説明

真空蒸着装置及び膜形成方法

【課題】 例えば大曲率、大口径の部材に対しても均一の膜厚の膜を形成しうる真空蒸着装置を提供する。
【解決手段】 本発明の真空蒸着装置であって、部材10を支持するとともに、前記部材10をその中心を通る第1軸14の回りに自転させ、かつ前記第1軸14とは異なる第2軸15の回りに公転させる機構20と、前記第2軸15から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源12と、前記機構20により自転及び公転される部材10と前記蒸発源12との間に配置され、当該自転及び公転されている部材10に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは2以上の整数)の遮蔽板17と、を備え、前記n個の遮蔽板17のそれぞれが前記自転及び公転されている部材10に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をAi(ただし、i=1〜n)とするとき、Aiのそれぞれが式Ai=(A1+A2+・・・+An)×(1/n±1/5n)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置及び膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にレンズやプリズム等のような光学素子への成膜は、真空蒸着装置によって行われることが多い。従来、成膜の対象物である基板(例えばレンズ)に、面内における膜厚分布が均一な光学薄膜を成膜するため、基板を自転及び公転させながら成膜を行う、いわゆる遊星回転型の蒸着装置が使用されている。更に、遊星回転型の蒸着装置の、蒸発源と基板との間に膜厚を補正する遮蔽板を設置し、基板が平板又は曲面をもつ基板であっても、蒸発源から飛来する蒸着粒子の到達距離、飛来角度の関係から膜厚分布にむらが生じないように、遮蔽板の形状を最適化してきた。このような技術は、特許文献1に開示されている。
【0003】
近年、露光装置に用いられるレンズは、解像性能を向上するために、大曲率、大口径化が進んでいる。基板に堆積する膜厚は、基板面の法線方向と蒸着粒子の飛来方向とのなす角の余弦に比例するので、曲率、口径の大きいレンズの周辺ほど、膜厚が薄くなる傾向が強い。よって、大曲率、大口径レンズに対して膜厚を均一に補正するには、遮蔽板でレンズの中心に近いほど、遮蔽板によって遮蔽される蒸着粒子量を増やさなければならない。そのため、遮蔽板の形状が急峻化するか、遮蔽板の枚数を増やす(面積を大きくする)必要がある。
【0004】
更に、露光装置では、数十枚のレンズやミラーからの投影光学系で、瞳面内における透過率のむらを低減するために、レンズ面内で反射防止膜の膜厚分布を制御し光学特性(透過率の入射角度特性)を変化させて所望の透過率分布を得ることがなされている。このような技術は、特許文献2に開始されている。
【0005】
そして、膜厚分布をさらに高精度に制御する要求が高まっている。したがって、大面積(大口径)の基板面内で、精度の高い膜厚分布特性の光学薄膜を成膜することは非常に重要になっている。
【0006】
レンズ面内の膜厚分布特性に所望の値から誤差が発生する蒸着装置側の要因として、レンズを固定した回転ドームが偏心して、設置した遮蔽板で遮蔽するべき蒸着粒子とレンズとの位置関係がずれてしまうことがある。これを防止する技術として、ドームの回転軸の偏心を防いだ蒸着装置が特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開平11-106902号公報
【特許文献2】特開2004-271544号公報
【特許文献3】特開平06-337310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の遮蔽板や蒸着装置で、大曲率、大口径のレンズを精度の高い膜厚分布特性で成膜するには、遮蔽板の形状を複雑にするか、遮蔽板の枚数を増やす(面積を大きくする)等の必要がある。そのため、遮蔽板の設置位置の僅かなずれや、遮蔽板自体の形状誤差により、レンズ面内の膜厚分布が所望の値からずれてしまうという問題がある。
【0008】
更に、従来の膜厚を補正するための遮蔽板は、レンズ面内の膜厚分布を均一化することを目的としつつも、製造上の再現性や誤差について十分な対策がなされていなかった。
【0009】
レンズ面内における膜厚分布の製造再現性が悪いと、露光装置の光学系に使用されるような高精度な膜厚分布が求められ、且つ高価な光学素子では、歩留まりが悪くなり生産コストが大きくなる。したがって、レンズ面内における膜厚分布の製造誤差を低減することは大きな課題である。
【0010】
本発明は、例えば大曲率、大口径の部材に対しても均一の膜厚の膜を形成しうる真空蒸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面は、真空蒸着装置であって、部材を支持するとともに、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは2以上の整数)の遮蔽板と、を備え、前記n個の遮蔽板のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をAi(ただし、i=1〜n)とするとき、Aiのそれぞれが下記の式を満たすように、前記n個の遮蔽板の形状が定められている。
Ai=(A1+A2+・・・+An)×(1/n±1/5n)
【0012】
本発明の第2の側面は、真空蒸着装置であって、部材を支持し、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは1以上の整数)の遮蔽板と、を備え、前記n個の遮蔽板のそれぞれは、前記部材の前記蒸着粒子が付着する面の前記第1軸との交点と前記蒸発源とを結ぶ直線が前記遮蔽板の前記蒸着粒子が付着する面と交わる点が前記部材の公転に伴って移動する軌道円によって2つの領域に分割されるように配置され、前記軌道円によって分割された前記n個の遮蔽板における2n個の領域のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をBi(ただし、i=1〜2n)とするとき、Biのそれぞれが下記の式を満たすように、前記n個の遮蔽板の形状が定められている。
Bi=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【0013】
本発明の第3の側面は、真空蒸着装置であって、部材を支持し、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは1以上の整数)の遮蔽板と、を備え、前記n個の遮蔽板のそれぞれは、前記部材の前記蒸着粒子が付着する面の前記第1軸との交点と前記蒸発源とを結ぶ直線が前記遮蔽板の前記蒸着粒子が付着する面と交わる点が前記部材の公転に伴って移動する軌道円の中心を通りかつ前記第2軸と平行な直線を含む平面によって2つの領域に分割され、当該分割によって前記n個の遮蔽板に生じる2n個の領域のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をCi(ただし、i=1〜2n)とするとき、Ciのそれぞれ下記の式を満たす前記平面が存在するように、前記n個の遮蔽板の形状が定められている。
Ci=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば大曲率、大口径の部材に対しても均一の膜厚の膜を形成しうる真空蒸着装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態としての真空蒸着装置を図面に基づいて説明する。図1Aは、本発明で使用しうる真空蒸着装置の一例を示す概略図である。
【0016】
本実施形態の真空蒸着装置は、真空排気が可能なように密封された真空成膜槽内11で成膜中に、成膜すべき部材10を支持し、部材10の中心を通る自転軸14の回りに自転させながら、公転軸15の回りを公転することができる遊星型駆動機構を備える。自転軸14は、部材10を自転させる第1軸を構成し、公転軸15は、部材10を公転させる、第1軸とは異なる第2軸を構成している。図1Aでは、自転軸14と公転軸15とが平行に設けられているが、図1Bのように、自転軸14と公転軸15とが平行でない遊星型駆動機構でもかまわない。
真空成膜槽11において、公転軸15から距離をおいて、部材10に膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源12が配置される。
また、真空成膜槽11において、蒸発源12と部材10との間に、部材10に対する蒸着粒子の付着を遮蔽して、膜厚分布を制御するn個の遮蔽板17が配置される。ここで、nは2以上の整数である。
【0017】
本実施形態では、遮蔽板17の形状をその設置面内16で最適化する。本実施形態では公転軸15に垂直な平面を遮蔽板17の設置面16としたが、蒸発源12から部材10との間で、蒸発源12から遮蔽板17を投影した全ての投影像は、遮蔽板17と同義な位置関係である。
【0018】
公知の膜形成方法である、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法などによって成膜する場合でも、問題はない。
【0019】
以下、本実施形態における遮蔽板17の具体的な形状の定め方について説明する。
【0020】
[実施例1]
実施例1で用いる真空蒸着装置の具体的な数値は以下のようになっている。蒸発源12のある床面から成膜すべき部材であるガラス基板10までの高さが1100mm、遮蔽板17の設置位置の高さが980mmである。また、公転軸15から自転軸14までの長さが410mm、公転軸15から蒸発源12までの長さが250mmとなっている。遊星駆動の自転と公転との比率は自転と公転の回転方向が逆向きで2.471である。
【0021】
実施例1で用いる基板10は、外径300mm、曲率半径300mmの凸レンズであり、基板10の蒸着粒子が付着する面の内に均一な膜厚分布でSiO2を成膜する例を説明する。本実施例において、均一な膜厚は、蒸着粒子が付着する面内の膜厚分布が98%以上のものを意味する。本実施例では、所望の分布特性を面内で均一な膜厚(膜厚分布98%)とするが、均一な膜厚を98%以外の所望の値とすることに何ら限定されるものではない。その他、SiO2の成膜条件は、イオンアシスト蒸着法を用いて成膜温度を200度、成膜時の圧力を1×10-3Paとした。
【0022】
実施例1の遮蔽板17の最終形状と設置位置は、図2で示すようになっている。図2は、蒸発源12から高さ980mmに位置で公転軸15に垂直な方向に切った時の断面図、つまり遮蔽板の設置平面16における遮蔽板17の形状である。そして、蒸発源12の真上から90度毎に直線のフレームAL、BL、CL、DL上に合計4枚の遮蔽A、B、C、Dを設置した。
【0023】
次に、実施例1での各遮蔽板A〜Dの形状の決定方法について説明する。
【0024】
まず初めに、遮蔽板17を設置しない状態で、凸レンズ10を遊星回転させながら成膜を行う。図3のグラフでMOは、成膜したSiO2のレンズ中心の膜厚で規格化したレンズの径方向位置おける膜厚の分布である。この時、本真空蒸着装置において蒸発源12が蒸着粒子を放出する角度の分布を同時に求めておく。
【0025】
レンズ10の表面の各位置に堆積する膜厚は、蒸発源12から堆積位置までの距離の2乗に反比例し、蒸発源12の放出角度αの分布より求めたその角度位置での蒸着粒子量と、各蒸着位置での法線方向と蒸着粒子の飛来方向とのなす角の積に比例する。この関係より、膜厚の厚く堆積する位置ほど遮蔽すると同時に、本発明の目的である、再現良く同じ面内における膜厚の分布特性となる光学薄膜を成膜するための遮蔽板17へと、次の条件を満たすように形状を変形させていく。
【0026】
この遮蔽板17の形状を決めるということは、蒸着粒子の遮蔽領域を決めることであり、このとき遮蔽量は一意に決定する。逆に、膜厚の分布を98%以上にするための遮蔽量を決めても、遮蔽する領域の組み合わせは、遮蔽板17の枚数、位置等を制限しなければ、無数に存在する。
【0027】
つまり、遮蔽板17の形状を決定することは、無数に存在する遮蔽すべき領域の組み合わせの中から、膜厚の分布特性を再現良く成膜するための条件を見出し、遮蔽板の形状、設置位置を効率よく見つけ出すことに他ならない。
【0028】
本実施例では、各遮蔽板17が蒸着粒子を遮蔽する量が、全遮蔽量を遮蔽板17の数(n=4)で割った値になるよう計算機で計算した結果、図2の形状に至った。すなわち、n個の遮蔽板17のそれぞれによる蒸着粒子の遮蔽量をAi(ただし、i=1〜n)とするとき、Aiのそれぞれが下記の式を満たすように、n個の遮蔽板17の形状が定められる。本実施例では、nは4であるが2以上の整数であればよい。
Ai=(A1+A2+・・・+An)×(1/n±1/5n)
【0029】
以下、図17を用いて、レンズ(基板)10に均一な膜厚の分布を与える遮蔽板の形状を算出する方法について説明する。
【0030】
レンズ10を径方向にn分割した場合、遮蔽板が存在しない場合における、i番目の領域に付着する蒸着粒子の膜厚diは、蒸発源12の放出角度の分布をf(α)、蒸着粒子の飛来角をβ、レンズと蒸発源との距離をLとすると以下のようになる。なお、kは、比例係数である。
di=k f(α)cosβ/L2
(なお、実施例では f(α)=cosn(α)、n=1とした。)
遮蔽板を設置しない場合の、成膜時間tに付着するレンズのi番目の領域の膜厚Diは、次のようになる。
Di=∫0 t di dt
m個の遮蔽板のそれぞれにより遮蔽された膜厚をM1i,M2i,・・・Mmiとすると、Mmiも上述のDiと同様の式によって表現される。
【0031】
そうすると、m個の遮蔽板を設置した場合における、成膜時間tに付着するレンズのi番目の領域の膜厚Diは、次のようになる。
Di=∫0 t di dt−(M1i+M2i+・・・+Mmi)
実施例1においては、M1i=M2i=・・・=Mmiであるから、Diは次のようになる。
Di=∫0 t di dt−mM1i
レンズのn個の分割された領域のそれぞれにおける膜厚Diについて、D=D2=・・・= Di =・・・= Dnとするためのn個の遮蔽板のうちの一つの遮蔽板Aの形状を計算する。
【0032】
図18に示す計算フローについて説明する。ステップS1において、遮蔽板Aの形状を仮設定の上で上述の各領域の膜厚Diを計算する。ステップ2で、Diの最大値DmaxによってDiを規格化し、規格化された値Qi(Di/Dmax)のすべてが目標値である0.98以上か否かを判定する。ステップS2でQiのすべてが0.98以上であると判定されれば、仮設定された形状が本決定されて計算フローは終了する。
【0033】
ステップS2でQiの少なくとも1つが0.98未満であると判定されれば、計算フローはステップS3へ進められ、まず、遮蔽板Aを微小変形する。ステップS4で、微小変形された遮蔽板Aの形状に基づいて膜厚Diが再度計算される。
【0034】
ステップS5において、メリット関数fmerit=√1/nΣi=1n(1-Qi)2 が計算され、メリット関数fmeritが悪化している場合には、遮蔽板Aの微小変形方向とは逆方向に遮蔽板Aを微小変形させると判定される。メリット関数fmeritが改善している場合には、遮蔽板Aの微小変形方向に遮蔽板Aをさらに微小変形させると判定され、メリット関数fmeritに変化がない場合には遮蔽板Aの微小変形を中止させると判定される。ステップS6において、ステップS5の判定結果に従って遮蔽板Aが変形される。計算フローはステップ1に戻り、膜厚Diが計算される。そして、膜厚分布が目標値の0.98以上となるまで遮蔽板Aの形状を求める計算フローが繰り返される。
【0035】
遮蔽板Aの形状が計算されると、同様にして、他の遮蔽板B,C、・・の形状を計算することができる。
【0036】
図3のグラフBは、遮蔽板Bのみを設置したときの、遮蔽板を全く設置しないで成膜したSiO2のレンズ中心の膜厚で規格化したレンズの径方向の位置に対する膜厚の分布である。グラフB+Dは、遮蔽板Bと遮蔽板Dとの2つの遮蔽板を設置した場合の膜厚の分布である。グラフA+B+Dは、遮蔽板A、B、Dの3つの遮蔽板を設置した場合の膜厚の分布である。グラフA+B+C+Dは、遮蔽板A〜Dの4つの遮蔽板を設置した場合の膜厚の分布である。
【0037】
グラフMOとグラフBとに囲まれた面積が、遮蔽板Bにより遮蔽された遮厚に相当し、グラフBとグラフB+Dとに囲まれた面積が、遮蔽板Dにより遮蔽された遮厚に相当する。また、グラフB+DとグラフA+B+Dとに囲まれた面積が、遮蔽板Aにより遮蔽された遮厚に相当し、グラフA+B+DとグラフA+B+C+Dとに囲まれた面積が、遮蔽板Cにより遮蔽された遮厚に相当する。
【0038】
遮蔽板A〜Dのそれぞれによるレンズの径方向に沿う遮蔽量の分布特性は同一であり、また、遮蔽板A〜Dのそれぞれによる遮蔽量は、全遮蔽量を4等分したもの(1/n±1/5n:n=4)であることがわかる。
【0039】
この時、SiO2の膜厚は、蒸発源12から付着位置までの距離の2乗に反比例するので、蒸発源12に最も近い遮蔽板Aが最も面積が小さく、蒸発源12から最も離れた遮蔽板Cが最も面積が大きい形状となっている。
【0040】
次に、4つの遮蔽板による膜厚の均一化の作用を保ったまま、遮蔽板B、D、A’、C’が遮蔽する膜厚が5:5:7:3となる様に、変形させた場合の遮蔽板A’、C’の形状が図2の遮蔽板A’、C’の形状である。また、この時、図4においてグラフでB+DとグラフA’+B+Dとに囲まれた面積が遮蔽板A’により遮蔽された膜厚であり、グラフA’+B+DとグラフA’+B+C’+Dとに囲まれた面積が遮蔽板C’により遮蔽された膜厚である。
【0041】
図5は、4つの遮蔽板A,B,C,Dを設置した場合におけるレンズ10の径方向の位置の膜厚の分布を最も厚い膜厚で規格化したグラフである。また、図6は、4つの遮蔽板A’,B,C’,Dを設置した場合における同様のグラフである。遮蔽板A,B,C,Dが位置ずれなく設置された場合の膜厚の分布ABCD(図5)及び遮蔽板A’,B,C’,Dが位置ずれなく設置された場合の膜厚の分布A’,B,C’,Dは、いずれも98%以上と非常に高精度に膜厚の分布が制御されている。
【0042】
図5、図6のA+、C+、A’+、C’+は、遮蔽板A、C、A’、C’がそれぞれ公転軸方向に、A−、C−、A’−、C’−は、その逆方向に約10mmの設置誤差が生じたときの膜厚の分布である。
【0043】
遮蔽量をほぼ均等に分割した遮蔽板A、C、B、Dは、遮蔽板A、Cに設置誤差を与えても、膜厚分布は、図5を見ると、最悪値で0.4%悪化するものの、ほとんど変化無く98%以上の値を保っていることが分かる。
【0044】
遮蔽量を5:5:7:3とした遮蔽板B、D、A’、C’は、遮蔽板A’による遮蔽量が増え、C’による遮蔽量が減っている。そのため、遮蔽板A’、C’に設置誤差を与えた場合の膜厚の分布に与える影響は、遮蔽板A’の寄与が大きくなり、遮蔽板C’の寄与は小さくなる。図6を見ると、遮蔽板A’に設置誤差を与えると、最悪値で1.5%程度悪化する。遮蔽板C’による遮蔽量は、もともと変動値が小さいので更に小さくなるものの、ほとんど変化が見られない。
【0045】
よって、それぞれの遮蔽板17に同等の設置誤差又は形状誤差が予測される場合、各遮蔽板17による遮蔽量を均等に配分しておいた方が、誤差が平均化され望ましい。そして、各遮蔽板17による遮蔽量が均等配分値から20%の誤差(1/n±1/5n:n=4)がある場合が、所望の膜厚の分布を満たさなくなる限界である。均等配分値より20%以内の許容範囲で、所望の膜厚の分布が±3%以内で制御可能であるといえる。
【0046】
以上、説明したように、実施例1の遮蔽板17は、高精度にレンズ面内における膜厚の分布を制御でき、設置誤差に対し膜厚の分布の変動が小さいので、レンズ面内における膜厚の分布の再現性が良い成膜に適している。
【0047】
[実施例2]
実施例2で用いる真空蒸着装置の具体的な数値は以下のようになっている。蒸発源12のある床面からガラス基板10までの高さが1600mm、遮蔽板の設置位置の高さが1490mmである。公転軸15から自転軸14までの長さ、公転軸15から蒸発源12までの長さがそれぞれ500mm、300mmである。遊星駆動の自転と公転との比率は自転と公転の回転方向が逆向きで2.471である。
【0048】
実施例2で用いる基板10は、外径316mm、曲率半径350mmの凹レンズとし、レンズの中心19を自転軸14に一致させ、レンズ面内における膜厚の分布が均一となるようにMgF2を成膜する際の例を記載する。よって、本実施例における均一な膜厚とは、面内における膜厚の分布が98%以上をいうものとする。その他、MgF2の成膜条件は、成膜温度を250度、成膜時の圧力を2×10-4Paとした。
【0049】
実施例2の遮蔽板17の最終形状と設置位置は、図7で示すようになっている。図7は、蒸発源12から高さ1490mmの位置で公転軸15に垂直な方向に切った時の断面図、つまり遮蔽板の設置平面16における遮蔽板17の形状である。そして、蒸発源12の真上に配置した直線のフレームAL上に1つの遮蔽板A55を設置した。
【0050】
図7のOは、レンズ10の蒸着粒子が付着する面の自転軸14との交点(レンズ中心)19と蒸発源12とを結ぶ直線が遮蔽板17の蒸着粒子が付着する面と交わる点がレンズ10の公転に伴って移動する軌道円である。この軌道円Oの中心はO0である。
【0051】
次に、実施例2における遮蔽板Aの形状の決定方法について説明する。
【0052】
遮蔽板Aの最適形状を形成していくための条件は、遮蔽板Aを、図7の軌道円Oによって分割される2個の領域Ai、Aoにおいて蒸着粒子を遮蔽する量が均等となるように設けることである。このようにすれば、直線ALと平行方向に遮蔽板Aの設置誤差が生じても、膜厚の分布に与える影響は小さくなる。この条件に従い計算機で計算した結果、図7のA55に示される形状に至った。
【0053】
図7では更に、各領域Ai、Aoでの遮蔽量を5:5の均等とした遮蔽板A55から遮蔽量の比を4:6、3:7へと変えた遮蔽板A64、A73の形状も示す。図8のグラフM0は、遮蔽板17を設置しないで成膜したMgF2の膜厚分布をレンズ中心の膜厚で規格化したグラフでり、MAは、遮蔽板17を設置して膜厚を均一補正したときの膜厚の分布である。グラフA55、A64、A73は、グラフM0とグラフMAで囲まれた面積、つまり、膜厚の分布を均一にするために遮蔽した全膜厚を、2つの領域Ai、Aoそれぞれによる遮蔽量に分割する分割線である。グラフA55は、レンズの径方向の位置に沿って膜厚を均一化すると共に、遮蔽量を2等分(1/2n±1/10n:n=1)していることがわかる。すなわち、軌道円Oによって分割されたn個の遮蔽板17における2n個の各領域による蒸着粒子の遮蔽量をBi(i=1〜2n)とするとき、Biのそれぞれが下記の式を満たすようにn個の遮蔽板17の形状が定められる。本実施例において、nを1としたが、1以上の整数であれば1でなくても構わない。
Bi=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【0054】
図9、図10、図11は、それぞれ遮蔽板A55、A64、A73を用いて成膜したときの、レンズ径方向位置に対する、レンズ面内で最も厚い膜厚で規格化したときの膜厚分布を示すグラフである。レンズ面内における膜厚の分布は、いずれも98%以上となっており、面内における膜厚の分布が非常に高精度に制御されて均一である。
【0055】
更に、図9〜図11におけるグラフA55+、A64+、A73+は、遮蔽板A55、A64、A73がそれぞれ公転軸方向に、A55−、A64−、A73−は、その逆方向に約10mmの設置誤差が生じたときのレンズ面内における膜厚の分布である。
【0056】
各領域Ai、Aoで遮蔽量をほぼ均等に分割した遮蔽板A55から、Aoの遮蔽比率を大きくしていったA64、A73になるに従い、遮蔽板に与えた設置誤差が同じでも、面内における膜厚の分布は、A73で98.5%となり、より悪化し易くなる。
【0057】
よって、遮蔽板17は軌道円Oで分割した時、各領域で遮蔽量を均等に配分しておいた方が、誤差に対する膜厚の分布の変動が小さくなり望ましい。そして、遮蔽板の各領域での遮蔽量が均等分割からずれると影響が大きくなるが、20%程度の誤差(1/2n±1/10n:n=1)は許容できる。
【0058】
以上、説明したように、実施例2の遮蔽板17は、面内における膜厚の分布を高精度に制御でき、設置誤差に対して面内における膜厚の分布の変動が小さいので、面内における膜厚の分布の再現性の良い成膜に適している。
【0059】
[実施例3]
実施例3で用いる真空蒸着装置の具体的な数値は以下のようになっている。蒸発源12のある床面からガラス基板10までの高さが1000mm、遮蔽板17の位置の高さが980mmである。また、公転軸15から自転軸14までの長さ、公転軸15から蒸発源12までの長さがそれぞれ500mm,250mmとなっている。遊星駆動の自転と公転との比率は自転と公転の回転方向が逆向きで2.471である。
【0060】
実施例3で用いる基板10は、外径300mm、曲率半径250mmの凹レンズとし、レンズ中心19を自転軸14に一致させ、面内における均一な膜厚の分布でMgF2を成膜する際の例を記載する。よって、本実施例における均一な膜厚とは、面内における膜厚の分布が98%以上とする。MgF2の成膜条件は、成膜温度300度、成膜時の圧力4×10-5Paとした。
【0061】
実施例3の遮蔽板17の最終形状と設置位置は、図12で示すようになっている。図12のOは、レンズ10の中心19と蒸発源12を結んだ直線と、遮蔽板17の蒸着粒子が付着する面とが交わる点の、レンズ10の公転に伴って移動する軌道円であり、円形である。そして、この軌道円Oの中心O0を通りかつ公転軸15と平行な直線を含む平面によって、遮蔽板A〜Dがそれぞれ2つの領域に分割されるように配置されている。遮蔽板A〜Dは、蒸発源12の真上から90度毎に直線のフレームAL、BL、CL、DL上にそれぞれ設置されている。なおO0は、蒸発源12が公転軸15の上に存在しないため、公転軸15とは一致しない。
【0062】
直線AL、BL、CL、DLは、軌道円Oの半径の一部に相当するので、各遮蔽板A〜Dを回転対称な位置関係に設置することができる。
【0063】
次に、実施例3での各遮蔽板A〜Dの形状の決定方法について説明する。
【0064】
各遮蔽板A、B、C、Dの形状を形成していくための条件は、それぞれの遮蔽板を、フレームAL、BL、CL、DLで分割した時、各分割された領域で蒸着粒子を遮蔽する量Ciが均等となるように(1/2n±1/10n:n=4)することである。このようにすれば、直線AL、BL、CL、DLと垂直方向に遮蔽板A〜Dの設置誤差が生じても、膜厚の分布に与える影響は小さくなる。この条件に従い計算機で計算した結果、図12の形状に至った。軌道円の中心O0から延びる直線と公転軸15とを含む平面、又は、前記直線を含みかつ公転軸15と平行な平面によってそれぞれ分割された2n個の領域における遮蔽量をCi(ただし、i=1〜2n)とする。そのとき、各Ciが下記の式を満たすように、n個の遮蔽板17の形状が定められる。本実施例では、nを4としたが、1以上の整数であれば4でなくても構わない。
Ci=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【0065】
蒸発源12と直線AL、CLは同一平面にあるので、遮蔽板A,Cは、直線AL、CLに対して対称な形状となる。遮蔽板B,Dは同形状となり、BL、DLより蒸発源12に近い側の領域の面積は、遠い側よりが大きくなる。
【0066】
実施例3では、更に、上記条件に加え、実施例1、実施例2での遮蔽板17の特徴である、各1枚の遮蔽板による遮蔽量がほぼ均等であること、軌道円Oで分割された各領域での遮蔽量が均等であること、という2つの条件を複合させてみた。
【0067】
そうすると、遮蔽板A〜Dは、それぞれ直線AL、BL、CL、DLと軌道円Oとで分割されたA1からD4までの16領域に分割される。そして図13のM0からD4までの16本の各グラフ間の面積が、図12の領域A1からD4までの各領域によって遮蔽された膜厚に相当する。遮蔽量Di(ただし、i=1〜4n)は、4n個(16個)全てのレンズ径方向位置で16等分(1/4n±1/20n:n=4)されていることがわかる。各領域の遮蔽量が均等であることが望ましいが、これまでと同様の理由で20%程度の誤差は許容できる。
【0068】
図14は、図12で示した遮蔽板A〜Dを設置してMgF2を成膜した際、レンズ径方向位置の膜厚をレンズ中心の膜厚で規格化したときのグラフである。図14のMMは、遮蔽板に設置誤差が無い時のレンズ面内における膜厚の分布であり、98%以上となっており、面内における膜厚の分布が非常に高精度に制御されている。
【0069】
図14のA+、B+、C+、D+は、各遮蔽板が中心O0方向に、A−、B−、C−、D−は、その逆方向に約10mmの設置誤差が生じたときの面内における膜厚の分布である。最悪値で1.2%悪化するものの、いずれも98%以上の面内における膜厚の分布を保っていることが分かる。
【0070】
そして、図14のグラフY+は、遮蔽板B又は遮蔽板Dが図12のY方向へ、Y−は、−Y方向へ約10mmの設置誤差が生じたときのレンズ面内における膜厚の分布である。最悪値でも0.1%程度しか悪化せず、こちらも98%以上の面内における膜厚の分布を保っていることが分かる。
【0071】
一方、図15は、真空成膜槽11の基板10の公転軸15を中心に放射上に複数枚の遮蔽板AA〜DDを配置した、設置誤差を考慮しない従来技術の一例である。
【0072】
そして、図16は、図15のグラフと同様にして設置誤差を与えたときの、従来技術の遮蔽板AA〜DDによるレンズ面内における膜厚の分布のグラフである。
【0073】
図16のMMは、遮蔽板AA〜DDの設置誤差が無い時の面内における膜厚の分布は、98%以上となっており非常に均一に制御されている。しかし、真空成膜槽11の中心方向とY方向に約10mmの誤差を与えると、前者では膜厚の分布が最悪9%悪化して91%となり均一の膜厚でなくなってしまう。後者では、値自体は大きくないが、膜厚の分布が1%程度悪化し本実施形態の遮蔽板A〜Dに比べると大きな誤差が発生してしまう。よって従来技術の遮蔽板は、製造再現性がよくない。
【0074】
以上、説明したように、本実施形態に係る遮蔽板は、高精度に制御されたレンズ面内における膜厚の分布となる光学薄膜を成膜でき、また、設置誤差に対し面内における膜厚の分布の変動が小さいので、膜厚の分布の再現性が良い成膜を実現することができる。また、遮蔽板の設置誤差を遮蔽板の微小変化と置き換えても本質的に変わらないので、遮蔽板の形状誤差にも同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】実施例で使用する真空蒸着装置の一例を示す概略図である。
【図1B】実施例で使用する真空蒸着装置の他例を示す概略図である。
【図2】実施例1の遮蔽板の形状と設置位置を示す図である。
【図3】図2の各遮蔽板A,B,C,Dにより遮蔽される膜厚の分布をレンズ中心の膜厚で規格化したグラフである。
【図4】図2の各遮蔽A’、B、C’、Dにより遮蔽される膜厚の分布をレンズ中心の膜厚で規格化したグラフである。
【図5】図2の遮蔽板A、B、C、Dを用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図6】図2の遮蔽板A’、B、C’、Dを用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図7】実施例2の遮蔽板の形状と設置位置を示す図である。
【図8】図7の遮蔽板の各領域Ai、Aoのそれぞれが遮蔽する膜厚を示したグラフである。
【図9】図7の遮蔽板A55を用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図10】図7の遮蔽板A64を用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図11】図7の遮蔽板A73を用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図12】実施例3の遮蔽板の形状と設置位置を示す図である。
【図13】図12の遮蔽板の各領域A1〜D4のそれぞれが遮蔽する膜厚の分布をレンズ中心の膜厚で規格化したグラフである。
【図14】図12の遮蔽板A、B、C、Dを用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図15】従来例における遮蔽板の形状と設置位置を示す図である。
【図16】図15の遮蔽板を用いて成膜したときの膜厚の分布と遮蔽板に設置誤差を与えたときの膜厚の分布を示すグラフである。
【図17】遮蔽板による遮蔽を説明するための模式図である。
【図18】遮蔽板の形状を計算するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
10:レンズ(部材)
11:真空成膜槽
12:蒸発源
13:真空ポンプ
14:自転軸
15:公転軸
16:遮蔽板の設置面
17:遮蔽板
18:膜厚モニター
19:レンズ中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空蒸着装置であって、
部材を支持するとともに、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、
前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、
前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは2以上の整数)の遮蔽板と、を備え、
前記n個の遮蔽板のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をAi(ただし、i=1〜n)とするとき、Aiのそれぞれが下記の式を満たすように、前記n個の遮蔽板の形状が定められていることを特徴とする真空蒸着装置。
Ai=(A1+A2+・・・+An)×(1/n±1/5n)
【請求項2】
真空蒸着装置であって、
部材を支持し、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、
前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、
前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは1以上の整数)の遮蔽板と、を備え、
前記n個の遮蔽板のそれぞれは、前記部材の前記蒸着粒子が付着する面の前記第1軸との交点と前記蒸発源とを結ぶ直線が前記遮蔽板の前記蒸着粒子が付着する面と交わる点が前記部材の公転に伴って移動する軌道円によって2つの領域に分割されるように配置され、
前記軌道円によって分割された前記n個の遮蔽板における2n個の領域のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をBi(ただし、i=1〜2n)とするとき、Biのそれぞれが下記の式を満たすように、前記n個の遮蔽板の形状が定められていることを特徴とする真空蒸着装置。
Bi=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【請求項3】
真空蒸着装置であって、
部材を支持し、前記部材をその中心を通る第1軸の回りに自転させ、かつ前記第1軸とは異なる第2軸の回りに公転させる機構と、
前記第2軸から距離をおいて配置され、膜を形成するための蒸着粒子を発生する蒸発源と、
前記機構により自転及び公転される部材と前記蒸発源との間に配置され、当該自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽するn個(ただし、nは1以上の整数)の遮蔽板と、を備え、
前記n個の遮蔽板のそれぞれは、前記部材の前記蒸着粒子が付着する面の前記第1軸との交点と前記蒸発源とを結ぶ直線が前記遮蔽板の前記蒸着粒子が付着する面と交わる点が前記部材の公転に伴って移動する軌道円の中心を通りかつ前記第2軸と平行な直線を含む平面によって2つの領域に分割され、当該分割によって前記n個の遮蔽板に生じる2n個の領域のそれぞれが前記自転及び公転されている部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をCi(ただし、i=1〜2n)とするとき、Ciのそれぞれ下記の式を満たす前記平面が存在するように、前記n個の遮蔽板の形状が定められていることを特徴とする真空蒸着装置。
Ci=(A1+A2+・・・+An)×(1/2n±1/10n)
【請求項4】
前記分割された2n個の領域のそれぞれは、前記軌道円によってさらに2つの領域に分割され、
前記平面と前記軌道円とによって前記分割された4n個の領域のそれぞれが前記自転及び公転している部材に対する蒸着粒子の付着を遮蔽する量をDi(ただし、i=1〜4n)とするとき、Diのそれぞれが下記の式を満たすように、前記n個の遮蔽板の形状が定められていることを特徴とする請求項3に記載の真空蒸着装置。
Di=(A1+A2+・・・+An)×(1/4n±1/20n)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の真空蒸着装置を用いて部材に蒸着粒子を付着させて膜を形成することを特徴とする膜形成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−138477(P2010−138477A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318936(P2008−318936)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】