説明

皮革の製造方法

皮革の製造方法であって、なめし獣皮を、工程(A)において、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸誘導体、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と
を含み、シリコーンを含まない水性の液体で処理することを特徴とする方法、
シリコーン非含有の水性調合物、及びこれらの利用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革の製造方法であって、なめし獣皮を、工程(A)において、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と
を含み、シリコーンを含まない水性の液体で処理することを特徴とする方法
に関する。
【0002】
本発明は、またシリコーン非含有かつ天然油脂非含有の水性調合物、
及びこれらの利用法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮革にかかわる要求事項は、近年大幅に増加している。特に重要な物理特性は、軽量性、曇り抵抗性(皮革からの揮発成分の蒸散)、加熱黄変抵抗性、低レベルのVOC(揮発性有機化合物)や異臭のないことなどである。
【0004】
天然油脂を用いる従来の皮革の乳状加脂加工では、しばしば加脂皮革が時間とともに徐々に悪化していくことが認められる。例えば、特に高温では、黄変したり、異臭を帯びたり、硬化したりする。また、ときには、特定の時間の経過後に、天然油脂が表面に分離することもある。また、自動車産業による天然加脂皮革の曇りに関する要求事項、即ちFOG又はVOCとその移動、を満たすことが難しいことも多い。(曇り度DIN75201/ISO6452;静的ヘッドスペース、RAL−GZ479/VDA277(PV3341);動的ヘッドスペースPB・VWL709(ダイムラークライスラー法)(耐移動性、DIN3353;落下試験:移動と老化に対する安定性、BASF法(48時間、100℃/48時間、55℃、95%相対湿度))。皮革の物理特性を保障するために、天然成分とともに使用されている完全に合成の乳状加脂剤は、皮革の柔軟性の点で満足を与えるものではない。
【0005】
柔らかな皮革の生産にあたり基本的に難しいことは、きめが緩まることを防ぐことである。皮革が柔らかくなると、きめが劣化することが良く見受けられる。
【0006】
天然加脂剤使用の他の難点は、得られる乳状加脂皮革が疎水的になることである。よく用いられるメーザー(Maeser)試験によると、適度な品質の皮革では、かなりの量の水の透過が起こるまでに、少なくとも15000回のいわゆるメーザー屈曲に耐えることができなければならない。多くの天然加脂剤は撥水性を低下させる。つまり、一定条件では達成可能なメーザー値が、再なめしの際に天然油脂で処理した皮革では達成できなくなる。
【0007】
純粋に高分子の撥水剤を使用しても、安定的に好ましいメーザー値を得ることは難しい。これは、例えば原料皮革の品質や、なめしに用いる水の水質、特に水の硬度やその他の要因により皮革の品質が変化するためである。シリコーンを用いると、品質が改善することもある。しかし、ポリマー加脂剤と較べてシリコーンは高価であるため、シリコーンを用いる撥水加工は、高価格用途の高品質皮革を製造する場合にのみ、経済的に可能となる。
【0008】
また、シリコーンで撥水加工を行うと、きめの低下した皮革がしばしば得られることとなる。
【0009】
DE2629748には、皮革の充填及び乳状加脂に用いられる、無水マレイン酸とモノオレフィン、例えば平均値鎖長が14〜18の炭素原子数であるα−オレフィンとのコポリマーが開示されている。このコポリマーは、有機溶剤中、例えばパラフィン又はジアルキルベンゼン中で製造される。後処理を行ってもこの有機溶剤を完全に除くことは難しい。
【0010】
DE3926167A1では、皮革や毛皮に撥水性を付与するために用いるには、用いる長分子鎖オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物からなるコポリマーが有機溶剤を含まないことが重要であることを強調している。したがって、DE3926167A1では、長分子鎖オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物とから塊重合により製造したコポリマーの使用を提案している。
【0011】
WO95/20056では、皮革の乳状加脂や充填用のコポリマーの水溶液又は分散液の使用を、具体的には、乳化剤と例えばモノチレン性不飽和C4−C12−ジカルボン無水物とC6−C40−モノオレフィンから得られたコポリマーを含む溶液や分散液の使用を提案している。しかし、顕著な撥水効果は認められなかった(8頁、35〜39行)。有機溶剤を同時に使用していないという点が、利点として強調されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来の短所を克服する、優れた物理特性を有する柔らかい皮革を製造する方法を提供することである。他の目的は、特に優れた物理特性をもつ柔らかい皮革が製造可能とする調合物を提供することである。
【0013】
したがって、冒頭に述べた方法が見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の方法においては、なめし獣皮が、工程(A)において
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と
を含み、シリコーンを含まない水性の液体で処理される。
【0015】
獣皮は、例えば牛、子牛、ブタ、又は他のいかなる動物のものであってもよい。なめし獣皮は、全獣皮であっても、部品獣皮、例えばストリップや半獣皮であってもよい。
本発明の方法で用いる獣皮は、いかなる方法によりなめされた獣皮であってもよく、例えば、ポリマーなめし、酵素なめし、鉱物なめし、特に一種以上のCr(III)化合物を用いるクロムなめし、カルボニル化合物、例えばグルタールジアルデヒドによるなめし、合成なめし剤、植物系なめし剤、樹脂なめし剤を用いるなめし、あるいはこれらの組合せからなる工程などいずれの工程で処理されたものであってもよい。例えば、一種以上のCr(III)化合物を用いるクロムなめし、又は樹脂なめし剤やカルボニル化合物、例えばグルタールジアルデヒドを用いるなめしにより処理された獣皮を用いて出発することが好ましい。本発明の方法において出発材料として用いる獣皮は、一段以上の再なめし工程で処理されたものであってもよい。
【0016】
本発明のある好ましい実施様態においては、このなめし獣皮が、Cr(III)化合物でなめされた獣皮(ウェットブルー)である。
【0017】
本発明の他の好ましい実施様態においては、なめし獣皮がクロムを含まず、特にカルボニル化合物、例えばグルタールジアルデヒドでなめされた獣皮(ウェットホワイト)である。
【0018】
本発明の方法は、水性の液体中で実施され、この液体は、例えば裏削り皮質量に対して100〜300質量%の範囲の液比で用いられる。
本発明の方法において用いられる水性液体のpHは、4.2〜9.5の範囲、好ましくは4.5〜7の範囲である。
【0019】
本発明の方法の工程(A)で使用される水性液体はシリコーンを含まない。即ち、工程(A)で用いる水性液体には、シリコーンがまったく含まれていない。
【0020】
本発明のある特別な実施様態においては、工程(A)で使用される水性液体が天然油脂を含まない。すなわち、工程(A)で用いる水性液体には、天然油脂がまったく含まれていない。
【0021】
本発明のある実施様態においては、本発明の方法が、10〜65℃の範囲、好ましくは20〜40℃の範囲の温度で実施される。
【0022】
発明の方法は、皮なめしに通常用いられる容器を用いて、例えば、バレル、特に内部に仕切りのあるバレルまたは回転ドラムを用いて実施される。
【0023】
工程(A)で用いる水性液体は、次の成分の共重合により得られる少なくとも一種のコポリマー(a)を含んでいる:
(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、メタコン酸又はシトラコン酸、好ましくはマレイン酸)又はエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸の誘導体(例えば、ジ−又は好ましくはモノ−C1−C10−アルキルエステル、及び特に酸無水物);
(a1)としては、無水イタコン酸と無水シトラコン酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
(a2)少なくとも一種のC8−C100の分岐又は直鎖α−オレフィン(例えばジイソブテン、α−C1020、α−C1224、α−C1428、α−C1632、α−C1836、α−C2040、α−C2244、α−C2448、α−C3060、α−C4080、α−トリイソブテン、α−テトライソブテン、及び平均分子量Mwが250〜1000g/molの範囲にあるポリイソブテン);
α−C1020、α−C1224、α−C1428、α−C1632、α−C1836、α−C2040、α−C2244、α−C2448及びα−C3060が特に好ましい。
【0024】
共重合の後、例えば、塩基性アルカリ金属化合物、アンモニア、又は一種以上の有機アミンを用いる反応で、加水分解及び/又は少なくとも部分中和を行ってもよい。塩基性アルカリ金属化合物の水溶液を用いて、一段の工程で加水分解し、また少なくとも部分的に又は完全に中和することが好ましい。
【0025】
塩基性アルカリ金属化合物の水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムの水溶液、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウムの水溶液が好ましい。
【0026】
好ましい塩基は、無置換アミン、または1個から4個の同一の又は相互に異なる有機基により置換されたアミン類である。好ましい有機基としては、例えば、フェニル基;
メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、イソヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、及びn−デシルから選択されるC1−C10−アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、sec−ヘキシルなどの直鎖状C1−C6−アルキル基、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどのC1−C4−アルキル基、さらに特に好ましくは、メチル及びエチル;
及びω−ヒドロキシ−C1−C4−アルキル、例えば4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシプロピル及び特に2−ヒドロキシエチルがあげられる。
【0027】
特に特に好ましいアミンとしては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、及びN,N−ジメチルエタノールアミンがあげられる。
【0028】
本発明のある実施様態において、コポリマー(a)の、非加水分解コポリマーのTHF(テトラヒドロフラン)でのゲル透過クロマトグラフィーで求めたポリスチレン標準での平均分子量Mwは、800〜50000g/molの範囲、好ましくは1000〜20000g/molの範囲である。
【0029】
本発明のある実施様態において、(a1)と(a2)とのモル比は、0.8:1〜2:1の範囲にある。
【0030】
本発明の方法で用いられるコポリマー(a)の製造法は公知である。例えば、50〜250℃の範囲、好ましくは80〜200℃の範囲の温度で、コモノマーの(a1)と(a2)とをフリーラジカル共重合させて製造される。本発明の方法で用いられるコポリマー(a)は、塊共重合させて得てもよいし、例えば室温で液体であるパラフィン中で溶液共重合により得てもよい。
【0031】
少なくとも部分的にでも中和することが望ましい場合は、水又は塩基の水溶液との反応を、例えば好ましくは20〜150℃の範囲の温度で行ってもよい。加水分解の好ましい温度範囲は60〜100℃である。
【0032】
加水分解を完全にあるいは少なくとも95mol%まで行うことが好ましい。
【0033】
コポリマー(a)の例としては、適当に加水分解され、少なくとも部分的に水酸化ナトリウム溶液で中和されたとき、次の組成を持つコポリマーである:
【0034】
1molの無水マレイン酸と、0.9molのジイソブテン
1molの無水マレイン酸と、1molのジイソブテン
1molの無水マレイン酸と、0.8molのα−C1020
1molの無水マレイン酸と、1molのαa−C1020
1molの無水マレイン酸と、1molのα−C1224
1molの無水マレイン酸と、1molのα−C1632
1molの無水マレイン酸と、1molのα−C1836
1molの無水イタコン酸と、1molのα−C1836
1molの無水マレイン酸と、1molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.1molのα−C1020及び0.9molのα−C3060
1molの無水マレイン酸と、0.3molのα−C1224及び0.7molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.7molのα−C1224及び0.3molの分子量Mwが500g/molであるポリイソブテン
1molの無水マレイン酸と、0.3molのα−C1224及び0.7molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.6molのα−C1224及び0.4molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.5molのα−C1632及び0.5molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.7molのα−C1836及び0.3molのn−C20-24−オレフィン
1molの無水マレイン酸と、0.9molのn−C20-24−オレフィン及び0.1molの分子量Mwが500g/molであるポリイソブテン。
【0035】
いずれの場合も、上記のモルデータはモル比を表す。
【0036】
本発明の方法を実施するに当たり、さらに室温で液体である少なくとも一種のパラフィン(b)(液体パラフィンとも称す)が用いられる。室温で液体のパラフィンとしては、いずれの場合も、室温で液体の粗製パラフィンオイル、精製スラックワックス留分、脱オイル化粗製パラフィン、半精製や完全精製の液体パラフィン、漂白液体パラフィンがあげられる。本発明において、パラフィンは、分岐状又は好ましくは直鎖状の、環状又は好ましくは非環状の飽和炭化水素を意味するものとし、単独であるか、好ましくは複数の飽和炭化水素の混合物である。本発明において、パラフィンは、好ましくはC6−C30−飽和炭化水素の混合物、特に好ましくはC8−C30−飽和炭化水素の混合物である。
【0037】
本発明のある実施様態において、室温で液体のパラフィン(b)が、例えばガスクロマトグラフィーで測定して好ましくは2質量%が分岐状で、残りが直鎖状であるC6−C30−飽和炭化水素の混合物、特にC8−C30−飽和炭化水素混合物から選ばれる。
【0038】
本発明のある実施様態において、室温で液体のパラフィン(b)は、5質量%未満が、好ましくは2質量%未満が、環状で残りが非環状であるC6−C30−飽和炭化水素の混合物、特にC8−C30−飽和炭化水素の混合物から選ばれる。
【0039】
本発明のある実施様態において、室温で液体のパラフィン(b)の動粘度は、20℃で、0.3〜100mPa・sの範囲、好ましくは0.4〜50mPa・sの範囲、特に好ましくは0.5〜10mPa・sの範囲にある。
【0040】
本発明のある実施様態において、室温で液体のパラフィン(b)は、大気圧下で、70〜250℃の、好ましくは25〜230℃の広い沸騰温度領域をもつ。
【0041】
本発明の方法を実施するに当たり、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤(c)を用いることができ、本発明のある実施様態においては、そのHLB値(親水性/親油性値、次式)は、1〜20の範囲、好ましくは最大18である。
【0042】
HLB=20MH/Mtot
【0043】
式中、MH=親水性基の分子量、及び、Mtot=全乳化剤の分子の分子量、H.Stache、Tensidtaschenbuch、CarlHanserVerlag,Munich,1981、参照)。
【0044】
本発明の他の実施様態においては、本発明の方法の実施に当たり、合成非イオン性乳化剤(c)を除いてもよい。
【0045】
ある好ましい実施様態において、本発明の方法を実施するに当たり、少なくとも二種の異なる合成非イオン性乳化剤(c1)と(c2)とを使用し、本発明のある実施様態において、そのうち一種の乳化剤のHLB値が、1〜10の範囲であり、他の乳化剤のHLB値が10〜20の範囲、好ましくは最大18である。二種の異なる合成非イオン性乳化剤(b)の使用が好ましい場合、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤が、10から離れたHLB値を持つようにする。
【0046】
本発明のある実施様態において、この非イオン性合成乳化剤(c)が、ポリアルコキシ化脂肪族アルコール類、ポリアルコキシ化オキソアルコール類、ポリアルコキシ化脂肪酸、ポリアルコキシ化脂肪酸アミド、ポリアルコキシ化非四級化脂肪族アミン、ポリアルコキシ化モノ−及びジグリセリドから選ばれ、場合によれば、ポリアルコキシ化アルキルポリグリコシド類、好ましくはポリアルキルグルコシド類やアルコキシル化糖エステル類から選ばれる。
【0047】
特に好ましい脂肪族アルコール類やポリアルコキシ化オキソアルコール類の例として、一般式Iで表されるものがあげられる。
【0048】
【化1】

【0049】
式中、使用される変数は次のように定義される。
【0050】
1は、分岐状又は直鎖状のC6−C30−アルキル基、又はC6−C30−アルケニル基であり、好ましくはC8−C20−アルキル基又はC8−C20−アルケニル基であり、
6−C30−アルケニル基が、一個以上の、好ましくは(Z)−配位のC−C二重結合を有していてもよい。
【0051】
AOは、C2−C4−アルキレンオキシド基であり、独立して、例えばブチレンオキシド基CH(C25)CH2Oかプロピレンオキシド基CH(CH3)CH2Oであり、及び特に好ましくはエチレンオキシド基CH2CH2Oである。
【0052】
xは、2〜100の範囲の数字であり、xの平均値(数平均値)は、好ましくは2〜90の範囲の、特に好ましくは2.5〜80の範囲の非自然数である。
【0053】
AOが異なるアルキレンオキシド基からなるとき、これらの異なるアルキレンオキシド基は、ブロック的であってもランダム的であってもよい。
【0054】
特に好適なポリアルコキシ化脂肪族アルコール類やオキソアルコール類の例としては、次のものがあげられる。
【0055】
n−C1837O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1837O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)80−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)70−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)60−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1633O−(CH2CH2O)12−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)11−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)18−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)25−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)50−H、
n−C1225O−(CH2CH2O)80−H、
n−C3061O−(CH2CH2O)8−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)9−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)7−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)5−H、
n−C1021O−(CH2CH2O)3−H。
【0056】
及び上記の乳化剤の混合物、例えばn−C1837O−(CH2CH2O)50−Hとn−C1633O−(CH2CH2O)50−Hの混合物。ただし、上記の数字は、いずれの場合も平均値(数の平均値)である。
【0057】
ポリアルコキシ化脂肪酸及びポリアルコキシ化脂肪酸アミドは、好ましくは一般式IIa及び一般式IIbで表される化合物である。
【0058】
【化2】

【0059】
式中、
2は、直鎖状又は分岐状C5−C29−アルキル基、又はC5−C29−アルケニル基から選ばれ、好ましくはC7−C19−アルキル基又はC7−C19−アルケニル基から選ばれ、C5−C29−アルケニル基は、一個以上の好ましくは(Z)−配位のC−C二重結合を有していてもよい。
yは、1〜50の範囲の数字で、yの平均値(数平均値)は、好ましくは3to48の範囲の非自然数である。
Xは、水素又は(AO)t−Hであり、tは、1〜50の範囲の数字で、tの平均値(数平均値)は、好ましくは3〜48の範囲の非自然数であり、yとtは異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
【0060】
一般式IIaで表される化合物の例としては、平均5.5当量のエチレンオキシドを有するアルコキシル化オレイン酸、平均値3〜10当量のエトキシル化脂肪酸、平均値35〜48当量のエトキシル化ひまし油があげられる。なお、これらの平均値は、いずれの場合も数平均値である。
【0061】
一般式IIbで表される化合物の例としては、オレアミドのモノデカエトキシル化物(AO=エチレンオキシド、y=10、X=水素)、オレアミドのビスペンタエトキシル化物(AO=エチレンオキシド、y=5、X=(AO)5)、及びオレアミドのビスデカエトキシル化物(AO=エチレンオキシド、y=10、X=(AO)10)があげられる。
【0062】
ポリアルコキシ化脂肪族アミンは、好ましくは、一般式IIcで表される化合物より選ばれる。
【0063】
【化3】

【0064】
式中の変数は、上記定義に同じである。
【0065】
【化4】

【0066】
【化5】

【0067】
(式中、R2とxとは異なっていてもよいが、好ましくは同一で、上記のように定義される)、ポリアルコキシ化モノ−及びジグリセリドの例としてあげることができる。
【0068】
本発明において、アルキルポリグリコシド類は、好ましくは、C1位にてC1−C20−アルカノール基、好ましくはC12−C20−アルカノール基でエステル化された糖類、特にC1位にてC1−C20−アルカノール基、好ましくはC12−C20−アルカノール基でエステルかされたグルコースをさすものとする。製造工程の後、アルキルポリグリコシドは、通常、C1−C6結合でつながる、場合によってはC1−C20−アルカノール基でエーテル化したジグリコシド及びポリグリコシドを、不純物として含んでいる。本発明のある実施様態において、1.3当量の糖が、1当量のC1−C20−アルカノールと結合している。
【0069】
本発明においては、アルコキシル化糖エステル類は、好ましくは一個以上の脂肪酸でエステル化された糖アルコール類でさらに、5〜80当量のアルキレンオキシドで、特にエチレンオキシドでアルコキシル化されたものをさすこととする。好ましいアルコキシル化糖エステルは、アルコキシル化ソルビタン脂肪酸から、好ましくは一個以上の脂肪酸でエステル化したソルビトールで、5〜80当量のアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドでアルコキシル化されたものから選ばれる。
【0070】
本発明のある実施様態において、本発明によりなめされた獣皮は、例えば工程(A)の終了後、処理液を廃棄することで、処理液から分離される。
【0071】
本発明の他の実施様態においては、工程(A)の終了後、少なくとも一種のシリコーン化合物(d)を添加して、工程(B)を実施する。このためには、工程(A)の処理液から本発明によりなめした獣皮を取り出すことなく、その処理液に少なくとも一種のシリコーン化合物(d)を添加することが好ましい。
【0072】
好適なシリコーン化合物(d)としては、例えば、カルボキシル基を有するシリコーン化合物、及び少なくとも一種のカルボキシル基を有するシリコーン化合物とカルボキシル基を持たないシリコーン化合物の混合物があげられる。
【0073】
シリコーン化合物(d)として好適なカルボキシル基を有するシリコーン化合物は、平均して一分子当たり、少なくとも一個の、例えば1〜100個の、好ましくは最大10個のカルボキシル基を有し、これらのカルボキシル基は、部分的にあるいは完全に、例えばアルカリで、好ましくはカリウム又はナトリウムで中和されていてもよい。これらのカルボキシル基は、スペーサを経由して、カルボキシル基を有するシリコーン化合物のポリシロキサン鎖に結合していてもよく、カルボキシル基を有するシリコーン化合物のポリシロキサン鎖のどの位置にこれらのカルボキシル基が存在していてもよい。
【0074】
本発明のある実施様態において、少なくとも一種のシリコーン化合物(d)の平均分子量Mnが、500〜100000g/molの範囲、好ましくは1000〜50000g/molの範囲にある。
【0075】
例えば、スペーサの種類、分子内のCOOH基の数、分子量やシリコーン鎖の構造が異なる、いろいろな種類のカルボキシル基含有シリコーン化合物が、報告されている。
【0076】
スペーサの例としては、次のものが挙げられる。C1−C100−アルキレン基、好ましくはC1−C20−アルキレン基、例えば、−CH2−、−CH2−CH2−、−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−、−(CH26−、−(CH27、−(CH28−、−(CH29−、−(CH210−、−(CH212−、−(CH214−、−(CH216−、−(CH218−、−(CH220−、
一個以上のC1−C4−アルキル基、−CH2−COOH、又はフェニルで置換されたC1−C−100−アルキレン基(ただし、一個以上の非隣接炭素原子が、独立して酸素原子又はNH基で置換されていてもよい)例えば、−CH(CH3)−、−CH(C25)−、−CH2−CH(CH3)−、−C(CH32−、−CH(C65)−、−CH2−CH(C25)−、−CH2−CH(CH[CH32)−、−CH2−CH(n−C37)−、−[CH(CH3)]2−、−CH(CH3)−CH2−CH2−CH(CH3)−、−CH(CH3)−CH2−CH(CH3)−、−CH2−C(CH32−CH2−、−CH2−CH(n−C49)−、−CH2−CH(t−C49)−、−CH2−CH(C65)−、
−CH2−O−、−CH2−O−CH2−、−CH2CH2−O−、−CH2CH2−O−CH2CH2−、−[CH2CH2−O]2−(CH22−、−[CH2CH2−O]3−CH2CH2−、
−CH−NH−、−(CH22−NH−、−(CH23−NH−、−(CH24−NH−、−(CH22−NH−CH2−、−(CH22−NH−(CH22−、−(CH23−NH−(CH23−。
【0077】
さらに好適なスペーサは、C6−C20−アリーレン基、C7−C21−アルキルアリーレン基、及びC5−C20−シクロアルキレン基であり、例えばパラフェニレン、メタフェニレン、1,7−ナフチレン、2,6−ナフチレン、2−イソプロピルパラフェニレン、2−メチル−パラフェニレン、cis−又はtrans−1,4−シクロヘキシレン、cis−又はtrans−1,2−シクロヘキシレン、cis−又はtrans−1,3−シクロペンチレン、cis−又はtrans−1,2−シクロペンチレンがあげられる。
【0078】
他の好適なシリコーン化合物の例が、WO95/22627、EP−A0324345、DE−A4240274、EP−A638128、WO98/21369、EP−A1510554、EP−A0095676、EP−A0299596、及びEP0415204に開示されている。
【0079】
好適なカルボキシル基を持たないシリコーン化合物としては、例えば、室温で液体のポリジメチルシロキサンやポリメチルフェニルシロキサンがあげられる。
【0080】
工程(A)において、一箇所以上の場所で処理液に、このシリコーン化合物(d)を添加することができる。
【0081】
工程(B)での処理には30〜120分かかることがある。
【0082】
工程(B)の処理を、工程(A)での本発明の処理と同じpHで行ってもよい。しかし、工程(A)用いたpHの上下1の範囲内のpHを用いることもできる。
【0083】
本発明のある実施様態において、処理されるなめし獣皮(裏削り皮質量)に対して、0.1〜5質量%、好ましくは0.2〜2質量%の量のシリコーン化合物(d)を添加することができる。
【0084】
シリコーン化合物(d)は、そのまま添加しても良く、又は好ましくは、一種以上の水性の調合物として添加してもよい。
【0085】
本発明の方法を実施中に、特に工程(A)の終了後に、一種以上の従来から使用されている皮革用染料や、一種以上の再なめし剤、特に樹脂なめし剤、植物系なめし剤、スルホンなめし剤、又はこれらの再なめし剤の混合物を添加してもよい。
【0086】
本発明の方法の実施後に、特定の要求事項を満足させるため、水洗いや染色、乳状加脂を既知の方法で実施したり、他の既知の操作を行ってもよい。
本発明の方法により製造された皮革は、柔軟性に優れ、きめがしっかりしたおり、特にきめが細かく色のばらつきが少ない。撥水化された柔軟性レベルが等しい従来の乳状加脂皮革と比較すると、これらの比較は、かなりきめがしっかりし、量感に優れる。また、工程(B)のみによる処理や、はじめからシリコーンを含む処理液中での処理と較べると、特に本発明の方法の工程(B)が実施される場合に、このようにして得られた皮革が撥水性が高いことが観測される。また、加熱黄変がほとんどなく、本発明の方法により得られた皮革は、耐光性に優れ、曇りもほとんどない。なお、DIN75201の質量法に準じて測定した曇り度は、通常5mg以下である。本発明の方法により製造された皮革は、例えば靴やアパレル製品の製造に、好適であり、また耐光性に極めて優れる皮革家具の生産に適している。
【0087】
例えば短分子鎖パラフィンや非イオン性界面活性剤が使用されているが、撥水性に関する欠点は見受けられない。
【0088】
本発明は、また、シリコーン非含有で、また天然油脂も含まない水性調合物であり、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸、及び(a2)少なくとも一つのC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤とからなる.水性調合物に関する。
【0089】
本発明のある実施様態において、本発明の水性調合物は、次の組成を持つ。
5〜40質量%の範囲、好ましくは5〜25質量%の範囲のコポリマー(a)、
0.1〜30質量%の範囲、好ましくは2〜20質量%の範囲の室温で液体のパラフィン(b)、及び
全部で0〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%の合成非イオン性乳化剤(c)。
ただし、上記の質量%値は、いずれの場合も、全調合物に対する量である。残りは、好ましくは水である。
【0090】
本発明のある実施様態において、本発明の調合物の固形分含量は、5〜80質量%の範囲、好ましくは10〜50質量%の範囲、特に好ましくは20〜45質量%の範囲である。
【0091】
本発明のある特別な実施様態においては、本発明の水性調合物は、平均液滴径が200nm〜10μmの水性乳濁液である。
【0092】
本発明はさらに、本発明の調合物の製造方法(以下、本発明の製造方法と称す)であり、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸、及び(a2)少なくとも一つのC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤とを
相互に、例えば攪拌により混合する方法に関する。
【0093】
本発明の製造方法のある特別な実施様態においては、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸、及び(a2)少なくとも一つのC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤とが、
ウルトラタラックスを用いて混合される。
【0094】
実際に混合後、本発明の水性調合物を、例えばギャップ型ホモジナイザー内を通過させて安定化させてもよい。
【0095】
本発明の水性調合物の保存期間は長く、本発明の方法の実施に特に有効である。本発明の一側面は、少なくとも一種の本発明の水性調合物を、皮革の製造に利用することである。本発明の他の側面は、少なくとも一種の本発明の調合物を用いて皮革を製造する方法である。
【0096】
本発明のさらに他の側面は、少なくとも一種の本発明の調合物を用いて、皮革生産に本発明の方法を実施することである。このために、例えば本発明の調合物を水で希釈して、なめし獣皮処理用の水性の液体を得ることができる。
【0097】
以下、本発明を実施例を参照しながら説明する。
メーザー測定と水吸収の測定には、バリー(Bally)硬度計を用いた。メーザー測定は、DIN35338に記載の方法に準じて、二回繰り返した。静的水吸収は、15%圧縮で実施し、最終皮革に対する質量%で表した。染色性は目視により検査した。
【0098】
1.出発材料の調整
1.1本発明の調合物F.1の調整
無水マレイン酸(a1−1)とα−n−C1838(a2−1)からなる平均分子量Mnが5000g/molの交互コポリマー(a−1)の100gを、90℃に加熱された、無水マレイン酸単位(a−1)に対し1.2当量の水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液の500gの中で混合した。
【0099】
上記の(a−1)のナトリウム塩溶液を、混合バレル中に投入し、
(c−1.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(2.6当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:8、と
(c−2.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(9.1当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:14、と
次いで、
(b−1)80gの大気圧下での沸騰温度領域が125〜230℃で20℃の動粘度が1.44mPa・sであるあるパラフィンとを添加した。(b−1)は、複数の非環状飽和炭化水素の混合物で、その中の分岐非環状飽和炭化水素の比率は、総量(b−1)当たり2質量%未満(ガスクロマトグラフィー)であった。
【0100】
攪拌を30分間行い、固形分含量が35質量%である本発明の水性調合物F.1を得た。本発明の水性調合物F.1は、天然油脂とシリコーンのいずれをも含有していない。
【0101】
1.2本発明の調合物F.2の調整
1当量の無水マレイン酸(a1−1)と0.5当量のα−n−C1632(a2−2)、及び0.5当量のα−n−C20-24−オレフィン(a2−3)からなり、平均分子量Mnが6000g/molである交互コポリマー(a−2)の100gを、90℃に加熱された、無水マレイン酸単位(a−2)に対し1.2当量の水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液の500gの中で混合した。
【0102】
上記の(a−2)のナトリウム塩溶液を混合バレル中に投入し、
(c−1.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(2.6当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:8、と
(c−2.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(9.1当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:14、と
次いで
(b−1)80gの大気圧下での沸騰温度領域が125〜230℃で20℃の動粘度が1.44mPa・sであるあるパラフィンとを添加した。(b−1)は、複数の非環状飽和炭化水素の混合物で、その中の分岐非環状飽和炭化水素の比率は、総量(b−1)当たり2質量%未満(ガスクロマトグラフィー)であった。
【0103】
攪拌を30分間行い、固形分含量が35質量%である本発明の水性調合物F.2を得た。本発明の水性調合物F.2は、天然油脂とシリコーンのいずれをも含有していない。
【0104】
1.3本発明の調合物F.3の調整
1当量の無水マレイン酸(a1−1)と0.5当量のα−n−C1836(a2−2)、及び0.5当量のα−n−C20-24−オレフィンからなり、平均分子量Mnが6000g/molである交互コポリマー(a−3)の100gを90℃に加熱された、無水マレイン酸単位(a−3)に対し1.2当量の水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液の500gの中で混合した。
【0105】
上記の(a−3)のナトリウム塩溶液を、混合容器中に投入し、
(c−1.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(2.6当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:8、と
(c−2.1)15gのエトキシル化オキソアルコール(9.1当量のエチレンオキシドでエトキシル化したn−C1123−OH)、HLB値:14、と
次いで
(b−3)80gの大気圧下での沸騰温度領域が125〜230℃で20℃の動粘度が1.44mPa・sであるあるパラフィンとを添加した。(b−3)は、複数の非環状飽和炭化水素の混合物で、その中の分岐非環状飽和炭化水素の比率は、総量(b−3)当たり2質量%未満(ガスクロマトグラフィー)であった。
【0106】
攪拌を30分間行い、固形分含量が35質量%である本発明の水性調合物F.3を得た。本発明の水性調合物F.3は、天然油脂とシリコーンのいずれをも含有していない。
【0107】
1.4シリコーン化合物(d−1)の乳濁液の調製
攪拌機を備えた2lの容器中で、以下のものを混合した。
150gの以下の一般式で表されるシリコーン化合物(d−1)、動粘度600mm2/s(23℃):
【0108】
【化6】

【0109】
ランダム共重縮合体(q=3、p=145(いずれも平均値)、
130gのN−オレイルザルコシン、
15gのNaOH(固体)
153gのスラックワックス(36/38℃;胴)
450mlの水。
得られたシリコーン化合物(d−1)の乳濁液のpHは、8.5であった。
【0110】
1.5シリコーン化合物(d−2)の乳濁液の調製
手順は、EP0324345B1、実施例1による。得られたシリコーン化合物(d−2)の乳濁液のpHは、8.5であった。
【0111】
2.なめし獣皮の処理
特に記載の倍場合、質量%の値は、裏削り皮質量に対する値である。
【0112】
2.1使用例A
裏削り後の厚みが2.0〜2.2mmであるクロムなめし子牛レザー(ウェットブルー)を、じゃま板を備えた回転バレル中で、100質量%の水と混合し、2質量%ギ酸ナトリウムと0.8質量%のNaHCO3で、pHを5.3にまで下げた。その後、水洗し、次いで100質量%の水(35℃)を加えた。4質量%の本発明の調合物F.1を添加し、バレルを時々回転させながら反応させた。40分間反応後、2質量%の樹脂なめし剤(メラミン/ホルムアルデヒド縮合物)を添加し、40分間時々バレルを回転させながら反応させた。次いで、以下のものを加えた。3質量%のスルホンなめし剤(EP−B0459168、実施例K1、参照)、及び3質量%の市販のミモサ抽出物。また、攪拌は60分間行った。2質量%の染料50質量%(固形分含量)水溶液を次いで添加した。この水溶液中の固形分は、次のとおりである。
70質量部の染料(EP−B0970148、実施例2.18、参照)
30質量部のアシッドブラウン75(鉄錯体)、カラーインデックス:1.7.16;
【0113】
また、混合は60分間行った。次いで、4質量%の量の、実施例1.4で得たシリコーン化合物(d−1)の乳濁液を添加した(B工程)。さらに攪拌を行い、ギ酸でpHを3.6にまで下げ、水洗した。
【0114】
なめし用ドラム中で、3質量%のクロムなめし剤(塩基性硫酸Cr(III))の存在下で90分間混合して、染色を行った。
【0115】
既知の方法により、再度水洗を行い、機械的にへらかけを行い、乾燥して、仕上げを行った。このようにして、本発明の皮革L.1が得られた。
【0116】
比較のために、同量(固形分当たり)の4%で、NaOHで部分中和した、Mnが約10000g/molで、pHが5.1であるアクリル酸ホモポリマーの30質量%水溶液を用いた以外、本発明の調合物F.1と同様にして、上記手順を繰り返した。このようにして比較用皮革V−L.2が得られた。
【0117】
目視比較:本発明により得た比較L.1の染色状態は、V−L.2と比べ、濃度が一定で、均一であった。皮革L.1は、かなり柔軟であり、きめがしっかりし、量感にも優れていた。また、数日経過後でも、曇りや加熱黄変の気配が見受けられなかった。
【0118】
メーザー試験:
L.1:水透過までの屈曲約27000回
V−L.2:水透過までの屈曲300回
【0119】
2.2使用例B
裏削り後の厚みが1.0〜1.2mmであるクロムなめし子牛レザー(ウェットブルー)を、じゃま板を備えた回転バレル中で、100質量%の水と混合し、2質量%ギ酸ナトリウムと0.8質量%のNaHCO3で、pHを5.3にまで下げた。その後、水洗し、次いで100質量%の水(35℃)を加えた。4質量%の本発明の調合物F.1(添加1)を添加し、バレルを時々回転させながら反応させた。40分間反応後、2質量%の樹脂なめし剤(メラミン/ホルムアルデヒド縮合物)を添加し、40分間時々バレルを回転させながら反応させた。さらに、8質量%の本発明の調合物F.2(添加2)を添加し、攪拌をさらに60分間継続した。次いで、80質量%のギ酸でpHを3.6に下げ、攪拌をさらに30分間継続し、水洗を行った。
【0120】
定法により、機械的へらかけと乾燥と行い、仕上げを行った。このようにして、本発明の皮革L.3を得た。
【0121】
比較のために、同量(固形分当たり)の14質量%の、NaOHで部分中和したポリメタクリル酸(Mw10000g)の30質量%水溶液を用いた以外、本発明の調合物F.2と同様にして、上記手順を繰り返した。添加2は行わなかった。このようにして、比較用皮革V−L.4を得た。
【0122】
目視比較:皮革L3は、かなり量感に優れ、比較用皮革V−L.4よりきめがしっかりし、量感と柔軟性のバランスに優れていた。また、曇りが起こる傾向はなかった(DIN75201の質量法による曇り度は、2〜2.5mgであった)。皮革L.3の加熱黄変(100℃6日間、グレースケールで評価)は、比較用皮革V−L.4(レベル:2〜3)と較べて、かなり低くかった(レベル:6)。
【0123】
2.3使用例C
裏削り後の厚みが1.0〜1.2mmであるクロムなめし子牛レザー(ウェットブルー)を、じゃま板を備えた回転バレル中で、100質量%の水と混合し、2質量%ギ酸ナトリウムと0.8質量%のNaHCO3で、pHを5.3にまで下げた。4質量%の本発明の調合物F.3を添加し、バレルを時々回転させながら反応させた。120分間処理後、処理液を廃棄し、水洗し、75質量%の水を(35℃)添加した。次いで、2質量%の樹脂なめし剤(メラミン/ホルムアルデヒド縮合物)を添加し、40分間時々バレルを回転させながら反応させた。次いで、以下のものを加えた。3質量%のスルホンなめし剤(EP−B0459168、実施例K1参照)、及び3質量%の市販のミモサ抽出物。また、攪拌は60分間行った。2質量%の染料50質量%(固形分含量)水溶液を次いで添加した。この水溶液中の固形分は、次のとおりである。
【0124】
70質量部の染料(EP−B0970148、実施例2.18参照)
30質量部のアシッドブラウン75(鉄錯体)、カラーインデックス:1.7.16;
【0125】
また、混合はさらに60分間行った。4質量%の量の、実施例1.5で得たシリコーン化合物(d−2)乳濁液を次いで添加した(B工程).さらに1時間攪拌し、ギ酸でpHを3.6にまで下げ、水洗した。
【0126】
なめしドラム中、3質量%のクロムなめし剤(塩基性硫酸Cr(III))の存在下で90分間混合して、染色を行った。
【0127】
既知の方法により、再度水洗を行い、機械的にへらかけを行い、乾燥して、仕上げを行った。このようにして、本発明の皮革L.5が得られた。
【0128】
比較のために、本発明の調合物F.3と同様にして、上記手順を繰り返した。ただし、本発明の調合物F.3は添加しなかった。代わりに6質量%の実施例1.5で得たシリコーン化合物(d−2)の乳濁液を、再なめしの際に添加した。このようにして、比較用皮革V−L.6を得た。
【0129】
目視比較:皮革L.5は、かなり柔軟で、かなりきめがしっかりし、特に、腹部や脚部の量感に優れていた。
【0130】
メーザー試験:
L.5:水透過までの屈曲回数>100000回
V−L.6:水透過まで屈曲回数、約1400回。
【0131】
また、L.5は、皮革全面にわたりメーザー値が一定であった。通常、尻部や背中部と較べると、頭部や腹部では、メーザー値がかなり減少する。ただし、50%以上減少することはまれである。皮革L.5では、二回の試験で次の値が得られた。
【0132】
尻部:>100000/>100000
背中:>100000/>100000
肩部:>100000/>100000
頭部:>16000/>100000
脚部:>100000/>100000
腹部:>100000/>100000

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮革の製造方法であって、なめし獣皮を、工程(A)において、
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸誘導体、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと、
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と、
を含み、シリコーンを含まない水性の液体で処理することを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも二種の合成非イオン性乳化剤(c1)と(c2)とが使用される
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(A)での製造後、少なくとも一種のシリコーン化合物(d)が工程(B)において添加される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
コポリマー(a)の分子量Mwが800〜50000g/molの範囲にある
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤(c)が、ポリアルコキシ化脂肪族アルコール及びポリアルコキシ化オキソアルコールから選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸誘導体、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と
を含むシリコーン非含有かつ天然油脂非含有の水性調合物。
【請求項7】
全調合物に対してそれぞれ、
5〜40質量%の範囲のコポリマー(a)と、
0.1〜30質量%の範囲の室温で液体のパラフィン(b)と、
0〜10質量%の範囲の合成非イオン性乳化剤(c)とを含む
請求項6に記載の調合物。
【請求項8】
(a)(a1)少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸又は少なくとも一種のエチレン性不飽和C4−C8−ジカルボン酸誘導体、及び(a2)少なくとも一種のC8−C100−α−オレフィンとを共重合し、必要に応じて、加水分解及び/又は少なくとも部分中和して得られる少なくとも一種のコポリマーと
(b)室温で液体の少なくとも一種のパラフィンと、
(c)場合によっては、少なくとも一種の合成非イオン性乳化剤と、を
相互に混合することを特徴とする請求項6又は7に記載の調合物の製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の少なくとも一種の調合物の皮革生産への使用法。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の少なくとも一種の調合物を使用することを特徴とする皮革の生産方法。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の少なくとも一種の調合物を使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の皮革の製造方法。

【公表番号】特表2008−544059(P2008−544059A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517507(P2008−517507)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063447
【国際公開番号】WO2006/136595
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】