説明

相関演算装置、相関演算方法、焦点検出装置および撮像装置

【課題】偏位量を求めるべき2つのデータ列間において、3点内挿法に用いる相関量を算出するために用いられるデータの端部に大きな変動がある場合においても、2つのデータ列間の偏位量を高精度に求める。
【解決手段】基本データ列{A(i)}および偏位データ列{B(i+k)}の間の相関量D(k)の極大値を与えるkがk=2である場合であって、基本データ列{A(i)}における整数iの範囲がi=4〜8であるとする。3点内挿法に用いる相関量D(k−1)、D(k+1)の算出の際に、極大を示す相関量D(k)の算出に用いた偏位データB(6)〜B(10)以外の偏位データB(5)、B(11)を除外して算出する。こうした3点内挿法により、特に大きな変動を有する偏位データB(11)の影響を受けずに、高精度かつ安定的に、極大相関量に対する偏位量を算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのデータ列間の相関量を用いて、2つのデータ間の相対的な偏位量を演算する相関装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂瞳分割型位相差検出方式の焦点検出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この焦点検出装置では、撮影光学系の瞳の一対の領域を通過する一対の焦点検出光束を一対の焦点検出画素列で受光し、該一対の焦点検出画素列から出力される一対の焦点検出画素データ列に対して相関演算を施す。該相関演算の結果に応じて前記一対の焦点検出画素データ列間の相対的なズレ量(偏位量)を求め、該ズレ量に基づき撮影レンズの焦点状態を検出している。
【0003】
特許文献1において、偏位量算出は、特許文献1の「0068」から「0069」に記載されているように行われる。すなわち、所定のデータサンプリングピッチでサンプリングされた一対のデータ列をe(i)、f(i)(ただしi=1〜m)とした場合、一対のデータ列の相対的な偏位量がL(Lはデータサンプリングピッチを単位とした整数)の場合の相関量C(L)をC(L)=Σ|e(i+L)−f(i)|として演算する。ただしΣ演算を行うパラメータiの範囲はp〜q(1≦p<q≦m)である。さらに相関量が極大となる偏位量kjとその前後の偏位量kj−1、kj+1における3点の相関量C(kj−1)、C(kj)、C(kj+1)を用い、3点内挿の手法によりデータサンプリングピッチ以下の精度で相関量が極大になる偏位量xを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−233032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の焦点検出装置においては、像の中央部が低コントラストで端部が高コントラストの場合には、3点内挿法で求めた偏位量の精度が悪化するという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1に記載の相関演算装置は、所定のデータピッチで配列された第1及び第2のデータ列からそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、第1の所定範囲に対して第2の所定範囲を、所定のデータピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、偏位量を順次変更する偏位手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、相関量算出手段が算出した相関量の中で極大を示す極大相関量と、極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を個別相関度算出手段及び相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、極大相関量と第1及び第2の相関量とに基づき、第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を所定のデータピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段とを備え、個別相関度算出手段は、第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、第2及び第3の偏位量における第2の所定範囲の端部のデータのうち、第1の偏位量における第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする。
(2)請求項4に記載の相関演算方法は、所定のデータピッチで配列された第1及び第2のデータ列からそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングし、第1の所定範囲に対して第2の所定範囲を、所定のデータピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、偏位量を順次変更し、偏位量の変更毎に、第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出すると共に、個別相関度を積算して相関量を算出し、相関量の中で極大を示す極大相関量と、極大相関量を与える第1の偏位量とを求め、第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を再算出して第1及び第2の相関量を得、第2及び第3の偏位量における第2の所定範囲の端部のデータのうち、第1の偏位量における第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、第2及び第3の偏位量における個別相関度を再算出すると共に、再算出した個別相関度を積算して第2及び第3の偏位量における第1及び第2の相関量を再算出し、極大相関量と再算出した第1及び第2の相関量とに基づき、第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を所定のデータピッチよりも小さな単位で内挿して求めることを特徴とする。
(3)請求項5に記載の焦点検出装置は、光学系を透過して一対の像を形成する一対の光束を受光し、一対の像に応じた一対の焦点検出信号データ列を出力する複数の焦点検出画素が所定の画素ピッチで配列された受光手段と、一対の焦点検出信号データ列の互いに対応するデータからそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、第1の所定範囲に対して第2の所定範囲を、所定の画素ピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、偏位量を順次変更する偏位手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、相関量算出手段が算出した相関量の中で極大を示す極大相関量と、極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を個別相関度算出手段及び相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、極大相関量と第1及び第2の相関量とに基づき、第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を所定の画素ピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段と、相対的な偏位量に応じて光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段とを備え、個別相関度算出手段は、第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、第2及び第3の偏位量における第2の所定範囲の端部のデータのうち、第1の偏位量における第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする。
(4)請求項6に記載の撮像装置は、撮影光学系と、撮影光学系を透過して被写体像を形成する撮影用の光束を受光し、被写体像に応じた撮像信号データを出力する複数の撮像画素と、撮影光学系を透過して一対の像を形成する一対の焦点検出用の光束を受光し、一対の像に応じた一対の焦点検出信号データ列を出力する複数の焦点検出画素とが所定の画素ピッチで配列された受光手段と、一対の焦点検出信号データ列の互いに対応するデータからそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、第1の所定範囲に対して第2の所定範囲を、所定の画素ピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、偏位量を順次変更する偏位手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、偏位手段による偏位量の変更毎に、個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、相関量算出手段が算出した相関量の中で極大を示す極大相関量と、極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を個別相関度算出手段及び相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、極大相関量と第1及び第2の相関量とに基づき、第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を所定の画素ピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段と、相対的な偏位量に応じて撮影光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段とを備え、個別相関度算出手段は、第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、第2及び第3の偏位量における第2の所定範囲の端部のデータのうち、第1の偏位量における第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、偏位量を求めるべき2つのデータ列間において、3点内挿法に用いる相関量を算出するために用いられるデータの端部に大きな変動がある場合においても、2つのデータ列間の偏位量を高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施の形態のディジタルスチルカメラの構成を示す図である。
【図2】交換レンズの予定結像面に設定した撮像画面上の焦点検出領域を示す図である。
【図3】撮像素子の詳細な構成を示す正面図である。
【図4】瞳分割方式による焦点検出方法を説明する図である。
【図5】一実施の形態のディジタルスチルカメラ(撮像装置)の撮像動作を示すフローチャートである。
【図6】焦点検出動作の詳細を示すフローチャートである。
【図7】一対のデータ列の間の相対的な偏位量をデータサンプリングピッチ単位の精度で算出する処理を説明するための図である。
【図8】焦点検出演算(相関演算)を説明するための図である。
【図9】基準データ列および偏位データ列の例を示す図である。
【図10】3点内挿法に用いる3点の相関量D(k−1)、D(k)、D(k+1)の算出の概念図である。
【図11】焦点検出演算(相関演算)を説明するための図である。
【図12】シミュレーションにより確認した本発明の効果を説明するための図である。
【図13】シミュレーションにより確認した本発明の効果を説明するための図である。
【図14】シミュレーションにより確認した本発明の効果を説明するための図である。
【図15】ひとつの画素内にひとつの光電変換部を備えた2種類の焦点検出画素を交互に一列に配置した他の変形例の撮像素子を示す図である。
【図16】撮像画素のベイヤー配列と補色配列を示す図である。
【図17】本願発明の実施の形態による相関演算方法を適用した外光三角測距方式の距離測定について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明を撮像装置としてのディジタルスチルカメラに適用した一実施の形態を説明する。図1は一実施の形態のディジタルスチルカメラの構成を示す図である。一実施の形態のディジタルスチルカメラ201は交換レンズ202とカメラボディ203とから構成され、交換レンズ202はカメラボディ203のマウント部204に装着される。
【0010】
交換レンズ202はレンズ205〜207、絞り208、レンズ駆動制御装置209などを備えている。なお、レンズ206はズーミング用、レンズ207はフォーカシング用である。レンズ駆動制御装置209はCPUとその周辺部品を備え、フォーカシング用レンズ207と絞り208の駆動制御、ズーミング用レンズ206、フォーカシング用レンズ207および絞り208の位置検出、カメラボディ203の制御装置との通信によるレンズ情報の送信とカメラ情報の受信などを行う。
【0011】
一方、カメラボディ203は撮像素子211、カメラ駆動制御装置212、メモリカード213、LCDドライバー214、LCD215、接眼レンズ216などを備えている。撮像素子211は交換レンズ202の予定結像面(予定焦点面)に配置され、交換レンズ202により結像された被写体像を撮像して画像信号を出力する。撮像素子211には撮像用画素(以下、単に撮像画素という)が二次元状に配置されており、その内の焦点検出位置に対応した部分には撮像画素に代えて焦点検出用画素(以下、単に焦点検出画素という)列が組み込まれている。
【0012】
カメラ駆動制御装置212はCPUとメモリなどの周辺部品を備え、撮像素子211の駆動制御、撮像画像の処理、交換レンズ202の焦点検出および焦点調節、絞り208の制御、LCD215の表示制御、レンズ駆動制御装置209との通信、カメラ全体のシーケンス制御などを行う。なお、カメラ駆動制御装置212は、マウント部204に設けられた電気接点217を介してレンズ駆動制御装置209と通信を行う。
【0013】
メモリカード213は撮像画像を記憶する画像ストレージである。LCD215は液晶ビューファインダー(EVF:電子ビューファインダー)の表示器として用いられ、撮影者は接眼レンズ216を介してLCD215に表示された撮像画像を視認することができる。
【0014】
交換レンズ202を通過して撮像素子211上に結像された被写体像は撮像素子211により光電変換され、画像出力がカメラ駆動制御装置212へ送られる。カメラ駆動制御装置212は、焦点検出画素の出力に基づいて焦点検出位置におけるデフォーカス量を演算し、このデフォーカス量をレンズ駆動制御装置209へ送る。また、カメラ駆動制御装置212は、撮像画素の出力に基づいて生成した画像信号をLCDドライバー214へ送り、LCD215に表示するとともに、メモリカード213に記憶する。
【0015】
レンズ駆動制御装置209は、ズーミングレンズ206、フォーカシングレンズ207および絞り208の位置を検出し、検出位置に基づいてレンズ情報を演算するか、あるいは予め用意されたルックアップテーブルから検出位置に応じたレンズ情報を選択し、カメラ駆動制御装置212へ送る。また、レンズ駆動制御装置209は、カメラ駆動制御装置212から受信したデフォーカス量に基づいてレンズ駆動量を演算し、レンズ駆動量に基づいてフォーカシング用レンズ207を駆動制御する。
【0016】
図2は、交換レンズ202の予定結像面に設定した撮像画面G上の焦点検出領域を示す。撮像画面G上にG1〜G5の焦点検出領域を設定し、撮像素子211の焦点検出画素を撮像画面G上の各焦点検出領域G1〜G5の長手方向に直線状に配列する。つまり、撮像素子211上の焦点検出画素列は、撮影画面G上に結像された被写体像の内の焦点検出領域G1〜G5の像をサンプリングする。撮影者は撮影構図に応じて焦点検出領域G1〜G5の中から任意の焦点検出領域を手動で選択する。
【0017】
図3は撮像素子211の詳細な構成を示す正面図である。なお、図3は撮像素子211上のひとつの焦点検出領域の周囲を拡大した部分拡大図である。撮像素子211は撮像画素310と焦点検出用の焦点検出画素311から構成される。
【0018】
撮像画素310はマイクロレンズ10、光電変換部11、不図示の色フィルターから構成される。焦点検出画素311はマイクロレンズ10、一対の光電変換部12,13から構成される。撮像画素310の光電変換部11は、マイクロレンズ10によって明るい交換レンズの射出瞳(たとえばF1.0)を通過する光束をすべて受光するような形状に設計される。一方、焦点検出画素311の一対の光電変換部12、13は、マイクロレンズ10によって交換レンズの特定の射出瞳(たとえばF2.8)を通過する光束をすべて受光するような形状に設計される。
【0019】
撮像画素310において、撮像用の光電変換部11の前方にマイクロレンズ10が配置され、マイクロレンズ10により光電変換部11が前方に投影される。光電変換部11は半導体回路基板上に形成され、色フィルターはマイクロレンズ10と光電変換部11の中間に配置される。
【0020】
2次元状に配置された撮像画素310には赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色フィルターが備えられ、各色フィルターはそれぞれの色に対応する分光感度特性を有している。RGBの色フィルターを備えた撮像画素310は、図3に示すようにベイヤー配列される。
【0021】
一方、焦点検出画素311には、光量をかせぐために色フィルターは設けられておらず、その分光感度特性は光電変換を行うフォトダイオードの分光感度と、赤外カットフィルター(不図示)の分光感度とを総合した分光感度特性を有している。焦点検出画素311の分光感度は、撮像画素310の内の緑画素G、赤画素R、青画素Bの分光感度を加算したような分光感度特性となり、その感度の光波長領域は緑画素G、赤画素R、青画素Bの感度の光波長領域を包含している。
【0022】
焦点検出画素311は、図2に示す焦点検出領域G1〜G5の撮像画素310のBフィルターとGフィルターが配置されるべき行または列に、直線状に隙間なしに密に配置される。焦点検出画素311を撮像画素310のBフィルターとGフィルターが配置されるべき行または列に配置することによって、画素補間により焦点検出画素311の位置の画素信号を算出する場合に、多少誤差が生じても人間の眼には目立たなくすることができる。この理由は、人間の目は青より赤に敏感であることと、緑画素の密度が青画素と赤画素より高いので、緑画素の1画素の欠陥に対する画像劣化への寄与が小さいためである。
【0023】
なお、上述した補色フィルターの撮像画素を二次元状に展開した撮像素子では、出力誤差が比較的目立たない青成分を含むシアンとマゼンダが配置されるべき画素位置に焦点検出画素311を配置する。
【0024】
焦点検出画素311において、焦点検出用の光電変換部12,13の前方にマイクロレンズ10が配置され、マイクロレンズ10により光電変換部12,13が前方に投影される。光電変換部12,13は半導体回路基板上に形成される。
【0025】
次に、図4により瞳分割方式による焦点検出方法を説明する。図4において、交換レンズ202の光軸91上に配置される焦点検出画素311のマイクロレンズ50と、そのマイクロレンズ50の後方に配置される一対の光電変換部52,53、および交換レンズ202の光軸91外に配置される焦点検出画素311のマイクロレンズ60と、そのマイクロレンズ60の後方に配置される一対の光電変換部62,63を例にあげて説明する。交換レンズ202の予定結像面に配置したマイクロレンズ50、60の前方の距離d4の位置に、交換レンズ202の射出瞳90を設定する。ここで、距離d4は、マイクロレンズ50、60の曲率、屈折率、マイクロレンズ50、60と光電変換部52,53、62,63との間の距離などに応じて決まる値であって、この明細書では測距瞳距離と呼ぶ。
【0026】
マイクロレンズ50、60は交換レンズ202の予定結像面に配置されており、光軸91上のマイクロレンズ50によって一対の光電変換部52,53の形状がマイクロレンズ50から投影距離d4だけ離間した射出瞳90上に投影され、その投影形状は測距瞳92,93を形成する。一方、光軸91外のマイクロレンズ60によって一対の光電変換部62,63の形状が投影距離d4だけ離間した射出瞳90上に投影され、その投影形状は測距瞳92,93を形成する。すなわち、投影距離d4にある射出瞳90上で各焦点検出画素の光電変換部の投影形状(測距瞳92,93)が一致するように、各画素の投影方向が決定される。
【0027】
光電変換部52は、測距瞳92を通過しマイクロレンズ50へ向う焦点検出光束72によってマイクロレンズ50上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。光電変換部53は、測距瞳93を通過しマイクロレンズ50へ向う焦点検出光束73によってマイクロレンズ50上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。光電変換部62は、測距瞳92を通過しマイクロレンズ60へ向う焦点検出光束82によってマイクロレンズ60上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。光電変換部63は、測距瞳93を通過しマイクロレンズ60へ向う焦点検出光束83によってマイクロレンズ60上に形成される像の強度に対応した信号を出力する。なお、焦点検出画素311の配列方向は一対の瞳距離の分割方向と一致させる。
【0028】
このような焦点検出画素を直線状に多数配列し、各画素の一対の光電変換部の出力を測距瞳92と測距瞳93に対応した出力グループにまとめることによって、一対の測距瞳92と93を各々通過する焦点検出光束が焦点検出画素列上に形成する一対の像の強度分布に関する情報を得ることができる。さらに、この情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割方式で一対の像の像ズレ量を検出することができる。そして、この像ズレ量に所定の変換係数を乗ずることによって、予定結像面に対する現在の結像面(予定結像面上のマイクロレンズアレイの位置に対応した焦点検出位置における結像面)の偏差(デフォーカス量)を算出することができる。
【0029】
なお、図4では、光軸91上にある第一焦点検出画素(マイクロレンズ50と一対の光電変換部52,53)と隣接する第一焦点検出画素(マイクロレンズ60と一対の光電変換部62,63)を模式的に例示したが、その他の焦点検出画素においても同様に、一対の光電変換部がそれぞれ一対の測距瞳から各マイクロレンズに到来する光束を受光する。
【0030】
《撮像動作》
図5は、一実施の形態のディジタルスチルカメラ(撮像装置)210の撮像動作を示すフローチャートである。カメラ駆動制御装置212は、ステップS100でカメラの電源が投入されるとこの撮像動作を繰り返し実行する。ステップS110において撮像素子211から撮像画素310のデータを間引き読み出しし、電子ビューファインダーLCD215に表示させる。撮像画素310のデータを間引き読み出しする際には、焦点検出画素311がなるべく含まれないような設定で間引き読み出しをすることによって、表示品質を向上させることができる。逆に、焦点検出画素311を含むように間引き読み出しを行い、電子ビューファインダーLCD215上に焦点検出画素出力を補正せずに表示させることによって、焦点検出位置をユーザーに認識可能に表示することもできる。
【0031】
ステップS120では焦点検出画素列からデータを読み出す。なお、図2に示す焦点検出エリアG1〜G5の中から予めエリア選択操作部材(不図示)により任意のエリアが選択されているので、選択された焦点検出エリアに対応する焦点検出画素列からデータを読み出す。続くステップS130において焦点検出画素列に対応した一対の像データに基づいて、後述する像ズレ検出演算処理すなわち相関演算処理を行い、像ズレ量を演算し、さらにデフォーカス量を算出する。ステップS140では合焦近傍か否か、つまり算出したデフォーカス量の絶対値が合焦判定基準値以内であるか否かを調べる。
【0032】
合焦近傍でないと判定した場合はステップS150へ進み、算出したデフォーカス量をレンズ駆動制御装置209へ送信し、交換レンズ202のフォーカシング用レンズ207を合焦位置に駆動させ、ステップS110へ戻って上記動作を繰り返す。なお、焦点検出不能な場合もこのステップS150へ分岐し、レンズ駆動制御装置209へスキャン駆動命令を送信し、交換レンズ202のフォーカシング用レンズ207を無限位置と至近位置の間でスキャン駆動させ、ステップS110へ戻って上記動作を繰り返す。
【0033】
一方、合焦近傍であると判定した場合はステップS160へ進み、レリーズボタン(不図示)の操作によりシャッターレリーズがなされたか否かを判定し、なされていない場合はステップS110へ戻って上記動作を繰り返す。シャッターレリーズがなされた場合はステップS170へ進み、レンズ駆動制御装置209へ絞り調整命令を送信し、交換レンズ202の絞り208をカメラ駆動制御装置212で露出演算により決定した制御F値、またはユーザーが手動で設定したF値に設定する。
【0034】
絞り制御が終了した時点で、撮像素子211に撮像動作を行わせ、撮像素子211の撮像画素310およびすべての焦点検出画素311から画像データを読み出す。ステップS180において、焦点検出画素列の各画素位置における画素データを、焦点検出画素311のデータおよび周囲の撮像画素310のデータに基づいて補間する。ステップS190では撮像画素310のデータおよび補間された焦点検出画素位置のデータからなる画像データをメモリーカード213に保存し、ステップS110へ戻って上記動作を繰り返す。
【0035】
図5に示す撮像動作の中のステップS130における焦点検出動作の詳細を、図6を用いて以下に説明する。
【0036】
一対の焦点検出画素列から出力される第1データ列をA(i)、第2データ列をB(i)(ただしi=1〜m)とする。
【0037】
焦点検出演算においては、まず第1データ列A(i)と第2データ列B(i)との間の相対的な偏位量(像ズレ量)をデータサンプリングピッチ単位(図3の焦点検出画素の配置においては画素ピッチ=データサンプリングピッチ)の精度で算出し、次に内挿法によりデータサンプリングピッチ以下の精度で偏位量を算出し直す。最終的に算出した偏位量に一対の測距瞳の重心の開き角の大きさに応じた変換係数を乗じてデフォーカス量を算出する。
【0038】
第1データ列A(i)と第2データ列B(i)との間の相対的な偏位量をデータサンプリングピッチ単位の精度で算出する処理を、図7を用いて説明する。
【0039】
まず第1データ列A(i)において基準データ(演算の際に固定されたデータ)を定める。図7の場合、基準データ710は、両端矢印の範囲に含まれる基準データA(p)〜A(q)である。これは、図6のステップS201に該当する。
【0040】
次に第2データ列B(i)をデータサンプリングピッチ単位で第1データ列A(i)に対し相対的に順次偏位(偏位量L、Lは整数)させることにより、偏位データB(p+L)〜B(q+L)を規定する。これは、図6のステップS202に該当する。図7において、偏位データ720、730、740は各々、相対的偏位量Lがk−1、k、k+1(kは整数)の場合の第2データ列B(i)の偏位データを示している。すなわち、偏位データ720は偏位データB(p+k−1)〜B(q+k−1)であり、偏位データ730は偏位データB(p+k)〜B(q+k)であり、偏位データ740は偏位データB(p+k+1)〜B(q+k+1)である(図7においては、いずれも両端矢印の範囲に含まれる)。
【0041】
例えば基準データA(p)〜A(q)と偏位データB(p+k)〜B(q+k)については、データサンプリングピッチ毎にペアとなるデータ間の個別相関度がデータ間の差の絶対値として算出され(図6のステップS203において、L=kの場合に該当)、該個別相関度が全てのデータペアに対して積算されて、基準データA(p)〜A(q)と偏位データB(p+k)〜B(q+k)との間の相関量C(k)として(1)式のように算出される。式(1)において積算演算Σはi=p〜qの範囲で行われる。
C(k)=Σ|A(i)−B(i+k)| (1)
【0042】
同様にして偏位量kの前後の偏位量k−1、k+1においても相関量C(k−1)、C(k+1)が(2)、(3)式のように算出される。(1)式と同様に(2)、(3)式においても積算演算Σはi=p〜qの範囲で行われる。
C(k−1)=Σ|A(i)−B(i+k−1)| (2)
C(k+1)=Σ|A(i)−B(i+k+1)| (3)
【0043】
相対的な偏位量LはLminからLmaxの間で変化させられ、相関量C(Lmin)からC(Lmax)が求められる。これは、図6のステップS204に該当する。
【0044】
相関量C(Lmin)からC(Lmax)の中で極大の相関度(差分の絶対値の和で相関量を算出する場合は相関量の値が小さいほど相関度が高いことを示す)を示す極大相関量を抽出する。例えばC(k)が極大相関量であるとすると、偏位量kがデータサンプリングピッチ単位の精度で算出された第1データ列A(i)と第2データ列B(i)との間の相対的な偏位量となる。極大相関量C(k)を与える偏位量kの前後の偏位量k−1、k+1における相関量C(k−1)、C(k+1)は、上述したように、(2)、(3)式のようにして算出される。これらは、図6のステップS205に該当する。なお極大相関量C(k)が存在しない場合には焦点検出不能と判定し、デフォーカス量を求める演算は行わない。
【0045】
次の段階で内挿法によりデータサンプリングピッチ以下の精度で偏位量を算出するわけであるが、まず従来の方法について説明する。
【0046】
従来の方法においては偏位量kとそれを挟んだ前後の偏位量k−1、k+1における相関量C(k−1)、C(k)、C(k+1)の3点の相関量を用いて3点内挿法(線形法)によりデータサンプリングピッチ以下の精度の偏位量zを求める。ここで3点内挿法(1次関数)とは図8に示すように、相関量C(k)の点と相関量C(k−1)、C(k+1)のうち相関量C(k)との差が大きな相関量の点(図8ではC(k+1))と結んだ直線S1と、直線S1と傾きが反対の直線でもう一方の相関量の点(図8ではC(k−1))を通る直線S2との交点(相関量C(z))の偏位量として、データサンプリングピッチ以下の精度の偏位量zを求める。
【0047】
数式で示すと偏位量zは以下の式で求められる。
z=k+H/Slop (4)
C(z)=C(k)−|H| (5)
H=(C(k−1)−C(k+1))/2 (6)
Slop=Max(C(k−1)−C(k)、C(k+1)−C(k)) (7)
【0048】
しかしながら上述した従来の3点内挿法においては、極大相関量C(k)を算出する際に用いた偏位データB(p+k)〜B(q+k)に対し1つサンプリング位置が小さい側の偏位データB(p+k−1)と偏位データB(p+k)との差、または1つサンプリング位置が大きい側の偏位データB(q+k+1)と偏位データB(q+k)との差に応じて、相関量C(k−1)あるいはC(k+1)の値がゆらぐので、偏位量zの値もゆらいでしまった。特に偏位データB(p+k)〜B(q+k)間のコントラストが小さいとともに、偏位データB(p+k−1)と偏位データB(p+k)との差、または偏位データB(q+k+1)と偏位データB(q+k)との差が大きい場合には、偏位量zの値が、極大相関量C(k)を算出する際に用いた偏位データB(p+k)〜B(q+k)に含まれない偏位データB(p+k-1)、B(q+k+1)の値により大きく影響を受けてしまった。
【0049】
図9は基準データA(4)〜A(8)に対して、偏位データB(6)〜B(10)の相関量C(2)が極大になる例であるが、偏位データB(10)の次の偏位データB(11)との段差が大きい場合である。
【0050】
図9の場合C(1)=2、C(2)=0、C(3)=6であり、この3点より偏位量zを求めるとz=1.67となり、本来算出されるべき偏位量である2との差が0.33も生じてしまい、最終的に大きな焦点検出誤差となる。
【0051】
このような焦点検出誤差を生ずる原因は、3点内挿法に用いる相関量のうち、極大相関量C(k)の両隣偏位量における相関量C(k−1)あるいはC(k+1)を算出する際に、極大相関量C(k)の算出に用いた偏位データB(p+k)〜B(q+k)以外の偏位データB(p+k−1)、B(q+k+1)を用いたことである。
【0052】
このような従来方法の欠点を解決するために、本発明においては3点内挿法に用いる極大相関量C(k)の両隣の偏位量における相関量を求める算出式を変更している。図10は3点内挿法に用いる3点の相関量D(k−1)、D(k)、D(k+1)の算出の概念図であって、数式で示すと以下のようになる。(8)式において積算演算Σはi=p+1〜qの範囲で行われる。(10)式において積算演算Σはi=p〜q−1の範囲で行われる。これらは、図6のステップS206に該当する。
D(k−1)=Σ|A(i)−B(i+k−1)| (8)
D(k)=C(k) (9)
D(k+1)=Σ|A(i)−B(i+k+1)| (10)
【0053】
相関量D(k−1)、D(k+1)と相関量C(k−1)、C(k+1)の関係は次式のようになっている。
D(k−1)=C(k−1)−|A(p)−B(p+k−1)| (11)
D(k+1)=C(k+1)−|A(q)−B(q+k+1)| (12)
【0054】
(8)、(10)式に示すように3点内挿法に用いる相関量D(k−1)、D(k+1)の算出の際に、極大相関量D(k)=C(k)の算出に用いた偏位データB(p+k)〜B(q+k)以外の偏位データB(p+k−1)、B(q+k+1)を用いていない(図10において、両端矢印の範囲に含まれない)ので、これらを用いて3点内挿法で偏位量zを内挿した場合においても、偏位データB(p+k−1)、B(q+k+1)の影響を受けずに高精度かつ安定的に偏位量zを算出することができる。
【0055】
図11に示すように、(8)〜(10)式で求めた3点の相関量D(k−1)、D(k)、D(k+1)を用い、相関量D(k)の点と相関量D(k−1)、D(k+1)のうち相関量D(k)との差が大きな相関量の点(図11ではD(k+1))と結んだ直線S3と、直線S3と傾きが反対の直線でもう一方の相関量の点(図11ではD(k−1))を通る直線S4との交点(相関量D(z))の偏位量として、データサンプリングピッチ以下の精度の偏位量zを求める。これは、図6のステップS207に該当する。
【0056】
数式で示すと偏位量zは以下の式で求められる。
z=k+H/Slop (13)
D(z)=D(k)−|H| (14)
H=(D(k−1)−D(k+1))/2 (15)
Slop=Max(D(k−1)−D(k)、D(k+1)−D(k)) (16)
【0057】
偏位量zに基づき、被写体像面の予定結像面に対するデフォーカス量Defを次式で求める。
Def=Kd×Py×z (17)
【0058】
(17)式において、Pyはデータサンプリングピッチであり、Kdは一対の測距瞳の重心の開き角の大きさによって決まる変換係数である。
【0059】
図12〜図14は本発明の効果をシミュレーションによって確認した場合の図であって、図12は像としてサイン関数を仮定し、60点でサンプリングした時の第1データ列A(i)を示す図である。基準データはi=6〜55の50点のデータを用いている。第2データ列B(i)としては、上述のサイン関数の位相をサンプリングピッチ単位で0.1ずつ−1.0〜+1.0の範囲で変化させた関数を同じサンプリングピッチでサンプリングしたものを用いている。第1データ列A(i)と第1データ列に対し位相(像ズレ量)を変化させた第2データ列B(i)との組み合わせに対し、従来の3点内挿法と本発明による3点内挿法を適用し、算出された偏位量と正しい偏位量(像ズレ量)との間の誤差を計算して示したものが図13(従来法の誤差)と図14(本発明の誤差)である。従来法では最大0.015あった誤差が本発明では最大0.004程度に減少していることがわかる。
【0060】
−−−変形例−−−
<相関演算の変形例>
以上の実施形態においては一対のデータ列間の相関量を求める相関演算としてデータの差分の絶対値の和という演算を用いていたが、これ以外の相関演算でも構わない。例えば特開2007-333720に開示された次式のような相関演算を用いることができる。(18)式においてパラメータsは正の整数である。
C(k)=Σ|A(i)×B(i+k+s)−A(i+s)×B(i+k)| (18)
【0061】
<内挿法の変形例>
以上の実施形態においては3点内挿法として1次関数による内挿を用いていたが、これ以外の内挿法でも構わない。例えば3点の相関量の座標点上を2次関数が通るとして、偏位量zを該2次関数の頂点の座標として内挿することもできる。この場合には偏位量zは次式で算出することができる。
z=k+H/Slop (19)
H=(D(k−1)−D(k+1))/2 (20)
Slop=D(k−1)+D(k+1)−2×D(k) (21)
【0062】
<内挿法の変形例>
以上の実施形態においては内挿法として3点内挿を用いていたが、これ以外の内挿法でも構わない。例えば図11において4点目の相関量D(k−2)を用い、D(k)とD(k+1)を通る直線とD(k−2)とD(k−1)を通る直線の交点の座標として、偏位量zを内挿することもできる。この場合には偏位量zは次式で算出することができる。(22)式において積算演算Σはi=p+2〜qの範囲で行われる。
D(k−2)=Σ|A(i)−B(i+k−2)| (22)
z=k+(D(k−2)+D(k)−2×D(k−1))/(D(k−1)―D(k−2)−D(k+1)+D(k)) (23)
【0063】
<3点内挿に用いる相関量D(k)の算出法>
以上の実施形態においては3点内挿に用いる相関量D(k)(3点の中央の相関量)として(9)式を用いていたが、これ以外の演算を用いても構わない。例えばデータペアの両端の相関度を0以上1未満の所定係数倍してもよい。(24)式は、所定係数を1/2とした例を示しており、この式において積算演算Σはi=p+1〜q−1の範囲で行われる。
D(k)=C(k)=Σ|A(i)−B(i+k)| +(|A(p)−B(p+k)|+|A(q)−B(q+k)|)/2 (24)
【0064】
このようにすれば相関量を算出する際のデータペアの演算回数がq−p+2にほぼ揃うので、偏位量zの算出精度もさらに向上する。
【0065】
<3点内挿に用いる相関量D(k−1)、D(k+1)の算出法>
以上の実施形態においては3点内挿に用いる相関量D(k−1)、D(k)、D(k+1)として(8)、(9)、(10)式を用いていたが、これ以外の演算を用いても構わない。例えば次式のように演算に用いるデータをさらに制限することにより、これらを用いた3点内挿の演算精度をさらに向上をはかることもできる。(25)式において積算演算Σはi=p+2〜q−1の範囲で行われる。(26)式において積算演算Σはi=p+1〜q−1の範囲で行われる。(27)式において積算演算Σはi=p+1〜q−2の範囲で行われる。
D(k−1)=Σ|A(i)−B(i+k−1)| (25)
D(k)= Σ|A(i)−B(i+k−1)| (26)
D(k+1)=Σ|A(i)−B(i+k+1)| (27)
【0066】
<他の変形例>
図3に示す撮像素子211では焦点検出画素311を隙間なく配列する例を示したが、焦点検出画素311を撮像画素310の青画素の位置に1画素おきに一列に配列してもよい。焦点検出画素311の配置間隔が大きくなることによって、焦点検出精度が多少低下するものの焦点検出画素311の密度が低くなるので、焦点検出画素311の位置の画像信号を補間処理により求めた画像品質が向上する。
【0067】
図3に示す撮像素子211では、焦点検出画素311ごとに一対の光電変換部12,13を備えた例を示した。しかし、一つの焦点検出画素313は、マイクロレンズ10と一つの光電変換部16とを備え、一つの焦点検出画素314は、マイクロレンズ10と一つの光電変換部17とを備えることとしてもよい。光電変換部16,17はマイクロレンズ10により交換レンズの射出瞳に投影され、図4に示す測距瞳92,93を形成する。したがって、焦点検出画素313,314により焦点検出の用いる一対の像の出力を得ることができる。
【0068】
図15に、焦点検出画素313,314を交互に一列に配置した撮像素子211Aの例を示す。隣接する焦点検出画素313と焦点検出画素314が一対となり、図3に示す撮像素子211の焦点検出画素311に相当し、焦点検出に用いる一対の像の出力を得ることができる。
【0069】
図3に示す撮像素子211では、R、G、Bの各色フィルターを備えた撮像画素310をベイヤー配列とした例を示したが、色フィルターの構成や配列は上述した一実施の形態に限定されない。例えば、G(緑)、黄(Ye)、マゼンダ(Mg)、シアン(Cy)を補色配列にしてもよい。この補色フィルターを用いる場合には、焦点検出画素311を、出力誤差が比較的目立たない青成分を含むシアンとマゼンタが配置されるべき画素位置に配置する。
【0070】
図3に示す撮像素子211では焦点検出画素311に色フィルターを設けない例を示したが、撮像画素310と同色の色フィルターのうち、ひとつの色フィルター、例えば緑色フィルターを設けた場合でも、本発明を適用することができる。
【0071】
図5に示す撮像動作では、補間処理により焦点検出画素311の位置の画像信号を補正した画像データをメモリカード213に格納する例を示したが、補正した画像データを電子ビューファインダー215や、ボディの背面に設けられた不図示の背面モニター画面に表示するようにしてもよい。
【0072】
なお、上述した撮像素子211、211Aは、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサーとして形成することができる。
【0073】
上述した一実施の形態ではマイクロレンズを用いた瞳分割方式による焦点検出を例に上げて説明したが、本願発明の相関演算方法は上述した方式の焦点検出に限定されず、再結像瞳分割方式の焦点検出にも適用することができ、上述したような効果を奏することができる。
【0074】
図16により、本願発明の実施の形態による相関演算方法を適用した再結像瞳分割方式の焦点検出について説明する。図において、191は交換レンズの光軸、110,120はコンデンサーレンズ、111、121は絞りマスク、112,113、122,123は絞り開口、114、115、124,125は再結像レンズ、116、126は焦点検出用のイメージセンサー(CCD)である。また、132,133、142,143は焦点検出光束、190は交換レンズの予定結像面の前方d5の距離に設定された射出瞳である。なお、距離d5は、コンデンサーレンズ110,120の焦点距離とコンデンサーレンズ110,120と絞り開口112,113、122,123の間の距離などに応じて決まる距離であり、測距瞳距離という。192はコンデンサーレンズ110,120により投影された絞り開口112,122の領域(測距瞳)、193はコンデンサーレンズ110,120により投影された絞り開口113,123の領域(測距瞳)である。
【0075】
コンデンサーレンズ110、絞りマスク111、絞り開口112,113、再結像レンズ114,115、イメージセンサ116が、一つの位置で焦点検出を行う再結像方式の瞳分割型位相差検出の焦点検出ユニットを構成する。図16では、光軸191上にある焦点検出ユニットと光軸外にある焦点検出ユニットを模式的に例示する。複数の焦点検出ユニットを組み合わせることによって、図2に示す5箇所の焦点検出位置G1〜G5において再結像方式の瞳分割型位相差検出で焦点検出を行う焦点検出専用センサーを実現することができる。
【0076】
コンデンサーレンズ110からなる焦点検出ユニットは、交換レンズの予定結像面近傍に配置されたコンデンサーレンズ110、その背後に配置されたイメージセンサー116、コンデンサーレンズ110とイメージセンサー116の間に配置され、予定結像面近傍に結像された1次像をイメージセンサー116上に再結像する一対の再結像レンズ114,115、一対の再結像レンズの近傍(図では前面)に配置された一対の絞り開口112,113を有する絞りマスク111から構成される。イメージセンサー116は複数の光電変換部が直線に沿って密に配置されたラインセンサーであって、光電変換部の配置方向は一対の測距瞳の分割方向(=絞り開口の並び方向)と一致させる。
【0077】
イメージセンサー116上に再結像された一対の像の強度分布に対応した情報がイメージセンサー116から出力され、この情報に対して後述する像ズレ検出演算処理(相関処理、位相差検出処理)を施すことによって、いわゆる瞳分割型位相差検出方式(再結像方式)で一対の像の像ズレ量が検出される。像ズレ量に所定の変換係数を乗ずることによって、予定結像面に対する現在の結像面の偏差(デフォーカス量)が算出される。
【0078】
イメージセンサー116は再結像レンズ114,115により予定結像面上に投影されており、デフォーカス量(像ズレ量)の検出精度は、像ズレ量の検出ピッチ(再結像方式の場合は予定結像面上に投影された光電変換部の配列ピッチ)により決まる。
【0079】
コンデンサーレンズ110は絞りマスク111の絞り開口112,113を射出瞳190上に領域192,193として投影している。これらの領域192,193を測距瞳と呼ぶ。すなわち、イメージセンサー116上に再結像される一対の像は射出瞳190上の一対の測距瞳192,193を通過する光束によって形成される。射出瞳190上の一対の測距瞳192,193を通過する光束132、133を焦点検出光束と呼ぶ。
【0080】
また、本願発明は撮影光学系を通過する光束を瞳分割する方式の焦点検出に限定されず、外光三角測距方式による距離測定にも適用することができ、上述したような効果を奏することができる。図17により、本願発明の実施の形態による相関演算方法を適用した外光三角測距方式の距離測定について説明する。レンズ320とその結像面に配置されたイメージセンサー326からなるユニットと、レンズ330とその結像面に配置されたイメージセンサー336からなるユニットとが基線長を隔てて配置される。これら一対のユニットが測距装置347を構成する。測距対象350の像がレンズ320と330によりイメージセンサ326と336上に形成される。
【0081】
イメージセンサー326と336上に形成される像の位置関係は、測距装置347から測距対象350までの距離に応じて変化する。したがって、イメージセンサー326と336の信号データに対して本発明を適用した像ズレ検出を行うことによって、2像の相対的位置関係を検出し、この位置関係に基づいて測距対象350までの距離を測定することができる。
【0082】
本願発明の実施の形態による撮像装置は、交換レンズとカメラボディから構成されるデジタルスチルカメラやフィルムスチルカメラに限定されず、レンズ一体型のデジタルスチルカメラやフィルムスチルカメラ、あるいはビデオカメラにも適用することができる。また、本願発明は、携帯電話などに内蔵される小型カメラモジュールや監視カメラなどにも適用することができる。さらに、カメラ以外の焦点検出装置や測距装置、あるいはステレオ測距装置にも適用することができる。
【0083】
本実施の形態は、時間が異なるイメージセンサーの信号間の相関を検出して被写体像の動きやカメラのブレを検出する装置にも適用することができる。また、イメージセンサーの画像信号と特定の画像信号のパターンマッチングにも適用することができる。さらに、画像信号データの相関を検出するものに限定されず、音に関するデータの相関やその他一般に2つの信号の相関を検出するあらゆるものにも適用することができ、上述した効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0084】
10、50、60 マイクロレンズ、11、12、13、16、17、52、53、62、63 光電変換部、72、73、82、83 焦点検出光束、90 射出瞳、91 光軸、92、93 測距瞳、110、120 コンデンサーレンズ、111、121 絞りマスク、112、113、122、123 絞り開口、114、115、124、125 再結像レンズ、116、126 イメージセンサー、132、133、142、143 焦点検出光束、190 射出瞳、191 交換レンズの光軸、192、193 測距瞳、201 ディジタルスチルカメラ、202 交換レンズ、203 カメラボディ、204 マウント部、205、206、207 レンズ、208 絞り、209 レンズ駆動制御装置、211、211A 撮像素子、212 カメラ駆動制御装置、213 メモリカード、214 LCDドライバー、215 LCD、216 接眼レンズ、310 撮像画素、311、313、314 焦点検出画素、320、330 レンズ、326、336 イメージセンサー、347 測距装置、350 測距対象、710 基準データ、720、730、740 偏位データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデータピッチで配列された第1及び第2のデータ列からそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、
前記第1の所定範囲に対して前記第2の所定範囲を、前記所定のデータピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、前記偏位量を順次変更する偏位手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、
前記相関量算出手段が算出した前記相関量の中で極大を示す極大相関量と、前記極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、
前記第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を前記個別相関度算出手段及び前記相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、
前記極大相関量と前記第1及び第2の相関量とに基づき、前記第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を前記所定のデータピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段とを備え、
前記個別相関度算出手段は、前記第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、前記第2及び第3の偏位量における前記第2の所定範囲の端部のデータのうち、前記第1の偏位量における前記第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする相関演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の相関演算装置において、
前記制御手段は、前記第1の偏位量における個別相関度及び相関量を前記個別相関度算出手段及び前記相関量算出手段に再算出させて、再度極大相関量を得、
前記個別相関度算出手段は、前記第1の偏位量における個別相関度の再算出において、前記第1の偏位量における前記第2の所定範囲の両端部のデータに関する個別相関度については、前記両端部のデータに関する個別相関度に1未満の係数を乗じて、個別相関度を再算出することを特徴とする相関演算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の相関演算装置において、
前記内挿手段の再計算により求められた前記相対的な偏位量と、該相対的な偏位量により与えられる極大相関量との組合せにより定まる点は、前記再算出した極大相関量を与える偏位量と前記再算出した極大相関量との組合せにより定まる点、および前記第2及び第3の偏位量における相関量のうちの低い相関量を与える偏位量と前記低い相関量との組合せにより定まる点を結んだ直線と、該直線の傾きの正負を反転した傾きを有し、かつ前記第2及び第3の偏位量における相関量のうちの高い相関量を与える偏位量と前記高い相関量との組合せにより定まる点を通る直線との交点であることを特徴とする相関演算装置。
【請求項4】
所定のデータピッチで配列された第1及び第2のデータ列からそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングし、
前記第1の所定範囲に対して前記第2の所定範囲を、前記所定のデータピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、前記偏位量を順次変更し、
前記偏位量の変更毎に、前記第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出すると共に、前記個別相関度を積算して相関量を算出し、
前記相関量の中で極大を示す極大相関量と、前記極大相関量を与える第1の偏位量とを求め、
前記第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を再算出して第1及び第2の相関量を得、
前記第2及び第3の偏位量における前記第2の所定範囲の端部のデータのうち、前記第1の偏位量における前記第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、前記第2及び第3の偏位量における個別相関度を再算出すると共に、再算出した前記個別相関度を積算して前記第2及び第3の偏位量における第1及び第2の相関量を再算出し、
前記極大相関量と再算出した前記第1及び第2の相関量とに基づき、前記第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を前記所定のデータピッチよりも小さな単位で内挿して求めることを特徴とする相関演算方法。
【請求項5】
光学系を透過して一対の像を形成する一対の光束を受光し、前記一対の像に応じた一対の焦点検出信号データ列を出力する複数の焦点検出画素が所定の画素ピッチで配列された受光手段と、
前記一対の焦点検出信号データ列の互いに対応するデータからそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、
前記第1の所定範囲に対して前記第2の所定範囲を、前記所定の画素ピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、前記偏位量を順次変更する偏位手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、
前記相関量算出手段が算出した前記相関量の中で極大を示す極大相関量と、前記極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、
前記第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を前記個別相関度算出手段及び前記相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、
前記極大相関量と前記第1及び第2の相関量とに基づき、前記第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を前記所定の画素ピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段と、
前記相対的な偏位量に応じて前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段とを備え、
前記個別相関度算出手段は、前記第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、前記第2及び第3の偏位量における前記第2の所定範囲の端部のデータのうち、前記第1の偏位量における前記第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
撮影光学系と、
前記撮影光学系を透過して被写体像を形成する撮影用の光束を受光し、前記被写体像に応じた撮像信号データを出力する複数の撮像画素と、前記撮影光学系を透過して一対の像を形成する一対の焦点検出用の光束を受光し、前記一対の像に応じた一対の焦点検出信号データ列を出力する複数の焦点検出画素とが所定の画素ピッチで配列された受光手段と、
前記一対の焦点検出信号データ列の互いに対応するデータからそれぞれ第1及び第2の所定範囲のデータをサンプリングするサンプリング手段と、
前記第1の所定範囲に対して前記第2の所定範囲を、前記所定の画素ピッチ単位の偏位量で相対的に偏位させると共に、前記偏位量を順次変更する偏位手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記第1及び第2の所定範囲のデータについて互いに位置的に対応するデータ間の個別相関度をそれぞれ算出する個別相関度算出手段と、
前記偏位手段による前記偏位量の変更毎に、前記個別相関度算出手段が算出した個別相関度を積算して、相関量を算出する相関量算出手段と、
前記相関量算出手段が算出した前記相関量の中で極大を示す極大相関量と、前記極大相関量を与える第1の偏位量とを求める決定手段と、
前記第1の偏位量の前後の第2及び第3の偏位量における個別相関度及び相関量を前記個別相関度算出手段及び前記相関量算出手段に再算出させて、第1及び第2の相関量を得る制御手段と、
前記極大相関量と前記第1及び第2の相関量とに基づき、前記第1及び第2の所定範囲のデータ間の相関量が極大になる相対的な偏位量を前記所定の画素ピッチよりも小さな単位で内挿して求める内挿手段と、
前記相対的な偏位量に応じて前記撮影光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段とを備え、
前記個別相関度算出手段は、前記第2及び第3の偏位量における個別相関度の再算出において、前記第2及び第3の偏位量における前記第2の所定範囲の端部のデータのうち、前記第1の偏位量における前記第2の所定範囲のデータに新たに加わったデータを除いて、個別相関度を再算出することを特徴とする撮像装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−170038(P2011−170038A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32618(P2010−32618)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】