説明

皮膚外用剤

【課題】 本発明は、消費者が老化防止機能を実感できる製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明によれば、アメリカホドイモ抽出物を配合したことを特徴とする皮膚外用剤が提供され、当該外用剤は、アメリカホドイモ抽出物の有する美白作用および抗老化作用をいかんなく発揮することができる製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マメ科ホドイモ属のアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)から抽出した有効成分を配合することを特徴とした皮膚外用剤に関するものであり、さらに詳しくは、美白作用と老化防止作用を併せ持つスキンケア製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向は根強く、食生活に気を配りながら内面的に健康な肉体や精神を維持する努力が行われるようになってきた。例えば、健康食品や機能性食品の積極的な摂取等がその現われである。また、補助食品のバリエーションも多く、いわゆるサプリメントはすっかり一般消費者にも定着しつつある新しい食形態である。
【0003】
このような中、食物繊維を多く含む素材は健康志向にうってつけであり、それらの健康食品や機能性食品としての応用研究は盛んであるが、特にイモ類は健康をイメージできる食の素材として非常になじみのあるものである。
【0004】
化粧品分野においては、ヤマノイモ類の有する機能性に着目され、それらの応用開発が試みられている。
【特許文献1】特開平6−219934号公報
【特許文献2】特開平10−45615号公報
【0005】
例えば、特開平6−219934号公報にはサンヤクの抽出物がメラニン生成抑制作用に基づく美白化粧料が開示されている。また、特開平10−45615号公報には同じくヤマノイモ科(Dioscoreaceae)のサンヤクの抽出物を配合した繊維芽細胞増殖促進剤が開示されている。
【0006】
また、ヤマノイモ類にはステロイドサポニン(ジオスシン)含まれており、抗炎症作用および抗酸化作用があることが公知であるが、老化防止の分野に係るスキンケアは知られていない。
【0007】
本発明者は、これらの実情に鑑みて、ヤマノイモ類本来の機能的特徴である抗炎症作用を損わず、老化防止にも有効な機能を有する素材を開発し、先に出願をした(特願2005−312445号)。
【0008】
さらに本発明者は、老化防止素材の研究を推し進め、特に他のイモ類を中心に機能性探索の結果、マメ科ホドイモ属のアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)に優れた老化防止効果と美白効果が併有されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような現況に基づくものであり、消費者が皮膚の老化防止効果を実感できる原料を有効成分として配合した外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために鋭意探索を続けたところ、マメ科ホドイモ属アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)に所望の素材としての特異的な適性を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の皮膚外用剤は、マメ科ホドイモ属アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)から抽出した有効成分を配合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、美白作用と老化防止作用によって、正常な美肌状態を維持する製剤が提供される。以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の皮膚外用剤は、マメ科ホドイモ属アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)から抽出した有効成分を配合することを特徴とするものである。アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)は、別名を塊芋(ホドイモ)、ホトドコロともいい、北アメリカ原産の蔓性植物の根茎である。日本へは約100年前の明治時代、東北地方の農家がりんごの苗木を輸入する際に入ってきたとされている。
【0014】
本発明で使用されるアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)の抽出物は、アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)の根茎を親水性の溶媒で抽出することによって得られる抽出物を意味する。以下に、本発明の有効成分であるアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)抽出物の好適な製造方法を述べる。
【0015】
アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)の根茎を乾燥させ、親水性溶媒を1:1〜1:100の割合で添加し、常温・常圧で、1時間〜96時間浸漬または攪拌して抽出する。その抽出液をろ過等の精製工程を経て本発明の抽出物を得ることができる。
【0016】
原料のアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)については通常、抽出効率を考慮して、好ましくは予め粉砕機で約4mm以下に粉砕する。乾燥工程の有無は得られる抽出物の作用の強弱には影響を与えないため、いずれの方法も適宜選択して採用し得るものである。
【0017】
また、抽出効率という点では、水抽出の際には、pHは4.0〜10.0に調整すると好ましいが、安定性の面では、pH7.0以上で抽出を行った場合、本品の安定性を著しく低下させ、着色が著しいため化粧品原料としての商品価値を低下させることとなることから、最も好ましい条件としては4.0〜7.0である。さらに、有効成分の抽出効率を上げるために加温、加熱抽出する等の条件設定は任意である。
【0018】
抽出溶媒としては、親水性の溶媒であればいずれも使用できるが、実用性を加味すると、水、低級アルコール類から選ばれた1種または2種以上が好ましく、本発明の目的とする美白作用と抗老化作用を効果的に発揮せしめる点に着目した場合には特に水、エタノール及び1,3−ブチレングリコールから選ばれた1種または2種以上が好ましい。
【0019】
このようにして得た抽出物は、それ自体をそのまま使用に供しても良いが、通常は製剤に配合して使用する。そして製剤の形態は、外用として提供し得るものであるが、皮膚外用剤一般に許容し得る基剤を選択し患部に直接塗布して使用される。この場合には、ローションやエッセンス等に代表される均一系製剤のほか、クリームや乳液に代表されるO/W、W/O型などの一般乳化系、W/O/W、O/W/O型の特殊な多層エマルジョン、その他にもペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型など公知の形態の基礎基剤としても他の成分と組合せて幅広く使用に供されるものであり特段の制約はない。
【0020】
これらの本発明において、アメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)抽出物の配合量は、クリーム、ローション、乳液、パック、化粧水、エッセンス等の化粧品の場合と、シートマスク剤、パップ剤、プラスター剤等の剤型として使用する場合のいずれにおいても、製剤全体に対して0.001〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で配合される。配合量が0.001重量%未満の場合は、美白作用および抗老化作用が不十分である。また20重量%を越えて用いてもそれ以下の場合と特に効果上の差異はなく、この場合は経済的に不利であるという問題がある。
【0021】
なお、本発明においては、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、老化防止剤として公知の各種ビタミン類、フラボノイド類、美白剤として公知のコウジ酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン及びこれの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0022】
またさらに、本発明の皮膚外用剤にはこれら公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例】
【0023】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0024】
<製造例1>
アピオス(Apios Americana.Medikus)の根茎を90℃で1時間加熱した後、みじん切りにして乾燥させた。乾燥した試料0.6kgに水10kgを加え、室温で96時間浸漬し、これをろ過して抽出物約9kgを得た。
【0025】
<製造例2>
アピオス(Apios Americana.Medikus)の根茎を90℃で1時間加熱した後、みじん切りにして乾燥させた。乾燥した試料0.6kgに50%エタノール10kgを加え、室温で96時間浸漬し、これをろ過して抽出物約9kgを得た。
【0026】
<製造例3>
アピオス(Apios Americana.Medikus)の根茎を90℃で1時間加熱した後、みじん切りにして乾燥させた。乾燥した試料0.6kgにエタノール10kgを加え、室温で96時間浸漬し、これをろ過して抽出物約9kgを得た。
【0027】
<製造例4>
アピオス(Apios Americana.Medikus)の根茎を121℃で20分間加熱した後、みじん切りにして乾燥させた。乾燥した試料0.6kgに1,3−ブチレングリコール10kgを加え、室温で96時間浸漬し、これをろ過したろ液に水21kgを加え、抽出物約30kgを得た。
【0028】
<試験例1>美白作用(マウスメラノーマB16細胞白色化作用)
a) 試験方法
10v/v%牛胎児血清を含むEagle's MEM培地10mlを培養シャーレに入れ、B16細胞を0.5×105 個ずつ播種し、37℃、5%CO2 気相下で培養した。培養24時間後に、本発明の試料を最終濃度が5.0〜11.0%になるように添加した。同様に、比較例として、コウジ酸を2.5mmol/L、3.5mmol/L添加した。また、試料無添加のものをコントロールとした。培養3日目に1回の培地交換を行い、5日間培養後、培養シャーレから細胞を剥離し、遠心分離(約1000rpm)して細胞ペレットを作製した。この細胞ペレットの白色化度を肉眼的に観察し、以下の判断基準にしたがって判定した。また、培養後の細胞数を測定し細胞生存率を算出した。
[白色化度の判定基準]
−:黒色(コントロールと同程度)
±:黒色〜灰色(コントロールより淡い)
+:灰色
2+:灰色〜白色
【0029】
b)試験結果
試験の結果を表1に示す。表1に示すように、アピオスの抽出物(製造例1乃至3)には、メラニン生成抑制作用が認められた。
【0030】
【表1】

【0031】
<試験例2> 抗老化作用(ラジカル消去作用)
a) 試験方法
不飽和脂肪酸ラジカルのモデルとして安定なフリーラジカルであるジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)を用いて、ラジカル消去作用を測定した。本発明の試料原液あるいは75%、50%、25%の濃度となるようにエタノールで希釈した液2mLに、0.1mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)2mLおよび0.5mmol/L DPPHエタノール溶液1mLを加え、30分放置後、波長517nmで吸光度を測定し、以下の式によりラジカル消去率を算出した。
ラジカル消去率(%)=
100×(コントロールのOD−試料のOD)/コントロールのOD
【0032】
b)試験結果
試験の結果を表2に示す。表2に示すように、アピオスの抽出物(製造例1乃至4)には、ラジカル消去作用が認められた。
【0033】
【表2】

【0034】
<試験例3> 抗老化作用(抗酸化作用)
a) 試験方法
100mmol/Lリノール酸エタノール溶液1.0mL、0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)6.0mL、エタノール1.0mL、水1.0mL、試料液1.0mLを混合し、試験液とした。試験液を40℃でインキュベートし、1日後、2日後、3日後、6日後にロダン鉄法により過酸化物価を測定し、抗酸化作用を評価した。試料液は、本発明の試料を最終濃度が0.1〜10.0%になるように添加した。同様に、比較例として、α−トコフェロールを8μmol/Lとなるように添加した。また、水を添加したものをコントロールとした。
ロダン鉄法:試験液0.1mLに75%エタノール4.7mL、30%ロダンアンモシウム0.1mL、0.02mmol/L塩化第一鉄の3.5%塩酸溶液0.1mLを加え、3分後に500nmにおける吸光度を測定し、過酸化物価の値とした。
【0035】
b)試験結果
試験の結果、コントロールでは日数経過とともにリノール酸の分解によって過酸化物価が上昇したが、アピオスの抽出物(製造例1乃至4)を添加した場合では過酸化物価の上昇が抑えられ、強い抗酸化作用を示した。
【0036】
【表3】

【0037】
処方例1 化粧水
(重量%)
1.アメリカホドイモ抽出物(製造例1) 3.00
2.アラントイン 0.10
3.エタノール 15.00
4.クエン酸 0.10
5.パラオキシ安息香酸エステル 0.30
6.1,3−ブチレングリコール 4.00
7.精製水 適 量
【0038】
処方例2 エッセンス
(重量%)
1.アメリカホドイモ抽出物(製造例2) 1.00
2.クエルセチン 0.05
3.ヒアルロン酸 5.00
4.2%コハク化ケフィラン水溶液 1.50
5.レチノイン酸 0.01
6.グリセリン 2.00
7.パラオキシ安息香酸エステル 1.00
8.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 2.00
9.エデト酸二ナトリウム 0.03
10.精製水 適 量
【0039】
処方例3 クリーム
(重量%)
1.アメリカホドイモ抽出物(製造例3) 0.10
2.アルブチン 0.05
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
4.モノステアリン酸グリセリン 1.50
5.ベヘニルアルコール 5.00
6.流動パラフィン 7.00
7.オクタン酸セチル 5.00
8.メチルポリシロキサン 0.50
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.キサンタンガム 0.01
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量
【0040】
処方例4 クリームパック
(重量%)
1.アメリカホドイモ抽出物(製造例2) 0.50
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.ビタミンA 0.01
12.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.05
13.精製水 適 量
【0041】
処方例5 乳液
(重量%)
1.アメリカホドイモ抽出物(製造例4) 0.50
2.コウジ酸 5.00
3.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
4.オクチルドデカノール 3.00
5.ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.00
6.ステアリン酸 0.50
7.シアバター 1.00
8.アボガド油 4.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.クインスシードエキス 5.00
11.キサンタンガム 0.15
12.フィチン酸 0.02
13.d-δ-トコフェロール 0.01
14.精製水 適 量

これら処方例1乃至5は、いずれも本発明の目的を達成する効果を有していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科ホドイモ属のアメリカホドイモ(Apios Americana.Medikus)から抽出した有効成分を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
抽出溶媒が水、低級アルコール類から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
低級アルコール類がエタノール、1,3-ブチレングリコールであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。



【公開番号】特開2007−332092(P2007−332092A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167351(P2006−167351)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000176110)三省製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】