説明

盗難防止装置

【課題】接続相手の電子機器との接続を外されたことをデジタルインタフェース機能を利用して検出して接続異常の報知を行い、また、仮に盗難されても所定の電子機器との接続なしには動作しないようにすることで盗難の意欲を削ぎ、もって盗難を防止する。
【解決手段】ksv抽出/比較部102、202は、相手のHDMI受信側機器との接続によってHDCP認証が行われる度に、当該接続相手のHDMI機器から送信される信号中から抽出した鍵ベクトルと不揮発性メモリ106、206に記憶されている正規の鍵ベクトルBksv、Aksvとを比較する。接続相手のHDMI機器が設定時と異なる他のHDMI機器に変更された場合、ksv抽出/比較部102、202は不一致の比較結果を出力し、出力許可スイッチ103及び105、入力許可スイッチ203及び205を制御してビデオ信号の出力又は入力を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は盗難防止装置に係り、特にHDMI(High-Definition Multimedia Interface)等のデジタルインタフェース規格を備えた電子機器の盗難を防止する盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に公共の場所に設置されている、テレビジョン受像機や映像再生装置等の電子機器であるAV機器は、従来は貨幣や貴金属と比較すると相対的に価値が低いため、盗難やいたずらの防止に対する対策が殆ど施されておらず、盗難の被害に遭うリスクが高い。しかし、幸いなことに、公共の場所に設置されているAV機器は、テレビジョン受像機の場合、従来は重量の重いブラウン管テレビであって持ち去り難く、また映像再生装置であるビデオデッキも安価な物が多いことや、AV機器が設置されている公共の場所は役所や病院の待合室といった比較的限られた場所であったため、被害も軽微であった。
【0003】
しかしながら、近年、テレビジョン受像機は薄型軽量化、画面の大型化が進み、また、映像再生装置はネットワークプレーヤや、ブルーレイレコーダ等高機能化が図られ、従来のブラウン管テレビやビデオデッキに比べるとかなり高価なものとなったため、被害に遭うリスクが飛躍的に高まってきた。更に、これら最新のAV機器は、学校等の文教施設にも配置される様になり、被害に遭うリスクがより高くなっている。このため、AV機器の盗難防止技術が注目されるようになってきた。
【0004】
図6は、従来の盗難防止装置の各例の説明図を示す。図6(A)に示す盗難防止装置は、盗難防止対象のAV機器1を収納するケース2と、そのケース2の蓋が開かないようにすることで、蓋を開けてケース2内からAV機器1を第三者が不正に取り出すことを防止するための機械的な鍵3とから構成されている。
【0005】
図6(B)に示す盗難防止装置は、机4上に置かれた盗難防止対象のAV機器1に一端が固定されたワイヤ5と、ワイヤ5の他端を固定すると共に机4に固定設置された固定部6とから構成されている。この盗難防止装置は、切断困難な強固な構造のワイヤ5によりAV機器1を机4上に固定し、AV機器1が第三者により机4の上から持ち去られるのを防止する。
【0006】
また、従来知られている他の盗難防止装置には、例えば盗難防止対象のAV機器に盗難防止のために接続されたワイヤの切断を電気的に検知したときに警報を発令する盗難防止装置がある(例えば、特許文献1参照)。この盗難防止装置は、盗難防止対象のAV機器が取り付けられるべき対象物取付ユニットと、所定位置に固定されるべき警報ユニットと、対象物取付ユニットと警報ユニットを互いに機械的かつ電気的に連結するワイヤと、上記の対象物取付ユニット又は警報ユニットが取り外されたことを検知したとき、あるいはワイヤが切断されたことを電気的に検知したときに検知信号を出力する検知手段と、検知信号を受けて発鳴する発鳴装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−105841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図6(A)、(B)に示す盗難防止装置は、比較的構成が簡単で盗難防止にとって十分ではない。また、特許文献1記載の盗難防止装置は、盗難防止対象のAV機器に、別体の対象物取付ユニットを取り付ける必要があり、使い勝手が良くない。
【0009】
また、設置済のAV機器に対する盗難防止については、人の出入りがある時間を中心に考えればよいものの、決定的な防犯対策は無い。かといって、盗難防止対象のAV機器を上回る高価な構成の盗難防止装置により盗難防止を行うのでは、本末転倒である。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、接続相手の電子機器との接続を外されたことをデジタルインタフェース機能を利用して検出して接続異常の報知を行い、また、仮に盗難されても所定の電子機器との接続なしには動作しないようにすることで盗難の意欲を削ぎ、もって盗難を防止する盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成するため、映像信号処理機能及び音声信号処理機能のうち少なくともいずれか一方の処理機能を有し、かつ、デジタルインタフェースを備えた電子機器に搭載された盗難防止装置であって、デジタルインタフェースにて接続された他の電子機器から送信された正規の鍵情報をデジタルインタフェースにより受信して、HDCPによる認証を随時行う認証手段と、防犯設定の有無を選択する防犯設定選択手段と、受信した正規の鍵情報を不揮発性記憶部に記憶する記憶制御手段と、防犯設定選択手段により防犯設定の有が選択されたときは、認証手段による認証毎に、不揮発性記憶部に記憶されている正規の鍵情報と同一の鍵情報を受信するか否かを判定し、正規の鍵情報と同一の鍵情報を受信したことを示す判定結果が得られないときは、処理機能の少なくとも一部を制限する動作制限手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、他の電子機器との間でデジタルインタフェースの規格に従って送受信する信号のうち、予め定めた信号が一定期間以上途絶したかどうかを監視する監視手段と、監視手段により予め定めた信号が一定時間以上途絶したことを検出したときに、異常を示す情報を報知する報知手段とを更に有することを特徴とする。
【0013】
ここで、上記の予め定めた信号は、HPD信号又は他の電子機器より供給される所定の電圧値の信号であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接続相手の電子機器との接続を外されたことをデジタルインタフェース機能を利用して検出して接続異常の報知を行い、また、仮に盗難されても所定の電子機器との接続なしには動作しないようにすることで盗難の意欲を削ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の盗難防止装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】HDMI(又はDVI)規格を備えた各種のAV機器の一例の接続図である。
【図3】図1中の2つのHDMI(HDCP認証)処理部の間を接続するHDMIケーブルで伝送される信号の一般的な内部構造説明図である。
【図4】HDCP認証の第1段階を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の盗難防止装置の一実施の形態による相手機器の認識、設定及び動作制限の説明用フローチャートと、本発明の盗難防止装置の一実施の形態の防犯動作説明用フローチャートである。
【図6】従来の盗難防止装置の各例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明になる盗難防止装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図において、盗難防止装置100と盗難防止装置200とは、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ケーブル300とアナログケーブル310とを並列に介して接続されている。
【0018】
盗難防止装置100は送信側の盗難防止装置で、公知のHDCP認証処理を行うHDMI(HDCP)認証処理部101、HPD(Hot Plug Detect)信号を検出する電圧検出部104、アナログビデオ信号の出力許可を行う出力許可スイッチ105、秘密鍵に応じて一意に定まる機器固有ベクトル(ksv:key selection vector)を記憶する不揮発性メモリ106、防犯設定を行う防犯設定制御/表示部107、警報音(警報表示)発生部108から構成されている。防犯設定制御/表示部107は、防犯設定のための物理的なスイッチやボタン、あるいは画面上に表示されたGUI(Graphical User Interface)ボタンと、表示部とからなる。更に、HDMI(HDCP)認証処理部101は、ksv抽出/比較部102と、デジタルビデオ信号の出力許可を行う出力許可スイッチ103を含んでいる。なお、盗難防止装置100に割り当てられたksvは、以下の説明では区別のためAksvと表記するものとする。
【0019】
一方、盗難防止装置200は受信側の盗難防止装置で、公知のHDCP認証処理を行うHDMI(HDCP)認証処理部201、HDMI規格で伝送される+5Vを検出する電圧検出部204、アナログビデオ信号の入力許可を行う入力許可スイッチ205、秘密鍵に応じて一意に定まる機器固有ベクトル(ksv:key selection vector)を記憶する不揮発性メモリ206、防犯設定制御/表示部107と同様の構成により防犯設定を行う防犯設定制御/表示部207、警報音(警報表示)発生部208から構成されている。更に、HDMI(HDCP)認証処理部201は、ksv抽出/比較部202と、デジタルビデオ信号の入力許可を行う入力許可スイッチ203を含んでいる。なお、盗難防止装置200に割り当てられたksvは、以下の説明では区別のためBksvと表記するものとする。
【0020】
上記のksv抽出/比較部102、出力許可スイッチ103及び105、並びに上記のksv抽出/比較部202、入力許可スイッチ203及び205は、後述するように、正規の鍵情報の受信判定結果が得られないときに、搭載されている電子機器の映像信号処理機能及び音声信号処理機能の少なくとも一部を制限する動作制限手段を構成している。なお、以下の説明では、本発明になる盗難防止装置が、映像信号処理機能及び音声信号処理機能の両方を有する電子機器に搭載される例で説明するが、いずれか一方の機能のみを有する電子機器に搭載されても良い。
【0021】
また、上記の不揮発性メモリ106及び206は、本発明の記憶制御手段により受信した正規の鍵情報が記憶される不揮発性記憶部を構成している。上記の防犯設定制御/表示部107及び207は、防犯設定の有無を選択する本発明の防犯設定選択手段を構成している。また、上記の警報音(警報表示)発生部108及び208は、異常を示す情報を報知する本発明の報知手段を構成している。
【0022】
本発明になる盗難防止装置は、映像信号処理機能及び音声信号処理機能のうち少なくともいずれか一方の処理機能を有し、かつ、HDMIやDVI(Digital Visual Interface)などのデジタルインタフェースを備えた電子機器(HDMI機器)であるAV機器に用いられる装置であって、盗難防止装置100及び200のうちのどちらの構成であってもよい。なお、図1では、盗難防止装置100は送信側のAV機器に搭載され、盗難防止装置200は受信側のAV機器に搭載されるものとしている。
【0023】
図2は、HDMI(又はDVI)規格を備えた各種のAV機器の一例の接続図を示す。同図において、ソース機器11、12は、映像、音声の信号源となるHDMI(又はDVI)規格を備えたAV機器で、例えばDVHS(登録商標)規格のデジタルビデオデッキ、DVDプレーヤ、ビデオディスクレコーダ(VDR)、チューナ、ブルーレイレコーダなどがある。リピータ機器13は、接続切替等を行うHDMI(又はDVI)規格を備えたAV機器で受信と送信の両方の機能を有し、例えばAVアンプ、AVセレクタなどがある。シンク機器14、15は、映像表示や音声再生などを行うHDMI(又はDVI)規格を備えたAV機器で、例えばプラズマディスプレイ、液晶テレビ、ILA(Image Light Amplifier)プロジェクタなどがある。
【0024】
図2では、リピータ機器13がソース機器11及び12の一方又は両方から送信された映像・音声信号を切り替えて、シンク機器14又は15に送信する。従って、ソース機器11及び12は送信側の盗難防止装置100の搭載が可能であり、シンク機器14及び15は受信側の盗難防止装置200の搭載が可能である。また、リピータ機器13は、ソース機器11、12から送信された映像・音声信号を受信する受信部に受信側の盗難防止装置200の搭載が可能であり、映像・音声信号をシンク機器14、15に送信する送信部に送信側の盗難防止装置100の搭載が可能である。
【0025】
図1に示すHDMI(HDCP認証)処理部101は、HDMI規格を備えた送信側AV機器であるHDMI送信側機器(ソース機器11、12や、リピータ機器13の送信部)における処理部である。一方、図1に示すHDMI(HDCP認証)処理部201は、上記のHDMI規格を備えた受信側AV機器であるHDMI受信側機器(シンク機器14、15や、リピータ機器13の受信部)における処理部である。これらのHDMI(HDCP認証)処理部101とHDMI(HDCP認証)処理部201とは、HDMIケーブル300により接続されており、本発明のHDCPによる認証を随時行う認証手段を構成している。
【0026】
図3は、HDMI(HDCP認証)処理部101とHDMI(HDCP認証)処理部201との間を接続するHDMIケーブル300で伝送される信号の一般的な内部構造説明図を示す。同図において、EDID EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)210は、受信側AV機器の映像フォーマット、音声フォーマット、色空間、スピーカ位置等の情報であるEDIDを記憶しているメモリであり、HDMI(HDCP認証)処理部201内に設けられている。
【0027】
図3において、ライン301は、送信側のHDMI(HDCP認証)処理部101より出力される「+5V」の伝送ラインである。受信側のHDMI(HDCP認証)処理部201は、このライン301が「+5V」になると、送信側のHDMI(HDCP認証)処理部101が接続されたことを検知する。また、この「+5V」は、受信側HDMI機器の電源がオフのときに、送信側HDMI機器がEDID EEPROM210に記憶されている情報EDIDを読み出す時の電源や、送信側のHDMI(HDCP認証)処理部101へ返すHPD信号の電源となる。
【0028】
また、図3において、ライン302はHPD信号の伝送ラインである。送信側のHDMI(HDCP認証)処理部101は、このHPD信号がハイレベルのとき、受信側のHDMI(HDCP認証)処理部201が接続されたことを検知する。また、このHPD信号は、EDID EEPROM210に記憶されている情報EDIDの読み出し許可信号にもなる。
【0029】
また、ライン303はSCL信号やSDA信号を伝送するDDCラインで、HDCP認証や受信機器の情報取得といった情報通信に用いられる。また、ライン304はデジタルビデオ信号を伝送するTMDS0〜TMDS2のラインである。また、ライン305は、相手機器の制御の信号を送受信するCECラインである。
【0030】
次に、このような公知のHDMIケーブル300で伝送される信号に基づいて、HDMI(HDCP認証)処理部101とHDMI(HDCP認証)処理部201との間で行われる公知のHDCP認証の第1段階について説明する。図4は、このHDCP認証の第1段階を説明するフローチャートである。HDCP認証は、DDCライン303で伝送される信号に基づいて行われる。
【0031】
まず、HDMI(HDCP認証)処理部101は、このHDMI(HDCP認証)処理部101が搭載されているHDMI送信側機器固有の鍵ベクトルAksvをHDMI(HDCP認証)処理部101内の図示しない記憶部、または不揮発性メモリ106から取得する。また擬似乱数Anを生成する(ステップS1)。続いて、HDMI(HDCP認証)処理部101は、擬似乱数Anと40ビットのデジタルデータである鍵ベクトルAksvとをDDCライン303を介してHDMI(HDCP認証)処理部201へ送信する(ステップS2)。
【0032】
一方、HDMI(HDCP認証)処理部201は、このHDMI(HDCP認証)処理部201が搭載されているHDMI受信側機器固有の鍵ベクトルBksvをHDMI(HDCP認証)処理部201内の図示しない記憶部、または不揮発性メモリ206から取得する。(ステップS3)。続いて、HDMI(HDCP認証)処理部201は、生成した40ビットのデジタルデータである鍵ベクトルBksvをDDCライン303を介してHDMI(HDCP認証)処理部101へ送信する(ステップS4)。
【0033】
HDMI(HDCP認証)処理部101は、上記の鍵ベクトルBksvを受信し、その受信鍵ベクトルBksvと擬似乱数Anとに基づいて演算結果R0を所定の演算式に基づいて生成する(ステップS5)。一方、HDMI(HDCP認証)処理部201は、上記の鍵ベクトルAksvを受信し、その受信鍵ベクトルAksvと擬似乱数Anとに基づいて演算結果R0’を所定の演算式に基づいて生成する(ステップS6)。
【0034】
続いて、HDMI(HDCP認証)処理部201は、生成した演算結果R0’をDDCライン303を介してHDMI(HDCP認証)処理部101へ送信する(ステップS7)。そして、HDMI(HDCP認証)処理部101は、生成した演算結果R0と受信した演算結果R0’とを照合する(ステップS8)。この照合が一致するとき認証成功と判断し、続いて、HDCP認証の公知の第2段階に進む。
【0035】
上記のHDCP認証で使用される機器固有の鍵ベクトルAksv及びBksvは、認証の際にのみ用いられた後、消失する。本発明はこの機器固有の鍵ベクトルAksv及びBksvを相手接続機器の固有識別子として使用するために不揮発性メモリ106、206に記憶しておき、機器の接続によってHDCP認証が行われる毎に、この記憶した鍵ベクトルと比較することで、予め設定された機器同士が接続されていることを確認し、予め設定された機器が接続された時にのみ動作するように制限を行うものであり、以下、その詳細について図1及び図5のフローチャートを併せ参照して説明する。
【0036】
図5(A)は、本実施の形態の盗難防止装置に接続される相手機器の認識、設定及び動作制限の説明用フローチャート、図5(B)は、本実施の形態の盗難防止装置の防犯動作説明用フローチャートを示す。なお、本実施の形態の盗難防止装置100と200は、同様の動作を行うので、代表して盗難防止装置100の動作について主として以下説明する。
【0037】
まず、図5(A)のフローチャートに示すように、盗難防止装置100及び200は、いずれも搭載されているHDMI機器の電源が入れられて、図4に示したフローチャートに従ってHDCP認証処理が行われて認証成功と判断されているものとする(ステップS11)。
【0038】
次に、盗難防止装置100のHDMI(HDCP認証)処理部101は、防犯設定制御/表示部107からの信号により、ユーザによって設定画面から防犯設定が選択されたかどうかを判定する(ステップS12)。HDMI(HDCP認証)処理部101は、防犯設定が選択されたと判定すると、既に前もってパスワードが設定されているかどうかを判定する(ステップS13)。このパスワードは、防犯設定を容易に解除されないように防犯設定制御/表示部107を用いて行われる。
【0039】
HDMI(HDCP認証)処理部101は、防犯設定が選択されていないと判定した場合は、パスワード設定画面を開き、ユーザにパスワードを設定させる(ステップS16)。一方、ステップS13で防犯設定が選択されていると判定した場合は、防犯設定制御/表示部107の表示部に入力画面を開き、ユーザによって前もって設定されたパスワードを要求する(ステップS14)。
【0040】
続いて、HDMI(HDCP認証)処理部101は、ステップS14の要求に基づいて正しいパスワードが入力された場合、又は、ステップS16でパスワードを設定させた後、(1)「防犯設定のオン(ON)/オフ(OFF)」、(2)「接続許可情報の更新」、(3)「戻る」の3つの項目からなるメニュー画面を上記の表示部に表示させる(ステップS15)。
【0041】
上記の3つの項目のうち、「防犯設定のON/OFF」の項目が防犯設定制御/表示部107により選択された場合、HDMI(HDCP認証)処理部101は、それが防犯設定のONかどうかを判定する(ステップS17)。そして、防犯設定のOFFが設定されていると判定した時には(ステップS17のOFF)、上記のメニュー画面の表示を継続させる。また、「戻る」の項目が防犯設定制御/表示部107により選択された場合、防犯設定とは関係の無い通常の設定画面に戻す(ステップS18)。一方、HDMI(HDCP認証)処理部101は、防犯設定制御/表示部107により「防犯設定のON」が選択されたと判定したとき(ステップS17のON)、又は「接続許可情報の更新」の項目が選択されたと判定したときは、「現在接続されている機器との接続でのみ動作するように設定してもよいですか?」との問い合わせのメッセージを防犯設定制御/表示部107の表示部に表示させる(ステップS19)。
【0042】
そして、上記の問い合わせのメッセージに従い、防犯設定制御/表示部107により「いいえ」が選択された場合(ステップS20の「いいえ」)、HDMI(HDCP認証)処理部101は、上記表示部に上記メニュー画面の表示を行わせる(ステップS15)。一方、上記の問い合わせのメッセージに従い、防犯設定制御/表示部107により「はい」が選択された場合(ステップS20の「はい」)、HDMI(HDCP認証)処理部101は、接続相手のHDMI受信側機器の正規の鍵ベクトルのBksvの値を不揮発性メモリ106に保存し、これ以降、この接続相手のHDMI受信側機器と認証が通っていない状態では、設定画面を除く、映像や音声のコンテンツの出力を停止する(ステップS21)。
【0043】
ステップS21において、盗難防止装置100内の不揮発性メモリ106には、接続相手のHDMI受信側機器からの鍵ベクトルBksvが記憶される。一方、盗難防止装置200内の不揮発性メモリ206には、盗難防止装置100を搭載した接続相手のHDMI送信側機器からの鍵ベクトルAksvが記憶される。また、ステップS21のコンテンツの出力停止は、出力許可スイッチ103によるデジタルビデオ信号の出力不許可と、出力許可スイッチ105によるアナログビデオ信号の出力不許可とからなる。
【0044】
従って、本実施の形態の盗難防止装置100によれば、現在接続されている相手機器との接続でのみ動作するように設定された場合は、その後にksv抽出/比較部102が、相手のHDMI受信側機器との接続によってHDCP認証が行われる度に、当該接続相手のHDMI受信側機器から送信される信号中から抽出した鍵ベクトルと不揮発性メモリ106に記憶されている正規の鍵ベクトルBksvとを比較し、比較結果が一致であれば、接続相手のHDMI受信側機器との送受信を正常に行う。これに対し、接続相手のHDMI受信側機器が設定時と異なる他のHDMI受信側機器に変更された場合、ksv抽出/比較部102が不一致の比較結果を出力し、出力許可スイッチ103及び105を制御してデジタルビデオ信号の出力とアナログビデオ信号の出力とを停止する。
【0045】
このため、盗難防止装置100を搭載したHDMI送信側機器が持ち去られて、そのHDMI送信側機器が当初接続されていたHDMI受信側機器とは異なる他のHDMI受信側機器と接続された場合、ksv抽出/比較部102から不一致の比較結果が出力されて、デジタルビデオ信号とアナログビデオ信号の出力が禁止されるので、盗難防止装置100を搭載したHDMI送信側機器の使用をできなくすることができる。
【0046】
すなわち、盗難防止装置100を搭載したHDMI送信側機器は、当初接続されていたHDMI受信側機器と一緒でないと使用できず、盗難防止装置100を搭載したHDMI送信側機器を盗難して別のHDMI受信側機器を接続しても使用できないため、盗難者の盗難の意欲を削ぐことができ、結果的に盗難を防止することができる。
【0047】
これは、盗難防止装置200を搭載したHDMI受信側機器が持ち去られた場合も同様である。ただし、盗難防止装置200の場合は、ksv抽出/比較部202から不一致の比較結果が出力されて、デジタルビデオ信号とアナログビデオ信号の入力が入力許可スイッチ203及び205により禁止されるので、盗難防止装置200を搭載したHDMI受信側機器の使用をできなくすることができる。
【0048】
このように、本実施の形態によれば、HDCP認証で使用され、通常は認証後に消去される機器固有の鍵ベクトルksvを相手接続機器の固有識別子として使用するためにあえて不揮発性メモリ106、206に記憶しておくことで、機器の接続によってHDCP認証が行われる毎に、この記憶した鍵ベクトルと受信した相手機器の鍵ベクトルとを比較するという、極めて簡単な構成により盗難を防止することができる。
【0049】
なお、HDCP認証時に用いられる鍵ベクトルksvは、ある機器が不正を行った場合に所定の機関によりこの不正を行った機器の鍵ベクトルをSRM(System Renewability Message)と呼ばれるリストに載せられて公開されている。従って、ksv抽出/比較部102、202は、HDCP認証時に受信した信号中から抽出した鍵ベクトルBksv、Aksvが、上記のSRMに登載されていない正規の鍵ベクトルであることを確認してから不揮発性メモリ106、206に記憶する機能を有することが望ましい。
【0050】
次に、盗難防止装置100、200の防犯動作について図5(B)のフローチャートと共に説明する。
【0051】
いま、送信側の盗難防止装置100と受信側の盗難防止装置200共に、電源が入れられ、防犯設定が有効になっているものとする(ステップS31)。ステップS31の防犯設定が有効になっているとは、ステップS21の設定がなされていることを意味する。
【0052】
続いて、動作状態だけでなく、維持状態においても、送信側であれば相手機器のHPD信号を、受信側であればHDMI5Vを監視する(ステップS32)。すなわち、送信側の盗難防止装置100は、ステップS32において受信側のHDMI(HDCP)処理部201からHPD信号の伝送ライン302により伝送されるHPD信号が所定の電位であるかどうかを電圧検出部104により監視する。一方、受信側の盗難防止装置200は、ステップS32において送信側のHDMI(HDCP)処理部101からライン301を介して送信される+5Vを電圧検出部204により監視する。
【0053】
続いて、盗難防止装置100はHPD信号が5秒以上停止したかどうかを、また盗難防止装置200は+5Vが5秒以上停止したかどうかを判定する(ステップS33)。盗難防止装置100はHPD信号が5秒以上停止したとき、盗難防止装置200は+5Vが5秒以上入力されなかったときに、相手機器との接続が断たれたと判断して内蔵スピーカ(あるいはブザー)による警報音、それに加えて搭載されている機器の表示部に警告表示を行う(ステップS34)。
【0054】
すなわち、盗難防止装置100の電圧検出部104は、ステップS33において所定レベルのHPD信号が5秒以上停止したかどうかを判定し、5秒以上停止したときは接続相手のHDMI受信側機器とのHDMI接続がHDMI受信側機器の盗難により断たれたと判断し、ステップS34において警報音(警報表示)発生部108により警報音を表示し、異常状態を示す警報表示(視覚的威迫動作)を行う。
【0055】
また、盗難防止装置200の電圧検出部204は、ステップS33において+5Vが5秒以上停止したかどうかを判定し、5秒以上停止したときは接続相手のHDMI送信側機器とのHDMI接続がHDMI送信側機器の盗難により断たれたと判断し、ステップS34において警報音(警報表示)発生部208により警報音を表示し、異常状態を示す警報表示(視覚的威迫動作)を行う。
【0056】
HDMI接続は、相手機器に再認証を促すために一時的(約100msec強)に断たれることがあるため、本実施の形態では、盗難とみなす十分な時間で、なおかつ、盗難の際に直ぐに警告を発動できる時間として上記の5秒を設定している。しかし、本発明はこの時間に限定されるものではない。
【0057】
このように、本実施の形態の盗難防止装置100、200によれば、接続相手のHDMI規格を備えたAV機器(HDMI機器)からHDMIケーブルを介して送信されるHPD信号又は+5Vを利用して監視し、5秒以上入力されない時には接続相手のHDMI機器が接続を解除されて盗難されたと判断して警告音や警告表示により盗難を報知するようにしたため、簡単な構成により盗難を防止することができる。
【0058】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、ステップS21における比較する2つのksvの値が不一致のときの処理は、デジタルビデオ信号やアナログビデオ信号の出力の停止としたが、これに限らず、操作入力を受け付けない、あるいは正常に再生することができないビデオ信号を出力するなどの方法でもよく、要はAV動作機能の少なくとも一部を制限する処理であればよい。
【0059】
また、本発明は図5のフローチャートに示す動作をコンピュータにより実行させる盗難防止プログラムも包含する。この場合、盗難防止プログラムは記録媒体から再生されてコンピュータに取り込まれてもよいし、サーバーからネットワークを介して配信されてコンピュータにダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100、200 盗難防止装置
101、201 HDMI(HDCP)認証処理部
102、202 ksv抽出/比較部
103、105 出力許可スイッチ
104、204 電圧検出部
106、206 不揮発性メモリ
107、207 防犯設定制御/表示部
108、208 警報音(警報表示)発生部
203、205 入力許可スイッチ
300 HDMIケーブル
301 +5V伝送ライン
302 HPD信号伝送ライン
303 DDCライン
310 アナログケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号処理機能及び音声信号処理機能のうち少なくともいずれか一方の処理機能を有し、かつ、デジタルインタフェースを備えた電子機器に搭載された盗難防止装置であって、
前記デジタルインタフェースにて接続された他の電子機器から送信された正規の鍵情報を前記デジタルインタフェースにより受信して、HDCPによる認証を随時行う認証手段と、
防犯設定の有無を選択する防犯設定選択手段と、
受信した前記正規の鍵情報を不揮発性記憶部に記憶する記憶制御手段と、
前記防犯設定選択手段により前記防犯設定の有が選択されたときは、前記認証手段による認証毎に、前記不揮発性記憶部に記憶されている前記正規の鍵情報と同一の鍵情報を受信するか否かを判定し、前記正規の鍵情報と同一の鍵情報を受信したことを示す判定結果が得られないときは、前記処理機能の少なくとも一部を制限する動作制限手段と
を有することを特徴とする盗難防止装置。
【請求項2】
前記他の電子機器との間で前記デジタルインタフェースの規格に従って送受信する信号のうち、予め定めた信号が一定期間以上途絶したかどうかを監視する監視手段と、
前記監視手段により前記予め定めた信号が前記一定時間以上途絶したことを検出したときに、異常を示す情報を報知する報知手段と
を更に有することを特徴とする請求項1記載の盗難防止装置。
【請求項3】
前記予め定めた信号は、HPD信号又は前記前記他の電子機器より供給される所定の電圧値の信号であることを特徴とする請求項2記載の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−38183(P2012−38183A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179183(P2010−179183)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】