説明

皮膚外用剤

【課題】次の3つの課題を同時に解決し、有用な毛穴ケア剤を提供すること(1)b-FGFの産生を抑制することで不全角化(毛穴の開きの起因)とメラノサイト増殖(毛穴の黒ずみの起因)を抑えること(2)コラゲナーゼの産生を抑制することでコラーゲンの分解を抑え、毛穴のたるみを抑えること(3)エンドセリン-1の産生を抑制することでメラニンの産生を抑え、毛穴の黒ずみを抑えること
【解決手段】NF−κ―B活性化抑制作用を有するキンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミの植物抽出物の少なくとも1種以上、またはこれらとコウジ酸とを併用することで、上記課題の解決が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の植物由来のNF−κB活性化抑制作用を有する抽出物を有効成分とする毛穴ケア用の皮膚外用剤に関するものである。さらに、当該植物抽出物とコウジ酸を選択的に併用することでNF−κB活性化抑制作用を相乗的に奏することを可能にした皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、毛穴の目立ち(特にたるみや黒ずみ)によって肌のくすみを気にする悩みが増えている。しかしながら、毛穴の目立ちが発達するメカニズムが充分明らかではないこともあり、例えば収斂化粧水や角栓の除去による対応が一般的となっていた(特許文献1、2)。またファンデーションで見た目の改善を図ることも多いが、それらは、いずれも毛穴の目立ちの根本的な解決となっておらず、その効果も充分ではなかった。
【0003】
最近の研究によれば、毛穴の目立ちは、不全角化およびメラノサイトの増殖に一因があり、これらはb-FGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)の亢進によって起こることが明らかになってきている。
【0004】
また、毛穴のたるみが毛穴の目立ちを助長するが、毛穴のたるみは皮膚の弾力低下により生じる。その起因となるのは、コラゲナーゼ産生によるコラーゲンなどの真皮成分の分解や変性である。
【0005】
さらに、毛穴の黒ずみはエンドセリン-1産生によるメラニン産生が影響するといわれている。肌のくすみはこれらの個々の現象が相俟って生じることから、b-FGFの産生、コラゲナーゼ産生およびエンドセリン-1産生を効果的に抑制しうる機能性成分の提供が強く求められている。
【0006】
そこで、本発明者は、次の機能性を有する同時に満たす機能性を見出すことで肌のくすみを改善する素材の提供を目指した。
(1)b-FGFの産生を抑制することで不全角化(毛穴の開きの起因)とメラノサイト増殖(毛穴の黒ずみの起因)を抑えること(2)コラゲナーゼの産生を抑制することでコラーゲンの分解を抑え、毛穴のたるみを抑えること(3)エンドセリン-1の産生を抑制することでメラニンの産生を抑え、毛穴の黒ずみを抑えること
【0007】
鋭意検討の結果、本発明者は、NF−κB活性化抑制作用により下記(1)乃至(3)に掲げた3つの抑制が達成できることに着目し、本発明を完成した。
NF−κB活性化抑制剤は、炎症を伴う様々な疾患に有用とされ、医薬、化粧分野でも局所的な応用がされている(特許文献3、4、5及び6など)。特許文献5乃至7には、植物素材での応用例、例えば色素沈着、しわ、たるみ等の予防・改善が開示されている。しかしながら、これら従来技術においては、本発明のような効果を期待して植物素材の応用を開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−143783号
【特許文献2】特開2009−173598号
【特許文献3】特表2009−544717号
【特許文献4】特開2006−83122号
【特許文献5】特開2005−194245号
【特許文献6】特開2005−194246号
【特許文献7】特開2007−176878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から明らかなように、NF−κB活性化抑制作用を有する素材またはその組成物を提供することで、上記(1)乃至(3)の問題を同時解決し、肌のくすみを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者は、NF−κB活性化抑制作用を有する素材と組成物について探索した結果、特定の11種の植物抽出物およびこれらの1種以上とコウジ酸が課題解決のために優れた効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下の皮膚外用剤が提供される。
キンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上を含む皮膚外用剤。当該植物抽出物とコウジ酸とを含む皮膚外用剤。
【0012】
NF−κB活性化を抑制すれば、b-FGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)の活性化抑制になることから、b-FGFの亢進によって起こる不全角化(毛穴の開きの起因)、メラノサイトの増殖(毛穴の黒ずみの起因)を抑制しうる。
【0013】
また、毛穴のたるみは皮膚の弾力低下の起因となるコラーゲンなどの真皮成分の分解や変性であり、そのうち真皮1型コラーゲンの分解はMMP−1(1型コラーゲン分解酵素)により起こるところ、当該MMP−1の産生は、NF−κBにより亢進されることからNF−κB活性化を抑制すれば毛穴のたるみが抑制できる。
【0014】
さらに、NF−κB活性化を抑制すすることによって、エンドセリン-1の産生を抑制することができることから、黒ずみのもとになるメラニンの産生を抑えることもできる。
【0015】
これら3つの効果が同時に図られることで、肌のくすみが一気に解決できることから、NF−κB活性化抑制剤の皮膚適用は肌に負担をかけずに発明の目的を達成するうえでとても合理的である。
【0016】
本発明者は、キンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上がすぐれたNF−κB活性化抑作用を有することを見出し、またキンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上とコウジ酸との組成物がすぐれたNF−κB活性化抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れたNF−κB活性化抑制作用を有する皮膚外用剤の適用によって、肌のくすみが予防・改善され、透明感のある肌をもたらすことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好適な実施形態を説明する。
本発明の皮膚外用剤は、キンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上を有効成分とするものである。また本発明の皮膚外用剤は、これら植物抽出物の少なくとも1種以上とコウジ酸とを組合せて有効成分とするものである。
【0019】
キンギンカ(Lonicera japonica)とは、スイカズラ科の植物で、山野や道端に普通に生える蔓性の植物である。薬理作用として抗菌作用、抗ウイルス作用、抗真菌作用、収斂作用および利尿作用などが知られている。本発明で使用される部位は、好適には花である。
【0020】
ナツシロギク(Tanacetum Parthenium)とは、キク科の植物で、ヨーロッパや北アメリカなどでは野生化している多年草である。別名フィーバーフューとも呼ばれるハーブとして有名である。本発明で使用される部位は、好適には葉である。なお、ナツシロギクの葉に含まれている重要成分として、パルテノライドがあり、近年では今、その抗がん効果・抗炎症作用が注目され、世界中で研究が行われている。
【0021】
シャクヤク(Paeonia lactiflova)とは、ボタン科植物で、アジア大陸北東部の原産の多年草である。本発明で使用される部位は、好適には根である。シャクヤクの根は、消炎・鎮痛・抗菌・止血・抗けいれん作用があることが知られている。
【0022】
セージ(Salvia officinalis)とは、シソ科の植物で、ヨーロッパ原産の多年草である。日本では一般にはサルビアと呼ばれている。抗菌、収斂、抗炎症作用などの効果が知られている。本発明で使用される部位は、好適には葉である。なお、葉を乾燥したものは薬品や食品の賦香料、調味料として古くから使用されてきた。
【0023】
リンデン(Tilia europaea)とは、和名を菩提樹といい、シナノキ科の落葉高木である。花にはストレスなどの鎮静作用、枝には利尿作用、脂肪分解、発汗作用などの効果が知られている。本発明で使用される部位は、好適には花および葉である。
【0024】
ディル(Anethum graveolens)とは、セリ科の一年草である。種子や葉を香味料や生薬として用いられている。創傷治癒剤として外用にも用いられている。本発明で使用される部位は、好適には種子である。
【0025】
オウゴン(scutellaria baicalensis)とは、シソ科の植物で、抗菌、抗アレルギー、収斂作用などの効果が知られている。本発明で使用される部位は、好適には根である。
【0026】
ニクジュヨウ(Cistanche salsa)とは、ハマウツボ科の多年寄生の草本植物で、止血、滋養強壮などの効果が知られ、食品としても使用されている。本発明で使用される部位は、好適には全草である。
【0027】
ジョテイシ(Ligustrum lucidum)とは、モクセイ科の植物で日本国暖地の山に自生する常緑樹である。古くから老人性白内障等の治療薬としてよく用いられている。本発明で使用される部位は、好適には果実である。
【0028】
ネトル(Urtica dioica)とは、イラクサ科の植物で、抗アレルギー作用のあるハーブとして用いられている。本発明で使用される部位は、好適には葉である。
【0029】
ドクダミ(Houttuynia cordata)とは、ドクダミ科の多年草で、山野、路傍の湿地に自生する。民間薬として、外用としては、化膿、腫瘍、創傷に用いられ、内服用としては、緩下剤、利尿剤等として使用されてきた。本発明で使用される部位は、好適には全草である。
【0030】
本発明の抽出物は、上記各種の抽出部位1種又は2種以上の組合せ原料から溶媒を用いて直接抽出することで得られるものであるが、溶媒種としては、発明の効果の点から親水性の溶媒、例えば水、メタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール或いはこれらの含水アルコールが好ましく、その中でも特に水、エタノール及び1,3−ブチレングリコールを使用するのが好ましい。疎水性の溶媒では発明が目的としている効果が得られない。
【0031】
抽出物は、それ自体をそのまま使用に供しても良いが、通常は製剤に配合して使用する。そして製剤の形態は、外用として提供し得るものであるが、皮膚外用剤一般に許容し得る基剤を選択し患部に直接塗布して使用される。この場合には、ローションやエッセンス等に代表される均一系製剤のほか、クリームや乳液に代表されるO/W、W/O型などの一般乳化系、W/O/W、O/W/O型の特殊な多層エマルジョン、その他にもペースト剤、軟膏及びチンキ剤等の塗布剤型、エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤型、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤型など公知の形態の基礎基剤としても他の成分と組合せて幅広く使用に供されるものであり特段の制約はない。
【0032】
これらの本発明において、各抽出物の配合量は、クリーム、ローション、乳液、パック、化粧水、エッセンス等の化粧品の場合と、シートマスク剤、パップ剤、プラスター剤等の剤型として使用する場合のいずれにおいても、製剤全体に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%の範囲で配合される。配合量が0.01重量%未満の場合は、NF−κB活性化抑制作用が不十分である。また30重量%を越えて用いてもそれ以下の場合と特に効果上の差異はなく、この場合は経済的に不利であるという問題がある。
【0033】
一方、コウジ酸については、製剤全体に対して0.01〜5重量%、好適には0.1〜2重量%で植物抽出物と併用して十分な相乗効果が発揮できる。
【0034】
本発明においては、通常に用いられる種々の公知の有効成分、例えば、老化防止剤として公知の各種ビタミン類、フラボノイド類、美白剤として公知のコウジ酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン及びこれの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ、消炎剤としては副腎皮質ホルモン、ε−アミノカプロン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン、アラントイン等の各種化合物、その他にも胎盤抽出物、甘草抽出物、紫根エキス、乳酸菌培養抽出物などの動植物・微生物由来の各種抽出物等を本発明の効果を損なわない範囲で、その時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。
【0035】
またさらに、本発明の皮膚外用剤にはこれら公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分のほか、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例1】
【0036】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0037】
(製造例1)
キンギンカの花の粉砕物100gに水1000gを加え、121℃で15分間加熱し、室温まで冷却後、ろ過し、キンギンカの水抽出液を得た。
【0038】
(製造例2)
ナツシロギクの葉の粉砕物100gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ナツシロギクの50%エタノール抽出液を得た。
【0039】
(製造例3)
シャクヤクの根の粉砕物100gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、シャクヤクの50%エタノール抽出液を得た。
【0040】
(製造例4)
セージの葉の粉砕物100gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、セージの50%エタノール抽出液を得た。
【0041】
(製造例5)
リンデンの花及び葉の粉砕物100gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、リンデンの50%エタノール抽出液を得た。
【0042】
(製造例6)
ディルの種子の粉砕物100gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ディルの50%エタノール抽出液を得た。
【0043】
(製造例7)
オウゴンの根の粉砕物100gに水1000gを加え、121℃で15分間加熱し、室温まで冷却後、ろ過し、オウゴンの水抽出液を得た。
【0044】
(製造例8)
ニクジュヨウの全草の粉砕物100gに水1000gを加え、121℃で15分間加熱し、室温まで冷却後、ろ過し、ニクジュヨウの水抽出液を得た。
【0045】
(製造例9)
ジョテイシの果実の粉砕物100gに水1000gを加え、121℃で15分間加熱し、室温まで冷却後、ろ過し、ジョテイシの水抽出液を得た。
【0046】
(製造例10)
ネトルの葉の粉砕物100gに50%1,3−ブチレングリコール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ネトルの50%1,3−ブチレングリコール抽出液を得た。
【0047】
(製造例11)
ドクダミの全草の粉砕物100gに50%1,3−ブチレングリコール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ドクダミの50%1,3−ブチレングリコール抽出液を得た。
【0048】
(製造例12)組合せ原料の例 その1
キンギンカの花の粉砕物25gとオウゴンの根の粉砕物25gに水1000gを加え、121℃で15分間加熱し、室温まで冷却後、ろ過し、キンギンカ及びオウゴンの混合水抽出液を得た。
【0049】
(製造例13)組合せ原料の例 その2
ナツシロギクの葉の粉砕物25gとシャクヤクの根の粉砕物25gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ナツシロギク及びシャクヤクの混合50%エタノール抽出液を得た。
【0050】
(製造例14)組合せ原料の例 その3
セージの葉の粉砕物25gとリンデンの葉及び花の粉砕物25gに50%エタノール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、セージ及びリンデンの混合50%エタノール抽出液を得た。
【0051】
(製造例15)組合せ原料の例 その4
ドクダミの全草の粉砕物25gとネトルの葉の粉砕物25gに50%1,3−ブチレングリコール1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、ドクダミ及びネトルの混合50%1,3−ブチレングリコール抽出液を得た。
【0052】
(比較例1)
キンギンカの花、ナツシロギクの葉、シャクヤクの根、セージの葉、リンデンの花及び葉、ディルの種子、オウゴンの根、ニクジュヨウの全草、ジョテイシの果実、ネトルの葉、ドクダミの全草の各粉砕物100gにヘキサン1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、溶媒を留去して、各植物のヘキサン抽出物を得た。
【0053】
(比較例2)
キンギンカの花、ナツシロギクの葉、シャクヤクの根、セージの葉、リンデンの花及び葉、ディルの種子、オウゴンの根、ニクジュヨウの全草、ジョテイシの果実、ネトルの葉、ドクダミの全草の各粉砕物100gにクロロホルム1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、溶媒を留去して、各植物のクロロホルム抽出物を得た。
【0054】
(比較例3)
キンギンカの花、ナツシロギクの葉、シャクヤクの根、セージの葉、リンデンの花及び葉、ディルの種子、オウゴンの根、ニクジュヨウの全草、ジョテイシの果実、ネトルの葉、ドクダミの全草の各粉砕物100gに酢酸エチル1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、溶媒を留去して、各植物の酢酸エチル抽出物を得た。
【0055】
(比較例4)
キンギンカの花、ナツシロギクの葉、シャクヤクの根、セージの葉、リンデンの花及び葉、ディルの種子、オウゴンの根、ニクジュヨウの全草、ジョテイシの果実、ネトルの葉、ドクダミの全草の各粉砕物100gにベンゼン1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、溶媒を留去して、各植物のベンゼン抽出物を得た。
【0056】
(比較例5)
キンギンカの花、ナツシロギクの葉、シャクヤクの根、セージの葉、リンデンの花及び葉、ディルの種子、オウゴンの根、ニクジュヨウの全草、ジョテイシの果実、ネトルの葉、ドクダミの全草の各粉砕物100gにジクロロメタン1000gを加え、室温で1週間浸漬後、ろ過し、溶媒を留去して、各植物のジクロロメタン抽出物を得た。
【実施例2】
【0057】
(試験1)NF−κB活性化抑制試験
<方法>
NF−κB活性化により分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)を発現するレポーター遺伝子(pNiFty2-SEAP(Zeo)、InvivoGen社)をトランスフェクトしたBalb/3T12-3細胞(マウス由来線維芽細胞株)を作製した。
培地はFBSを2%添加したMEM培地を用いた。培地に懸濁したトランスフェクト細胞を24ウェルプレート(Falcon製)に1.5×10個/ウェルとなるように播種して24時間培養後、各植物抽出液(製造例1〜15)を培地中濃度が表1に示す濃度となるように添加した。比較例については、各抽出物をDMSO 1000gに溶解し表1に示す濃度で添加した。コントロールは、各試料の代わりに溶媒を添加した。また、製造例1〜15とコウジ酸との併用効果確認のため、表1に示す濃度でコウジ酸を添加した。その6時間後にNF−κB活性化のため10ng/mLの濃度となるようにリコンビナントTNF−α溶液を添加し、さらに24時間培養した。培養終了後、培養液上清のSEAP活性を4−MUPを基質として、励起波長360nm、蛍光波長440nmで測定した。
NF-κB活性抑制率は下式により算出した。
NF-κB活性化抑制率( % )
= { 1 − ( A − B ) / ( C − D ) } × 1 0 0
但し、前記中、A は、各植物抽出液及びTNF-α溶液を添加したときの蛍光強度を表す。Bは、各植物抽出液を添加し、TNF−α溶液を添加しないときの蛍光強度を表す。C は、各植物抽出液添加で、TNF−α溶液を添加したときの蛍光強度を表す。D は、各植物抽出液およびTNF−α溶液を添加しないときの蛍光強度を表す。
【0058】
<結果>
試験の結果、製造例1〜15は、細胞毒性を示さずNF-κBの活性化を抑制した。表1にNF−κB活性化抑制試験の結果を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
<考察>
コウジ酸と製造例1〜15の各植物抽出液との併用により相乗的なNF−κB活性化抑制作用の向上が認められた。また、製造例12〜15の結果に示すように各植物混合による抽出液は単独で抽出するよりも高い効果を有していた。一方、比較例の結果からも明らかなように疎水性溶媒による抽出物には効果が認められなかった。
【実施例3】
【0061】
処方例1 化粧水1
(重量%)
1.キンギンカ抽出液(製造例1) 3.00
2.ドクダミ+ネトル混合抽出液(製造例15) 1.00
3.アラントイン 0.10
4.エタノール 15.00
5.クエン酸 0.10
6.パラオキシ安息香酸エステル 0.30
7.1,3−ブチレングリコール 4.00
8.精製水 適 量
【0062】
処方例2 化粧水2
(重量%)
1.ナツシロギク抽出液(製造例2) 1.00
2.アラントイン 0.10
3.エタノール 15.00
4.クエン酸 0.10
5.パラオキシ安息香酸エステル 0.30
6.1,3−ブチレングリコール 4.00
7.精製水 適 量
【0063】
処方例3 化粧水3
(重量%)
1.シャクヤク抽出液(製造例3) 5.00
2.アラントイン 0.10
3.エタノール 15.00
4.クエン酸 0.10
5.パラオキシ安息香酸エステル 0.30
6.1,3−ブチレングリコール 4.00
7.精製水 適 量
【0064】
処方例4 エッセンス1
(重量%)
1.リンデン抽出液(製造例5) 2.00
2.クエルセチン 0.05
3.ヒアルロン酸 5.00
4.2%コハク化ケフィラン水溶液 1.50
5.レチノイン酸 0.01
6.グリセリン 2.00
7.パラオキシ安息香酸エステル 1.00
8.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 2.00
9.エデト酸二ナトリウム 0.03
10.精製水 適 量
【0065】
処方例5 エッセンス2
(重量%)
1.ジョテイシ抽出液(製造例9) 2.50
2.クエルセチン 0.05
3.ヒアルロン酸 5.00
4.2%コハク化ケフィラン水溶液 1.50
5.レチノイン酸 0.01
6.グリセリン 2.00
7.パラオキシ安息香酸エステル 1.00
8.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 2.00
9.エデト酸二ナトリウム 0.03
10.精製水 適 量
【0066】
処方例6 エッセンス3
(重量%)
1.ドクダミ抽出液(製造例11) 10.00
2.クエルセチン 0.05
3.ヒアルロン酸 5.00
4.2%コハク化ケフィラン水溶液 1.50
5.レチノイン酸 0.01
6.グリセリン 2.00
7.パラオキシ安息香酸エステル 1.00
8.1%カルボキシビニルポリマー水溶液 2.00
9.エデト酸二ナトリウム 0.03
10.精製水 適 量
【0067】
処方例7 クリーム1
(重量%)
1.セージ抽出液(製造例4) 1.00
2.アルブチン 0.05
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
4.モノステアリン酸グリセリン 1.50
5.ベヘニルアルコール 5.00
6.流動パラフィン 7.00
7.オクタン酸セチル 5.00
8.メチルポリシロキサン 0.50
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.キサンタンガム 0.01
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量
【0068】
処方例8 クリーム2
(重量%)
1.ディル抽出液(製造例6) 10.00
2.アルブチン 0.05
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
4.モノステアリン酸グリセリン 1.50
5.ベヘニルアルコール 5.00
6.流動パラフィン 7.00
7.オクタン酸セチル 5.00
8.メチルポリシロキサン 0.50
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.キサンタンガム 0.01
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量
【0069】
処方例9 クリーム3
(重量%)
1.オウゴン抽出液(製造例7) 0.50
2.セージ+リンデン混合抽出液(製造例14) 0.05
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.50
4.モノステアリン酸グリセリン 1.50
5.ベヘニルアルコール 5.00
6.流動パラフィン 7.00
7.オクタン酸セチル 5.00
8.メチルポリシロキサン 0.50
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.70
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.キサンタンガム 0.01
12.エデト酸二ナトリウム 0.01
13.精製水 適 量
【0070】
処方例10 クリームパック1
(重量%)
1.ニクジュヨウ抽出液(製造例8) 5.00
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.ビタミンA 0.01
12.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.05
13.精製水 適 量
【0071】
処方例11 クリームパック2
(重量%)
1.ネトル抽出液(製造例10) 3.00
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.ビタミンA 0.01
12.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.05
13.精製水 適 量
【0072】
処方例12 クリームパック3
(重量%)
1.キンギンカ+オウゴン混合抽出液(製造例12) 2.00
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.ビタミンA 0.01
12.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.05
13.精製水 適 量
【0073】
処方例13 クリームパック4
(重量%)
1.ナツシロギク+シャクヤク混合抽出液(製造例13) 2.00
2.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 3.00
3.ポリエチレングリコール1500 5.00
4.ステアリン酸ジエタノールアミド 5.00
5.ステアリン酸 5.00
6.ミリスチン酸 5.00
7.ヤシ油 15.00
8.天然ビタミンE 0.04
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.00
11.ビタミンA 0.01
12.エデト酸二ナトリウムカルシウム 0.05
13.精製水 適 量
【0074】
処方例14 乳液1
(重量%)
1.セージ+リンデン混合抽出液(製造例14) 2.50
2.コウジ酸 5.00
3.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
4.オクチルドデカノール 3.00
5.ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.00
6.ステアリン酸 0.50
7.シアバター 1.00
8.アボガド油 4.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.クインスシードエキス 5.00
11.キサンタンガム 0.15
12.フィチン酸 0.02
13.d-δ-トコフェロール 0.01
14.精製水 適 量
【0075】
処方例15
乳液2
(重量%)
1.ドクダミ+ネトル混合抽出液(製造例15) 5.00
2.コウジ酸 5.00
3.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
4.オクチルドデカノール 3.00
5.ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.00
6.ステアリン酸 0.50
7.シアバター 1.00
8.アボガド油 4.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.クインスシードエキス 5.00
11.キサンタンガム 0.15
12.フィチン酸 0.02
13.d-δ-トコフェロール 0.01
14.精製水 適 量
【0076】
処方例16
乳液3
(重量%)
1.ナツシロギク抽出液(製造例2) 1.00
2.コウジ酸 5.00
3.α−グルコシル−L−アスコルビン酸 2.00
4.オクチルドデカノール 3.00
5.ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.) 1.00
6.ステアリン酸 0.50
7.シアバター 1.00
8.アボガド油 4.00
9.パラオキシ安息香酸エステル 0.20
10.クインスシードエキス 5.00
11.キサンタンガム 0.15
12.フィチン酸 0.02
13.d-δ-トコフェロール 0.01
14.精製水 適 量
これら処方例1乃至16は、いずれも本発明の目的を達成する効果を有していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、キンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上を有効成分とする皮膚外用剤、あるいはキンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディル、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上とコウジ酸との組成物を有効成分とする皮膚外用剤が提供される。
当該外用剤が有する優れたNF−κB活性化抑制作用によって、肌のくすみが予防・改善され、透明感のある肌をもたらすことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キンギンカ、ナツシロギク、シャクヤク、セージ、リンデン、ディルシード、オウゴン、ニクジュヨウ、ジョテイシ、ネトル及びドクダミから選ばれた植物抽出物の少なくとも1種以上を含む皮膚外用剤。
【請求項2】
コウジ酸を含む請求項1に記載の皮膚外用剤。


【公開番号】特開2012−6838(P2012−6838A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141121(P2010−141121)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000176110)三省製薬株式会社 (20)
【Fターム(参考)】