説明

白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器

【課題】従来の白色インキよりも薄い厚さでも、金属光沢部分を有していながら、必要な部分のみに見た目の白色度が高い白色を有するもので、従来の塗装装置をそのまま用い、従来と同一の操作で、塗装可能であり、金属面に対する密着性が従来のものと変わらず白色度の高い白色インキを有する金属製容器の提供。
【解決手段】有底円筒状のアルミニウム金属素地成形後、該円筒状金属素地外面に蛍光増白剤をインキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合したチタンホワイト系白色インキの厚さが0.2〜3.0μmである皮膜を形成し、更にその上にクリア塗料の厚さが2.5〜10μmである皮膜を設けた後、ネッキング加工およびフランジング加工またはネッキング加工、ネジ加工およびカール加工をすることを特徴とする金属製缶または金属製ボトル缶の製造方法および同方法により製造された金属製容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度に優れた塗膜面を有する金属製缶または金属製ボトル缶(両者を併せて「金属製容器」という。)に関するもので、同一厚みの塗膜厚みであっても高い白色度を有し、有用な装飾性と優れた商品価値とを有する金属製容器、特にアルミニウム製の金属製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトドリンク、コーヒー、ビール、各種茶類あるいはミネラル水等のための金属製容器の外表面には、内容物、その出所を表示し、また商品価値を高める目的で各種のデザインや印刷が施されている(特許文献1参照)。この印刷缶の側壁断面構造は、内面塗装された金属基体があり、その外面にボトル缶の場合はサイズと呼ばれる層(密着性向上のためのクリア塗料)を最下層に塗布するが、金属製缶の場合はサイズ塗装をせずに、印刷インキ層及び仕上げワニス層(クリア塗料)が順次設けられた構造となっている。この場合、印刷インキ層のデザイン効果を高めるために、白色度の高いインキを有する金属製容器の要求がなされてきた。
【0003】
従来、白色塗膜面を得る方法としては、チタンホワイト系白色ベースコート層を金属製容器の下地全面に下塗り塗装する方法とチタンホワイト系白色インキ層を塗装する方法が知られている。前者のチタンホワイト系白色ベースコート層を塗布する方法は白色度は高くなるが金属製容器表面全面が白くなり、金属光沢が欲しい部分まで金属光沢を完全に消してしまうので金属光沢部分を残した印刷の金属製容器には適用できないという問題がある。一方後者のチタンホワイト系白色インキ層を塗装する方法では、白色度が不十分とされていた。その対策として白色インキ層の厚さを厚く塗装すること、又は白色インキ中のチタンホワイトなどの白色顔料の配合量を高くすることが考えられる。
一般に白色インキは元々金属面に対する密着性が低く、その塗膜厚さを厚くすることは、より一層金属面に対する密着性を弱くして、ヒビ割れの発生や塗膜剥離を起こし易くする。また白色顔料の配合量を高めることは、インキのハンドリング特性を悪化させ、生産性を低下させる懸念がある。そこで、白色ベースコート処理を行わずに、従来のチタンホワイト系白色インキで白色度を高くすることが望まれている。従って、塗膜厚を厚くしたり白色顔料の配合量を高めることなく白色度の高い塗膜面を有する金属製容器の要求に応えようとするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−146221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の白色インキよりも薄い厚さでも、金属光沢部分を有していながら、白色度が高い白色インキを有するもので、従来の塗装装置をそのまま用い、従来と同一の操作で、塗装可能であり、金属面に対する密着性が従来のものに劣らず、白色度の高い白色インキを有する金属製容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1] 金属製容器の外面に、蛍光増白剤を配合したチタンホワイト系白色インキの皮膜が形成され、更にその上にクリア塗料の皮膜を設けたことを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器、
[2] 蛍光増白剤がチタンホワイト系白色インキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合されていることを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する上記[1]に記載の金属製容器、
[3] チタンホワイト系白色インキの皮膜の厚さが0.2〜3.0μmである上記[1]または[2]に記載の白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器、
[4] 金属製容器がアルミニウムである上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器、および
【0007】
[5] 有底円筒状の金属素地成形後、該円筒状金属素地外面に蛍光増白剤をインキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合したチタンホワイト系白色インキの皮膜を形成し、更にその上にクリア塗料の皮膜を設けた後、ネッキング加工およびフランジング加工またはネッキング加工、ネジ加工およびカール加工をすることを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器の製造方法、を開発することにより上記の課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、蛍光増白剤を、インキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合したチタンホワイト系白色インキの皮膜、更にその上にクリア塗料の皮膜を設けた金属製容器を開発することにより、従来と同様に金属光沢部分を有し、必要な部分のみに白色度が高い白色インキを有するもので、従来の塗装装置をそのまま用い、従来と同一の操作で、塗装可能であり、金属面に対する密着性も従来のものと変わらず、白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器を提供することができた。
特に、従来は白色度を増すために白色インキを厚盛りする必要があった。白色インキを厚盛りするとその上面に形成されたクリア塗料が白色インキ層に吸われる量が増大し、その結果クリア塗料中に含まれている滑り剤(WAX)が白色インキ層中に多量に取り込まれ、クリア塗膜表面の滑り性が劣化し製缶搬送時の作業性に悪影響を及ぼす懸念がある。本発明においては従来製品に較べ白色度を増しているので白色インキ層の厚さを減少でき、クリア塗料中の滑り剤が白色インキ層に取り込まれる量を減らすことができるため、同一の白色度において滑り性を大きく改善できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「白色度」は、通常、色差測定のL値で評価することが多いが、本発明においていう「白色度」とは目視での評価を優先する。本発明は白色インキの黄色味をうち消して(b値)、見た目の白さがL値の数値以上に増して見える効果を有しており、白色顔料の配合を増して白くした場合や、白色塗料の塗膜厚みを厚くして白色度を増したものとは異なるものである。また、本発明では、白色度を高めるために採用されていた白色ベースコート層を下塗りする方法に較べ、金属製容器の材質がもたらす本来的な金属光沢部分を残すことができ、白色インキ塗布部は、白色ベースコート層塗膜以上に見た目が白く見えるという効果がある。
【0010】
本発明の対象となる金属製容器としての金属材質としては、アルミニウムが最も好適に使用出来る。他の金属であっても同様な効果は期待出来る。対象となる金属容器としては、ソフトドリンク、コーヒー、ビール、各種茶類あるいはミネラル水等のための金属製容器があり、その模様やデザインの装飾性を高め、製品価値を高めた金属製容器とするためには白色インキの見た目の白さも一つの重要なポイントとなっている。
【0011】
本発明の白色インキとしては、従来の白色インキをベースとし、これに特定量の蛍光増白剤を配合するだけでよい。従来の白色インキは、一般的に塗膜形成主要素として不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられているが、これらのいずれにおいても問題なく使用出来る。白色顔料としてはチタンホワイトを主剤として用いられたものを使用する。
【0012】
配合する蛍光増白剤としては、塗料の焼き付け温度において安定であり、且つ食品衛生法、化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)、労働安全衛生法、毒物および劇物取締法に該当しない蛍光増白剤であることが必要である。蛍光増白剤としては特に限定されるものではないが、耐熱性を考慮して、例えば3−フェニルー7−(2H−ナフト[1,2−d]−トリアゾール−2−イル)クマリン、2,2’−(2,5−チオフェンディイル)ビス(5−t−ブチルベンゾオキサゾール)などがあり、これらの中から選択して使用する。
【0013】
これら蛍光増白剤をインキ中の固形分に対して0.1〜2.0%(重量)、好ましくは0.4〜0.7%配合したものを使用する。0.1%未満の場合には増白効果が不十分であり、2.0%を超えてもその増白効果は変わらない。また十分な白色度を確保するために、塗膜厚さとして0.2〜3.0μm、好ましくは0.5〜1.5μmの皮膜とする。白色インキの塗膜厚が0.2μm未満では、白色度が不十分であり、3.0μmを超えても白色度に大差はない。
【0014】
金属製容器においては、印刷用インキの上にクリア塗装がなされている。クリア塗装は缶胴の略全面を確実に被覆することが必要である。従って印刷用インキは、クリア塗装の皮膜で被覆されることになる。クリア塗装の皮膜は印刷面の保護のために、厚さ2.5〜10μm、好ましくは5〜8μmを形成する。この厚さに被覆がなされると印刷インキを確実に保護し、クリア塗装の塗膜剥離も防止でき、また、容器表面の滑性も良い。クリア塗装の塗膜厚が2.5μm未満では、缶搬送時に缶同士が衝突した箇所の塗膜剥離が懸念され、加えて、表面滑性が不足するので缶搬送時の缶詰まりも懸念される。クリア塗膜が10μmを超えると、塗装後におけるネッキング等の加工時に塗膜剥離が懸念され、加えて、缶製造時の経済性が悪化する。これらインキの印刷はオフセット印刷で行う。
【0015】
本願発明に係る金属製容器は、金属がアルミニウム合金である場合には、図1に示すようなフローで製造される。即ち、アルミニウム合金板材からブランクを打ち抜き、これをアルミカップに成形し、絞り・しごき成形を行って有底円筒形成形体とする。次いで予備脱脂、脱脂洗浄、化成処理、水洗、乾燥を行って有底円筒状の金属素地を得る。この金属素地の外面に、蛍光増白剤を配合したチタンホワイト系白色印刷インキを含めて複数の色のインキで印刷を行い、クリア塗装を塗布し、更にこれらの塗料の焼き付けを行う。次に内面スプレー塗装、焼き付け、金属製缶の場合にはネッキング加工およびフランジング加工、金属製ボトル缶の場合にはネッキング加工、ネジ加工およびカール加工と二次洗浄を行い製品とする。
【実施例】
【0016】
[塗膜性能評価方法]
1)塗膜厚み:アドミタンスゲージでインキ塗膜及びクリア塗装の厚みを測定。
2)静摩擦係数:面々法で、クリア塗装後のDI缶製品の無処理品、および80℃温水シャワー10秒した後50℃温水シャワー3分処理品したもの。
3)表面硬度:鉛筆硬度測定(三菱uni使用)。
【0017】
4)衝撃強度:デュポン衝撃強度(1/2ポンチ、高さ30cm、錘300gで実施(クリア塗装後の製品の無処理品および80℃温水シャワー10秒した後50℃温水シャワー3分処理品。)。
5)碁盤目剥離テスト:1mm間隔でカット(100マス)後、セロテープ(登録商標)密着を実施。剥離せずに残ったマス目で評価。
【0018】
6)折曲剥離:1mmφ芯棒で180°折り曲げ試験。
7)フリクションプレーヤー試験:製品となった金属容器を切り出し、平板に延-ばして、そこに3/16インチの鋼球(SUS)を錘1kgで押し当て、回転速度100rpmで平板を回転させて、塗膜が剥離するまでの回転数で評価。
[白色度評価方法]
1)Lab値:色差計にて測定。
2)目視評価基準:◎:好ましい、○:良い、×:不可で評価
【0019】
[実施例および比較例]
塗膜形成主要素としてアルキッド樹脂、顔料としてチタンホワイトを使用した本発明塗料に、蛍光増白剤として3−フェニルー7−(2H−ナフト[1,2−d]−トリアゾール−2−イル)クマリンを0.5%配合したチタンホワイト系白色インキ1μmをオフセット印刷で塗布し、その上にエポキシアクリル系クリア塗料を約6.0μmオフセット印刷で塗布し、190℃で1分加熱後、200℃で1分加熱して焼付を行った。缶材として、350ml、アルミ板の材質がA3004−H19のアルミニウム缶を使用した。
比較例として、従来の白色インキを1.5μm塗装した他は、同一の方法により処理した。
【0020】
上記で製作したアルミニウム缶を、前記の[塗膜性能評価方法]及び[白色度評価方法]により測定した。結果を表1および表2に示す。
【表1】

【0021】
表1から明らかな如く、本願発明の白色インキによる塗膜は、従来インキによる塗膜と比較し同等の塗膜性能を有しつつ静摩擦係数において一段と優れているものである。
【0022】
【表2】

【0023】
表2から明らかなように、本願発明の白色インキによる塗膜は、従来インキによる塗膜と比較し、L値及びa値において差は無いもののb値において異なり(黄色味が少ない)、目視評価において白色度が極まって評価される。又、白色度が高いと評価されているベースコート皮膜と比較してもb値の値が低いものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、従来の白色インキと同一厚みの塗膜厚みであっても金属光沢部分を有していながら、必要な部分のみに見た目の白色度が高い白色インキを有するもので高い白色度を有し、有用な装飾性と優れた商品価値とを有する金属製容器、特にアルミニウム製の金属製容器を提供するものである。従来の塗装装置をそのまま用い、従来と同一の操作で、塗装可能であり、金属面に対する密着性が従来のものと変わらず、白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】アルミニウム製容器製造のフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製容器の外面に、蛍光増白剤を配合したチタンホワイト系白色インキの皮膜が形成され、更にその上にクリア塗料の皮膜を設けたことを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器。
【請求項2】
蛍光増白剤がチタンホワイト系白色インキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合されていることを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する請求項1に記載の金属製容器。
【請求項3】
チタンホワイト系白色インキの皮膜の厚さが0.2〜3.0μmである請求項1または2に記載の白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器。
【請求項4】
金属製容器がアルミニウムである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器。
【請求項5】
有底円筒状の金属素地成形後、該円筒状金属素地外面に蛍光増白剤をインキ中の固形分に対して0.1〜2.0重量%配合したチタンホワイト系白色インキの皮膜を形成し、更にその上にクリア塗料の皮膜を設けた後、ネッキング加工およびフランジング加工またはネッキング加工、ネジ加工およびカール加工をすることを特徴とする白色度に優れた塗膜面を有する金属製容器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−186232(P2007−186232A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5783(P2006−5783)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000186854)昭和アルミニウム缶株式会社 (155)
【Fターム(参考)】