相互侵入網目構造ゲルと所定の被着材料とから構成される複合材料、その製造方法及び相互侵入網目構造ゲルを所定の被着材料に接着する方法
【課題】人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配された場合にも耐えられる程の高強度で、IPNゲルと被着材料と接着可能な手段の提供。
【解決手段】第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位1(1)と、前記第一部位1(1)とは別体である、前記第一部位1(1)上に搭載された第二部位1(2)とを有しており、前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位1(1)及び前記第二部位1(2)内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料。
【解決手段】第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位1(1)と、前記第一部位1(1)とは別体である、前記第一部位1(1)上に搭載された第二部位1(2)とを有しており、前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位1(1)及び前記第二部位1(2)内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械強度及び低摩擦特性に優れた相互侵入網目構造ゲル(IPNゲル)を極めて高い接着強度で所定の被着材料(例えば硬質材料)に接着させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IPNゲル、例えば、ダブルネットワークゲル(DNゲル)は、ゲル内に第一網目構造と第二網目構造とが存在するゲルである。そして、当該ゲルは、第一網目構造に係る第一ゲル(シングルゲル)をまず構築した上で、第二網目構造に係るモノマー成分を当該第一網目構造の間隙内に浸透させて重合及び架橋することにより得られる(特許文献1)。
【0003】
当該IPNゲルは、強い圧縮・引張破断応力、低摩擦係数及び耐薬品性を示す一方で、ゲルとしての柔軟性、物質透過性、耐衝撃性をも備えているので、応用分野は、吸水材料、保水材料、工業材料、生体代替材料と多岐にわたるとして期待されている。
【0004】
例えば、生体関節部位は、骨と骨とがぶつからないように表面にはクッションのような役目を担う約75%の水分を含有する「軟骨」で覆われている。そして、この軟骨の機能が損なわれた場合、人工関節の摺動部の一方の面には金属かセラミックが人工骨として、その片方の面には超高分子ポリエチレンが人工軟骨として用いられる。ここで、水分を多く保持するIPNは、高強度、高衝撃吸収性及び低摩擦係数といった特性のため、超高分子ポリエチレンに代わる新たな人工軟骨材として期待される。
【特許文献1】WO2003/093337
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、IPNゲルを所望の素材に接着するに際して、周知の各種手法を検討した。まず、接着剤を使用してIPNゲルを当該素材に接着させる手法が考えられる。しかしながら、IPNゲルは内部に液体(例えば水)を保持していることに加え、その表面がつるつるしているので、もともと接着剤で接着し難い素材である。更には、接着剤で仮に接着できたとしても、例えば前記のように人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配した場合には、接着剤の接着力程度では長期に亘っての接着持続性を維持できない恐れがある。そこで、次に考えられる手法が、粗面を有する素材(例えば多孔質材料)を選択すると共に、当該粗面上に原料モノマー液を適用し、適用後に重合及び架橋する等により直接IPNゲルを形成させる手法である。この手法によれば、IPNゲルが粗面の微小空間(例えば細孔)内に直接形成されるため、アンカー効果による強い接着力が期待される。しかしながら、本発明者らは、当該手法でIPNゲルの構築を試みた場合、以下の問題が発生する結果、接着できない場合があることを確認した。具体的には、素材として硬質材料を用いた場合、IPNの前段階であるシングルゲルを粗面上に構築した後に、IPNゲル構築のために当該シングルゲル内にモノマー液を膨潤させると、粗面の微小空間内に存在する当該シングルゲルは膨張が制限される一方、微小空間外に存在する当該シングルゲルは自由に膨張できる。そのため、当該シングルゲルで内部応力と歪が生じる結果、ゲルにクラックが入る等、ゲルが部分的に破断してしまう。したがって、当該手法でIPNゲルを接着しようとすると、硬質材料の接合ではなく、内部でゲルが形成されてもある程度自由に膨張できる、例えばスポンジといった軟質材料との接合に限定されてしまう。また、軟質材料に関しても、クラックは発生しないまでも、軟質材料内と外ではゲルの歪が異なるために残留応力が発生し、中長期に亘る形態や強度を維持できない恐れがある。
【0006】
したがって、本発明は、人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配された場合にも耐えられる程の高強度で、IPNゲルと所定の被着材料(例えば硬質材料)と接着可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、
前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位と、前記第一部位とは別体である、前記第一部位上に搭載された第二部位とを有しており、
前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料である。
【0008】
本発明(2)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(1)の複合材料である。
【0009】
本発明(3)は、前記被着材料が多孔質材料であり、前記相互侵入網目構造ゲルが前記多孔質材料の表面上及び孔内に構築されている、前記発明(1)又は(2)の複合材料である。
【0010】
本発明(4)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(2)又は(3)の複合材料である。
【0011】
本発明(5)は、前記第一網目構造は電荷を有する網目構造であり、前記第二網目構造は電気的に中性であるか又は前記第一網目構造よりも少ない電荷を有する網目構造である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの複合材料である。
【0012】
本発明(6)は、第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルと被着材料とから構成される複合材料の製造方法である。
【0013】
本発明(7)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(6)の方法である。
【0014】
本発明(8)は、前記被着材料が多孔質材料である、前記発明(6)又は(7)の方法である。
【0015】
本発明(9)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(7)又は(8)の方法である。
【0016】
本発明(10)は、前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電気的に中性であるモノマーを主成分とする、前記発明(6)〜(9)のいずれか一つの方法である。
【0017】
本発明(11)は、第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルを被着材料に接着する方法である。
【0018】
本発明(12)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(11)の方法である。
【0019】
本発明(13)は、前記被着材料が多孔質材料である、前記発明(11)又は(12)の方法である。
【0020】
本発明(14)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(12)又は(13)の方法である。
【0021】
本発明(15)は、前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電荷を有しないモノマーを主成分とする、前記発明(11)〜(14)のいずれか一つの方法である。
【0022】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書中の用語の定義を記載する。まず、「第一網目構造」とは、第二網目構造が形成される前に形成されている網目構造を指す。ここで、第一網目構造の「第一部位」及び「第二部位」は、同一組成(原料やその濃度が同一)からなる網目構造でも異なる組成(原料モノマーや架橋剤等の原料の種類及び/又は当該原料の濃度が相違)からなる網目構造でもよい。「第二網目構造」とは、第一網目構造が形成された後に形成される網目構造を指し、第一網目構造内の第一部位内と第二部位内とで同一組成(原料やその濃度が同一)からなる網目構造でも異なる組成(原料モノマーや架橋剤等の原料の種類及び/又は当該原料の濃度が相違)からなる網目構造でもよい。「粗面」とは、例えば、表面粗さ(Ra)が0.5μm以上である場合や、硬質材料が多孔質(オープンポア、クローズドポア)である場合を挙げることができる。「被着材料」とは、複合材料を構成する、相互侵入網目構造ゲルが接合する側の材料を指し、硬質材料及び軟質材料のいずれをも包含し、例えば、金属、セラミックス、プラスチックを挙げることができる。「硬質材料」とは、弾性率10MPa以上の固体材料を指す。「架橋度」とは、モノマーの仕込みモル濃度に対する架橋剤のモル濃度の比をパーセントで表した値をいう。尚、実際には、重合に関与しなかったモノマーや架橋に関与しなかった架橋剤も僅かにある場合があるが、この際も、本明細書におけるゲルの架橋度は、前記の通りとする。「相互侵入網目構造ゲル」は、いわゆるダブルネットワーク型のみでなく、三重や四重以上の網目構造を有するゲルをも含む概念である。
【発明の効果】
【0023】
本発明(1)に係る複合材料においては、IPNゲルと被着材料とが極めて高強度で接着している。したがって、本発明(1)によれば、人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配された場合にも当該接着が剥離すること無く、長期に亘ってIPNの特性(強い圧縮・引張破断応力、低摩擦係数、耐薬品性、柔軟性、物質透過性、耐衝撃性等)を付与し続けることが可能になるという効果を奏する。尚、当該複合材料を構成するIPNゲルにおける、第一網目構造における第一部位と第二部位は、その界面では第一網目は分断しており、第二網目で両者は接合している。したがって、技術常識によれば、当該界面で機械強度が弱いので当該界面で破断することが予想される。しかしながら、実際には、このような分断していないIPNと比較しても破断強度は特段低下しないことが実験で確認されている。この点は技術常識からすると予想外な効果である。
【0024】
本発明(2)によれば、被着材料が硬質材料という、相互侵入網目構造ゲルを接合させた際に当該ゲルが破断し易い材料であるにもかかわらず、第一網目構造が第一部位と第二部位との界面で分断しているという構成を採るため、当該ゲルが破断していない硬質材料/相互侵入網目構造ゲルの複合材料を提供することができるという効果を奏する。
【0025】
本発明(3)によれば、被着材料が多孔質材料であるため、IPNゲルが材料内のより奥まで侵入すると共に、侵入したIPNゲルがより抜け難くなるので、より優れたアンカー効果を発揮する結果、更に強い接着力を付与することが可能になるという効果を奏する。
【0026】
本発明(4)によれば、硬質材料がセラミックス又は金属という、各種分野で利用されており加工も比較的容易な汎用材料であるので、当該複合材料の応用範囲が広がるという効果を奏する。
【0027】
本発明(5)によれば、例えばハイドロゲルの形態においては、第一網目がピンと張った固くて脆い網目(brittle)であり、第二網目がゴムのような伸縮容易な網目(soft)であるので、IPNゲル自体を極めて高強度化することが可能であるという効果を奏する。更に、brittleな第一網目は膨潤(水等の水性液体媒体)又は収縮(油性液体媒体)する一方、softな第二網目はbrittleな第一網目と比較すると液体媒体に起因した伸縮の程度は低い。ここで、当該IPNゲルを所定環境下に配したとき、第一網目の第一部位の膨張収縮は被着材料の硬さによって制限を受ける一方、第二部位の膨張収縮は相対的に制限を受けない。このように、両者の膨張収縮の程度が異なる事態が想定される。そのような場合であっても、第一網目が分断しているので、第一部位とは独立した形で第二部位の膨張収縮が可能であると共に、第二網目を構成するポリマーはsoftなものであるので、当該膨張収縮に対応して当該ポリマーが伸び縮みする結果、当該膨張収縮により当該界面において当該第二網目が切断される事態も回避できるという効果を奏する。
【0028】
本発明(6)〜(10)に係る複合材料の製造方法によれば、第一網目構造が第二モノマー液で膨潤したとしても、ゲルに亀裂を発生させること無く(被着体が硬質材料の場合)、また、高い残留応力を発生させること無く(被着体が軟質材料の場合)、IPNゲルと被着材料とが高強度に接着した複合材料を製造可能であるという効果を奏する。
【0029】
本発明(11)〜(15)に係る複合材料の製造方法によれば、第一網目構造が第二モノマー液で膨潤したとしても、ゲルに亀裂を発生させること無く(被着体が硬質材料の場合)、また、高い残留応力を発生させること無く(被着体が軟質材料の場合)、IPNゲルと被着材料とを高強度に接着することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
《複合材料の全体構成》
本最良形態に係る複合材料は、所定の被着材料にIPNゲルが直接接着した複合材料である。ここで、当該複合材料のIPNゲル部分は、当該被着材料の粗面上に構築された第一網目構造の第一部位と、前記第一部位と別体である、前記第一部位上に搭載された第一網目構造の第二部位と、前記第一部位及び第二部位の両間隙に亘り連続的に構築された第二網目構造と、を有することを一の特徴とする。即ち、このような構造を有することにより、IPNゲルが被着材料に直接接合している。以下、被着材料としてより好適な硬質材料を例に採り、IPNゲル及び硬質材料の組成及び構造をまず説明し、続いて複合材料の性質を詳述することとする。
【0031】
《複合材料の構成要素1(IPNゲル)》
図1は、本最良形態に係る複合材料の概念図である。尚、当該図はあくまで概念図であり、ポリマーの太さや架橋密度等は実際を反映させたものでは無いことを理解すべきである。そこで、図1を参照しながらIPNゲルを詳述すると、前述のように、第一網目構造(図中の細線)は、第一部位1(1)と第二部位1(2)にもともとは分断されている。ここで、第一部位1(1)と第二部位1(2)は、全く同一の組成(原料や濃度)で形成された網目構造でもよく、異なる組成で形成された網目構造であってもよい。また、第二網目構造(図中の太線)は、第一網目構造内の第一部位1(1)と第二部位1(2)内に亘って連続的に形成されている限り特に限定されず、第一部位1(1)内での組成と第二部位1(2)内での組成が同一でも異なっていてもよい。このことは、IPNゲルを製造する際に使用する原料液に関し、第一網目構造の第一部位1(1)と第二部位1(2)の原料液が同一組成であっても異なる組成であってもよく、更には、第二網目構造の、第一部位1(1)内に導入する原料液と第二部位1(2)内に導入する原料液が同一組成でも異なる組成であってもよいことを意味する。また、当該IPNゲルは、内部にどのような液体媒体(一般に溶媒ともいう)を含有してもよく(例えば水や有機溶媒)、ハイドロゲルでもオルガノゲルでもよい。
【0032】
ここで、相互侵入網目構造を構成する網目構造は、好適には、電荷を有する不飽和モノマー及び/又は電気的に中性である不飽和モノマーの架橋体、天然高分子の架橋体である。以下ではまず、本最良形態に係る複合材料を製造するための好適な原料である、電荷を有する不飽和モノマー、電気的に中性である不飽和モノマー及び天然高分子につき説明する。
【0033】
電荷を有する不飽和モノマーとしては、好適には、酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基)や塩基性基(例えば、アミノ基)を有する不飽和モノマーを、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩を挙げることができる。
【0034】
電気的に中性である不飽和モノマーとしては、例えば、アクリルアミド(AAm)、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチル−アクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニルを挙げることができる。
【0035】
天然高分子としては、バクテリアセルロースや電荷を有する天然高分子を挙げることができる。ここで、「バクテリアセルロース」(以下、BCと省略する場合がある)とは、微生物により産生された、セルロース、セルロースを主鎖としたヘテロ多糖、β−1,3−、β−1,2等のグルカンのいずれか又はこれらの混合物である。なお、ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分は、マンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の6炭糖、5炭糖及び有機酸等である。ここで、バクテリアセルロースを産生する微生物は、特に限定されないが、グルコンアセトバクター・キシリナム・サブスピーシス・キシリナムATCC−53582{Gluconacetobacter xylinus subsp. xylinus (Yamada)}、アセトバクター・アセチ・サブスピーシス・キシリナムATCC−10821(Acetobactoracetisubsp xylinum)、同パストウリアン(A.pasteurium)、同ランセンス(A.rancens)、サルシナ・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウム・キシロイデス(Bacterium xyloides)、シュードモナス属細菌、アグロバクテリウム属細菌等で、バクテリアセルロースを産生するものを利用することができる。また、「電荷を有する天然高分子」とは、電荷を有するタンパク質や多糖類等を指す。具体的には、タンパク質としては、ゼラチンやコラーゲン等を、また、多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、カラギーナン、キトサンやヒアルロン酸等を挙げることができる。また、糖とタンパク質の共有結合化合物である糖タンパク質をも含み、例えば、このような糖タンパク質として、プロテオグリカン、アグリカンを挙げることができる。
【0036】
第一網目構造や第二網目構造を形成させる際に使用する架橋剤は、特に限定されず、架橋重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを用いた場合には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を、有機モノマーとしてStを用いた場合には、エチレングリコールジメタクリレートを夫々使用することができる。
【0037】
ここで、第一モノマー成分と第二モノマー成分との組み合わせとしては、前者は、単独でゲルを構築した場合に、硬くて脆いゲルを構成するような成分を選択することが好ましく、後者は、単独でゲルを構築した場合に、軟らかいゲルを構成するような成分を選択することが好ましい。具体的には、前者は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)等の強電解質である電荷を有する不飽和モノマーを使用することが好ましく、後者は、アクリルアミド等の電気的に中性である不飽和モノマーや、第一モノマー成分よりも少ない電荷量を有する(解離定数の低い)モノマーを使用することが好ましい。この好適な組み合わせに係る態様の場合、第一モノマー成分中の電荷を有する不飽和モノマーの量は、第一モノマー成分に対し10モル%以上で好適であり、より好適には30%以上、更に好適には100モル%である。また、第二モノマー成分中の電荷を有しない不飽和モノマーの量は、第二モノマー成分に対し10モル%以上で好適であり、より好適には50%以上、更に好適には100モル%である。
【0038】
更に、IPNゲル中の第一モノマー成分量:第二モノマー成分量が、モル比で1:2〜1:100(好適には1:3〜1:50、より好適には1:3〜1:30)であることが好適である。このような構成を採ることにより、IPNゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。このような高い比での、電気的に中性である不飽和モノマーの導入は、第一モノマー成分を重合し架橋することにより、電荷を有する基(例えば、スルホン酸基、カルボキシル基)が一定量以上存在している網目構造(第一網目構造)を形成し、その後、電気的に中性である不飽和モノマーを導入することによりはじめて可能となる。尚、ゲル中におけるモノマー量は、各々の網目構造が1種類のモノマーより構成されている場合には、元素分析により決定する。また、2種以上の場合は、元素分析では複雑になり決定できない場合がある。このような場合は、例えば、製造の際に使用したモノマー量から、重合しなかったモノマー量を引くことにより求める。
【0039】
更に、第二のモノマー成分を重合し架橋する場合には、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定することが好適である。このような構成を採ることにより、ゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。具体的には、第一の網目構造の架橋度が0.1〜50mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.001〜20mol%であることが好適であり、第一の網目構造の架橋度が1〜20mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.01〜5mol%であることがより好適であり、第一の網目構造の架橋度が2〜10mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.05〜1mol%であることが更に好適である。尚、ゲルの含水量を小さくしたり(即ち、膨潤度を小さくする)、硬くする(即ち、弾性率を大きくする)には、両方の架橋度を上げるようにすればよい。
【0040】
《複合材料の構成要素2(硬質材料)》
続いて、硬質材料について詳述する。硬質材料は、少なくとも一部に粗面を有する限り特に限定されず、全面に粗面が形成された硬質材料及びIPNゲルとの接着部分だけ粗面が形成された硬質材料(例えば、接着部分だけ粗面処理された材料)のいずれでもよく、更には、単一の材質からなるものに限定されず、複数の材料からなる硬質材料(例えば、IPNゲルとの接着部分が硬質材料層であり、当該接着部分と反対側の当該硬質材料層に軟質材料層が更に結合している複合材料)であってもよい。
【0041】
ここで、粗面は、IPNゲルが接合した際にアンカー効果を奏する程度の粗面であれば特に限定されないが、表面粗さ(Ra)が0.5〜100μmであることが好適であり、1〜20μmであることがより好適である。
【0042】
特に好適な硬質材料は、多孔質材料である。ここで、多孔質材料は、特に限定されず、例えば、多孔質セラミック、ガラスフィルタ、多孔陶磁材、多孔質焼結樹脂、多孔状粒子、多孔質ガラス、軽石、発泡ガラス、多孔質モルタル、多孔質コンクリート、多孔質人工石、人工骨、有機多孔質、イソシアネート多孔質、多孔金属、多孔樹脂等が挙げられる。多孔質材料の孔径のサイズは、使用する材料に依存するが、0.05〜3000μmが好適であり、0.5〜500μmがより好適である。ここで、一般には孔径が小さくなればなる程、接着強度が高くなる傾向にある。その理由は以下の通りであると考えられる。孔内に第一ゲルの第一部位が構築され、当該第一ゲルの第一部位が第二モノマー溶液で膨潤した場合、膨潤した第一ゲルの第一部位が外部に膨らむ(突き出る)。そして、当該膨らみが第一部位の表面全体に点状に形成されると理解される。ここで、孔径が小さい場合には当該膨らみが小さくなる一方、孔径が大きい場合には当該膨らみが大きくなる、と考えられる。そして、このような第一ゲルの第一部位上に第二部位を搭載した場合、孔径が小さいときには、当該膨らみが小さいために第一部位と第二部位とがしっかり接触するのに対し、孔径が大き過ぎると、第一部位と第二部位とが点接触になると理解される。第一部位と第二部位とが十分に接触していないこの状態(点接触状態)で第二網目構造を構築すると、両部位の接触が不十分であるが故に、接着強度が低下する。
【0043】
また、多孔質材料の気孔率は、5%以上で好適であり、30%以上でより好適である。気孔率が大きくなると、多孔質材料内の比表面積が大きくなるので、より接着強度を高めることが可能となる。特に、同一気孔率であっても、孔径が小さくなる程、比表面積が大きくなるので、更に高い接着強度が必要な場合には、気孔率が高く孔径が小さい多孔質材料を選択することが好適である。
【0044】
以上、IPNゲル及び硬質材料(特に多孔質材料)の成分等について詳述したが、多孔質材料の気孔サイズと当該孔に導入する高分子成分や架橋度を変化させることにより、多孔質材料とIPNゲルの接着強度を制御できるのではないかと考えられる(これについては以下で詳述する)。
【0045】
《複合材料の性質》
(強力な接着力)
本最良形態に係る複合材料の特性は、IPNゲルと硬質材料との非常に強い接着力である。第一網目構造は、第一部位及び第二部位に分断しており、それぞれのネットワークが直接結合はしていない。したがって、硬質材料から当該IPNゲルを引き剥がそうとした場合、第一網目構造の第一部位と第二部位の界面で切断されることが通常は予想される。しかしながら、当該予想に反し、硬質材料から当該IPNゲルを引き剥がそうとした場合、第一網目構造の第一部位と第二部位の界面で切断されるよりも、当該IPN自体が先に破断してしまうことが確認された。それ程、強力な接着力でIPNゲルと硬質材料とは接合している。具体的には、本最良形態に係る複合材料の接着面の破壊エネルギーは、20J/m2以上が好適であり、100J/m2以上がより好適であり、900J/m2以上が更に好適である。
【0046】
ここで、硬質材料とIPNゲル間の接着力を決定する要因は、前述した「硬質材料の表面粗さ」、硬質材料が多孔質材料である場合には「孔径」及び「気孔率」の他、「硬質材料とIPNゲルとの相互作用に基づく接着」がある。当該相互作用(分子間相互作用)としては、例えば、静電相互作用、水素結合、双極子−双極子相互作用、疎水性相互作用等を挙げることができる。例えば、硬質材料として多孔質のガラスフィルタを使用した場合を説明すると、ガラス(SiO2系)は、pHを3以下に下げると、表面上にプラスイオンを持つ。このような硬質材料に対して、第一網目として酸性のPAMPSネットワークを構築し、第二網目として電気的に中性であるPAAmネットワークを構築する。すると、ガラス表面に形成されたプラスイオンとPAMPSのマイナスイオン(スルホン酸基)とが引き合う結果、ガラスとPAMPS/PAAmゲルとがより強固に接着することになる(電荷吸引作用)。他方、電荷を持つPAMPS/PAAmゲルではなく、酸性でないPNaAMPS/PAAm(DN)ゲルを用いてガラスフィルタと接着した場合には、接着強度は相対的に低下する。
【0047】
《複合材料の製造方法(IPNゲルを硬質材料に接着する方法)》
本発明に係る硬質材料とIPNゲルとの複合材料の製造方法(IPNゲルを硬質材料に接着する方法)は、
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を硬質材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記硬質材料の前記粗面上に構築する第一工程、
第一モノマー成分(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を必須的に含む。以下、各工程について詳述する。
【0048】
まず、当該方法に係る第一工程は、硬質材料表面に第一網目構造の第一部位を構築する工程である。当該第一工程で使用する第一モノマー溶液(1)は、典型的には、第一モノマー(1)及び第一架橋剤(1){場合により第一重合開始剤(1)}を含有する。ここでは、硬質材料の粗面表面に第一モノマー溶液(1)を十分に付着させるべく、硬質材料側の工夫としては、当該モノマー溶液の適用に先立ち、第一モノマー溶液(1)との濡れ性を向上させるための表面処理を硬質材料の粗面に施すこと、また、プロセス的な工夫としては、例えば、圧力をかけながら第一モノマー溶液(1)を適用すること、硬質材料が多孔質材料である場合には、第一モノマー溶液(1)の適用面とは反対側から減圧しながら多孔質材料内に第一モノマー溶液(1)を吸引すること、を挙げることができる。
【0049】
尚、重合反応や架橋反応等、本発明の特徴でない工程は、周知手法に従い実施可能である。例えば、重合反応は、熱重合や光重合等、どのような手法でもよい。そして、使用する重合開始剤としては、重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを熱重合する場合には、過硫酸カリウム(KPS)等の水溶性熱開始剤、過硫酸カリウム−チオ硫酸ナトリウム等のレドックス開始剤を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤として2−オキソグルタル酸を用いることができる。また、有機モノマーとしてStを熱重合する場合には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等の有機溶媒に溶解性の熱開始剤を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤としてベンゾフェノンを使用することができる。
【0050】
次に、第二工程は、第一網目構造の第二部位を得る工程であるが、第二部位を構成する網目構造は、周知の方法により別途合成することができる。ここで、使用される第一モノマー溶液(2)は、前記のように第一モノマー溶液(1)と同一組成でも異なっていてもよく、典型的には、第一モノマー(2)及び第一架橋剤(2){場合により第一重合開始剤(2)}を含有する。
【0051】
次に、第三工程では、第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を調製した後、前記第一網目構造の前記第一部位内に前記第二モノマー溶液(1)を導入する。ここで、使用される第二モノマー溶液(1)は、典型的には、第二モノマー(1)及び第二架橋剤(1){場合により第二重合開始剤(1)}を含有する。尚、導入手法は特に限定されず、例えば、第一部位に係るシングルネットワークゲルが形成された硬質材料を第二モノマー溶液(1)に浸漬する手法が挙げられる。ここで、導入するモノマー分子の半径は、100nm以下が好適であり、10nm以下が更に好適である。
【0052】
次に、第四工程では、第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を調製した後、前記第一網目構造の前記第二部位内に前記第二モノマー溶液(2)を導入する。ここで、使用される第二モノマー溶液(2)は、前記のように第二モノマー溶液(1)と同一組成でも異なっていてもよく、典型的には、第二モノマー(1)及び第二架橋剤(1){場合により第二重合開始剤(1)}を含有する。尚、導入手法は特に限定されず、例えば、第二部位に係るシングルネットワークゲルを第二モノマー溶液(1)に浸漬する手法が挙げられる。ここで、導入するモノマー分子の半径は、100nm以下が好適であり、10nm以下が更に好適である。
【0053】
尚、第三工程で使用する第二モノマー溶液(1)と第四工程で使用する第二モノマー溶液(2)が同一である場合には、第三工程と第四工程を同時に実施してもよい。この場合、第一部位に係るシングルネットワークゲルが形成された硬質材料と第二部位に係るシングルネットワークゲルの両方を第二モノマー溶液に浸漬する手法が挙げられる。
【0054】
次に、第五工程では、第一網目構造の第一部位と第二部位とを接触(くっつけた)状態で、重合及び架橋反応を実施する。この際、第一部位と第二部位との間に隙間が存在すると、製造後の複合材料における第一部位と第二部位の界面での強度が弱くなるので、しっかりとくっつけた状態を担保することが重要である。例えば、第一部位と第二部位を挟み込むように圧力をかける。その時の圧力は、第一部位、第二部位の柔らかいほうの弾性率と同程度の圧力が好適である。
【0055】
尚、本工程において使用する溶媒に関しては、前記溶液に浸漬される硬質材料表面及び表面上に構築された第一網目構造への悪影響を防止し、かつ、二重網目構造を第一網目構造の網目に良好に絡みつける観点から、この溶液の溶媒が、第一網目構造を有するゲル中の溶媒と同じであることが好適である。尚、最終的に複合材料のIPNゲル中に含まれる液体媒体(溶媒)に関しては、製造段階から当該液体媒体を使っても、或いは、製造後に液体媒体交換(溶媒交換)を行ってもよい。
【0056】
《用途》
本発明に係る複合材料は、水等の溶媒で膨潤させて、ハイドロゲルとして使用することができる。硬質材料とIPNゲルの複合材料は、特異な性質を発現するものと期待でき、その応用分野も広汎である。中でも特に、人工関節軟骨等の生体材料に使用可能である。この場合、硬質材料としてセラミック又は金属といった硬質無機材料を使用し、当該硬質無機材料を骨に固定することにより、当該硬質無機材料を介して骨にIPNゲルを固着することが可能となる。
【実施例】
【0057】
《被着材料》
本実施例において使用した被着材料は、硬質材料に関しては、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)、多孔陶磁材(建築分野用)、軟質材料に関しては、スポンジ(白)(メラミンフォームスポンジスポンジ)、スポンジ(黄)(台所用三層型スポンジ)である(図2)。各物質の表面のSEM写真を図3〜図5に示した。SEM写真により、ガラスフィルタP−5の気孔サイズは4〜5.5μm、P−16は10〜16μm、P−40は16〜40μm、P−100は40〜100μm、P−160は100〜160μm、P−250は160〜250μm、スポンジ(白)は約30〜50μmであった。ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の表面粗さの測定データを図6に示した。P−5のRaは1.21μmであった。多孔陶磁材の表面粗さの測定データを図7に示した。多孔陶磁材は0.9μmであった。P−5の気孔率は64%、P−16、P−40の気孔率は50%以上、P−100、P−160及びP−250の気孔率は30%ほどであった(図8)。尚、ガラスフィルタP−5、P−16、P−40、P−100、P−160及びP−250のサイズは、直径40mm厚さ4mmであった。尚、台所用三層型スポンジは三つ層を有し、一番上の層はナイロン、ポリエステルで構成され、真中の層はオレンジオイルクレンザーで構成され、網目構造があることが観察され、下層は緻密でポリエチレンで構成されている。
【0058】
《測定方法》
表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を意味し、JIS B0601に規定された方法で測定するものとする。
【0059】
細孔(直径)の平均値は、SEM写真により測定するものとする(100個平均)。
【0060】
気孔率は、下記の式により算出する。
気孔率=V孔/V総=(V総−V粒)/V総×100%
多孔質材料の体積(V総)=粒子の体積(V粒)+気孔の体積(V孔)
また、V粒の測定は、試料を水中に浸漬して、当該試料の浸漬した試料と水の総体積と試料浸漬前の水の総体積の差である。当該体積差を求めるに際しては、使用する水を真空脱気した後に測定するものとする。
【0061】
接着面の破壊エネルギーは、IPNゲルと接着した被着材料を接着材でガラスの上に固定し、当該ゲルの表面から被着材料の表面までカッターナイフで間隔を5cmとして平行的に切り、図9に示したように、引っ張り試験を行い、接着強度を測定した。破壊エネルギー(G)は、以下に示した式により計算した。
G=W/△S=F△I/d△I
【0062】
《複合材料の製造方法》
AMPSの混合溶液(AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%)に被着材料を浸漬し、ポンプで真空脱泡を2時間行い当該被着材料から空気を追い出す脱気処理を実施し、3日間浸漬した。その後、当該被着材料をガラス基板に封入し、ウォーターバスで60℃、10時間、熱重合を行った。これにより、第一網目構造の第一部位(PAMPS)が表面に構築された被着材料を得た。次に、第一網目の第二部位としてのPAMPSゲル(AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%)と前記の第一部位が構築された当該被着材料とを、AAmの混合溶液(第二モノマー溶液;AAm 2M;MBAA 0.01 mol%;KPS 0.1mol%)に浸漬し、ポンプで真空脱泡を2時間行い、3日間浸漬した。その後、これらをAr雰囲気グローブボックス内に入れて脱気(3時間)後、ガラス基板に両者をしっかり挟んだ状態で封入して袋にいれ、当該グローブボックスから出して、ウォーターバスで60℃、10時間で熱重合を行った。その後、純水溶液に一週間浸漬し、水を取り替えた。図10に当該方法に係る接着工程の概要を示した(ガラスフィルタの場合)。
【0063】
例1
ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)について、上記製造方法の手順に従って接着実験を行った。得られた複合体を純水で膨潤させる前と後の接着強度を測定した。図11は、接着した6種類のガラスフィルタとIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。当該図から分かるように、膨潤前後とも極めて高い接着強度を示した。尚、膨潤前の接着強度は膨潤後の接着強度より強くなる傾向にあることが確認された。これは、IPNゲルの膨潤により、ガラスフィルタ内部に充填したゲルの間に応力が発生し、破壊しやすくなったためではないかと考えられる。また、P−5のフィルタとIPNゲルの間の接着強度が最も高かった。当該結果により、気孔のサイズによりフィルタとIPNゲルの接着力を制御することができると示唆された。
【0064】
例2
P−5ガラスフィルタを用いて、第二モノマー成分であるAAmの混合溶液の架橋剤MBAAの量を変えて接着実験を行った。尚、当該条件以外は、《複合材料の製造方法》と同様の条件で接着実験を行った。測定した接着強度を図12に示す。当該図にも明記されているように、ガラスフィルタとIPNゲルの界面が破壊されるのではなく、IPNゲル自身が破断された。即ち、ガラスフィルタとIPNゲルの間の接着強度は、IPNゲル自身の破断強度より強いものと考えられる。
【0065】
例3
《複合材料の製造方法》に従って、ガラスフィルタ(P−5)を用いて、第一網目構造の第一部位に使用する架橋剤MBAAの濃度を1、2、4、8、10mol%と変化させて接着実験を行った。尚、その他のAMPSの混合溶液の組成はAMPS 1M:KPS 0.1mol%とした。また、第一網目構造の第二部位に相当するPAMPSゲルの組成は、AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%とした。また、AAmの混合溶液の組成はAAm 2M:MBAA 0.01mol%:KPS 0.1mol%として、実験を行った。結果を図13に示す。図13では接着したフィルタ(P−5)とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示している。第一網目構造の第一部位の架橋MBAAの濃度が大きくなるほど、接着強度が大きくなった。即ち、第一網目構造の第一部位の架橋MBAAの濃度が10mol%の場合、フィルタ(P−5)とIPNゲルとの間の接着強度が一番高いことが判明した。
【0066】
例4
ガラスフィルタ以外の硬質材料として多孔陶磁材を用い、上記例1の条件に準じて実験を行った。接着強度の測定をおこなった結果、37.7J/m2であった(図14)。また、軟質材料として2種類のスポンジを用い、上記例1の条件に準じて実験を行った。接着強度の測定を行った結果、いずれも200J/m2超であった(図14)。尚、スポンジ(白)に関しては、AAm溶液に浸漬した際、PAMPS化スポンジは3倍程度膨潤し、内部のスポンジ構造は一部破壊された(白い粒としてPAMPSゲル内に残留)。また、スポンジ(黄)に関しては、下層のスポンジが疎水性のポリエチレンで構成されているので、このポリエチレン内には溶液が侵入せずゲルは構築されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明による複合材料及び複合材料の製造方法により、硬、軟材料のそれぞれの欠点を克服し長所を集めて、更に材料領域で、硬、軟材料の幅広い応用展開が可能になり、材料の応用について重要な役割を果たすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明に係る複合材料の概念図を示した図である。
【図2】図2は、本実施例において使用した被着材料の写真を示した図である。
【図3】図3は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その一)を示した図である。
【図4】図4は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その二)を示した図である。
【図5】図5は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その三)を示した図である。
【図6】図6は、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の表面粗さの測定データを示した図である。
【図7】図7は、多孔陶磁材の表面粗さの測定データを示した図である。
【図8】図8は、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の気孔率を示した図である。
【図9】図9は、接着面の破壊エネルギーの測定方法の概念図を示した図である。
【図10】図10は、本実施例に係る《複合材料の製造方法》の手順の概念図を示した図である。
【図11】図11は、接着した6種類のフィルタとIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【図12】図12は、例2の接着強度の測定結果を示した図である。
【図13】図13は、例3で接着したフィルタ(P−5)とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【図14】図14は、例4で接着した多孔陶磁材等とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械強度及び低摩擦特性に優れた相互侵入網目構造ゲル(IPNゲル)を極めて高い接着強度で所定の被着材料(例えば硬質材料)に接着させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IPNゲル、例えば、ダブルネットワークゲル(DNゲル)は、ゲル内に第一網目構造と第二網目構造とが存在するゲルである。そして、当該ゲルは、第一網目構造に係る第一ゲル(シングルゲル)をまず構築した上で、第二網目構造に係るモノマー成分を当該第一網目構造の間隙内に浸透させて重合及び架橋することにより得られる(特許文献1)。
【0003】
当該IPNゲルは、強い圧縮・引張破断応力、低摩擦係数及び耐薬品性を示す一方で、ゲルとしての柔軟性、物質透過性、耐衝撃性をも備えているので、応用分野は、吸水材料、保水材料、工業材料、生体代替材料と多岐にわたるとして期待されている。
【0004】
例えば、生体関節部位は、骨と骨とがぶつからないように表面にはクッションのような役目を担う約75%の水分を含有する「軟骨」で覆われている。そして、この軟骨の機能が損なわれた場合、人工関節の摺動部の一方の面には金属かセラミックが人工骨として、その片方の面には超高分子ポリエチレンが人工軟骨として用いられる。ここで、水分を多く保持するIPNは、高強度、高衝撃吸収性及び低摩擦係数といった特性のため、超高分子ポリエチレンに代わる新たな人工軟骨材として期待される。
【特許文献1】WO2003/093337
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本発明者らは、IPNゲルを所望の素材に接着するに際して、周知の各種手法を検討した。まず、接着剤を使用してIPNゲルを当該素材に接着させる手法が考えられる。しかしながら、IPNゲルは内部に液体(例えば水)を保持していることに加え、その表面がつるつるしているので、もともと接着剤で接着し難い素材である。更には、接着剤で仮に接着できたとしても、例えば前記のように人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配した場合には、接着剤の接着力程度では長期に亘っての接着持続性を維持できない恐れがある。そこで、次に考えられる手法が、粗面を有する素材(例えば多孔質材料)を選択すると共に、当該粗面上に原料モノマー液を適用し、適用後に重合及び架橋する等により直接IPNゲルを形成させる手法である。この手法によれば、IPNゲルが粗面の微小空間(例えば細孔)内に直接形成されるため、アンカー効果による強い接着力が期待される。しかしながら、本発明者らは、当該手法でIPNゲルの構築を試みた場合、以下の問題が発生する結果、接着できない場合があることを確認した。具体的には、素材として硬質材料を用いた場合、IPNの前段階であるシングルゲルを粗面上に構築した後に、IPNゲル構築のために当該シングルゲル内にモノマー液を膨潤させると、粗面の微小空間内に存在する当該シングルゲルは膨張が制限される一方、微小空間外に存在する当該シングルゲルは自由に膨張できる。そのため、当該シングルゲルで内部応力と歪が生じる結果、ゲルにクラックが入る等、ゲルが部分的に破断してしまう。したがって、当該手法でIPNゲルを接着しようとすると、硬質材料の接合ではなく、内部でゲルが形成されてもある程度自由に膨張できる、例えばスポンジといった軟質材料との接合に限定されてしまう。また、軟質材料に関しても、クラックは発生しないまでも、軟質材料内と外ではゲルの歪が異なるために残留応力が発生し、中長期に亘る形態や強度を維持できない恐れがある。
【0006】
したがって、本発明は、人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配された場合にも耐えられる程の高強度で、IPNゲルと所定の被着材料(例えば硬質材料)と接着可能な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、
前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位と、前記第一部位とは別体である、前記第一部位上に搭載された第二部位とを有しており、
前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料である。
【0008】
本発明(2)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(1)の複合材料である。
【0009】
本発明(3)は、前記被着材料が多孔質材料であり、前記相互侵入網目構造ゲルが前記多孔質材料の表面上及び孔内に構築されている、前記発明(1)又は(2)の複合材料である。
【0010】
本発明(4)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(2)又は(3)の複合材料である。
【0011】
本発明(5)は、前記第一網目構造は電荷を有する網目構造であり、前記第二網目構造は電気的に中性であるか又は前記第一網目構造よりも少ない電荷を有する網目構造である、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの複合材料である。
【0012】
本発明(6)は、第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルと被着材料とから構成される複合材料の製造方法である。
【0013】
本発明(7)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(6)の方法である。
【0014】
本発明(8)は、前記被着材料が多孔質材料である、前記発明(6)又は(7)の方法である。
【0015】
本発明(9)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(7)又は(8)の方法である。
【0016】
本発明(10)は、前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電気的に中性であるモノマーを主成分とする、前記発明(6)〜(9)のいずれか一つの方法である。
【0017】
本発明(11)は、第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルを被着材料に接着する方法である。
【0018】
本発明(12)は、前記被着材料が硬質材料である、前記発明(11)の方法である。
【0019】
本発明(13)は、前記被着材料が多孔質材料である、前記発明(11)又は(12)の方法である。
【0020】
本発明(14)は、前記硬質材料がセラミックス又は金属である、前記発明(12)又は(13)の方法である。
【0021】
本発明(15)は、前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電荷を有しないモノマーを主成分とする、前記発明(11)〜(14)のいずれか一つの方法である。
【0022】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書中の用語の定義を記載する。まず、「第一網目構造」とは、第二網目構造が形成される前に形成されている網目構造を指す。ここで、第一網目構造の「第一部位」及び「第二部位」は、同一組成(原料やその濃度が同一)からなる網目構造でも異なる組成(原料モノマーや架橋剤等の原料の種類及び/又は当該原料の濃度が相違)からなる網目構造でもよい。「第二網目構造」とは、第一網目構造が形成された後に形成される網目構造を指し、第一網目構造内の第一部位内と第二部位内とで同一組成(原料やその濃度が同一)からなる網目構造でも異なる組成(原料モノマーや架橋剤等の原料の種類及び/又は当該原料の濃度が相違)からなる網目構造でもよい。「粗面」とは、例えば、表面粗さ(Ra)が0.5μm以上である場合や、硬質材料が多孔質(オープンポア、クローズドポア)である場合を挙げることができる。「被着材料」とは、複合材料を構成する、相互侵入網目構造ゲルが接合する側の材料を指し、硬質材料及び軟質材料のいずれをも包含し、例えば、金属、セラミックス、プラスチックを挙げることができる。「硬質材料」とは、弾性率10MPa以上の固体材料を指す。「架橋度」とは、モノマーの仕込みモル濃度に対する架橋剤のモル濃度の比をパーセントで表した値をいう。尚、実際には、重合に関与しなかったモノマーや架橋に関与しなかった架橋剤も僅かにある場合があるが、この際も、本明細書におけるゲルの架橋度は、前記の通りとする。「相互侵入網目構造ゲル」は、いわゆるダブルネットワーク型のみでなく、三重や四重以上の網目構造を有するゲルをも含む概念である。
【発明の効果】
【0023】
本発明(1)に係る複合材料においては、IPNゲルと被着材料とが極めて高強度で接着している。したがって、本発明(1)によれば、人工軟骨といった、様々な応力(引張応力、圧縮応力、せん断応力等)が継続的に加わる環境に配された場合にも当該接着が剥離すること無く、長期に亘ってIPNの特性(強い圧縮・引張破断応力、低摩擦係数、耐薬品性、柔軟性、物質透過性、耐衝撃性等)を付与し続けることが可能になるという効果を奏する。尚、当該複合材料を構成するIPNゲルにおける、第一網目構造における第一部位と第二部位は、その界面では第一網目は分断しており、第二網目で両者は接合している。したがって、技術常識によれば、当該界面で機械強度が弱いので当該界面で破断することが予想される。しかしながら、実際には、このような分断していないIPNと比較しても破断強度は特段低下しないことが実験で確認されている。この点は技術常識からすると予想外な効果である。
【0024】
本発明(2)によれば、被着材料が硬質材料という、相互侵入網目構造ゲルを接合させた際に当該ゲルが破断し易い材料であるにもかかわらず、第一網目構造が第一部位と第二部位との界面で分断しているという構成を採るため、当該ゲルが破断していない硬質材料/相互侵入網目構造ゲルの複合材料を提供することができるという効果を奏する。
【0025】
本発明(3)によれば、被着材料が多孔質材料であるため、IPNゲルが材料内のより奥まで侵入すると共に、侵入したIPNゲルがより抜け難くなるので、より優れたアンカー効果を発揮する結果、更に強い接着力を付与することが可能になるという効果を奏する。
【0026】
本発明(4)によれば、硬質材料がセラミックス又は金属という、各種分野で利用されており加工も比較的容易な汎用材料であるので、当該複合材料の応用範囲が広がるという効果を奏する。
【0027】
本発明(5)によれば、例えばハイドロゲルの形態においては、第一網目がピンと張った固くて脆い網目(brittle)であり、第二網目がゴムのような伸縮容易な網目(soft)であるので、IPNゲル自体を極めて高強度化することが可能であるという効果を奏する。更に、brittleな第一網目は膨潤(水等の水性液体媒体)又は収縮(油性液体媒体)する一方、softな第二網目はbrittleな第一網目と比較すると液体媒体に起因した伸縮の程度は低い。ここで、当該IPNゲルを所定環境下に配したとき、第一網目の第一部位の膨張収縮は被着材料の硬さによって制限を受ける一方、第二部位の膨張収縮は相対的に制限を受けない。このように、両者の膨張収縮の程度が異なる事態が想定される。そのような場合であっても、第一網目が分断しているので、第一部位とは独立した形で第二部位の膨張収縮が可能であると共に、第二網目を構成するポリマーはsoftなものであるので、当該膨張収縮に対応して当該ポリマーが伸び縮みする結果、当該膨張収縮により当該界面において当該第二網目が切断される事態も回避できるという効果を奏する。
【0028】
本発明(6)〜(10)に係る複合材料の製造方法によれば、第一網目構造が第二モノマー液で膨潤したとしても、ゲルに亀裂を発生させること無く(被着体が硬質材料の場合)、また、高い残留応力を発生させること無く(被着体が軟質材料の場合)、IPNゲルと被着材料とが高強度に接着した複合材料を製造可能であるという効果を奏する。
【0029】
本発明(11)〜(15)に係る複合材料の製造方法によれば、第一網目構造が第二モノマー液で膨潤したとしても、ゲルに亀裂を発生させること無く(被着体が硬質材料の場合)、また、高い残留応力を発生させること無く(被着体が軟質材料の場合)、IPNゲルと被着材料とを高強度に接着することが可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
《複合材料の全体構成》
本最良形態に係る複合材料は、所定の被着材料にIPNゲルが直接接着した複合材料である。ここで、当該複合材料のIPNゲル部分は、当該被着材料の粗面上に構築された第一網目構造の第一部位と、前記第一部位と別体である、前記第一部位上に搭載された第一網目構造の第二部位と、前記第一部位及び第二部位の両間隙に亘り連続的に構築された第二網目構造と、を有することを一の特徴とする。即ち、このような構造を有することにより、IPNゲルが被着材料に直接接合している。以下、被着材料としてより好適な硬質材料を例に採り、IPNゲル及び硬質材料の組成及び構造をまず説明し、続いて複合材料の性質を詳述することとする。
【0031】
《複合材料の構成要素1(IPNゲル)》
図1は、本最良形態に係る複合材料の概念図である。尚、当該図はあくまで概念図であり、ポリマーの太さや架橋密度等は実際を反映させたものでは無いことを理解すべきである。そこで、図1を参照しながらIPNゲルを詳述すると、前述のように、第一網目構造(図中の細線)は、第一部位1(1)と第二部位1(2)にもともとは分断されている。ここで、第一部位1(1)と第二部位1(2)は、全く同一の組成(原料や濃度)で形成された網目構造でもよく、異なる組成で形成された網目構造であってもよい。また、第二網目構造(図中の太線)は、第一網目構造内の第一部位1(1)と第二部位1(2)内に亘って連続的に形成されている限り特に限定されず、第一部位1(1)内での組成と第二部位1(2)内での組成が同一でも異なっていてもよい。このことは、IPNゲルを製造する際に使用する原料液に関し、第一網目構造の第一部位1(1)と第二部位1(2)の原料液が同一組成であっても異なる組成であってもよく、更には、第二網目構造の、第一部位1(1)内に導入する原料液と第二部位1(2)内に導入する原料液が同一組成でも異なる組成であってもよいことを意味する。また、当該IPNゲルは、内部にどのような液体媒体(一般に溶媒ともいう)を含有してもよく(例えば水や有機溶媒)、ハイドロゲルでもオルガノゲルでもよい。
【0032】
ここで、相互侵入網目構造を構成する網目構造は、好適には、電荷を有する不飽和モノマー及び/又は電気的に中性である不飽和モノマーの架橋体、天然高分子の架橋体である。以下ではまず、本最良形態に係る複合材料を製造するための好適な原料である、電荷を有する不飽和モノマー、電気的に中性である不飽和モノマー及び天然高分子につき説明する。
【0033】
電荷を有する不飽和モノマーとしては、好適には、酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基)や塩基性基(例えば、アミノ基)を有する不飽和モノマーを、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩を挙げることができる。
【0034】
電気的に中性である不飽和モノマーとしては、例えば、アクリルアミド(AAm)、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチル−アクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニルを挙げることができる。
【0035】
天然高分子としては、バクテリアセルロースや電荷を有する天然高分子を挙げることができる。ここで、「バクテリアセルロース」(以下、BCと省略する場合がある)とは、微生物により産生された、セルロース、セルロースを主鎖としたヘテロ多糖、β−1,3−、β−1,2等のグルカンのいずれか又はこれらの混合物である。なお、ヘテロ多糖の場合のセルロース以外の構成成分は、マンノース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸等の6炭糖、5炭糖及び有機酸等である。ここで、バクテリアセルロースを産生する微生物は、特に限定されないが、グルコンアセトバクター・キシリナム・サブスピーシス・キシリナムATCC−53582{Gluconacetobacter xylinus subsp. xylinus (Yamada)}、アセトバクター・アセチ・サブスピーシス・キシリナムATCC−10821(Acetobactoracetisubsp xylinum)、同パストウリアン(A.pasteurium)、同ランセンス(A.rancens)、サルシナ・ベントリクリ(Sarcina ventriculi)、バクテリウム・キシロイデス(Bacterium xyloides)、シュードモナス属細菌、アグロバクテリウム属細菌等で、バクテリアセルロースを産生するものを利用することができる。また、「電荷を有する天然高分子」とは、電荷を有するタンパク質や多糖類等を指す。具体的には、タンパク質としては、ゼラチンやコラーゲン等を、また、多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、カラギーナン、キトサンやヒアルロン酸等を挙げることができる。また、糖とタンパク質の共有結合化合物である糖タンパク質をも含み、例えば、このような糖タンパク質として、プロテオグリカン、アグリカンを挙げることができる。
【0036】
第一網目構造や第二網目構造を形成させる際に使用する架橋剤は、特に限定されず、架橋重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを用いた場合には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)を、有機モノマーとしてStを用いた場合には、エチレングリコールジメタクリレートを夫々使用することができる。
【0037】
ここで、第一モノマー成分と第二モノマー成分との組み合わせとしては、前者は、単独でゲルを構築した場合に、硬くて脆いゲルを構成するような成分を選択することが好ましく、後者は、単独でゲルを構築した場合に、軟らかいゲルを構成するような成分を選択することが好ましい。具体的には、前者は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)等の強電解質である電荷を有する不飽和モノマーを使用することが好ましく、後者は、アクリルアミド等の電気的に中性である不飽和モノマーや、第一モノマー成分よりも少ない電荷量を有する(解離定数の低い)モノマーを使用することが好ましい。この好適な組み合わせに係る態様の場合、第一モノマー成分中の電荷を有する不飽和モノマーの量は、第一モノマー成分に対し10モル%以上で好適であり、より好適には30%以上、更に好適には100モル%である。また、第二モノマー成分中の電荷を有しない不飽和モノマーの量は、第二モノマー成分に対し10モル%以上で好適であり、より好適には50%以上、更に好適には100モル%である。
【0038】
更に、IPNゲル中の第一モノマー成分量:第二モノマー成分量が、モル比で1:2〜1:100(好適には1:3〜1:50、より好適には1:3〜1:30)であることが好適である。このような構成を採ることにより、IPNゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。このような高い比での、電気的に中性である不飽和モノマーの導入は、第一モノマー成分を重合し架橋することにより、電荷を有する基(例えば、スルホン酸基、カルボキシル基)が一定量以上存在している網目構造(第一網目構造)を形成し、その後、電気的に中性である不飽和モノマーを導入することによりはじめて可能となる。尚、ゲル中におけるモノマー量は、各々の網目構造が1種類のモノマーより構成されている場合には、元素分析により決定する。また、2種以上の場合は、元素分析では複雑になり決定できない場合がある。このような場合は、例えば、製造の際に使用したモノマー量から、重合しなかったモノマー量を引くことにより求める。
【0039】
更に、第二のモノマー成分を重合し架橋する場合には、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定することが好適である。このような構成を採ることにより、ゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。具体的には、第一の網目構造の架橋度が0.1〜50mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.001〜20mol%であることが好適であり、第一の網目構造の架橋度が1〜20mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.01〜5mol%であることがより好適であり、第一の網目構造の架橋度が2〜10mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.05〜1mol%であることが更に好適である。尚、ゲルの含水量を小さくしたり(即ち、膨潤度を小さくする)、硬くする(即ち、弾性率を大きくする)には、両方の架橋度を上げるようにすればよい。
【0040】
《複合材料の構成要素2(硬質材料)》
続いて、硬質材料について詳述する。硬質材料は、少なくとも一部に粗面を有する限り特に限定されず、全面に粗面が形成された硬質材料及びIPNゲルとの接着部分だけ粗面が形成された硬質材料(例えば、接着部分だけ粗面処理された材料)のいずれでもよく、更には、単一の材質からなるものに限定されず、複数の材料からなる硬質材料(例えば、IPNゲルとの接着部分が硬質材料層であり、当該接着部分と反対側の当該硬質材料層に軟質材料層が更に結合している複合材料)であってもよい。
【0041】
ここで、粗面は、IPNゲルが接合した際にアンカー効果を奏する程度の粗面であれば特に限定されないが、表面粗さ(Ra)が0.5〜100μmであることが好適であり、1〜20μmであることがより好適である。
【0042】
特に好適な硬質材料は、多孔質材料である。ここで、多孔質材料は、特に限定されず、例えば、多孔質セラミック、ガラスフィルタ、多孔陶磁材、多孔質焼結樹脂、多孔状粒子、多孔質ガラス、軽石、発泡ガラス、多孔質モルタル、多孔質コンクリート、多孔質人工石、人工骨、有機多孔質、イソシアネート多孔質、多孔金属、多孔樹脂等が挙げられる。多孔質材料の孔径のサイズは、使用する材料に依存するが、0.05〜3000μmが好適であり、0.5〜500μmがより好適である。ここで、一般には孔径が小さくなればなる程、接着強度が高くなる傾向にある。その理由は以下の通りであると考えられる。孔内に第一ゲルの第一部位が構築され、当該第一ゲルの第一部位が第二モノマー溶液で膨潤した場合、膨潤した第一ゲルの第一部位が外部に膨らむ(突き出る)。そして、当該膨らみが第一部位の表面全体に点状に形成されると理解される。ここで、孔径が小さい場合には当該膨らみが小さくなる一方、孔径が大きい場合には当該膨らみが大きくなる、と考えられる。そして、このような第一ゲルの第一部位上に第二部位を搭載した場合、孔径が小さいときには、当該膨らみが小さいために第一部位と第二部位とがしっかり接触するのに対し、孔径が大き過ぎると、第一部位と第二部位とが点接触になると理解される。第一部位と第二部位とが十分に接触していないこの状態(点接触状態)で第二網目構造を構築すると、両部位の接触が不十分であるが故に、接着強度が低下する。
【0043】
また、多孔質材料の気孔率は、5%以上で好適であり、30%以上でより好適である。気孔率が大きくなると、多孔質材料内の比表面積が大きくなるので、より接着強度を高めることが可能となる。特に、同一気孔率であっても、孔径が小さくなる程、比表面積が大きくなるので、更に高い接着強度が必要な場合には、気孔率が高く孔径が小さい多孔質材料を選択することが好適である。
【0044】
以上、IPNゲル及び硬質材料(特に多孔質材料)の成分等について詳述したが、多孔質材料の気孔サイズと当該孔に導入する高分子成分や架橋度を変化させることにより、多孔質材料とIPNゲルの接着強度を制御できるのではないかと考えられる(これについては以下で詳述する)。
【0045】
《複合材料の性質》
(強力な接着力)
本最良形態に係る複合材料の特性は、IPNゲルと硬質材料との非常に強い接着力である。第一網目構造は、第一部位及び第二部位に分断しており、それぞれのネットワークが直接結合はしていない。したがって、硬質材料から当該IPNゲルを引き剥がそうとした場合、第一網目構造の第一部位と第二部位の界面で切断されることが通常は予想される。しかしながら、当該予想に反し、硬質材料から当該IPNゲルを引き剥がそうとした場合、第一網目構造の第一部位と第二部位の界面で切断されるよりも、当該IPN自体が先に破断してしまうことが確認された。それ程、強力な接着力でIPNゲルと硬質材料とは接合している。具体的には、本最良形態に係る複合材料の接着面の破壊エネルギーは、20J/m2以上が好適であり、100J/m2以上がより好適であり、900J/m2以上が更に好適である。
【0046】
ここで、硬質材料とIPNゲル間の接着力を決定する要因は、前述した「硬質材料の表面粗さ」、硬質材料が多孔質材料である場合には「孔径」及び「気孔率」の他、「硬質材料とIPNゲルとの相互作用に基づく接着」がある。当該相互作用(分子間相互作用)としては、例えば、静電相互作用、水素結合、双極子−双極子相互作用、疎水性相互作用等を挙げることができる。例えば、硬質材料として多孔質のガラスフィルタを使用した場合を説明すると、ガラス(SiO2系)は、pHを3以下に下げると、表面上にプラスイオンを持つ。このような硬質材料に対して、第一網目として酸性のPAMPSネットワークを構築し、第二網目として電気的に中性であるPAAmネットワークを構築する。すると、ガラス表面に形成されたプラスイオンとPAMPSのマイナスイオン(スルホン酸基)とが引き合う結果、ガラスとPAMPS/PAAmゲルとがより強固に接着することになる(電荷吸引作用)。他方、電荷を持つPAMPS/PAAmゲルではなく、酸性でないPNaAMPS/PAAm(DN)ゲルを用いてガラスフィルタと接着した場合には、接着強度は相対的に低下する。
【0047】
《複合材料の製造方法(IPNゲルを硬質材料に接着する方法)》
本発明に係る硬質材料とIPNゲルとの複合材料の製造方法(IPNゲルを硬質材料に接着する方法)は、
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を硬質材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記硬質材料の前記粗面上に構築する第一工程、
第一モノマー成分(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を必須的に含む。以下、各工程について詳述する。
【0048】
まず、当該方法に係る第一工程は、硬質材料表面に第一網目構造の第一部位を構築する工程である。当該第一工程で使用する第一モノマー溶液(1)は、典型的には、第一モノマー(1)及び第一架橋剤(1){場合により第一重合開始剤(1)}を含有する。ここでは、硬質材料の粗面表面に第一モノマー溶液(1)を十分に付着させるべく、硬質材料側の工夫としては、当該モノマー溶液の適用に先立ち、第一モノマー溶液(1)との濡れ性を向上させるための表面処理を硬質材料の粗面に施すこと、また、プロセス的な工夫としては、例えば、圧力をかけながら第一モノマー溶液(1)を適用すること、硬質材料が多孔質材料である場合には、第一モノマー溶液(1)の適用面とは反対側から減圧しながら多孔質材料内に第一モノマー溶液(1)を吸引すること、を挙げることができる。
【0049】
尚、重合反応や架橋反応等、本発明の特徴でない工程は、周知手法に従い実施可能である。例えば、重合反応は、熱重合や光重合等、どのような手法でもよい。そして、使用する重合開始剤としては、重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを熱重合する場合には、過硫酸カリウム(KPS)等の水溶性熱開始剤、過硫酸カリウム−チオ硫酸ナトリウム等のレドックス開始剤を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤として2−オキソグルタル酸を用いることができる。また、有機モノマーとしてStを熱重合する場合には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)等の有機溶媒に溶解性の熱開始剤を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤としてベンゾフェノンを使用することができる。
【0050】
次に、第二工程は、第一網目構造の第二部位を得る工程であるが、第二部位を構成する網目構造は、周知の方法により別途合成することができる。ここで、使用される第一モノマー溶液(2)は、前記のように第一モノマー溶液(1)と同一組成でも異なっていてもよく、典型的には、第一モノマー(2)及び第一架橋剤(2){場合により第一重合開始剤(2)}を含有する。
【0051】
次に、第三工程では、第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を調製した後、前記第一網目構造の前記第一部位内に前記第二モノマー溶液(1)を導入する。ここで、使用される第二モノマー溶液(1)は、典型的には、第二モノマー(1)及び第二架橋剤(1){場合により第二重合開始剤(1)}を含有する。尚、導入手法は特に限定されず、例えば、第一部位に係るシングルネットワークゲルが形成された硬質材料を第二モノマー溶液(1)に浸漬する手法が挙げられる。ここで、導入するモノマー分子の半径は、100nm以下が好適であり、10nm以下が更に好適である。
【0052】
次に、第四工程では、第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を調製した後、前記第一網目構造の前記第二部位内に前記第二モノマー溶液(2)を導入する。ここで、使用される第二モノマー溶液(2)は、前記のように第二モノマー溶液(1)と同一組成でも異なっていてもよく、典型的には、第二モノマー(1)及び第二架橋剤(1){場合により第二重合開始剤(1)}を含有する。尚、導入手法は特に限定されず、例えば、第二部位に係るシングルネットワークゲルを第二モノマー溶液(1)に浸漬する手法が挙げられる。ここで、導入するモノマー分子の半径は、100nm以下が好適であり、10nm以下が更に好適である。
【0053】
尚、第三工程で使用する第二モノマー溶液(1)と第四工程で使用する第二モノマー溶液(2)が同一である場合には、第三工程と第四工程を同時に実施してもよい。この場合、第一部位に係るシングルネットワークゲルが形成された硬質材料と第二部位に係るシングルネットワークゲルの両方を第二モノマー溶液に浸漬する手法が挙げられる。
【0054】
次に、第五工程では、第一網目構造の第一部位と第二部位とを接触(くっつけた)状態で、重合及び架橋反応を実施する。この際、第一部位と第二部位との間に隙間が存在すると、製造後の複合材料における第一部位と第二部位の界面での強度が弱くなるので、しっかりとくっつけた状態を担保することが重要である。例えば、第一部位と第二部位を挟み込むように圧力をかける。その時の圧力は、第一部位、第二部位の柔らかいほうの弾性率と同程度の圧力が好適である。
【0055】
尚、本工程において使用する溶媒に関しては、前記溶液に浸漬される硬質材料表面及び表面上に構築された第一網目構造への悪影響を防止し、かつ、二重網目構造を第一網目構造の網目に良好に絡みつける観点から、この溶液の溶媒が、第一網目構造を有するゲル中の溶媒と同じであることが好適である。尚、最終的に複合材料のIPNゲル中に含まれる液体媒体(溶媒)に関しては、製造段階から当該液体媒体を使っても、或いは、製造後に液体媒体交換(溶媒交換)を行ってもよい。
【0056】
《用途》
本発明に係る複合材料は、水等の溶媒で膨潤させて、ハイドロゲルとして使用することができる。硬質材料とIPNゲルの複合材料は、特異な性質を発現するものと期待でき、その応用分野も広汎である。中でも特に、人工関節軟骨等の生体材料に使用可能である。この場合、硬質材料としてセラミック又は金属といった硬質無機材料を使用し、当該硬質無機材料を骨に固定することにより、当該硬質無機材料を介して骨にIPNゲルを固着することが可能となる。
【実施例】
【0057】
《被着材料》
本実施例において使用した被着材料は、硬質材料に関しては、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)、多孔陶磁材(建築分野用)、軟質材料に関しては、スポンジ(白)(メラミンフォームスポンジスポンジ)、スポンジ(黄)(台所用三層型スポンジ)である(図2)。各物質の表面のSEM写真を図3〜図5に示した。SEM写真により、ガラスフィルタP−5の気孔サイズは4〜5.5μm、P−16は10〜16μm、P−40は16〜40μm、P−100は40〜100μm、P−160は100〜160μm、P−250は160〜250μm、スポンジ(白)は約30〜50μmであった。ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の表面粗さの測定データを図6に示した。P−5のRaは1.21μmであった。多孔陶磁材の表面粗さの測定データを図7に示した。多孔陶磁材は0.9μmであった。P−5の気孔率は64%、P−16、P−40の気孔率は50%以上、P−100、P−160及びP−250の気孔率は30%ほどであった(図8)。尚、ガラスフィルタP−5、P−16、P−40、P−100、P−160及びP−250のサイズは、直径40mm厚さ4mmであった。尚、台所用三層型スポンジは三つ層を有し、一番上の層はナイロン、ポリエステルで構成され、真中の層はオレンジオイルクレンザーで構成され、網目構造があることが観察され、下層は緻密でポリエチレンで構成されている。
【0058】
《測定方法》
表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)を意味し、JIS B0601に規定された方法で測定するものとする。
【0059】
細孔(直径)の平均値は、SEM写真により測定するものとする(100個平均)。
【0060】
気孔率は、下記の式により算出する。
気孔率=V孔/V総=(V総−V粒)/V総×100%
多孔質材料の体積(V総)=粒子の体積(V粒)+気孔の体積(V孔)
また、V粒の測定は、試料を水中に浸漬して、当該試料の浸漬した試料と水の総体積と試料浸漬前の水の総体積の差である。当該体積差を求めるに際しては、使用する水を真空脱気した後に測定するものとする。
【0061】
接着面の破壊エネルギーは、IPNゲルと接着した被着材料を接着材でガラスの上に固定し、当該ゲルの表面から被着材料の表面までカッターナイフで間隔を5cmとして平行的に切り、図9に示したように、引っ張り試験を行い、接着強度を測定した。破壊エネルギー(G)は、以下に示した式により計算した。
G=W/△S=F△I/d△I
【0062】
《複合材料の製造方法》
AMPSの混合溶液(AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%)に被着材料を浸漬し、ポンプで真空脱泡を2時間行い当該被着材料から空気を追い出す脱気処理を実施し、3日間浸漬した。その後、当該被着材料をガラス基板に封入し、ウォーターバスで60℃、10時間、熱重合を行った。これにより、第一網目構造の第一部位(PAMPS)が表面に構築された被着材料を得た。次に、第一網目の第二部位としてのPAMPSゲル(AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%)と前記の第一部位が構築された当該被着材料とを、AAmの混合溶液(第二モノマー溶液;AAm 2M;MBAA 0.01 mol%;KPS 0.1mol%)に浸漬し、ポンプで真空脱泡を2時間行い、3日間浸漬した。その後、これらをAr雰囲気グローブボックス内に入れて脱気(3時間)後、ガラス基板に両者をしっかり挟んだ状態で封入して袋にいれ、当該グローブボックスから出して、ウォーターバスで60℃、10時間で熱重合を行った。その後、純水溶液に一週間浸漬し、水を取り替えた。図10に当該方法に係る接着工程の概要を示した(ガラスフィルタの場合)。
【0063】
例1
ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)について、上記製造方法の手順に従って接着実験を行った。得られた複合体を純水で膨潤させる前と後の接着強度を測定した。図11は、接着した6種類のガラスフィルタとIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。当該図から分かるように、膨潤前後とも極めて高い接着強度を示した。尚、膨潤前の接着強度は膨潤後の接着強度より強くなる傾向にあることが確認された。これは、IPNゲルの膨潤により、ガラスフィルタ内部に充填したゲルの間に応力が発生し、破壊しやすくなったためではないかと考えられる。また、P−5のフィルタとIPNゲルの間の接着強度が最も高かった。当該結果により、気孔のサイズによりフィルタとIPNゲルの接着力を制御することができると示唆された。
【0064】
例2
P−5ガラスフィルタを用いて、第二モノマー成分であるAAmの混合溶液の架橋剤MBAAの量を変えて接着実験を行った。尚、当該条件以外は、《複合材料の製造方法》と同様の条件で接着実験を行った。測定した接着強度を図12に示す。当該図にも明記されているように、ガラスフィルタとIPNゲルの界面が破壊されるのではなく、IPNゲル自身が破断された。即ち、ガラスフィルタとIPNゲルの間の接着強度は、IPNゲル自身の破断強度より強いものと考えられる。
【0065】
例3
《複合材料の製造方法》に従って、ガラスフィルタ(P−5)を用いて、第一網目構造の第一部位に使用する架橋剤MBAAの濃度を1、2、4、8、10mol%と変化させて接着実験を行った。尚、その他のAMPSの混合溶液の組成はAMPS 1M:KPS 0.1mol%とした。また、第一網目構造の第二部位に相当するPAMPSゲルの組成は、AMPS 1M、架橋剤MBAA 4mol%、開始剤KPS 0.1mol%とした。また、AAmの混合溶液の組成はAAm 2M:MBAA 0.01mol%:KPS 0.1mol%として、実験を行った。結果を図13に示す。図13では接着したフィルタ(P−5)とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示している。第一網目構造の第一部位の架橋MBAAの濃度が大きくなるほど、接着強度が大きくなった。即ち、第一網目構造の第一部位の架橋MBAAの濃度が10mol%の場合、フィルタ(P−5)とIPNゲルとの間の接着強度が一番高いことが判明した。
【0066】
例4
ガラスフィルタ以外の硬質材料として多孔陶磁材を用い、上記例1の条件に準じて実験を行った。接着強度の測定をおこなった結果、37.7J/m2であった(図14)。また、軟質材料として2種類のスポンジを用い、上記例1の条件に準じて実験を行った。接着強度の測定を行った結果、いずれも200J/m2超であった(図14)。尚、スポンジ(白)に関しては、AAm溶液に浸漬した際、PAMPS化スポンジは3倍程度膨潤し、内部のスポンジ構造は一部破壊された(白い粒としてPAMPSゲル内に残留)。また、スポンジ(黄)に関しては、下層のスポンジが疎水性のポリエチレンで構成されているので、このポリエチレン内には溶液が侵入せずゲルは構築されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明による複合材料及び複合材料の製造方法により、硬、軟材料のそれぞれの欠点を克服し長所を集めて、更に材料領域で、硬、軟材料の幅広い応用展開が可能になり、材料の応用について重要な役割を果たすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明に係る複合材料の概念図を示した図である。
【図2】図2は、本実施例において使用した被着材料の写真を示した図である。
【図3】図3は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その一)を示した図である。
【図4】図4は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その二)を示した図である。
【図5】図5は、本実施例において使用した被着材料表面のSEMの写真(その三)を示した図である。
【図6】図6は、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の表面粗さの測定データを示した図である。
【図7】図7は、多孔陶磁材の表面粗さの測定データを示した図である。
【図8】図8は、ガラスフィルタ(P−5、P−16、P−40、P−100、P−160、P−250)の気孔率を示した図である。
【図9】図9は、接着面の破壊エネルギーの測定方法の概念図を示した図である。
【図10】図10は、本実施例に係る《複合材料の製造方法》の手順の概念図を示した図である。
【図11】図11は、接着した6種類のフィルタとIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【図12】図12は、例2の接着強度の測定結果を示した図である。
【図13】図13は、例3で接着したフィルタ(P−5)とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【図14】図14は、例4で接着した多孔陶磁材等とIPNゲルの間の破壊エネルギーの値を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、
前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位と、前記第一部位とは別体である、前記第一部位上に搭載された第二部位とを有しており、
前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料。
【請求項2】
前記被着材料が硬質材料である、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記被着材料が多孔質材料であり、前記相互侵入網目構造ゲルが前記多孔質材料の表面上及び孔内に構築されている、請求項1又は2記載の複合材料。
【請求項4】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項2又は3記載の複合材料。
【請求項5】
前記第一網目構造は電荷を有する網目構造であり、前記第二網目構造は電気的に中性であるか又は前記第一網目構造よりも少ない電荷を有する網目構造である、請求項1〜4のいずれか一項記載の複合材料。
【請求項6】
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルと被着材料とから構成される複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記被着材料が硬質材料である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記被着材料が多孔質材料である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電気的に中性であるモノマーを主成分とする、請求項6〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルを被着材料に接着する方法。
【請求項12】
前記被着材料が硬質材料である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記被着材料が多孔質材料である、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電荷を有しないモノマーを主成分とする、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項1】
第一網目構造及び第二網目構造を含む相互侵入網目構造ゲルと、表面の少なくとも一部に粗面が形成された被着材料と、から構成される複合材料であって、
前記第一網目構造が、前記被着材料の前記粗面上に構築された第一部位と、前記第一部位とは別体である、前記第一部位上に搭載された第二部位とを有しており、
前記第二網目構造が、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に構築されている、相互侵入網目構造ゲルが被着材料の粗面に直接接着した複合材料。
【請求項2】
前記被着材料が硬質材料である、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記被着材料が多孔質材料であり、前記相互侵入網目構造ゲルが前記多孔質材料の表面上及び孔内に構築されている、請求項1又は2記載の複合材料。
【請求項4】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項2又は3記載の複合材料。
【請求項5】
前記第一網目構造は電荷を有する網目構造であり、前記第二網目構造は電気的に中性であるか又は前記第一網目構造よりも少ない電荷を有する網目構造である、請求項1〜4のいずれか一項記載の複合材料。
【請求項6】
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルと被着材料とから構成される複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記被着材料が硬質材料である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記被着材料が多孔質材料である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電気的に中性であるモノマーを主成分とする、請求項6〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第一モノマー成分(1)を含む第一モノマー溶液(1)を被着材料の粗面に適用した後に当該溶液に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造ゲルの第一部位を前記被着材料の前記粗面上に構築する第一工程、
前記第一モノマー溶液(2)を含む第一モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、第一網目構造の第二部位を得る第二工程、
第二モノマー成分(1)を含む第二モノマー溶液(1)を前記第一網目構造の前記第一部位内に導入する第三工程、
第二モノマー成分(2)を含む第二モノマー溶液(2)を前記第一網目構造の前記第二部位内に導入する第四工程、及び
前記第二モノマー溶液(1)を含有する前記第一部位と前記第二モノマー溶液(2)を含有する前記第二部位とを合わせた状態で、前記第二モノマー溶液(1)及び前記第二モノマー溶液(2)に対して重合及び架橋反応を実施することにより、前記第一網目構造の前記第一部位及び前記第二部位内の両間隙に亘り連続的に第二網目構造を構築する第五工程、
を含む、相互侵入網目構造ゲルを被着材料に接着する方法。
【請求項12】
前記被着材料が硬質材料である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記被着材料が多孔質材料である、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記硬質材料がセラミックス又は金属である、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
前記第一モノマー成分が電荷を有するモノマーを主成分とし、前記第二モノマー成分が電荷を有しないモノマーを主成分とする、請求項11〜14のいずれか一項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−56714(P2009−56714A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226274(P2007−226274)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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