説明

真円度測定装置

【課題】本発明の解決すべき課題は、切り欠きを有する被測定物、あるいは小径穴の内面測定を行う際にも測定プログラムを停止することなく連続測定を行うことのできる真円度測定装置を提供することにある。
【解決手段】被測定物を載置する回転テーブル14と、
前記被測定物24の略円形測定面に傾斜接触する接触式スタイラス26と、
前記スタイラス26を所定ストローク範囲内で傾斜角変更可能に保持する保持手段40と、
前記スタイラス26と前記測定面との接触に伴う、前記スタイラス26の傾斜角変位を検出する変位検出手段42と、
前記変位検出手段42の出力に基づき、前記スタイラス26先端位置を推測し、該スタイラス位置における最適ストローク範囲を保持手段に指示する制御手段32と、
を備えたことを特徴とする真円度測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真円度測定装置、特に接触式スタイラスを備えた検出手段の保護機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱、円筒等の被測定物について、真円度、同心度あるいは同軸度などの真円度に関する各種データを採取するため、真円度測定装置が周知である。該真円度測定装置においては、回転テーブル上に被測定物を載置し、被測定回転物の表面位置を接触式スタイラス等で検出しつつ、回転テーブルを回転させることで、被測定回転物の表面位置データを集積し、真円度を測定・算出している(特許文献1〜7)。
【0003】
しかしながら、被測定物の外周に切り欠き、特にエッジの立った切り欠き等が存在する場合、該切り欠き部分にスタイラスが落ち込み、前記切り欠きエッジ部分にスタイラスが引っ掛かり、そのまま回転テーブルの回転を続ければ スタイラスを破損することもあり得る。
【0004】
このため、従来においては、スタイラスが切り欠き部分に至ると、一度測定プログラムを停止し、スタイラスが切り欠き部分に落ち込まないように固定したうえで、回転テーブルを回転させ、切り欠き部分が通過した後に再度測定プログラムを開始することとしていた。
【0005】
同様に、小径穴の内面測定を行う場合にもスタイラス破損の恐れがある。すなわち、スタイラスを保持する保持手段は、通常スタイラスよりも遥かに大径であるため、該保持手段の外径部が被測定物に接触しないよう、スタイラスには傾斜を持たせている。このため、保持手段の中心線上にスタイラス先端が位置するとは限らず、小径穴内にスタイラスを挿入する際、保持手段は該小径穴の直上にあっても、傾斜保持されたスタイラス先端が穴外周に引っ掛かり、やはりスタイラスを破損する恐れがある。
そこで、この場合にもスタイラスを小径穴に挿入する際には測定プログラムを一時停止し、スタイラスの固定を行った後、スタイラス挿入を行い、固定解除を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−259211
【特許文献2】特開平6−300505
【特許文献3】特開2003−302218
【特許文献4】特開2004−108787
【特許文献5】特開2007−71726
【特許文献6】WO2006/008891
【特許文献7】特許2701141号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は切り欠きを有する被測定物、あるいは小径穴の内面測定を行う際にも測定プログラムを停止することなく連続測定を行うことのできる真円度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にかかる真円度測定装置は、
被測定物を載置する回転テーブルと、
前記被測定物の略円形測定面に傾斜接触する接触式スタイラスと、
前記スタイラスを所定ストローク範囲内で傾斜角変更可能に保持する保持手段と、
前記スタイラスと前記測定面との接触に伴う、前記スタイラスの傾斜角変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段の出力に基づき、前記スタイラス先端位置を推測し、該スタイラス位置における最適ストローク範囲を保持手段に指示する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記真円度測定装置において、スタイラスは支点を中心に回動可能に形成されており、
前記制御手段によるストローク制御は、スタイラス基端部の回動規制により行われることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明にかかる真円度測定装置によれば、変位検出手段の出力に基づき、前記スタイラス先端位置を推測し、該スタイラス位置における最適ストローク範囲を設定することとしたので、小径穴内面あるいは切り欠きを有する被測定物の真円度測定を行う際にも、測定プログラムを停止し、ストローク設定を手動で行う必要がなくなる。しかも、ストローク設定の基になるスタイラス先端位置は、真円度測定を行う際の被測定物との接触に伴うスタイラス変位を検出する変位検出手段の出力に基づき把握するので、他のスタイラス位置把握手段は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる真円度測定装置の概略構成の説明図である。
【図2】図1に示す装置に用いられるスタイラスの傾斜角、ストローク範囲の説明図である。
【図3】本発明において特徴的なスタイラスとその保持手段、変位検出手段の説明図である。
【図4】本発明にかかる真円度測定装置による小径穴内壁面測定状態の説明図である。
【図5】本発明にかかる真円度測定装置による切り欠き部を有する被測定物の測定状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施例にかかる真円度測定装置の外観図が示されている。同図において、真円度測定装置10は、基台12と、該基台12上に回転可能に設置された回転テーブル14と、該回転テーブル14のX方向位置を調整する位置調整手段16及びY方向位置を調整する位置調整手段18と、前記載置面のX方向傾きを調整する傾斜調整手段20及びY方向傾き量を調整する傾斜調整手段22と、該回転テーブル14上に載置された被測定物24の表面位置を接触検出可能な検出手段としてのスタイラス26と、該スタイラス26をX軸方向に移動可能なX軸スタイラス移動手段28と、前記スタイラス26をスタイラス移動手段28ごとZ軸(上下)方向に移動可能なZ軸スタイラス移動手段30とを含む。
【0013】
そして、前記回転テーブル12の回転量、載置面14aのX−Y平面上の移動量、載置面14aのX−Y平面に対する傾斜量、スタイラス移動手段28,30によるスタイラスの移動量、およびスタイラスの傾斜角変位は、それぞれマイクロコンピュータを内蔵した制御装置32に送られる。
【0014】
本実施形態において、スタイラス26は図2に示すように保持手段40に保持されている。同図に示すように、変位検出手段等を内蔵する保持手段40は、スタイラス26よりも外形が大きく、このため、スタイラス26を垂直に保持した場合には、被測定物24へ保持手段40が接触してしまい、スタイラス26による計測が不能になる可能性がある。
【0015】
そこで、図2にも示すように、保持手段40はスタイラス26を所定角度範囲Aで傾斜角変更可能に保持しており、かつスタイラス26は図示を省略した付勢手段により最大傾斜角を取るように付勢されている。このため、スタイラス26先端から保持手段40の基準垂線Zまでの距離が、スタイラス26の可動ストローク(被測定物との接触に伴い退避し得る範囲)となる。
【0016】
本発明において特徴的なことは、スタイラス位置における最適ストローク範囲Sを保持手段40に指示することである。
【0017】
すなわち、図3に示すように、本実施形態にかかる保持手段40は、スタイラス26の傾斜角変位を検出する変位検出手段42及び傾斜角変更機構44を備えており、変位検出手段42はスタイラス26の傾斜角変位を検出しており、また傾斜角変更機構44は、モータ46と、減速歯車48,50,52と、ストローク規制ネジ54とを備える。そして、モータ46の回転により、歯車48,50,52を介してストローク規制ネジ54が図中左右に進退し、ネジ54が図中左方へ伸長した時にはスタイラス26のストロークSが短く設定され、またネジ54が図中右方へ短縮した時にはスタイラス26のストロークSが長く設定される。
【0018】
なお、本実施形態においては、スタイラス26は支点26aを中心として回動可能なてこ型を採用しており、先端26bは被測定物と接触可能であり、また基端部26cは規制ネジ54に当接し、スタイラス26の回動規制、すなわち傾斜角変更及びストローク変更を行っている。
【0019】
また、ストロークSの設定は、制御手段32によりモータ46を駆動することにより行われるが、本発明においては制御手段32は変位検出手段42の傾斜角情報を元に行われる。すなわち、変位検出手段42は本来、スタイラス26が被測定物に接触しており、その表面形状に従い傾斜角度が変化するのを検出するものであるが、本発明においては、モータ46により強制的にストロークSの変更(すなわちスタイラス26の傾斜角変更)が行われた際のストローク調整量検出にも利用されているのである。
【0020】
図4には本実施形態にかかる真円度測定装置を用いた小径穴の内面測定状態が模式的に示されている。
同図(A)より明らかなように、スタイラス26のストロークを大きく取った状態で小径穴60に近接した場合、保持手段40は小径穴60の直上に位置していても、スタイラス26の先端は小径穴60に至っておらず、このまま保持手段40を下降させれば、同図(B)に示すようにスタイラス26を破損してしまう場合もある。
【0021】
そこで、本実施形態においては、保持手段40が小径穴60直上に到達すると、図4(C)に示すようにスタイラス26のストロークを小さく規制する。この結果、スタイラス26先端は小径穴60の範囲に収まり、このまま下降させて(同図(D))、スタイラス26のストロークを若干大きくすれば、スタイラス26は小径穴60内面に接触し、真円度測定が可能となる。
【0022】
この際、制御手段32は、変位検出手段42の傾斜角A測定結果に基づき、スタイラス26先端位置を推測し、該推測値に基づきストローク規制ネジ54の伸長量を調整し、所望のストロークSを得ている。そして同図(E)に示すように、ストローク規制ネジ54を左方に伸張させればストローク長Sが小さくなり、右方に短縮すればストローク長Sを大きくすることができる。
【0023】
図5には本実施形態にかかる真円度測定装置を用い、測定面に切り欠きを有する被測定物の測定状態を模式的に示す。
本測定例では、円柱状被測定物24の外周面に切り欠き部62が設けられており、通常の真円度測定では被測定物方向に付勢されているスタイラス26が切り欠き部62に至ると、該スタイラス26先端は切り欠き部62に落ち込む。この状態でさらに被測定物の回転を続ければ、スタイラス26は切り欠き部62の壁に衝突し、破損を生じる場合がある(図5(B))。
【0024】
一方、本実施形態にかかる真円度測定装置によれば、スタイラス26が切り欠き部62に至る(図5(C))と、制御手段32の指示によりスタイラス26のストロークSを小さく規制し、スタイラス26が切り欠き部62内に落ち込まないようにする(図5(D))。
そして、切り欠き部62を通過すると、制御手段32は再度ストロークSを大きくし、真円度測定を再開する(図5(E))。
【0025】
なお、本実施形態において、被測定物24の形状情報はあらかじめ測定プログラムに組み入れられており、真円度測定にあたって予想される変動幅以上にスタイラス26が変位したときに、該スタイラス26が切り欠き部62に至ったと判断してストロークを縮小し、形状情報による切り欠き幅を通過したときにストロークを拡大し真円度測定を再開することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 真円度測定装置
14 回転テーブル
24 被測定物
26 スタイラス
32 制御手段
40 保持手段
42 変位検出手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置する回転テーブルと、
前記被測定物の略円形測定面に傾斜接触する接触式スタイラスと、
前記スタイラスを所定ストローク範囲内で傾斜角変更可能に保持する保持手段と、
前記スタイラスと前記測定面との接触に伴う、前記スタイラスの傾斜角変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段の出力に基づき、前記スタイラス先端位置を推測し、該スタイラス位置における最適ストローク範囲を保持手段に指示する制御手段と、
を備えたことを特徴とする真円度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、スタイラスは支点を中心に回動可能に形成されており、
前記制御手段によるストローク制御は、スタイラス基端部の回動規制により行われることを特徴とする真円度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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