説明

白色LED光源ユニット

【課題】
演色性の調製が可能で、高出力化されて発熱量が多くなっても熱の影響により封止用樹脂が変質劣化しないようにする。
【解決手段】
回路基板(2)上に発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのLEDチップ(3)が樹脂封止され、封止用樹脂として用いる透光性アモルファスフッ素樹脂に、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物からなる赤色蛍光体(F)と、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物からなる緑色蛍光体(F)と、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物からなる青色蛍光体(F)を分散させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色光を出力する白色LED光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LED(発光ダイオード)を用いて白色光を照射させる場合は、大きく二つの方式がある。
第一の方式は、RGB発光方式であり、赤色LEDチップ、緑色LEDチップ及び青色LEDチップを一つの回路基板上に近接して搭載し、同時に点灯することにより、RGBを混色させて白色を発光させるタイプである。
このタイプは、色再現性が比較的優秀で、青色、緑色及び赤色LEDの光量調節により全体的な出力光制御が可能であるというメリットを有するが、各色LEDチップを近接して配するといっても、ある程度の物理的な距離は必要であるから、色均一性に問題があり、また、少なくともR、G、B三つのLEDチップが必要であるため、これらを駆動制御するための回路構成が複雑になるというデメリットもある。
【0003】
第二の方式は、励起光となる一つのLEDチップに対し、その光により白色光を発する白色蛍光層を形成するタイプである(特許文献1参照)。
このタイプは、LEDチップを封止する樹脂に蛍光体を分散させたり、その封止樹脂の表面に蛍光層を形成するものが提案されており、回路構成が簡単で、価格も安いというメリットを有し、従来問題とされていた色再現性も向上されている。
【0004】
しかしながら、これらは、例えば青色LEDチップに、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を用いているため、演色性が劣るという問題があった。
もちろん、紫外線励起光を用いて、例えば赤色蛍光体、緑色蛍光体色、青色蛍光体の三種類の蛍光体を用いれば演色性の向上が期待でき、特許文献1にもその示唆はあるが、そのよう蛍光体として何を用いるかについて具体的な記載はない。
【0005】
また、白色LED光源ユニットは、主として、照明用、液晶ディスプレイのバックライトとして使用されることから、高出力化の要請が高く、出力を高くすればするほどLEDチップからの発熱量も多くなるという問題が生じた。
多くのLED光源ユニットは、回路基板に搭載されたLEDチップを樹脂封止しており、例えば、その封止用樹脂が熱により変質劣化してしまうため、LEDチップ自体の発光寿命は半永久的であってもLED光源ユニットとしての寿命が短縮されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−78659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、演色性の調製が可能で、高出力化されて発熱量が多くなっても熱の影響により封止用樹脂が変質劣化しないようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、請求項1の発明は、回路基板上に搭載されたLEDチップが樹脂封止され、当該LEDチップから照射された光で励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を分散させた白色蛍光層が形成された白色LED光源ユニットにおいて、前記LEDチップとして発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのものが用いられ、封止用樹脂として透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、前記白色蛍光層は封止用樹脂に各色蛍光体を分散して形成され、前記赤色蛍光体が、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とし、前記緑色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物を主成分とし、前記青色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とすることを特徴としている。
また、請求項2の発明は、白色蛍光層を封止用樹脂の表面に薄膜状に形成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、封止用樹脂として用いられているアモルファスフッ素樹脂は耐熱性及び光透過性に優れているので、LEDチップの高出力化に伴い発熱量が増大してもその影響で封止用樹脂が劣化することがない。
また、封止用樹脂に、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物で成る赤色蛍光体と、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物で成る緑色蛍光体と、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物で成る青色蛍光体が分散されている。
これらは、いずれも350〜400nmの励起光でぞれぞれ赤色光、緑色光、青色光の蛍光を発するため、発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmにあるLEDチップを用いれば、その光は必ず封止用樹脂を透過する際に各蛍光体に照射されて三原色の光が生じ、これらが混色されて白色光が照射されることとなる。
また、各色蛍光体の比率を変えることにより、赤っぽい白、青っぽい白というように発光色を調整することができ、演色性の調整も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る白色LED光源ユニットの一構成例を示す説明図。
【図2】白色光の蛍光スペクトル線図。
【図3】他の実施形態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本例では、演色性の調製が可能で、高出力化されて発熱量が多くなっても熱の影響により封止用樹脂が変質劣化しないようにするという目的を達成するために、回路基板上に搭載されたLEDチップが樹脂封止され、当該LEDチップから照射された光で励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を分散させた白色蛍光層が形成された白色LED光源ユニットにおいて、前記LEDチップとして発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのものが用いられ、封止用樹脂として透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、前記白色蛍光層は封止用樹脂に各色蛍光体を分散して形成され、前記赤色蛍光体はガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とし、前記緑色蛍光体はバリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物を主成分とし、前記青色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とした。
【実施例1】
【0012】
図1に示す白色LED光源ユニット1は、回路基板2上にLEDチップ3が搭載されて樹脂封止され、当該LEDチップ3から照射された光で励起される赤色蛍光体F、緑色蛍光体F及び青色蛍光体Fを分散させた白色蛍光層4が形成されて成る。
回路基板2は、LEDチップ装着面2aがLED発光面3aからの照射角θに応じたテーパ面2bで囲まれて立体的に形成されており、そのテーパ面2bで角錐状又は円錐状の凹部2cが形成されている。
【0013】
LEDチップ3は、発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのものが用いられ、前記LEDチップ装着面2aに搭載されてワイヤボンディングされ、前記テーパ面2bで囲まれた凹部2cが封止用樹脂Pで樹脂封止されている。
この封止用樹脂Pとしては、透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、本例では、
化学式:(C10O)n−COOH
の金属結合性を有する非晶質フッ素樹脂サイトップ(旭硝子株式会社の商品名)が用いられている。
【0014】
白色蛍光層4は、封止用樹脂Pに赤色蛍光体F、緑色蛍光体F、青色蛍光体Fが分散されて形成されている。
赤色蛍光体Fとしては、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物が用いられ、その蛍光スペクトルは、図2のスペクトル線Sで示すように、ピーク波長が350〜400nmの励起光Sを照射したときに、赤色領域の約630nm及び705nmにピーク波長を有する。
緑色蛍光体Fとしては、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物が用いられ、その蛍光スペクトルは、図2のスペクトル線Sで示すように、ピーク波長が350〜400nmの励起光Sを照射したときに、緑色領域の約520nmにピーク波長を有する。
青色蛍光体Fとしては、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物が用いられ、その蛍光スペクトルは、図2のスペクトル線Sで示すように、ピーク波長が350〜400nmの励起光Sを照射したときに、青色領域の約450nmにピーク波長を有する。
【0015】
本例の封止用樹脂Pとして用いられているアモルファスフッ素樹脂は耐熱性に優れているので、LEDチップの高出力化に伴い発熱量が増大してもその影響で劣化することがない。
また、封止用樹脂Pに、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物で成る赤色蛍光体Fと、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物で成る緑色蛍光体Fと、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物で成る青色蛍光体Fが分散されて白色蛍光層4が形成されている。
これらは、いずれも350〜400nmの励起光でそれぞれ赤色光、緑色光、青色光の蛍光を発するため、発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmにあるLEDチップ3を用いれば、その光は必ず白色蛍光層4を透過することとなり、その際に、各色蛍光体F、F、Fに照射されて三原色の光が生じ、これらが混色されて白色光が照射されることとなる。
また、各各色蛍光体F、F、Fの混合比を変えることにより、赤っぽい白、青っぽい白というように発光色を調整することができ、演色性の調整も可能となる。
【実施例2】
【0016】
図5は本発明に係る他の実施形態を示し、図1と共通する部分は同一符号を付して詳細説明は省略する。
本例の白色LED光源ユニット11は、回路基板2上に発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのLEDチップ3が搭載されて樹脂封止され、当該LEDチップ3から照射された光で励起される赤色蛍光体F、緑色蛍光体F及び青色蛍光体Fを分散させた白色蛍光層14が形成されて成る。
【0017】
封止用樹脂Pとしては、透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、本例では、
化学式:(C10O)n−COOH
の金属結合性を有する非晶質フッ素樹脂サイトップ(旭硝子株式会社の商品名)が用いられている。
【0018】
そして、この封止用樹脂Pの表面に薄膜上の白色蛍光層14がコーティング等により形成されている。
白色蛍光層14は、封止用樹脂Pに接着可能な透光性樹脂基材に、赤色蛍光体F、緑色蛍光体F及び青色蛍光体Fが分散されて形成されており、各色蛍光体F、F、Fとしては実施例1のものと同じものが用いられている。
【0019】
本例の封止用樹脂Pとして用いられているアモルファスフッ素樹脂は耐熱性に優れているので、LEDチップ3の高出力化に伴い発熱量が増大してもその影響で劣化することがない。
また、封止用樹脂Pの表面に白色蛍光層14が形成されているので、LEDチップ3の熱が白色蛍光層14に直接伝わることがなく、その熱の影響を受け難い。白色蛍光層14の基材樹脂として、封止用樹脂Pと同様の耐熱性に優れたものを用いればより好ましいことはもちろんである。
【0020】
さらに白色蛍光層14は封止用樹脂Pにコーティングされているので、LEDチップ3から照射されたピーク波長が350〜400nmの励起光は必ず白色蛍光層14を透過し、その際に、各色各色蛍光体F、F、Fに照射されて三原色の光が生じ、これらが混色されて白色光が照射されることとなる。
さらにまた、各各色蛍光体F、F、Fの混合比を変えることにより、赤っぽい白色光、青っぽい白色光というように発光色を調整することができる点も実施例1と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上述べたように、本発明は、白色光を照射する白色LED光源ユニットの用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 白色LED光源ユニット
2 回路基板
3 LEDチップ
4 白色蛍光層
赤色蛍光体
緑色蛍光体
青色蛍光体
P 封止用樹脂


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上に搭載されたLEDチップが樹脂封止され、当該LEDチップから照射された光で励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を分散させた白色蛍光層が形成された白色LED光源ユニットにおいて、
前記LEDチップとして発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのものが用いられ、
封止用樹脂として透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、前記白色蛍光層は封止用樹脂に各色蛍光体を分散して形成され、
前記赤色蛍光体が、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とし、
前記緑色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物を主成分とし、
前記青色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とすることを特徴とする白色LED光源ユニット。

【請求項2】
回路基板上に搭載されたLEDチップが樹脂封止され、当該LEDチップから照射された光で励起される赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体を分散させた白色蛍光層が形成された白色LED光源ユニットにおいて、
前記LEDチップとして発光スペクトルのピーク波長が350〜400nmのものが用いられ、
封止用樹脂として透光性アモルファスフッ素樹脂が用いられ、前記白色蛍光層は封止用樹脂の表面に各色蛍光体を分散させた薄膜で形成され、
前記赤色蛍光体が、ガドリニウムオキシサルファイド(GdS)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とし、
前記緑色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)とマンガン(Mn)の混合物を主成分とし、
前記青色蛍光体が、バリウムマグネシウムアルミネイト(BaMgAl1627)とユウロピウム(Eu)の混合物を主成分とすることを特徴とする白色LED光源ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−35236(P2011−35236A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181350(P2009−181350)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(506308633)ユーヴィックス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】