転自在に支持するころ軸受とを有する増速機と、前記出力軸の回転を入力として回転する駆動軸を有するとともに、当該駆動軸と一体回転するロータの回転に伴って発電する発電機と、を備えた発電装置であって、
前記出力軸に一体回転可能に設けられた入力回転体と、
前記駆動軸に一体回転可能に設けられ、前記入力回転体の径方向内側又は径方向外側に同心上に配置された出力回転体と、
前記入力回転体と出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチとを備え、
前記一方向クラッチには、前記入力回転体から前記出力回転体への伝達トルクが上限を超えたときに前記入力回転体と前記出力回転体との接続を遮断するトルクリミッタが設けられていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記一方向クラッチは、前記入力回転体及び前記出力回転体の一方側に設けられた外輪内周面と、同他方側に設けられるとともに、前記外輪内周面との間に周方向に複数のくさび状空間を形成する内輪外周面と、前記複数のくさび状空間のそれぞれに配置されたころと、を有し、前記ころが前記内輪外周面及び前記外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いが解除されることにより前記接続を遮断するものであり、
前記トルクリミッタは、前記内輪外周面に形成されると共に、前記伝達トルクが上限を超えたときに前記くさび状空間から離脱した前記ころを収容し、当該ころと前記内輪外周面及び前記外輪内周面との噛み合いを解除させる収容凹部を備えている、請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記内輪外周面が前記入力回転体側に設けられており、
前記トルクリミッタは、前記入力回転体の回転に伴う遠心力で前記収容凹部内のころが当該収容凹部から離脱するのを防止する離脱防止手段をさらに備えている、請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記離脱防止手段は、前記収容凹部の周方向の端縁に当該収容凹部内に収容された前記ころの径方向外方への移動を規制する規制部を突設することによって構成されている、請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記内輪外周面と前記外輪内周面との間には、前記ころを収容可能なポケットを有すると共に複数の前記ころの周方向間隔を保持する保持器と、前記ポケット内の前記ころを前記くさび状空間の狭小方向へ付勢する圧縮バネからなる弾性部材とを備えており、
前記離脱防止手段は、前記弾性部材よりも径方向内側に前記ころを位置づけることができる深さに前記収容凹部を形成することによって構成されている、請求項3又は4に記載の発電装置。
【請求項6】
前記弾性部材には、前記ころが収容された前記収容凹部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部材が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の発電装置。
【請求項7】
入力回転体とこの入力回転体の径方向外側に同心上に配置された出力回転体との間に配置され、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を上回る状態で、前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、前記入力回転体の回転速度が前記出力回転体の回転速度を下回る状態で、前記入力回転体と出力回転体との接続を遮断する一方向クラッチであって、
前記出力回転体側に設けられた外輪内周面と、
前記入力回転体側に設けられるとともに、前記外輪内周面との間に周方向に複数のくさび状空間を形成する内輪外周面と、
前記複数のくさび状空間のそれぞれに配置されるとともに、前記内輪外周面及び前記外輪内周面に噛み合うことにより前記入力回転体と前記出力回転体とを一体回転可能に接続し、その噛み合いが解除されることにより前記接続を遮断するころと、
前記内輪外周面に形成されると共に、前記入力回転体から前記出力回転体への伝達トルクが上限を超えたときに前記くさび状空間から離脱した前記ころを収容し、当該ころと前記内輪外周面及び前記外輪内周面との噛み合いを解除させる収容凹部を備えたトルクリミッタと、を備え、
前記トルクリミッタは、前記入力回転体の回転に伴う遠心力で前記収容凹部内のころが当該収容凹部から離脱するのを防止する離脱防止手段を備えていることを特徴とする一方向クラッチ。
【請求項8】
前記離脱防止手段は、前記収容凹部の周方向の端縁に当該収容凹部内に収容された前記ころの径方向外方への移動を規制する規制部を突設することによって構成されている、請求項7に記載の一方向クラッチ。
【請求項9】
前記内輪外周面と前記外輪内周面との間には、前記ころを収容可能なポケットを有すると共に複数の前記ころの周方向間隔を保持する保持器と、前記ポケット内の前記ころを前記くさび状空間の狭小方向へ付勢する圧縮バネからなる弾性部材とを備えており、
前記離脱防止手段は、前記弾性部材よりも径方向内側に前記ころを位置づけることができる深さに前記収容凹部を形成することによって構成されている、請求項7又は8に記載の一方向クラッチ。
【請求項10】
前記弾性部材には、前記ころが収容された前記収容凹部の少なくとも一部を塞ぐ閉塞部材が設けられていることを特徴とする、請求項9に記載の一方向クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−110844(P2013−110844A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253598(P2011−253598)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】