説明

真空用モーター、真空用ロボット

【課題】真空排気装置に接続された空間に不純物ガスを放出しない真空用モーターと真空用ロボットを提供する。
【解決手段】
筒部材11と、回転軸12と、磁石14と、コイル15と、信号を生成する符号が、回転軸12の中心軸線を中心とする円周に沿って表面に配置された回転板21aと、信号を検出できるセンサ22aとを有し、回転板21aが配置された空間は真空排気装置42に接続されて真空排気される真空用モーター10aであって、内部にセンサ22aが配置されたセンサ室24aと、信号を透過する透過窓23aとを有し、透過窓23aはセンサ室24aの開口を塞ぐように設けられ、センサ室24の内部空間は回転板21aが配置された空間から分離され、センサ22aから放出された不純物ガスは真空排気装置42に接続された空間に放出されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空用モーターと真空用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、真空排気された真空雰囲気中で基板を回転移動させるために、真空用ロボットがよく用いられている。
図8は従来の真空用ロボットの内部構成図である。
真空用ロボット140は、真空槽141と、真空排気装置142と、真空用モーター110と、腕部143とを有している。
【0003】
真空用モーター110は、円筒形状の筒部材111と、筒部材111の内側に軸受1191、1192を介して筒部材111と同軸状に配置された回転軸112と、回転軸112の外周側面に設けられた磁石114と、磁石114の外側に磁石114と対向して配置されたコイル115と、回転板121とセンサ122とを有している。
【0004】
筒部材111の一端は真空槽141の壁面に設けられた挿入口145に接続され、筒部材111のうち回転板121と磁石114とが配置された空間は挿入口145を介して真空槽141の内部空間と連通されている。
【0005】
真空排気装置142により真空槽141内を真空排気すると、挿入口145を介して筒部材111のうち回転板121と磁石114とが配置された空間も真空排気される。
回転軸112の一端は挿入口145を通って真空槽141内に挿入されており、腕部143は回転軸112の前記一端に取り付けられている。
【0006】
コイル115に電流を流して磁石114に回転力を与えると、腕部143と回転板121は回転軸112と一緒に回転する。このとき腕部143に保持された基板も回転軸112と一緒に回転移動する。
【0007】
回転板121は金属の板であり、センサ122は磁気抵抗素子を有している。
センサ122は回転板121と同じ空間に回転板121の表面と対向して配置され、回転板121の表面の磁気信号を検出して回転角度を算出する。
【0008】
回転軸112の回転中に、電流が流れたコイル115は発熱し、回転板121とセンサ122とがそれぞれ加熱される。
回転板121は金属製であり加熱されても不純物ガスを放出しないが、センサ122は磁気抵抗素子や磁気抵抗素子を封止するモールド樹脂で構成されており、加熱されると不純物ガスが放出される。
【0009】
放出されたガスは挿入口145を通って真空排気装置142に接続された真空槽141内に拡散し、基板に付着したり、真空槽141の内壁面に付着するという問題があった。
特許文献1では、センサ122のモールド樹脂に発ガスの低いエポキシ樹脂を用いる技術が開示されているが、モールド樹脂からの発ガスをゼロにすることは困難であり、真空排気装置142に接続された空間には不純物ガスが放出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−281725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、真空排気装置に接続された空間に不純物ガスを放出しない真空用モーターと真空用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、円筒形状の筒部材と、前記筒部材の内側に前記筒部材と同軸状に配置された回転軸と、前記回転軸の外周側面に設けられた磁石と、前記磁石の外側に前記磁石と対向して配置されたコイルと、リング形状の板であり、リングの穴には前記回転軸が挿通され、表面には信号を生成する符号が前記回転軸の中心軸線を中心とする円周に沿って配置された回転板と、前記回転板の前記表面と対向して配置され、前記信号を検出できるセンサと、を有し、前記回転板が配置された空間は真空排気装置に接続されて真空排気される真空用モーターであって、内部に前記センサが配置され、前記センサと対向する部分には開口が設けられたセンサ室と、前記開口に配置され、前記信号を透過する透過窓と、を有し、前記透過窓は前記開口を塞ぐように設けられ、前記センサ室の内部空間は前記回転板が配置された空間から分離された真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記符号は、第一信号を生成する第一領域と第二信号を生成する第二領域とで構成され、前記センサは前記第一、第二信号を検出できる真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記センサは磁気抵抗素子を有し、前記第一、第二信号は互いに向きが異なる磁気信号であり、前記透過窓は非磁性体からなる真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記回転軸の中心軸線は、前記回転板の前記表面が位置する平面に対して直角に向けられた真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記符号は第一、第二の値を有し、前記第一、第二の値は前記円周に沿って交互に等間隔に配置された真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記符号は前記円周に沿った位置毎に互いに異なる値にされた真空用モーターである。
本発明は真空用モーターであって、前記透過窓はガラスである真空用モーターである。
本発明は、真空用モーターと、真空槽と、前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、基板を保持する腕部と、を有し、前記真空用モーターの前記筒部材の一端は前記真空槽に設けられた挿入口に接続され、前記回転軸の一端は前記挿入口を通って前記真空槽内に挿入され、前記腕部は前記真空槽内に配置され、前記回転軸の前記一端に取り付けられた真空用ロボットである。
【発明の効果】
【0013】
真空排気装置に接続された空間と、センサが配置される空間とが分離されるので、真空排気装置に接続された空間に不純物ガスは放出されず、真空排気装置に接続された空間を清浄に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第一例の真空用モーターの内部構成図
【図2】第一例の真空用モーターの回転板の平面図
【図3】本発明の真空用ロボットの内部構成図
【図4】本発明の第二例の真空用モーターの内部構成図
【図5】第二例の真空用モーターの回転板の平面図
【図6】本発明の第三例の真空用モーターの内部構成図
【図7】本発明の第四例の真空用モーターの内部構成図
【図8】従来の真空用ロボットの内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第一例の真空用モーターの構造>
本発明の第一例の真空用モーター10aの構造を説明する。
図1は第一例の真空用モーター10aの内部構成図である。
【0016】
第一例の真空用モーター10aは、円筒形状の筒部材11と、筒部材11の内側に筒部材11と同軸状に配置された回転軸12と、回転軸12の外周側面に設けられた磁石14と、磁石14の外側に磁石14と対向して配置されたコイル15とを有している。
【0017】
本実施例では、筒部材11の内周側面には回転軸12側に突出する接触部111、112が設けられ、接触部111、112と回転軸12との間には球状部材191、192が配置されている。回転軸12は球状部材191、192を介して接触部111、112に支持されており、回転軸12の中心軸線は筒部材11の中心軸線からずれないようになっている。
【0018】
回転軸12に中心軸線を中心とする回転力が加わると、回転軸12は中心軸線を中心に回転できるようになっている。各球状部材191、192は接触部111、112と回転軸12とにそれぞれ点で接触されており、回転軸12が中心軸線を中心に回転すると、各球状部材191、192は回転軸12の中心軸線を中心に回転しながらそれぞれ自転して、接触部111、112と回転軸12との間に摩擦がかからないようになっている。そのため、接触部111、112の表面と回転軸12の表面とが摩耗して不純物(ダスト)が発生することが防止される。
【0019】
磁石14にはここでは表面がNiメッキされたものが用いられる。Niメッキにより磁石14の表面が酸化又は腐食することが防止され、磁石14の表面から不純物(ダスト)が発生しないようになっている。
【0020】
磁石14は回転軸12の外周側面に固定されている。
磁石14の外側にはコイル室16が配置され、コイル15はコイル室16内に配置されている。
【0021】
ここではコイル室16は、椀状のコイル室蓋部材17を有している。コイル室蓋部材17の縁部は筒部材11の内側側面に環状に密着して固定され、コイル室16の内部空間は磁石14が配置された空間から分離されている。
【0022】
そのため、コイル15が発熱して、コイル15の導線の被膜や、コイル15の導線を固定しているワニスやモールド材からガスが放出されても、放出されたガスは磁石14が配置された空間に拡散しないようになっている。
【0023】
コイル室蓋部材17は非磁性体であり、ここではアルミニウムが用いられ、コイル15と磁石14との間の部分の厚みは1mm以下にされている。コイル15と磁石14との間の部分の厚みは薄い方が、コイル15と磁石14との間の間隔が狭くなり、相互の磁気結合力を大きくできるため好ましい。
【0024】
コイル15にはコイル用電源18が電気的に接続されている。
コイル用電源18からコイル15に電流を流すと、コイル15が形成する磁力線が磁石14を貫通して、磁石14は回転力を受け、回転軸12と一緒に回転軸12の中心軸線を中心として回転するようになっている。
【0025】
第一例の真空用モーター10aは、回転軸12の回転角度を検知する回転検知部30aを有している。
回転検知部30aは、回転板21aとセンサ22aとを有している。
【0026】
図2は回転板21aの一例の平面図である。
回転板21aはリング形状の板であり、表面には信号を生成する符号が回転板21aの中心を中心とする円周に沿って配置されている。
【0027】
本実施例では、符号は、第一信号を生成する第一領域51と第二信号を生成する第二領域52とで構成されているが、第一〜第N信号を生成する第一〜第N領域(Nは3以上の自然数)で構成されている場合も本発明に含まれる。
【0028】
ここでは回転板21aは厚み方向に磁化された磁性体の板であり、第一領域51には開口が設けられ、第二領域52は開口以外の遮蔽部分で構成されている。従って、第一領域51はゼロの磁場(磁気信号)である第一信号を生成し、第二領域52は厚み方向の磁場(磁気信号)である第二信号を生成する。
【0029】
なお、第一、第二領域51、52の個々の構造は上記構成に限定されず、互いに異なる二方向にそれぞれ磁化された部分であり、第一、第二信号は互いに向きが異なる磁場(磁気信号)であってもよい。
【0030】
ここでは、第一領域51と第二領域52は、回転板21aの中心を中心とする円周に沿って交互に等間隔に配置されており、第一信号を第一の値とし、第二信号を第二の値とすると、第一、第二領域51、52で構成された符号は第一、第二の値を有し、第一の値と第二の値は前記円周に沿って交互に等間隔に配置されている。
【0031】
図1を参照し、回転板21aのリングの穴には回転軸12が挿通され、回転軸12の中心軸線が回転板21aの表面が位置する平面に対して直角に向けられた状態で、回転板21aは回転軸12に対して固定されている。回転板21aは回転軸12と同軸状に配置されている。
筒部材11のうち回転板21aが配置された空間は磁石14が配置された空間と連通されている。
【0032】
センサ22aは、回転板21aの表面と対向して配置され、第一、第二領域51、52が生成する第一、第二信号を検出できるようになっている。
ここではセンサ22aは磁気抵抗素子31を有している。磁気抵抗素子31は、磁気信号を受けると抵抗値が磁気信号の強さや向きに応じた値に変化する素子である。
磁気抵抗素子31はモールド樹脂32で覆われて封止されており、磁気抵抗素子31にゴミや水分が付着して劣化しないようになっている。
【0033】
センサ22aにはセンサ用電源27が電気的に接続されており、センサ22aは、第一、第二信号を受け取ると、第一、第二信号に応じて異なる電圧値の電気信号を出力するように構成されている。
【0034】
センサ22aには制御装置28が接続されている。
制御装置28は、センサ22aが出力する電気信号を受け取ると、受け取った電気信号から回転板21aの回転角度を求めることができるように構成されている。
【0035】
ここでは制御装置28は、受け取った電気信号の電圧値の変化の立ち上がり又は立ち下がりの数を数え、隣り合う二つの第一領域51の中心間の中心角又は隣り合う二つの第二領域52の中心間の中心角に数えたカウント値を積算することにより、回転板21aの回転角度を算出するように構成されている。
【0036】
また制御装置28は、回転板21aの回転角度が所定角度になると、コイル用電源18に制御信号を送信してコイル15への電流供給を停止させ、回転軸12の回転を停止させるように構成されている。
【0037】
回転検知部30aは、内部にセンサ22aが配置され、センサ22aの検知面と対向する部分には開口が設けられたセンサ室24aと、センサ室24aの開口に配置され、第一、第二信号を透過する透過窓23aとを有している。
【0038】
センサ室24aはここでは椀状のセンサ室蓋部材26を有している。センサ室蓋部材26の縁部は筒部材11の内側側面と接触部111とに亘って環状に密着して固定されており、センサ室24aの開口はここでは接触部111に設けられている。
【0039】
透過窓23aは加熱されてもガスを放出しない非磁性体からなり、第一、第二信号を透過できるようになっている。ここでは透過窓23aにはガラスが用いられるが、加熱されてもガスを放出しない非磁性体であればガラスに限定されず、例えばアルミニウムを用いることもできる。
【0040】
透過窓23aはセンサ室24aの開口を塞ぐように設けられ、センサ室24aの内部空間は回転板21aが配置された空間から分離されている。
そのため、コイル15や磁石14の発熱により、センサ22aが加熱されて、モールド樹脂32からガスが放出されても、放出されたガスは回転板21aが配置された空間に拡散しないようになっている。
【0041】
<真空用ロボットの構造>
第一例の真空用モーター10aを用いた真空用ロボットの構造を説明する。
図3は真空用ロボット40の内部構成図である。
【0042】
真空用ロボット40は、第一例の真空用モーター10aと、真空槽41と、真空槽41内を真空排気する真空排気装置42と、基板を保持する腕部43とを有している。
真空槽41の壁面には挿入口45が設けられている。
【0043】
真空用モーター10aの筒部材11の一端は、挿入口45の外周を取り囲んで真空槽41の壁面に環状に密着して固定され、筒部材11のうち回転板21aと磁石14とが配置される空間は挿入口45を介して真空槽41の内部空間と連通されている。
真空排気装置42により真空槽41内を真空排気すると、筒部材11のうち回転板21aと磁石14とが配置された空間も一緒に真空排気されるようになっている。
【0044】
回転軸12の一端は挿入口45を通って真空槽41内に挿入されており、腕部43は真空槽41内に配置され、回転軸12の前記一端に取り付けられている。回転軸12を回転軸12の中心軸線を中心に回転させると、腕部43も回転軸12と一緒に回転するようになっている。
【0045】
<真空用ロボットの使用方法>
上述の真空用ロボット40の使用方法を説明する。
【0046】
真空排気装置42により真空槽41内を真空排気し、真空雰囲気を形成する。このとき、筒部材11のうち回転板21aと磁石14とが配置された空間も真空排気され、真空雰囲気が形成される。以後、真空排気装置42による真空排気を継続して、真空槽41内の真空雰囲気と、回転板21aと磁石14とが配置された空間の真空雰囲気とを維持する。
【0047】
真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら、真空槽41内に基板を搬入し、腕部43上に配置する。
基板を回転移動させる回転角度をあらかじめ定めておく。
制御装置28が受け取る電気信号のカウント値を初期化する(ここではゼロにする)。
【0048】
コイル用電源18からコイル15に電流を流し磁力線を発生させ、発生させた磁力線を貫通させて磁石14に回転力を与え、回転軸12を回転板21aと腕部43と一緒に回転軸12の中心軸線を中心として回転させる。腕部43上の基板も回転軸12の中心軸線を中心として回転移動する。
【0049】
電流が流れたコイル15と、磁力線が貫通した磁石14はそれぞれ発熱し、コイル15と磁石14からの熱により回転板21aとセンサ22aとがそれぞれ加熱される。
磁石14と回転板21aはガスを放出する部材を有しておらず、加熱されても磁石14と回転板21aからガスは放出されない。
【0050】
一方、コイル15が加熱されると導線の被膜や導線を固定しているワニスやモールド材からガスが放出され、センサ22aが加熱されるとモールド樹脂32からガスが放出されるが、コイル室16とセンサ室24aは回転板21aと磁石14とが配置された空間から分離されており、回転板21aと磁石14とが配置された空間内にガスは拡散しない。
そのため、挿入口45を通って真空槽41内に不純物であるガスが拡散することは起こらず、ガスが基板に付着したり、真空槽41の内壁面に付着する問題は起こらない。
【0051】
回転板21aが回転すると、回転板21a表面の第一、第二領域51、52はセンサ22aと対面する位置を交互に通過する。
センサ22aは回転板21aの第一、第二領域51、52と対面すると、第一、第二信号に応じた電圧値の電気信号を出力し、制御装置28は電気信号の電圧値の変化の立ち上がり又は立ち下がりの数を数えて、数えたカウント値から回転板21aの回転角度を求める。
求めた回転板21aの回転角度が所定角度になったら、制御装置28はコイル用電源18に制御信号を送って、コイル15への電力供給を停止させ、回転軸12の回転を停止させる。
【0052】
このようにして、腕部43に保持された基板は、回転軸12の中心軸線を中心に所定角度回転移動した後、静止される。
真空槽41内の真空雰囲気を維持しながら基板を真空槽41の外側に搬出し、後工程に送る。
【0053】
<第二例の真空用モーターの構造>
第二例の真空用モーターの構造を説明する。
図4は第二例の真空用モーター10bの内部構成図である。第二例の真空用モーター10bの構造のうち、第一例の真空用モーター10aの構造と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
第二例の真空用モーター10bは、第一例の真空用モーター10aの回転検知部30aとは異なる構造の回転検知部30bを有している。
【0054】
第二例の真空用モーター10bの回転検知部30bの構造を説明する。
回転検知部30bは、回転板21bとセンサ22bとを有している。
図5は回転板21bの一例の平面図である。
回転板21bの材質と、第一、第二領域51、52の個々の構造は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aにおける前記材質、前記構造と同様であり、説明を省略する。
【0055】
回転板21b表面での第一、第二領域51、52の配置を説明する。
回転板21bの表面には互いに直径が異なる複数の円周R1〜R4が同心状に配置され、第一、第二領域51、52は各円周R1〜R4上に円周に沿って交互に配置されている。
【0056】
回転板21bの半径方向に沿った一組の第一、第二領域51、52で一の符号が構成されている。符号53は一の符号を構成する第一、第二領域51、52の組を示している。
各符号は円周に沿った位置毎に互いに異なる値にされている。
【0057】
従って、回転板21bの中心を始点とする一の半直線を基準線と呼び、基準線からの回転角度を絶対角度と呼ぶと、各符号から一の絶対角度が分かるようになっている。
図4を参照し、回転板21bの筒部材11内での配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aの筒部材11内での配置と同様であり、説明を省略する。
【0058】
センサ22bは複数の磁気抵抗素子311〜314を有している。
各磁気抵抗素子311〜314はモールド樹脂32で覆われて封止されており、磁気抵抗素子311〜314にゴミや水分が付着して劣化しないようになっている。
【0059】
センサ22bは、回転板21bの表面と対向して配置され、各磁気抵抗素子311〜314は回転板21bのうち互いに異なる円周R1〜R4上に配置されている。従って、各磁気抵抗素子311〜314は、互いに異なる円周R1〜R4上の第一、第二領域51、52からの第一、第二信号を検出できるようになっている。
【0060】
制御装置28には、符号と絶対角度との対応関係があらかじめ記憶されている。
制御装置28は、各磁気抵抗素子311〜314が出力する電気信号を受け取ると、受け取った一組の電気信号から一の符号を構成し、あらかじめ記憶された対応関係に基づいて、回転板21bの基準線からの回転角度(絶対角度)を求めるように構成されている。
回転板21bを回転させる前後で第一、第二の絶対角度をそれぞれ求め、第二の絶対角度から第一の絶対角度を減算すると、回転板21bの回転角度が算出される。
【0061】
回転検知部30bは、内部にセンサ22bが配置され、センサ22bの検知面と対向する部分には開口が設けられたセンサ室24bと、センサ室24bの開口に配置され、第一、第二信号を透過する透過窓23bとを有している。
センサ室24bと透過窓23bの構造は、第一例の真空用モーター10aのセンサ室24aと透過窓23aの構造と同様であり、説明を省略する。
【0062】
センサ室24bの内部空間は回転板21bが配置された空間から分離されており、センサ22bが加熱されて、モールド樹脂32からガスが放出されても、放出されたガスは回転板21bが配置された空間に拡散しないようになっている。
【0063】
第二例の真空用モーター10bは上述の真空用ロボット40において第一例の真空用モーター10aの代わりに用いることができる。第二例の真空用モーター10bを有する真空用ロボットの使用方法は、上述の回転板21bの角度算出方法以外は第一例の真空用モーター10aを有する真空用ロボット40の使用方法と同様であり、説明を省略する。
【0064】
第二例の真空用モーター10bでは、第一例の真空用モーター10aと比較して、制御装置28のカウンタ値を初期化する手間が不要になるという利点がある。また、算出した回転角度の正負の符号から回転板21bの回転方向が分かるという利点がある。
【0065】
<第三例の真空用モーターの構造>
第三例の真空用モーターの構造を説明する。
図6は第三例の真空用モーター10cの内部構成図である。第三例の真空用モーター10cの構造のうち、第一例の真空用モーター10aの構造と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
第三例の真空用モーター10cは、第一例の真空用モーター10aの回転検知部30aとは異なる構造の回転検知部30cを有している。
【0066】
第三例の真空用モーター10cの回転検知部30cの構造を説明する。
回転検知部30cは、回転板21cとセンサ22cと投光部25cとを有している。
回転板21cはリング形状の板であり、表面には、第一信号を生成する第一領域と第二信号を生成する第二領域とで構成された符号が、回転板21cの中心を中心とする円周に沿って配置されている。
【0067】
本実施例では、回転板21cは表面が光を反射できるようにされた板であり、第一領域には開口が設けられ、第二領域は開口以外の反射部分で構成されている。従って、第一、第二領域に光が照射されると、第一領域は光を反射せずに強度がゼロの光信号である第一信号を生成し、第二領域は光を反射して強度がゼロより大きい光信号である第二信号を生成するようになっている。
【0068】
なお、第一、第二領域の個々の構造は上記構成に限定されず、互いに異なる反射率の部分であり、第一、第二信号は互いに強度が異なる光信号であってもよい。第一、第二領域は例えば反射率の異なるインクを塗布されて形成される。
【0069】
ここでは回転板21cの表面内での第一、第二領域の配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aにおける第一、第二領域51、52の配置(図2参照)と同様であり、説明を省略する。
また回転板21cの筒部材11内での配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aの筒部材11内での配置と同様であり、説明を省略する。
【0070】
投光部25cとセンサ22cは、回転板21cの表面と対向して配置され、投光部25cは第一、第二領域に光を照射し、センサ22cは第一、第二領域が生成する第一、第二信号を検出できるようになっている。
【0071】
投光部25cは発光素子35を有し、センサ22cは受光素子33を有している。発光素子35は電圧を印加されると発光する素子であり、受光素子33は光信号を受けると光信号の強度に応じた電圧値の電気信号を出力する素子である。
発光素子35と受光素子33はそれぞれ透明なモールド樹脂36、34で覆われて封止されており、発光素子35と受光素子33にゴミや水分が付着して劣化しないようになっている。
【0072】
投光部25cとセンサ22cにはセンサ用電源27がそれぞれ電気的に接続されている。投光部25cは電圧を印加されると第一、第二領域51、52に光を照射し、センサ22cは第一、第二信号を受け取ると第一、第二信号に応じた電圧値の電気信号を出力するようになっている。
【0073】
回転検知部30cは、内部に投光部25cとセンサ22cとが配置され、投光部25cの投光面とセンサ22cの検知面とそれぞれ対向する部分に開口が設けられたセンサ室24cと、センサ室24cの開口に配置され、第一、第二信号を透過する透過窓23cとを有している。
センサ室24cの構造は第一例の真空用モーター10aのセンサ室24aの構造と同様であり、説明を省略する。
【0074】
透過窓23cは加熱されてもガスを放出しない光透過性部材からなり、第一、第二信号を透過できるようになっている。ここでは透過窓23cにはガラスが用いられるが、加熱されてもガスを放出しない光透過性部材であればガラスに限定されない。
【0075】
透過窓23cはセンサ室24cの開口を塞ぐように設けられ、センサ室24cの内部空間は回転板21cが配置された空間から分離されている。
そのため、コイル15や磁石14の発熱により、投光部25cとセンサ22cとが加熱されて、モールド樹脂36、34からガスが放出されても、放出されたガスは回転板21cが配置された空間に拡散しないようになっている。
【0076】
第三例の真空用モーター10cは上述の真空用ロボット40において第一例の真空用モーター10aの代わりに用いることができる。第三例の真空用モーター10cを有する真空用ロボットの使用方法は第一例の真空用モーター10aを有する真空用ロボット40の使用方法と同様であり、説明を省略する。
【0077】
上述の説明では、回転板21cの第一、第二領域の配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aの第一、第二領域51、52の配置(図2参照)と同様に構成されていたが、第二例の真空用モーター10bの回転板21bの第一、第二領域51、52の配置(図5参照)と同様に構成されていてもよい。この場合には、センサ22cに複数の受光素子を設け、各受光素子を回転板21cのうち互いに異なる円周上に配置すればよい。
【0078】
また、投光部25cに複数の発光素子を設け、センサ22cに発光素子と同数の複数の受光素子を設け、各発光素子と受光素子の一対ずつを回転板21cのうち互いに異なる円周上に配置してもよい。
【0079】
<第四例の真空用モーターの構造>
第四例の真空用モーターの構造を説明する。
図7は第四例の真空用モーター10dの内部構成図である。第四例の真空用モーター10dの構造のうち第一例の真空用モーター10aの構造と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
第四例の真空用モーター10dは、第一例の真空用モーター10aの回転検知部30aとは異なる構造の回転検知部30dを有している。
【0080】
第四例の真空用モーター10dの回転検知部30dの構造を説明する。
回転検知部30dは、回転板21dとセンサ22dと投光部25dとを有している。
回転板21dはリング形状の板であり、表面には、第一信号を生成する第一領域と第二信号を生成する第二領域とで構成された符号が、回転軸12の中心軸線を中心とする円周に沿って配置されている。
【0081】
本実施例では、回転板21dは光を遮断する板であり、第一領域には開口が設けられ、第二領域は開口以外の遮蔽部分で構成されている。従って、第一、第二領域の裏面側から光が照射されると、第一領域は光を透過して強度がゼロより大きい光信号である第一信号を生成し、第二領域は光を遮断して強度がゼロの光信号である第二信号を生成する。
【0082】
なお、第一、第二領域は上記構成に限定されず、互いに異なる光透過率の部分であり、第一、第二信号は互いに強度が異なる光信号であってもよい。例えば、回転板21dは光を透過する板であり、第一領域又は第二領域には回転板21dよりも光透過率の小さいインクが塗布されて形成される。
【0083】
ここでは、回転板21dの表面内での第一、第二領域の配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aにおける第一、第二領域51、52の配置と同様であり、説明を省略する。
また回転板21dの筒部材11内での配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aの筒部材11内での配置と同様であり、説明を省略する。
投光部25dとセンサ22dの構造は第三例の真空用モーター10cの投光部25cとセンサ22cの構造とそれぞれ同様であり、説明を省略する。
【0084】
センサ22dは回転板21dの表面と対向して配置され、投光部25dは回転板21dから見てセンサ22dとは逆側に、回転板21dの裏面と対向して配置されている。投光部25dは第一、第二領域51、52の裏面側に光を照射し、センサ22dは第一、第二領域51、52が生成する第一、第二信号を検出できるようになっている。
【0085】
回転検知部30dは、内部にセンサ22dが配置され、センサ22dの検知面と対向する部分には開口が設けられたセンサ室24dと、センサ室24dの開口に配置され、第一、第二信号を透過する透過窓23dとを有している。
センサ室24dと透過窓23dの構造は、第三例の真空用モーター10cのセンサ室24cと透過窓23cの構造と同様であり、説明を省略する。
コイル15や磁石14の発熱により、センサ22dが加熱されて、モールド樹脂からガスが放出されても、放出されたガスは回転板21dが配置された空間に拡散しないようになっている。
【0086】
また、回転検知部30dは、内部に投光部25dが配置され、投光部25dの投光面と対向する部分には開口が設けられた投光室28と、投光室28の開口に配置され、光を透過する副透過窓27とを有している。
【0087】
投光室28はここでは椀状の投光室蓋部材29を有している。投光室蓋部材29の縁部は筒部材11の内側面と環状に密着して固定されており、投光室28の開口はここでは投光室蓋部材29に設けられている。
【0088】
副透過窓27は加熱されてもガスを放出しない光透過性部材からなり、ここではガラスが用いられるが、加熱されてもガスを放出しない光透過性部材であればガラスに限定されない。
副透過窓27は投光室28の開口を塞ぐように設けられ、投光室28の内部空間は回転板21dが配置された空間から分離されている。
そのため、コイル15や磁石14の発熱により、投光部25dが加熱されて、モールド樹脂からガスが放出されても、放出されたガスは回転板21dが配置された空間に拡散しないようになっている。
【0089】
第四例の真空用モーター10dは上述の真空用ロボット40において第一例の真空用モーター10aの代わりに用いることができる。第四例の真空用モーター10dを有する真空用ロボットの使用方法は第一例の真空用モーター10aを有する真空用ロボット40の使用方法と同様であり、説明を省略する。
【0090】
上述の説明では、回転板21dの第一、第二領域の配置は、第一例の真空用モーター10aの回転板21aの第一、第二領域51、52の配置(図2参照)と同様に構成されていたが、第二例の真空用モーター10bの回転板21bの第一、第二領域51、52の配置(図5参照)と同様に構成されていてもよい。この場合には、センサ22dに複数の受光素子を設け、各受光素子を回転板21dのうち互いに異なる円周上に配置すればよい。
【0091】
また、投光部25dに複数の発光素子を設け、センサ22dに発光素子と同数の複数の受光素子を設け、各発光素子と受光素子の一対ずつを回転板21dのうち互いに異なる円周上に配置してもよい。
【0092】
上述の第一〜第四例の真空用モーター10a〜10dにおいて、回転軸12を中心軸線に平行な方向に移動できるように構成してもよい。光信号は磁気信号に比べて到達距離が長いため、第三、第四例の真空用モーター10c、10dでは、第一、第二例の真空用モーター10a、10bに比べて、回転軸12の中心軸線に平行な方向の移動範囲を広くすることができる。
【符号の説明】
【0093】
10a〜10d……真空用モーター
11……筒部材
12……回転軸
14……磁石
15……コイル
21a〜21d……回転板
22a〜22d……センサ
23a〜23d……透過窓
24a〜24d……センサ室
51……第一領域
52……第二領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の筒部材と、
前記筒部材の内側に前記筒部材と同軸状に配置された回転軸と、
前記回転軸の外周側面に設けられた磁石と、
前記磁石の外側に前記磁石と対向して配置されたコイルと、
リング形状の板であり、リングの穴には前記回転軸が挿通され、表面には信号を生成する符号が前記回転軸の中心軸線を中心とする円周に沿って配置された回転板と、
前記回転板の前記表面と対向して配置され、前記信号を検出できるセンサと、
を有し、
前記回転板が配置された空間は真空排気装置に接続されて真空排気される真空用モーターであって、
内部に前記センサが配置され、前記センサと対向する部分には開口が設けられたセンサ室と、
前記開口に配置され、前記信号を透過する透過窓と、
を有し、
前記透過窓は前記開口を塞ぐように設けられ、前記センサ室の内部空間は前記回転板が配置された空間から分離された真空用モーター。
【請求項2】
前記符号は、第一信号を生成する第一領域と第二信号を生成する第二領域とで構成され、前記センサは前記第一、第二信号を検出できる請求項1記載の真空用モーター。
【請求項3】
前記センサは磁気抵抗素子を有し、前記第一、第二信号は互いに向きが異なる磁気信号であり、前記透過窓は非磁性体からなる請求項2記載の真空用モーター。
【請求項4】
前記回転軸の中心軸線は、前記回転板の前記表面が位置する平面に対して直角に向けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の真空用モーター。
【請求項5】
前記符号は第一、第二の値を有し、前記第一、第二の値は前記円周に沿って交互に等間隔に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の真空用モーター。
【請求項6】
前記符号は前記円周に沿った位置毎に互いに異なる値にされた請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の真空用モーター。
【請求項7】
前記透過窓はガラスである請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の真空用モーター。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の真空用モーターと、
真空槽と、
前記真空槽内を真空排気する真空排気装置と、
基板を保持する腕部と、
を有し、
前記真空用モーターの前記筒部材の一端は前記真空槽に設けられた挿入口に接続され、
前記回転軸の一端は前記挿入口を通って前記真空槽内に挿入され、
前記腕部は前記真空槽内に配置され、前記回転軸の前記一端に取り付けられた真空用ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231652(P2012−231652A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100015(P2011−100015)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】