説明

眠気防止用口蓋貼付用フィルム。

【解決手段】 (A)水溶性高分子
(B)下記(b−1)(b−2)から選ばれる1種または2種以上の刺激剤
(b−1)メントールなどの冷感刺激剤5〜50質量%
(b−2)カプサイシンなどの温感刺激剤0.001〜10質量%
を含有することを特徴とする、眠気防止用口蓋貼付用フィルム。

【効果】 本発明の眠気防止用口蓋貼付用フィルムによれば、製剤を口蓋に貼付した後、直ちに眠気が解消され、眠気防止効果を実感することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眠気防止効果に優れた製剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眠気は人の自然な生理現象であるが、長時間の会議など社会生活の中で眠気の防止が求められる場面がある。眠気防止の手段として、最近では無水カフェインを配合したドリンク剤が市販されているが、常時携帯するにはあまり適当な製剤とはいえない。
特開平3−251533には、メントールやカフェインなどを含有する眠気防止チューインガムが開示されている。特開平7−48250には、メントールを配合した額や眼の周囲、こめかみ等に貼付することにより眠気を防止するテープ材が開示されている。しかし、これらは、携帯性に優れ眠気防止効果も得られるが、ガム咀嚼やテープの皮膚貼付などは他人から認知されやすく、周囲に不快感を与える可能性があるため、使用場面が制限される場合が多い。また、効果の実感についても必ずしも満足できるものではなく、特に即効性に関して改善の余地がある。
特表2001−504106、特表2002−535269には、フィルム製剤を口腔粘膜に適用する製剤が提案されている。口腔貼付剤は上記の携帯性や周囲への不認知といった使用性に問題がない製剤であるが、前記文献は口中の清涼や各種有効成分の内服に供する目的のものであり、眠気防止に効果的な製剤やその使用方法は開示されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平3−251533
【特許文献2】特開平7−48250
【特許文献3】特表2001−504106
【特許文献4】特表2002−535269
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、周囲に不快感を与えずに効果的に眠気を解消することが可能な口腔用の貼付剤とその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、冷感刺激剤及び/または温感刺激剤を一定量以上含有するフィルム製剤を口腔の中でも口蓋部に貼付することによって、刺激剤の効果が口蓋粘膜から効果的に鼻腔に伝わり、製剤適用後、速やかに眠気が解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、多価アルコール、界面活性剤を含有するとさらに優れた改善効果が得られ、また無水カフェインを配合すると、即効性のみならず持続性にも優れた効果が得られることを知見した。すなわち本発明は、
【0006】
<1>(A)水溶性高分子
(B)下記(b−1)(b−2)から選ばれる1種または2種以上の刺激剤
(b−1)冷感刺激剤5〜50質量%
(b−2)温感刺激剤0.001〜10質量%
を含有することを特徴とする、眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
<2>(b−1)冷感刺激剤が、メントール、カンフル、ボルネオール、シネオール、カルボン、カンフェン
(b−2)温感刺激剤が、カプサイシン、アリルイソチオシアネート、ジンゲロン
から選ばれる1種または2種以上である、<1>に記載の鼻炎症状改善用口蓋貼付用フィルム。
<3>さらに多価アルコール及び/または界面活性剤を含有する<1>または<2>に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
<4>さらに、無水カフェインを含有する<1>〜<3>に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
<5>水分が0〜20質量%である<1>〜<4>に記載の鼻炎症状改善用口蓋貼付用フィルム。
<6>冷感刺激剤、温感刺激剤から選ばれる刺激剤を含有する水溶性フィルムを口蓋粘膜に貼付することを特徴とする、眠気防止方法。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の眠気防止用口蓋貼付用フィルムによれば、製剤を口蓋に貼付した後、直ちに眠気防止効果を実感することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、水溶性高分子を主基剤とし冷感刺激剤および/または温感刺激剤を一定量以上含有する水溶性フィルム製剤であり、該水溶性フィルムを口蓋部粘膜に貼付することによって、刺激剤の効果が効果的に鼻腔に伝わり、眠気防止効果が得られるものである。
【0009】
本発明に使用する水溶性フィルム基剤は、水溶性高分子を必須とし、好ましくは多価アルコール及び糖アルコール、界面活性剤を含有する。
【0010】
水溶性高分子としては、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、大豆多糖類、トラガントガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(Na,Kなどの一価塩)、カードラン、寒天、グアーガム、グルコマンナン、タマリンドシードガム、タラガム、澱粉、プルラン、ローカストビーンガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、水溶性ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース(MC)等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0011】
他の好ましい高分子として、特にカラギナン、キサンタンガム、プルラン、HPC、PVP、MCがあげられる。水溶性高分子化合物の合計配合量は、口蓋貼付用フィルム中10〜99質量%が好ましく、より好ましくは20〜95質量%であり、さらに好ましくは30〜90質量%である。この合計配合量は口蓋貼付用フィルムが乾燥して調製される場合は、乾燥調製後の口蓋貼付用フィルムの全質量(剥離フィルム等は含まない)に対する合計配合量である。
【0012】
本発明に使用される前記多価アルコール及び糖アルコールとしては、分子量200以下の低分子量多価アルコールが好ましく使用される。具体的には、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン及びその重合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジアルキレングリコール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコールなどがあげられる。多価アルコール及び糖アルコールは、粘膜に貼付したときのフィルムの湿潤性、貼付違和感の抑制に効果を奏する。
【0013】
多価アルコールの口蓋貼付用フィルム中の含有量は、0〜40質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜30質量%である。この範囲で前記の効果が特に良好であり、多すぎる場合はフィルムのべたつきなど、物性が低下する。
【0014】
本発明に使用される前記界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルがあげられる。界面活性剤は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の口蓋貼付用フィルム中の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。この範囲で前記の効果が特に良好であり、多すぎる場合はフィルムのべたつきなど、物性が低下する。
【0015】
本発明に使用される眠気防止用口蓋貼付用フィルムは、上記の基剤成分に必須成分として冷感刺激剤及び/または温感刺激剤を含有し、さらに好ましくは無水カフェインを含有する。
【0016】
前記冷感刺激剤としては、メントール、カンフル、ボルネオール、シネオール、カルボン、カンフェンなどをあげることができる。これらは、1種または2種以上を含有してよいが、好ましくは2種以上を組み合わせて使用することが本発明の効果が特に良好であって好ましい。
【0017】
冷感刺激剤のフィルム組成物中の含有量は5〜50質量%であることを要する。3質量%未満では本発明の効果が得られず、50質量%を超えると刺激が強すぎて痛みを感じる場合がある。好ましい含有量は6〜40質量%であり、特に好ましくは8〜35質量%、最も好ましくは10〜30質量%である。
【0018】
前記温感刺激剤としては、カプサイシン、アリルイソチオシアネート、ジンゲロンなどをあげることができる。これらは、1種または2種以上を含有してよいが、好ましくは2種以上を組み合わせて使用することが本発明の効果が特に良好であって好ましい。
【0019】
温感刺激剤のフィルム組成物中の含有量は0.005〜5質量%であることを要する。0.005質量%未満では本発明の効果が得られず、5質量%を超えると刺激が強すぎて痛みを感じる場合がある。好ましい含有量は0.005〜3質量%であり、特に好ましくは0.01〜2質量%、最も好ましくは0.05〜1質量%である。
【0020】
冷感刺激剤と温感刺激剤を併用すると、本発明の効果がさらに良好となるため好ましい。
【0021】
また、冷感刺激剤と温感刺激剤は、前記の化合物として配合できる他、それらを含有する植物抽出物を使用してもよい。植物抽出物としては、たとえば、ハッカ、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ローズマリー、トウガラシ、ジンジャー、ガーリック、ワサビなどの精油やエキス、チンキがあげられる。植物抽出物のフィルム中の含有量は、刺激剤成分の含有量が各々前述の範囲となるように調整すればよいが、フィルム物性の点から、20質量%以下とすることが好ましい。
【0022】
本発明の眠気防止用口蓋貼付用フィルムには、上記の他、甘味剤、酸味剤を含有することが好ましい。
【0023】
甘味剤としては、ショ糖、果糖などの糖(好ましい配合量0.1〜10質量%)、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなどの糖アルコール(好ましい配合量0.1〜10質量%)、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、スクラロース、ステビア抽出物などの高甘味度甘味料(好ましい配合量0.01〜10質量%)が使用される。好ましい甘味料は、糖アルコール及び/または高甘味度甘味料であり、具体的にはキシリトール、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、サッカリン、スクラロースが特に好ましい。
【0024】
酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、酪酸、酒石酸などがあげられる。(好ましい含有量0.01〜5質量%)
【0025】
さらに、本発明の眠気防止用口蓋貼付用フィルムには、防腐剤、色素、香料などの口腔用組成物・内服薬に配合可能な各種添加成分を含有することができる。
【0026】
<製造方法>

本発明の口蓋貼付用フィルムは通常フィルム状として調製され、口蓋粘膜に貼付して使用することができる。その製造方法としては、上述した成分を水又は含水エタノールに溶解乃至は分散させ、これを剥離用フィルムにキャスティングし、乾燥する方法を採用し得るが、これに限定されない。
【0027】
乾燥して得られた口蓋貼付用フィルムの水分量は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。この範囲で、特に良好な柔軟性が得られ、かつ製剤自体のべたつき(粘着性)がない良好なフィルムとすることができる。
【0028】
本発明の口蓋貼付用フィルムの厚みは200〜5,000μmが好ましい。より好ましくは300〜1,000μmである。5,000μmより厚い場合は、口蓋貼付用フィルムの柔軟性が失われて口腔内に違和感を感じさせ、200μmより薄い場合は、口蓋貼付用フィルムがすぐに溶けてしまい、十分な持続効果が得られない場合がある。なお、その大きさは口蓋粘膜に適用しやすい適宜な大きさとすることができ、0.1〜10cm2程度の大きさとすることが、有効性と貼付時の使用感の点から好ましい。
【0029】
以上の口蓋貼付用フィルムは、一層形態であるが、目的とする口蓋粘膜への付着性及び口腔内での溶解性を実現するために、口蓋貼付用フィルムを積層化することもできる。
【0030】
本発明の口蓋貼付用フィルムは水溶性高分子を主基剤としているため、口蓋粘膜に貼付し粘膜の水分と接触することによって湿潤し粘着性を示す。よって、舌先にフィルムを乗せ、そのまま口蓋のほぼ中央部へ移動させ、口蓋粘膜に押し付ければ良好な粘着力を得ることができる。口蓋の貼付位置としては、口蓋のほぼ中央部への貼付が好ましい。
【実施例】
【0031】
表1,3,4に示す組成の眠気防止用口蓋貼付用フィルムを作成し、眠気防止効果の評価を行った。

【0032】
<製造方法>

[実施例1]
キャスティング溶液の調製
濃グリセリン10g、l−メントール5g、無水カフェイン40g及びショ糖脂肪酸エステル1gを十分混合溶解し、溶液Aとした。別途、適量の水にκ−カラギナン4g及びプルラン35gを投入し、80℃、5分間加熱溶解させ、60℃まで放冷した。本溶液を撹拌しながら、アセスルファムカリウム0.2g、アスパルテーム1g、スクラロース0.2g及び溶液Aを投入し、溶解させた。
塗工、乾燥
50μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム表面に上記キャスティング溶液を塗工し、熱風乾燥にて70℃で乾燥して、1800μm厚のフィルムを作製し、14mmφにカットして、口蓋貼付用フィルムを得た。
【0033】
[実施例2〜17、比較例1、2]
表1,3,4に示す組成で、実施例1の製造方法に順じて300〜5,000μm厚のフィルムを作製し、14mmφにカットして、口蓋貼付用フィルムを得た。ただし、実施例14〜17に関しては溶媒として含水アルコールを用いた。

【0034】
<評価方法>
パネラー10名を対象として行った。パネラーの舌先にサンプルを乗せ、そのまま口蓋中央部に移動させ、舌先で口蓋粘膜表面に貼付した。評価は、口蓋貼付後の眠気改善効果について下記基準で判定し、平均点を計算した。
5点:非常に眠気が解消した
4点:かなり眠気が解消した
3点:少し眠気が解消した
2点:やや眠気が解消した
1点:眠気が解消しなかった

【0035】
【表1】



【0036】
(比較例3)実施例4のフィルムを、頬粘膜に貼付し、評価した。
(比較例4)実施例4のフィルムを、下歯茎の裏側に貼付し、評価した。
(比較例5)市販のメントール配合キャンディを舐めた。
(比較例6)市販のメントール配合ガムを咀嚼した。
比較例3〜6の眠気解消効果について表2に示した。

【0037】
【表2】



【0038】
【表3】



【0039】
【表4】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性高分子
(B)下記(b−1)(b−2)から選ばれる1種または2種以上の刺激剤
(b−1)冷感刺激剤5〜50質量%
(b−2)温感刺激剤0.001〜10質量%
を含有することを特徴とする、眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
【請求項2】
(b−1)冷感刺激剤が、メントール、カンフル、ボルネオール、シネオール、カルボン、カンフェン
(b−2)温感刺激剤が、カプサイシン、アリルイソチオシアネート、ジンゲロン
から選ばれる1種または2種以上である、請求項1に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
【請求項3】
さらに多価アルコール及び/または界面活性剤を含有する請求項1または2に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
【請求項4】
さらに、無水カフェインを含有する請求項1〜3に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
【請求項5】
水分が0〜20質量%である請求項1〜4に記載の眠気防止用口蓋貼付用フィルム。
【請求項6】
冷感刺激剤、温感刺激剤から選ばれる刺激剤を含有する水溶性フィルムを口蓋粘膜に貼付することを特徴とする、眠気防止方法。

【公開番号】特開2007−99689(P2007−99689A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292024(P2005−292024)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】