説明

白色半導体発光装置

【課題】発光ダイオード素子が高密度に集積された、大光束が取り出し可能な白色半導体発光装置内を提供する。
【解決手段】配線基板と、
該配線基板に直接実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、
該発光ダイオード素子から放射される光によって励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体含有層とを有する白色半導体発光装置であって、
該発光ダイオード素子が、配線基板上の10cmの領域に100個以上集積実装されており、
該発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数が16個/cm以上、1000個/cm以下に集積実装されており、
集積実装された該発光ダイオード素子が該蛍光体含有層により被覆されている
ことを特徴とする、白色半導体発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種照明装置等に使用可能な、小型であっても大光束を取り出し可能な新規の白色半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光装置は、携帯端末を始めとして、家電等の表示装置、室内用の照明装置等として、広く用いられている。半導体発光装置は、例えば、所定の配線パターンを設けた基板上に、正負一対の電極を設け、その電極上に発光ダイオード素子(以下、適宜「LEDチップ」ともいう。)を実装することにより構成される。また、例えば、シリコーン樹脂等の封止部に蛍光体を含有させてLEDチップ上、または、LEDチップの周辺に配置することにより、LEDチップから発光される光の波長を変換し、異なる波長の光を出すことも可能となる(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−168235
【特許文献2】特開2003−110144
【特許文献3】国際公開第2008−018548号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体発光装置は、大光束の取り出しが求められており、高い電力を投入することが求められている。また特に、従来の照明器具への代替等を目的として、小型で大光束を取り出し可能な白色半導体発光装置の提供が求められている。しかしながら、小型化を目的としてLEDチップを高密度に集積し、LEDチップ上に蛍光体を含有する蛍光体含有層を積層した場合には、発光装置全体から大光束を得ることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、上記課題は、高密度にLEDチップを集積することにより、LEDチップにより発せられる熱が半導体発光装置内にこもりやすくなり、LEDチップの発光効率が低下することにより生じるものと考えられていた。
【0006】
本発明者らが検討したところ、集積実装する発光ダイオード素子どうしの隙間の距離を変化させ、透明封止剤で覆った場合には、集積実装された発光ダイオード素子全体から発せられる放射束に大きな変化がないことを発見した。すなわち、上記課題は発光ダイオード素子上に蛍光体含有層を積層した際に生じやすいものであることを発見した。この課題に対して、本発明者らがさらに鋭意研究を行なった結果、白色半導体発光装置の構造を、チップオンボード型とし、一定の領域に所定数以上の発光ダイオード素子を、所定の密度で集積実装し、蛍光体含有層で被覆することにより、白色半導体発光装置から大光束を取り出し可能となることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は、以下に存する。
【0007】
(1)配線基板と、該配線基板に直接実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、該発光ダイオード素子から放射される光によって励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体含有層とを有する白色半導体発光装置であって、該発光ダイオード素子が、配線基板上の10cmの領域に100個以上集積実装されており、該発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数が16個/cm以上、1000個/cm以下に集積実装されており、集積実装された該発光ダイオード素子が該蛍光体含有層により被覆されていることを特徴とする、白色半導体発光装置。
【0008】
(2)該発光ダイオード素子が、フリップ実装されていることを特徴とする、(1)に記載の白色半導体発光装置。
(3)集積実装された該発光ダイオード素子の、隣接する発光ダイオード素子間の隙間が、0.05mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の白色半導体発光装置。
(4)集積実装された該発光ダイオード素子が、電気的に直並列に接続されている
ことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
(5)蛍光体含有層中の該蛍光体の濃度が5重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
(6)隣接する該発光ダイオード素子の中心間距離が、0.1mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
(7)各発光ダイオード素子の面積が、20000μm以上、360000μm以下であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
【0009】
(8)該配線基板が放熱基板であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
(9)該蛍光体含有層が、該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、赤色の光を発光する赤色蛍光体を含有する層と、該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、緑色の光を発光する緑色蛍光体を含有する層と、該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、青色の光を発光する青色蛍光体を含有する層とが、発光ダイオード素子側からこの順に積層されているものであることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の白色半導体発光装置。
(10)(1)〜(9)のいずれかに記載の白色半導体発光装置を含むことを特徴とする、照明装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発光ダイオード素子が一定面積内に所定数以上、所定の密度で集積実装されていることから、蛍光体含有層中の蛍光体を効率よく励起することができ、発光ダイオード素子が集積実装された領域から大光束を得ることができる。したがって、小型の装置とした場合であっても、大光束を取り出し可能な白色半導体発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の白色半導体発光装置の一例を示す概略図であり、(a)は、光取出し面側から観察したときの概略平面図であり、(b)は、(a)におけるα−α部の概略断面図である。
【図2】本発明の白色半導体発光装置の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の白色半導体発光装置の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の白色半導体発光装置に用いられる配線基板の一例を表す概略平面図である。
【図5】本発明の白色半導体発光装置に用いられる配線基板の他の例を表す概略平面図である。
【図6】本発明の白色半導体発光装置に用いられる配線基板の他の例を表す概略平面図である。
【図7】本発明の白色半導体発光装置に用いられる配線基板の他の例を表す概略平面図である。
【図8】実施例1〜4の白色半導体発光装置について、駆動電流量と全放射束との関係を示すグラフである。
【図9】実施例1〜4の白色半導体発光装置について、駆動電流量と全光束との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0013】
本発明の白色半導体発光装置の一例の概略図を図1に示す。図1(a)は、白色半導体発光装置を光取り出し面側から観察したときの概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるα−α部の概略断面図である。ただし、これらの図は本発明の白色半導体発光装置を説明するために模式的に表わしたものであり、各部材の縮尺等を正確に示すものではない。
【0014】
図1に示すように、本発明の白色半導体発光装置10は、配線基板1と、該配線基板1上に配置された複数の発光ダイオード素子2と、蛍光体を含有する蛍光体含有層3とを有するものであり、本発明は、発光ダイオード素子2が、所定の範囲内に所定数以上集積実装されており、かつその単位面積当たりの個数が所定の範囲内であり、さらに集積実装された発光ダイオード素子2が蛍光体含有層3により被覆されていることを、特徴としている。
【0015】
本発明においては、放熱基板である配線基板1と、発光ダイオード素子2とが直接接続される構造、いわゆるチップオンボード型に、好ましくは、フリップチップ実装することにより、省スペース化を実現している。すなわち、発光ダイオード素子2を単位面積当たりに、所定の個数以上集積可能となる。またこのような集積密度とすることにより、蛍光体含有層3中の蛍光体を効率良く励起することができる。所定の密度とすることにより、白色半導体発光装置10から大光束が得られる理由としては以下のことが考えられる。所定の密度でも十分放熱が可能で、発光ダイオード素子の発光効率低下を抑えられる。また隣接する発光ダイオード素子2どうしの間に、ある程度の距離があるため、蛍光体含有層3がこの隙間に入り込みやすく、蛍光体の励起効率が良好となる。また隣接する発光ダイオード素子2から発光された光を発光ダイオード素子2で再吸収してしまうことを少なくでき、発光ダイオード素子2から放射された光が、蛍光体含有層3に吸収されて波長変換、もしくは蛍光体含有層3中で散乱されるため、蛍光体含有層3による波長変換を効率よく進めることができるためと考えられる。更に、該発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、赤色の光を発光する赤色蛍光体を含有する層と、該発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、緑色の光を発光する緑色蛍光体を含有する層と、該発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、青色の光を発光する青色蛍光体を含有する層とを、発光ダイオード素子2側からこの順に積層することにより、カスケード励起を低減でき、蛍光体含有層3による波長変換を効率よく進めることができる。
以下、本発明の白色半導体発光装置の各構成について説明する。
【0016】
1.発光ダイオード素子
(発光波長)
発光ダイオード素子としては、通常ピーク波長300nm以上480nm以下の範囲の光、すなわち近紫外波長領域から青色領域の光を発するものが用いられる。具体的には、紫外線波長を発する紫外発光ダイオード素子(発光ピーク波長300〜400nm)、紫色光を発する紫色発光ダイオード素子(発光ピーク波長400〜440nm)、及び青色光を発する青色発光ダイオード素子(発光ピーク波長440nm〜480nm)等を適用することができる。該発光ダイオード素子は、後述の蛍光体含有層中に含有される蛍光体や蛍光成分(以下、単に「蛍光体」ともいう。)を励起可能な光を発することが可能なものであれば、その種類に特に制限はない。発光ダイオード素子の発する光のピーク波長として、より好ましくは370nm以上であり、さらに好ましくは380nm以上である。またより好ましくは420nm以下であり、さらに好ましくは415nm以下である。
【0017】
(単位面積当たりの個数)
白色半導体発光装置内における発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数としては、通常16個/cm以上であり、好ましくは20個/cm以上、より好ましくは25個/cm以上である。また通常1000個/cm以下であり、好ましくは625個/cm以下であり、さらに好ましくは400個/cm以下、より好ましくは256個/cm以下である。単位面積当たりの個数を上限値以下とすることにより、白色半導体発光装置から大光束を得やすくなり、また、下限値以上とすることにより、白色半導体発光装置を小型化することが可能となる。単位面積当たりの個数とは、白色半導体発光装置を光取り出し面側から投影した面を観察した際の、単位面積当たりに含まれる発光ダイオード素子の個数とする。
【0018】
また、白色半導体発光装置には、10cm以上の領域に、発光ダイオード素子を49個以上集積することが好ましく、より好ましくは64個以上、さらに好ましくは100個以上であり、特に好ましくは121個以上である。また通常900個以下、好ましくは625個以下、より好ましくは400個以下である。これにより、白色半導体発光装置から大光束を取り出すことが可能となる。なお、複数の発光ダイオード素子は、白色半導体発光装置内にランダムに配置していてもよいが、通常規則的に配置することが高集積化及び発光ダイオード素子の制御の観点から好ましい。特に図1(a)に示すように、発光ダイオード素子2をマトリックス状に配置することが好ましい。
【0019】
隣接する発光ダイオード素子間の隙間(例えば図1(a)においてt及びt´で表わされる距離;発光ダイオード素子の中心間の距離から発光ダイオード素子の一辺の長さを差し引いた距離)は、例えば白色半導体発光装置を光取り出し面側から投影した面を観察した際における発光ダイオード素子の形状が矩形状であり、矩形の長辺の長さが350μmである場合には、隙間は0.01mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、特に好ましくは0.15mm以上である。また通常2.0mm以下であり、0.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2mm以下である。なお、配線基板に段差が設けられている場合には、各発光ダイオード素子間の隙間の距離は、立体的距離をいうこととし、配線基板の形状に沿って測定される値とする。
【0020】
上記隙間は、白色半導体発光装置を光取り出し面側から投影した面を観察した際における発光ダイオード素子の形状によって適宜選択され、例えば発光ダイオード素子の形状が矩形状である場合には、上記隙間が、矩形の長辺の長さの3%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。また通常500%以下とされ、好ましくは250%以下、さらに好ましくは200%以下である。上記範囲内の隙間を有することにより、白色半導体発光装置から、大光束を得ることが可能となる。
【0021】
さらに、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離、すなわち各発光ダイオード素子の中心部から、隣接する発光ダイオード素子の間隔が、0.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上であり、特に好ましくは0.5mm以上である。また通常2.0mm以下であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。下限値以上とすることにより、白色半導体発光装置から大光束が得られやすくなる。また上限値以下とすることにより、発光ダイオード素子を高密度に集積することが可能となる。なお、発光ダイオード素子の中心部とは、各発光ダイオード素子を白色半導体発光装置の光取り出し面側から投影した形状の中心部をいうこととし、例えば該投影形状がまた例えば該投影形状が矩形状である場合には、該矩形の対角線の交点をいうこととする。また、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離とは、隣接する発光ダイオード素子の中心部どうしの長さが最短になる長さをいうこととする。
【0022】
集積実装領域における発光ダイオード素子の面積占有率としては、2%以上が好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また90%以下が好ましく、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。上記占有面積とすることにより、白色半導体発光装置から、効率よく大光束が得られやすい。なお、上記集積実装領域とは、白色半導体発光装置を光取り出し面側から観察した際に、蛍光体含有層により被覆されている、発光ダイオード素子が集積実装された一連の領域をいうこととする。また面積占有率は、白色半導体発光装置を光取り出し面側から観察した際に、該集積実装領域内に存在する各発光ダイオード素子の面積の総和を集積実装領域の面積で除した値とする。
【0023】
また、上記集積実装領域に存在する各発光ダイオード素子の周囲長の総長は、30mm以上が好ましく、より好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上である。また通常1000mm以下が好ましく、より好ましくは500mm以下、さらに好ましくは400mm以下である。上記範囲とすることにより、白色半導体発光装置から、効率よく大光束が得られやすい。なお、各発光ダイオード素子の周囲長とは、白色半導体発光装置を光取り出し面側から観察した際の、各発光ダイオード素子の周囲長をいうこととする。
【0024】
(形状)
発光ダイオード素子の形状(白色半導体発光装置を光取り出し面側から投影した際の形状)としては、例えば矩形状、多角形状等、本発明の効果及び目的を損なわない限り、任意の形状とすることができるが、発光ダイオード素子用基板の加工の容易さの点から、通常矩形状、もしくはそれに近い形状とされる。なお、白色半導体発光装置内に配置される全ての発光ダイオード素子の形状は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。
【0025】
各発光ダイオード素子の面積としては、20000μm以上が好ましく、より好ましくは40000μm以上、さらに好ましくは80000μm以上である。また通常360000μm以下、好ましくは250000μm以下、より好ましくは200000μm以下である。下限値以上とすることにより、フリップ実装により効率よく発光させることができ、上限値以下とすることにより、目的とする単位面積当たりの個数で発光ダイオード素子を配置可能となる。なお、本発明でいう発光ダイオード素子の面積とは、発光ダイオード素子を、白色半導体発光装置の光取り出し面側から投影した形状の面積をいうこととする。
【0026】
また、発光ダイオード素子の形状を矩形状(正方形、又は、長方形)とする場合には、一辺の長さが通常100μm以上であり、200μm以上であることが好ましく、より好ましくは250μm以上、さらに好ましくは300μm以上である。また600μm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。上記範囲内とすることにより、目的とする単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数で、発光ダイオード素子を配置可能となる。
【0027】
通常、発光ダイオード素子は、目的とする大きさに発光ダイオード素子用基板等を切断して作製されるが、この切断面の形状に凹凸がある場合、近接して発光ダイオード素子を配置することが難しくなる場合がある。したがって、発光ダイオード素子の側面は、平面性が高いことが好ましい。発光ダイオード素子の側面の平面性を高いものとする方法としては、発光ダイオード素子用基板等の切断を、例えばレーザースクライバー等により行なう方法が挙げられる。
【0028】
(具体例)
上記発光ダイオード素子として具体的には、発光ダイオード(以下、適宜「LED」と略称する。)や半導体レーザダイオード(以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。
中でも、発光ダイオード素子としては、発光ダイオード素子用基板上にGaN系化合物半導体層が形成されたGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、後述する蛍光体含有層中の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。GaN系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0029】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8以上、1.2以下の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0030】
GaN系LEDとしては、通常、これら発光層、p層、n層、電極、及び発光ダイオード素子用基板を基本構成要素としたものとすることができ、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。これらの積層方法は、一般的な発光ダイオード素子の形成方法と同様とすることができる。
【0031】
また、本発明に用いられる発光ダイオード素子は、動作時の電力量が1素子あたり通常5W以下、好ましくは4W以下、更に好ましくは3W以下であり、通常0.060W以上、好ましくは0.065W以上、更に好ましくは0.070W以上である。動作時の電力量が小さすぎると光出力が総じて少なくなりコスト的にも不利となる傾向があり、大きすぎると放熱が困難となり、蛍光体や、蛍光体含有層中に含まれる封止剤、発光ダイオード素子等が熱劣化したり電極マイグレーションによる故障を誘起する可能性がある。またこれらにより、得られる白色半導体発光装置の寿命が短くなる可能性がある。
【0032】
本発明の白色半導体発光装置において、上記発光ダイオード素子は、配線基板に直接実装される。上記発光ダイオード素子と、後述する配線基板との接続方法は特に制限はなく、例えば発光ダイオード素子用基板がSiCやGaNなど導電性材料である場合には、例えば上面の電極を1個とする(シングルワイヤボンディング)構成とすることができる。また発光ダイオード素子用基板をサファイアなどの低屈折率絶縁性材料とする場合には、例えば発光層を上面、発光ダイオード素子用基板を下面とし、後述する配線基板に接着した後、発光層にp、n2個の電極を設けて金線等で基板にボンディングする(ダブルワイヤボンディング)構成、または発光層を下面、発光ダイオード素子用基板側を上面とし、後述する配線基板に接合する(フリップチップ実装)構成等とすることができる。
【0033】
本発明においては上記の構成の中でも、発光ダイオード素子を配線基板に直接、フリップチップ実装する構成が好ましい。これにより、容易に省スペース化を図ることができる。
【0034】
また、発光ダイオード素子の使用目的に応じ、発光ダイオード素子の発光面及びその側面に向けて出射する光の割合を調整してもよい。これらは、発光ダイオード素子の発光面や側面のカット形状により制御することができる。例えば発光ダイオード素子側面を、発光層から出射する光の全反射を抑制する形状にカッティングすることにより、側面へ向けて出射する光の割合が多くなり光取り出し効率を向上させること等も可能である。
【0035】
2.配線基板
本発明の白色半導体発光装置における配線基板は、配線パターンを有するものであれば、特に制限はなく、例えば、絶縁性の基板またはフィルム上に、金属からなるプリント配線が施されたものであり、絶縁性の基板またはフィルムの配線と反対側の面は金属板と貼り合わせた構造等とすることができる。
【0036】
図4〜図7に、配線基板の例を示す概略平面図を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。図4〜図7は、窒化アルミ等の絶縁性基板(図示せず)に、配線パターン10をめっきにより設けた例を示すものである。また、図4〜図7において示す寸法の単位はmmである。図4〜図7の配線基板においては、11個×11個の発光ダイオード素子が実装されるものとされ、発光ダイオード素子の実装位置としては、例えば図4のaで示される配線パターンの四辺形の一辺の中間位置に形成される四辺形パターン(凸部)を跨るよう(図中、aは3箇所しか指し示していないが、その他のパターンにおいても同様である。)にそれぞれ実装される。四辺形の一辺が四辺形パターン(凸部)を有することにより、フリップ実装する発光ダイオード素子の位置を認識することが容易にすることができる。また、電極の間隔を四辺形の一辺として短くすると配線パターンの精度上難しいところ、凸部を設けることにより電極の間隔を四辺形の間隔よりも短くすることができる。図4は、隣接する発光ダイオード素子の中心間距離が2.0mmの場合であり、図5は、1.5mmの場合、図6は1.0mmの場合、図7は0.6mmの場合である。図4〜図7の配線基板では、図示していないが、内部で並列配線等も可能である。
【0037】
(絶縁性の基板)
絶縁性の基板またはフィルムとしては、例えばセラミック基板や、樹脂基板、ガラスエポキシ基板、樹脂中にフィラーを含有する複合樹脂基板等が挙げられる。特に、発光ダイオード素子の発熱を効率よく放熱するためには、配線基板が放熱基板であることが好ましい。放熱基板としては、例えばアルミナや窒化アルミニウム等のセラミック基板、高熱伝導性を有するフィラーを含有する複合樹脂基板などを好適に用いることができる。
【0038】
また絶縁性の基板の形状は、平板状に限定されるものではなく、白色半導体発光装置の種類や用途等に合わせて、種々の形状を採用することができる。例えば絶縁性の基板に段差を設けてもよい。具体的には、各発光ダイオード素子を実装する領域が凹部、各発光ダイオード素子間の領域が凸部となるような基板が挙げられ、この場合、隣接する発光ダイオード素子どうしの間で光が再吸収されてしまうこと等がないものとすることができ、より大光束が得られる。基板に段差を設ける方法としては、一般的な方法を用いることができ、例えば基板を積層することにより設けることができる。
【0039】
また、絶縁性の基板上には、発光ダイオード素子から発光される光を反射するための反射部材が形成されていてもよい。反射部材は、本発明の目的及び効果を損なわない位置であれば特にその形成位置や形状に制限はない。反射部材としては、例えば後述する配線パターンと同時にプリントされた金属からなる層等であってもよく、またセラミック、銀、アルミニウムなどの金属やコバール、銀−白金、銀−パラジウム等の合金、白色ソルダーレジスト等からなる層等であってもよい。またこれらは組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
さらに、絶縁性の基板上には発光ダイオード素子から発生する熱を放熱させるための放熱部材が形成されていても良い。放熱部材は例えば銅、アルミニウムなどの金属からなる層等であって良く、また高放熱性の金属やセラミックスフィラーを高密度に分散した樹脂等であっても良い。
【0041】
(配線パターン)
配線パターンは特に制限はなく、白色半導体発光装置の種類や目的等に合わせて、適宜選択され、例えばパッドパターン、給電ランドパターン、及びこれらをつなぐパターン等からできる。
【0042】
給電ランドパターンは通常、集積実装領域の外側、すなわち蛍光体含有層により覆われない領域に形成され、外部電源と電気的に接続され、外部電源から給電を受けるために用いられる。またパッドパターンは、上述した複数の発光ダイオード素子に対応して複数設けられ、発光ダイオード素子側の電極と接続される。また、給電ランドパターン及びパッドパターンは導線パターンを介して接続される。これらのパターンの形状は、目的に合わせて適宜選択され、例えば多層配線等としてもよい
【0043】
ここで、上述したように、発光ダイオード素子をマトリックス状に配置する場合には、直並列(直列及び並列を併用して接続する)パターンとすることが、駆動電圧等及び発光ダイオード素子の制御の面から好ましい。このような方法としては、例えばマトリックス状に配置された発光ダイオード素子の行方向を直列、列方向を並列に接続する方法等が挙げられる。
なお、直列に接続する際の電圧は、各発光ダイオードのVf値に直列数を乗じた値となることから、電圧が通常300V未満、好ましくは250V未満となるように発光ダイオード素子を接続することが好ましい。
【0044】
本発明において、配線パターンに用いられる材料として好ましいものとしては、反射率が高いものであることが好ましい。具体的には、波長400nmの光の反射率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。これにより、白色半導体発光装置の輝度を良好なものとすることができる。
【0045】
上記反射率の測定方法は、積分球等を用いて正反射光とともに拡散反射光も含めて測定する方法が好ましく、例えばコニカミノルタセンシング株式会社製分光測色計CM2600d等を用いて測定することが出来る。
【0046】
また、配線パターンに用いられる材料としては、通常、金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられ、中でも金、銀、銅が輝度向上や輝度の維持効果を得やすいという面から好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
3.蛍光体含有層
本願発明の蛍光体含有層は、上述の配線基板及び発光ダイオード素子を被覆し、発光ダイオード素子から放射される光によって励起されて発光する蛍光体を含有するものであれば、その種類は特に制限はない。通常、発光ダイオード素子及び配線基板を封止するための封止部材、及び上記発光ダイオード素子から発せられる光を吸収し、任意の波長に波長変換する無機または有機の蛍光体を含有するものとすることができる。またさらに、蛍光体含有層は必要に応じチキソ剤や屈折率調整剤、光拡散剤等を含有していてもよい。
【0048】
発光ダイオード素子の発光波長が紫外または紫の場合は、蛍光体として赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体を用いることによりRGB(赤色と緑色と青色)の3原色の光を発生させる、または、BY(青色と黄色)、RG(赤色と緑色)などの補色関係にある波長の光を発生させることにより、白色光を得ることができる。発光ダイオード素子の発光波長が青の場合には、黄色蛍光体によりY(黄色)の光を発生させる、または、赤色蛍光体と緑色蛍光体によりRG(赤色と緑色)の光を発生させ(目的等に応じて、さらに黄色蛍光体によりY(黄色)の光を発生させてもよい)、発光ダイオード素子の青色発光との混色により白色光を得る。
【0049】
蛍光体含有層の膜厚は、通常20μm以上、好ましくは50μm以上、さらに好ましくは75μm以上である。また通常3000μm以下、好ましくは2000μm以下、さらに好ましくは1500μm以下である。これにより、励起光の吸収及び蛍光体同士の再吸収を防止することができる。なお、蛍光体含有層が、複数層が積層された層構成とされている場合には、これらの各膜厚が、上記範囲であることが好ましい。
【0050】
蛍光体含有層の形状としては、上記配線基板及び発光ダイオード素子を封止可能な形状であれば特に制限はないが、特に、例えば図3に示すように、隣接する発光ダイオード素子2どうしの隙間に蛍光体含有層(3R、3G、及び3B)が入り込む形状であること好ましい。
【0051】
また蛍光体含有層の層構成についても、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、蛍光体含有層の一実施形態としては、図1(b)に示すような、少なくとも1種、好ましくは複数種の蛍光体を含有する単一の層3とすることができる。これらの蛍光体は蛍光体含有層中に均一に、あるいは連続した濃度分布を持って含有される。
【0052】
上記蛍光体含有層が発光色(発光波長ピーク)の異なる複数種の蛍光体を含有しており、特に、その蛍光体が、点灯使用条件において電気、熱、および光に対して不安定な特定の蛍光体を含む場合には、その特定の蛍光体のみを発光ダイオード素子から離し、他の安定な蛍光体を発光ダイオード素子近傍に配置した層構造としても良い。
【0053】
また、蛍光体含有層の他の実施形態としては、例えば図2及び3に示すように、上記発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、赤色の光を発光する赤色蛍光体を含有する層3R(以下、適宜「赤色蛍光体含有層」ともいう。)と、上記発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、緑色の光を発光する緑色蛍光体を含有する層3G(以下、適宜「緑色蛍光体含有層」ともいう。)と、上記発光ダイオード素子2から放射される光によって励起され、青色の光を発光する青色蛍光体を含有する層3B(以下、適宜「青色蛍光体含有層」ともいう。)とが積層されているものとすることができる。上記各色蛍光体含有層の積層順は、本発明の目的及び効果を損なわない限り特に制限はないが、特に、発光ダイオード素子2側から、赤色蛍光体含有層3R、緑色蛍光体含有層3G、及び青色蛍光体含有層3Bがこの順に積層されていることが発光効率や、白色半導体発光装置の発光色の演色性の面から特に好ましい。蛍光体による変換後の波長が短波長である蛍光体含有層が発光ダイオード素子側に配置されると、該変換後の波長の光が、より表面側の蛍光体含有層の蛍光体の励起に寄与してしまうことがある。
【0054】
なお、本発明においては、蛍光体含有層と発光ダイオード素子との間に、実質的に蛍光体を含有せず、発光ダイオード素子からの光の波長を変えることなく、発光ダイオード素子より発せられた光を蛍光体含有層へ導く導光層等を形成してもよい。発光ダイオード素子と蛍光体含有層との間に導光層を介在させることにより、発光ダイオード素子を直接蛍光体含有層で覆う層構造の白色半導体発光装置に比べ、蛍光体を発光ダイオード素子から離して配することができる。その結果、蛍光体の紫外線による劣化を低減することができ、長期間、安定した機能を有する白色半導体発光装置とすることができる。また、導光層は実質的に蛍光体を含有しないので、発光ダイオード素子の発熱等により導光層の温度が上昇しても、蛍光体に与える影響は少ない。よって、温度による蛍光体の劣化も抑制することができる。導光層として具体的には、後述する封止部材を含有する層等とすることができる。導光層中には、必要に応じてチキソ剤や屈折率調整剤、光拡散剤等を含有していてもよい。
【0055】
(封止部材)
蛍光体含有層に用いる封止部材は特に限定されず、通常、配線基板及び発光ダイオード素子を覆ってモールディングすることのできる硬化性材料を用いることができる。硬化性材料とは、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。
【0056】
硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0057】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0058】
従来、白色半導体発光装置用の蛍光体分散材料としては、一般的にエポキシ樹脂が用いられてきたが、本発明においては特に、発光ダイオード素子からの発光に対して劣化が少なく、耐熱性にも優れる珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0059】
珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さや、硬化物が応力緩和力を有する点から、シリコーン系材料が好ましい。半導体発光装置用シリコーン樹脂に関しては例えば特開平10−228249号公報や特許2927279号公報、特開2001−36147号公報などで封止剤への使用、特開2000−123981号公報において波長調整コーティングへの使用が試みられている。
【0060】
光取り出し効率の面から、蛍光体含有層に含有される樹脂は膜厚1mmでの350nm以上500nm以下の発光波長における光透過率が、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、また通常98%以下である。
【0061】
封止部材には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0062】
(蛍光体)
本発明の白色半導体発光装置に用いられる蛍光体は、上述の発光ダイオード素子からの光、すなわち近紫外光により励起される下記の赤色、黄色、緑色、および青色蛍光体等が挙げられ、これらより選択される1種以上を単独で、または2種以上を任意の組み合わせおよび任意の比率で使用することができる。
【0063】
蛍光体の組成には特に制限はないが、母体結晶となる、Y、YVO、ZnSiO、YAl12、SrSiO等に代表される金属酸化物、(Ca,Sr)AlSiN等に代表される金属窒化物、Ca(POCl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、YS、LaS等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。表1に、好ましい結晶母体の具体例を示す。
【0064】
なお、本発明の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0065】
【表1】

【0066】
但し、上記の母体結晶及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0067】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0068】
[橙色ないし赤色蛍光体]
橙色ないし赤色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
この際、同色併用蛍光体である橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0069】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
【0070】
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0071】
[青色蛍光体]
青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、好ましくは430nm以上、より好ましくは440nm以上、また、通常500nm未満、好ましくは490nm以下、より好ましくは480nm以下、さらに好ましくは470nm以下、特に好ましくは460nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0072】
以上の中でも、青色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましく、Sr10(POCl:Eu、BaMgAl1017:Euが特に好ましい。
【0073】
[緑色蛍光体]
緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上、また、通常550nm未満、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長が短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
【0074】
以上の中でも、緑色蛍光体としては、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0075】
[好ましい組み合わせ]
本発明の白色半導体発光装置を照明装置に用いる場合には、赤色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、青色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、緑色蛍光体としてY(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、または、(Ba,Sr)Si12:N:Euの組み合わせを用いることが好ましい。
【0076】
また、本発明の白色半導体発光装置を画像表示装置に用いる場合には、赤色蛍光体として(Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu、青色蛍光体として(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、緑色蛍光体として(Sr,Ba)SiO:Eu、(Si,Al)(O,N):Eu(β−sialon)、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnの組み合わせを用いることが好ましい。
[その他の蛍光体]
蛍光体としては、上述したもの以外の蛍光体を含有させることも可能である。例えば、蛍光体含有層自体をイオン状の蛍光物質や有機・無機の蛍光成分を均一・透明に溶解・分散させた蛍光性樹脂で形成することもできる。
【0077】
[蛍光体の粒径]
蛍光体含有層中の蛍光体の粒径は、発光ダイオード素子からの光が十分に散乱される粒径であることが好ましい。
蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で、通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲にある場合は、蛍光体含有層において、発光ダイオード素子から放射された光が充分に散乱される。また、発光ダイオード素子から放射された光が充分に蛍光体粒子に吸収されるため、波長変換が高効率に行なわれると共に、蛍光体から発せられる光が全方向に照射される。これにより、複数種類の蛍光体からの一次光を混色して所望の色(例えば、白色)にすることができると共に、均一な色と照度が得られる。一方、蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲より大きい場合は、蛍光体が蛍光体含有層の空間を充分に埋めることができないため、発光ダイオード素子から放射された光が充分に蛍光体に吸収されない可能性がある。また、蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より小さい場合は、蛍光体の発光効率が低下するため、照度が低下する可能性がある。
【0078】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有層での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0079】
なお、中央粒径(D50)および粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から求めることが出来る。重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られる
【0080】
[蛍光体の混合方法]
蛍光体粒子を封止部材に含有させる際の混合方法は特に制限されない。例えば、蛍光体粒子の分散状態が良好な場合であれば、上述の硬化性材料に後混合するだけでよい。即ち、硬化性材料と蛍光体とを混合し、これを塗設して層を作製すればよい。また、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合を硬化性材料として用いる場合、その硬化性材料中で蛍光体粒子の凝集が起こりやすいのであれば、加水分解前の原料化合物を含む反応用溶液(以下適宜「加水分解前溶液」という。)に蛍光体粒子を前もって混合し、蛍光体粒子の存在下で加水分解・重縮合を行なうと、蛍光体粒子の表面が一部シランカップリング処理され、蛍光体粒子の分散状態が改善される。
【0081】
なお、蛍光体の中には加水分解性のものもあるが、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いた場合には、塗布前の流体状態において、水分はシラノール体として潜在的に存在し、遊離の水分はほとんど存在しないので、そのような蛍光体でも加水分解してしまうことなく使用することが可能である。また、加水分解・重縮合後の硬化性材料を脱水・脱アルコール処理を行なってから使用すれば、そのような蛍光体との併用が容易となる利点もある。
【0082】
また、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用い、さらに、蛍光体粒子や無機粒子を硬化性材料に含有させる場合には、粒子表面に分散性改善のため有機配位子による修飾を行なうことも可能である。他の付加型シリコーン樹脂は、このような有機配位子により硬化阻害を受けやすく、このような表面処理を行なった粒子を混合・硬化することができない場合がある。これは、付加反応型シリコーン樹脂に使用されている白金系の硬化触媒が、これらの有機配位子と強い相互作用を持ち、ヒドロシリル化の能力を失い、硬化不良を起こす傾向があるためである。このような被毒物質としてはN、P、S等を含む有機化合物の他、Sn、Pb、Hg、Bi、As等の重金属のイオン性化合物、アセチレン基等、多重結合を含む有機化合物(フラックス、アミン類、塩ビ、硫黄加硫ゴム)などが挙げられる。これに対し、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、これらの被毒物質による硬化阻害を起こしにくい縮合型の硬化機構によるものである。このため、上記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、有機配位子により表面改質した蛍光体粒子や無機粒子、さらには錯体蛍光体などの蛍光成分との混合使用の自由度が大きく、蛍光体バインダや高屈折率ナノ粒子導入透明材料として優れた特徴を備えるものである。
【0083】
[蛍光体の濃度]
集積実装領域において、蛍光体含有層中の蛍光体の濃度は、発光ダイオード素子からの光が十分に吸収される濃度であることが好ましい。
具体的には、硬化性材料中における蛍光体の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、蛍光体含有層中の蛍光体総量(濃度)として、通常5重量%以上、好ましくは6重量%以上、より好ましくは7重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。発光ダイオードに最も近い領域では、発光ダイオードからの放射光を良く吸収・分散するために蛍光体含有層中の蛍光体濃度は20重量%以上とすることが好ましい。
【0084】
また、流体状の硬化性材料における蛍光体の濃度は、硬化性材料中の蛍光体の濃度が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化しない場合は硬化性材料における蛍光体の濃度は蛍光体含有層における蛍光体の濃度と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における蛍光体の濃度が蛍光体含有層における蛍光体の濃度と同様になるようにすればよい。なお、蛍光体含有層が複数層から構成されている場合は、上述の蛍光体濃度は、蛍光体含有層全体における平均蛍光体濃度の値である。
【0085】
蛍光体含有層の中の蛍光体濃度や濃度分布は、仕込みより計算できるほか、蛍光体含有層硬化物を化学溶解して蛍光体に特有な元素をICP分析したり、硬化物の断面を作製し、写真撮影後画像処理をおこなったりして求めることができる。以下に、画像処理による濃度分布を求める例を示す。
(1)LEDより蛍光体含有層を剥がし取り、カッターナイフなどで切断して深さ方向の観察が出来る断面を作製する。
(2)蛍光体含有層断面にブラックライトを照射し、蛍光体を各色に発光させた状態で写真を撮影する。
(3)断面写真を画像処理ソフトで処理し、RGB成分ごとに画像を分解して各蛍光体を強調した画像を取得し、蛍光体粒子の個数をカウントする。
(4)深さ方向の濃度分布を求める。
【0086】
4.白色半導体発光装置の構造
上述したように、本発明の白色半導体発光装置は、配線基板と、発光ダイオード素子と、これらを被覆する蛍光体含有層を少なくとも有するものであり、発光ダイオード素子が所定の集積密度で、一定の範囲に所定数以上集積実装されているものであれば、その構造は特に制限はなく、例えば反射部等を有するものであってもよい。また、例えば蛍光体含有層の形状を例えばドーム状等としてもよい。また蛍光体含有層をさらに可視光透光性樹脂でドーム状に覆って、レンズ機能を持たせてもよい。
【0087】
可視光透光性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができ、それらの中でも特にシリコーン樹脂が好ましい。これらは1種単独で、または2種以上を用いることができる。またさらに、可視光透光性樹脂には、必要に応じて粘度調整剤、拡散剤、紫外線吸収剤等の添加剤を1種または2種以上を任意の比率及び組み合わせで含有させてもよい。
【0088】
また、本発明の白色半導体発光装置における集積実装領域の面積は、25mm以上であることが好ましく、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは150mm以上である。また通常3600mm以下、好ましくは2500mm以下、より好ましくは2000mm以下である。上記範囲とすることにより、装置の小型化が可能であり、また十分な光束が得られる。
【0089】
5.白色半導体発光装置の光学・電気特性
本発明の白色半導体発光装置は、使用する蛍光体の種類、量を適宜定めることにより任意の白色に発光させることが可能である。
本発明の半導体発光装置は、全光束が80(lm)以上、好ましくは90(lm)以上、より好ましくは100(lm)以上である。
【0090】
光学・電気特性の測定は、まず、測定対象となる白色半導体発光装置を、測定精度が保たれるように、積分球内部に面した白色半導体発光装置以外の部分(配線基板やヒートシンクなど)は白色など反射効率の高い色とし、積分球などがついた分光光度計に取り付ける。この分光光度計としては、例えばオーシャンオプティクス株式会社製「USB2000」等が挙げられる。積分球を用いるのは、白色半導体発光装置から出射した全方向の光を計測し積分する、すなわち、計測されずに測定系外に漏れる光をなくすためである。
【0091】
次に、この白色半導体発光装置を点灯し、その発光スペクトル及び全光束(lm)を測定する。測定されたスペクトルは、通常蛍光体含有層から漏れ出た励起用の発光ダイオード素子からの光(以下、単に「励起光」と記す。)と、蛍光体により波長変換された光が重なって観測される。
全光束(lm)は発光スペクトルの観測された全波長領域において各波長ごとの光束を積分することにより求めることが出来る。また、消費電力(W)は、白色半導体発光装置に流れる電流(A)と電圧(V)の積をとることにより求めることが出来る。
そして、上記のようにして求めた全光束(lm)を消費電力(W)で除することにより、発光効率を求めることも出来る。
【0092】
また、白色半導体発光装置における投入電力量は、例えばn個の発光ダイオード素子を実装する場合、投入電力量(W)=電圧Vf×電流If×n(個)により求められる。なお、電流は、通常0(mA)以上200mA以下程度とすることができる。
【0093】
また、本発明の白色半導体発光装置の平均演色評価指数Raは80以上が好ましく、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは95以上である。これにより、演色性に非常に優れるものとすることができる。平均演色評価指数は、RaはJIS Z 8726により測定される。
【0094】
また、白色半導体発光装置から照射される光の色温度は、その用途等に応じて適宜選択されるが、通常2000K以上、好ましくは2500K以上、より好ましくは2700K以上であり、また通常12000K以下、好ましくは10000K以下、より好ましくは7000K以下である。この範囲内とすることにより、寒色、暖色の見え方が良好であり、照明装置等の用途に好適となる。
【0095】
白色半導体発光装置から放射される光のうち、発光ダイオード素子から放射される光のピーク強度は、放射光の可視光スペクトルの極大値の通常2倍以下であり、好ましくは1.5倍以下である。上記範囲とすることにより、発光効率を最適化することができる。なお、光の強度は、スペクトルから測定される。
【0096】
6.白色半導体発光装置の用途
本発明の白色半導体発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。本発明の白色半導体発光装置の用途の具体例として、例えば、従来のハロゲンランプ等の照明ランプの代替としてのランプ、薄型照明などといった種々の照明装置用の光源、内照式看板の光源(バックライト)が挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0098】
[参考例]
(配線基板の作製)
25mm×35mmの窒化アルミニウム基板上に、121個(11個×11個)のパッドパターンがマトリックス状に形成された配線基板を複数準備した。マトリクス状のパッドパターンは、列方向が並列、行方向が直列、すなわち11直列11並列となるように接続した。
該パッドパターンの位置は、発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数が表2に記載の値となるよう、それぞれ調整した。
【0099】
(発光ダイオード素子の形成)
発光ダイオード素子(以下、ベアチップ或いはチップと言う)としては、ピーク波長が405nm、半値幅30nmのInGaN半導体を発光層にしたものを用いた。このベアチップの主な仕様は次のとおりであり、以下のようにして作製した。
発光部の構造:InGaN井戸層/GaN障壁層を6ペア積層したMQW構造
転位密度低減化の手法:ファセットLEPS法
ベアチップの外形:350μm×350μm方形
【0100】
C面サファイア基板上にフォトレジストによるストライプ状のパターニングを行い、RIE装置で1.5μmの深さまで断面方形となるようエッチングし、表面がストライプ状パターンの凹凸となった基板を得た。該パターンの仕様は、凸部幅3μm、周期6μm、ストライプの長手方向は、基板上に成長するGaN系結晶にとって〈11−20〉方向とした。
【0101】
フォトレジストを除去後、通常の横型常圧の有機金属気相成長装置(MOVPE)に基板を装着し、窒素ガス主成分雰囲気下で1100℃まで昇温し、サーマルクリーニングを行った。温度を500℃まで下げ、III族原料としてトリメチルガリウム(以下、TMGと言う。)を、N原料としてアンモニアを流し、表面凹凸を形成したC面サファイア基板上に厚さ30nmのGaN低温成長バッファ層を成長させた。
【0102】
続いて、温度を1000℃に昇温し、原料(TMG、アンモニア)、ドーパント(シラン)を流し、GaN低温成長バッファ層上にn型GaN層(コンタクト層)を成長させた。このときのGaN層の成長は、凸部の上面、凹部の底面から、断面山形でファセット面を含む尾根状の結晶として発生した後、凹部内に空洞を形成することなく、全体を埋め込む成長であった。
【0103】
ファセット構造を経由して平坦なGaN埋め込み層を成長し、続いて、n型AlGaNクラッド層、InGaN発光層(MQW構造)、p型AlGaNクラッド層、p型GaNコンタクト層を順に形成し、発光波長405nmのLED用エピ基板とし、さらに、n型コンタクト層を表出させるためのエッチング加工、電極形成、350μm×350μmのチップへと素子分離を行い、ベアチップ状態の発光ダイオード素子を得た。
【0104】
上記各配線基板上にバンプボンダーによる、発光ダイオード素子の電極位置相当にスタッドバンプを形成し、そのスタッドバンプ上に発光ダイオード素子を、フリップチップボンダーを用いて実装した。このときの単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数単位面積当たりの個数、及び各発光ダイオード素子間の隙間を表2に示す。蛍光体を含有しない封止材として、下記の封止材液(無溶剤のシリコーン樹脂)のみを、チップ実装領域全面に、1.2mm塗設した。
1発光ダイオード素子あたりの駆動電流値を20mAと設定したため、各配線基板には、発光ダイオード素子が11直列接続されているので、220mAの電流が流れたことになる(このときの投入電力量は約8W)。表2に、通電時における電圧(Vf)、放射束(W)、及び外部量子効率(%)を示す。
【0105】
【表2】

【0106】
光学・電気特性の測定は、ラボスフェア社製10インチ積分球LMS−100により行なった。
外部量子効率は、測定した全放射束を印加エネルギー(405nm相当のeV)で除すことから計算から求めた。
【0107】
[実施例]
・封止材液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を385g、メチルトリメトキシシランを10.28g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.791gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた500ml三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間500rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0108】
続いて留出をリービッヒコンデンサ側に接続し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、500rpmにて1時間攪拌した。窒素をSV20で液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ5.5時間重合反応を継続し、粘度389mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のNを吹き込むことをいう。
【0109】
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、粘度584mPa・sの無溶剤の封止材液を得た。
【0110】
(蛍光体含有層の形成)
参考例と同様の上記発光ダイオード素子及び配線基板を覆うための各色蛍光体含有層形成ペーストを以下の配合により作成した。
青ペースト 青色蛍光体 30.0重量%
緑ペースト 緑色蛍光体 12.5重量%
赤ペースト 赤色蛍光体 5.0重量%
(重量%は熱硬化性のシリコーン封止樹脂に対する割合)
青色蛍光体としては、Ba0.7Eu0.3MgAl1017、主発光ピークのピーク波長457nm、重量メジアン径11μmを用い、
緑色蛍光体としては、Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO4、主発光ピークのピーク波長525nm、重量メジアン径20μmを用い、
赤色蛍光体としては、(Sr0.8Ca0.2)AlSiN:Eu、主発光ピークのピーク波長628nm、重量メジアン径13μmを用いた。
シリコーン封止樹脂は、上記封止材液を用いた。
【0111】
調合後、分散性を高めるために自転公転型真空脱法機にて分散した。
各色の塗設は、塗設したい平面形状にくり貫かれたマスクにチップが実装された基板を密着させ、上記ペーストをスキージによって塗設することのできる真空印刷装置を使用した。最初に赤ペーストをチップ実装領域全面に塗設し、100℃1分間加熱しタックフリー状態の塗膜を形成し、次に緑ペーストを印刷、赤ペーストと同様に100℃1分間加熱し、その後、同様の過程で青ペースト層を形成した。尚、各ペーストの膜厚はマスクの厚みで調整することができ、ほぼどの層も、0.4mmであった。さらにその後、本硬化をするために150℃で1時間加熱し、発光ダイオードが実装された基板上に青色蛍光体層、緑色蛍光体層、赤色蛍光体層の3層構造を有する蛍光体含有層を形成した。
参考例と同様に1発光ダイオード素子あたりの駆動電流値を20mAとしたため、各配線基板には、発光ダイオード素子が11直列接続されているので、220mAの電流が流れたことになる。各実施例における白色半導体発光装置の消費電力(W)、放射束(W)、光束(lm)、発光効率(lm/W)、色温度(K)、平均演色指数(Ra)を表3に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
放射束、光学・電気特性測定は、ラボスフェア社製10インチ積分球LMS−100により行なった。発光効率は、光束を入力した電力で除することにより求めた。色温度及び平均演色指数はスペクトルから計算により求めた。
蛍光体を封止液に混入した場合は、透明封止材で被覆した場合に比べて、蛍光体の変換効率により、発光装置からの放射束は減少した。しかしながら、発光ダイオード素子間の隙間距離を適切に取ることにより、高い演色性を維持しつつ、所望の放射束、及び、発光効率を得られることが明らかになった。
【0114】
また、各実施例について、駆動電流を増加させた場合の、全放射束の変化を表4に示す。これらの関係を示すグラフを図8に示す。
【表4】

上記結果から、駆動電流を増加させると、全放射束が電流にほぼ比例して、頭打ちとなることなく増加することがわかる。
【0115】
また、各実施例について、駆動電流を増加させた場合の、全光束の変化を表5に示す。これらの関係を示すグラフを図9示す。
【表5】

上記結果から、駆動電流を増加させると、全放射束が電流にほぼ比例して、頭打ちとなることなく増加していることがわかる。
【0116】
また、各実施例について、駆動電流を増加させた場合の、色温度の変化を表6に示す。
【表6】

上記結果から、駆動電流を増加させても、色温度が安定していることがわかる。
【0117】
さらに、各実施例について、駆動電流を増加させた場合の、平均演色評価数の変化を表7に示す。
【表7】

上記結果から、駆動電流を増加させても、平均演色評価数は安定していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の白色半導体発光装置は、発光ダイオード素子が高集積されており、小型で大光束が取り出し可能である。したがって、例えば照明ランプや薄型照明などといった種々の照明装置用の光源、および液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の光源(バックライトおよびフロントライトなど)等として有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 …配線基板
2 …発光ダイオード素子
3 …蛍光体含有層
10…白色半導体発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
該配線基板に直接実装され、発光波長が360nm〜480nmの範囲内である複数の発光ダイオード素子と、
該発光ダイオード素子から放射される光によって励起されて発光する蛍光体を含有する蛍光体含有層とを有する白色半導体発光装置であって、
該発光ダイオード素子が、配線基板上の10cmの領域に100個以上集積実装されており、
該発光ダイオード素子の単位面積当たりの個数が16個/cm以上、1000個/cm以下に集積実装されており、
集積実装された該発光ダイオード素子が該蛍光体含有層により被覆されている
ことを特徴とする、白色半導体発光装置。
【請求項2】
該発光ダイオード素子が、フリップ実装されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の白色半導体発光装置。
【請求項3】
集積実装された該発光ダイオード素子の隣接する発光ダイオード素子間の隙間が、0.05mm以上、2.0mm以下である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の白色半導体発光装置。
【請求項4】
集積実装された該発光ダイオード素子が、電気的に直並列に接続されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項5】
蛍光体含有層中の該蛍光体の濃度が5重量%以上、90重量%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項6】
隣接する該発光ダイオード素子の中心間距離が、0.1mm以上、2.0mm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項7】
各発光ダイオード素子の面積が、20000μm以上、360000μm以下である
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項8】
該配線基板が放熱基板である
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項9】
該蛍光体含有層が、
該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、赤色の光を発光する赤色蛍光体を含有する層と、
該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、緑色の光を発光する緑色蛍光体を含有する層と、
該発光ダイオード素子から放射される光によって励起され、青色の光を発光する青色蛍光体を含有する層とが、
発光ダイオード素子側からこの順に積層されているものである
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の白色半導体発光装置を含む
ことを特徴とする、照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159770(P2011−159770A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19790(P2010−19790)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 応用物理学会中国四国支部、日本物理学会中国支部・四国支部、日本物理教育学会中国四国支部 2009年度支部学術講演会 平成21年8月1日 MES2009 エレクトロニクス実装学会 秋季大会 第19回マイクロエレクトロニクスシンポジウム 平成21年9月10日、11日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人 医薬基盤研究所「基礎研究推進事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける出願
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】