説明

白線認識方法及び白線認識装置並びに白線認識システム

【課題】車両のサイドから撮像した画像に基づいて運転操作を支援する技術を提供することが目的とされる。
【解決手段】白線認識システムは、撮像装置1、白線認識装置2を備える。撮像装置1は、車両のサイドに設置され、白線を含む視野範囲を撮像する。白線認識装置2は画像処理部22及び制御部24を有し、画像処理部22は検出部及び演算部を有する。検出部は、撮像装置1で撮像された画像に基づいて白線を認識する。演算部は、検出部で認識された結果に基づいて、白線が延在する方向と、車両の中心線の方向とがなす角度θを算出する。制御部24は、角度θが所定の閾値α以上であると判断した場合に信号S2を出力し、これに基づいて運転の支援を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、白線を認識する技術に関し、特に白線と車両との位置関係を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の駐車を支援する技術として、車両のサイドに設けたカメラで撮像した画像を利用するものがある。例えば、画像を表示器の画面で表示する場合に、車両のサイドから一定の距離だけ隔たった位置を、画面に目印やガイド線などで表示する。これにより運転者は、画面に表示された他の車両や壁などの障害物との距離を認識できる。
【0003】
また、操舵角に基づいて車両の軌道を予測し、これを画面にガイド線などで表示するものもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術によれば、画面に表示されたガイド線に従って、運転者自らの判断で車両を操作する必要があった。このため、運転技術が未熟な者にとっては、当該ガイド線に従って所望の位置に車両を導くことが困難であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両のサイドから撮像した画像に基づいて運転操作を支援する技術を提供することが目的とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1にかかる白線認識方法は、(a)車両のサイドの少なくともいずれか一方で撮像された、白線を含む視野範囲の画像を取得するステップと、(b)前記画像に基づいて前記白線を認識するステップと、(c)前記ステップ(b)で認識した結果に基づいて、前記白線が延在する方向と、前記車両の中心線の方向とがなす角度を算出するステップとを備える。
【0007】
この発明の請求項2にかかる白線認識方法は、請求項1記載の白線認識方法であって、前記ステップ(b)では、(b−1)前記ステップ(a)で取得した前記画像に対して歪み補正を施すステップと、(b−2)前記白線のエッジを抽出するステップと、(b−3)前記ステップ(b−2)で抽出された前記エッジに対応する直線を導出するステップとを実行する。
【0008】
この発明の請求項3にかかる白線認識方法は、請求項2記載の白線認識方法であって、前記ステップ(b−3)では、前記ステップ(b−2)で抽出された前記エッジに対して直線検出手法を施す。
【0009】
この発明の請求項4にかかる白線認識方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の白線認識方法であって、前記ステップ(a)では、前記サイドをも含む前記視野範囲の前記画像が取得され、前記ステップ(b)では、前記画像に基づいて更に前記サイドをも認識し、前記ステップ(c)では、前記車両の前記中心線の前記方向として前記サイドのエッジが延在する方向が採用される。
【0010】
この発明の請求項5にかかる白線認識方法は、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の白線認識方法であって、(d)前記ステップ(c)で算出された前記角度が所定の閾値以上である場合に、前記車両の運転を支援するステップを更に備える。
【0011】
この発明の請求項6にかかる白線認識装置は、車両のサイドの少なくともいずれか一方で撮像された、白線を含む視野範囲の画像に基づいて、前記白線を認識する検出部と、前記検出部で認識された結果に基づいて、前記白線が延在する方向と、前記車両の中心線の方向とがなす角度を算出する演算部と、前記検出部及び前記演算部を制御する制御部とを備える。
【0012】
この発明の請求項7にかかる白線認識装置は、請求項6記載の白線認識装置であって、前記検出部は、撮像された前記画像に対して歪み補正を施す補正部と、前記白線のエッジを抽出する抽出部と、前記抽出部で抽出された前記エッジに対応する直線を導出する直線検出部とを有する。
【0013】
この発明の請求項8にかかる白線認識装置は、請求項7記載の白線認識装置であって、前記直線検出部では、前記抽出部で抽出された前記エッジに対して直線検出手法を施す。
【0014】
この発明の請求項9にかかる白線認識装置は、請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載の白線認識装置であって、前記検出部は、前記サイドをも含む前記視野範囲の前記画像に基づいて、更に前記サイドをも認識し、前記演算部では、前記車両の前記中心線の前記方向として前記サイドのエッジが延在する方向が採用される。
【0015】
この発明の請求項10にかかる白線認識装置は、請求項6乃至請求項9のいずれか一つに記載の白線認識装置であって、前記制御部は、前記演算部で算出された前記角度が所定の閾値以上である場合に、前記車両の運転を支援する。
【0016】
この発明の請求項11にかかる白線認識システムは、請求項6乃至請求項10のいずれか一つに記載の白線認識装置と、前記視野範囲を撮像する撮像装置とを有する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1にかかる白線認識方法、請求項6にかかる白線認識装置もしくは請求項11にかかる白線認識システムによれば、車両のサイドから撮像された画像に基づいて白線を認識するので、その認識の精度が高い。よって、車両の中心線と白線とがなす角度を精度良く算出できる。
【0018】
この発明の請求項2にかかる白線認識方法もしくは請求項7にかかる白線認識装置によれば、白線のエッジに対応する直線を導出することで、直線が延在する方向を白線が延在する方向とすることができる。
【0019】
この発明の請求項3にかかる白線認識方法もしくは請求項8にかかる白線認識装置によれば、エッジに対応する直線が求められる。
【0020】
この発明の請求項4にかかる白線認識方法もしくは請求項9にかかる白線認識装置によれば、車両のサイドのエッジが延在する方向も検出されるので、これを車両の中心線の方向に採用することで、白線が延在する方向と車両の中心線の方向とがなす角度をより精度良く算出できる。
【0021】
この発明の請求項5にかかる白線認識方法もしくは請求項10にかかる白線認識装置によれば、運転を支援することで、所望の位置へと車両を誘導することが容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明にかかる白線認識システムを概念的に示すブロック図である。白線認識システムは、撮像装置1、白線認識装置2及び表示器3を備える。
【0023】
白線認識システムを車両に適用した態様が、図2には上面図で、図3には側面図でそれぞれ示されている。撮像装置1は、車両のサイドに設置される。図2及び図3では、左サイドのドアハンドルに撮像装置1を設置した場合が示されている。例えば、ドアミラーに撮像装置1を内蔵してもよい。そして、撮像装置1は、設置された位置から視野7を撮像する。
【0024】
図4は、撮像装置1で撮像した視野7の画像を例示する。この画像では、撮像装置を設けた車両(以下、自車両という)のサイド42、白線71及び他の車両73が映し出されている。
【0025】
表示器3は、図2で示されるように例えば車内に設けられ、撮像装置1で撮像された視野7の画像を表示する。このとき、撮像された画像の一部だけを表示してもよい。例えば、図4で例示される画像の前輪側の半分を表示する場合や、後輪側の半分を表示する場合が採用できる。また、表示器3は、例えば運転者が視認できる位置に設けられる。
【0026】
白線認識装置2は、ADC(Analog Digital Converter)21、画像処理部22、画像メモリ(例えばVRAM(Video Random Access Memory))23、制御部24及びDAC(Digital Analog Converter)25を備え、図5で示されるフローチャートに従って、画像の処理を行う。
【0027】
まず、撮像装置1で撮像された視野7の画像(図4)が、アナログ信号Pa1によりADC21に入力される(ステップ101)。この内容は、車両のサイドの少なくとも一方で撮像された視野7の画像を、白線認識装置1が取得すると把握できる。
【0028】
ADC21は、入力された画像をアナログ信号Pa1からデジタル信号Pd1へと変換し、これを画像処理部22に与える。
【0029】
図6は、画像処理部22を概念的に示すブロック図である。画像処理部22は、検出部221及び演算部222を有する。画像のデジタル信号Pd1は、検出部221に入力される。
【0030】
検出部221は、デジタル信号Pd1に基づいて画像に映し出された白線71を認識する(ステップ102〜104)。具体的には、検出部221は、補正部2211、抽出部2212及び直線検出部2213を有し、以下のようにして白線71を認識する。
【0031】
補正部2211は、入力されたデジタル信号Pd1に対して歪み補正を施し、撮像された画像の歪みを補正する(ステップ102)。補正の前後の画像が、図7及び図8に示される。図7は、補正を施す前の図4で示される画像に対応する線図である。ここでは、白線71のエッジ711と、サイド42のエッジ421とを実線で示しており、図8及び以下で説明する図9においても同様である。図8は、歪みが補正された画像を示す線図である。図8で示される線図によれば、サイド42及び白線71の歪みが解消されている。
【0032】
抽出部2212は、白線71のエッジ711及び自車両4のサイド42のエッジ421を抽出する(ステップ103)。これらのエッジ711,421の抽出は、補正部2211で画像の歪みを補正した後であっても良いし、その前であっても良い。
【0033】
直線検出部2213は、抽出部2212で抽出されたエッジ711,421に対応する直線を導出する(ステップ104)。具体的には、白線71のエッジ711に対応する直線D1と、サイド42のエッジ421に対応する直線D2とが導出される。これら直線の導出には、例えば公知の技術であるハフ変換などが適用できる。そして、直線D1,D2は、演算部222に与えられる。
【0034】
演算部222は、検出部221で認識された結果に基づいて、白線71が延在する方向と、サイド42のエッジ421が延在する方向とがなす角度θを算出する(ステップ105)。具体的には、白線71が延在する方向には、直線D1が延びる方向が採用される。またサイド42のエッジ421が延在する方向には、直線D2が延びる方向が採用される。図9に、角度θと、エッジ711,421が延在する方向との関係が図示されている。
【0035】
これらの画像処理(ステップ101〜105)は、制御部24から画像処理部22に入力される制御指令Sに基づいて行われる。制御指令Sは、例えば白線認識装置の外部から入力される信号S1に従って制御部24で発生される。信号S1には、例えば操舵角、自車両4の速度やリバース信号などが含まれる。
【0036】
画像処理部22で画像処理された結果、すなわち角度θは、制御部24に与えられる。これに並行して、制御部24には所定の閾値αが入力される。所定の閾値αは、予め制御部24に記憶されていても良い。
【0037】
制御部24は、角度θが所定の閾値αより小さいと判断した場合(ステップ106)には、再びステップ101に戻って、ステップ101〜ステップ106を繰り返す。すなわち、白線71に対して自車両4がほぼ平行に導かれているので、運転の判断をそのまま運転者に任せる。
【0038】
一方、角度θが所定の閾値α以上であると判断した場合(ステップ106)、すなわち白線71に対して自車両4が平行に導かれていない場合には、制御部24は、自車両4の運転を支援する(ステップ107)ための信号S2を出力する。運転の支援には、例えば表示器3への警告文の表示や、別途設けられたスピーカからの警告音の出力が採用できる。さらには、自車両4が白線に対して平行になるようにステアリングに荷重をかけることで、運転を支援してもよい。
【0039】
このように運転を支援することで、例えば白線で区切られた駐車位置などの所定の位置へと車両を誘導することが、運転者にとって容易に行える。
【0040】
上述した内容によれば、車両4のサイド42から撮像された画像に基づいて白線71を認識するので、その認識の精度が高い。よって、白線71が延在する方向と、サイド42のエッジ421が延在する方向とがなす角度θを精度良く算出できる。
【0041】
演算部222で算出される角度θには、例えば、白線71のエッジ711が延在する方向と、車両4の中心線41が延在する方向とがなす角度を採用してもよい。この場合、例えば次のようにして角度θが算出される。
【0042】
制御部24は、中心線41が延在する方向を記憶しておき、この情報を制御信号Sに含ませる。この制御指令Sが入力された画像処理部22では、検出部221は白線71の認識だけを行い、演算部222には白線71のエッジ711に対応する直線D1のみが与えられる。演算部222は、直線D1の方向を白線71が延在する方向に採用し、制御指令Sから中心線41が延在する方向を得て、それらの方向がなす角度を、角度θとして算出する。
【0043】
これによれば、サイド42のエッジ421の方向を得る必要が無く、角度θを算出する演算が簡単化される。しかも、このような態様によっても、車両4の中心線41と白線71とがなす角度θを精度良く算出できる。ただし、車両4の中心線41の方向として、上述したサイド42のエッジ421が延在する方向を採用することが、より精度良く角度θを算出できる点で特に望ましい。
【0044】
上述した運転の支援に並行して、撮像装置1で撮像された視野7の画像を表示器3に表示させてもよい(図1)。この場合、当該画像のデジタル信号Pd2が、画像処理部22からDAC25へと与えられる。デジタル信号Pd2は、ADC21から画像処理部22に入力されたデジタル信号Pd1と同じであってもよいし、例えば画像処理部22で画像処理されたものであってもよい。
【0045】
DAC25は、デジタル信号Pd2をアナログ信号Pa2に変換し、これを表示器3に入力する。表示器3は、アナログ信号Pa2に基づく画像を表示する。画像を表示器3に表示する際には、例えば画像メモリ23が用いられる。
【0046】
上述では図2及び図4で示されるように、撮像装置1を特に車両の左サイドに設置した場合について説明したが、例えば車両の右サイドに設置する場合や、両サイドに設置する場合であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明にかかる白線認識システムを概念的に示すブロック図である。
【図2】白線認識システムを車両に適用した態様を示す上面図である。
【図3】白線認識システムを車両に適用した態様を示す側面図である。
【図4】撮像装置で撮像した視野の画像を示す図である。
【図5】画像の処理方法を示すフローチャートである。
【図6】画像処理部を概念的に示すブロック図である。
【図7】図4で示される画像に対応する線図である。
【図8】歪みが補正された画像を示す線図である。
【図9】角度θを概念的に示す線図である。
【符号の説明】
【0048】
1 撮像装置
2 白線認識装置
4 車両
7 視野
24 制御部
41 車両の中心線
42 車両のサイド
71 白線
221 検出部
222 演算部
421,711 エッジ
2211 補正部
2212 抽出部
2213 直線検出部
D1,D2 直線
α 所定の閾値
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)車両のサイドの少なくともいずれか一方で撮像された、白線を含む視野範囲の画像を取得するステップと、
(b)前記画像に基づいて前記白線を認識するステップと、
(c)前記ステップ(b)で認識した結果に基づいて、前記白線が延在する方向と、前記車両の中心線の方向とがなす角度を算出するステップと
を備える、白線認識方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)では、
(b−1)前記ステップ(a)で取得した前記画像に対して歪み補正を施すステップと、
(b−2)前記白線のエッジを抽出するステップと、
(b−3)前記ステップ(b−2)で抽出された前記エッジに対応する直線を導出するステップと
を実行する、請求項1記載の白線認識方法。
【請求項3】
前記ステップ(b−3)では、前記ステップ(b−2)で抽出された前記エッジに対して直線検出手法を施す、請求項2記載の白線認識方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)では、前記サイドをも含む前記視野範囲の前記画像が取得され、
前記ステップ(b)では、前記画像に基づいて更に前記サイドをも認識し、
前記ステップ(c)では、前記車両の前記中心線の前記方向として前記サイドのエッジが延在する方向が採用される、請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の白線認識方法。
【請求項5】
(d)前記ステップ(c)で算出された前記角度が所定の閾値以上である場合に、前記車両の運転を支援するステップを
更に備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の白線認識方法。
【請求項6】
車両のサイドの少なくともいずれか一方で撮像された、白線を含む視野範囲の画像に基づいて、前記白線を認識する検出部と、
前記検出部で認識された結果に基づいて、前記白線が延在する方向と、前記車両の中心線の方向とがなす角度を算出する演算部と、
前記検出部及び前記演算部を制御する制御部と
を備える、白線認識装置。
【請求項7】
前記検出部は、
撮像された前記画像に対して歪み補正を施す補正部と、
前記白線のエッジを抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された前記エッジに対応する直線を導出する直線検出部と
を有する、請求項6記載の白線認識装置。
【請求項8】
前記直線検出部では、前記抽出部で抽出された前記エッジに対して直線検出手法を施す、請求項7記載の白線認識装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記サイドをも含む前記視野範囲の前記画像に基づいて、更に前記サイドをも認識し、
前記演算部では、前記車両の前記中心線の前記方向として前記サイドのエッジが延在する方向が採用される、請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載の白線認識装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記演算部で算出された前記角度が所定の閾値以上である場合に、前記車両の運転を支援する、請求項6乃至請求項9のいずれか一つに記載の白線認識装置。
【請求項11】
請求項6乃至請求項10のいずれか一つに記載の白線認識装置と、
前記視野範囲を撮像する撮像装置と
を有する、白線認識システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−127383(P2006−127383A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317944(P2004−317944)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】