説明

省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法

【課題】エンジンブレーキの使用を積極的に評価し、エンジンブレーキのみによる早めの制動操作を促す。
【解決手段】アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、車両1aのエンジン回転数が所定値以上、かつ、アクセル開度率が所定値以下、かつ、エンジンへの燃料噴射が0であるアクセルオフ燃料カット走行であるか否かを判定する。走行距離積算部11dは、アクセルオフ燃料カット走行と判定された場合、アクセルオフ燃料カット走行距離を積算する。省燃費運転採点部12は、走行距離積算部11dによって積算された各積算値に基づいて運転者の運転を採点する。省燃費運転アドバイス生成部13は、採点結果に応じて、採点結果とともに省燃費運転アドバイスを運転者へ通知する。よって、運転者に早めのエンジンブレーキ使用を奨励し、運転者の省燃費運転の意識の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における運転者の適切なアクセル操作によって燃料を消費せずに走行した距離に基づいて省燃費運転を診断して採点し、採点結果を運転者に対して通知することによって省燃費運転の意識を向上させる省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題がクローズアップされる中、自動車の省燃費性が改めて重要視されるようになってきている。地球環境問題では、特に、地球温暖化対策が急務となっている。このため、二酸化炭素等の温暖化ガスを排出するガソリンエンジン車等は、日々改良が重ねられ、燃費効率を向上させて排出温暖化ガスを削減している。
【0003】
また、ガソリンエンジンよりもエネルギー利用効率が高いモータを駆動源とする電気自動車やガソリンエンジン及びモータを駆動源として併用するハイブリッドカーが開発され、自動車の省燃費性能は確実に向上しつつある。
【0004】
しかし、いくら自動車の省燃費性能が高くても、運転者の運転が省燃費に反するもの、例えばアクセル操作が不適切でエンジンブレーキを有効利用していなければ、自動車の高省燃費性能も意味をなさない。そこで、運転者のアクセル操作を適切に行わせてエンジンブレーキの有効利用を促し、より省燃費運転を行う様に運転者に報知を行う従来技術が考案されてきた。
【0005】
例えば、ある従来技術では、運転操作によるエンジンブレーキの作動時間及び補助ブレーキ(通常のディスク又はドラムブレーキ)の作動時間を記録しておき、エンジンブレーキの作動時間に対する補助ブレーキの作動時間の比率に基づいて運転者の省燃費運転を採点していた。この採点結果を運転者に報知することより、なるべく補助ブレーキを使用せずエンジンブレーキを有効利用するアクセル操作を促すことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−106182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、エンジンブレーキの作動時間に対する補助ブレーキの作動時間の比率に基づく採点結果は、エンジンブレーキ作動中の補助ブレーキの使用を極力抑制させることは可能である。
【0008】
しかし、前述の採点結果は、補助ブレーキの使用の抑制を目的とするものであって、エンジンブレーキ自体の使用を奨励するものではなく、運転者に対してエンジンブレーキのみの作動による早めの制動操作を促すものではなかった。これは、エンジンブレーキの作動時間に対する補助ブレーキの作動時間の比率に基づく採点結果には、エンジンブレーキの使用そのものを積極的に評価する要素が含まれないためである。
【0009】
開示の省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法は、上記問題点(課題)を解消するためになされたものであって、運転者に対して、エンジンブレーキの使用を積極的に評価し、エンジンブレーキのみによる早めの制動操作を促すことが可能な省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、開示の省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法は、車両がアクセルオフ走行していると判定する際の前記車両の制御状態の条件であるアクセルオフ走行条件を管理し、道路状況又は交通状況を取得する道路交通状況取得装置によって取得された道路状況又は交通状況に応じてアクセルオフ走行条件を変更し、車両の制御状態がアクセルオフ走行条件を充足するか否かを判定し、道路交通状況取得装置によって取得された車両の現在走行位置の状況に応じて車両の制御状態がアクセルオフ走行条件を充足するか否かの判定を行うか否かを判断し、省燃費運転診断を行い、所定期間における車両の総走行距離を算出し、車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足すると判定されたアクセルオフ走行距離を算出し、総走行距離と、アクセルオフ走行距離とに基づいて省燃費運転を採点し、採点結果に基づいて省燃費運転アドバイスを生成し、採点結果又は省燃費運転アドバイスを運転者に通知することを一要件とする。
【発明の効果】
【0011】
開示の省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法によれば、運転者に対して、補助ブレーキを極力使用せずエンジンブレーキのみによる早めの制動操作を促すとともに、エンジンブレーキによる制動を行うことが好ましい道路条件や交通条件に絞り込んでアクセルオフの走行距離を評価することによってエンジンブレーキの使用そのものを積極的に評価し奨励することで、運転者に対し、エンジンブレーキを始めとするアクセルオフ走行が経済的で環境に優しい走行であるという知識と意識の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照し、省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法に係る実施形態の一例を詳細に説明する。以下の実施形態の一例は、ガソリンエンジン等の化石燃料を燃料(エネルギー)として駆動する車両を例として説明する。
【0013】
しかし、ガソリンエンジン等の化石燃料を燃料(エネルギー)として駆動する車両に限定されず、ガソリンエンジン(若しくは、化石燃料をエネルギーとするその他のエンジン)及び駆動モータ(以下、モータと略記)を双方備え、運転状況に応じて駆動源を切り替えて走行するハイブリッドカーであってもよい。或いは、電気自動車や燃料電池車等、モータを駆動力として走行する車両も含め、エネルギーを使用して駆動する車両であれば、広く一般に適用可能である。
【0014】
[実施形態の一例]
図1〜図9を参照して、省燃費運転診断装置、省燃費運転診断システム及び省燃費運転診断方法に係る実施形態の一例を説明する。図1は、実施形態の一例に係る車両1aの省燃費運転診断装置及び関連する装置の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、省燃費運転診断装置10aは、省燃費運転診断部11と、省燃費運転採点部12と、省燃費運転アドバイス生成部13と、車載ネットワークインターフェース部14と、出力インターフェース部15とを有する。また、省燃費運転診断装置10aは、車載ネットワークインターフェース部14及び車載ネットワーク100を介して走行制御装置20aと接続されている。走行制御装置20aは、車両1aの走行制御をつかさどるコンピュータであり、車種情報管理部21を有する。また、省燃費運転診断装置10aは、出力インターフェース部15を介して表示画面を有する表示部16が接続されている。
【0016】
走行制御装置20aには、車両を駆動するガソリンエンジンを制御するエンジン制御装置24と、ブレーキ制御装置25とが接続されている。ブレーキ制御装置25は、運転者のブレーキ操作に応じてメカニカルブレーキ(ディスクブレーキ又はドラムブレーキ)を制御する。
【0017】
また、走行制御装置20aには、現在の車両の車速を検知する車速センサ26と、現在の運転者のアクセル操作量を検知するアクセル操作量センサ27と、現在の車両のシフトレバー位置及びシフトモード状態を検知するシフトセンサ28と、車速パルス信号積算値格納部29とが接続されている。
【0018】
なお、車速パルス信号積算値格納部29は、車両1aの車輪の内径に備えられたパルスセンサが車輪の1回転毎に車速パルス信号を検知したとして1ずつ積算した車速パルス信号積算を格納する。すなわち、車速パルス信号積算値は、車輪の回転回数を積算した値である。所定時間(例えば100ミリ秒)毎の車速パルス信号積算値の差分を算出して車輪の外周長を乗じることによって、該所定時間の車両1aの走行距離を算出することができる。
【0019】
省燃費運転診断部11は、診断条件管理部11aと、アクセル開度率上限値算出部11bと、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cと、走行距離積算部11dとを有する。診断条件管理部11aは、車両の走行がアクセルオフ燃料カット走行であると判定される条件を管理する。ここで、アクセルオフ燃料カット走行とは、アクセルを踏まず、惰性的に走行する、すなわち、アクセルオフ走行することで燃料消費を抑える走行のことである。具体的には、図2に示すアクセル開度率上限値テーブル及び図3に示すアクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルが格納されている。
【0020】
図2に示すアクセル開度率上限値テーブルは、アクセル開度率上限値算出部11bによって算出された車速範囲毎のアクセル開度率の上限値を格納する。ここで、アクセル開度率とは、車種毎の最大アクセル開度θ[deg]に対する現在のアクセル操作に基づくアクセル開度θ[deg]の比率[%]である。
【0021】
図3に示すアクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルは、アクセルオフ燃料カット走行であると判定する判定項目として、例えばエンジン回転数[rpm]、アクセル開度率[%]、燃料噴射量[mL]がある。現在値としてのエンジン回転数r[rpm]、アクセル開度率o[θ]及び燃料噴射量f[mL]は、例えば100ミリ秒毎に走行制御装置20aを介してそれぞれエンジン制御装置24、アクセル操作量センサ27及びエンジン制御装置24から取得される。
【0022】
また、アクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルは、各判定項目の現在値、診断条件値(初期値)及び診断条件値(変更値)を格納している。アクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルのエンジン回転数の条件診断値(初期値)の下限値r1[rpm]は、車種毎に設定されるアクセルオフ燃料カット走行と見なしうるエンジン回転数である。例えばr1=1000[rpm]である。
【0023】
また、アクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルのアクセル開度率の条件診断値(初期値)の上限値o2[%]は、車種毎に設定されるアクセルオフ燃料カット走行と見なしうるアクセル開度率である。例えばo2=0.5[%]である。また、アクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルの燃料噴射量の条件診断値(初期値)の上限値は、0[mL]である。
【0024】
また、診断条件値(変更値)は、カーナビゲーション装置17の地図情報DB17aからの地図情報、道路情報受信装置18aによって受信された道路状況並びに交通状況及び制限速度情報取得装置18bによって取得された制限速度情報に基づいて、診断条件管理部11aによって診断条件値(初期値)から変更された値である。なお、診断条件値(変更値)は、診断条件値(初期値)を緩和又は厳格化する値となる。
【0025】
なお、道路情報受信装置18aは、VICS(登録商標)受信装置、若しくはDSRC(Dedicated Short Range Communications、路車間通信)装置である。また、制限速度情報取得装置18bは、路面又は道路標識の制限速度表示を認識する装置、無線周波によって現在地点の制限速度情報を受信する装置、若しくは、地図情報に基づいて現在地点の制限速度情報を取得する装置のいずれであってもよい。
【0026】
このように、診断条件管理部11aが、地図情報、道路状況並びに交通状況、及び、制限速度情報に応じて診断条件値を緩和又は厳格化する理由は、次の様なものである。アクセルオフ燃料カット走行と判定されることは、運転者の運転が省燃費運転であることを意味する。そして、後述するように、アクセルオフ燃料カット走行スコア及びアクセルオフ燃料カット走行距離に基づいて運転者の運転がエコ(エコロジーの省略形)的運転(経済的な運転や環境に優しい運転)であるか否かを判定する場合に、車両1aが走行する道路環境や交通状況を加味せずに判定すると、公平な判定とならない。
【0027】
このように、車両1aが走行する走行地点の状況を加味してアクセルオフ燃料カット走行を判定しなければ、判定結果に基づいて運転をスコアリング(採点)する場合に、有利不利が生じて不公平となる。この不公平を解消するために、診断条件管理部11aが、地図情報、道路状況並びに交通状況、及び、制限速度情報に応じて診断条件値を緩和又は厳格化することによって、診断の公平性、採点の公平性を図り、ユーザである運転者の納得を得る。
【0028】
なお、地図情報、道路状況並びに交通状況、及び、制限速度情報に応じた診断条件値の緩和又は厳格化は、数値で示される下限値又は上限値を状況に応じて例えば20〜30%程度シフトさせることによって行われる。
【0029】
アクセル開度率上限値算出部11bは、走行制御装置20aから受け渡された車種情報に基づいて、車種毎及び車速毎の最大アクセル開度[θ]に対するアクセル操作に基づくアクセル開度率の上限値を算出する。アクセル開度率上限値は、アクセル開度率上限値テーブルのアクセル開度率上限値のカラムに車速毎にそれぞれ格納される。なお、例えば100ミリ秒毎に現在車速に応じたアクセル開度率上限値にてアクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルの診断条件値(初期値)のアクセル開度率の上限値o2が更新される。
【0030】
アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、走行制御装置20aを介して取得した車両1aのアクセル開度率o[%]を算出する。そして、同様に走行制御装置20aを介して取得した車両1aのエンジン回転数r[rpm]及び燃料噴射量f[mL]が、図3に示す診断条件値(変更値)それぞれを充足するか否かを判定する。この判定が、省燃費運転診断である。全てのアクセルオフ燃料カット走行判定項目が診断条件値(変更値)を充足する場合に、走行距離積算部11dは、アクセルオフ燃料カット走行距離に、後述する100msec走行距離を加算する。
【0031】
なお、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、道路状況並びに交通状況が通常状態であれば、アクセルオフ燃料カット走行判定項目それぞれが、図3に示す各診断条件値(初期値)の下限値及び上限値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0032】
また、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cによって図3に示す診断条件値(変更値)のいずれかが充足されないと判定された場合、走行距離積算部11dは、アクセルオフ燃料カット走行距離に、100msec走行距離を加算しない。
【0033】
走行距離積算部11dは、走行制御装置20aを介して車速パルス信号積算値格納部29から100ミリ秒毎に取得される100msec走行距離を、ワントリップ走行距離及びアクセルオフ燃料カット走行距離にそれぞれ加算する。
【0034】
ワントリップ走行距離は、イグニションのオンからオフまでの間に車両1aが走行した距離である。アクセルオフ燃料カット走行距離は、ワントリップ走行距離のうち、全てのアクセルオフ燃料カット走行判定項目が診断条件値(変更値)を充足して走行した距離である。
【0035】
なお、ワントリップ走行距離に代えて、スタートからストップまでの1走行における走行距離を採用することとしてもよい。このようにすると、よりきめ細かく運転を診断することが可能になる。
【0036】
省燃費運転診断装置10aの省燃費運転採点部12は、走行距離積算部11dによって積算された各積算値に基づいて運転者の運転を採点する。具体的には、次式によって、アクセルオフ燃料カット走行スコアが算出される。
【0037】
【数1】

【0038】
アクセルオフ燃料カット走行スコアは、運転者が省燃費運転を行ったことを評価する“良い”スコアである。そして、省燃費運転採点部12は、図8に例示するように、アクセルオフ燃料カット走行スコア、アクセルオフ燃料カット走行距離及びワントリップ走行距離を表示部16に表示させる。
【0039】
以上のように、アクセルオフ燃料カット走行距離及びワントリップ走行距離に基づいてアクセルオフ燃料カット走行スコアを算出して運転者の省燃費運転度を採点することによって、公平かつ明瞭で納得性の高い採点結果を運転者に提示することができる。よって、運転者に早めのエンジンブレーキ使用を奨励し、運転者の省燃費運転の意識の向上を図るとともに、燃費向上を図って環境保護に貢献することができる。
【0040】
省燃費運転診断装置10aの省燃費運転アドバイス生成部13は、図4に例示する省燃費運転アドバイステーブルを参照して、アクセルオフ燃料カット走行スコアに応じて、図9に例示する省燃費運転アドバイスを表示部16に表示させる。図9は、表示部16に、アクセルオフ燃料カット走行スコアとともに省燃費運転アドバイスを表示させた表示態様の一例を示す図である。
【0041】
若しくは、省燃費運転アドバイス生成部13は、アクセルオフ燃料カット走行スコアに応じて、テンプレートメッセージから各スコアに即応したメッセージを生成することとしてもよい。
【0042】
次に、省燃費運転診断装置10aの省燃費運転診断部11で実行されるアクセルオフ燃料カット走行診断処理について説明する。図5は、アクセルオフ燃料カット走行診断処理手順を示すフローチャートである。なお、本処理は、例えば100ミリ秒毎に実行される処理である。同図に示すように、先ず、診断条件管理部11aは、走行制御装置20aから、車速、車速パルスセンサ積算値及びアクセル開度を取得する(ステップS101)。
【0043】
続いて、走行距離積算部11dは、前回取得の車速パルスセンサ積算値と、今回取得の車速パルスセンサ積算値との差分から、100msec走行距離を算出する(ステップS102)。続いて、走行距離積算部11dは、ワントリップ走行距離に、ステップS102で算出された100msec走行距離を加算する(ステップS103)。
【0044】
続いて、アクセル開度率上限値算出部11bは、車種情報に基づき車種毎及び車速毎のアクセル開度率上限値を算出する(ステップS104)。続いて、診断条件管理部11aは、地図情報DB17aから地図情報を取得する(ステップS105)。
【0045】
続いて、診断条件管理部11aは、取得した地図情報に基づいて、車両の現在位置は診断条件を変更する必要がある地点であるか否かを判定する(ステップS106)。診断条件を変更する必要がある地点であると判定された場合に(ステップS106肯定)、ステップS107へ移り、診断条件を変更する必要がある地点であると判定されなかった場合に(ステップS106否定)、ステップS108へ移る。
【0046】
ステップS107では、診断条件管理部11aは、取得した地図情報に基づいて、省燃費運転の診断条件を変更する。続いて、ステップS108では、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、現在のアクセル開度率を算出し、アクセルオフ燃料カット走行判定処理を実行する。アクセルオフ燃料カット走行判定処理の詳細は、図6を参照して後述する。ステップS108が終了すると、アクセルオフ燃料カット走行診断処理は終了する。
【0047】
次に、図5のステップS108で示したアクセルオフ燃料カット走行判定処理について説明する。図6は、アクセルオフ燃料カット走行判定処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、地図情報DB17aから取得した地図情報、道路情報受信装置18aから取得した道路交通情報、制限速度情報取得装置18bから取得した制限速度情報又は現在の車速の少なくとも一つに基づいて、車両1aが走行中の道路は高速道路等の巡航走行可能な道路であるか否かを判定する(ステップS108a)。
【0048】
車両1aが走行中の道路は高速道路等の巡航走行可能な道路であると判定された場合(ステップS108a肯定)、ステップS108fへ移り、車両1aが走行中の道路は高速道路等の巡航走行可能な道路であると判定されなかった場合(ステップS108a否定)、ステップS108bへ移る。
【0049】
続いて、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、現在の走行制御装置20aを介してアクセル操作量センサ27から取得されるアクセル開度に基づいて車両1aの加速時であるか否かを判定する(ステップS108b)。加速時であると判定された場合(ステップS108b肯定)、ステップS108fへ移り、加速時であると判定されなかった場合(ステップS108b否定)、ステップS108cへ移る。
【0050】
続いて、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、地図情報DB17aから取得した地図情報に基づいて車両1aの現在位置は下り坂であるか否かを判定する(ステップS108c)。下り坂であると判定された場合(ステップS108c肯定)、ステップS108fへ移り、下り坂であると判定されなかった場合(ステップS108c否定)、ステップS108dへ移る。
【0051】
続いて、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、エンジン回転数の現在値r[rpm]、アクセル開度率の現在値o[%]及び燃料噴射量の現在値f[mL]がアクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルの全ての診断条件を充足するか否かを判定する(ステップS108d)。全ての診断条件を充足すると判定された場合(ステップS108d肯定)、ステップS108eへ移り、全ての診断条件を充足すると判定されなかった場合(ステップS108d否定)、アクセルオフ燃料カット走行判定処理は終了し、アクセルオフ燃料カット走行診断処理へと復帰する。
【0052】
なお、ステップS108fでは、アクセルオフ燃料カット走行判定部11cは、ワントリップ走行距離から図5のステップS102で算出された100msec走行距離を減算する。ステップS108a、ステップS108b及びステップS108cがアクセルオフ燃料カット走行診断を行わない条件、すなわち診断シーンの限定条件である。例えば、高速道路では車両1aにおけるアクセル踏み込みは車速調整が主たる目的であり、また、減速機会が少ないため、アクセルオフ燃料カット走行判定を行っても有意な採点結果を導き出すことはできない。
【0053】
すなわち、ステップS108a、ステップS108b及びステップS108cの判定のうち少なくとも一つが肯定又は否定の場合、アクセルオフ燃料カット走行診断を行わないため、アクセルオフ燃料カット走行距離が積算されることはない。アクセルオフ燃料カット走行診断を行った上でアクセルオフ燃料カット走行距離が積算されない場合と比較して、アクセルオフ燃料カット走行診断をキャンセルしたことによってアクセルオフ燃料カット走行距離が積算されないということは明らかに異なる。よって、アクセルオフ燃料カット走行スコアの信頼性を維持するために、ワントリップ走行距離から100msec走行距離を減算するのである。
【0054】
次に、省燃費運転診断装置10aの省燃費運転採点部12及び省燃費運転アドバイス生成部13で実行されるアクセルオフ燃料カット走行診断採点結果アドバイス通知処理について説明する。図7は、アクセルオフ燃料カット走行診断採点結果アドバイス通知処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、省燃費運転採点部12は、ワントリップ走行終了か否かを判定する(ステップS201)。ワントリップ走行終了と判定された場合に(ステップS201肯定)、ステップS202へ移り、ワントリップ走行終了と判定されなかった場合にステップS201を繰り返す。
【0055】
ステップS202では、省燃費運転採点部12は、アクセルオフ燃料カット走行スコアを、上記(1)式に基づいて算出する。続いて、省燃費運転採点部12は、ステップS202の処理によって算出されたアクセルオフ燃料カット走行スコア、アクセルオフ燃料カット走行距離及びワントリップ走行距離を表示部16に表示させる(ステップS203)。
【0056】
続いて、省燃費運転アドバイス生成部13は、アクセルオフ燃料カット走行スコアに対応する省燃費運転の意識向上を促すアドバイスメッセージをアクセルオフ燃料カット走行スコアとともに表示部16に表示させる(ステップS204)。この処理が終了すると、アクセルオフ燃料カット走行診断採点結果アドバイス通知処理は終了する。
【0057】
以上の様に、運転者に対して採点結果及び省燃費運転アドバイスを表示することによって、エンジンブレーキを積極的に使用するように意識を喚起し、省燃費運転を心がけるように意識の向上を図ることができる。
【0058】
なお、図10に車両1bの省燃費運転診断装置10b及び走行制御装置20bの構成を示すように、図1に示した車両1aの省燃費運転診断装置10aが省燃費運転診断部11を有する構成に代えて、走行制御装置20bが省燃費運転診断部22を有する構成であってもよい。この場合、省燃費運転診断装置及び走行制御装置の構成が変わるのみで、他は上記実施形態の一例と同様である。このような構成にすると、省燃費運転診断装置10bの構成を簡略化し、処理負担を軽減することができる。
【0059】
なお、省燃費運転診断部22が有する診断条件管理部22a、アクセル開度率上限値算出部22b、アクセルオフ燃料カット走行判定部22c、走行距離積算部22dは、省燃費運転診断部11が有する診断条件管理部11a、アクセル開度率上限値算出部11b、アクセルオフ燃料カット走行判定部11c、走行距離積算部11dとそれぞれ同一の機能構成である。
【0060】
なお、車両1bにおいて、アクセルオフ燃料カット走行判定部22c及び/又は走行距離積算部22dは、省燃費運転診断部22ではなく省燃費運転診断装置10bに含まれる構成であってもよい。また、車両1a及び車両1bの運転者に採点結果やアドバイスを通知する通知方法は、表示部16への表示に限らず、音響や音声を使用する通知方法であってもよい。
【0061】
上記実施形態の一例によれば、アクセルオフ燃料カット走行診断の診断条件を、車両の走行条件を加味して緩和したり厳格化したりし、また、所定の条件が充足される場合にアクセルオフ燃料カット走行診断を行わないので、アクセルオフ燃料カット走行診断の診断精度を高め、延いてはアクセルオフ燃料カット走行の採点の精度を高めることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施形態で実施されてもよいものである。また、実施形態の一例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0063】
また、上記実施形態の一例において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記実施形態の一例で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0064】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0065】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)(またはMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)などのマイクロ・コンピュータ)および当該CPU(またはMPU、MCUなどのマイクロ・コンピュータ)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
車両の運転者に対して、補助ブレーキを極力使用せずエンジンブレーキのみよる早めの制動操作を促すとともに、惰行距離を評価することによってエンジンブレーキの使用そのものを積極的に評価し、運転者の省燃費運転の意識の向上を図るとともに、燃費向上を図って環境保護に貢献したい場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態の一例に係る省燃費運転診断装置及び関連する装置の構成を示すブロック図である。
【図2】アクセル開度率上限値テーブルの一例を示す図である。
【図3】アクセルオフ燃料カット走行判定条件テーブルの一例を示す図である。
【図4】アクセルオフ燃料カット走行スコアに応じた省燃費運転アドバイスを格納する省燃費運転アドバイステーブルの一例を示す図である。
【図5】アクセルオフ燃料カット走行診断処理手順を示すフローチャートである。
【図6】アクセルオフ燃料カット走行判定処理手順を示すフローチャートである。
【図7】アクセルオフ燃料カット走行診断採点結果アドバイス通知処理手順を示すフローチャートである。
【図8】アクセルオフ燃料カット走行スコア及びアクセルオフ燃料カット走行の表示態様の一例を示す図である。
【図9】アクセルオフ燃料カット走行スコア及び省燃費運転アドバイスの表示態様の一例を示す図である。
【図10】変形実施形態の一例に係る省燃費運転診断装置及び関連する装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0068】
1b、1a 車両
10a、10b 省燃費運転診断装置
11 省燃費運転診断部
11a 診断条件管理部
11b アクセル開度率上限値算出部
11c アクセルオフ燃料カット走行判定部
11d 走行距離積算部
12 省燃費運転採点部
13 省燃費運転アドバイス生成部
14 車載ネットワークインターフェース部
15 出力インターフェース部
16 表示部
17 カーナビゲーション装置
17a 地図情報DB
18a 道路情報受信装置
18b 制限速度情報取得装置
20a、20b 走行制御装置
21 車種情報管理部
22 省燃費運転診断部
22a 診断条件管理部
22b アクセル開度率上限値算出部
22c アクセルオフ燃料カット走行判定部
22d 走行距離積算部
24 エンジン制御装置
25 ブレーキ制御装置
26 車速センサ
27 アクセル操作量センサ
28 シフトセンサ
29 車速パルス信号積算値格納部
100 車載ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両がアクセルオフ走行していると判断する際の前記車両の制御状態の条件であるアクセルオフ走行条件を管理する条件管理部と、
道路状況又は交通状況を取得する道路交通状況取得装置によって取得された前記道路状況又は前記交通状況に応じて前記アクセルオフ走行条件を変更する条件変更部と、
前記車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足するか否かを判定する判定部と、
前記道路交通状況取得装置によって取得された前記車両の現在走行位置の状況に応じて前記判定部による判定を行うか否かを判断し、省燃費運転診断を行う診断部と
を有することを特徴とする省燃費運転診断装置。
【請求項2】
所定期間における前記車両の総走行距離を算出する総走行距離算出部と、
前記所定期間のうち前記判定部によって前記車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足すると判定されたアクセルオフ走行距離を算出するアクセルオフ走行距離算出部と、
前記総走行距離算出部により算出された総走行距離と、前記アクセルオフ走行距離算出部によって算出されたアクセルオフ走行距離とに基づいて省燃費運転を採点する省燃費運転採点部と
を有することを特徴とする請求項1記載の省燃費運転診断装置。
【請求項3】
前記診断部が前記車両の現在走行位置の状況に応じて前記判定部による判定を行なわなかったときに前記車両が走行した走行距離を前記総走行距離から減算することを特徴とする請求項2記載の省燃費運転診断装置。
【請求項4】
前記省燃費運転採点部による採点結果に基づいて省燃費運転アドバイスを生成するアドバイス生成部を有することを特徴とする請求項2又は3記載の省燃費運転診断装置。
【請求項5】
前記省燃費運転採点部による採点結果又は前記アドバイス生成部によって生成された省燃費運転アドバイスを運転者に通知する通知部を有することを特徴とする請求項2、3又は4記載の省燃費運転診断装置。
【請求項6】
車両がアクセルオフ走行していると判断する際の前記車両の制御状態の条件であるアクセルオフ走行条件を管理する条件管理部と、道路状況又は交通状況を取得する道路交通状況取得装置によって取得された前記道路状況又は前記交通状況に応じて前記アクセルオフ走行条件を変更する条件変更部と、前記車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足するか否かを判定する判定部と、前記道路交通状況取得装置によって取得された前記車両の現在走行位置の状況に応じて前記判定部による判定を行うか否かを判断し、省燃費運転診断を行う診断部とを有する前記車両に搭載される原動機の制御装置と、
所定期間における前記車両の総走行距離を算出する総走行距離算出部と、前記所定期間のうち前記判定部によって前記車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足すると判定されたアクセルオフ走行距離を算出するアクセルオフ走行距離算出部と、前記総走行距離算出部により算出された総走行距離と、前記アクセルオフ走行距離算出部によって算出されたアクセルオフ走行距離とに基づいて省燃費運転を採点する省燃費運転採点部と、前記省燃費運転採点部による採点結果に基づいて省燃費運転アドバイスを生成するアドバイス生成部と、前記省燃費運転採点部による採点結果又は前記アドバイス生成部によって生成された省燃費運転アドバイスを運転者に通知する通知部とを有する省燃費運転採点装置と
を含むことを特徴とする省燃費運転診断システム。
【請求項7】
車両の省燃費運転を診断する省燃費運転診断を行う前記車両に搭載される原動機の制御装置であって、
車両がアクセルオフ走行していると判断する際の前記車両の制御状態の条件であるアクセルオフ走行条件を管理する条件管理部と、
道路状況又は交通状況を取得する道路交通状況取得装置によって取得された前記道路状況又は前記交通状況に応じて前記アクセルオフ走行条件を変更する条件変更部と、
前記車両の制御状態が前記アクセルオフ走行条件を充足するか否かを判定する判定部と、
前記道路交通状況取得装置によって取得された前記車両の現在走行位置の状況に応じて前記判定部による判定を行うか否かを判断し、省燃費運転診断を行う診断部と
を有することを特徴とする原動機の制御装置。
【請求項8】
車両の省燃費運転を採点する省燃費運転採点装置であって、
所定期間における前記車両の総走行距離を算出する総走行距離算出部と、
アクセルオフ走行条件充足判定装置によって前記車両の制御状態が所定のアクセルオフ走行条件を充足すると判定されたアクセルオフ走行距離を算出するアクセルオフ走行距離算出部と、
前記総走行距離算出部によって算出された総走行距離と、前記アクセルオフ走行距離算出部によって算出されたアクセルオフ走行距離とに基づいて省燃費運転を採点する省燃費運転採点部と
を有することを特徴とする省燃費運転採点装置。
【請求項9】
車両の省燃費運転の診断を採点する省燃費運転診断方法であって、
所定期間における前記車両の総走行距離を算出する総走行距離算出ステップと、
アクセルオフ走行条件充足判定装置によって前記車両の制御状態が所定のアクセルオフ走行条件を充足すると判定されたアクセルオフ走行距離を算出するアクセルオフ走行距離算出ステップと、
前記総走行距離算出ステップによって算出された前記総走行距離と、前記アクセルオフ走行距離算出ステップによって算出された前記アクセルオフ走行距離とに基づいて省燃費運転を採点する省燃費運転採点ステップと
を含むことを特徴とする省燃費運転診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−37953(P2010−37953A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198383(P2008−198383)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】