説明

皮膚外用剤

【課題】従来、ヒューミックシェールの水抽出物を含む飲料水が知られている。しかし、この飲料水は、フルボ酸を含んでおり、強い酸味および渋みを有し、飲用に適さないという問題点があった。本発明は、ヒューミックシェールの水抽出物を使用し、ヒューミックシェールに由来するミネラルを簡便かつ容易に人体または動物内に摂取可能な皮膚外用剤の提供を課題とする。
【解決手段】ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなるクリーム状、軟膏状または貼付剤の形態の皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関するものであり、詳しくは、植物由来ミネラルを簡便かつ容易に人体または動物内に摂取可能な皮膚外用剤に関するものである。
また本発明は、該皮膚外用剤からなるミネラル吸収促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の広がりによって、ミネラルなどの微量栄養素を含んだ飲料水が、健康増進や病気の予防などの作用を備えた機能性飲料水として種々提案され、一般にも提供されている。
例えば、ヒューミックシェールと呼ばれる腐食泥板岩の水抽出物を含む、植物由来ミネラルを含む飲料水が知られている。このヒューミックシェールは、約1億年前の熱帯雨林の堆積物を由来とする岩石であり、米国ユタ州で採掘することができる。ヒューミックシェールの水抽出物は、70種類近くのミネラルを含み、これを飲用することにより現代で不足するミネラルを体内に摂取することができる。
しかしながら、ヒューミックシェールの水抽出物は、上記のミネラル以外にフルボ酸を含んでいるという問題点がある。フルボ酸は、酸性度が約2.7の強酸性物質であり、強い酸味および渋みを有し、飲用に適さず、これがヒューミックシェールの水抽出物の普及しない一つの原因となっている。
【0003】
なお、下記特許文献1にはヒューミックシェールの水抽出物を用いた飲料水の製造方法が開示されている。
また、下記特許文献2にはヒューミックシェールの抽出物を含む石鹸が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の発明ではヒューミックシェールの抽出物を石鹸として皮膚に適用しているため、ミネラルが皮膚から吸収される前に洗い流されてしまい、結果としてミネラルの吸収効果は皆無である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4040077号公報
【特許文献2】特開2007−308673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、ヒューミックシェールの水抽出物を使用し、ヒューミックシェールに由来するミネラルを簡便かつ容易に人体または動物内に摂取可能な皮膚外用剤を提供することにある。
また本発明の別の目的は、該皮膚外用剤からなるミネラル吸収促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなるクリーム状の皮膚外用剤である。
請求項2に記載の発明は、ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなる軟膏状の皮膚外用剤である。
請求項3に記載の発明は、ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなる貼付剤の形態の皮膚外用剤である。
請求項4に記載の発明は、ポリアクリレートクロスポリマー−6をさらに含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚外用剤である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの皮膚外用剤からなるミネラル吸収促進剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒューミックシェールの水抽出物をクリーム状、軟膏状または貼付剤の形態で使用するため、フルボ酸の強い酸味および渋みを感じることなく、皮膚を介して植物由来ミネラルを良好に摂取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で調製したヒューミックシェールの水抽出物に含まれる、粒子状のミネラルの粒径分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用するヒューミックシェールは、約1億年前の熱帯雨林の堆積物を由来とする腐食泥板岩であり、米国ユタ州で採掘されている。ヒューミックシェールは公知であり、例えば上記の特許文献1および2に記載されている。また、商業的に入手可能であり、例えば株式会社LEJ管理本部から商品名アルティメット・ソリューションとして市販されている。
【0010】
ヒューミックシェールの水抽出物は、ヒューミックシェールと水とを、好ましくは48時間〜72時間浸漬することにより容易に得ることができ、該水抽出物中には、ミネラルと他の成分との複合体が80nm〜800nmの粒径として溶解または分散しているものと推測される。
抽出溶媒である水は、逆浸透膜処理を行った精製水を用いるのが好ましい。
抽出溶媒である水の温度は、例えば6〜25℃が好ましい。
ヒューミックシェールの水抽出物は、噴霧乾燥して粉末化することもできる。
【0011】
本発明では、ヒューミックシェールの水抽出物をクリーム状、軟膏状または貼付剤の形態で使用する。
【0012】
ヒューミックシェールの水抽出物をクリーム状の皮膚外用剤に調製する方法としてはとくに制限されず、従来公知の方法をいずれも採用することができる。基剤としては、親水性のものであっても、親油性のものであってもよい。また、従来公知の各種添加剤、例えば油分、界面活性剤、乳化剤、アルコール、保湿成分、増粘剤、防腐剤・防菌防黴剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、顔料、色素、香料、ビタミン類、アミノ酸類等を配合することができる。なお、本発明におけるクリーム状の皮膚外用剤は、8,000mPa・s(30℃)以上であるのが好ましく、20,000〜200,000mPa・s(30℃)であるのがさらに好ましい。
また、ヒューミックシェールの水抽出物は、リポソームに内包させてもよい。その手段としては、とくに制限されない。例えば、リポソームの構成成分としてホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン等のリン脂質を用い、必要に応じて他の添加剤とともに、エクストルーダーや高圧乳化機を用いて調製することができる。
【0013】
また、ヒューミックシェールの水抽出物を軟膏状の皮膚外用剤に調製する方法としてはとくに制限されず、従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、基剤として脂肪、ろう、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール等を用い、必要に応じて上記の各種添加剤を併用し、基剤を例えば60〜70℃に加熱し、そこに該水抽出物を添加し、十分分散させればよい。
【0014】
また、ヒューミックシェールの水抽出物を貼付剤の形態とするには、とくに制限されず、従来公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、シート状基材として、天然繊維または合成繊維の不織布や織布を用い、そこに該水抽出物を直接含浸させたり、上記のクリーム状または軟膏状の皮膚外用剤をシート状基材に塗布すること等により貼付剤を得ることができる。シート状基材の材質としては、例えばポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリウレタン、ポリアミド、コットン等が挙げられる。シート状基材の厚さは、例えば0.1〜5mmが好ましく、その形状としては正方形、長方形、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、台形、三角形、適用部位に沿った形状等が挙げられる。
【0015】
本発明の皮膚外用剤がクリーム状または軟膏状の形態であるとき、例えば噴霧乾燥により粉末化したヒューミックシェールの水抽出物は、ミネラルは皮膚外用剤全体に対して、例えば0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜10質量%、5〜10質量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、ポリアクリレートクロスポリマー−6を含有するのが好ましい。ポリアクリレートクロスポリマー−6は、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ラウリルとメタクリル酸ラウレス−4の共重合体をトリアクリル酸トリメチロールプロパンで架橋したものである。例えば、噴霧乾燥により粉末化したヒューミックシェールの水抽出物を使用してクリームを調製する場合、配合処方において該粉末が5質量%以上の高濃度であると、該粉末の水分散物が低pHを有することと相俟って、該粉末をクリーム中に均一に分散することが困難となり、皮膚を介しての植物由来ミネラルの摂取効率が悪化する可能性がある。ポリアクリレートクロスポリマー−6は、本発明の効果の点から、皮膚外用剤中、1〜10質量%の範囲で添加するのが好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、ヒトまたは動物の身体局部に塗布または貼付して使用される。本発明の皮膚外用剤は、身体のいずれの部分に適用してもよく、例えば、脚部、腹部、腕部、胸部、背部、首部、顔等が挙げられる。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、ヒューミックシェールの水抽出物をクリーム状、軟膏状または貼付剤の形態で使用するため、フルボ酸の強い酸味および渋みを感じることなく、皮膚を介して植物由来ミネラルを良好に摂取することができ、ミネラル吸収促進剤としても使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0020】
実施例1
アメリカ合衆国ユタ州エメリー市の鉱山から採鉱されたヒューミックシェール(腐食泥板岩)を、25℃の精製水の入った抽出タンクに導入した。なお、該精製水は、0.0005μmの逆浸透フィルターを通過させる逆浸透膜処理と、UV殺菌処理とを施したものである。
次に、ヒューミックシェールの水抽出処理を行った。この処理は、ヒューミックシェールを該抽出タンク中で48時間浸漬するというものである。
48時間経過後、該抽出タンクから残渣を除去し、ヒューミックシェールの水抽出物を回収し、微生物除去を目的として0.22μmのフィルターを通過させ、噴霧乾燥することにより、ヒューミックシェールの水抽出物の粉末を得た。
上記抽出操作によるヒューミックシェールの水抽出物の粉末に含まれるミネラル分析結果を、下記の表1に示す。なお、表1に示す結果は、該粉末の100倍希釈液の分析結果である。
【0021】
【表1】

【0022】
また、上記抽出操作によるヒューミックシェールの水抽出物に含まれる、粒子状のミネラルの粒径分析結果を図1に示す。
【0023】
続いて、上記のヒューミックシェールの水抽出物の粉末を5質量%、ポリアクリレートクロスポリマー−6を2質量%、その他の添加剤として、グリセリン、ワサビ根エキス、エチルヘキシルグリセリン、ヒアルロン酸、グリチルリチン酸2K、ホホバオイル、コメヌカ油、ビタミンE、ハトムギエキス、アロエベラエキス、ローズヒップ油および界面活性剤を適量添加し、残部は水を加え混合し、クリーム状の皮膚外用剤を調製した。
【0024】
実施例2
下記成分を混合して軟膏状の皮膚外用剤を調製した。
【0025】
実施例1のヒューミックシェールの水抽出物の粉末 5質量%
白色ワセリン 90質量%
流動パラフィン 2.5質量%
ミツロウ 2.5質量%
【0026】
実施例3
厚さ0.5mmのポリプロピレンシート上に、ポリエステルからなる不織布を設置し、そこに実施例2で得られた軟膏状の皮膚外用剤を、厚さ1mmとなるように塗布し、貼付剤を調製した。
【0027】
なお、実施例1で調製したクリーム状の皮膚外用剤を、顔面にやけどを負った成人女性に1日2回、適量塗布した。塗布開始してから2週間後、やけどの面積は塗布初日に対し70%に減少し、1ヶ月後は30%に減少し、6ヶ月後はほぼ100%消失した。
これに対し、ヒューミックシェールの水抽出物の粉末を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にクリーム状の皮膚外用剤を調製し、これを同様に患者に塗布した場合、塗布開始してから2週間後、やけどの面積は塗布初日に対し100%を維持し、1ヶ月後はやけどの部分がコロイド状に変化し、6ヶ月後はコロイド状の部分があざ模様に残存する結果となった。
上記の結果から、実施例1で調製したクリーム状の皮膚外用剤のミネラル吸収効果が確認された。
実施例2および3で調製した皮膚外用剤についても同様に試験したところ、上記と同様の結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなるクリーム状の皮膚外用剤。
【請求項2】
ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなる軟膏状の皮膚外用剤。
【請求項3】
ヒューミックシェールの水抽出物を含有してなる貼付剤の形態の皮膚外用剤。
【請求項4】
ポリアクリレートクロスポリマー−6をさらに含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの皮膚外用剤からなるミネラル吸収促進剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−107857(P2013−107857A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255179(P2011−255179)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(500374261)
【Fターム(参考)】