説明

監視装置

【課題】高速目標についても対処可能な監視装置を得る。
【解決手段】アドレス制御信号に基づいて、光学系2により結像された画像の中の所望の画素領域を、選択的に電気信号として読み出し可能な二次元光検出素子3と、視軸制御信号に応じて駆動することで光学系2の指向方位を変更する視軸駆動部8と、二次元光検出素子からの電気信号に基づいて、監視目標の位置および移動方向を含む目標情報を生成する目標探知追尾処理部(5、6、7)と、目標情報に基づいて、次回の画像更新時における最適な読み出し画素の領域を演算するアドレス選択画素演算器11を有し、演算結果をアドレス制御信号として出力する素子制御部(4、11)と、目標情報に基づいて、次回の画像更新時における光学系の最適な指向方位を演算し、視軸制御信号として出力する視軸制御部9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドレス制御により個々の単位画素からの信号を任意選択して読出可能な二次元光検出素子を用いた監視装置に関するものであり、特に、目標追尾処理器からの指令に逐次連動した画像更新レート(以下、フレームレートという)の高速化による目標追尾処理の最適化に適用される監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次元光検出素子を用いた固体撮像装置においては、アドレス制御信号により、任意の画素を選択して画像信号を読み出す方法(以下、アドレス読出方式という)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のアドレス読出方式では、MOS構造などの能動素子(MOSトランジスタ)が、画素毎に二次元行列上に配列されている。さらに、これらの能動素子のON/OFF動作を制御するシーケンサが併設されている。そして、例えば、数10Bit程度のシリアルデータによる比較的簡便な指令コード入力によって、シーケンサが各能動素子の電子スイッチを個別に制御する。これにより、指定した画素に蓄積された信号電荷に基づく電流または電圧信号だけを、例えば、1/30秒〜1/120秒程度のフレームレートで、応答良く読み出すことができる。
【0004】
一方、例えば、航空機、車両、艦船等に搭載される監視装置においては、以下のような、目標を追跡する方法(以下、自動追尾処理という)が用いられる(例えば、特許文献2、3参照)。まず、目標探知処理器での目標検出処理により、目標を探知する。次に、目標追尾処理器で、その画像上の位置やフレーム間の像移動量、移動方向などの目標情報から、目標の実空間上の方位を特定する。さらに、その特定した方位に視軸指向する処理を繰り返すことで、目標を追尾する。
【0005】
このような監視装置においては、自動追尾処理に必要な角度分解能を確保しつつ、広い目標捜索視野を得るために、画素数の大きい二次元光検出素子を使用することが一般的である。また、このときのフレームレートは、1画素分の信号読出周波数をf[Hz]、垂直方向画素数をv、水平方向画素数をhとすると、
f/(v×h)[Hz]
となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−069408号公報
【特許文献2】特開昭59−208983号公報
【特許文献3】特開昭62−58231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来の監視装置においては、既に述べたように、広い捜索視野を得るために、できるだけ画素数を大きく取る必要があることから、フレームレートが必然的に低くなる。さらに、高速な目標を探知する場合には、フレーム間の目標移動量が大きくなることから、目標を追跡するのに必要な自動追尾処理を掛ける信号処理領域(以下、フィルタサイズという)を大きく取らなくてはならない。この結果、高い信号処理能力が必要になるとともに、視軸指向する際の角度誤差が大きくなりやすく、結果的に目標を失追しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、高速目標についても対処可能な監視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る監視装置は、入射光を受光面上に集光・結像させる光学系と、外部からのアドレス制御信号に基づいて、光学系により結像された画像の中の所望の画素領域を、選択的に電気信号として読み出し可能な二次元光検出素子と、光学系および二次元光検出素子が搭載され、外部からの視軸制御信号に応じて駆動することで光学系の指向方位を変更する視軸駆動部と、二次元光検出素子から読み出された電気信号に基づいて、監視目標の位置および移動方向を含む目標情報を生成する目標探知追尾処理部と、目標探知追尾処理部で生成された目標情報に基づいて、次回の画像更新時における最適な読み出し画素の領域を演算するアドレス選択画素演算器を有し、演算結果をアドレス制御信号として二次元光検出素子に出力する素子制御部と、目標探知追尾処理部で生成された目標情報に基づいて、次回の画像更新時における光学系の最適な指向方位を演算し、視軸制御信号として視軸駆動部に出力する視軸制御部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る監視装置によれば、目標追尾処理器で抽出された目標情報から、読み出すべき画素アドレスを選択し、アドレス読出方式により特定の画素のみ画像信号を読み出すことで、フレームレート高速化を実現し、フレーム間目標移動量を小さくすることにより、高速目標についても対処可能な監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における監視装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における監視装置の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の監視装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における監視装置の構成図である。この監視装置は、光学系2、二次元光検出素子3、素子駆動装置4、A/D変換部5、目標探知処理器6、目標追尾処理器7、視軸駆動装置8、視軸制御装置9、目標情報表示器10、およびアドレス選択画素演算器11を備えている。ここで、素子駆動装置4、およびアドレス選択画素演算器11は、素子制御部に相当する。また、A/D変換部5、目標探知処理器6、および目標追尾処理器7は、目標探知追尾処理部に相当する。
【0014】
次に、図1の構成を備えた監視装置の動作について説明する。入射光1は、光学系2で集光されて、二次元光検出素子3に結像する。二次元光検出素子3は、素子駆動装置4でのアドレス制御により、必要な画素領域について任意選択されて読出される。さらに、その出力は、A/D変換部5でデジタル信号に変換された後、画像信号となって目標探知処理器6に入力される。
【0015】
目標探知処理器6は、目標を弁別するのに最適なしきい値を設けて、二値化処理が実行される。そして、その二値化画像が、逐次後段の目標追尾処理器7に入力される。
【0016】
視軸駆動装置8は、光学系2が搭載されており、視軸制御装置9からの視軸制御信号により駆動される。そして、その指向方位は、視軸駆動装置8内に用意された角度センサにより計測される。また、角度センサの角度モニタ値のゼロ点は、あらかじめ監視装置のプラットホーム上での視軸基準と一致するように調整しておく(以下、アライメントという)。これにより、目標の画像上の位置と、実空間上の方位とに、誤差が生じないようにしてある。
【0017】
ここで、目標探知処理器6において目標が識別されると、その探知情報が目標追尾処理器7に入力され、ラベル付け処理や特徴抽出処理が実行される。
【0018】
さらに、この探知情報をトリガにして、目標追尾処理器7は、その画像上の位置や、フレーム間の像移動量、移動方向などの目標に関する情報を生成する。そして、目標追尾処理器7は、生成した情報から、目標の実空間上の方位を特定する。さらに、目標追尾処理器7は、特定した方位に視軸指向するように、視軸制御装置9に予測座標情報を入力して、次フレームの画像視野内にも目標を捕捉できるように、繰り返し動作する。また、目標追尾処理器7は、この目標の方位、距離等の目標情報を重畳して、目標情報表示器10に出力する。
【0019】
このとき、目標追尾処理器7で生成される画像上の位置や、フレーム間の像移動量、移動方向などの目標に関する情報は、アドレス選択画素演算器11にも出力される。そして、アドレス選択画素演算器11は、次フレームで最適な画素選択範囲を演算し、素子駆動装置4に再設定を指令する。この指令によって、素子駆動装置4から二次元光検出素子3にアドレス制御信号が入力され、新たに指定された画素領域についてのみ、画像信号が読み出される。
【0020】
なお、このとき、新たに切り出された画素領域の画面中心と、アライメントを実施する際に用いた視軸基準とが異なる場合には、アドレス選択画素演算器11は、実空間上の角度差を補正するための補正信号を目標追尾処理器7に与える。これにより、目標追尾処理器7は、視軸の指向方位の誤差が生じないように、目標情報を補正することができる。
【0021】
アドレス選択画素演算器11を備えた監視装置によれば、アドレス読出方式により、特定の画素のみ画像信号を読み出すことで、フレームレートを高速化することができる。この結果、フレーム間の目標移動量を小さくし、フィルタサイズを小さくすることで、信号処理の応答性改善と、視軸指向する際の誤差も小さくすることができ、高速目標についても対処することが容易になる。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態1における監視装置の効果を示す図である。図2における各符号は、以下のものを意味している。
12:時刻T0での像
13:視野
14:時刻T1での像
15:時刻T2での像
16:アドレス選択された新たな視野
17:時刻T1'での像
18:時刻T2での新たな像
19:時刻T1'での新たな像。
【0023】
二次元光検出素子3からの画像信号上に、時刻T0において探知目標の像12が写っており、二次元光検出素子3で得ることのできる視野13は、垂直方向画素数v、水平方向画素数hから生成されているものとする。また、探知目標は、時刻がT1、T2と進むにつれて、実空間においては、像14、15の位置にそれぞれ進出していくものとする。
【0024】
時刻T0で、目標探知処理器6が像12を目標と識別し、目標追尾処理器7が追跡を開始し、T0からT1間の像移動量がX1[画素]だったとする。また、時刻T1'において生成される画像信号を、垂直方向画素数v/2、水平方向画素数h/2に設定し、新たに視野16が得られるように、アドレス選択画素演算器11で演算が実行される。そして、素子駆動装置4は、アドレス選択画素演算器11による演算結果に基づいて、アドレス制御を掛けることとする。この場合、フレームレートは、f/(v/2×h/2)=4×f/(v×h)[Hz]となり、これまでの4倍となり、像移動量は、X1/4[画素]に収まることになる。
【0025】
目標追尾処理器7は、時刻T0〜T1間の像移動量X1を、垂直方向成分X1v、水平方向成分X1hに分解し、これをフレームレートの倍率4で割ったものを、時刻T1における目標位置の画素アドレス(v1、h1)に加算する。これにより、時刻T1'での目標予測位置(v1+X1v/4、h1+X1h/4)が演算される。
【0026】
これを実空間上の方位に換算し、この予測方位情報を視軸制御装置9に入力することで、視野13の1/4の視野領域からなる新たな視野16に、目標の像17を捕捉することが可能となる。また、これに付随して、信号処理上のフィルタサイズも1/4にすることができる。
【0027】
さらに、探知目標の航跡が時刻T1からT2の間に変化し、時刻T2において、実空間上で像18の位置に進出するものと仮定すれば、従来の技術においては目標を捕捉することは困難になる。しかしながら、本実施の形態1においては、時刻T1'において、視軸指向する際の誤差を小さくすることが可能であるため、視野16内に像19を捕捉することが可能となる。
【0028】
以上のように、実施の形態1によれば、目標追尾処理器で抽出された目標情報から、読み出すべき画素アドレスを選択し、アドレス読出方式により特定の画素のみ画像信号を読み出すことで、フレームレート高速化を実現し、フレーム間目標移動量を小さくすることにより、高速目標についても対処可能な監視装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 入射光、2 光学系、3 二次元光検出素子、4 素子駆動装置、5 A/D変換部、6 目標探知処理器、7 目標追尾処理器、8 視軸駆動装置(視軸駆動部)、9 視軸制御装置(視軸制御部)、10 目標情報表示器、11 アドレス選択画素演算器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を受光面上に集光・結像させる光学系と、
外部からのアドレス制御信号に基づいて、前記光学系により結像された画像の中の所望の画素領域を、選択的に電気信号として読み出し可能な二次元光検出素子と、
前記光学系および前記二次元光検出素子が搭載され、外部からの視軸制御信号に応じて駆動することで前記光学系の指向方位を変更する視軸駆動部と、
前記二次元光検出素子から読み出された前記電気信号に基づいて、監視目標の位置および移動方向を含む目標情報を生成する目標探知追尾処理部と、
前記目標探知追尾処理部で生成された前記目標情報に基づいて、次回の画像更新時における最適な読み出し画素の領域を演算するアドレス選択画素演算器を有し、演算結果を前記アドレス制御信号として前記二次元光検出素子に出力する素子制御部と、
前記目標探知追尾処理部で生成された前記目標情報に基づいて、次回の画像更新時における前記光学系の最適な指向方位を演算し、前記視軸制御信号として前記視軸駆動部に出力する視軸制御部と
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の監視装置において、
前記素子制御部は、前記アドレス選択画素演算器により演算された前記領域の中心と、視軸基準とが異なる場合には、実空間上の角度差を補正するための補正信号を前記目標探知追尾処理部に対して出力し、
前記目標探知追尾処理部は、前記補正信号に基づいて、視軸の指向方位の誤差が生じないように前記目標情報を生成する
ことを特徴とする監視装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−206468(P2010−206468A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49143(P2009−49143)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】