説明

皮膚外用剤

【課題】一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する粘度安定化剤を提供すること。
【解決手段】1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする、粘度安定化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度安定化剤及び皮膚外用剤に関し、更に詳細には、化粧料に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩は、増粘剤として皮膚外用剤の汎用原料であり、その優れた増粘作用は、乳化系皮膚外用剤の安定化には極めて有用であり、乳化系皮膚外用剤を安定化する目的或いはローション系皮膚外用剤の粘度安定化の目的で広く使用されている。しかしながら、この増粘剤の最大の弱点は、一定量以上の塩や電解質の存在により、著しく減粘することであった。この弱点を補う意味で、カルボキシビニルポリマーに炭素数10〜30のアルキル基を導入したアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩(以下、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等ともいう)が開発された。該アルキル変性カルボキシビニルポリマー等は増粘作用以外に乳化作用を持つユニークな高分子であったが、一定量以上の塩や電解質の存在下での減粘防止に対して顕著な効果を示すものではなかった。従って、これら増粘剤が開発された今も、塩や電解質を一定限度以上含有する皮膚外用剤においては、その粘度の維持と、安定性の確保が大きな課題となっているのが現状であった。
【0003】
一方、メラニン産生抑制剤である4−アルキルレゾルシノール及び/又は塩とアルキル変性カルボキシビニルポリマーの組み合わせにおいて、安定性の高い製剤系が得られることは知られている(例えば、特許文献1を参照)が、このアルキル変性カルボキシビニルポリマーをカルボキシビニルポリマー及び/又はその塩に置換した場合においては、この様な効果は奏しない。
【0004】
N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルは抱水性を有する油性成分として、クレンジング化粧料などに含有されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)。しかしながら、上記4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩とN−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを共に含有する組成物が有する効果は知られていない。
【特許文献1】特開2000−327557号公報
【特許文献2】特開2005−336106号公報
【特許文献3】特開2005−325076号公報
【特許文献4】特開2005−325038号公報
【特許文献5】特開2005−104899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する粘度安定化剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、増粘剤と一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、粘度低下が防止された皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを有効量含む組成物が、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明
の要旨は以下の通りである。
【0007】
(1) 1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする、粘度安定化剤。
【0008】
(2) 4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、(1)に記載の粘度安定化剤。
【0009】
(3) N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の粘度安定化剤。
【0010】
(4) 増粘剤を含有する皮膚外用剤であって、1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【0011】
(5) 増粘剤が、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、或いはアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩を含有することを特徴とする、(4)に記載の皮膚外用剤。
【0012】
(6) 4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、(4)又は(5)に記載の皮膚外用剤。
【0013】
(7) 4−アルキルレゾルシノール及びその塩の含有量が、皮膚外用剤全量に対して0.05〜5質量%であることを特徴とする、(4)〜(6)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
【0014】
(8) N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルト゛デシル)であることを特徴とする、(4)〜(7)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
【0015】
(9) N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルの含有量が、皮膚外用剤全量に対して0.005〜5質量%であることを特徴とする、(4)〜(8)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
【0016】
(10) 化粧料であることを特徴とする、(4)〜(9)のいずれか一に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する粘度安定化剤を提供する。
また、本発明は、増粘剤と一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、粘度低下が防止された皮膚外用剤を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<1> 本発明の粘度安定化剤
本発明の粘度安定化剤は、4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩(以下、「4−アルキルレゾルシノール等」ということがある)と、N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする。
粘度安定化剤とは、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合にお
いても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する作用を有する剤を意味する。上記「一定量以上の塩や電解質」とは、実際の製剤系において、意図することなく含有する蓋然性を有する量であって、系への影響を与える量の塩や電解質を意味し、カルボキシビニルポリマー或いはアルキル変性カルボキシビニルポリマー等の増粘剤を使用した系においては、1mM程度を意味する。また、本発明の粘度安定化剤は該皮膚外用剤を高温条件で保存した場合において優れた該作用を示す。上記「高温条件」とは、実用上可能性のある温度の上限値であって、通常の使用下ではあり得ない過酷な条件を意味し、具体的には50〜60℃を意味する。さらに、「粘度低下を防止する作用」とは、例えば、皮膚外用剤を製造直後に剤の温度を20℃に調整し測定した粘度を「製造直後の粘度」とし、60℃で1週間保存後測定した粘度を「保存後の粘度」とした場合、「保存後の粘度」/「製造直後の粘度」×100の値が60以上、好ましくは70以上であることを意味する。また、「一定量以上の塩や電解質」、「高温条件」及び「粘度低下を防止する作用」の定義は本発明の皮膚外用剤についても同様である。尚、粘度の測定方法については後述する。
【0019】
<2> 本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、増粘剤を含有する皮膚外用剤であって、1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする。
【0020】
<3> 4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩
前記4−アルキルレゾルシノールとしては、アルキル基の炭素数3〜10のものが好ましく、より好ましくは3〜6のものである。例えば、4−n−プロピルレゾルシノール、4−n−ブチルレゾルシノール、4−tert−ブチルレゾルシノール、4−アミルレゾルシノール、4−n−ヘキシルレゾルシノール、4−シクロヘキシルレゾルシノール、4−オクチルレゾルシノール、4−イソオクチルレゾルシノールなどが好ましく例示できる。
【0021】
前記4−アルキルレゾルシノールの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。これら塩のうち、特に好ましいものはアルカリ金属塩であり、なかでもナトリウム塩が特に好ましい。
【0022】
前記4−n−ブチルレゾルシノール等の4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩は、メラニン産生を抑制する美白成分であることが知られている(例えば、武田ら監修「化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望」、株式会社薬事日報社、2001年3月31日を参照)。
【0023】
前記4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩の製造方法に特に限定はなく、公知の方法に従って製造することができる。(例えば、Lille,J.; Bitter, L. A.; Peiner, V. Trudy-Nauchono-Issledovatel' skii Institut Slantsev (1969), No.18, 127-34を参照)即ち、レゾルシンと対応するカルボン酸、例えば、4−n−ブチルレゾルシノールを製造する場合には、ブタン酸を塩化亜鉛の存在下縮合し、亜鉛アマルガム/塩酸で還元する方法や、レゾルシンと対応するアルコール、例えば、4−n−ブチルレゾルシノールであれば、n−ブチルアルコールとを200〜400℃の高温下で縮合させる方法が例示できる。
この方法を応用して、n−ヘキシルアルコール、或いは、シクロヘキシルアルコールとレゾルシンとの高温下の縮合により4−n−ヘキシルレゾルシノール、4−シクロヘキシルレゾルシノールも製造することができる。
また、これらの塩の製造方法にも特に限定はなく、常法に従って製造することができる

【0024】
前記4−アルキルレゾルシノール等は一種を単独で含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。かくの如くに粘度安定化剤に含有された4−アルキルレゾルシノール等は、後記N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとともに働いて、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する作用、取り分け、45℃を上回る温度条件で保存した場合であっても粘度低下を防止する作用を発揮する。
【0025】
本発明の皮膚外用剤中における4−n−ブチルレゾルシノール等の含有量には、特に制限はないが、皮膚外用剤全量に対して、4−n−ブチルレゾルシノール等の総量で、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%が更に好ましい。4−n−ブチルレゾルシノール等の含有量が0.05質量%未満では、粘度を安定化する効果が減じられる場合があり、一方、5質量%を超えた場合は効果が頭打ちになる場合がある。
【0026】
<4> N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステル
上記N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを構成するアシル基としては、炭素数8〜30が好ましく、飽和でも、不飽和でも良い。例えば、2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、リノレノイル基などが好適に例示でき、特に好ましいものはラウロイル基である。又、ジアルキルエステルを構成するアルキル基としては、分岐でも、直鎖でも、環状構造を有するものでも良い。例えば、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オクチルデシル基、ベヘニル基、オクチルドデシル基、カンペステリル基やシトステリル基等のフィトステリル基、コレステリル基などが好適に例示できる。なかでも炭素数16〜36のアルキル基が特に好ましい。
【0027】
N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルの具体的な化合物例としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等が好適に例示でき、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)が特に好適に例示できる。
【0028】
かかるN−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルは、グルタミン酸とアシルクロリドをアルカリ存在下縮合させ、N−アシルグルタミン酸と為し、しかる後、塩基又は酸の存在下、所望により溶剤を存在させ、対応するアルコールと脱水縮合せしめ製造することが出来る。
【0029】
N−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルはこの様に合成したものを使用することも出来るが、既に化粧料原料などとして市販されているものも存し、この様な市販品を購入し利用することも出来る。特に好ましい市販品としては、味の素株式会社より販売されている「エルデュウPS203」(N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL−301」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))、「エルデュウCL−202」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル))、「エルデュウPS−304」(N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル))などが例示でき、中でも、「エルデュウPS203」が特に好ましい。
かかる成分は唯一種含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。
【0030】
本発明の皮膚外用剤中におけるN−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルの含有量には、特に制限はないが、皮膚外用剤全量に対して、N−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルの総量で、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。N−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルの含有量が0.005質量%未満では、粘度を安定化する効果が減じられる場合があり、一方、5質量%を超えた場合は効果が頭打ちになる場合がある。
【0031】
N−アシル化グルタミン酸ジアルキルエステルは、前記4−アルキルレゾルシノール等とともに働いて、一定量以上の塩や電解質を含有する皮膚外用剤を保存した場合においても、該皮膚外用剤の粘度低下を防止する作用、取り分け、45℃を上回る温度条件で保存した場合であっても粘度低下を防止する作用を発揮する。
【0032】
<5> 増粘剤
前記増粘剤としては、例えば、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が例示できる。
【0033】
このうち、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、並びにアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩が好ましく、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩が特に好ましい。
【0034】
前記カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、並びにアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩は、化粧料原料として古くから使用されている増粘剤である。
従って、カルボキシビニルポリマー、及びカルボキシビニルポリマーをアルキル変性したアルキル変性カルボキシビニルポリマーの製造方法に、特に限定はなく、常法に従えばよい。またこれらポリマーは市販品を用いることも可能である。
例えば、カルボキシビニルポリマーの市販品については、「シンタレンK」(和光純薬株式会社製)、「カーボポールUltrez-10」(グッドリッチ社製)等が例示でき、アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品については、グッドリッチ社から販売されている「ペムレンTR−1」、「ペムレンTR−2」或いは「カーボポール1382」等が好ましく例示できる。
【0035】
前記カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩;リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。また、これら塩の製造方法にも特に限定はなく、常法に従って製造することができる。
【0036】
増粘剤は唯一種で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。増粘剤の含有量には、特に制限はないが、皮膚外用剤全量に対して、増粘剤総量で、0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0037】
<6>任意成分
本発明の粘度安定化剤は、前記4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとから構成されてもよいが、他の任意成分を配合して粘度安定化剤とすることも可能である。このような任意成分は、本願効果を阻害しないもの、且つ阻害しない範囲であれば特に制限無く用いることができ、例えば、ポリオール、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩および糖質等、公知の粘度を安定化する化合物が挙げられる。
【0038】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することができる。このような任意成分は、本発明の効果を阻害しないものであれば特段の限定なく使用することができ、オイル・ワックス類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、合成エステル油類、油剤類、界面活性剤類、多価アルコール類、保湿成分類、粉体類、無機顔料類、有機色素類、有機粉体類、紫外線吸収剤類、低級アルコール類、ビタミン類、抗菌剤、各種薬効成分等が挙げられる。また、これらの任意成分は、本発明の効果を阻害しない範囲の配合量で配合することが可能である。
【0039】
オイル・ワックス類としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等が挙げられる。
【0040】
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0041】
高級脂肪酸類としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。
【0042】
高級アルコール類としては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0043】
合成エステル油類としては、例えば、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等が挙げられる。
【0044】
油剤類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0045】
界面活性剤類としては、例えば、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類が挙げられる。
【0046】
多価アルコール類としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
【0047】
保湿成分類としては、例えば、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
粉体類としては、例えば、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0049】
無機顔料類としては、例えば、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0050】
有機色素類としては、例えば、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等が挙げられる。
【0051】
有機粉体類としては、例えば、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等有機粉体類
【0052】
紫外線吸収剤類としては、例えば、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチル
フェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0053】
低級アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノールが挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等が挙げられる。
抗菌剤としては、例えば、フェノキシエタノール等が挙げられる。
各種薬効成分としては、例えば、ツボクササポニン、ローズマリー抽出物、シラカバ抽出物、クジン抽出物等が挙げられる。
【0054】
本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより、製造することができる。本発明の皮膚外用剤の剤形は、皮膚に塗布することができるものであれば特に限定されず、例えば、可溶化ローション剤形、増粘エッセンス剤形、乳化剤形等を挙げることができる。特に、粘度が500mPa・s以上の製剤とすることが好ましい。
【0055】
本発明の皮膚外用剤の用途は、皮膚に外用塗布して投与されるものであれば特に限定はないが、例えば、化粧料(医薬部外品を含む)、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などの用途が好適に例示でき、中でも化粧料が特に好ましい。化粧料としては、ローション、乳液、エッセンス、クリーム、パック料などの基礎化粧料、サンケアローションやサンケアミルクなどの紫外線防護化粧料、アンダーメークアップ、コントロールカラー、ファンデーション等のメークアップ化粧料などが好適に例示できる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明の範囲がかかる実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【0057】
<実施例1、比較例1及び比較例2>
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤である乳液(化粧料)を製造した。即ち、下記表1に示すイ、ロ、ハの各成分をそれぞれ80℃に加熱し、攪拌しながら、イに徐々にロを加え、しかる後にハを加えて中和し、攪拌冷却して乳液1を得た。
下記ロに記載の4−n−ブチルレゾルシノールを水に置換した比較乳液1、及び下記イに記載の「エルデュウPS203」を水に置換した比較乳液2を、実施例1と同様の方法で作製し、それぞれを比較例1、比較例2とした。乳液1、比較乳液1及び比較乳液2は、20℃に調整し粘度を測定した後、60℃で1週間静置して保存した。保存期間終了後、各乳液は再び20℃に調整し、粘度を測定した。粘度は以下の方法で測定した。即ち、20℃にサンプルを12時間保存して、温度を恒量にし、B型粘度計(「デジタルビスメトロンVDA」;芝浦システムズ株式会社製;4号ローター使用、回転数60rpm)で粘度を測定した。
結果を表2に示す。表2より、4−アルキルレゾルシノール及びN−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、高温条件下で保存された化粧料の粘度低下を防止する効果を有することがわかる。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
<実施例2、比較例3及び比較例4>
下記表3に従い、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤である乳液2(化粧料)を製造した。実施例1と同様に、下記ロに記載の4−n−ブチルレゾルシノールを水に置換した比較乳液3、及び下記イに記載の「エルデュウPS203」を水に置換した比較乳液4を、実施例1と同様の方法で作製し、それぞれを比較例3、比較例4とした。乳液2、比較乳液3及び比較乳液4は、実施例1と同様の方法で保存試験を行った。結果を表4に示す。表4より、4−アルキルレゾルシノール及びN−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、高温条件下で保存された化粧料の粘度低下を防止する効果を有することがわかる。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
<実施例3>
下記表5に従い、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤である乳液3〜5(化粧料)を製造した。乳液3〜5は、実施例1と同様の方法で保存試験を行った。結果を表6に示す。表6に示すN−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルのいずれもが、4−アルキルレゾルシノールと共に用いることで、高温条件下で保存された化粧料の粘度低下を防止する効果を奏することがわかる。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
<実施例4>
下記表7に従い、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤である乳液6(化粧料)を製造した。得られた乳液6を実施例1と同様の方法で保存試験を実施した結果、製造直後の粘度は1850mPa・sであり、保存後の粘度は1650mPa・sであった。
【0067】
【表7】

【0068】
<実施例5>
下記表8に従い、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤である乳液7(化粧料)を製造した。得られた乳液7を実施例1と同様の方法で保存試験を実施した結果、製造直後の粘度は1950mPa・sであり、保存後の粘度は1600mPa・sであった。
【0069】
【表8】

【0070】
<実施例6>
下記表9に従い、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤である乳液8(化粧料)を製造した。4−n−ブチルレゾルシノールの含有量を減じた乳液8は、実施例1と同様の方法で保存試験を実施した結果、製造直後の粘度は1900mPa・sであり、保存後の粘度は1800mPa・sであった。
【0071】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする、粘度安定化剤。
【請求項2】
4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、請求項1に記載の粘度安定化剤。
【請求項3】
N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘度安定化剤。
【請求項4】
増粘剤を含有する皮膚外用剤であって、1)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と、2)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項5】
増粘剤が、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、或いはアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩を含有することを特徴とする、請求項4に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、請求項4又は5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
4−アルキルレゾルシノール及びその塩の含有量が、皮膚外用剤全量に対して0.05〜5質量%であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルが、N−ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)であることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルの含有量が、皮膚外用剤全量に対して0.005〜5質量%であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
化粧料であることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−223991(P2007−223991A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49944(P2006−49944)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】