皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための薬剤としてのトコフェリルホスフェートの使用
【課題】皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための薬剤としてのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物を提供する。
【解決手段】皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に、特にリポソームに被包されている、化粧品組成物。
【解決手段】皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に、特にリポソームに被包されている、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にdl若しくはd形態、又は化粧品の分野において化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル又は塩の形態でのトコフェリルホスフェートの新規な使用に関し、また前記トコフェリルホスフェートを含有する組成物及びその化粧品としての使用方法に関する。
【0002】
皮膚は日々大きな機械的ストレスに曝されている。
【0003】
観察によると、皮膚の老化は、皮膚表層における細胞密度の損失につながることが示されている。
【0004】
この細胞の欠乏によりもたらされる組織材料(コラーゲン及び他の真皮マトリックスタンパク質)の損失は、組織の結合性の低下、さらに細胞層の減少による表皮の薄層化として反映される。
【0005】
皮膚が曝されるストレス、特にUV照射は、多数の表皮細胞及び真皮細胞の分解及び自然排除へとつながる。
【0006】
特に、真皮の老化の主要な現象を理解するために行われた多くの組織学的観察により、光照射を受けた皺領域では真皮細胞密度の損失があると結論付けることができるようになった。
【0007】
この損失は、老化の間に観察される組織材料(コラーゲン並びにその他の真皮マトリックス及び真皮−表皮接合部のタンパク質)の損失を概ね説明するものであるが、これはこの材料が細胞の欠乏により産生されず皺の下に蓄積され得ないからである。
【0008】
表皮層の皺の下でもこの細胞の減少が観察され(Contet−Audonneauら、ヒトの皺の構造の組織学的研究:皺のある又は皺のない顔面の日光照射部と日光遮蔽部の比較(A histological study of human wrinkle structures: comparison between sun−exposed areas of the face,with or without wrinkles,and sun−protected areas)、Br J Dermatol.1999 June;140(6):1038〜47)、組織学的なレベルでは、皺のくぼみにおける細胞層の減少による表皮の薄層化として反映される。
【0009】
この現象には、最も具体的には表皮基底層の細胞が関与する。
【0010】
事実、若い皮膚の真皮−表皮接合部(DEJ)の大きな起伏は多数の基底細胞を支持しているが、DEJのこれらの起伏は加齢と共に消失し、この界面はわずかの基底細胞を支持するのみとなる。
【0011】
さらに、予備的観察によると、光照射を受けた皺領域において、基底細胞数の減少という同様の現象が生じることが示唆されている。
【0012】
特に表皮の基底層の細胞に影響するこの現象は、これらの細胞が表皮細胞の形成及び新生を確実にし、また「表皮幹細胞」の分裂から発生するため、重要である。
【0013】
これらの表皮幹細胞は、表皮の基底層に存在し、無限に分裂して「娘」細胞を生むことができる特殊性を持つ、高い再生能を有する細胞であるとされている。
【0014】
したがって、光による皮膚の老化の間観察されるような表皮における細胞密度の損失を防止又は遅延するためには、表皮の基底層におけるこれらの表皮幹細胞を維持することが主な目標となる。
【0015】
出願人は、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル若しくは塩の形態のトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを使用した処理により表皮の幹細胞を保護できることを明らかにした。
【0016】
トコフェリルホスフェートは、特許出願国際公開第91/11189号パンフレットにおいて、皮膚アレルギー又は気管支若しくは炎症性喘息等のアレルギー発症の防止又は治療用、或いはその他フリーラジカルの有害な作用の防止又は治療用の薬学的組成物又は化粧品組成物又は皮膚用組成物の調製における使用に関して、出願人により記載された分子である。
【0017】
本出願の発明者による研究により、トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを、表皮の基底細胞及びその表皮幹細胞(分裂して多くの世代の「娘」細胞を生み出すことができ、したがって表皮再生にプラスの影響を与えることができる唯一の細胞)の保存を目的とする化粧品組成物における活性薬剤として使用することができ、表皮の様々な層における十分な細胞密度の維持と、これらの細胞が産生するタンパク質成分の維持として反映されることが示されている。
【0018】
したがって、本発明は、化粧品組成物における、特にUV照射の作用に関連した皮膚の老化を防止又は遅延するための有効薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル若しくは塩の形態のトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートの使用に関する。
【0019】
第2の態様によれば、本発明はまた、上に定義されたトコフェリルホスフェートを含有する新規な化粧品組成物に関する。
【0020】
第3の態様によれば、本発明はまた、活性薬剤としてトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを含有する組成物を、関与する皮膚の部分に施用することにより、皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法に関する。
【0021】
より具体的には、第1の態様の本質的な特質によれば、本発明は、化粧品組成物における、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの使用であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に被包されている使用に関する。
【0022】
第2の態様の本質的な特質によれば、本発明は、脂質小胞が存在する連続水相より成るか又は該連続水相を含み、特に上に定義された化粧品として許容できるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的にこれらの脂質小胞に組み込まれ、前記組成物が少なくとも1種の水溶性多糖類も含む、化粧品組成物に関する。
【0023】
したがって、本発明の第2の態様の主題である新規な化粧品組成物は、水相に含有される脂質小胞に少なくとも部分的に含まれるトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを含有する。
【0024】
この第2の態様は、2つの変形形態を含む。
【0025】
第1の変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在する水相より成る。
【0026】
この第2の態様の第2の変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在し、より具体的には水中油型エマルジョンの形態である連続水相を含有する。
【0027】
新規な組成物の2つの変形形態において、脂質小胞は、特にそれらがリポソームである場合、水相中でアルギネートの存在により安定化される。
【0028】
最後に、第3の態様の本質的な特質によれば、本発明は、上に定義されたトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法を包含する。
【0029】
本発明によれば、その全ての態様に関して、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0030】
本発明の他の特質及び利点は、後述の説明及び実施例に示され、また実施例において参照される図1から図8においても示されている。
【0031】
本発明の様々な態様において、トコフェリルホスフェートは、とりわけdl形態若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態である。
【0032】
特に有利な変形形態によれば、トコフェリルホスフェートはα−トコフェリルホスフェートである。
【0033】
トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートは、アルカリ金属塩、特に一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩、及び、アンモニウム塩又は第1級、第2級若しくは第3級アミン、例えば特にジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン若しくはトリエタノールアミンの塩より成る群から選択される、化粧品として許容できる塩の形態であってもよい。
【0034】
本発明の第1の態様により包含される使用は、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延しようとする全ての使用である。
【0035】
本発明は、トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートが、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための注目すべき化粧薬剤として機能するという、発明者らによる発見の結果である。
【0036】
上記トコフェリルホスフェートが導入される化粧品組成物は、特に、顔面の皺の形成を防止若しくは遅延する、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化することを可能にする。
【0037】
上述のように、本発明の第1の態様に包含される使用は、化粧品組成物の種類とは無関係に、皮膚の老化に効く薬剤としてのトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートの使用であり、一方で、ある組成物、特に脂質小胞及び少なくとも1種の多糖類を含有する水相を含有する組成物は、新規な産物として請求される。このため、以降、第1の態様により包含され、以後「本発明の組成物」と称される組成物と、第2の態様により包含され、「本発明の新規な組成物」と称されるの組成物との間で区別がなされる。
【0038】
したがって、その使用が本発明により包含される化粧品組成物は、全ての種類のものとなることができる。
【0039】
しかし、有利な変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在する水相より成るか又はそれを含む。
【0040】
脂質小胞は、単層であっても多重層であってもよく、好ましくは多重層脂質小胞である。
【0041】
本発明に従い使用される脂質小胞は、脂質小胞の懸濁液としてレーザ粒度分布測定により測定するか、又は凍結切片法でのサンプル調製による透過型電子顕微鏡により測定して、約150μmから200μmの直径を有する。
【0042】
本発明によれば、脂質小胞を形成する脂質は、両親媒性脂質、すなわち、親水基(イオン性か非イオン性かにかかわらない)と親油基とを有する分子より成る。
【0043】
本明細書及び請求項において、「脂質」という用語は、親油基、つまり5個を超える炭素原子を含有する「脂肪族」炭素鎖を含む全ての物質を包含する。
【0044】
同様に、本発明の目的において、「脂肪アルコール」という用語は、炭素鎖が少なくとも5個の炭素原子を含有するアルコールを意味するよう意図される。
【0045】
両親媒性脂質は、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、又はこれらの脂質の混合物であってもよい。そのような物質は、例えば、卵若しくは大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、又はオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る。
【0046】
リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、又はそれらの混合物であってもよい。
【0047】
脂質小胞の二重層は、好ましくはレシチン由来、特に大豆レシチン由来のリン脂質より成る。
【0048】
好ましい実施形態において、これらのリン脂質は2種類の大豆レシチンの混合物であり、大豆レシチンの第1の種類は、90%を超えるホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物であり、第2の種類は15%から30%の間のホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物である。
【0049】
本発明の脂質小胞に使用されるものに従ったレシチンは、例えば、ルーカスマイヤー(Lucas Meyer)社によりEmulmetik(登録商標)300及びEmulmetik(登録商標)930の商標で販売されている。
【0050】
有利な変形形態によると、トコフェリルホスフェートは、少なくとも部分的にこれらの脂質小胞に被包されている。
【0051】
本発明によれば、概して、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0052】
本出願の発明者らには、水相が分散体としてリポソームを含有する水中油型分散液の水相における水溶性多糖類の存在が、これらのリポソームの安定性を顕著に増加させることを可能にすることが明らかとなり、これはまた本出願の出願日と同じ日に出願される第2の特許出願の主題である。
【0053】
概して、本発明の組成物において、十分な量の水溶性形態の少なくとも1種の多糖類の存在が、脂質小胞の安定性、特にリポソームの安定性を改善することを可能にすることが今明らかとなった。
【0054】
水溶性形態の多糖類は、広範な水溶性多糖類から選択することができる。多糖類は、特に、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る群から選択することができる。
【0055】
セルロース誘導体のうち、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、酢酸セルロース又はメチルセルロースが特に選択される。
【0056】
ガムのうち、キサンタンガム又はグアーガムが特に選択される。
【0057】
一方、アルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属、最も具体的にはナトリウム塩若しくはカリウム塩、又はそれらを含有する抽出物、例えば藻類抽出物が、有利に選択される。
【0058】
好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種のアルギン酸アルカリ金属と、水溶性形態の少なくとも第2の多糖類、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムとを含む。
【0059】
多糖類の濃度は、脂質小胞を分解から効果的に保護するように選択される。
【0060】
好ましくは、水溶性多糖類の総量は、組成物の0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間である。
【0061】
また、確実に組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が0.1から20の間、好ましくは1から10の間となるように注意する。
【0062】
少なくとも1種の水溶性多糖類を必然的に含む本発明による化粧品組成物はまた、好ましくはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーを有利に含有することができる。
【0063】
上に開示されたように、本発明の組成物は、有利には、前記脂質小胞及び前記トコフェリルホスフェートを含有する連続水相と、分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態である。
【0064】
脂質小胞を含有する本発明の組成物のうち、水中油型エマルジョンの形態の組成物が、目標とされる用途において特に有利であることが判明した。
【0065】
エマルジョンの形態のこれらの水性組成物は、その水相中に、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、上で定義された少なくとも1種の水溶性形態の多糖類とを有利に含有する。
【0066】
非イオン性界面活性剤は、有利には、異なるHLBを有利に有する脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテルの混合物より成る。
【0067】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物、特に式(A)のステアリルアルコールのエトキシル化誘導体及びそれらの混合物から選択される。
CH3(CH2)17(OCH2CH2)nOH (A)
【0068】
特に有利な実施形態において、非イオン性界面活性剤の混合物が使用され、1つはどちらかといえば実質的に親水性であり、2つ目はどちらかといえば実質的に親油性である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、Brij(登録商標)72の名前で販売され、HLB値が4.9である式(A)に従うステアレス−2(式中平均的にn=2)、及びBrij(登録商標)721Pの名前で販売され、HLB値が15.3である式(A)に従うステアレス−21(式中平均的にn=21)を含む非イオン性界面活性剤の混合物である。
【0070】
ステアレス−2/ステアレス−21の比率は、脂質小胞を分解することなくエマルジョンを安定化するように調節される。
【0071】
エマルジョン形態の本発明の組成物において、上に定義された可溶性形態の多糖類は、脂質小胞を界面活性剤の作用による分解から保護するために十分な量である。
【0072】
本発明のエマルジョンの脂肪相は、トリグリセリドを有利に含有する。
【0073】
本発明の変形形態によれば、この脂肪相はそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンであってもよい。
【0074】
また、化粧品組成物は、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーを含有してもよい。
【0075】
さらに、本発明による化粧品組成物は、他の水溶性親水性化合物を含んでもよい。
【0076】
可溶性分子は、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、ショ糖、ラクチトール、及びグリセロール又はそれらのエーテル若しくはエステルの1つ又は誘導体の1つから有利に選択されるC6又はC12糖であってもよい。
【0077】
これらの水溶性分子は、好ましくは植物抽出物から得られる。
【0078】
トコフェリルホスフェートに加えて、本発明による化粧品組成物は、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための、特に顔面の皺の形成を防止若しくは遅延するため、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化するための、1つ又は複数の他の活性物質を含んでもよい。
【0079】
皺を減少させるための物質としては、(Remixyl(登録商標))Matrixyl、特に(Remixyl)Matrixyl(登録商標)3000の名前で販売されているパルミトイルペンタペプチド−3、アオイ科植物抽出物(Vitactyl(登録商標))、トウモロコシ粒抽出物(Deliner(登録商標)、トウモロコシ穀粒抽出物)又はオート麦ふすま抽出物(Osilift(登録商標))を有利に使用することができる。
【0080】
最後に、本発明による組成物はまた、顔料、染料、レオロジー剤(rheological agent)、香料、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、及びそれらの混合物、テクスチャリング剤、及び抗日光剤(antisun agent)又は日焼け防止剤より成る群から選択される、1つ又は複数の化粧品として許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、化粧品組成物は、ローション、セラム、水性ゲル又はその他の水中油型(O/W)エマルジョンであり、好ましくはセラム又は水中油型エマルジョンである。
【0082】
上に開示されたように、第2の態様によれば、本発明は新規な産物としての化粧品組成物に関する。
【0083】
これらは、上述の本発明の化粧品組成物のうち、特に上に定義された化粧品として許容されるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的に上に定義された脂質小胞に組み込まれた化粧品組成物である。
【0084】
本発明によれば、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0085】
これらの組成物において、水溶性多糖類は、前記脂質小胞を安定化させるために効果的な量である。
【0086】
さらに、特に有利には、水溶性多糖類は、0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間の量で組成物中に存在する。
【0087】
またさらに、特に有利には、組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率は0.1から20の間、好ましくは1から10の間である。
【0088】
本発明の好ましい組成物は、エマルジョンの形態である。
【0089】
終わりに、最後の態様によれば、本発明は、本発明の化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法を包含する。
【実施例】
【0090】
実施例1−表皮幹細胞の保護に関する比較試験
基底層に位置する表皮幹細胞を保護するための薬剤としてのα−トコフェリルホスフェートの有効性を、他のビタミンE誘導体と比較する。
【0091】
方法
培養下の正常ヒトケラチノサイト(NHK)に対し、アポトーシス(プログラム細胞死)を起こす細胞を検査する。
【0092】
細胞は、10μg/mlのビタミンE誘導体溶液で24時間前処理を行ったものと前処理を行わなかったもの(対照)を用いる。
【0093】
次に細胞を酸化ストレスに曝す(1mM H2O2で3時間)。
【0094】
アポトーシスを起こす細胞の割合は、蛍光プローブJC−1(ミトコンドリア膜電位の測定)及びTOTO−3(原形質膜透過性の測定)を使用した血球計算により決定される。
【0095】
アポトーシスを起こす細胞は、JC−1陰性(ミトコンドリア膜電位の低下に対応する)及びTOTO−3陰性(原形質膜の改質がないことに対応する)である。
【0096】
本方法は公開されている(Zulianiら、Cytometry part A、2003、54A:100〜108)。
【0097】
結果
測定結果を以下の表に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
ビタミンEリン酸塩で処理した細胞培養において、アポトーシスを起こす細胞の割合がより低いことが認められる(酸化ストレス後にアポトーシスを起こす細胞の割合を示している図1を参照)。
【0100】
このように、ビタミンEリン酸塩は、酸化ストレスに対する保護作用をケラチノサイトに及ぼし、この作用は対照で観察されるものよりも、またビタミンE又は他の誘導体で観察されるものよりも著しく大きい。
【0101】
実施例2−インビトロでの表皮幹細胞の保護に対するα−トコフェリルホスフェートの作用
表皮の基底細胞層におけるこれらの表皮幹細胞について調べるために、インビトロにおいて、幹細胞が有する培養支持体に対する接着能力及びコロニーとして集塊して多数の娘細胞を生成するための分裂能力に基づく、細胞増殖能試験(clonogenecity test)として知られる試験を行う(Barrandon Y.、Green H.、異なる増殖能を有するケラチノサイトの3つのクローンタイプ(Three clonal types of keratinocyte with different capacities for multiplication)、J.Cell Biol.84、2302〜2306(1987)、及びBarrandon Y.、Biologie des cellules souches epidermiques[表皮幹細胞生物学(Epidermal Stem Cell Biology)]、Ann.Dermatol.Venereol、Suppl.2:285〜286、(1998))。
【0102】
培養後のコロニーの数及びサイズの分析により、表皮幹細胞の特性決定を行うことができる。
【0103】
また、これらの細胞がストレスを受けているときの活性薬剤の保護作用を評価することができる。
【0104】
これらの細胞の単離の第1ステップは、表皮細胞の懸濁液の調製にある(Germain Lら、サーモリシンを用いたヒトケラチノサイトの単離及び培養の改善(Improvement of human keratinocyte isolation and culture using thermolysin)、Burns 19、99〜104(1993))。
【0105】
次にこれらの細胞を支持細胞(3T3線維芽細胞)上に播種し、マイトマイシンでその細胞分裂活性をブロックする。
【0106】
この生体支持体により、幹細胞を含有する表皮の基底細胞を選択することができ、また後に娘細胞のコロニーを形成する高い分裂能力を有する細胞の成長を確実にすることができる(Barrandon、1987)。
【0107】
最も高い分裂能力を示す細胞は大きいコロニーを形成する(>4mm2)。
【0108】
これらは開始幹細胞集団に対応する。
【0109】
図2は、培養3日目(図3A)及び5日目(図3B)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化に対応する。コロニーの着色(ここでは赤)は、幹細胞に対応するあるコロニーの大きな成長を示す。
【0110】
αTPの保護作用は、この方法に従い実証された。
【0111】
まず、ケラチノサイトを1μg/mlのαTPで24時間処理するか、又は処理せず(対照)、15分間酸化ストレス(過酸化水素)に曝す。
【0112】
それらを、個別成長のために非常に低い密度で再播種する。
【0113】
培養7日後、初期培養の幹細胞の量を評価するために、それぞれの初期のケラチノサイトから形成された細胞コロニーを着色し、そのサイズに従い画像分析により計数を行う。
【0114】
図3はケラチノサイトコロニーの可視化を示す。
【0115】
細胞コロニーをコロニーサイズに従い色で分類する(青:12mm2より大;赤:8mm2から12mm2;橙:4mm2から8mm2;黄:4mm2より小)。図3−Cは、図3−A(元)及び図3−B(着色後)で示された画像の重ね合わせを示す。このように、全てのコロニーが考慮されていることが確認される。
【0116】
これらの条件下のα−トコフェリルリン酸ナトリウムでの処理により、このα−トコフェリルホスフェート(α−TP)による処理が行われなかった対照と比較して、酸化ストレスにもかかわらず+104%の多数の大きなコロニー(>4mm2)を有意に維持することが可能となる。
【0117】
表皮幹細胞から得られた様々なコロニーのサイズ(4mm2から8mm2、8mm2から12mm2及び12mm2より大)の関数としての計数を示す図4中のグラフを参照されたい。
【0118】
幹細胞から大きなコロニーが得られることから、これらの結果はα−トコフェリルリン酸ナトリウムがこの特定のケラチノサイト集団を強固に保護することを示している。
【0119】
実施例3−α−トコフェリルリン酸ナトリウムを含むセラムの調製
以下の配合に従いセラムを調製する(%は全配合に対する重量換算)。
【0120】
【表2】
【0121】
D相のリン脂質をUltraturraxで均質化する。
【0122】
次にリン脂質をブチレングリコール及びグリセロールと20分間均質化し、混合物を少なくとも60分間静置する。
【0123】
D相の他の化合物を添加した後、純水を添加する。
【0124】
リポソームの分散液を形成するために、得られた層状相を20分間Ultraturraxでせん断する。
【0125】
α−トコフェリルリン酸ナトリウムを活性薬剤としてセラムに含め、上記のように調製されたリポソーム中に被包する。
【0126】
別個に、A相の化合物を80℃に加熱する。
【0127】
周囲温度で、B相の化合物を添加し、前に形成されたゲルにC相の化合物を添加する前に、ゲルを膨潤させる。
【0128】
リポソームの分散液を、前に調製された水相に添加する。
【0129】
このようにして得られる組成物は、α−トコフェリルリン酸ナトリウムが被包された多重層リポソームを含むセラムである。
【0130】
図5に示されるように、この場合では、リポソームは、その分子が細胞膜の分子と類似したいくつかのリン脂質層を含む。
【0131】
この図5(本実施例に従い調製されたセラムに対し得られた走査型電子顕微鏡画像)において、ベクター化システム(vectorisation system)に対応する多重層の球体の存在が認められる。
【0132】
実施例4−α−トコフェリルリン酸ナトリウムを被包するリポソームを含むリッチクリーム
【表3】
【0133】
D相のリン脂質をUltraturraxで均質化する。
【0134】
次にリン脂質をブチレングリコール及びグリセロールと20分間均質化し、混合物を少なくとも60分間静置する。
【0135】
D相の他の化合物を添加した後、純水を添加する。
【0136】
リポソームの分散液を形成するために、得られた層状相を20分間Ultraturraxでせん断する。
【0137】
A相及びB相を、2つの均質な溶液を得るために別個に85℃に加熱する。
【0138】
次にB相を油相A中に乳化する。
【0139】
得られたO/Wエマルジョンを撹拌しながら徐々に冷却し、次いで、特にポリマーを中和するために70℃でC相の化合物を添加する。
【0140】
リポソームの分散液を、前に調製されたO/Wエマルジョンに撹拌しながら空気を取り込まないように添加する。
【0141】
得られたエマルジョンは、連続水相中に多重層リポソームを含む。
【0142】
これらのリポソームは、エマルジョンを安定化する界面活性剤の作用により破壊されない。
【0143】
実施例5−UV曝露後の皮膚外植片上の表皮基底細胞の保護に対するリポソームに被包されたα−トコフェリルホスフェート(αTP)の作用
α−トコフェリルリン酸ナトリウムのリポソーム内への被包の利点をここで比較する。
【0144】
α−トコフェリルリン酸ナトリウムを含むセラムを、実施例3に従い調製する。
【0145】
試験のために、α−トコフェリルリン酸ナトリウムがB相に可溶化された、リポソームのないセラム(前の実施例のD相)を調製する。
【0146】
方法
36歳女性(白人、P495AB36)に対する整形手術からの組織を10mm径の15の外植片に切断した。これらの外植片をBEM培地(BIO−ECの外植片培地)中で生存状態に維持する。
【0147】
1.処理
時間0において、外植片を生存培地(2ml/外植片)に入れ、以下の処理を行う。
照射前の2日間、1日2回、外植片を局所施用(2mg/外植片)により処理する。
照射日に、照射3時間前に1回の施用を行い、照射直後に1回の施用を行う。
翌日、生存期間の終了の3時間前に施用を行う。
対照にはいかなる処理も施さない。
【0148】
2.照射
照射システムは、通常日焼け防止指数(SPF)の決定や光増感性に関する研究に使用されるOriel太陽シミュレータである。
【0149】
2日目、照射前に生存培地をHBSS緩衝液(ハンク平衡塩溶液)で置換する。照射線量は7J/cm2である。
【0150】
照射直後、外植片を再び生存培地に入れる。照射の間、非照射外植片は暗所に置き、その培地もまたHBSS緩衝液で置換する。
【0151】
3.サンプル
3日目、照射終了から24時間後、外植片を取り出しホルモル緩衝液中で固定する。
【0152】
4.活性カスパーゼ−3の免疫標識
外植片をLeicaパラフィン包埋オートマットTP1020(Leica EG 1160包埋ステーションオートマット)中で脱水する。
【0153】
厚さ5μmの切片をマイクロトーム(Leica Minot型マイクロトームRM2125)で切断し、シラン化スライド上に置く。
【0154】
カスパーゼ−3の活性型を認識する抗活性カスパーゼ−3ポリクローナル抗体(ウサギ、Chemicon ref AB3623)を使用して、切片に対し細胞のカスパーゼ−3免疫標識を行う。
【0155】
DAB染色によるVectastainユニバーサルABC VECTOR増幅システムキットを使用して標識を明確化する。
【0156】
Nikon TE2000ビデオ顕微鏡を用い、免疫標識のために透過光下で、また表皮表面測定のために位相差画像により撮像する。
【0157】
LEICA QWINソフトウェアでカスパーゼ−3陽性細胞を画像分析により計数し、表皮表面と比較して定量化する。
【0158】
結果
試験された配合で処理した細胞のサンプルに対しカスパーゼ−3+細胞の計数を行う。
【0159】
結果は、太陽の全スペクトルに曝露された皮膚の断片における消失表皮基底細胞数を示す図6に示す。これらの細胞は、アポトーシスを起こす細胞のマーカーである活性カスパーゼ−3を認識する抗体を使用した免疫組織化学により特定される。
【0160】
図7は、太陽の全スペクトルに曝露された皮膚外植片に対する活性カスパーゼ−3の免疫標識の結果を示す。表皮の基底細胞のみが標識化されている。ベクター化システムで処理された表皮においてはより少数の陽性細胞が認められる。
【0161】
本発明者らは、ベクター化システムを含有する組成物は、インビトロで生存状態に維持されたヒト皮膚サンプルに施用され太陽の全スペクトルに曝露されると、基底層に位置する表皮幹細胞に対するα−トコフェリルリン酸ナトリウムの保護効果を著しく増加させることを可能にすることを示した(図6及び7)。
【0162】
実施例6−UV曝露後の皮膚外植片上の表皮基底細胞の保護に対するリポソームに被包されたα−トコフェリルホスフェート(αTP=TPビチル)の作用
本特許の実施例3及び4に従いリポソームに被包され調製されたα−トコフェリルホスフェートを含む化粧品組成物の表皮幹細胞に対する保護作用を評価する。
【0163】
これらの組成物は、連続水相が前記リポソームを含むセラム及び水中油型エマルジョンである。
【0164】
これらの組成物に対し、実施例5と同じ試験を行う。
【0165】
結果は、リポソームに被包されたトコフェリルホスフェートを含むセラム又はリッチクリームで処理した後の太陽の全スペクトルへの急性曝露の間消失する表皮の基底ケラチノサイト数を示す図8に再現される。これらの細胞は、抗活性カスパーゼ−3抗体(活性カスパーゼ−3はアポトーシスを起こす細胞のマーカーである)を使用した間接免疫蛍光法により特定される。
【0166】
本発明者らは、皮膚断片に施用された0.2%のαTPを含有するリッチクリーム及びセラムが、太陽の全スペクトルへの急性曝露後に消失する表皮の基底細胞数の80%より多くを削減することを実証した。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施例1に関し、他のビタミンE誘導体と比較した、表皮幹細胞を保護するための薬剤としてのα−トコフェリルホスフェートの有効性を示すグラフである。
【図2A】実施例2に関し、培養3日目(図2A)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化を表す図である。
【図2B】実施例2に関し、培養5日目(図2B)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化を表す図である。
【図3A】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Bはサイズによるコロニーの分類を示す図である。
【図3B】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Aはそれらのコロニーを示す図である。
【図3C】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Cは図3A及び3Bに対応する画像を重ね合わせた結果得られた図である。
【図4】実施例2に関し、様々な処理後の表皮幹細胞から得られたコロニーの分布を示すグラフである。
【図5】実施例3に従い調製されたセラムを使用した凍結切片作製後の走査型電子顕微鏡により得られた画像である。
【図6】実施例5に関し、様々な処理後のカスパーゼ3+細胞の計数結果を示すグラフである。
【図7A】対照(図7A)と比較した、カスパーゼ3+(図7B)の免疫標識の結果を示す図である。
【図7B】対照(図7A)と比較した、カスパーゼ3+(図7B)の免疫標識の結果を示す図である。
【図8】実施例6に関し、対照サンプルの場合、及びα−トコフェリルホスフェートで処理された2サンプルの場合における、表皮のcm2あたりの消失基底細胞数を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にdl若しくはd形態、又は化粧品の分野において化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル又は塩の形態でのトコフェリルホスフェートの新規な使用に関し、また前記トコフェリルホスフェートを含有する組成物及びその化粧品としての使用方法に関する。
【0002】
皮膚は日々大きな機械的ストレスに曝されている。
【0003】
観察によると、皮膚の老化は、皮膚表層における細胞密度の損失につながることが示されている。
【0004】
この細胞の欠乏によりもたらされる組織材料(コラーゲン及び他の真皮マトリックスタンパク質)の損失は、組織の結合性の低下、さらに細胞層の減少による表皮の薄層化として反映される。
【0005】
皮膚が曝されるストレス、特にUV照射は、多数の表皮細胞及び真皮細胞の分解及び自然排除へとつながる。
【0006】
特に、真皮の老化の主要な現象を理解するために行われた多くの組織学的観察により、光照射を受けた皺領域では真皮細胞密度の損失があると結論付けることができるようになった。
【0007】
この損失は、老化の間に観察される組織材料(コラーゲン並びにその他の真皮マトリックス及び真皮−表皮接合部のタンパク質)の損失を概ね説明するものであるが、これはこの材料が細胞の欠乏により産生されず皺の下に蓄積され得ないからである。
【0008】
表皮層の皺の下でもこの細胞の減少が観察され(Contet−Audonneauら、ヒトの皺の構造の組織学的研究:皺のある又は皺のない顔面の日光照射部と日光遮蔽部の比較(A histological study of human wrinkle structures: comparison between sun−exposed areas of the face,with or without wrinkles,and sun−protected areas)、Br J Dermatol.1999 June;140(6):1038〜47)、組織学的なレベルでは、皺のくぼみにおける細胞層の減少による表皮の薄層化として反映される。
【0009】
この現象には、最も具体的には表皮基底層の細胞が関与する。
【0010】
事実、若い皮膚の真皮−表皮接合部(DEJ)の大きな起伏は多数の基底細胞を支持しているが、DEJのこれらの起伏は加齢と共に消失し、この界面はわずかの基底細胞を支持するのみとなる。
【0011】
さらに、予備的観察によると、光照射を受けた皺領域において、基底細胞数の減少という同様の現象が生じることが示唆されている。
【0012】
特に表皮の基底層の細胞に影響するこの現象は、これらの細胞が表皮細胞の形成及び新生を確実にし、また「表皮幹細胞」の分裂から発生するため、重要である。
【0013】
これらの表皮幹細胞は、表皮の基底層に存在し、無限に分裂して「娘」細胞を生むことができる特殊性を持つ、高い再生能を有する細胞であるとされている。
【0014】
したがって、光による皮膚の老化の間観察されるような表皮における細胞密度の損失を防止又は遅延するためには、表皮の基底層におけるこれらの表皮幹細胞を維持することが主な目標となる。
【0015】
出願人は、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル若しくは塩の形態のトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを使用した処理により表皮の幹細胞を保護できることを明らかにした。
【0016】
トコフェリルホスフェートは、特許出願国際公開第91/11189号パンフレットにおいて、皮膚アレルギー又は気管支若しくは炎症性喘息等のアレルギー発症の防止又は治療用、或いはその他フリーラジカルの有害な作用の防止又は治療用の薬学的組成物又は化粧品組成物又は皮膚用組成物の調製における使用に関して、出願人により記載された分子である。
【0017】
本出願の発明者による研究により、トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを、表皮の基底細胞及びその表皮幹細胞(分裂して多くの世代の「娘」細胞を生み出すことができ、したがって表皮再生にプラスの影響を与えることができる唯一の細胞)の保存を目的とする化粧品組成物における活性薬剤として使用することができ、表皮の様々な層における十分な細胞密度の維持と、これらの細胞が産生するタンパク質成分の維持として反映されることが示されている。
【0018】
したがって、本発明は、化粧品組成物における、特にUV照射の作用に関連した皮膚の老化を防止又は遅延するための有効薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として若しくは薬学的に許容できるそのエステル若しくは塩の形態のトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートの使用に関する。
【0019】
第2の態様によれば、本発明はまた、上に定義されたトコフェリルホスフェートを含有する新規な化粧品組成物に関する。
【0020】
第3の態様によれば、本発明はまた、活性薬剤としてトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを含有する組成物を、関与する皮膚の部分に施用することにより、皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法に関する。
【0021】
より具体的には、第1の態様の本質的な特質によれば、本発明は、化粧品組成物における、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの使用であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に被包されている使用に関する。
【0022】
第2の態様の本質的な特質によれば、本発明は、脂質小胞が存在する連続水相より成るか又は該連続水相を含み、特に上に定義された化粧品として許容できるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的にこれらの脂質小胞に組み込まれ、前記組成物が少なくとも1種の水溶性多糖類も含む、化粧品組成物に関する。
【0023】
したがって、本発明の第2の態様の主題である新規な化粧品組成物は、水相に含有される脂質小胞に少なくとも部分的に含まれるトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートを含有する。
【0024】
この第2の態様は、2つの変形形態を含む。
【0025】
第1の変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在する水相より成る。
【0026】
この第2の態様の第2の変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在し、より具体的には水中油型エマルジョンの形態である連続水相を含有する。
【0027】
新規な組成物の2つの変形形態において、脂質小胞は、特にそれらがリポソームである場合、水相中でアルギネートの存在により安定化される。
【0028】
最後に、第3の態様の本質的な特質によれば、本発明は、上に定義されたトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法を包含する。
【0029】
本発明によれば、その全ての態様に関して、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0030】
本発明の他の特質及び利点は、後述の説明及び実施例に示され、また実施例において参照される図1から図8においても示されている。
【0031】
本発明の様々な態様において、トコフェリルホスフェートは、とりわけdl形態若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態である。
【0032】
特に有利な変形形態によれば、トコフェリルホスフェートはα−トコフェリルホスフェートである。
【0033】
トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートは、アルカリ金属塩、特に一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩、及び、アンモニウム塩又は第1級、第2級若しくは第3級アミン、例えば特にジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン若しくはトリエタノールアミンの塩より成る群から選択される、化粧品として許容できる塩の形態であってもよい。
【0034】
本発明の第1の態様により包含される使用は、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延しようとする全ての使用である。
【0035】
本発明は、トコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートが、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための注目すべき化粧薬剤として機能するという、発明者らによる発見の結果である。
【0036】
上記トコフェリルホスフェートが導入される化粧品組成物は、特に、顔面の皺の形成を防止若しくは遅延する、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化することを可能にする。
【0037】
上述のように、本発明の第1の態様に包含される使用は、化粧品組成物の種類とは無関係に、皮膚の老化に効く薬剤としてのトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェートの使用であり、一方で、ある組成物、特に脂質小胞及び少なくとも1種の多糖類を含有する水相を含有する組成物は、新規な産物として請求される。このため、以降、第1の態様により包含され、以後「本発明の組成物」と称される組成物と、第2の態様により包含され、「本発明の新規な組成物」と称されるの組成物との間で区別がなされる。
【0038】
したがって、その使用が本発明により包含される化粧品組成物は、全ての種類のものとなることができる。
【0039】
しかし、有利な変形形態によれば、化粧品組成物は、脂質小胞が存在する水相より成るか又はそれを含む。
【0040】
脂質小胞は、単層であっても多重層であってもよく、好ましくは多重層脂質小胞である。
【0041】
本発明に従い使用される脂質小胞は、脂質小胞の懸濁液としてレーザ粒度分布測定により測定するか、又は凍結切片法でのサンプル調製による透過型電子顕微鏡により測定して、約150μmから200μmの直径を有する。
【0042】
本発明によれば、脂質小胞を形成する脂質は、両親媒性脂質、すなわち、親水基(イオン性か非イオン性かにかかわらない)と親油基とを有する分子より成る。
【0043】
本明細書及び請求項において、「脂質」という用語は、親油基、つまり5個を超える炭素原子を含有する「脂肪族」炭素鎖を含む全ての物質を包含する。
【0044】
同様に、本発明の目的において、「脂肪アルコール」という用語は、炭素鎖が少なくとも5個の炭素原子を含有するアルコールを意味するよう意図される。
【0045】
両親媒性脂質は、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、又はこれらの脂質の混合物であってもよい。そのような物質は、例えば、卵若しくは大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、又はオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る。
【0046】
リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、又はそれらの混合物であってもよい。
【0047】
脂質小胞の二重層は、好ましくはレシチン由来、特に大豆レシチン由来のリン脂質より成る。
【0048】
好ましい実施形態において、これらのリン脂質は2種類の大豆レシチンの混合物であり、大豆レシチンの第1の種類は、90%を超えるホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物であり、第2の種類は15%から30%の間のホスファチジルコリンを含むリン脂質混合物である。
【0049】
本発明の脂質小胞に使用されるものに従ったレシチンは、例えば、ルーカスマイヤー(Lucas Meyer)社によりEmulmetik(登録商標)300及びEmulmetik(登録商標)930の商標で販売されている。
【0050】
有利な変形形態によると、トコフェリルホスフェートは、少なくとも部分的にこれらの脂質小胞に被包されている。
【0051】
本発明によれば、概して、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0052】
本出願の発明者らには、水相が分散体としてリポソームを含有する水中油型分散液の水相における水溶性多糖類の存在が、これらのリポソームの安定性を顕著に増加させることを可能にすることが明らかとなり、これはまた本出願の出願日と同じ日に出願される第2の特許出願の主題である。
【0053】
概して、本発明の組成物において、十分な量の水溶性形態の少なくとも1種の多糖類の存在が、脂質小胞の安定性、特にリポソームの安定性を改善することを可能にすることが今明らかとなった。
【0054】
水溶性形態の多糖類は、広範な水溶性多糖類から選択することができる。多糖類は、特に、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る群から選択することができる。
【0055】
セルロース誘導体のうち、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、酢酸セルロース又はメチルセルロースが特に選択される。
【0056】
ガムのうち、キサンタンガム又はグアーガムが特に選択される。
【0057】
一方、アルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属、最も具体的にはナトリウム塩若しくはカリウム塩、又はそれらを含有する抽出物、例えば藻類抽出物が、有利に選択される。
【0058】
好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種のアルギン酸アルカリ金属と、水溶性形態の少なくとも第2の多糖類、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムとを含む。
【0059】
多糖類の濃度は、脂質小胞を分解から効果的に保護するように選択される。
【0060】
好ましくは、水溶性多糖類の総量は、組成物の0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間である。
【0061】
また、確実に組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が0.1から20の間、好ましくは1から10の間となるように注意する。
【0062】
少なくとも1種の水溶性多糖類を必然的に含む本発明による化粧品組成物はまた、好ましくはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーを有利に含有することができる。
【0063】
上に開示されたように、本発明の組成物は、有利には、前記脂質小胞及び前記トコフェリルホスフェートを含有する連続水相と、分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態である。
【0064】
脂質小胞を含有する本発明の組成物のうち、水中油型エマルジョンの形態の組成物が、目標とされる用途において特に有利であることが判明した。
【0065】
エマルジョンの形態のこれらの水性組成物は、その水相中に、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、上で定義された少なくとも1種の水溶性形態の多糖類とを有利に含有する。
【0066】
非イオン性界面活性剤は、有利には、異なるHLBを有利に有する脂肪アルコールポリアルキレングリコールエーテルの混合物より成る。
【0067】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びそれらの混合物、特に式(A)のステアリルアルコールのエトキシル化誘導体及びそれらの混合物から選択される。
CH3(CH2)17(OCH2CH2)nOH (A)
【0068】
特に有利な実施形態において、非イオン性界面活性剤の混合物が使用され、1つはどちらかといえば実質的に親水性であり、2つ目はどちらかといえば実質的に親油性である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態において、非イオン性界面活性剤は、Brij(登録商標)72の名前で販売され、HLB値が4.9である式(A)に従うステアレス−2(式中平均的にn=2)、及びBrij(登録商標)721Pの名前で販売され、HLB値が15.3である式(A)に従うステアレス−21(式中平均的にn=21)を含む非イオン性界面活性剤の混合物である。
【0070】
ステアレス−2/ステアレス−21の比率は、脂質小胞を分解することなくエマルジョンを安定化するように調節される。
【0071】
エマルジョン形態の本発明の組成物において、上に定義された可溶性形態の多糖類は、脂質小胞を界面活性剤の作用による分解から保護するために十分な量である。
【0072】
本発明のエマルジョンの脂肪相は、トリグリセリドを有利に含有する。
【0073】
本発明の変形形態によれば、この脂肪相はそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンであってもよい。
【0074】
また、化粧品組成物は、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーを含有してもよい。
【0075】
さらに、本発明による化粧品組成物は、他の水溶性親水性化合物を含んでもよい。
【0076】
可溶性分子は、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、ショ糖、ラクチトール、及びグリセロール又はそれらのエーテル若しくはエステルの1つ又は誘導体の1つから有利に選択されるC6又はC12糖であってもよい。
【0077】
これらの水溶性分子は、好ましくは植物抽出物から得られる。
【0078】
トコフェリルホスフェートに加えて、本発明による化粧品組成物は、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための、特に顔面の皺の形成を防止若しくは遅延するため、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化するための、1つ又は複数の他の活性物質を含んでもよい。
【0079】
皺を減少させるための物質としては、(Remixyl(登録商標))Matrixyl、特に(Remixyl)Matrixyl(登録商標)3000の名前で販売されているパルミトイルペンタペプチド−3、アオイ科植物抽出物(Vitactyl(登録商標))、トウモロコシ粒抽出物(Deliner(登録商標)、トウモロコシ穀粒抽出物)又はオート麦ふすま抽出物(Osilift(登録商標))を有利に使用することができる。
【0080】
最後に、本発明による組成物はまた、顔料、染料、レオロジー剤(rheological agent)、香料、金属イオン封鎖剤、電解質、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、及びそれらの混合物、テクスチャリング剤、及び抗日光剤(antisun agent)又は日焼け防止剤より成る群から選択される、1つ又は複数の化粧品として許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、化粧品組成物は、ローション、セラム、水性ゲル又はその他の水中油型(O/W)エマルジョンであり、好ましくはセラム又は水中油型エマルジョンである。
【0082】
上に開示されたように、第2の態様によれば、本発明は新規な産物としての化粧品組成物に関する。
【0083】
これらは、上述の本発明の化粧品組成物のうち、特に上に定義された化粧品として許容されるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的に上に定義された脂質小胞に組み込まれた化粧品組成物である。
【0084】
本発明によれば、前記脂質小胞は特にリポソームであってもよい。
【0085】
これらの組成物において、水溶性多糖類は、前記脂質小胞を安定化させるために効果的な量である。
【0086】
さらに、特に有利には、水溶性多糖類は、0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間の量で組成物中に存在する。
【0087】
またさらに、特に有利には、組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率は0.1から20の間、好ましくは1から10の間である。
【0088】
本発明の好ましい組成物は、エマルジョンの形態である。
【0089】
終わりに、最後の態様によれば、本発明は、本発明の化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法を包含する。
【実施例】
【0090】
実施例1−表皮幹細胞の保護に関する比較試験
基底層に位置する表皮幹細胞を保護するための薬剤としてのα−トコフェリルホスフェートの有効性を、他のビタミンE誘導体と比較する。
【0091】
方法
培養下の正常ヒトケラチノサイト(NHK)に対し、アポトーシス(プログラム細胞死)を起こす細胞を検査する。
【0092】
細胞は、10μg/mlのビタミンE誘導体溶液で24時間前処理を行ったものと前処理を行わなかったもの(対照)を用いる。
【0093】
次に細胞を酸化ストレスに曝す(1mM H2O2で3時間)。
【0094】
アポトーシスを起こす細胞の割合は、蛍光プローブJC−1(ミトコンドリア膜電位の測定)及びTOTO−3(原形質膜透過性の測定)を使用した血球計算により決定される。
【0095】
アポトーシスを起こす細胞は、JC−1陰性(ミトコンドリア膜電位の低下に対応する)及びTOTO−3陰性(原形質膜の改質がないことに対応する)である。
【0096】
本方法は公開されている(Zulianiら、Cytometry part A、2003、54A:100〜108)。
【0097】
結果
測定結果を以下の表に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
ビタミンEリン酸塩で処理した細胞培養において、アポトーシスを起こす細胞の割合がより低いことが認められる(酸化ストレス後にアポトーシスを起こす細胞の割合を示している図1を参照)。
【0100】
このように、ビタミンEリン酸塩は、酸化ストレスに対する保護作用をケラチノサイトに及ぼし、この作用は対照で観察されるものよりも、またビタミンE又は他の誘導体で観察されるものよりも著しく大きい。
【0101】
実施例2−インビトロでの表皮幹細胞の保護に対するα−トコフェリルホスフェートの作用
表皮の基底細胞層におけるこれらの表皮幹細胞について調べるために、インビトロにおいて、幹細胞が有する培養支持体に対する接着能力及びコロニーとして集塊して多数の娘細胞を生成するための分裂能力に基づく、細胞増殖能試験(clonogenecity test)として知られる試験を行う(Barrandon Y.、Green H.、異なる増殖能を有するケラチノサイトの3つのクローンタイプ(Three clonal types of keratinocyte with different capacities for multiplication)、J.Cell Biol.84、2302〜2306(1987)、及びBarrandon Y.、Biologie des cellules souches epidermiques[表皮幹細胞生物学(Epidermal Stem Cell Biology)]、Ann.Dermatol.Venereol、Suppl.2:285〜286、(1998))。
【0102】
培養後のコロニーの数及びサイズの分析により、表皮幹細胞の特性決定を行うことができる。
【0103】
また、これらの細胞がストレスを受けているときの活性薬剤の保護作用を評価することができる。
【0104】
これらの細胞の単離の第1ステップは、表皮細胞の懸濁液の調製にある(Germain Lら、サーモリシンを用いたヒトケラチノサイトの単離及び培養の改善(Improvement of human keratinocyte isolation and culture using thermolysin)、Burns 19、99〜104(1993))。
【0105】
次にこれらの細胞を支持細胞(3T3線維芽細胞)上に播種し、マイトマイシンでその細胞分裂活性をブロックする。
【0106】
この生体支持体により、幹細胞を含有する表皮の基底細胞を選択することができ、また後に娘細胞のコロニーを形成する高い分裂能力を有する細胞の成長を確実にすることができる(Barrandon、1987)。
【0107】
最も高い分裂能力を示す細胞は大きいコロニーを形成する(>4mm2)。
【0108】
これらは開始幹細胞集団に対応する。
【0109】
図2は、培養3日目(図3A)及び5日目(図3B)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化に対応する。コロニーの着色(ここでは赤)は、幹細胞に対応するあるコロニーの大きな成長を示す。
【0110】
αTPの保護作用は、この方法に従い実証された。
【0111】
まず、ケラチノサイトを1μg/mlのαTPで24時間処理するか、又は処理せず(対照)、15分間酸化ストレス(過酸化水素)に曝す。
【0112】
それらを、個別成長のために非常に低い密度で再播種する。
【0113】
培養7日後、初期培養の幹細胞の量を評価するために、それぞれの初期のケラチノサイトから形成された細胞コロニーを着色し、そのサイズに従い画像分析により計数を行う。
【0114】
図3はケラチノサイトコロニーの可視化を示す。
【0115】
細胞コロニーをコロニーサイズに従い色で分類する(青:12mm2より大;赤:8mm2から12mm2;橙:4mm2から8mm2;黄:4mm2より小)。図3−Cは、図3−A(元)及び図3−B(着色後)で示された画像の重ね合わせを示す。このように、全てのコロニーが考慮されていることが確認される。
【0116】
これらの条件下のα−トコフェリルリン酸ナトリウムでの処理により、このα−トコフェリルホスフェート(α−TP)による処理が行われなかった対照と比較して、酸化ストレスにもかかわらず+104%の多数の大きなコロニー(>4mm2)を有意に維持することが可能となる。
【0117】
表皮幹細胞から得られた様々なコロニーのサイズ(4mm2から8mm2、8mm2から12mm2及び12mm2より大)の関数としての計数を示す図4中のグラフを参照されたい。
【0118】
幹細胞から大きなコロニーが得られることから、これらの結果はα−トコフェリルリン酸ナトリウムがこの特定のケラチノサイト集団を強固に保護することを示している。
【0119】
実施例3−α−トコフェリルリン酸ナトリウムを含むセラムの調製
以下の配合に従いセラムを調製する(%は全配合に対する重量換算)。
【0120】
【表2】
【0121】
D相のリン脂質をUltraturraxで均質化する。
【0122】
次にリン脂質をブチレングリコール及びグリセロールと20分間均質化し、混合物を少なくとも60分間静置する。
【0123】
D相の他の化合物を添加した後、純水を添加する。
【0124】
リポソームの分散液を形成するために、得られた層状相を20分間Ultraturraxでせん断する。
【0125】
α−トコフェリルリン酸ナトリウムを活性薬剤としてセラムに含め、上記のように調製されたリポソーム中に被包する。
【0126】
別個に、A相の化合物を80℃に加熱する。
【0127】
周囲温度で、B相の化合物を添加し、前に形成されたゲルにC相の化合物を添加する前に、ゲルを膨潤させる。
【0128】
リポソームの分散液を、前に調製された水相に添加する。
【0129】
このようにして得られる組成物は、α−トコフェリルリン酸ナトリウムが被包された多重層リポソームを含むセラムである。
【0130】
図5に示されるように、この場合では、リポソームは、その分子が細胞膜の分子と類似したいくつかのリン脂質層を含む。
【0131】
この図5(本実施例に従い調製されたセラムに対し得られた走査型電子顕微鏡画像)において、ベクター化システム(vectorisation system)に対応する多重層の球体の存在が認められる。
【0132】
実施例4−α−トコフェリルリン酸ナトリウムを被包するリポソームを含むリッチクリーム
【表3】
【0133】
D相のリン脂質をUltraturraxで均質化する。
【0134】
次にリン脂質をブチレングリコール及びグリセロールと20分間均質化し、混合物を少なくとも60分間静置する。
【0135】
D相の他の化合物を添加した後、純水を添加する。
【0136】
リポソームの分散液を形成するために、得られた層状相を20分間Ultraturraxでせん断する。
【0137】
A相及びB相を、2つの均質な溶液を得るために別個に85℃に加熱する。
【0138】
次にB相を油相A中に乳化する。
【0139】
得られたO/Wエマルジョンを撹拌しながら徐々に冷却し、次いで、特にポリマーを中和するために70℃でC相の化合物を添加する。
【0140】
リポソームの分散液を、前に調製されたO/Wエマルジョンに撹拌しながら空気を取り込まないように添加する。
【0141】
得られたエマルジョンは、連続水相中に多重層リポソームを含む。
【0142】
これらのリポソームは、エマルジョンを安定化する界面活性剤の作用により破壊されない。
【0143】
実施例5−UV曝露後の皮膚外植片上の表皮基底細胞の保護に対するリポソームに被包されたα−トコフェリルホスフェート(αTP)の作用
α−トコフェリルリン酸ナトリウムのリポソーム内への被包の利点をここで比較する。
【0144】
α−トコフェリルリン酸ナトリウムを含むセラムを、実施例3に従い調製する。
【0145】
試験のために、α−トコフェリルリン酸ナトリウムがB相に可溶化された、リポソームのないセラム(前の実施例のD相)を調製する。
【0146】
方法
36歳女性(白人、P495AB36)に対する整形手術からの組織を10mm径の15の外植片に切断した。これらの外植片をBEM培地(BIO−ECの外植片培地)中で生存状態に維持する。
【0147】
1.処理
時間0において、外植片を生存培地(2ml/外植片)に入れ、以下の処理を行う。
照射前の2日間、1日2回、外植片を局所施用(2mg/外植片)により処理する。
照射日に、照射3時間前に1回の施用を行い、照射直後に1回の施用を行う。
翌日、生存期間の終了の3時間前に施用を行う。
対照にはいかなる処理も施さない。
【0148】
2.照射
照射システムは、通常日焼け防止指数(SPF)の決定や光増感性に関する研究に使用されるOriel太陽シミュレータである。
【0149】
2日目、照射前に生存培地をHBSS緩衝液(ハンク平衡塩溶液)で置換する。照射線量は7J/cm2である。
【0150】
照射直後、外植片を再び生存培地に入れる。照射の間、非照射外植片は暗所に置き、その培地もまたHBSS緩衝液で置換する。
【0151】
3.サンプル
3日目、照射終了から24時間後、外植片を取り出しホルモル緩衝液中で固定する。
【0152】
4.活性カスパーゼ−3の免疫標識
外植片をLeicaパラフィン包埋オートマットTP1020(Leica EG 1160包埋ステーションオートマット)中で脱水する。
【0153】
厚さ5μmの切片をマイクロトーム(Leica Minot型マイクロトームRM2125)で切断し、シラン化スライド上に置く。
【0154】
カスパーゼ−3の活性型を認識する抗活性カスパーゼ−3ポリクローナル抗体(ウサギ、Chemicon ref AB3623)を使用して、切片に対し細胞のカスパーゼ−3免疫標識を行う。
【0155】
DAB染色によるVectastainユニバーサルABC VECTOR増幅システムキットを使用して標識を明確化する。
【0156】
Nikon TE2000ビデオ顕微鏡を用い、免疫標識のために透過光下で、また表皮表面測定のために位相差画像により撮像する。
【0157】
LEICA QWINソフトウェアでカスパーゼ−3陽性細胞を画像分析により計数し、表皮表面と比較して定量化する。
【0158】
結果
試験された配合で処理した細胞のサンプルに対しカスパーゼ−3+細胞の計数を行う。
【0159】
結果は、太陽の全スペクトルに曝露された皮膚の断片における消失表皮基底細胞数を示す図6に示す。これらの細胞は、アポトーシスを起こす細胞のマーカーである活性カスパーゼ−3を認識する抗体を使用した免疫組織化学により特定される。
【0160】
図7は、太陽の全スペクトルに曝露された皮膚外植片に対する活性カスパーゼ−3の免疫標識の結果を示す。表皮の基底細胞のみが標識化されている。ベクター化システムで処理された表皮においてはより少数の陽性細胞が認められる。
【0161】
本発明者らは、ベクター化システムを含有する組成物は、インビトロで生存状態に維持されたヒト皮膚サンプルに施用され太陽の全スペクトルに曝露されると、基底層に位置する表皮幹細胞に対するα−トコフェリルリン酸ナトリウムの保護効果を著しく増加させることを可能にすることを示した(図6及び7)。
【0162】
実施例6−UV曝露後の皮膚外植片上の表皮基底細胞の保護に対するリポソームに被包されたα−トコフェリルホスフェート(αTP=TPビチル)の作用
本特許の実施例3及び4に従いリポソームに被包され調製されたα−トコフェリルホスフェートを含む化粧品組成物の表皮幹細胞に対する保護作用を評価する。
【0163】
これらの組成物は、連続水相が前記リポソームを含むセラム及び水中油型エマルジョンである。
【0164】
これらの組成物に対し、実施例5と同じ試験を行う。
【0165】
結果は、リポソームに被包されたトコフェリルホスフェートを含むセラム又はリッチクリームで処理した後の太陽の全スペクトルへの急性曝露の間消失する表皮の基底ケラチノサイト数を示す図8に再現される。これらの細胞は、抗活性カスパーゼ−3抗体(活性カスパーゼ−3はアポトーシスを起こす細胞のマーカーである)を使用した間接免疫蛍光法により特定される。
【0166】
本発明者らは、皮膚断片に施用された0.2%のαTPを含有するリッチクリーム及びセラムが、太陽の全スペクトルへの急性曝露後に消失する表皮の基底細胞数の80%より多くを削減することを実証した。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施例1に関し、他のビタミンE誘導体と比較した、表皮幹細胞を保護するための薬剤としてのα−トコフェリルホスフェートの有効性を示すグラフである。
【図2A】実施例2に関し、培養3日目(図2A)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化を表す図である。
【図2B】実施例2に関し、培養5日目(図2B)における表皮幹細胞から得られたケラチノサイトコロニーのビデオ顕微鏡による可視化を表す図である。
【図3A】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Bはサイズによるコロニーの分類を示す図である。
【図3B】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Aはそれらのコロニーを示す図である。
【図3C】ケラチノサイトコロニーの可視化の結果を示す図であり、図3Cは図3A及び3Bに対応する画像を重ね合わせた結果得られた図である。
【図4】実施例2に関し、様々な処理後の表皮幹細胞から得られたコロニーの分布を示すグラフである。
【図5】実施例3に従い調製されたセラムを使用した凍結切片作製後の走査型電子顕微鏡により得られた画像である。
【図6】実施例5に関し、様々な処理後のカスパーゼ3+細胞の計数結果を示すグラフである。
【図7A】対照(図7A)と比較した、カスパーゼ3+(図7B)の免疫標識の結果を示す図である。
【図7B】対照(図7A)と比較した、カスパーゼ3+(図7B)の免疫標識の結果を示す図である。
【図8】実施例6に関し、対照サンプルの場合、及びα−トコフェリルホスフェートで処理された2サンプルの場合における、表皮のcm2あたりの消失基底細胞数を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの化粧品組成物における使用であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に、特にリポソームに被包されている、使用。
【請求項2】
前記化粧品組成物が、顔面の皺の形成を防止若しくは遅延するためのものであるか、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記トコフェリルホスフェートがα−トコフェリルホスフェートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記トコフェリルホスフェートが、アルカリ金属塩、特に一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩、及び、アンモニウム塩又は第1級、第2級若しくは第3級アミン、例えば特にジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン若しくはトリエタノールアミンの塩より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記化粧品組成物が、前記脂質小胞が存在する連続水相より成るか又は該連続水相を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記脂質小胞が多重層脂質小胞であることを特徴とする、請求項1又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記脂質小胞が、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、及びそれらの混合物より成る群から選択される両親媒性脂質から形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記脂質小胞が、卵レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、及びオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る群から選択される両親媒性脂質から形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記化粧品組成物が、前記水相中に、前記脂質小胞の安定性を改善するために効果的な量の、少なくとも1種の水溶性形態の多糖類も含有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記多糖類が、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも1種の水溶性形態のアルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属を含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
前記アルギン酸アルカリ金属がアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、水溶性形態の第2の多糖類、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記化粧品組成物が、前記脂質小胞及び前記トコフェリルホスフェートを含有する連続水相と、分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記水相が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、請求項10〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水溶性形態の多糖類とを含有することを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記水相が、請求項10に記載の非イオン性界面活性剤の混合物を含有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
前記非イオン性界面活性剤が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアリルアルコールポリエチレングリコールエーテルから選択されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアレス−2及びステアレス−21の混合物であることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の水溶性形態の前記多糖類が、前記界面活性剤の作用による分解から脂質小胞を保護するために効果的な量であることを特徴とする、請求項14〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記化粧品組成物が、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーも含有することを特徴とする、請求項14〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記エマルジョンの前記脂肪相がトリグリセリドを含有することを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項23】
前記エマルジョンの前記脂肪相がそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンであることを特徴とする、請求項14〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の、特に化粧品として許容できるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的に、請求項5〜8のいずれか一項に記載の脂質小胞、特にリポソームに組み込まれ、前記組成物が、請求項10〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水溶性多糖類も含むことを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項25】
前記水溶性多糖類が、前記脂質小胞を安定化させるために効果的な量であることを特徴とする、請求項24に記載の化粧品組成物。
【請求項26】
前記水溶性多糖類が、0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間の量で組成物中に存在することを特徴とする、請求項24又は25に記載の化粧品組成物。
【請求項27】
組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が、0.1から20の間、好ましくは1から10の間であることを特徴とする、請求項24〜26のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項28】
請求項14〜23のいずれか一項に記載のエマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項24〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法。
【請求項1】
皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧薬剤としての、とりわけdl若しくはd形態、又は化粧品として許容できるその塩若しくはエステルの形態のトコフェリルホスフェートの化粧品組成物における使用であって、前記トコフェリルホスフェートが、少なくとも部分的に脂質小胞に、特にリポソームに被包されている、使用。
【請求項2】
前記化粧品組成物が、顔面の皺の形成を防止若しくは遅延するためのものであるか、又はすでに形成されている皺を減少若しくは平滑化するためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記トコフェリルホスフェートがα−トコフェリルホスフェートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記トコフェリルホスフェートが、アルカリ金属塩、特に一ナトリウム塩又は二ナトリウム塩、アルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩、及び、アンモニウム塩又は第1級、第2級若しくは第3級アミン、例えば特にジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン若しくはトリエタノールアミンの塩より成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記化粧品組成物が、前記脂質小胞が存在する連続水相より成るか又は該連続水相を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記脂質小胞が多重層脂質小胞であることを特徴とする、請求項1又は5に記載の使用。
【請求項7】
前記脂質小胞が、リン脂質、ホスホアミノ脂質、糖脂質、及びそれらの混合物より成る群から選択される両親媒性脂質から形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記脂質小胞が、卵レシチン、大豆レシチン、スフィンゴミエリン、セレブロシド、及びオキシエチレン化ステアリン酸ポリグリセリルより成る群から選択される両親媒性脂質から形成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記化粧品組成物が、前記水相中に、前記脂質小胞の安定性を改善するために効果的な量の、少なくとも1種の水溶性形態の多糖類も含有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記多糖類が、デンプン又はその誘導体、セルロース誘導体、ペクチン、ガム、アルギネート、デキストラン、カラギネート、及びヒアルロン酸より成る群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも1種の水溶性形態のアルギネート、特にアルギン酸アルカリ金属を含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
前記アルギン酸アルカリ金属がアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、水溶性形態の第2の多糖類、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムを含むことを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記化粧品組成物が、前記脂質小胞及び前記トコフェリルホスフェートを含有する連続水相と、分散脂肪相とを含むエマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記水相が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル、脂肪アルコールポリプロピレングリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、請求項10〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水溶性形態の多糖類とを含有することを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記水相が、請求項10に記載の非イオン性界面活性剤の混合物を含有することを特徴とする、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
前記非イオン性界面活性剤が、脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテル及びその混合物から選択されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアリルアルコールポリエチレングリコールエーテルから選択されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤が、ステアレス−2及びステアレス−21の混合物であることを特徴とする、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の水溶性形態の前記多糖類が、前記界面活性剤の作用による分解から脂質小胞を保護するために効果的な量であることを特徴とする、請求項14〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記化粧品組成物が、特にポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物より成る群から選択される少なくとも1種の親水性ポリマーも含有することを特徴とする、請求項14〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記エマルジョンの前記脂肪相がトリグリセリドを含有することを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項23】
前記エマルジョンの前記脂肪相がそれ自体油中水型(W/O)エマルジョンであることを特徴とする、請求項14〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の、特に化粧品として許容できるその塩又はエステルの形態でのトコフェリルホスフェートを含有する化粧品組成物であって、前記トコフェリルホスフェートが少なくとも部分的に、請求項5〜8のいずれか一項に記載の脂質小胞、特にリポソームに組み込まれ、前記組成物が、請求項10〜13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の水溶性多糖類も含むことを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項25】
前記水溶性多糖類が、前記脂質小胞を安定化させるために効果的な量であることを特徴とする、請求項24に記載の化粧品組成物。
【請求項26】
前記水溶性多糖類が、0.1重量%から10重量%の間、好ましくは0.1重量%から2重量%の間の量で組成物中に存在することを特徴とする、請求項24又は25に記載の化粧品組成物。
【請求項27】
組成物の[リン脂質/水溶性多糖類]の比率が、0.1から20の間、好ましくは1から10の間であることを特徴とする、請求項24〜26のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項28】
請求項14〜23のいずれか一項に記載のエマルジョンの形態であることを特徴とする、請求項24〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の化粧品組成物の関与する皮膚の部分への施用を含む、皮膚の老化、特に光による皮膚の老化の作用の出現を防止又は遅延するための化粧スキンケア方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【公開番号】特開2009−132677(P2009−132677A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−248543(P2008−248543)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248543(P2008−248543)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]