説明

直接描画露光装置用半導体レーザモジュール

【課題】半導体レーザモジュールの光軸方向の調整機構と光軸に直交する方向の調整機構を分離し、調整済の半導体レーザモジュールをアレイ状に配列し調整を容易にする。
【解決手段】半導体レーザ11と、筒部の内径は半導体レーザ11の位置調整のためにLD外径より大きく形成されているLD固定ホルダ12と、調整スペース部の内径は半導体レーザの位置調整のためにLD台座外径より大きく形成され、LD調整ピンを差し込む複数の貫通孔が設けられているLD固定キャップ13と、レーザ光を平行光にする非球面レンズ21と、非球面レンズ21を中心線を合わせて挟むためのテーパー部および円筒スリーブ部を有する非球面レンズ固定スリーブ22と、LD固定ホルダ12の開口部に差し込まれるための円筒管部を有し、円筒管部の内側には非球面レンズ固定スリーブ22を保持するための嵌め合い部を有する非球面レンズホルダ23とからなる半導体レーザモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接描画露光装置の光源光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、液晶ディスプレイのTFT基板、カラーフィルタ基板あるいはプラズマディスプレイ等の基板にパターンを露光するため、従来は、パターンの原版となるマスクを製作し、このマスクをマスク露光装置により上記の基板に露光していた。
【0003】
しかし、基板の寸法は近年ますます大きくなると共に、これら基板の設計、製作に要求される時間はますます短くなっている。このため、マスクを必要としない、液晶やDMD(Digital Mirror Device)等の2次元空間変調器を用いて2次元パターンを発生させ、これを投影レンズで基板上に露光する直接描画露光装置が実用化された。
【0004】
このような直接描画露光装置の従来の光源光学系は、特許文献1に記載されているように、複数の半導体レーザおよび非球面レンズをアレイ状に配列後、非球面レンズを微調整機構によりxyz方向に微動調整することで光学性能を得ていた。微調整機構を図で示すと、図14のようになる。
【0005】
従来は光軸の調整をする際、半導体レーザ11がLDスタンド51に完全固定されているため、非球面レンズ21を光軸に直交するxy方向に移動して調整していた。調整のためにXY軸調整固定ねじ124を緩めると、非球面レンズ21が光軸に平行なz方向に移動し、半導体レーザ11と非球面レンズ21との距離が変わってしまうことから、z方向の調整が必要になった。そのためxy方向とz方向の調整を何度か繰り返し行なわなければならず、調整作業に時間がかかっていた。
【0006】
従来の光源光学系は、図15および図16で示すように、複数の半導体レーザ11をアレイ状に配列させた構造に非球面レンズ21および調整機構を合わせた構造であり、各半導体レーザ11のアレイ状の配列ピッチが数mmであるため、μオーダの非常に繊細な調整技術が必要であり、また光源光学系の組み立てから調整までの作業を作業者1名が連続で行うことになり、作業効率に問題があった。さらに、このような構成の光源光学系は複雑な構造のため冷却効率が悪く、半導体レーザ11の出力や寿命について十分に性能を発揮できないという問題もあった。
【0007】
発光素子の交換作業が容易な描画装置の光源光学系について、特許文献2に開示されている。
【0008】
特許文献2の光源光学系は、鏡筒内に各々配設された半導体レーザとコリメータレンズと位置合わせスリーブとを備え、半導体レーザは、鏡筒内において完全固定され、コリメータレンズは、鏡筒内に配設された筒体の先端部に固定され、この筒体の外周部と鏡筒の内面には互いに螺合するねじ部が設けられ、鏡筒に対して筒体を回転させることにより、コリメータレンズを光軸方向に移動させて、光軸方向の調整をしている。筒体の外周部に設けられたねじ部と螺合する固定筒を利用することにより、鏡筒に対して筒体を固定している。
【0009】
鏡筒の外周部には、複数個のねじが鏡筒の側壁を貫通する状態で立設され、このねじを回転させることにより、ねじが筒体を押圧してコリメータレンズを光軸と直交する方向に弾性変形させることにより、光軸と直交する方向の調整をしている。
【0010】
しかしながら、ねじ締めの押圧による筒体の弾性変形により、コリメータレンズも歪むこととなる。これは、コリメータレンズの光学特性が変化(光弾性効果)する原因となり、軸調整を難しくする。さらに、加圧状態が続くため、コリメータレンズの劣化(ヒビ等)も早くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−316349号公報(段落0057〜段落0061)
【0012】
【特許文献2】特開平10−339836号公報(段落0018〜段落0024、段落0031〜段落0033)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、調整が容易でありメンテナンス性の優れた直接描画露光装置の光源光学系を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明では、光源光学系を、光軸に直交するxy方向の調整機構と光軸に平行なz方向の調整機構を切り離したモジュール構造にし、モジュール単体で調整し、調整済みのモジュールをアレイ状に配列することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
これにより、光源光学系の組み立て・調整効率が向上し、半導体レーザの冷却効率も向上することから、安定した光源で工数を低減することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る半導体レーザモジュールの全体構成図である。
【図2】本発明に係る半導体レーザアレイユニットの正面図である。
【図3】本発明に係る半導体レーザアレイユニットの側面図である。
【図4】LD調整部の構成図である。
【図5】LD調整部の分解図である。
【図6】LD調整部の分解図(ねじ部を有する場合)である。
【図7】レンズ調整部の構成図である。
【図8】レンズ調整部の分解図である。
【図9】レンズ調整部の分解図(ねじ部を有する場合)である。
【図10】レンズホルダ固定リングの構成図である。
【図11】調整治具を示す図である。
【図12】調整方法を説明する図である。
【図13】LDベーススタンドを示す図である。
【図14】従来の光源光学系の構成図である。
【図15】従来の半導体レーザアレイユニットの正面図である。
【図16】従来の半導体レーザアレイユニットの側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
本発明の光源光学系は、図1で示す調整済みの半導体レーザモジュール1を図2および図3のようにアレイ状に配列した半導体レーザアレイユニットである。
【0019】
半導体レーザモジュール1の組み立て方法を説明する。半導体レーザモジュール1は、半導体レーザ11を光軸に直交する方向(xy方向)に移動させてxy方向の調整をするLD調整部10と、非球面レンズ21を光軸に平行な方向(z方向)に移動させてz方向の調整をするレンズ調整部20とからなる。
【0020】
まず、LD調整部10を組み立てる。LD調整部10は、半導体レーザ11、LD固定ホルダ12およびLD固定キャップ13とからなる。
【0021】
図4および図5で示すように、半導体レーザ11はLD固定ホルダ12とLD固定キャップ13とで挟持され、z方向に固定されるが、LD固定キャップ13の調整スペース部18の2つの貫通孔19に差し込まれた図11で示される調整ピン42でLD台座14を押して、xy方向へ動く程度に締め付けられる。
【0022】
LD固定ホルダ12の筒部15の内径は半導体レーザ11の位置調整のためにLD外形より大きく形成されている。また、LD固定キャップ13の調整スペース部18の内径は半導体レーザ11の位置調整のためにLD台座外形より大きく形成されている。本実施例では、半導体レーザ11は、中心線より1.5mm移動できるようになっている。
【0023】
本実施例では、図6で示すように、LD固定ホルダ12の筒部15の外周とLD固定キャップ13のキャップ部17の内側にはねじ溝が設けられており、ねじ込むことで半導体レーザ11が固定される。
【0024】
次に、レンズ調整部20を組み立てる。レンズ調整部20は、非球面レンズ21、非球面レンズ固定スリーブ22および非球面レンズ固定ホルダ23とからなる。
【0025】
図7および図8で示すように、非球面レンズ固定スリーブ22を圧入し、非球面レンズ21を非球面レンズ固定スリーブ22のテーパー部25で中心線を合わせて挟みz方向に固定する。非球面レンズ21は回転方向に対して対称であり、テーパー部25と接触する位置に丸みを帯びているため、またテーパー部25の角度を非球面レンズ21の形状に合わせることで、非球面レンズ21は非球面レンズ固定スリーブ22の中心に固定される。
【0026】
非球面レンズ21を保持した非球面レンズ固定スリーブ22を非球面レンズホルダ23の円筒管部26に差し込み、嵌め合い部27で非球面レンズ固定スリーブ22を中心線を合わせてz方向に固定する。
【0027】
そして、LD調整部10とレンズ調整部を20を組み合わせる。図1で示すように、非球面レンズ21および非球面レンズ固定スリーブ22を保持する非球面レンズホルダ23を、半導体レーザ11およびLD固定キャップ13を保持するLD固定ホルダ12に差し込み固定する。
【0028】
本実施例では、図6および図9で示すように、LD固定ホルダ12の開口部16の内側と非球面レンズホルダ23の円筒管部26の外周にはねじ溝が設けられており、ねじ込むことでLD調整部10とレンズ調整部20がz方向に固定され、半導体レーザモジュール1の組み立てが完了する。
【0029】
さらに本実施例では、図10で示すように、リング部31の内側にねじ溝を有するレンズホルダ固定リング30を設け、非球面レンズホルダ23の円筒管部26の外周のねじ溝と合わせてねじ込むことで、LD調整部10とレンズ調整部20を固定する。
【0030】
半導体レーザモジュール1の調整方法を図11および図12を用いて説明する。組み立てられた半導体レーザモジュール1を、図11で示すように調整治具40に固定する。調整治具40は、XY軸ステージ41、複数の調整ピン42、x方向およびy方向のマイクロメータヘッド43で構成されている。
【0031】
まず、z方向の調整をし、次にxy方向の調整を行う。調整治具のターゲットでレーザ光が平行光束であり、光軸の中心が半導体レーザモジュール1の中心にあることを確認できれば、調整は完了である。
【0032】
z方向の調整方法について説明する。調整治具40に固定された状態で、非球面レンズ21を保持している非球面レンズ固定ホルダ23を、LD固定ホルダ12の奥まで入っている状態から半時計回りに手で回してスポット形状を観察する。本実施例では、発散した状態からスポット形状が米粒大に変化して収束し、また米粒大になって発散していく状態が確認できるので、初めに米粒大になる位置が平行光束であるため、この位置で固定する。このようにz方向の調整を行い、レンズホルダ固定リング30で固定する。
【0033】
xy方向の調整方法について説明する。LD固定キャップ13の調整スペース部18に明けられた2つの貫通孔19のそれぞれに調整ピン42を差し込み、2つの調整ピン42がLD台座14を押した状態で、XY軸ステージ41にあるマイクロメータヘッド43のつまみを回しながら2つの調整ピン42をxy方向に移動させることで半導体レーザ11をxy方向に移動し、微調整する。調整が済んだら、LD固定キャップ13を締めて固定する。
【0034】
調整後、調整ピン42を取り外し、半導体レーザモジュール1を調整治具40から取り外して、半導体レーザモジュール1の調整が完了する。
【0035】
組み立ておよび調整が済んだ半導体レーザモジュール1から出射されるレーザ光は楕円ビームであるが、その後の光学系で円形スポットとなるように調整される。
【0036】
組み立ておよび調整が済んだ複数の半導体レーザモジュール1を、調整治具のターゲットで確認しながら楕円ビームの長いほうが縦になるような向きにそろえて、図13で示す規則的に穴が開いた構造のLDベーススタンド50に圧入して挿入し、半導体レーザアレイユニットが完成する。光軸の微調整には、特許文献1で開示されている楔状のウエッジガラス等の光軸補正システムを使用する。
【0037】
このように、LD調整部で半導体レーザ11をxy方向に移動させることで光軸に垂直なxy方向の調整を行い、レンズ調整部で非球面レンズ21をz方向に移動させることで光軸に平行なz方向の調整を行い、xy方向とz方向の調整機構を分離したことで、調整を繰り返し行なわなくてよくなった。
【0038】
また、従来技術では、半導体レーザおよび調整機構をアレイ状に配列した後に調整を行なうのに対して、本発明では、調整機構をモジュール化させ、半導体レーザモジュール1をxyz方向に調整した後に、LDベーススタンド50に配列することが可能になり、調整スペースを大きく確保できることから、調整が容易になった。
【0039】
さらに、工数の多くを占める調整作業を従来では一人でしか行なえなかったのが、複数人で行なえるようになり、短納期にも対応することが可能になった。
【0040】
さらに、メンテナンスのために半導体レーザモジュール1を取り外したときの調整も容易に行えるようになった。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体レーザモジュール
2 半導体レーザアレイユニット
10 LD調整部
11 半導体レーザ(LD)
12 LD固定ホルダ
13 LD固定キャップ
20 レンズ調整部
21 非球面レンズ(コリメータレンズ)
22 非球面レンズ固定スリーブ
23 非球面レンズホルダ
30 レンズホルダ固定リング
40 調整治具
50 LDベーススタンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、該半導体レーザを差し込むための筒部および開口部を有し、該筒部の内径は前記半導体レーザの位置調整のためにLD外径より大きく形成されているLD固定ホルダと、前記LD固定ホルダの筒部を差し込むためのキャップ部および調整スペース部を有し、該調整スペース部の内径は前記半導体レーザの位置調整のためにLD台座外径より大きく形成され、該LD台座を押して移動させるためのLD調整ピンを差し込む複数の貫通孔が設けられているLD固定キャップと、
前記半導体レーザから出射されたレーザ光を平行光にする非球面レンズと、前記非球面レンズを中心線を合わせて挟むためのテーパー部および円筒スリーブ部を有する非球面レンズ固定スリーブと、前記LD固定ホルダの開口部に差し込まれるための円筒管部を有し、該円筒管部の内側には前記非球面レンズ固定スリーブを保持するための嵌め合い部を有する非球面レンズホルダと
からなることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記非球面レンズホルダを差し込むためのリング部を有するレンズホルダ固定リングを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の複数の前記半導体レーザモジュール
からなることを特徴とする半導体レーザアレイユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−77768(P2013−77768A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217932(P2011−217932)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】