説明

直動装置

【課題】テーブル体等の変形を可及的に抑制できる実用性に秀れた直動装置の提供。
【解決手段】固定子1が設けられたレール体2と、固定子1と対向配置される可動子3が設けられたテーブル体4とから成るリニアモータを備えた直動装置において、可動子3への給電ケーブルを保持するケーブル保持体6をレール体2の側方に設け、このケーブル保持体6は、円弧状に屈曲可能であって、一端部7がテーブル体4に連結され、他端部8がレール体2に連結されるU字形状であり、可動子3にはヒートシンク9を連結し、このヒートシンク9の放熱フィン部10はレール体2の側方にしてケーブル保持体6で囲繞される位置に設け、テーブル体4を一方向に移動させた際、放熱フィン部10がケーブル保持体6の屈曲部5の内側に近接するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータを備えた直動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されるような、固定子が固定されたレールと、このレールに対して移動するテーブルに可動子が固定された所謂可動コイル型のリニアモータを備えた直動装置がある。
【0003】
この直動装置は、可動子のコイルに通電することでテーブルをレールに対して移動させるものであるが、コイルは通電により発熱し、その熱が可動子が固定されるテーブルやテーブルに保持されるワーク等に伝達すると、熱膨張により変形し精度悪化等の問題を生じる場合がある。
【0004】
そこで、可動子に放熱用のヒートシンクを設ける空冷式のものも提案されているが、レールとテーブルとの間にヒートシンク(の放熱フィン)を設ける場合には放熱に十分な大きさを確保するのが困難であり、装置外部に設ける場合には装置の大型化や他部材との干渉の問題があり、実用性に乏しいのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−32996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、装置の大型化や他部材との干渉を招くことなく、可動子を十分に冷却可能な大きさのヒートシンクを設けることができ、テーブル等の変形を可及的に抑制できる極めて実用性に秀れた直動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
固定子1が設けられたレール体2と、前記固定子1と対向配置される可動子3が設けられたテーブル体4とから成るリニアモータを備えた直動装置であって、前記可動子3への給電ケーブルを保持するケーブル保持体6が前記レール体2の側方に設けられ、このケーブル保持体6は、円弧状に屈曲可能であって、一端部7が前記テーブル体4に連結され、他端部8が前記レール体2に連結されるU字形状であり、前記可動子3にはヒートシンク9が連結され、このヒートシンク9の放熱フィン部10は前記レール体2の側方にして前記ケーブル保持体6で囲繞される位置に設けられ、前記テーブル体4を一方向に移動させた際、前記放熱フィン部10が前記ケーブル保持体6の屈曲部5の内側に近接するように構成されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の直動装置において、前記放熱フィン部10の前記テーブル体4の側面からの水平方向突出量は、前記ケーブル保持体6の水平方向突出量以下となるように構成されていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0010】
また、請求項2記載の直動装置において、前記放熱フィン部10は、前記ケーブル保持体6の垂直投影面内に設けられていることを特徴とする直動装置に係るものである。
【0011】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーブル保持体6は多数の枠形状のケース11を互いに回転自在に連結して長鎖状とし、内部にケーブルを保持するケーブルベアであることを特徴とする直動装置に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、テーブル体等の変形を可及的に抑制できる極めて実用性に秀れた直動装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例の概略説明側面図である。
【図2】本実施例の一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
テーブル体4を一方向に移動させた際、放熱フィン部10がケーブル保持体6の屈曲部5の内側に近接するように設けられているから、通常デッドスペースとなっていたケーブル保持体6により囲繞される領域を有効に活用することができ、可動子3の冷却に十分な大きさ(表面積)の放熱フィン部10を、装置の大型化や外部との干渉を招くことなく設けることが可能となる。
【実施例】
【0016】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施例は、固定子1が設けられたレール体2と、前記固定子1と対向配置される可動子3が設けられたテーブル体4とから成るリニアモータを備えた直動装置であって、前記可動子3への給電ケーブルを保持するケーブル保持体6が前記レール体2の側方に設けられ、このケーブル保持体6は、円弧状に屈曲可能であって、一端部7が前記テーブル体4に連結され、他端部8が前記レール体2に連結されるU字形状であり、前記可動子3にはヒートシンク9が連結され、このヒートシンク9の放熱フィン部10は前記レール体2の側方にして前記ケーブル保持体6で囲繞される位置に設けられ、前記テーブル体4を一方向に移動させた際、前記放熱フィン部10が前記ケーブル保持体6の屈曲部5の内側に近接するように構成されているものである。
【0018】
各部を具体的に説明する。
【0019】
レール体2としては、図1,2に図示したように、直線状に延びる断面視U字状で、底部に永久磁石取付け用の一対の鋼性の立設部12(ヨーク)が設けられた鋼製のものが採用されている。
【0020】
この立設部12は薄板状でレール体2の全長と略同じ長さで直線状に延びるものであり、この立設部12の内側面に永久磁石27が、レール体2の長手方向に沿って交互に異極が現れるように隣接状態で多数並設されている。この永久磁石27と立設部12(ヨーク)とで固定子1が構成されている。
【0021】
テーブル体4は、ワーク等が取り付けられる鋼製のものであり、鋼製のブロック体9を介してレール体2に沿って直線ガイド移動するように設けられる。
【0022】
具体的には、ブロック体9は、基部の左右に袖部が垂設された断面視略逆凹状で、このブロック体9の左右の袖部外面と、レール体2の左右の壁部内面との間に夫々負荷路13が設けられている。また、ブロック体9の左右の袖部には無負荷路14となる直線孔が穿設され、この無負荷路14と負荷路13の両端部が半円弧状のリターン路(図示省略)で連結されて所謂無限循環路が形成され(本実施例では左右一対の無限循環路が上下2つ形成されている。)、この無限循環路には転動体(鋼球)が多数配設され、転動機構が構成されている。
【0023】
レール体2の一対の立設部12に夫々設けた永久磁石27の対向空間部には、図2に図示したような、テーブル体4の一端部下面側に取り付けられる可動子3のコイルが埋設される薄板状の通過部15が配設される。
【0024】
従って、一般的な可動コイル型リニアモータと同様に、永久磁石間に配設された可動子3のコイルに電流を流し磁界を生じさせることで、永久磁石27との相互作用により推力が生じ、上記転動機構を介してテーブル体4をレール体2に対して直線ガイド移動させることができる。
【0025】
また、可動子3は(アルミベースに取り付けられる)コイルとコイルを保持するコイルフレーム16とで構成されている。このコイルフレーム16(全体)は、型を用いてコイル(アルミベースを含む)を封止成形する一般的な樹脂モールド成形により一体成形される。この樹脂としてはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の一般的な合成樹脂(プラスチック樹脂)を採用できる。本実施例においてはエポキシ樹脂が採用されている。また、コイルフレーム16の上端部に設けられる左右の突出部17には、テーブル体4との固定用のねじ18が挿通する挿通孔部(直線孔)が設けられている。図中、符号19はねじ18と螺合するナット、20はダストカバーである。
【0026】
また、可動子3のコイルに通電するための給電ケーブルを保持するケーブル保持体6としては、中間部が円弧状に折り返し屈曲する、多数の枠形状のケース11を互いに回転自在に連結して長鎖状とし、その内部にケーブルを保持するケーブルベアが採用されている。具体的には、多数の断面視ロ字状のケース11をピン等で内部が連通するように連続的に枢着した構成としている。
【0027】
ケーブル保持体6の一端部7は、テーブル体4の上面に固定される取付部材21を介してテーブル体4に連結されている。具体的には、取付部材21の略垂直に立ち上がる立ち上がり板部25と連設しテーブル体4の側面から外方へ略水平に突出する水平板部26の下面に、ケーブル保持体6の一端側最端位置のケース11に設けた固定部22が固定されている。
【0028】
また、ケーブル保持体6の他端部8は、レール体2が取り付けられるベース24に連結されている(ベース24を介してレール体2に間接的に連結される。)。具体的には、ケーブル保持体6の他端側最端位置のケース11に設けた連結部23がベース24に取り付け固定されている。
【0029】
このケーブル保持体6に囲繞される領域(レール体2及びテーブル体4の側面にしてケーブル保持体6の一端部7より低く他端部8より高い位置であって上下面及び左面若しくは右面が囲まれる領域)に、アルミニウム製のヒートシンク9の放熱フィン部10が設けられる。ヒートシンク9はその一端が可動子3の突出部17の上面に連結され、他端部に可及的に表面積を広くした放熱フィン部10が設けられている。従って、コイルから生じた熱は、コイルフレーム16(突出部17)を経てヒートシンク9に伝わり、放熱フィン部10から放熱される。
【0030】
また、本実施例は、テーブル体4を一方向に移動させた際(図1中左方向に移動させた際)、放熱フィン部10がケーブル保持体6の屈曲部5の内側に配設されるように(放熱フィン部10の上下面及び左面若しくは右面位置がケーブル保持体6で数cm〜数mmの隙間を介して囲まれるように)構成されている。具体的には、前記取付部材21の立ち上がり板部25の高さを放熱フィン部10が収まるように設定し、ケーブル保持体6の長さを適宜設定している。
【0031】
また、テーブル体4を図1中左方向に移動させた際には、放熱フィン部10は、ケーブル保持体6の垂直投影面内に全部が収まるように設けるのが好ましい。また、テーブル体4を図1中右方向に移動させた際には、少なくとも放熱フィン部10の50%以上がケーブル保持体6の垂直投影面内に収まるように設けるのが好ましく、更に好ましくは、75%以上がケーブル保持体6の垂直投影面内に収まるようにする。
【0032】
また、他部材との干渉を防止するため、ヒートシンク9の放熱フィン部10のテーブル体4(レール体2)側面からの水平方向突出量は前記ケーブル保持体6の水平方向突出量以下となるように構成されている。なお、ケーブル保持体6は図1の紙面における左方向にのみ屈曲し、放熱フィン部10の上側のケース11と下側のケース11は垂直方向視において重なり合う。
【0033】
本実施例は上述のように構成したから、通常デッドスペースとなっていたケーブルベアで囲繞される領域を有効に活用することができ、可動子3の冷却に十分な大きさ(表面積)の放熱フィン部10を、装置の大型化や外部との干渉を招くことなく設けることが可能となる。
【0034】
よって、本実施例は、テーブル体等の変形を可及的に抑制できる極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0035】
1 固定子
2 レール体
3 可動子
4 テーブル体
5 屈曲部
6 ケーブル保持体
7 一端部
8 他端部
9 ヒートシンク
10 放熱フィン部
11 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子が設けられたレール体と、前記固定子と対向配置される可動子が設けられたテーブル体とから成るリニアモータを備えた直動装置であって、前記可動子への給電ケーブルを保持するケーブル保持体が前記レール体の側方に設けられ、このケーブル保持体は、円弧状に屈曲可能であって、一端部が前記テーブル体に連結され、他端部が前記レール体に連結されるU字形状であり、前記可動子にはヒートシンクが連結され、このヒートシンクの放熱フィン部は前記レール体の側方にして前記ケーブル保持体で囲繞される位置に設けられ、前記テーブル体を一方向に移動させた際、前記放熱フィン部が前記ケーブル保持体の屈曲部の内側に近接するように構成されていることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
請求項1記載の直動装置において、前記放熱フィン部の前記テーブル体の側面からの水平方向突出量は、前記ケーブル保持体の水平方向突出量以下となるように構成されていることを特徴とする直動装置。
【請求項3】
請求項2記載の直動装置において、前記放熱フィン部は、前記ケーブル保持体の垂直投影面内に設けられていることを特徴とする直動装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載の直動装置において、前記ケーブル保持体は多数の枠形状のケースを互いに回転自在に連結して長鎖状とし、内部にケーブルを保持するケーブルベアであることを特徴とする直動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−106497(P2013−106497A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250888(P2011−250888)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(591077818)日本ベアリング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】