説明

目標追尾装置、目標追尾方法、目標追尾プログラム

【課題】同一目標から複数の検出位置を得るセンサシステムにおいて、検出位置の重心位置精度劣化を低減するとともに、航跡の高精度化を目的とする。
【解決手段】追尾処理部108は、観測精度を示す観測精度パラメータが設定された観測モデルを用いて、検出装置200から取得した検出情報に基づき目標の追尾を行う。クラスタリング算出部104は、検出装置200から取得した検出情報が示す目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を算出する。サイズ算出部110は、プロット集合の大きさであるプロット集合サイズを算出する。パラメータ制御部112は、プロット集合サイズの大きさに基づき、追尾処理部108が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、センサ等の検出装置により得られた検出情報に基づき目標を追尾する目標追尾技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能センサにより目標を観測する。目標が大型目標の場合は、高分解能センサは同一目標から複数の検出位置を検出(観測)する。高分解能センサで目標追尾を行う場合、目標追尾を行う追尾フィルタは、複数の検出位置の重心位置を使用して、目標追尾結果である航跡を生成する。
【特許文献1】特開2004−251660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高分解能センサと目標との位置関係によっては、検出位置の欠落が生じる。このことから、検出位置の重心位置の精度が劣化するといった課題がある。
また、精度が劣化した検出位置の重心位置を追尾フィルタに入力すると、目標追尾結果である航跡の精度が劣化するという課題がある。
【0004】
本発明は、例えば、同一目標から複数の検出位置を得るセンサシステム(目標追尾システム)において、検出位置の重心位置精度劣化を低減することを目的とする。
また、本発明は、センサシステムで使用する追尾フィルタが出力する目標航跡の高精度化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る目標追尾装置は、例えば、目標の位置を示す検出情報を、目標を検出する検出装置から取得して目標の追尾を行う目標追尾装置であり、
検出装置から検出情報を取得して記憶装置に記憶する検出情報取得部と、
観測精度を示す観測精度パラメータが設定された観測モデルを用いて、上記検出情報取得部が取得した検出情報に基づき、処理装置により目標の追尾を行う追尾処理部と、
上記検出情報取得部が取得した検出情報が示す目標位置であるプロットをクラスタリングして、目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を処理装置により算出するクラスタリング算出部と、
上記クラスタリング算出部が算出したプロット集合の大きさであるプロット集合サイズを処理装置により算出するサイズ算出部と、
上記サイズ算出部が算出したプロット集合サイズの大きさに基づき、上記追尾処理部が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を処理装置により制御するパラメータ制御部と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る目標追尾装置は、プロット集合サイズの大きさに基づき、観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を制御する。したがって、本発明に係る目標追尾装置によれば、目標の追尾を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
この実施の形態では、プロット集合サイズの大きさに基づき、観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を制御する目標追尾装置100について説明する。
【0008】
まず、この実施の形態及び以下の実施の形態における目標追尾装置100の外観について説明する。図1は、目標追尾装置100を備える目標追尾システムの外観の一例を示す図である。
【0009】
図1に示すように、目標追尾システムは、例えば、目標追尾装置100と複数のセンサ905とを備える。また、目標追尾装置100は、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、マウス903、サーバ904を備える。
目標追尾装置100は、各センサ905から目標である航空機906を検出して得た検出情報を取得する。そして、目標追尾装置100は、取得した検出情報に基づき、航空機906を追尾する。
【0010】
次に、この実施の形態及び以下の実施の形態における目標追尾装置100のハードウェア構成について説明する。図2は、目標追尾装置100ハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、目標追尾装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901、キーボード902、マウス903、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。
【0011】
ROM913、磁気ディスク装置920は、不揮発性メモリの一例である。RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913とRAM914とは、記憶装置の一例である。通信ボード915とキーボード902とは、入力装置の一例である。また、通信ボード915は、出力装置の一例である。さらに、通信ボード915は、通信装置の一例である。LCD901は、表示装置の一例である。
【0012】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0013】
上記プログラム群には、以下の説明において「検出情報取得部102」、「クラスタリング算出部104」、「プロット集合重心算出部106」、「追尾処理部108」、「サイズ算出部110」、「パラメータ制御部112」、「表示処理部114」、「軌跡情報記憶部116」、「ゲート制御部118」、「相違予想情報記憶部120」、「エリア判定処理部122」、「相違判定部124」、「相違制御処理部126」、「プロット監視部128」、「メモリートラック制御部130」、「形状記憶部132」、「形状相違点補完部134」等として説明する機能を実行するプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群には、以下の説明において、「検出情報」、「制御情報」等として説明する情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「ファイル」や「データベース」の各項目として記憶される。「ファイル」や「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリになどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
また、以下の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体によりオンライン伝送される。
【0014】
また、以下の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、以下に述べる「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、以下に述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【0015】
次に、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図3は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
目標追尾装置100は、ネットワークを介して検出装置200と接続される。目標追尾装置100は、複数の検出装置200と接続されても構わないが、ここでは簡単のため1つの検出装置200のみを図示している。
目標追尾装置100は、目標の位置を示す検出情報を、目標を検出する検出装置200から取得して目標の追尾を行う。
目標追尾装置100は、検出情報取得部102、クラスタリング算出部104(プロットクラスタリング処理部)、プロット集合重心算出部106、追尾処理部108(追尾フィルタ処理部)、サイズ算出部110(プロット集合サイズ監視部)、パラメータ制御部112(フィルタパラメータ制御部)、表示処理部114を備える。
【0016】
検出装置200は、例えば、レーダ、IR(InfraRed)、EW(Electronic Warfare)、EO(Electronic Optic)、ESM(Electronic Support Measures)等のセンサである。
検出装置200は、高分解能に目標を検出することを想定する。つまり、検出装置200は、高分解能センサである。
検出装置200は、1台であっても、複数台存在してもよい。検出装置200は、複数の種類の異なるセンサも含でいてもよい。
【0017】
検出情報取得部102は、検出装置200から目標の位置(検出位置)を示す検出情報を取得して記憶装置に記憶する。検出情報取得部102が取得した検出情報には、同一目標から得た検出位置だけでなく、他の目標から得た検出位置や誤警報を含む。
検出情報取得部102は、取得した検出情報を、クラスタリング算出部104へ入力する。
【0018】
検出位置は、検出装置200が検出した1つの検出情報が示す位置である場合と、検出装置200が検出した複数の検出情報が示す連続した位置の重心である場合とのいずれであってもよい。
図4は、検出装置200が検出した1つの検出情報が示す位置と、複数の検出情報が示す連続した位置の重心の概念図である。図4は、例えば、高分解能センサにより大型目標を観測した場合に、同一目標から複数の検出位置を得た場合の2次元空間における概念図である。
各セルの内、色がついているそれぞれのセルが検出装置200が検出した1つの検出情報が示す検出位置である。
大型目標から連続した(隣接した)検出位置の集合A、B、Cが得られる。集合A、B、Cにおける重心が重心A、B、Cである。つまり、重心A、B、Cが、検出装置200により検出された連続した位置の重心である。
なお、図4における2次元空間の横軸、縦軸は、各種座標系における横軸及び縦軸でよい。
【0019】
クラスタリング算出部104は、検出情報取得部102が取得した検出情報が示す目標の検出位置であるプロットをクラスタリングして、目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を処理装置により算出する。
クラスタリング算出部104は、例えば、連続したプロットを処理装置により統合する。
次に、クラスタリング算出部104は、統合したプロット集合の重心を処理装置により算出する。
そして、クラスタリング算出部104は、算出した1個あるいは複数個の重心と、追尾処理部108が生成した航跡情報とを用いて、目標とみこまれる検出位置の集合を処理装置により算出する。
この目標とみこまれる検出位置の集合がクラスタリングした検出位置であり、これをプロット集合と呼ぶ。
【0020】
図5は、クラスタリングした検出位置の概念図を示す図である。
検出情報取得部102が取得した各検出情報は、検出位置として色がついている各セルを示すものとする。
クラスタリング算出部104は、検出情報が示す連続した検出位置を統合し、各連続した検出位置の重心を算出する。すると、図5に示す3箇所の重心が算出される。クラスタリング算出部104は、算出した3箇所の重心と、過去に追尾して生成した航跡情報とに基づき、破線で示した位置の集合をプロット集合として算出する。つまり、クラスタリング算出部104は、図5の破線で示した位置の集合が1つの目標であると算出する。
【0021】
クラスタリング算出部104は、プロット集合と、検出情報取得部102が取得した検出情報とをプロット集合重心算出部106へ入力する。また、クラスタリング算出部104は、後述するサイズ算出部110が算出したプロット集合サイズをプロット集合重心算出部106へ入力する。
さらに、クラスタリング算出部104は、プロット集合と、検出情報取得部102が取得した検出情報とをサイズ算出部110へ入力する。
【0022】
プロット集合重心算出部106は、クラスタリング算出部104が入力したクラスタリングした検出位置の集合の重心を算出する。
図6は、クラスタリングした検出位置の重心の概念図である。図6に示すように、プロット集合重心算出部106は、破線で示すクラスタリングした検出位置の重心を算出する。
【0023】
プロット集合重心算出部106は、算出したクラスタリングした検出位置の重心と、検出情報取得部102が取得した検出情報とを追尾処理部108へ入力する。
また、プロット集合重心算出部106は、後述するサイズ算出部110が算出したプロット集合サイズを追尾処理部108へ入力する。
【0024】
追尾処理部108は、プロット集合重心算出部106が算出したクラスタリングした検出位置の重心と、検出情報取得部102が取得した検出情報とを追尾フィルタの観測値として入力して、処理装置により航跡情報を生成する。
そして、追尾処理部108は、生成した航跡情報を表示処理部114へ入力する。また、追尾処理部108は、クラスタリングした検出位置と、検出情報取得部102が取得した検出情報と、プロット集合サイズとを、表示処理部114へ入力する。
【0025】
追尾処理部108は、例えば、制御工学における、カルマンフィルタや、α―βフィルタ、α―β−γフィルタ、H無限大フィルタ等を追尾フィルタとして適用して、目標の運動モデルおよび観測モデルを設定して、目標航跡を生成する。
航跡情報は、例えば、時刻、航跡位置、航跡速度(速度)、航跡加速度(速度変化率)、航跡を生成するのに使用した観測値、目標航跡番号、使用センサ種類、メモリートラック情報、航跡に対する観測値の確からしさ、検出位置の管理番号、クラスタリングした検出位置の管理番号、プロット集合サイズ等を含む情報である。
メモリートラック情報は、追尾フィルタにおいて、目標と相関せずに、前時刻の航跡をそのまま現時刻まで、追尾フィルタで定義する運動モデルにより、外挿したか否かの情報である。
【0026】
追尾フィルタで設定する観測モデルには、目標の観測のあいまいさを表す観測精度パラメータを設定する。
観測精度パラメータは、例えば、極座標の距離、角度の精度、あるいは直交座標のX,Y,Z座標等の精度を示す。
また、観測精度パラメータは、目標位置である距離、角度の精度の他に、目標の速度相当である距離、角度変化率、直交座標のX,Y,Zの速度、想定される各種座標の速度等が設定できる観測モデルである場合は、それらの精度を設定してもよい。同様に、また、目標位置を3次及び4次微分した、加速度、加加速度、あるいは、目標位置をN次微分した諸元の精度を設定してもよい。
また、センサのS/N比等が観測可能であり、追尾フィルタに入力可能であるならば、S/N比等の精度を設定してよい。
なお、観測精度パラメータが示すこれら精度は、どのような座標系で設定してもよい。
【0027】
ここで、観測精度パラメータは、観測値の精度と一致することが望ましい。
観測精度パラメータと観測値の精度が一致するということは、追尾フィルタに入力される観測値と、追尾フィルタで設定する観測モデルとが一致することである。したがって、観測精度パラメータが、観測値の精度に近い程、追尾フィルタでは、当該観測値を実際の目標の真値に近いものとして、観測値の航跡への寄与が大きくなるような、観測値と航跡の相関及び観測値のフィルタリング処理を行う。逆に、観測精度パラメータが、観測値の精度とかけ離れている程、追尾フィルタでは、当該観測値を、目標の真値と異なるものとして、観測値の航跡への寄与が小さくなるような、観測値と航跡の相関及び観測値のフィルタリング処理を行う。
【0028】
追尾フィルタで設定する運動モデルには、目標の運動のあいまいさを表す駆動雑音パラメータを設定する。駆動雑音パラメータは制御工学では、システム雑音パラメータと呼ばれることもある。
駆動雑音パラメータが0ということは、目標の実際の運動と、追尾フィルタに設定している運動モデルが一致することである。
【0029】
追尾フィルタでは、観測値と、追尾フィルタで内部計算している予測値との重み付けにより、航跡を算出している。
駆動雑音パラメータが大きいほど、追尾フィルタで設定している運動モデルのあいまいさが大きい。そのため、予測値に比べ、観測値への航跡寄与が大きくなるような重み付けを行い、航跡を算出する。
一方、駆動雑音パラメータが小さいほど、追尾フィルタで設定している運動モデルのあいまいさが小さい。そのため、観測値に比べ、予測値への航跡寄与が大きくなるような重み付けを行い、航跡を算出する。
【0030】
つまり、観測精度パラメータと駆動雑音パラメータとを適切に設定することで、目標の追尾精度が向上する。そこで、後述するサイズ算出部110とパラメータ制御部112とは、適切な観測精度パラメータと駆動雑音パラメータとを設定する。
【0031】
サイズ算出部110は、クラスタリング算出部104が入力した検出情報とプロット集合とを用いて、プロット集合サイズを算出する。
サイズ算出部110は、算出したプロット集合サイズをパラメータ制御部112へ入力する。
【0032】
プロット集合サイズの概念図を、図7から図10までに示す。
図7は、クラスタリングした検出位置を、矩形で近似した場合のクラスタリングした検出位置の領域を示す。つまり、図7は、クラスタリングした検出位置を、矩形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図である。矩形で近似するとは、例えば、全ての検出位置を包含する最小の矩形を求めることである。
図8は、楕円体で近似した場合のクラスタリングした検出位置の領域を示す。つまり、図8は、クラスタリングした検出位置を、楕円体で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図である。楕円体で近似するとは、例えば、全ての検出位置を包含する最小の楕円体を求めることである。
図9は、検出セルの端点からなる多角形で近似した場合のクラスタリングした検出位置の領域を示す。つまり、図9は、クラスタリングした検出位置を、検出セルの端点からなる多角形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図である。検出セルの端点からなる多角形で近似するとは、例えば、検出位置の端点を結んでできる多角形を求めることである。
図10は、目標形状を多角形で近似した場合のクラスタリングした検出位置の領域を示す。つまり、図10は、目標形状を多角形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図である。目標形状を多角形で近似するとは、例えば、目標形状の概略がある程度既知である場合等に、全ての検出位置を包含する最小の目標形状の相似形を求めることである。
図7から図10までに示したように、プロット集合サイズを求めるときの領域は、いろいろな形状が考えられ、どのような形状でも構わない。また、プロット集合サイズを求めるときの領域は、N次元空間でも良い。Nは任意の自然数である。
【0033】
サイズ算出部110は、図7から図10までに示した領域やその他考えうる領域形状に基づき、プロット集合サイズを算出する。
プロット集合サイズとは、例えば、検出セルの面積と、プロット集合サイズを求めるときの領域の端点の最小値及び最大値等である。
【0034】
図11は、プロット集合サイズの算出方法の一例を示す概念図である。
図11では、一例として図7に示したクラスタリングした検出位置を矩形で近似した場合のプロット集合サイズの算出方法を示す。
図11において、例えば、横軸をX、縦軸をYとする。ここで、X、Yは互いに入れ替えてもよい。また、Xをレンジ、Yをクロスレンジとしてもよい。さらに、Xを距離、Yを方位とする等、各種基準としてもよい。
矩形領域の横軸、縦軸の端点をそれぞれ、Xmax、Ymax、Xmin、Yminと表す。
【0035】
例えば、プロット集合サイズを、式1又は式2のように算出する。式1又は式2のいずれかを使用するのは、事前に決めておく。
【0036】
Ω(k) = max[ Xmax−Xmin, Ymax−Ymin ](式1)
【0037】
式1の左辺におけるΩ(k)は、時刻kのときのプロット集合サイズである。
式1の右辺は、領域の縦軸と横軸の長さの内、大きいものを選択すること意味する。
【0038】
Ω(k) = (Xmax−Xmin)×(Ymax−Ymin)(式2)
【0039】
式2の左辺におけるΩ(k)は、時刻kのときのプロット集合サイズである。
式2の右辺は、領域の縦軸と横軸の長さを乗算したものであり、面積を意味する。
【0040】
ここで、式1と式2とは、2次元で考えているが、3次元でも、N次元でも良い。Nは任意の自然数である。
なお、式2を3次元で考えた場合は、容積を意味する。
【0041】
パラメータ制御部112は、サイズ算出部110が入力したプロット集合サイズに基づき、追尾処理部108が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を処理装置により制御する。
パラメータ制御部112は、例えば、式3と式4とに基づき観測精度パラメータが示す観測精度を制御する。
【0042】
|Ω(k)−Ω|>Ωth(式3)
【0043】
|Ω(k)−Ω|≦Ωth(式4)
【0044】
式3と式4とにおけるΩは、過去N時刻分のプロット集合サイズの平均である。また、Ωthは、プロット集合サイズの閾値(第3の閾値)である。
なお、Ωの算出において、現時刻kを含めたN時刻分のプロット集合サイズの平均をとっても、現時刻kを含めない、N時刻分のプロット集合サイズの平均をとってもかまわない。Ωの算出方法は、事前に決めておく。
また、Ωthは、式1で、現時刻のプロット集合サイズを計算した場合と、式2で、現時刻のプロット集合サイズを計算した場合とで、値が異なるようにしておく。
【0045】
式3が成り立つ場合には、パラメータ制御部112は、観測精度を低くした観測精度パラメータを追尾処理部108へ入力する。観測精度を低くするとは、観測精度パラメータを大きくすることである。
一方、式4が成り立つ場合には、パラメータ制御部112は、観測精度を高くした観測精度パラメータを追尾処理部108へ入力する。観測精度を高くするとは、観測精度パラメータを小さくすることである。
観測パラメータを大きくする(小さくする)とは、通常時に使用される所定の観測パラメータよりも大きくする(小さくする)との意味である。
また、パラメータ制御部112は、プロット集合サイズにより必要に応じて、駆動雑音パラメータの値を変えて追尾処理部108へ入力する。
【0046】
パラメータ制御部112がこのような制御を行うのは、プロット集合サイズが著しく過去の値と異なるのは、観測値に問題があることが考えられるためである。つまり、パラメータ制御部112は、プロット集合サイズが著しく過去の値と異なる場合には、観測値に問題があるとして、過去の観測値に基づく予測値が航跡に与える影響を強くする。
【0047】
表示処理部114は、追尾処理部108が入力した航跡情報と、クラスタリングした検出位置と、検出位置とを、オペレータが見やすいように加工して表示装置に表示する。
【0048】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、プロット集合サイズを求め、現時刻のプロット集合サイズと過去N時刻分のプロット集合サイズの差の絶対値がある事前に決めたプロット集合サイズの閾値よりも大きい場合、追尾フィルタに与える観測精度パラメータを大きく設定する。これにより、追尾フィルタは、現時刻の検出位置よりも過去の追尾結果を重視する制御をして、航跡を生成する。
したがって、航跡精度の劣化が低減される。さらに、クラスタリングした検出位置の重心を精度良く算出することができる。
【0049】
実施の形態2.
この実施の形態では、目標の追尾に使用する検出情報の絞込みを行うゲートを制御する目標追尾装置100について説明する。
【0050】
まず、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図12は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
この実施の形態に係る目標追尾装置100は、実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能に加え、さらに、軌跡情報記憶部116(航跡情報データベース)、ゲート制御部118を備える。
この実施の形態に係る目標追尾装置100のその他の機能は、概ね実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能と同様である。そこで、ここでは、実施の形態1に係る目標追尾装置100と異なる部分のみ説明する。
【0051】
軌跡情報記憶部116は、追尾処理部108が目標を追尾して生成した、目標追尾の結果を示す航跡情報を記憶装置に記憶する。
【0052】
ゲート制御部118は、軌跡情報記憶部116が記憶した過去所定の期間(過去数時刻分)の航跡情報を取得する。
次に、ゲート制御部118は、取得した航跡情報に含まれているメモリートラック情報からメモリートラックした回数を取得する。
また、ゲート制御部118は、航跡情報に含まれているプロット集合サイズを取得する。さらに、ゲート制御部118は、取得したプロット集合サイズから過去所定の期間のプロット集合サイズの変化を示す時系列変化情報を算出する。なお、航跡情報にプロット集合サイズの時系列変化情報が含まれている場合には、時系列変化情報を航跡情報から取得するとしてもよい。
そして、ゲート制御部118は、メモリートラック回数とプロット集合サイズの時系列変化情報とに基づき、追尾フィルタにおけるゲートを制限する。具体的には、ゲート制御部118は、メモリートラックした回数が所定の回数以上である場合、又は、プロット集合サイズが所定以上に大きくなっている場合、追尾処理部108が追尾に使用する検出情報を絞り込みするためのゲートを広げないように処理装置により制限する。
プロット集合サイズが所定以上に大きくなっているとは、プロット集合サイズが所定のサイズ以上に大きくなっていること、及び所定の割合以上に早く大きくなっていることのいずれであってもよい。
また、ゲート制御部118は、メモリートラック回数とプロット集合サイズの変化率とのいずれかのみに基づき、ゲートを制限するとしてもよい。
【0053】
図13は、追尾フィルタにおけるゲートの概念図である。
ゲートは、航跡の予測値と検出情報(観測値)との対応関係から、追尾に使用する検出情報の候補を絞り込む。ゲートは、例えば、図13に示すように予測値を中心とした楕円で形成され、楕円の範囲に含まれる位置を示す検出情報を追尾に使用する。ゲートの形状は楕円に限らず、円でも矩形でも扇形でもどのような形状でもよい。
ゲートは、航跡や観測値の誤差共分散行列により、大きさが変化する可変ゲートでもよいし、大きさが固定の固定ゲートでもよい。
【0054】
メモリートラック回数とプロット集合サイズとによりゲート制御することとしたのは、以下の理由による。
例えば、隣接する他のエリアに存在する別目標からの観測値が目標のゲートに入った場合、クラスタリングした検出位置の重心がずれる。その結果、メモリートラックが発生する。つまり、メモリートラックが多く発生している場合、別目標からの観測値が何度も目標のゲートに入った可能性がある。
また、ゲートが可変ゲートであると仮定すると、メモリートラックが発生することにより、ゲートが大きくなる可能性がある。その結果、別目標から得られた検出情報と相関がとれてしまい、結果としてクラスタリングした検出位置の重心がずれる。
さらに、プロット集合サイズが大きくなるということは、隣接する他のエリアに存在する別目標からの観測値が目標のゲートに入った可能性がある。
そこで、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、メモリートラック回数と、プロット集合サイズの変化率とに基づきゲートを制限することで、別目標から得た検出情報との誤相関を防ぐ。
【0055】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、ゲートを制限することで、別目標から得た検出情報との誤相関を防ぐため、クラスタリングした検出位置の重心を精度良く算出することができる。
【0056】
実施の形態3.
この実施の形態では、検出装置200による検出のずれや欠落の発生する可能性に基づき、観測精度パラメータを制御する目標追尾装置100について説明する。
【0057】
まず、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図14は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
この実施の形態に係る目標追尾装置100は、実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能に加え、さらに、相違予想情報記憶部120(エリア情報データベース)、エリア判定処理部122を備える。
この実施の形態に係る目標追尾装置100のその他の機能は、概ね実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能と同様である。そこで、ここでは、実施の形態1に係る目標追尾装置100と異なる部分のみ説明する。
【0058】
相違予想情報記憶部120は、検出装置200により得られるべき検出情報と、実際に検出装置200により得られると予想される検出情報との相違を予想相違情報として、所定のエリア毎に記憶装置に記憶する。
つまり、相違予想情報記憶部120は、クラスタリングした検出位置がずれるエリアや、欠落するエリアについての情報を記憶する。相違予想情報記憶部120は、所定のエリア毎に、高分解能センサで目標を観測した場合に、検出位置がどの程度ずれるかを示す検出位置相違情報と、検出位置がどの程度欠落するかを示す検出位置欠落情報とを予想相違情報として記憶する。すなわち、予想相違情報は、検出位置相違情報及び検出位置欠落情報と、位置情報とを備える。
【0059】
エリア判定処理部122は、相違判定部124、相違制御処理部126を備える。
【0060】
相違判定部124は、追尾処理部108から航跡情報を取得する。
相違判定部124は、航跡情報を用いて、追尾している目標が現在どのエリアに存在するかを識別する。つまり、相違判定部124は、検出情報取得部102が取得した直近の検出情報が示す位置がどのエリアであるかを識別する。
相違判定部124は、相違予想情報記憶部120が記憶した予想相違情報から、識別した位置(目標が現在いる位置)を含むエリアの予想相違情報を取得する。
相違判定部124は、取得したエリアにおいて相違が存在するか否かを処理装置により判定する。
【0061】
相違制御処理部126は、相違が存在すると相違判定部124が判定した場合、観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度が低くなるようにパラメータ制御部112へ処理装置により制御情報を入力して指示をする。
一方、相違制御処理部126は、相違が存在しないと相違判定部124が判定した場合、観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度が高くなるようにパラメータ制御部112へ処理装置により制御情報を入力して指示をする。
【0062】
ここで、実施の形態1で説明したプロット集合サイズに基づく観測精度パラメータの大小の設定を優先するか、この実施の形態で説明した追尾目標の航跡が欠落するエリアに存在するか否かによる判定を用いた観測精度パラメータ大小の設定を優先するかは、事前に決めておく。両者を考慮して観測精度パラメータを設定するとしてもよい。
【0063】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、クラスタリングした検出位置が欠落することが予想されるエリアを事前登録しておき、追尾フィルタにおける観測精度パラメータを大きく設定する。
したがって、この実施の形態に係る目標追尾装置100によれば、クラスタリングした検出位置の重心の精度劣化を低減することが可能である。
【0064】
実施の形態4.
この実施の形態では、所定の場合にメモリートラックを発生させる目標追尾装置100について説明する。
【0065】
まず、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図15は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
この実施の形態に係る目標追尾装置100は、実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能に加え、さらに、プロット監視部128、メモリートラック制御部130を備える。
この実施の形態に係る目標追尾装置100のその他の機能は、概ね実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能と同様である。そこで、ここでは、実施の形態1に係る目標追尾装置100と異なる部分のみ説明する。
【0066】
プロット監視部128は、サイズ算出部110からプロット集合サイズとプロット数とを取得する。
プロット数は、クラスタリング算出部104が算出したプロット集合に含まれるプロットの数である。プロット監視部128は、プロット数をクラスタリング算出部104からサイズ算出部110を介して取得する。
次に、プロット監視部128は、プロット集合サイズに基づき、目標のプロット集合サイズがある事前に決めた閾値よりも大きいか否かを判定する。
また、プロット監視部128は、プロット数に基づき、プロット数がある事前に決めた閾値よりも大きい否かを判定する。
そして、プロット監視部128は、判定した結果を、メモリートラック制御部130へ入力する。
【0067】
メモリートラック制御部130は、プロット監視部128判定した結果に基づき、プロット集合サイズが所定の値(第1の閾値)よりも大きい場合、又は、プロット集合に含まれるプロット数が所定の値(第2の閾値)よりも多い場合、メモリートラックを発生させるように追尾処理部108へ制御情報を処理装置により送信する。
つまり、メモリートラック制御部130は、上記の場合には、検出情報が不当なものであるとして、現時刻の観測値である検出情報に基づかずに目標の追尾を行うように追尾処理部108を制御する。このように制御することで、強制的に、航跡が所定の範囲を出ないようにする。
【0068】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、プロット集合サイズやプロット数が極端に大きくなるような場合、航跡が所定の範囲を出ないように、追尾目標を強制的にメモリートラックさせる。つまり、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、例えば、天候および建物の遮蔽情報、目標との隣接状況、地面、海面、雲等の影響により、誤警報(誤検出)が多く出るような場合、検出が不当であるとして、航跡が所定の範囲を出ないように、追尾目標を強制的にメモリートラックさせる。
したがって、この実施の形態に係る目標追尾装置100によれば、クラスタリングした検出位置の重心の精度劣化の低減が可能である。
【0069】
実施の形態5.
実施の形態4では、所定の場合にメモリートラックを発生させることにより、航跡が所定の範囲を出ないように制御した。この実施の形態では、上記所定の場合に、観測精度パラメータを制御することで、航跡が所定の範囲を出ないようにする。
【0070】
まず、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図16は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
この実施の形態に係る目標追尾装置100は、実施の形態4に係る目標追尾装置100と同様の概ね構成である。そこで、ここでは、実施の形態4に係る目標追尾装置100と異なる部分のみ説明する。
【0071】
メモリートラック制御部130は、プロット監視部128判定した結果に基づき、プロット集合サイズが所定の値(第1の閾値)よりも大きい場合、又は、プロット集合に含まれるプロット数が所定の値(第2の閾値)よりも多い場合、観測精度パラメータが示す観測精度を低く設定するように制御する制御情報を処理装置によりパラメータ制御部112へ送信する。
つまり、メモリートラック制御部130は、上記の場合には、検出情報が不当なものであるとして、観測精度パラメータを大きく設定させる。このように制御することで、強制的に、航跡が所定の範囲を出ないようにする。
【0072】
パラメータ制御部112は、メモリートラック制御部130が送信した制御情報に基づき、観測精度パラメータを大きくしたものを追尾処理部108へ入力する。
パラメータ制御部112は、併せて、航跡が所定の範囲を出ないようにメモリートラックさせる制御情報を追尾処理部108へ入力するとしてもよい。
【0073】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、プロット集合サイズやプロット数が極端に大きくなるような場合、航跡が所定の範囲を出ないように、観測精度パラメータを大きく設定する。つまり、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、例えば、天候および建物の遮蔽情報、目標との隣接状況、地面、海面、雲等の影響により、誤警報(誤検出)が多く出るような場合、検出が不当であるとして、航跡が所定の範囲を出ないように、観測精度パラメータを大きく設定する。すなわち、追尾目標を強制的にメモリートラックさせるのとほぼ等価な効果を、観測精度パラメータを大きく設定することにより得る。
したがって、この実施の形態に係る目標追尾装置100によれば、クラスタリングした検出位置の重心の精度劣化を低減することができる。
【0074】
実施の形態6.
この実施の形態では、検出装置200により得られた検出情報に欠落等がある場合、データの補完を行う目標追尾装置100について説明する。
【0075】
まず、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能について説明する。図17は、この実施の形態に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図である。
この実施の形態に係る目標追尾装置100は、実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能に加え、さらに、軌跡情報記憶部116、形状記憶部132(プロット集合情報データベース)、形状相違点補完部134(欠落位置算出部)を備える。
この実施の形態に係る目標追尾装置100のその他の機能は、概ね実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能と同様である。そこで、ここでは、軌跡情報記憶部116、形状記憶部132、形状相違点補完部134に関連する部分のみ説明する。
【0076】
軌跡情報記憶部116は、実施の形態2と同様であり、追尾処理部108が目標を追尾して生成した、目標追尾の結果を示す航跡情報を記憶装置に記憶する。
【0077】
形状記憶部132は、プロット集合重心算出部106から、クラスタリングした検出位置と、クラスタリングした検出位置の重心を取得して記憶装置にする。現時刻のクラスタリングした検出位置の重心は、更新前の(1時刻前の)クラスタリングした検出位置の重心としてもよい。
また、形状記憶部132は、サイズ算出部110から、プロット集合サイズを取得して記憶装置に記憶する。
そして、形状記憶部132は、クラスタリングした検出位置とクラスタリングした検出位置の重心とプロット集合サイズとに基づき、目標形状を算出して記憶装置に記憶する。
【0078】
形状相違点補完部134は、クラスタリングした検出位置とクラスタリングした検出位置の重心とプロット集合サイズとを含む過去から現在までのプロット集合情報を形状記憶部132から取得する。
また、形状相違点補完部134は、過去から現在までの目標形状を形状記憶部132から取得する。
また、形状相違点補完部134は、過去から現在までの航跡情報を取得する。
【0079】
形状相違点補完部134は、過去のプロット集合情報に含まれる目標形状とプロット集合サイズと、現在のプロット集合情報に含まれる目標形状とプロット集合サイズとをマッチングする。
また、形状相違点補完部134は、過去の航跡情報から得られる航跡と、現在の航跡情報から得られる航跡をマッチングする。
そして、形状相違点補完部134は、現在の航跡情報を生成するために使用した検出情報が示す検出位置の欠落位置を算出する。
つまり、形状相違点補完部134は、過去所定の期間の目標の形状と、最新の目標の形状とを比較して相違点を求めることにより、最新の目標の形状を算出するのに使用した検出情報に欠落した欠落位置を処理装置により算出し、欠落位置を補完する欠落情報を生成する。
【0080】
形状相違点補完部134は、算出の結果、欠落位置が多い場合、欠落情報をクラスタリング算出部104へ入力するとともに、再度、検出位置のクラスタリングをして、プロット集合を算出させる制御情報を入力する。
クラスタリング算出部104は、検出情報取得部102が取得した検出情報と、形状相違点補完部134が入力した欠落情報とに基づき、改めてプロット集合を算出する。
クラスタリング算出部104は、改めて算出した欠落情報を考慮したプロット集合をプロット集合重心算出部106へ入力する。
【0081】
形状相違点補完部134は、欠落情報をプロット集合重心算出部106へ入力する。
プロット集合重心算出部106は、形状相違点補完部134が入力した欠落情報と、クラスタリング算出部104が入力した欠落情報を考慮したプロット集合とに基づき、欠落情報を考慮したプロット集合の重心を求める。
プロット集合重心算出部106は、欠落情報を考慮したプロット集合と、欠落情報を考慮したプロット集合の重心とを追尾処理部108へ入力する。
【0082】
追尾処理部108は、欠落情報を考慮したプロット集合と、欠落情報を考慮したプロット集合の重心とに基づき、改めて目標の追尾を行う。
【0083】
以上のように、この実施の形態に係る目標追尾装置100は、欠落した現時刻のクラスタリングした検出位置を、過去に観測したクラスタリングした検出位置と目標形状とに基づき補完する。
したがって、この実施の形態に係る目標追尾装置100によれば、クラスタリングした検出位置の重心の精度劣化を低減することができる。
【0084】
つまり、上記実施の形態に係る目標追尾装置100は、
同一目標から複数の検出位置を得るような検出装置200(高分解能センサ)と、
検出装置200から入力される検出位置から、連続した検出位置からなる集合を生成し、その連続した検出位置からなる重心を、各連続した検出位置ごとに求め、それら重心を検出位置として、検出位置をクラスタリングして、クラスタリングした検出位置を求める、クラスタリング算出部104(プロットクラスタリング処理部)と、
クラスタリングした検出位置から、クラスタリングした検出位置の重心を求める、プロット集合重心算出部106と、
クラスタリングした検出位置の重心を、追尾フィルタの観測値として、追尾フィルタにより、航跡情報を求める、追尾処理部108(追尾フィルタ処理部)と、
航跡情報を、オペレータに見やすいように表示する、表示処理部114と、
クラスタリングした検出位置を用いて、クラスタリングした検出位置の領域をある形状で近似し、その形状の長さ又は面積およびN次元の容積により、プロット集合サイズを算出する、サイズ算出部110(プロット集合サイズ監視部)と、
過去数時刻分のプロット集合サイズの移動平均と、現時刻のプロット集合サイズの差の絶対値が、事前に決めたプロット集合サイズの閾値を超えるか否かにより、追尾フィルタに設定する観測精度パラメータ及び駆動雑音パラメータを制御する、パラメータ制御部112(フィルタパラメータ制御部)と、
を備えたことを特徴とする。
【0085】
さらに、上記実施の形態に係る目標追尾装置100は、
航跡情報を蓄積する軌跡情報記憶部116(航跡情報データベース)と、
過去数時刻分の航跡情報から、メモリートラック情報及びプロット集合サイズの時系列変化を見て、追尾フィルタのゲートの大きさを制限する、ゲート制御部118と、
を備えたことを特徴とする。
【0086】
さらに、上記実施の形態に係る目標追尾装置100は、
検出位置欠落情報がエリアの位置からなるエリア情報を、蓄積する相違予想情報記憶部120(エリア情報データベース)と、
追尾フィルタで算出した航跡とエリア位置を用いて、検出位置が欠落するエリアに、航跡が存在すると判定するか否かにより、観測精度パラメータを制御する信号を、フィルタパラメータ制御部に出力し、追尾フィルタの観測精度パラメータを制御する、エリア判定処理部122と、
を備えたことを特徴とする。
【0087】
さらに、上記実施の形態に係る目標追尾装置100は、
プロット集合サイズと、プロット数の情報から、プロット集合サイズが、事前に決めたプロット集合サイズの閾値よりも大きいか否かの情報、又は、プロット数が、事前に決めたプロット数の閾値よりも大きいか否かの情報、を出力する、プロット監視部128と、
プロット集合サイズが、事前に決めたプロット集合サイズの閾値よりも大きいか否かの情報、又は、プロット数が、事前に決めたプロット数の閾値よりも大きいか否かの情報から、追尾フィルタで現時刻の観測値を使用しないように、メモリートラックさせる制御信号を出力するメモリートラック制御部130と、
を備えたことを特徴とする。
【0088】
さらに、上記メモリートラック制御部130は、
プロット集合サイズが、事前に決めたプロット集合サイズの閾値よりも大きいか否かの情報、又は、プロット数が、事前に決めたプロット数の閾値よりも大きいか否かの情報から、追尾フィルタで現時刻の観測値を使用しないように、等価的にメモリートラックさせる制御を、追尾フィルタに設定する観測精度パラメータを大きく設定することにより行うことを特徴とする。
【0089】
さらに、上記実施の形態に係る目標追尾装置100は、
クラスタリングした検出位置と、クラスタリングした検出位置の重心と、事前に算出した目標形状からなるプロット集合情報を蓄積する、形状記憶部132(プロット集合情報データベース)と、
プロット集合情報と、航跡情報から、推定欠落位置を算出し、クラスタリングした検出位置における推定欠落位置を補間したものについて、重心を取るような制御信号を出力する、形状相違点補完部134(欠落位置算出部)と、
を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】目標追尾装置100を備える目標追尾システムの外観の一例を示す図。
【図2】目標追尾装置100ハードウェア構成の一例を示す図。
【図3】実施の形態1に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図4】検出装置200が検出した1つの検出情報が示す位置と、複数の検出情報が示す連続した位置の重心の概念図。
【図5】クラスタリングした検出位置の概念図を示す図。
【図6】クラスタリングした検出位置の重心の概念図。
【図7】クラスタリングした検出位置を、矩形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図。
【図8】クラスタリングした検出位置を、楕円体で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図。
【図9】クラスタリングした検出位置を、検出セルの端点からなる多角形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図。
【図10】目標形状を多角形で近似した場合の、プロット集合サイズを求めるときの領域の概念図。
【図11】プロット集合サイズの算出方法の一例を示す概念図。
【図12】実施の形態2に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図13】追尾フィルタにおけるゲートの概念図。
【図14】実施の形態3に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図15】実施の形態4に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図16】実施の形態5に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【図17】実施の形態6に係る目標追尾装置100の機能を示す機能ブロック図。
【符号の説明】
【0091】
100 目標追尾装置、102 検出情報取得部、104 クラスタリング算出部、106 プロット集合重心算出部、108 追尾処理部、110 サイズ算出部、112 パラメータ制御部、114 表示処理部、116 軌跡情報記憶部、118 ゲート制御部、120 相違予想情報記憶部、122 エリア判定処理部、124 相違判定部、126 相違制御処理部、128 プロット監視部、130 メモリートラック制御部、132 形状記憶部、134 形状相違点補完部、901 LCD、902 キーボード、903 マウス、904 サーバ、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 磁気ディスク装置、921 オペレーティングシステム、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の位置を示す検出情報を、目標を検出する検出装置から取得して目標の追尾を行う目標追尾装置であり、
検出装置から検出情報を取得して記憶装置に記憶する検出情報取得部と、
観測精度を示す観測精度パラメータが設定された観測モデルを用いて、上記検出情報取得部が取得した検出情報に基づき、処理装置により目標の追尾を行う追尾処理部と、
上記検出情報取得部が取得した検出情報が示す目標位置であるプロットをクラスタリングして、目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を処理装置により算出するクラスタリング算出部と、
上記クラスタリング算出部が算出したプロット集合の大きさであるプロット集合サイズを処理装置により算出するサイズ算出部と、
上記サイズ算出部が算出したプロット集合サイズの大きさに基づき、上記追尾処理部が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を処理装置により制御するパラメータ制御部と
を備えることを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
上記パラメータ制御部は、上記プロット集合サイズが第1の閾値よりも大きい場合、上記追尾処理部が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を低く設定する
ことを特徴とする請求項1記載の目標追尾装置。
【請求項3】
上記パラメータ制御部は、上記プロット集合に含まれるプロット数が第2の閾値よりも多い場合、上記追尾処理部が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を低く設定する
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項4】
上記サイズ算出部は、過去所定の期間にサイズ算出部が算出した目標のプロット集合サイズの平均値を処理装置により算出し、
上記パラメータ制御部は、上記プロット集合サイズとプロット集合サイズの平均値との差の絶対値が第3の閾値より大きい場合、上記追尾処理部が用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を低く設定する
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに目標追尾装置。
【請求項5】
上記追尾処理部は、上記検出情報と、所定の方法により目標の位置を予測した予測位置とに基づき、目標を追尾し、
上記目標追尾装置は、さらに、
上記プロット集合サイズが第1の閾値よりも大きい場合、又は、上記プロット集合に含まれるプロット数が第2の閾値よりも多い場合、上記検出情報に基づかずに目標の追尾を行うメモリートラックを発生させるように上記追尾処理部へ制御情報を処理装置により送信するメモリートラック制御部
を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれかに目標追尾装置。
【請求項6】
上記目標追尾装置は、さらに、
上記追尾処理部が目標を追尾した結果を示す軌跡情報を記憶装置に記憶する軌跡情報記憶部と、
上記軌跡情報記憶部が記憶した軌跡情報から過去所定の期間の目標の軌跡情報からメモリートラックした回数と、過去所定の期間のプロット集合のサイズの変化情報との少なくともいずれかを取得して、メモリートラックした回数が所定の回数以上である場合、又は、プロット集合サイズが所定以上に大きくなっていることをプロット集合のサイズの変化情報が示す場合、上記追尾処理部が追尾に使用する検出情報を絞り込みするためのゲートを広げないように処理装置により制限するゲート制御部と
を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに目標追尾装置。
【請求項7】
上記目標追尾装置は、さらに、
検出装置により得られるべき検出情報と、実際に検出装置により得られると予想される検出情報との相違を予想相違情報として、所定のエリア毎に記憶装置に記憶する相違予想情報記憶部と、
上記相違予想情報記憶部が記憶した予想相違情報から上記検出情報取得部が取得した検出情報が示す位置を含むエリアの予想相違情報を取得して、上記エリアにおいて相違が存在するか否かを処理装置により判定する相違判定部と、
相違が存在すると上記相違判定部が判定した場合、上記観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度が低くなるように上記パラメータ制御部へ処理装置により指示をする相違制御処理部と
を備えることを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項8】
上記目標追尾装置は、さらに、
目標の形状を記憶装置に記憶する形状記憶部と、
上記形状記憶部が記憶した過去所定の期間の目標の形状と、上記形状算出部が算出した最新の目標の形状とを比較して相違点を求めることにより、上記最新の目標の形状を算出するのに使用した検出情報を処理装置により補完する形状相違点補完部とを備え、
上記追尾処理部は、上記検出情報補完部が補完した検出情報に基づき、再度目標の追尾を行う
ことを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の目標追尾装置。
【請求項9】
目標の位置を示す検出情報を、目標を検出する検出装置から取得して目標の追尾を行う目標追尾装置の目標追尾方法であり、
記憶装置が、検出装置から検出情報を取得して記憶する検出情報取得ステップと、
処理装置が、観測精度を示す観測精度パラメータが設定された観測モデルを用いて、上記検出情報取得ステップで取得した検出情報に基づき、目標の追尾を行う追尾処理ステップと、
処理装置が、上記検出情報取得ステップで取得した検出情報が示す目標位置であるプロットをクラスタリングして、目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を算出するクラスタリング算出ステップと、
処理装置が、上記クラスタリング算出ステップで算出したプロット集合の大きさであるプロット集合サイズを算出するサイズ算出ステップと、
処理装置が、上記サイズ算出ステップで算出したプロット集合サイズの大きさに基づき、上記追尾処理ステップで用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を制御するパラメータ制御ステップと
を備えることを特徴とする目標追尾方法。
【請求項10】
目標の位置を示す検出情報を、目標を検出する検出装置から取得して目標の追尾を行う目標追尾プログラムであり、
検出装置から検出情報を取得して記憶装置に記憶する検出情報取得処理と、
観測精度を示す観測精度パラメータが設定された観測モデルを用いて、上記検出情報取得処理で取得した検出情報に基づき、処理装置により目標の追尾を行う追尾処理処理と、
上記検出情報取得処理で取得した検出情報が示す目標位置であるプロットをクラスタリングして、目標と認められる位置の集合を示すプロット集合を処理装置により算出するクラスタリング算出処理と、
上記クラスタリング算出処理で算出したプロット集合の大きさであるプロット集合サイズを処理装置により算出するサイズ算出処理と、
上記サイズ算出処理で算出したプロット集合サイズの大きさに基づき、上記追尾処理処理で用いる観測モデルに設定された観測精度パラメータが示す観測精度を処理装置により制御するパラメータ制御処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする目標追尾プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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