説明

相補的なスロット及びマイクロストリップ共振に基づいた再構成可能な放射位相シフトセル

【課題】相補的なスロット及びマイクロストリップ共振に基づいた再構成可能な放射位相シフトセルを提供する。
【解決手段】位相サイクルの第1部分においては、「スロット」タイプの等価な共振の励起を選好し、且つ、位相サイクルの第2部分においては、「マイクロストリップ」タイプの等価な共振を選好するように、設計された放射位相シフトセル。この特性により、特に、位相シフトセルの帯域幅を最適化することができる。360°の位相範囲を、事実上、約180°の2つのサブ範囲に分割することができる。この2つのサブ範囲への分割は、スロット又はマイクロストリップタイプの共振モードの相補性により、可能になっている。この放射位相シフトセルは、通信衛星などの宇宙船に、或いは、衛星通信又は放送システム用の陸上端末に、設置されるように設計されたアンテナ用の反射器アレイに特に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、再構成可能な放射位相シフトセルの分野である。本発明は、通信衛星などの宇宙船に、或いは、衛星通信又は放送システム用の陸上端末に、設置されるように設計されたアンテナ用の反射器アレイに対して特に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
アンテナ反射器アレイ(又は、「リフレクトアレイアンテナ」)は、1次元又は2次元の配列として組み立てられると共にアンテナの指向性及び利得の増大を可能にする反射表面を形成する放射位相シフトセルの組を有する。金属パッチタイプ及び/又はスロットタイプの反射器アレイの放射位相シフトセルは、セルごとに変化しうるパラメータによって規定されており、これらのパラメータは、例えば、望ましい放射図(radiation diagram)を得るような方式によって調節されるエッチングされたパターンの幾何学的な寸法(パッチ又はスロットの長さ及び幅)である。
【0003】
放射位相シフトセルは、放射スロットを備えると共に通常はλg/10〜λg/6の範囲の距離だけ金属接地面から離隔した金属パッチによって形成することが可能であり、ここで、λgとは、スペーサ媒質内における導波対象の波長である。このスペーサ媒質は、誘電材料であってよいが、ハニカムタイプのセパレータ又は薄膜誘電層の対称的な配列によって形成された複合多層であってもよい。アンテナを高性能にするために、基本セルは、入射波に対して生成する位相シフトを帯域幅内の様々な周波数について正確に制御することができなければならない。又、反射器アレイの製造プロセスが可能な限り単純であることも1つの要件である。
【0004】
この目的のために、本出願人は、「Phase−shifting cell with linear polarization and with a variable resonant length using MEMS switches」という名称の第1の仏国特許出願第0450575号を既に出願している。図1は、このタイプの位相シフトセルCDの一実施形態を示している。この動作の原理は、1つ又は複数の可変であり且つ制御された局所的負荷DC’を短絡状態の確立を許容及び非許容するいくつかの異なる状態に配置することによってスロットFPの電気的長さを変化させるステップを有する。セルの特性共振長の変動により、波の位相シフトの変更を実現することができる。アンテナの場合には、波は、RF源から到来する。図1によるセルは、基板SBを有し、この基板は、接地面に対して堅固に装着された背面を有する。
【0005】
この位相シフトセルは、入射波の1つの直線偏波についてのみ機能する。更には、このセルのサイズは、相対的に大きく、0.7λのレベルであって、ここで、λは、波長を表す。従って、反射器アレイのメッシュサイズ、換言すれば、これらのセルが配列として配置される空間的周期性は、0.5λよりも格段に大きい。これは、更に高次のFloquetモードの励起の可能性と関連する非常に傾いた波の入射の場合に、最適ではない動作を結果的にもたらす。この効果は、当業者が「ローブイメージ」とも呼んでいる放射図のサイドローブの劣化に結び付く。
【0006】
この位相シフトセルは、1つ又は複数のスロットの電気的長さによって変調されるパッチタイプの共振として主に機能している。この単一の共振の変調による360°を上回る位相サイクルの実現が非常に重要な点であり、且つ、位相シフトセルの高共振性の構成により、特定の位相状態が実現されている。又、これらの高共振性の構成は、相対的に大きな損失と、セルの、並びに、可変であり且つ制御された局所的負荷の、製造公差の影響を電気的特性が受け易くなるという点と、をも特徴としている。
【0007】
本出願人は、「Reflector array with optimized arrangement and antenna comprising such a reflector array」という名称の第2の仏国特許出願をも出願している。これは、位相シフトセルによって生成された位相サイクルを有しており、これらの位相シフトセルは、1つの位相シフトセルから別の隣接する位相シフトセルへの漸進的な推移を有する内部構造を有し、且つ、従って、大きな周期性の崩壊を反射表面上に導入しない。従って、このタイプのセルは、周期性の突然の崩壊を伴う領域上におけるスプリアス回折現象によって放射図に導入される干渉を回避している。図1bは、360°の位相回転が得られるようにするいくつかの基本放射要素の1次元の配列を有する周期的なパターンの一例を示している。これは、位相サイクルの同一の端部位相シフトセルを有するという特性を有している。又、可変であり且つ制御された局所的負荷を有する位相シフトセルを使用することにより、漸進的な位相シフトも含まれている。
【0008】
図2は、このような反射器アレイ用の放射位相シフトセルのレイアウトを示している。一実施形態によれば、この位相シフトセルは、2つの直交するブランチを有する十字の形態を有する。この十字は、金属パッチ内に形成された3つの同心環状スロット81、82、及び83を有する。可変であり且つ制御された局所的負荷85が、選択された方式によってスロット内に配設されており、且つ、これらの負荷により、スロットの電気的長さと、従って、位相シフトセルによって反射される波の位相と、を変化させることができる。いくつかのセルにより、環状スロット内の同一の場所に配置された形状及び数が同一であるが異なる状態において構成されたMEMSを有するいくつかの放射要素を使用することによって、漸進的な位相の変動を有するが反射器の表面上における突然の遷移を有していないパターンを形成することができる。例えば、3つの同心環状スロットを有すると共にそれぞれのスロット内に1つのMEMSを有する十字又は六角形の形態のいくつかの放射要素から構成されたパターンにより、すべてのそのMEMSを閉路状態において有する放射要素が得られる時点まで隣接する放射要素の様々なスロットを漸進的に短絡させた後に、すべてのそのMEMSを開路状態において有する放射要素が得られる時点までいくつかの更なる隣接する要素にわたって漸進的にMEMSを開路状態に設定することにより、位相を漸進的に最大で1000°まで変化させることができる。
【0009】
360°を上回ると共にサイクルの同一の初期及び最終位相シフトセルを有する位相サイクルを生成することができるが、ほとんど共振を有していないセルにより、これらの位相状態を得ることは困難である。いくつかの共振器の存在に起因し、多数の共振モードが潜在的に励起される可能性がある。これらの共振モードの出現は、周波数の関数としての位相の突然の変動に結び付く可能性がある。高速の位相変動は、特にオーミックMEMSが使用されている際に、大きな損失を結果的にもたらし、且つ、MEMSの製造のばらつきの影響を結果的に受け易くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、低減された位相の周波数変動によって位相シフトの範囲をカバーできるようにする、換言すれば、入射信号の周波数の関数としての相対的に線形であって相対的に安定した位相の動作を有する可変であり且つ制御された局所的負荷(マイクロスイッチ)を有する位相シフトセルを提供するという点にある。換言すれば、本発明の1つの目的は、セルの共振特性を極小化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の主題は、接地面の上方に、且つ、これから離隔して、基板の表面上に形成された複数の導電要素を有する放射位相シフトセルであって、前記導電要素は、スロットによって分離されており、これらのスロットの配列は、その電気的形状が反射対象の波に印加される位相シフトを構成する等価共振器を形成しており、このセルは、前記スロットの電気的長さ及び/又は幅を変化させることができる制御された可変負荷を有し、導電要素及び制御された可変負荷は、大部分が誘導性である共振器を生成するために、前記負荷の少なくとも第1の構成に従って、マイクロ波信号の表面導体が形成されるように、且つ、大部分が容量性である共振器を生成するために、少なくとも第2の構成に従って、スロットが少なくとも1つの導電要素の周りに形成されるように、構成されており、第1構成において形成された前記導電表面は、第2構成においてその周りにスロットが形成される前記導体要素を取り囲んでいる。
【0012】
スロットの共振の又はマイクロストリップタイプの共振器の管理は、好ましくは、位相サイクルの第1部分において「スロット」タイプの等価な共振を、且つ、好ましくは、位相サイクルの第2部分内において「マイクロストリップ」タイプ(「パッチ」タイプとも呼ばれる)の等価な共振を、励起するように、実行される。位相サイクルの第1部分は、その大部分の動作が誘導性である、換言すれば、その等価共振器が直列LCのものではなく並列LC共振器のものである共振器に対応している。位相サイクルの第2部分は、その大部分の動作が容量性である、換言すれば、その等価共振器が並列LCのものではなく直列LC共振器のものである共振器に対応している。
【0013】
可変であり且つ制御された局所的負荷を有する位相シフトセルの等価共振器は、図1bに示されているものに類似したサイクルを規定することができる。この特性により、例えば、360°を上回る位相サイクルを生成することが可能であり、且つ、位相サイクルの端部値において類似の等価共振器を得ることができる。
【0014】
又、この特性により、位相シフトセルの帯域幅を最適化することもできる。例えば、360°の位相範囲を、事実上、約180°の2つのサブ範囲に分割することができる。この2つのサブ範囲への分割は、スロット又はパッチタイプの共振モードの相補性により、可能となっている。
【0015】
共振の極小化は、損失の低減を結果的にもたらす。位相が線形に変化すればするほど、この特性が得られる帯域の幅が(閾値タイプの動作とは対照的に)広くなる。本発明によるセルに起因し、30%のレベルの帯域幅を得ることができる。
【0016】
本発明による放射位相シフトセルの周期的構成は、アンテナ組立体用の反射器パネルを規定する。更には、この組立体は、本発明による位相シフトセルを有するいくつかの反射器パネルを有してもよい。
【0017】
有利には、前面上の導電表面は、入射信号の波長の4分の1に等しい距離だけ、接地面から離隔している。この結果、スロットモード(第1構成)における共振とマイクロストリップモード(第2構成)における共振を、180°だけ、分離することができる。
【0018】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、第2構成においてその周りにスロットが形成される導電要素は、実質的にセルの中心に位置しており、導電表面を形成する導電要素は、周辺部に位置しており、前記導電表面は、環状であり、前記周辺導体のそれぞれは、制御された容量性負荷により、中央導体に、且つ、隣接する周辺導体に、接続されている。ここで、「環状」とは、閉ループの形態のスロットを意味するものと理解されたい。これは、様々な周辺導電要素の相互接続によって形成される。その形状は、例えば、矩形、円形、六角形、又は任意のその他の多角形形状、或いは、閉じた曲線であってよい。
【0019】
これらの導電要素は、いくつかの列としてアライメントされた4つのブランチを有する十字の形態を有することが可能であり、これらの十字は、互いに対してオフセットされた2つの連続した列に属しており、これらの十字は、制御された可変容量性負荷によって接続されている。導電要素の形状は、例えば、円板の形状内の正方形のパッチ又は領域などのように、異なっていてもよい。十字の形態を有する導電要素の1つの利点は、相対的に容易にそれらを相互接続することができるという点にある。
【0020】
本発明による放射位相シフトセルの別の実施形態によれば、前記の環状導電表面は、環状スロットによって縁どられた導体ストリップによって形成されており、前記のストリップは、前記環状スロットの相互接続スロットの電気的長さ及び/又は幅を変更することができる容量性負荷によって接続されている。
【0021】
換言すれば、セルは、実質的に同心状であると共に相互に離隔している少なくとも2つの第1スロットがその内部に形成された導電表面を有することが可能であり、この導電表面は、接地面の上方に配設されており、これらのスロットの配列は、その電気的形状が入射波に印加される位相シフトを構成する等価共振器を形成しており、セルは、前記の第1スロットを1つに接続している相互接続スロットと、前記第1スロットの及び前記相互接続スロットの電気的長さ及び/又は幅を変化させることができる複数の制御された可変負荷と、を有し、前記負荷は、並列LC回路に実質的に等価な共振器に従ってセルを構成するために起動可能であり、又、前記負荷は、直列LC回路に実質的に等価な共振器に従ってセルを構成するために少なくとも1つのその他の構成に従って起動することも可能である。
【0022】
又、この同一の位相シフトセルは、マイクロストリップタイプの共振器の構成、即ち、金属フレーム、いくつかの地点において切断された中間金属リング、及び中央金属パッチの共振器の構成として見なしてもよい。可変であり且つ制御された局所的負荷―マイクロアクチュエータ、マイクロスイッチ、又は短絡手段とも呼ばれる―によって実行される接続により、等価なマイクロストリップ共振器の電気的長さ及び/又は幅を変更することができる。
【0023】
本発明によるセルの別の実施形態によれば、セルは、2つを上回る数の同心スロットを有する。これは、例えば、3つのスロットを有し、それぞれの連続した同心スロットの間に相互接続スロットを有する。
【0024】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、セルが第1構成にある際には、その主な寄与が並列LC回路のものと等価である共振スロットを形成するように、周辺導電要素を1つに接続している負荷が起動され、中央導電要素を周辺導電要素に接続している負荷が無効にされる。
【0025】
有利には、周辺導電要素を1つに接続している負荷は、等価な共振スロットの寸法を前記値の関数として漸進的に変化させることができるように、2つの端部値の間の複数の値をとるように設計されている。
【0026】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、セルが第2構成にある際には、その主な寄与が直列LC回路のものに等しい共振マイクロストリップを形成するように、周辺導電要素を1つに接続している負荷が無効にされ、中央導電要素を周辺導電要素に接続している負荷が起動される。
【0027】
有利には、中央導電要素を周辺導電要素に接続している負荷は、等価な共振マイクロストリップの寸法を前記値の関数として漸進的に変化させることができるように、2つの端部値の間の複数の値をとるように設計されている。
【0028】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、中央導電要素を周辺導電要素に接続している負荷は、入射波に印加される位相シフト範囲が位相シフトの2つのインターバルに分解されるような方式により、周辺導電要素を1つに接続している負荷の値とは独立的に変化するように設計されており、第1インターバルにおいて印加される位相シフトは、共振スロットタイプの構成によって得られ、第2インターバルにおいて印加される位相シフトは、共振マイクロストリップタイプの構成によって得られる。
【0029】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、可変負荷及び導電要素の寸法は、位相シフト範囲の第1端部に対応した位相シフトを印加できるようにするセルの構成が、この範囲の第2端部に対応した位相シフトを印加できるようにするセルの構成と同一になるように、決定されている。
【0030】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、位相シフトの範囲は、360°である。
【0031】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、導電要素、スロット、及び容量性負荷は、セルの中心に配置された対称の中心に従ってセル上に配設されている。
【0032】
本発明による放射位相シフトセルの一実施形態によれば、容量性負荷は、ダイオード、MEMS、又は強誘電性コンデンサである。
【0033】
本発明の別の主題は、上述したものなどの複数の放射位相シフトセルを有する反射器アレイであり、前記セルは、アレイの反射表面を形成している。
【0034】
本発明の更なる主題は、上述のものなどの反射器アレイを有するアンテナである。
【0035】
非限定的な例として提示されると共に添付図面を参照した以下の説明を参照することにより、本発明について更に十分に理解され、且つ、その他の利点についても明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】位相シフトセルCDの一実施形態を示した図である。
【図1b】360°の位相回転が得られるようにするいくつかの基本放射要素の1次元の配列を有する周期的なパターンの一例を示した図である。
【図2】反射器アレイ用の放射位相シフトセルのレイアウトを示した図である。
【図3】セルの放射プレーンの平面図における本発明による放射位相シフトセル用の可変であり且つ制御された局所的負荷の機械的アーキテクチャ及び配置のレイアウトの一例である。
【図4】360°の位相シフト範囲をカバーする本発明による放射位相シフトセルの1つのサイクルの例であり、この図は、サイクルのそれぞれの位相シフトセルにおける可変であり且つ制御された局所的負荷の機械的アーキテクチャの配列の及び構成の一例を示す。
【図5a】本発明による位相シフトセルが「スロット」共振モードにある際の等価共振器の図である。
【図5b】本発明による位相シフトセルが「マイクロストリップ」共振モードにある際の等価共振器の図である。
【図5c】本発明による位相シフトセルの電気的モデルである。
【図6a】容量性のMEMSを使用する本発明による位相シフトセルである。
【図6b】容量性のMEMSを使用する本発明による位相シフトセルである。
【図7】本発明による位相シフトセルの別の実施形態である。
【図8a】本発明による位相シフトセルを再構成するために使用される可変負荷を制御するための第1のタイプの装置の図である。
【図8b】本発明による位相シフトセルを再構成するために使用される可変負荷を制御するための第2のタイプの装置の図である。
【図9】制御信号を容量性の可変負荷に向かって送付するためにビアが配設されている本発明による位相シフトセルの一実施形態である。
【図10】本発明による放射位相シフトセルの別の実施形態である。
【図11】図10に示されているものなどの同一の位相シフトセルによって連続的に採用された複数の構成である。
【図12】制御信号を図10のものなどの位相シフトセルに向かって送付するための手段の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図3は、本発明による放射位相シフトセル200の一実施形態を示している。セル200は、従来技術の位相シフトセルにおいて説明したものなどの平坦な構造を有しており、図3は、平坦な構造の平面図を示している。通常、平坦な構造は、基板を有し、この基板は、接地面に堅固に装着された背面と、前面と、を有する。基板、誘電層、及び導電層を形成するために使用される材料は、本発明の範囲を限定しない。例えば、上述の従来技術の文献において言及されている材料の名前を挙げることができよう。
【0038】
位相シフトセル200は、好ましくは、矩形の形状を有する。但し、その他の実施形態も可能であり、且つ、非限定的な例として、六角形の形状を有する又は円形の形状を有する表面を挙げることができよう。
【0039】
セルは、少なくとも2つの第1スロットを有しており、第1スロット202と第2スロット203は、同心状である。第1スロット202は、第2スロット203との関係において、外側周辺部に、換言すれば、第2スロット203との関係においてパッチの中心から相対的に大きな距離に、配置されている。位相シフトセル200は、図3に示されているように、2つのスロット202及び203又はこれを上回るものを有することができる。好ましくは、スロット202及び203は、金属フレーム201の形状まで長手方向において延在する形状を有する。従って、パッチの外側周辺部に配置されたスロット202は、内側周辺部のスロット203を取り囲んでいる。位相シフトセルが1つの直線偏波についてのみ機能するように設計される場合には、図7に示されているように、電界がゼロである地点において、金属接合部705により、同心状のスロットを短絡することができる。セルがダブル直線偏波モードにおいて機能するように設計される際には、この可能性は提供されず、その理由は、1つの直線偏波について電界がゼロである同心スロット内の場所においては、もう1つの直交する直線偏波が、その最大値にあるためである。セルの外周201は、「フレーム」という用語でも表記される導電ストリップ208により、外側の同心スロット202から分離されている。
【0040】
スロット202及び203は、少なくとも4つの相互接続スロット204によって接続されている。このスロットの構成は、同心スロット202、203の間の接合領域に配置された金属ストリップ207を規定している。更には、可変であり且つ制御された局所的負荷206が、第1スロット202及び203上の、且つ、更には、相互接続スロット204上の、選択された場所に配設されている。これらは、例えば、短絡を形成できるようにするオン/オフスイッチ、又は可変容量性負荷である。スイッチの目的は、等価「スロット」共振器の又は等価「マイクロストリップ」共振器の電気的長さ及び/又は幅を変更するというものである。
【0041】
本発明によれば、位相シフトセルの様々な可変であり且つ制御された局所的負荷206は、位相シフトセルの等価共振器が、選択された位相シフトを入射波に導入する位相シフトセルとして機能するような方式により、第1スロット202及び203の電気的長さ及び/又は幅を構成するために、制御される。相互接続されたスロット202、203、及び204の電気的長さの変動により、等価なスロット又はパッチ共振器の電気的寸法が変化する。従って、可変であり且つ制御された局所的負荷206に起因し、第1端部値及び第2端部値によって境界が定められた少なくとも360°の位相シフトの範囲をカバーする位相シフトセルを得ることができる。又、有利には、その等価共振器の電気的形状が第1の及び第2の端部値について同一であるセルを得ることもできる。位相シフト範囲の内部において、同一セルの位相シフトの値は、連続的な又は不連続的な方式によって変化することができる。図8a、図8b、及び図9との関連において後述する電子的制御手段は、位相シフトを連続的な又は非連続的な方式によって変化させるような方式により、可変であり且つ制御された局所的負荷を制御することができる。
【0042】
特に、スロットの電気的パラメータを変更するための2つの方法を弁別してもよい。第1のものは、短絡(ON)を形成する2つのスイッチの間に含まれたスロットの部分の長さを変化させるために、スロットに沿ってON/OFFマイクロスイッチを配設するステップを有する。有利には、接地面が、導波対象の波長の4分の1に等しい厚さにより、アンテナの前面から分離されている際に、360°の位相の全体をカバーすることができる。
【0043】
この第1の方法によれば、マイクロスイッチは、等価なセルのサイクルを近似できるようにする進行法に従って起動される。一例が提供されている。図4に示されているサイクルの第1セル401は、すべてのマイクロスイッチが閉路状態(low)にあるというものである。生成される位相シフトは、180°であり、これは、金属被覆されたプレートの応答に対応している。漸進的に、第2セル図402から始まって第5セル図405まで、そのサイズが増大する金属被覆プレート内の開口部と等価な動作を生成するために、セルの中心のマイクロスイッチが開路される。次いで、第6セル図406から始まって、マイクロスイッチは、第1セル図401と同一の構成を有する第9図409に到達する時点まで、増大する中央パッチのものと等価な動作を得るために、中心から漸進的に再度閉路される。このような進行により、このサイクルは、第1及び第2端部値において同一であるマイクロスイッチの構成により、共振周波数周辺の動作の保証を要することなしに、第1端部値及び第2端部値によって境界が定められた値の範囲にわたる位相シフトをカバーしている。
【0044】
このスロットの電気的パラメータを変更する第1の方法は、多数のマイクロスイッチを必要としている。十分な位相シフトの範囲をカバーするために、これらの数を低減すると共にサイクルを最適化することは可能である。但し、マイクロアクチュエータの数を大幅に低減した場合には、このセル内部の更に高次のモードの励起を回避することができなくなる。これらの更に高次のモードは、位相シフトの生成を許容するが、多くの場合に、周波数に伴う更に大きな位相の変動と関連している。又、これらの更に高次のモードは、交差偏波モードにおける放射を誘発することもある。マイクロスイッチは、例えば、MEMSタイプ(Micro Electro−Mechanical Systemの頭文字)、ダイオード、又は可変強誘電性コンデンサからなる再構成可能な局所的負荷である。
【0045】
有利には、2つの直線偏波について同一の位相を生成する位相シフトセルは、回転において変化不能である。この対称性特性は、交差偏波に寄与する更に高次のモードの励起を回避し、且つ、主偏波における位相の安定性を変化させることもできる。一般的に、この対称性の制約を満足させるためには、制御命令当たりに最低でも4つのMEMSを使用しなければならない。
【0046】
有利には、ダブル直線偏波モードにおいて動作すると共に直線偏波のそれぞれにおいて独立した位相を生成する位相シフトセルは、2軸方向の対称性を有する。この特性は、交差偏波に寄与する更に高次のモードが励起されることを防止し、且つ、主偏波における位相の安定性を変化させることもできる。このような特性は、制御命令当たりに且つ偏波当たりに、最低でも2つのMEMSの使用を必要としている。
【0047】
有利には、単純な直線偏波モードにおいて動作するセルは、2軸方向の対称性を有する。この特性は、交差偏波に寄与する更に高次のモードが励起されることを防止し、且つ、主偏波における位相の安定性を変化させることもできる。このような特性は、制御命令当たりに且つ偏波当たりに、最低でも2つのMEMSの使用を必要としている。
【0048】
例えば、MEMSの数を低減する又は同一の数のMEMSにおいて位相状態の数を増大させるという目的の下に、ダウングレードされた実施形態を実現することもできる。即ち、これらの対称性の周辺においてMEMSの場所をわずかに変化させることも可能であり、或いは、対称的な場所に配設されたこれらのMEMSによって形成されるコンデンサの値をわずかに変調させることもできる。
【0049】
スロットタイプの又はパッチタイプの等価共振器を連続的に励起することによって位相サイクルを管理する第2の方法は、スロットの容量性負荷の印加状態を変化させるステップを有する。スロットには、例えば、その中心において、コンデンサによって負荷が印加される。このスロットの容量性負荷の印加により、スロット内の位相速度を変化させることが可能であり、且つ、従って、それらの共振周波数を変化させることができる。容量の変動は、いくつかのデジタルコンデンサによって実行することができる。この概念は、分散容量性負荷伝送路又はDMTL(Distributed MEMS Transmission Line)から導出される。
【0050】
以下、進行の一例を図6a及び図6bとの関連において提示する。図6aに示されている位相サイクルの第1部分においては、相互接続スロットには負荷が印加されていない。一方、同心スロットの容量性負荷が変化する。位相シフトセルは、その電気的長さ及び幅パラメータが変化するスロットと同一の方式によって動作する。図6bに示されているサイクルの第2部分においては、同心スロットは、非共振状態にある。相互接続スロットの容量性負荷が変化し、これにより、中間マイクロストリップリングの4つのストリップ片207(図3を参照されたい)が接続される。位相シフトセルは、その電気的長さ及び幅パラメータが変化するマイクロストリップ共振器と同一の方式によって機能する。
【0051】
スロットを短絡させるために可変容量性負荷が利用されるケースにおいては、これらの負荷は、コンデンサと直列状態にあるマイクロスイッチによって形成することができる。スロット共振の変更を許容する負荷コンデンサの通常の値は、10GHz周辺の動作の場合に、20〜200fFである。但し、可変コンデンサは、常に容易に形成されるわけではなく、従って、容量をデジタル増分で変化させることもできる。この場合には、負荷は、1つのスイッチに対して並列に接続されたいくつかのコンデンサから構成されることになる。
【0052】
図4に示されているように、360°の位相シフト範囲は、任意選択により、同一の等価共振器によって開始及び終了している。従って、本発明によるセルは、等価共振器の形状を閉じることにより、360°の範囲をカバーすることができる。従って、反射表面をいくつかの周期的なパターンから構成することが可能であり、1つのパターンは、2つの隣接するセルの等価共振器の形状における大きな裂け目を回避するために、隣接した位相シフトをそれぞれが構成するいくつかの隣接した位相シフトセルから構成される。これにより、反射表面によって反射ビーム内に形成されるスプリアスローブが低減される。等価共振器の電気的寸法は、スロット202及び203の電気的長さ及び/又は電気的幅によって左右される。反射表面のセルの局所的な可変負荷の制御のために設計された演算及び制御手段により、望ましい位相シフトを構成することができる。別の実施形態によれば、等価共振器は、閉ループの形態を有してはおらず、換言すれば、360°の位相シフト範囲は、2つの異なる構成によって開始及び終了することができる。
【0053】
第1のサブ範囲においては、スロットタイプの共振が励起され、その等価なレイアウトが図5aに示されている。この第1サブ範囲においては、位相シフトセルは、並列LC回路501として、入射波との関係において動作する。
【0054】
第2のサブ範囲においては、マイクロストリップタイプの共振が励起され、その等価なレイアウトが図5bに示されている。この第2サブ範囲においては、位相シフトセルは、直列LC回路502として、入射波との関係において動作する。前面上の導電表面から分離された接地面は、伝送ライン504によって表すことができる。
【0055】
要すれば、ダブル共振を伴う位相シフトセルは、直列に配置された2つの並列LC回路503、505と等価である。誘導性及び容量性パラメータの値に応じて、セルは、図5aに、並びに、図4の構成402、403、404、405に、示されているように、「スロット」モードに、或いは、図5bに、並びに、構成406、407、408、409、401に、示されているように、「パッチ」モードに、配置することができる。
【0056】
本発明による位相シフトセルは、(スロットタイプの又はマイクロストリップタイプの)単一の共振に基づいて、従来技術の位相シフトセルとの関係において、大きな利点を提供する。実際に、従来技術のセルの場合には、360°の可動域は、共振器の電気的長さ及び幅パラメータを変更することによってしか、実行することができない。この制約は、高共振性の動作に結び付く。低減された範囲にわたって動作する相補的なスロット及びマイクロストリップ共振にセルが基づいているという事実を使用することにより、共振の制約が大幅に低減され、且つ、従って、位相シフトセルの帯域幅を大幅に広げることができる。
【0057】
図5cは、本発明による位相シフトセルの等価レイアウトを示している。これは、セルの再構成可能な負荷の構成に応じて、図5aに示されている「スロット」構成に近い動作を、或いは、図5bに示されている「マイクロストリップ」構成に近い動作を採用することができる。
【0058】
図6a及び図6bは、容量性のMEMSを使用する本発明による位相シフトセルを示している。図6aは、相互接続スロット640に軽い負荷が印加され、且つ、スロット650の容量性負荷が変化するケースを示している。このような構成のセルは、その電気的長さ及び幅が変化するスロットタイプの共振器と等価である。図6bは、相互接続スロット640に容量的な観点において負荷が印加され、且つ、これらのスロットの容量性負荷が変化するケースを示している。このような構成のセルは、その電気的長さ及び幅が変化する「マイクロストリップ」共振器と等価である。
【0059】
図7の実施形態によれば、放射位相シフトセル700は、4つの第1スロット702及び703と、4つの第2スロット704と、を有する矩形の形状を有する。2つの第2スロット704によって相互接続された2つの第1スロット702及び703は、導電表面708の第1の半分内に位置している。その他の2つの第2スロット704によって相互接続されたその他の2つの第1スロット702及び703は、このパッチの導電表面の第2の半分内に位置している。第1スロット702及び703は、有利には中間金属ストリップ707の幅と同一のレベルになるように選択された物理的な幅を有する。但し、その他の実施形態によれば、スロット702及び703の並びに中間金属ストリップ707の幅は、異なっていてもよい。
【0060】
図7の位相シフトセル700は、直線偏波された入射波の反射に対して特に良好に適合されている。導電層の一部分705が、パッチの下半分の第1スロット702及び703から上半分の第1スロット702及び703を分離している。
【0061】
位相シフトセル上に配設されたマイクロスイッチに対する制御信号の送付も問題を生成する。この送付が反射器アレイからの放射を妨げてはならない。有利には、本発明は、この問題の解決策に対する回答を提供している。
【0062】
図8に示されるように、送付の制約を限定するために、分散制御アーキテクチャが提供される。制御情報は、例えば、アンテナパネルの背面810上において制御された可変負荷に対して近接配置された専用の集積回路(ASIC)801に対してデジタル的に伝送される。この回路は、受信した情報を、それぞれの制御された負荷に対して適合された制御信号に変換する。従って、1つの問題点は、放射セルの電磁的動作を妨げることなしに、これらの制御信号を背面から反射器アレイの前面820上に位置するそれぞれの負荷に対して送付するステップにある。
【0063】
図8aに示されている第1の実施形態においては、パネルは、セル及びMEMSの金属パターンを有する高周波(RF)チップがその前面に取り付けられる多層誘電基板から構成されている。この場合に、これらのRFチップは、モノリシックチップと呼ばれ、且つ、例えば、石英、溶解したシリカ、又はアルミナから製造される。例えば、RO4003から製造された誘電基板は、RFチップ803と接地面の間のスペーサの機能を実行し、且つ、基板の背面上に取り付けられたDCチップへの制御信号の貫通接続を可能にする。この結果、前面上における制御信号の送付がRFチップ内において実行される。抵抗性のラインを、これらのラインがスロットと遭遇する場所において、少なくとも複数の部分内に、形成するために、マイクロエレクトロニクス加工を使用することができる。
【0064】
図8bに示されている第2の実施形態においては、パネルは、セルの金属パターン851がその上部にエッチングされると共にMEMSコンポーネント853がその上部に取り付けられる多層誘電基板から構成されており、従って、これは、ハイブリッド設計である。
【0065】
図9に示されているように、セルの動作を基本的に変更することなしに、セルの周辺部に(フレーム908内に)又はその中心に、制御ビア901を配設することができる。更には、この周辺部における金属貫通ビアの周期的な配置は、フレーム908と接地面を接続する周辺部の金属壁と同一の効果を有することができよう。この結果、制御信号を背面から前面に送付するために、これらのビアのうちのいくつかを使用することができよう。又、その電気的動作を大幅に変更することなしに、金属貫通ビアを通じて、セル903の中央パッチを接地面に接続することもできる。従って、この場所に制御ビア902を設置することもできる。このビアを制御のために使用する際には、電気的短絡のリスクを回避するために、このビアをパターンから絶縁しなければならない。
【0066】
次いで、1つの問題点は、位相シフトセルの動作を変更することなしに、この制御信号を前面上において送付するステップにある。高抵抗のライン(通常は、10kΩ/□)の形成が技術的に許容される場合には、特段の事前の対策なしに、制御命令をMEMSに送付することができる。例えば、制御トラックは、共振スロットを、それらの動作を変更することなしに、通過することができる。但し、ラインの合計インピーダンスが過大にならないように、これらの抵抗性ラインを適度にのみ使用することも推奨されよう。これには、例えば、診断装置を使用することによってマイクロスイッチが正しく起動されたかどうかの検証が可能である場合が当て嵌まる。この場合には、制御ラインは、スロットを通過するところに対応する部分に抵抗性を有することができよう。
【0067】
図10は、本発明による放射位相シフトセルの別の実施形態を示している。このセルは、例えば、誘電基板上に印刷されたパターンの形態の複数の導電要素1001、1002を有する。セルは、中央導電要素1001と、この第1の導電要素1001の周りに配置された4つの周辺導電要素1002と、を有し、4つの周辺導電要素1002の中心は、その中心に中央導電要素1001が配置された正方形を形成している。相互接続導電要素1004が導電要素1001、1002のそれぞれの間に挿入されている。
【0068】
導電要素1001、1002は、可変であり且つ制御された容量性負荷1006を介して相互接続導電要素1004と接続されている。
【0069】
その低減された寸法に起因し、導電要素1001は、それ自身では、共振モードの生成を許容しない。このようなモードの確立を許容することになるのは、これらの導電要素の相互接続である。
【0070】
この例においては、それぞれの導電要素は、アライメントされた導電要素ごとに、2つの隣接する十字に属する十字のブランチの端部が、相互に近接し、且つ、相互接続導電要素1004によって容易に接続可能となるように、4つの直交するブランチを有する十字の形態のパターンを有する。
【0071】
可変であり且つ制御された容量性負荷1005は、相互接続導電要素1004と導電要素1001、1002を形成する十字のブランチの端部の間の接合点に配設されている。
【0072】
図11は、図10に示されているものなどの同一の位相シフトセルによって連続的に採用された複数の構成を示している。
【0073】
第1構成1101においては、セルは、フル金属パッチとして動作する。すべての導電要素が容量性負荷を介して接続されている。この第1構成1101は、例えば、約180度の位相シフトを入射波に印加するために使用することができる。
【0074】
第2構成1102においては、中央容量性負荷1110―この例においては、中央導電要素と相互接続導電要素の間の接合点に配置されているもの―は、セルが接地面内の開口部として、換言すれば、環状スロット1150として、動作するように、低減されており、セルは、誘導性の動作を有する。この第2構成1102は、180°から離れるように漸進的に移動して、例えば、中央コンデンサの負荷が完全に除去された際に約80°に到達する位相シフトに対応することができる。
【0075】
第3構成1103においては、周辺の容量性負荷1120―換言すれば、この例においては、周辺導電要素と相互接続導電要素の間の結合点に配置されたもの―は、放射セルの容量性の動作を優先して、誘導性の動作が減衰するように、低減されている。この第3構成1103は、80°(第2構成1102)と周辺コンデンサの負荷が完全に除去された際の−20°の間の範囲における位相シフトの変動に対応することができる。
【0076】
第4構成1104においては、周辺の容量性負荷が除去された状態に留まっているのに対して、中央の容量性負荷1110が増大されている。この第4構成1104においては、セルは、容量性の動作を有する。この第4構成1104は、−20°と−50°の間の範囲の位相シフトの変動に対応することができる。
【0077】
第5構成1105においては、中央の容量性負荷は、第1構成1101の状態に到達する時点まで増大され、そこで、この構成は、この例においては、−50°と−180°の間において入射信号に対して印加される位相シフトに対応することができる。セルは、フル金属パッチに対応したその初期状態に戻る。
【0078】
図12は、図10のものなどの位相シフトセルに向かって制御信号を送付するための手段を示している。
【0079】
ビア1210が、導電要素を形成する十字の中心に形成されている。制御命令の送付は、セルの表面のレベル未満のレベルにおいて実行することができる。
【0080】
本発明による位相シフトセルは、従来技術の解決策との関係において、いくつかの利点を提供する。
【0081】
第1の利点は、この位相シフトセルは、スロットタイプの等価共振器による第1共振と、パッチタイプの等価共振器による第2共振と、という2つの相補的な共振を有することができるという点にある。この結果、高共振性のモードの存在を回避することが可能であり、且つ、従って、セルが周波数の変動の影響を受ける程度を制限することができる。従って、位相値は、ソース信号の周波数の関数として格段に線形状態において変化し、これにより、位相の突然のジャンプが回避される。本発明による位相シフトセルは、相対的に広い周波数帯域(例えば、帯域の30%)にわたって使用することができる。
【0082】
第2の利点は、反射器アレイを形成する2つの隣接するセルの間に顕著な裂け目が存在しないという事実に起因した仏国特許出願第0450575号明細書に記述されているものなどの反射器アレイのスプリアス効果の低減である。これは、位相の周波数変動の極小化を許容する局所的可変負荷の制御サイクルによる360°の位相シフト範囲のカバーの可能性に起因し、可能である。
【0083】
本発明により、本発明による放射位相シフトセルによってその表面がカバーされたアンテナ用の反射器アレイを設計することができる。これは、選択された位相シフトを入射波に導入するように制御され、隣接するセルのそれぞれは、等価共振器が隣接するセルのものに近接した構成となるような方式によって制御される。本発明は、例えば、通信衛星のアンテナなどの移動可能な宇宙船に搭載された反射器アレイを有するアンテナに対して特に適用可能である。
【0084】
このセルは、Ku帯域において、又はKa帯域において、送信及び受信の両方に、使用されるように設計された衛星パネル内において使用することができる。一例として、本発明による位相シフトセルは、送信用には、20GHz周辺において、且つ、受信用には、30GHz周辺において、利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
200 放射位相シフトセル
201 金属フレーム
202 第1スロット
203 第2スロット
204 相互接続スロット
206 局所的負荷
640 相互接続スロット
650 スロット
702、703 第1スロット
704 第2スロット
708 導電表面
810 背面
820 前面
1001 中央導電要素
1002 周辺導電要素
1004 相互接続導電要素
1005 容量性負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面の上方及びこれから離隔して、基板の表面上に形成された複数の導電要素を有する放射位相シフトセルであって、前記導電要素は、スロットによって分離され、前記スロットの配列は、その電気的形状が反射対象の波に印加される位相シフトを構成する等価共振器を形成しており、前記セルは、前記スロットの電気的長さ及び/又は幅を変化させることができる制御された可変負荷を有し、前記導電要素及び前記制御された可変負荷は、大部分が誘導性である共振器を生成するために、少なくとも前記負荷の第1構成に従って、マイクロ波信号の表面導体が形成されように、且つ、大部分が容量性である共振器を生成するために、少なくとも第2構成に従って、スロットが少なくとも1つの中央導電要素の周りに形成されるように、構成されており、前記導電表面は、前記中央導電要素を取り囲む複数の導電要素によって形成される、放射位相シフトセル。
【請求項2】
前記導電表面を形成する前記導電要素は、周辺部上に位置し、前記周辺導体のそれぞれは、制御された容量性負荷により、前記中央導体に、且つ、前記隣接する周辺導体に、接続される請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項3】
前記導電要素は、いくつかの列としてアライメントされた4つのブランチを有する十字の形態を有し、前記十字は、互いに対してオフセットされた2つの連続した列に属しており、前記十字は、制御された可変容量性負荷によって接続される請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項4】
前記導電表面は、環状スロットによって取り囲まれた導電ストリップによって形成され、前記ストリップは、前記環状スロットの相互接続スロットの電気的長さ及び/又は幅を変更することができる容量性負荷によって接続される請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項5】
前記セルが第1構成にある際には、その主な寄与が並列LC回路のものと等価である共振スロットを形成するように、前記周辺導電要素を1つに接続している前記負荷が起動され、前記中央導電要素を前記周辺導電要素に接続している前記負荷が無効にされる請求項2に記載の放射位相シフトセル。
【請求項6】
前記周辺導電要素を1つに接続している前記負荷は、前記等価共振スロットの寸法を前記値の関数として漸進的に変化させることができるように、2つの端部値の間の複数の値をとるように設計されている請求項5に記載の放射位相シフトセル。
【請求項7】
前記セルが前記第2構成にある際には、その主な寄与が直列LC回路のものに等価である共振マイクロストリップを形成するように、前記周辺導電要素を1つに接続している前記負荷が無効にされ、前記中央導電要素を前記周辺導電要素に接続している前記負荷が起動される請求項2に記載の放射位相シフトセル。
【請求項8】
前記中央導電要素を前記周辺導電要素に接続している前記負荷は、前記等価共振マイクロストリップの寸法を前記値の関数として漸進的に変化させることができるように、2つの端部値の間の複数の値をとるように設計されている請求項7に記載の放射位相シフトセル。
【請求項9】
前記中央導電要素を前記周辺導電要素に接続している前記負荷は、前記入射波に印加される前記位相シフト範囲が位相シフトの2つのインターバルに分解されるような方式により、前記周辺導電要素を1つに接続している前記負荷の値とは独立的に変化するように設計されており、前記第1インターバル内において印加される前記位相シフトは、前記共振スロットタイプの構成によって得られ、前記第2インターバルにおいて印加される前記位相シフトは、前記共振マイクロストリップタイプの構成によって得られる請求項1に記載の位相シフトセル。
【請求項10】
前記可変負荷及び前記導電要素の前記寸法は、対応する位相シフトを前記位相シフト範囲の第1端部に適用できるようにする前記セルの構成が、対応する位相シフトを前記範囲の第2端部に適用できるようにする前記セルの構成と同一になるように、決定される請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項11】
前記位相シフト範囲は、360°である請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項12】
前記導電要素、前記スロット、及び前記容量性負荷は、前記セルの中心に配置された対称の中心に従って前記セル上に配設される請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項13】
前記容量性負荷は、ダイオード、MEMS、又は強誘電性コンデンサである請求項1に記載の放射位相シフトセル。
【請求項14】
請求項1に記載の複数の放射位相シフトセルを有する反射器アレイであって、前記セルは、前記アレイの反射表面を形成する、反射器アレイ。
【請求項15】
請求項14に記載の反射器アレイを有するアンテナ。

【図1】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−62802(P2013−62802A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201096(P2012−201096)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】